説明

毛髪化粧料組成物

【課題】染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、増粘効果の発現が早く、粘度安定性を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供する。
【解決手段】(A)アニオン性界面活性剤、(B)カチオン性界面活性剤、(C)増粘剤((D)デンプンを除く)、及び(D)デンプンを含有し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、前記(D)デンプンは、固体状で保存されるとともに、前記(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を、使用時に溶媒存在下で接触させるように、保存することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物に関し、さらに詳しくは、増粘の発現が早く、粘度安定性を向上させることができる毛髪化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪化粧料組成物として、例えばアルカリ剤及び酸化剤等を含有する染毛剤及び毛髪脱色・脱染剤が知られている。酸化剤は、毛髪中のメラニンを脱色する。アルカリ剤は、酸化剤の作用を促進することにより脱色後の毛髪の明度を向上させる。また、アルカリ剤は、毛髪化粧料組成物中に染料を含有する場合、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、染色性を向上させる。染毛剤及び毛髪脱色・脱染剤は、使用時に所定の粘度を付与することにより液だれを防止して、毛髪に対する付着性を向上させるために、例えば増粘剤を配合する場合がある。ところで、粉末状のアルカリ剤から構成される毛髪化粧料組成物も知られている。かかる粉末毛髪化粧料組成物は、例えば使用時に水と混合した後、毛髪に塗布して脱色又は染毛処理に用いられる。粉末状の毛髪化粧料組成物は、クリーム状又は液状の組成物に比べて使用法が簡便であり、取り扱い性及び携帯性に優れるという特長を有する。
【0003】
従来、例えば、特許文献1,2に開示される染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤が知られている。特許文献1は、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース及びトラガントガム等を含有する粉末状の毛髪脱色剤の第1剤、過酸化水素等を含有する第2剤について開示する。特許文献1は、使用時に第1剤と第2剤を混合することにより、混合物に粘度を付与している。特許文献2は、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロース及びグアーガム等を含有する粉末状染毛剤組成物について開示する。特許文献2は、使用時に粉末状染毛剤組成物と水を混合することにより、組成物に粘度を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−97123号公報(段落0028)
【特許文献2】特開2001−253812号公報(段落0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1,2に開示される毛髪化粧料組成物は、混合物調製時に増粘効果の発現が遅く、混合直後は組成物の粘度が低く垂落ちやすいため、すぐに毛髪に塗布することができないという問題があった。また、混合物の粘度安定性が悪く、経時的に粘度が低下したり、又は上昇したりする場合があるという問題があった。
【0006】
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、所定の増粘剤及び界面活性剤を併用することにより上記問題が解決されることを見出したことによりなされたものである。本発明の目的とするところは、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、増粘効果の発現が早く、粘度安定性を向上させることができる毛髪化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の毛髪化粧料組成物は、(A)アニオン性界面活性剤、(B)カチオン性界面活性剤、(C)増粘剤((D)デンプンを除く)、及び(D)デンプンを含有し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、前記(D)デンプンは、固体状で保存されるとともに、前記(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を、使用時に溶媒存在下で接触させるように、保存することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の毛髪化粧料組成物において、前記毛髪化粧料組成物は、2剤式以上に構成され、前記(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤は、それぞれ別剤として保存されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物において、前記毛髪化粧料組成物中における(D)デンプンの含有量は、0.1〜20質量%であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物において、前記毛髪化粧料組成物中における(C)増粘剤の含有量に対する(D)デンプンの含有量の質量比は、0.1〜20であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、増粘効果の発現が早く、粘度安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】毛髪化粧用品の使用方法を示す説明図。