説明

毛髪用外用剤

【課題】損傷を受けた毛髪に対して補修・改善するための毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】 生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとセラミドとを毛髪化粧料に含有させる。前記生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーは、ポリメタクロイルリジン、ポリメタクロロイルオキシエチルホスホリルコリン、グルコシルエチルメタアクリレートから選ばれるいずれか1種であることが好ましく、前記セラミドは、セラミドタイプ1からセラミドタイプ7の7種のセラミドから選ばれるいずれか1種であることが好ましい。かかる毛髪用の化粧料は、損傷した毛髪の補修・改善効果を有し、該損傷した毛髪の補修・改善効果はが、セラミドが損傷した毛髪内部へ吸着することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷を受けた毛髪を補修・改善する効果を有する毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は紫外線、乾燥などの外部環境により損傷するだけでなく、近年、ヘアスタイルの多様化により、ブリーチ剤、染毛剤、パーマネント剤の使用頻度が増加し、毛髪がダメージを受ける機会は増えている。このような毛髪の損傷は切れ毛、枝毛などに進行し、これらを補修、改善する方法が望まれ、種々の検討が行われてきた。
【0003】
毛髪の損傷を和らげ、補修、改善する方法として、塩基性アミノ酸を配合し、毛髪の摩擦を低下させる技術(特許文献1)やシリコーンやカチオン性界面活性剤などを配合した毛髪化粧料により摩擦係数を低減する方法などがある(特許文献2)。また、毛髪の表面のF層は、損傷を受けると脂肪酸が失われ、摩擦係数が大きくなり手触りが悪く、硫黄含有化合物による改善も検討されている(特許文献3)。
【0004】
また、毛髪が損傷を受けると毛髪中のステロール類、セラミド類及びアンテイソ分岐脂肪酸などが失われることが知られており、毛髪のダメージを修復するため、ステロール類、セラミド類及びアンテイソ分岐脂肪酸などの脂質を配合した毛髪化粧品が開発されてきたが、毛髪内部に十分に到達させることは難しく、種々の改良が行われてきたものの十分ではない。
【0005】
一方、毛髪の表面を整える方法として、被膜形成ポリマーとしてアクリル系ポリマーが用いられ、ヘアスプレーなどに配合されている(特許文献4)。さらにアクリル系ポリマーのうち生体類似部分構造を有するものが、皮膚に対して親和性が高く、皮膚の保護や改善に有効であることが知られている(特許文献5)。
【0006】
また、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとセラミド類縁物質は、生体への移行性、親和性が高く、セラミド類縁物質による生体バリアー機能を向上させることが知られており、皮膚に適用することで肌荒れやシワの改善に有用であることが知られている(特許文献6)。しかしながら、毛髪にこれらを適用した場合にどのような効果があるかは全く知られていないし、試みられていない。
このように毛髪修復剤であるセラミドと生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーを配合することにより、毛髪修復剤の効果が高まることは知られていなし、全く試みられていない。また、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーによりセラミドが毛髪に移行した後、該ポリマーで毛髪表面が保護されることで、毛髪補修効果が高まることは当然知られていない。
【0007】
毛髪の損傷度の評価法としては、毛髪の近赤外吸収スペクトルを測定し、統計的処理を行うことで毛髪の内部、表面に分けて、損傷度合を判定する方法が知られており(非特許文献1)、この方法を用いて損傷部位への作用を把握することで損傷部位に合わせた毛髪化粧料を提供することは知られていなかった。これは毛髪内部のタンパクの流出を防ぐ素材や化粧料が知られていなかったためである。
【0008】
【特許文献1】特開平9−278630号公報
【特許文献2】特開2000−247841号公報
【特許文献3】特開2007−56010号公報
【特許文献4】特開平9−194338号公報
【特許文献5】WO00/32560号公報
【特許文献6】特開2003−192525号公報