(a)は毛髪脱色・脱染剤10を収容する閉塞可能容器20を示す図。(b)は各剤を容器本体21に投入する工程を示す図。(c)は容器本体21に蓋体22を装着し、閉塞可能容器20を上下に振る工程を示す図。(d)蓋体22を取り外し、容器本体21内の泡状の毛髪脱色・脱染剤14を手で直接取り出して毛髪に塗布する工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を毛髪脱色・脱染剤に具体化した第1実施形態について説明する。毛髪化粧料組成物は2剤式の毛髪脱色・脱染剤として、毛髪の脱色及び脱染に使用される。また、毛髪化粧料組成物は、3剤式の脱色・脱染剤としても使用される。さらに、毛髪化粧料組成物は、1剤式の毛髪脱色剤として毛髪の脱色にも使用される。
【0014】
<2剤式の毛髪脱色・脱染剤>
2剤式の毛髪脱色・脱染剤における、毛髪化粧料組成物は、例えばアルカリ剤等を含有する第1剤と、酸化剤等を含有する第2剤から構成される。この第1剤と第2剤とが混合された後、毛髪の脱色及び脱染に使用される。
【0015】
<第1剤>
第1剤は、アルカリ剤に加え、さらに、例えば(A)アニオン性界面活性剤、(C)増粘剤、及び固体状の(D)デンプンを含有する。第1剤は、(D)デンプンを固体状に保存するため、固体状に構成される。
【0016】
(A)アニオン性界面活性剤は、(C)増粘剤及び(D)デンプン、並びに第2剤に含有される(B)カチオン性界面活性剤との併用により、第1剤と第2剤を混合して得られる混合物に対し、増粘効果の発現速度を高め、粘度安定性を向上させるために配合される。
【0017】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。より具体的には、アルキル硫酸塩として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムが挙げられる。スルホコハク酸エステルとして、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムが挙げられる。これらの(A)アニオン性界面活性剤の具体例は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0018】
毛髪処理用組成物中(使用時)における(A)アニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。(A)アニオン性界面活性剤の含有量が0.01質量%未満であると、増粘効果の発現速度を高める効果、及び粘度安定性を向上させる効果を十分に発揮することができない。(A)アニオン性界面活性剤の含有量が10質量%を超えて配合しても、それ以上の粘度安定性の向上効果は得られず、使用後の毛髪にかさつき感を生じさせるおそれがある。
【0019】
(C)増粘剤は、第1剤と第2剤を混合して得られる混合物に適度な粘度を与えて、混合物を毛髪に塗布する際、毛髪からの垂れ落ちを抑制するために配合される。増粘剤の具体例としては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物系高分子が挙げられる。
【0020】
天然高分子としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、及びコラーゲンが挙げられる。
【0021】
半合成高分子としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、及びアルギン酸塩が挙げられる。
【0022】
合成高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、及びアクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体が挙げられる。また、合成高分子としては、例えばイタコン酸とポリオキシエチレンアルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とポリオキシエチレンアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。
【0023】
無機物系高分子としては、例えばベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、及び無水ケイ酸が挙げられる。これらの増粘剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0024】
毛髪処理用組成物中における(C)増粘剤の含有量は、好ましくは0.05〜20質量%、より好ましくは0.5〜4質量%である。(C)増粘剤の含有量が0.05質量%未満であると、増粘効果の発現速度を高める効果、及び粘度安定性を向上させる効果を十分に発揮することができない。(C)増粘剤の含有量が20質量%を超えて配合すると粘度安定性が低下する場合がある。
【0025】
(D)デンプンは、第1剤中において固体状で保存される。(D)デンプンが溶媒、例えば水と混合状態で保存されると経時的にデンプンが劣化したり、沈殿したり、第2剤との混合性が低下するおそれがある。(D)デンプンは、(A)アニオン性界面活性剤及び(C)増粘剤、並びに第2剤に含有される(B)カチオン性界面活性剤との併用により、第1剤と第2剤を混合して得られる混合物に対し、増粘効果の発現速度を高め、粘度安定性を向上させるために配合される。デンプンとしては、例えば穀類デンプン、イモ類デンプン、豆類デンプン、野草類デンプン、幹茎デンプン、及びこれらの改質デンプン(加工デンプン)が挙げられる。より具体的には、コーンスターチ、タピオカデンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、サゴデンプン、及びこれらの改質デンプンが挙げられる。改質デンプンとは、デンプンに対して、エーテル化、エステル化、グラフト化等の誘導体化処理、焙焼、酵素変性、酸化、酸処理等の分解処理、α化、造粒処理、多孔質化等の加工を施すことにより、デンプン本来の物性を人為的に変化させたものをいう。これらのデンプンは、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0026】
毛髪処理用組成物中における(D)デンプンの含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。(D)デンプンの含有量が0.1質量%未満であると、増粘効果の発現速度を高める効果、及び粘度安定性を向上させる効果を十分に発揮することができない。(D)デンプンの含有量が20質量%を超えて配合しても、それ以上の粘度安定性の向上効果は得られず、毛髪にべたつきが生じるおそれがある。
【0027】
第1剤と第2剤が混合された混合物中における(C)増粘剤の含有量に対する(D)デンプンの含有量の質量比(D/C)は、好ましくは0.1〜20、より好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜3である。この質量比の範囲内の場合、増粘効果の発現速度を高める効果、及び粘度安定性を向上させる効果をより高めることができる。
【0028】
アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進することにより、毛髪の脱色性又は脱染性を向上させる。アルカリ剤は、本実施形態においては25℃(常温)で固体状のものが使用され、例えばケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、及びリン酸塩が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸マグネシウムが挙げられる。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸アンモニウムが挙げられる。炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素アンモニウムが挙げられる。メタケイ酸塩としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウムが挙げられる。硫酸塩としては、例えば硫酸アンモニウムが挙げられる。塩化物としては、例えば塩化アンモニウムが挙げられる。リン酸塩としては、例えばリン酸第1アンモニウム、及びリン酸第2アンモニウムが挙げられる。
【0029】
第1剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば油性成分、多価アルコール、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート化剤、酸化助剤、及び賦形剤を含有してもよい。
【0030】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、第1剤は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0031】
油脂としては、例えばラノリン、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、及び月見草油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0032】
炭化水素としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0033】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、及び2−エチルヘキサン酸セチルが挙げられる。
【0034】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650〜10000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、及びフッ素変性シリコーンが挙げられる。これらのシリコーンのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0035】
多価アルコールとしては、例えばグリコール、及びグリセリンが挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。
【0036】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として毛髪脱色・脱染剤を使用時に乳化又は可溶化し、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。界面活性剤としては、両性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。尚、本願発明の効果を阻害しない範囲内において第1剤にカチオン性界面活性剤が配合されてもよい。
【0037】
両性界面活性剤としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)が挙げられる。