【非特許文献1】Y.Miyamae et al., A non-destructive method for assessing hair interior and surface damage by near infrared spectroscopy, IFSCC Magazine, 9(3), 2-8(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、損傷を受けた毛髪の補修・改善する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、損傷を受けた毛髪の補修・改善する方法を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとセラミドを配合した毛髪化粧料により、セラミドが毛髪に吸着することで損傷により毛髪内部からのタンパクの流出を防ぎ、損傷部位を補修し、さらに生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーにより被覆しその部分を保護することにより、該セラミドが毛髪から剥離しないようにすることで損傷した毛髪のタンパク量を増加させ健康な毛髪に近い状態に補修・改善が可能であることを見いだした。損傷した毛髪の評価法としては、毛髪を還元剤及び酸化剤で処理し、その処理回数や剤の濃度により損傷度の異なる毛髪を作製し、これを近赤外吸収スペクトルを測定し、統計的な処理を行うことで得られる2つの成分を軸とする座標平面の位置から、該処理剤による処理前後の毛髪内部と毛髪表面の変化から損傷による座標位置の変化を把握した後、評価すべき毛髪の損傷の特徴を前記評価法で調べることにより、毛髪内部乃至表面のどちらが損傷を受けやすいか把握し、最適な毛髪化粧料提供できることを見いだし、実際に該の最適な毛髪化粧料を使用することで毛髪の損傷が改善されたかを前記評価法で確認できることを見いだした。
この知見を基に、本発明者らは、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとセラミドを配合した毛髪化粧料により、毛髪の内部及び表面の補修・改善が可能であることを見いだし発明を完成させるに至った。即ち、本発明は以下に示す通りである。
【0011】
(1)生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとセラミドを含有することを特徴とする毛髪化粧料。
(2)生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーが、ポリメタクロイルリジン、ポリメタクロロイルオキシエチルホスホリルコリン、グルコシルエチルメタアクリレートから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする、(1)に記載の毛髪化粧料。
(3)セラミドが、セラミドタイプ1からセラミドタイプ7の7種のセラミドから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする、(1)乃至(2)に記載の毛髪化粧料。
(4)損傷した毛髪の補修・改善効果を有することを特徴とする、(1)乃至(3)に記載の毛髪化粧料。
(5)損傷した毛髪の補修・改善効果が、セラミドが損傷した毛髪内部へ吸着することを特徴とする、(1)乃至(4)に記載の毛髪化粧料。
(6)した毛髪の補修・改善効果が、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーの損傷した毛髪内部へのセラミド吸着後の毛髪からセラミドの剥離防止効果によることを特徴とする、(1)乃至(5)に記載の毛髪化粧料。
(7)損傷の度合が異なる毛髪の4500から5060cm-1における近赤外吸収スペクトルを測定し、吸収スペクトルを統計的な処理を行った後、この値と波長から行列を作成し、主成分分析により第一主成分、及び第一主成分と直交する第二主成分を算出し、該2主成分を縦軸と横軸とする座標平面を作成し、該座標平面上に第一主成分値と第二主成分値からプロットすることにより、毛髪の損傷状態による該座標平面上のプロット位置の変化を確認する。しかる後、前記座標平面を用いて(1)乃至(6)の毛髪化粧料により上記の評価すべき毛髪を処理した後に上記の統計的処理により得られた値をプロットすることで、毛髪化粧料による処理前後の座標平面上の位置の変化から毛髪中のタンパクが流出し、流出した損傷部位が第一主成分軸対して損傷度の小さいプロットに近づいた場合は毛髪内部のタンパクの流出の改善、第二主成分軸対して近づいた場合は毛髪表面の改善と鑑別することを特徴とする、毛髪化粧料の評価法において、毛髪内のタンパクの流出を改善する作用を認めることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の毛髪化粧料。
(8)損傷の度合が異なる毛髪の4500から5060cm-1における近赤外吸収スペクトルを測定し、吸収スペクトルを統計的な処理を行った後、この値と波長から行列を作成し、主成分分析により第一主成分、及び第一主成分と直交する第二主成分を算出し、該2主成分を縦軸と横軸とする座標平面を作成し、該座標平面上に第一主成分値と第二主成分値からプロットすることにより、毛髪の損傷状態による該座標平面上のプロット位置の変化を確認する。しかる後、毛髪のNIRを測定し、該座標平面にプロットし、毛髪内部のタンパクの流出が起こっていると鑑別された人に、(1)〜(7)何れか1項に記載の化粧料を勧めることを特徴とする、毛髪化粧料の選択方法。


【発明の効果】
【0012】