【0038】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、及びエステル型非イオン性界面活性剤が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、及びPOEオクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0039】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、及びモノミリスチン酸デカグリセリルが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0040】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。pH調整剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピロリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び塩基性アミノ酸が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばアスコルビン酸及び亜硫酸塩が挙げられる。キレート化剤としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類が挙げられる。酸化助剤としては、例えば過硫酸塩が挙げられる。酸化助剤は、脱色力及び脱染力をより向上させるために配合してもよい。過硫酸塩としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムが挙げられる。賦形剤としては、例えば硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0041】
第1剤の剤型は、(D)デンプンを固体状に保存するため、固体状に構成される。固体状としては、例えば粉末状及び粒子状が挙げられる。第1剤の剤型が固体状の場合、添加剤として、さらに分散剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、タルク、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びデキストリンを配合してもよい。
【0042】
<第2剤>
第2剤は、(B)カチオン性界面活性剤、及び酸化剤を含有する。
(B)カチオン性界面活性剤は、第1剤に含有される(A)アニオン性界面活性剤、(C)増粘剤及び(D)デンプンとの併用により、第1剤と第2剤を混合して得られる混合物に対し、増粘効果の発現速度を高め、粘度安定性を向上させるために配合される。(B)カチオン性界面活性剤は、(A)アニオン性界面活性剤と使用時に初めて溶媒存在下で接触し、増粘効果を発揮するように、本実施形態においては(A)アニオン性界面活性剤と別剤として保存される。尚、本願発明の効果を阻害しない範囲内において第2剤にアニオン性界面活性剤が配合されてもよい。
【0043】
(B)カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、及びメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0044】
毛髪処理用組成物中における(B)カチオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。(B)カチオン性界面活性剤の含有量が0.01質量%未満であると、増粘効果の発現速度を高める効果、及び粘度安定性を向上させる効果を十分に発揮することができない。(B)カチオン性界面活性剤の含有量が10質量%を超えて配合しても、それ以上の粘度安定性の向上効果は得られず、仕上がり時に毛髪に硬さを与えるおそれがある。
【0045】
第1剤と第2剤が混合された混合物中における(B)カチオン性界面活性剤の含有量に対する(A)アニオン性界面活性剤の含有量の質量比(A/B)は、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.5〜10、最も好ましくは1〜7である。この質量比の範囲内の場合、増粘効果の発現速度を高める効果、及び粘度安定性を向上させる効果をより高めることができる。
【0046】
酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色する。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは0.1〜15.0質量%であり、より好ましくは2.0〜9.0質量%であり、最も好ましくは3.0〜6.0質量%である。酸化剤の含有量が0.1質量%未満では、メラニンを十分に脱色することができない場合がある。酸化剤の含有量が15.0質量%を超えると、毛髪に損傷等の不具合が発生するおそれがある。
【0047】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、毛髪脱色・脱染剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される、アルカリ剤以外の成分を本発明の効果を阻害ない範囲内において適宜含有してもよい。
【0048】
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば固体状(酸化剤が常温で液体の場合は除く)、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。固体状としては、例えば粉末状及び粒子状が挙げられる。液状としては、例えば乳化液が挙げられる。尚、第2剤が固体状の場合、使用時に溶媒をさらに添加する必要がある。溶媒としては、例えば水、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p−メチルベンジルアルコール、α−ジメチルフェネチルアルコール、α−フェニルエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、2−ベンジルオキシエタノール、N−アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、及びアルキルエーテルが挙げられる。これらの中で、各成分の溶解性が優れる観点から水が好ましい。なお、溶媒として水が用いられる場合、第1剤と第2剤とが混合された混合物中における含有量(使用時の含有量)は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。
【0049】
毛髪脱色・脱染剤は、使用時に第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。混合物の剤型は特に限定されず、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状のいずれであってもよい。次いで、必要量の混合物が薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0050】
<3剤式の毛髪脱色・脱染剤>
3剤式の毛髪脱色・脱染剤における、毛髪化粧料組成物は、例えばアルカリ剤を含有する第1剤、2剤式の毛髪脱色・脱染剤に係る第2剤と同じ第2剤、並びに2剤式の毛髪脱色・脱染剤に係る第1剤のアルカリ剤以外の成分を含有する第3剤から構成される。この第1剤〜第3剤は、全て混合された後、毛髪の脱色又は脱染に使用される。
【0051】
第1剤としては、2剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤から(A),(C)及び(D)成分が除かれた薬剤が挙げられる。第3剤としては、前述した2剤式の脱色・脱染剤における粉末状又はクリーム状を有する第1剤が挙げられる。3剤式の毛髪脱色・脱染剤と構成することにより、配合成分の保存安定性を向上させることができる。
【0052】
<1剤式の毛髪脱色剤>
(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を、使用時に溶媒存在下で接触させるように、保存する構成として固体状の1剤式の毛髪脱色剤が挙げられる。1剤式の毛髪脱色剤では、粉末状の各成分、つまり(A)アニオン性界面活性剤、(B)カチオン性界面活性剤、(C)増粘剤、及び(D)デンプンを含有し、好ましくはアルカリ剤、及び酸化剤を含有する。1剤式の毛髪脱色剤は、粉末状の剤型として構成されるため、アルカリ剤及び酸化剤は、好ましくは粉末状のものが用いられる。1剤式の毛髪脱色剤は、毛髪脱色剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。1剤式の毛髪脱色剤は、使用時に上述した溶媒に溶解させることにより使用される。1剤式の毛髪脱色剤の構成であっても、(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を粉末剤として構成するとともに、使用時に溶媒を添加することにより、それら界面活性剤を使用時に初めて溶媒存在下で接触させることができる。
【0053】
本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は以下の利点を有する。
(1)本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は、例えば(A)アニオン性界面活性剤、(C)増粘剤、及び(D)デンプンを含有する固体状の第1剤と、例えば(B)カチオン性界面活性剤を含有する第2剤から構成した。それにより(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を、使用時に溶媒存在下で接触させることができる。したがって、第1剤と第2剤を混合して混合物を得る際、短時間で混合物に増粘効果を付与することができる。これは、(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤が溶媒に溶解された際、イオン状態で接触し、相互作用することによるものであると推認される。
【0054】
(2)本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は、第1剤中に固体状の(D)デンプンが含有される。したがって、第1剤と第2剤を混合して得られる混合物に対し、増粘効果の発現速度を高め、粘度安定性を向上させることができる。
【0055】
(3)本実施形態に係る毛髪脱色・脱染剤は、好ましくは2剤式以上に構成され、(A)アニオン性界面活性剤は第1剤に配合され、(B)カチオン性界面活性剤は、第2剤に含有される。したがって、界面活性剤の保存安定性を向上させ、増粘効果をより向上させることができる。
【0056】
(4)好ましくは、毛髪脱色・脱染剤中における(D)デンプンの含有量は、0.1〜20質量%である。この場合、増粘効果の発現速度をより高め、粘度安定性を向上させる効果をより高めることができる。
【0057】
(5)好ましくは、毛髪脱色・脱染剤中における(C)増粘剤の含有量に対する(D)デンプンの含有量の質量比は、0.1〜20である。この場合、増粘効果の発現速度をより高め、粘度安定性を向上させる効果をより高めることができる。
【0058】
・前記実施形態の毛髪脱色・脱染剤では、第1剤を固体状の(D)デンプンを含有するため固体状に構成した。しかしながら、固体状の(D)デンプンを別剤として保存すれば、第1剤は、固体状のみならず、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状のいずれで構成してもよい。第1剤の剤型がゲル状、フォーム状、及びクリーム状の場合、アルカリ剤として、25℃で液状のアルカリ剤、例えばアンモニア、及びアルカノールアミンを用いても良い。