本発明により損傷を受けた毛髪に対して補修・改善するための毛髪化粧料を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は毛髪の損傷最初に損傷度の異なる毛髪を作製し、近赤外吸収スペクトルを測定し、統計的処理を行い、得られた主成分のうち毛髪の内部及び表面の損傷度合と相関する2つの主成分を座標平面上の2軸にとり、損傷度と座標位置の確認を行う。その後、評価すべき毛髪について損傷前、並びに還元剤及び酸化剤による損傷処理後の前記主成分軸での変化から、毛髪内部及び表面の損傷の受けやすさなどを把握し、毛髪の損傷部位の特徴にあわせ毛髪化粧料を提供する。
【0014】
損傷度の異なる毛髪は、パーマ剤などの還元剤及び酸化剤を含む毛髪処理剤で毛髪を処理し毛髪内部を損傷させ、還元剤の濃度により損傷度の異なる毛髪を作製する。同様に毛髪表面の損傷を把握するため、酸化剤で毛髪を脱色処理して表面に損傷を与え、酸化剤による処理回数が多いほど損傷度が高いとし、前記解析結果から得られる損傷度の異なる毛髪の平面上の位置と損傷度との関係を把握する。
【0015】
評価すべき毛髪を還元剤、酸化剤で処理し、前記の統計処理から主成分PC1,PC2を2軸とする平面にプロットし、前記の損傷度の異なる毛髪のプロットから内部が損傷を受けていると判断された場合は内部補修に有効な毛髪化粧料を、表面が損傷を受けている場合は表面補修に有効な毛髪化粧料を提供する。
【0016】
毛髪内部補修に有効な毛髪化粧料としては、セラミドを含む毛髪化粧料を提供できる。セラミドはセラミドタイプ1からセラミドタイプ7の7種のセラミドが存在し、いずれのセラミドでも効果が期待できるが、セラミドタイプ2及びセラミドタイプ3が好ましい。このとき、毛髪化粧料のセラミドの含有量としては0.01〜5.0%がよく、さらに0.1〜0.5%が好ましい。提供した毛髪化粧料の処理前後でPC1とPC2を2軸とする平面におけるプロットが損傷処理する前の状態に近づく方向に変化した場合は毛髪化粧料の効果があり、損傷により流出するタンパクが抑制されたものとし、PC1が改善方向に変化した場合は毛髪内部が改善され、PC2が改善方向に変化した場合は毛髪表面が改善されたと判断できる。
【0017】
毛髪表面補修に有効な毛髪化粧料としては、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーを含む毛髪化粧料を提供できる。生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとしては、ポリメタクロイルリジン、ポリメタクロロイルオキシエチルホスホリルコリン、グルコシルエチルメタアクリレートのアミノ酸ペンダント型ポリマーを含有する毛髪化粧料を提供することにより、毛髪表面の皮膜効果により毛髪表面からのタンパクの流出を防ぐことが出来る。加えて、毛髪内部より、タンパクが流出した損傷毛髪に作用させることにより、内部のタンパク量を増加せしめ、損傷から回復せしめる作用も有する。これらのアクリル系ポリマーとしては、0.0001〜1.0%を含有したものを提供できるが、好ましくは0.0005〜0.5%の含有が望ましい。このとき、0.0001%よりも少量では毛髪表面補修効果が低く、逆に1.0%以上では著しくごわつき感触が悪いことがわかっている。以下に、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーについての詳細を記す。
【0018】
ここで、アクリル系ポリマーとは、アクリル酸乃至はメタクリル酸、これらのアミド及びこれらのエステルから選択されるモノマーを構成モノマーとする、ポリマー乃至はコポリマーの総称を意味し、前記アミド残基乃至はエステル残基は、置換基を有することが出来、該置換基としては、糖残基、アミノ酸残基、ホスホリルコリンなどの生体構成物質に由来する置換基であることが好ましい。この様なモノマーは、公知の方法によって調整することが出来、例えば糖残基であれば、糖とクロロエタノールなどの多価アルコールのハロゲン化物を酸化銀などの触媒存在下、アルカリにより縮合せしめヒドロキシエチル基をアノマーに導入し、このヒドロキシ基とアクリル酸乃至はメタクリル酸とをエステル化し所望のモノマーに導くことが出来る。アミノ酸残基であれば、アクリル酸乃至はメタクリル酸を塩化チオニルなどにより酸クロリドへ導き、アミノ酸とアルカリ存在下縮合せしめ、酸アミド結合を構築することによりアミド型の所望のモノマーを得ることが出来る。ホスホリルコリンなどのようなリン脂質類似構造は、ホスホリルコリンとクロロエタノールをアルカリ存在下縮合せしめ、ヒドロキシエチルホスホリルコリンとなし、このものとアクリル酸クロリド乃至はメタクリル酸クロリドとアルカリ存在下縮合させることにより、所望のモノマーを得ることが出来る。
【0019】