【0059】
・前記実施形態の毛髪脱色・脱染剤では、(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を、使用時に溶媒存在下で接触させるように、保存すればよく、複数剤式、例えば3剤式以上に構成してもよい。
【0060】
・前記実施形態の毛髪脱色・脱染剤では、1剤にカチオン界面活性剤、2剤にアニオン界面活性剤を配合することにより構成してもよい。
・前記実施形態の毛髪脱色・脱染剤において、使用時の混合物の剤型が、フォーム状(泡状)の場合、例えば以下の毛髪化粧用品を適用することにより組成物を調製することができる。
【0061】
図1に示されるように、毛髪化粧用品は、例えば2剤式の毛髪脱色・脱染剤10と、毛髪脱色・脱染剤10を振とうするための発泡用具とを備えている。毛髪脱色・脱染剤10を構成する第1剤11及び第2剤12は、個別に包装された包装体として使用時まで保管される。なお、各剤の包装形態としては、特に限定されず、例えばボトル包装、ピロー包装、及びチューブ包装が挙げられる。
【0062】
発泡用具は、図1(a)に示されるように、毛髪脱色・脱染剤10を液密に閉塞可能とする閉塞可能容器20である。閉塞可能容器20は、有底筒状の容器本体21と、容器本体21の開口部を閉塞する半球状の蓋体22とを備えている。容器本体21は、底部よりも開口部が拡径された有底筒状をなすことで、毛髪脱色・脱染剤10を泡状の剤型としたときに、例えば手により直接、毛髪脱色・脱染剤を容易に取り出せるように構成されている。また、容器本体21の内面は曲面状をなすことで例えば手により泡状の毛髪脱色・脱染剤を取り出す際に、泡状の毛髪脱色・脱染剤が容器本体21の内面に残留しにくくなっている。
【0063】
蓋体22の周縁部にフランジ状の嵌合部が形成されており、この嵌合部が容器本体21の開口部に嵌合されるようになっている。なお、本実施形態の閉塞可能容器20では、嵌合部を容器本体21の開口部に嵌合させて蓋体22を回転させることで蓋体22が液密に装着されるようになっている。
【0064】
閉塞可能容器20は、第1剤11及び第2剤12が個別に包装された状態で収容可能に形成されている。このように閉塞可能容器20を2剤式の毛髪脱色・脱染剤10の外装容器として、各剤をまとめて保管することができる。なお、閉塞可能容器20には、毛髪脱色・脱染処理時に用いられる手袋、説明書等の付属品も収容可能に形成されている。こうした閉塞可能容器20は、軽量化の観点から、樹脂材料、又は、耐水性を付与した紙材料から形成されることが好ましい。また、容器本体21の外面には、例えばシュリンクフィルムを用いた印刷を付与することもできる。
【0065】
次に毛髪化粧用品の使用方法の一例について説明する。まず、容器本体21から蓋体22を取り外し、第1剤11及び第2剤12の包装体を取り出すとともにそれら包装体を開封し、図1(b)に示されるように各剤を容器本体21に投入することで各剤を接触させ、混合物13とする。続いて、図1(c)に示されるように容器本体21に蓋体22を装着し、閉塞可能容器20を上下に振る操作を行う。このとき、閉塞可能容器20内では、各剤が混合されるとともに、各剤の混合物13が上下に振とうされることで混合物13に空気が混入される。このように混合物13に空気を振り混ぜる操作により、混合物13の発泡が開始される。そして、閉塞可能容器20を所定の回数振ることで、発泡操作を完了する。この発泡操作により、泡状の毛髪脱色・脱染剤14が調製される。次に、図1(d)に示されるように、蓋体22を取り外し、容器本体21内の泡状の毛髪脱色・脱染剤14を例えば手で直接取り出して毛髪に塗布する。このとき、毛髪脱色・脱染剤は泡状をなしていることから、液だれを起こすことなく毛髪に容易に馴染ませることができる。そして、毛髪脱色・脱染剤が塗布された毛髪を所定時間放置することで、毛髪が脱色又は脱染される。続いて、毛髪脱色・脱染剤を水又は温水で洗い流すことで、脱色又は脱染処理が完了される。
【0066】
(第2実施形態)
以下、本発明に係る毛髪化粧料組成物を染毛剤に具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態に係る染毛剤は、第1剤と第2剤とから構成される2剤式の毛髪化粧料組成物である。
【0067】
第1剤は、例えば(A)アニオン性界面活性剤、(C)増粘剤、(D)デンプン、アルカリ剤、及び酸化染料を含有する。
酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は少なくとも染料中間体を含んでいる。
【0068】
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0069】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料、及び直接染料から選ばれる少なくとも一種を適宜含有してもよい。
【0070】
染毛剤における第2剤は、第1剤と混合された後、毛髪の染色に使用される。第2剤の具体的な構成は、第1実施形態に係る第2剤と同じである。
第1剤の剤型は、(D)デンプンを固体状に保存するため、固体状に構成される。固体状としては、例えば粉末状及び粒子状が挙げられる。第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば固体状(酸化剤が常温で液体の場合は除く)、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。固体状としては、例えば粉末状及び粒子状が挙げられる。尚、第2剤が固体状の場合、使用時に上述した溶媒を添加する必要がある。液状としては、例えば乳化液が挙げられる。染毛剤の使用時において、第1剤及び第2剤を混合することにより混合物が調製される。混合物の剤型は特に限定されず、液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状のいずれであってもよい。次いで、必要量の混合物が薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布される。
【0071】
本実施形態に係る染毛剤は第1実施形態の効果に加えて以下の利点を有する。
(5)本実施形態に係る染毛剤は、例えば(A)アニオン性界面活性剤、(C)増粘剤、及び(D)デンプンを含有する固体状の第1剤と、例えば(B)カチオン性界面活性剤を含有する第2剤から構成した。それにより(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を、使用時に溶媒存在下で接触させることができる。したがって、第1剤と第2剤を混合して混合物を得る際、短時間で混合物に増粘効果を付与することができる。これは、(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤が溶媒に溶解された際、イオン状態で接触し、相互作用することによるものであると推認される。
【0072】
(6)本実施形態に係る染毛剤は、第1剤中に固体状の(D)デンプンが含有される。したがって、使用時に第1剤と第2剤を混合して得られる混合物に対し、増粘効果の発現速度を高め、粘度安定性を向上させることができる。
【0073】
前記実施形態は以下のように変更されてもよい。
・第2実施形態の染毛剤について、第1実施形態の毛髪脱色・脱染剤と同様に1剤式又は3剤式の染毛剤として適用してもよい。また、第2実施形態の染毛剤について、3剤式以上に構成されてもよい。
【実施例】
【0074】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
(試験例1)
表1,2に示す各成分を含有する毛髪脱色剤の粉末状の第1剤及び乳液状の第2剤を調製した。表1,2における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。そして、第1剤と第2剤とを1:4の質量比で混合して、攪拌棒で攪拌することにより毛髪脱色剤を調製した。得られた毛髪脱色剤について、増粘効果の発現速度及び粘度安定性の評価を行った。結果を表1,2に示す。
【0075】
表中「成分」欄におけるA〜Dの表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における(a),(b)の表記は、各比較例における本願請求項記載の成分の対比化合物を示す。
【0076】
表中「デンプンの質量比」は、使用時における(C)増粘剤の含有量に対する(D)デンプンの含有量の質量比(D/C)を示す。
表中「アニオン性界面活性剤の質量比」は、使用時における(B)カチオン性界面活性剤の含有量に対する(A)アニオン性界面活性剤の含有量の質量比(A/B)を示す。
【0077】
<増粘効果の発現速度の測定及び評価>
混合して得られた毛髪脱色剤の粘度について、第1剤及び第2剤の混合時から1分毎にB型粘度計にて、ローターNo.4、回転数12rpm、25℃、1分間の条件で測定した。
【0078】
各表中の「増粘効果の発現速度」欄において、“5”は、第1剤及び第2剤の混合から3分後までの粘度上昇率が、1000mPa・s/分以上を示し、“4”は、850mPa・s/分以上1000mPa・s/分未満を示し、“3”は、650mPa・s/分以上850mPa・s/分未満を示し、“2”は、500mPa・s/分以上650mPa・s/分未満を示し、“1”は、500mPa・s/分未満を示す。
【0079】
<粘度安定性>
第1剤及び第2剤を混合して5分後の粘度、及び第1剤及び第2剤を混合して25分後の粘度から粘度比率(=5分後の粘度/25分後の粘度)を算出した。
【0080】
この粘度比率が0.80以上1.20未満(非常に優れる:5)、粘度比率が0.60以上0.80未満又は1.2以上2.0未満(優れる:4)、粘度比率が0.40以上0.60未満又は2.0以上4.0未満(良好:3)、粘度比率が0.20以上0.40未満又は4.0以上6.0未満(やや悪い:2)、及び粘度比率が0.20未満又は6.0以上(悪い:1)の5段階で評価した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

表1,2に示されるように、第1剤中に(A)アニオン性界面活性剤、(C)増粘剤、及び(D)デンプンを配合し、第2剤中に(B)カチオン性界面活性剤を配合することにより構成した各実施例は、「増粘効果の発現速度」及び「粘度安定性」の各項目において良好な結果が得られた。
【0083】
表1に示されるように、第1剤中に(A)アニオン性界面活性剤の代わりに非イオン性界面活性剤を含有する比較例1、及び第2剤中に(B)カチオン性界面活性剤の代わりに非イオン性界面活性剤を含有する比較例2は、各実施例と比較して「増粘効果の発現速度」の項目において評価が低いことが分かった。比較例1,2は、「粘度安定性」の項目において、経時的に粘度が徐々に上がり続けるため、各実施例と比較して評価が低い結果となった。
【0084】
第1剤中に(C)増粘剤を含有しない比較例3は、「増粘効果の発現速度」の項目において、混合物の最終的な粘度が低いため、各実施例と比較して評価が低い結果となった。第1剤中に(D)デンプンを含有しない比較例4は、「増粘効果の発現速度」の項目において、混合物の最終的な粘度が低いため、各実施例と比較して評価が低い結果となった。また、比較例4は、「粘度安定性」の項目において、経時的に粘度が徐々に低下し続けるため、各実施例と比較して評価が低い結果となった。
【0085】
(試験例2)