斯くして得られた生体疑似構造を有するモノマーはそれら自身を重合させることにより、或いは、任意のモノマーとともに重合させることにより、ポリマー乃至はコポリマーへと誘導することが出来る。かかる重合は、アゾビスブチロニトリル等の重合開始剤の存在下常法に従って行えばよい。前記任意のモノマーとしては、重合可能なモノマーであれば特段の限定はないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル等のアクリル酸乃至はメタクリル酸のアルキルエステル、ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルアルコールのアルキルエーテル、酢酸ビニルなどのビニルアルコールのカルボン酸エステル、スチレン、α−メチルスチレンなどのアリール化合物等が好適に例示できる。具体的には、ホモポリマーとしては、ポリメタクリロイルリジン、ポリメタクリロイルグリシンなどのアミノ酸ペンダント型ポリマー、ポリグルコシルエチルメタクリレート、ポリグルコシルエチルアクリレートなどのグルコシド型ポリマー、ポリメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンなどのホスホリルコリニルエチルエステルなどが好適に例示できる。又、コポリマーとしては、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・アクリル酸ブチルコポリマー、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチルコポリマー、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・アクリル酸ステアリルコポリマー、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ステアリルコポリマーなどが好適に例示できる。これらの中では、ポリメタクロイルリジン、ポリメタクロロイルオキシエチルホスホリルコリン、グルコシルエチルメタアクリレートが特に好ましく、中でも、ポリメタクリロイルリジンが取り分け好ましい。これは前記毛髪内タンパク増加効果に優れるためである。
【0020】
前記のセラミド及び生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーを含有する毛髪化粧料としては、毛髪化粧料であれば特段の限定はなく、例えば、トニック、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアパックヘアクリームが好適に例示でき、特にリンス・コンディショナー・トリートメント・ヘアパックが好ましい。これは損傷に対して初期に使用する化粧料であり、本発明の毛髪化粧料の毛髪内タンパク増加効果が特に効果的に実現できるためである。
【0021】
この様な本発明の毛髪用の化粧料に於いては、前記の成分以外に、通常毛髪用の化粧料で使用される任意の成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジメチルジステアリルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。中でも特に好ましい成分としては、カチオン界面活性剤が例示でき、中でも、一分子中に二個の長鎖アルキル基を有する、塩化ジメチルジステアリルアンモニウムなどの、所謂、二鎖型カチオン界面活性剤が好ましく、かかる成分の好ましい含有量としては、化粧料総量に対して、0.01〜1質量%が好ましく例示でき、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。これはかかる成分と、セラミドとの組合せにより、優れた保護被膜を毛髪表面上に構築するためである。
【0022】
以下に、実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がかかる実施例にのみ限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
以下に示す処方に従って、本発明の毛髪化粧料であるリンスを作成した。処方成分を80℃で加熱・攪拌し、均質にし、これを攪拌冷却して、本発明の毛髪用の化粧料である、化粧料Bを得た。比較のために、化粧料Bのポリメタクリロイルリジンを水に置換した比較のための化粧料である化粧料Aも同様の操作で作成した。
【0024】
【表1】

【0025】
非特許文献1(Y.Miyamae et al., A non-destructive method for assessing hair interior and surface damage by near infrared spectroscopy, IFSCC Magazine, 9(3), 2-8(2006))の方法に従って、同質の毛髪を用意し、評価のための座標平面の作成を行った。即ち、毛髪は、化学処置の種類及び化学処置剤の濃度又は回数によって調整した4種を用いた。化学処置の種類としては、パーマ処置、ブリーチ処置、を選択した。化学処置剤の濃度又は回数は、パーマ処置ではチオグリコール酸アンモニウム5%と10%を、ブリーチ処置では、3%過酸化水素及び3%アンモニアを含むブリーチ処置剤で処置1回と3回を行った。前記化学処置を行い、40℃乾燥機で乾燥後、20℃一定環境下で、近赤外分光分析計(NIR)測定を行った。測定波長は、5060〜4500cm−1を用い、NIR測定の際は、処置のばらつきを考慮に入れ、1束につき毛束を回転させ6〜10ヶ所を測定した。未処置及び各種化学処置等によって得られた近赤外吸収スペクトルについて、統計的処理ソフトのピロエット(ジーエルサイエンス(株))を用いて、主成分分析を行った。この主成分分析で得られた第一主成分をX軸とし、第二主成分をY軸として、各処理毎にプロット行った。X軸方向の変化は毛髪内部のタンパク質量の変化を示し、Y軸方向の変化は毛髪表面のタンパクの変化に由来することが非特許文献1には開示されている。
【0026】
前記と同様に未処理の毛髪を、5%パーマ処理を5回、ブリーチ処理5回を行い、ダメージヘアモデルを作成した。ダメージヘアモデルのNIRを測定し、前記座標平面上にプロットした後、ダメージヘアモデルを2分割し、1方は、化粧料Aを一様に塗布し、5分おいて洗い流す処置を行い、他方は化粧料B(表1)で同様の処置を行った。40℃乾燥機で乾燥後、20℃一定環境下でNIRを測定した。結果を図1に示す。化粧料Aによる処理は、X軸方向には殆ど動かないが、Y軸方向で正常毛髪に近づく方向で動いており、毛髪表面の修復が為されていることが示唆され、化粧料Bによる処理は、Y軸方向の変化は化粧料Aと同様であるが、それに加えて著しくX軸方向で正常毛髪に接近する方向で動いており、毛髪内部のタンパク質量を回復せしめていることが分かった。
【0027】
この結果より、セラミドと、生体類似構造を部分構造に有するアクリル系ポリマーとを組み合わせて含有する毛髪用の化粧料には、損傷毛髪の内部のタンパク量を増加せしめる作用が存し、セラミド含有の毛髪化粧料には内部タンパクの減少抑制作用が存することが分かり、同類の毛髪化粧料であり、含有成分が似ていながら、その作用機作は全く異なることが判明した。これより、前記のNIRを用いた方法で毛髪の損傷パターンを判別することにより、毛髪内部タンパクを増加せしめる、本発明の化粧料Bの様な毛髪化粧料を選択すべきか、毛髪表面保護効果を有する化粧料Aを選択すべきかを的確にアドバイスできることも分かる。化粧料Aと、化粧料Bの機作の差は、例えば、使用感などの官能評価において、毛髪表面の平滑度や毛髪水分量の向上、評価能力に優れたパネラーのアンケート調査により簡略的に検知することも出来る。毛髪の平滑度は、摩擦感テスターを用い、縦10cm・横4cmの短冊状にした毛髪束の表面を5回測定して平均したのち、健常毛髪との差を表した。毛髪水分量は、毛髪表面のインピーダンスから水分量を算出する測定器を用い、平滑度の測定に用いたものと同様の毛束で、5回測定して平均したのち、健常毛髪との差を表した。アンケート調査は、使用感を5段階のレベルに分類して評価した。結果を表2に示す。この様に、毛髪内部のタンパク量を増大させる作用を有する本発明の毛髪用の化粧料は、これまでにない優れた化粧効果を有するものであることが分かる。
【0028】
毛髪化粧料による洗髪後の風合い・感触について、質問票を用いてアンケート調査を行い、非常に良いから非常に悪いまでの5段階評価を実施した。
【表2】

【実施例2】
【0029】
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明の化粧料であるリンス化粧料を得た。このものも化粧料Bと同様に優れた毛髪改善効果を有していた。
【0030】
【表3】

【実施例3】
【0031】
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明の化粧料であるヘアパック化粧料を得た。このものも化粧料Bと同様に優れた毛髪改善効果を有していた。
【0032】
【表4】

【実施例4】
【0033】
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明の化粧料であるヘアパック化粧料を得た。このものも化粧料Bと同様に優れた毛髪改善効果を有していた。
【0034】
【表5】

【実施例5】
【0035】
以下に示す処方に従って、実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明の化粧料であるヘアパック化粧料を得た。このものも化粧料Bと同様に優れた毛髪改善効果を有していた。
【0036】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとセラミドを配合した毛髪化粧料により、セラミドが毛髪に吸着することで損傷により毛髪内部からのタンパクの流出を防ぎ、損傷部位を補修し、さらに生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーにより被覆しその部分を保護することにより、該セラミドが毛髪から剥離しないようにすることで損傷した毛髪のタンパク量を増加させ、健康な毛髪に近い状態に補修・改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】セラミド、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーの単独あるいは併用時のNHの近赤外吸収スペクトルの変化を示す図である。