表3に示す各成分を含有する毛髪脱色剤の粉末状の第1剤及び乳液状の第2剤を調製した。表3における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。そして、第1剤と第2剤とを1:4の質量比で図1に示される閉塞可能容器内に投入し、閉塞可能容器内を密閉した状態で20〜30回程度振って、混合することにより、泡状の毛髪脱色剤を調製した。得られた毛髪脱色剤について、以下に示す方法により増粘効果の発現速度及び粘度安定性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0086】
<増粘効果の発現速度の測定及び評価>
混合して得られた泡状の毛髪脱色剤の粘度について、第1剤及び第2剤の混合から3分後に手で持ち上げたときの垂落ちの程度を専門のパネラー5人により評価した。表3中の「増粘効果の発現速度」欄において、“5”は、第1剤及び第2剤の混合から3分後のときの垂落ちが全くなく増粘の発現が非常に優れることを示し、“4”は、垂落ちがほとんどなく優れることを示し、“3”は、垂落ちがあまりなく良好であることを示し、“2”は、垂落ちがありやや悪いことを示し、“1”は、垂落ちが多く悪いことを示す。
【0087】
<粘度安定性>
第1剤及び第2剤を混合して5分後に泡を手で持ち上げたときの垂落ちの度合いと、第1剤及び第2剤を混合して25分後に泡を手で持ち上げたときの垂落ちの度合いの違いを専門のパネラー5人により評価した。
【0088】
表3中の「粘度安定性」欄において、“5”は、第1剤及び第2剤の混合から5分後と25分後のときの垂落ちに違いがなく非常に優れるであることを示し、“4”は、垂落ちに違いがほとんどなく優れることを示し、“3”は、垂落ちに違いがあまりなく良好であることを示し、“2”は、垂落ちに違いがありやや悪いことを示し、“1”は、垂落ちに違いが明らかにあり悪いことを示す。
【0089】
【表3】

表3に示されるように、第1剤中に(A)アニオン性界面活性剤、(C)増粘剤、及び(D)デンプンを配合し、第2剤中に(B)カチオン性界面活性剤を配合することにより構成した実施例25は、「増粘効果の発現速度」及び「粘度安定性」の各項目において良好な結果が得られた。つまり、使用時の剤型が泡状の場合も「増粘効果の発現速度」及び「粘度安定性」に優れることが分かった。
【0090】
表3に示されるように、第2剤中に(B)カチオン性界面活性剤の代わりにアニオン性界面活性剤を含有する比較例5は、各実施例と比較して「増粘効果の発現速度」の項目において評価が低いことが分かった。比較例5は、「粘度安定性」の項目において、経時的に泡が硬くなるため、各実施例と比較して評価が低い結果となった。
【0091】
第1剤中に(C)増粘剤を含有しない比較例6は、「増粘効果の発現速度」の項目において、混合物の最終的な粘度も低いため、各実施例と比較して評価が低い結果となった。
第1剤中に(D)デンプンを含有しない比較例7は、「粘度安定性」の項目において、経時的に粘度が徐々に低下し続け、液の垂れ落ちが増加するため、各実施例と比較して評価が低い結果となった。
【0092】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(イ)前記毛髪化粧料組成物中における(D)デンプンの含有量は、2〜10質量%であることを特徴とする前記毛髪化粧料組成物。
【0093】
(ロ)前記毛髪化粧料組成物中における(C)増粘剤の含有量に対する(D)デンプンの含有量の質量比は、1〜5であることを特徴とする前記毛髪化粧料組成物。
(ハ)前記各請求項に記載される毛髪化粧料組成物と該毛髪化粧料組成物を使用時に発泡させるための発泡用具を備える毛髪化粧用品。(ハ)の構成によれば、使用時に簡便に毛髪化粧料組成物を調製することができる。
【符号の説明】
【0094】
10…毛髪脱色・脱染剤、11…第1剤、12…第2剤、13…混合物、14…泡状の毛髪脱色・脱染剤、20…密閉可能容器、21…容器本体、22…蓋体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アニオン性界面活性剤、(B)カチオン性界面活性剤、(C)増粘剤((D)デンプンを除く)、及び(D)デンプンを含有し、染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として用いられる毛髪化粧料組成物において、
前記(D)デンプンは、固体状で保存されるとともに、前記(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤を、使用時に溶媒存在下で接触させるように、保存することを特徴とする毛髪化粧料組成物。
【請求項2】
前記毛髪化粧料組成物は、2剤式以上に構成され、前記(A)アニオン性界面活性剤及び(B)カチオン性界面活性剤は、それぞれ別剤として保存されることを特徴とする請求項1に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項3】
前記毛髪化粧料組成物中における(D)デンプンの含有量は、0.1〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪化粧料組成物。
【請求項4】
前記毛髪化粧料組成物中における(C)増粘剤の含有量に対する(D)デンプンの含有量の質量比は、0.1〜20であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−93823(P2011−93823A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247092(P2009−247092)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】