【図2】化粧料A及び化粧料B使用後の毛髪の平滑度測定機器を用いて測定した損傷していない状態を100としたときの平滑度の相対改善度、並びに水分計を用いた水分量の損傷していない状態を100としたときの水分量の相対水分改善度を示す図である。
【図3】損傷度の異なる毛髪、並びに損傷した毛髪をセラミド、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーの単独あるいは併用した毛髪化粧料で処理し、近赤外吸収スペクトルを測定した後、これを統計処理して得られた2つの主成分を平面座標上にプロットした図である。
【図4】セラミド及び生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーを含有する毛髪化粧料として、リンス剤あるいはトリートメント剤として使用した時のNHの近赤外吸収スペクトルの変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーとセラミドを含有することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】
生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーが、ポリメタクロイルリジン、ポリメタクロロイルオキシエチルホスホリルコリン、グルコシルエチルメタアクリレートから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
セラミドが、セラミドタイプ1からセラミドタイプ7の7種のセラミドから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする、請求項1乃至請求項2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
損傷した毛髪の補修・改善効果を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項3に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
損傷した毛髪の補修・改善効果が、セラミドが損傷した毛髪内部へ吸着することを特徴とする、請求項1乃至請求項4に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
損傷した毛髪の補修・改善効果が、生体類似部分構造を有するアクリル系ポリマーの損傷した毛髪内部へのセラミド吸着後の毛髪からセラミドの剥離防止効果によることを特徴とする、請求項1乃至請求項5に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
損傷の度合が異なる毛髪の4500から5060cm-1における近赤外吸収スペクトルを測定し、吸収スペクトルを統計的な処理を行った後、この値と波長から行列を作成し、主成分分析により第一主成分、及び第一主成分と直交する第二主成分を算出し、該2主成分を縦軸と横軸とする座標平面を作成し、該座標平面上に第一主成分値と第二主成分値からプロットすることにより、毛髪の損傷度合による該座標平面上のプロット位置の変化を確認する。しかる後、前記座標平面を用いて請求項1乃至請求項6の毛髪化粧料により上記の評価すべき毛髪を処理した後に上記の統計的処理により得られた値をプロットすることで、毛髪化粧料による処理前後の座標平面上の位置の変化から毛髪中のタンパクが流出し、流出した損傷部位が第一主成分軸対して損傷度の小さいプロットの方向に近づいた場合は毛髪内部のタンパクの流出の改善、第二主成分軸対して損傷度の小さいプロットの方向に近づいた場合は毛髪表面の改善と鑑別することを特徴とする、毛髪化粧料の評価法において、毛髪内のタンパクの流出を改善する作用を認めることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項に記載の毛髪化粧料。
【請求項8】
損傷の度合が異なる毛髪の4500から5060cm-1における近赤外吸収スペクトルを測定し、吸収スペクトルを統計的な処理を行った後、この値と波長から行列を作成し、主成分分析により第一主成分、及び第一主成分と直交する第二主成分を算出し、該2主成分を縦軸と横軸とする座標平面を作成し、該座標平面上に第一主成分値と第二主成分値からプロットすることにより、毛髪の損傷状態による該座標平面上のプロット位置の変化を確認する。しかる後、毛髪のNIRを測定し、該座標平面にプロットし、毛髪内部のタンパクの流出が起こっていると鑑別された人に、請求項1〜7何れか1項に記載の化粧料を勧めることを特徴とする、毛髪化粧料の選択方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−255030(P2008−255030A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97093(P2007−97093)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】