説明

毛髪用組成物

【課題】人工的に染色された毛髪の色保持性を向上させる毛髪用組成物及び毛髪色保持性向上方法を提供する。
【解決手段】シリコーン−ポリウレタンポリマー、エステル及びフルオロシリコーンを含有する毛髪用組成物が人工的に染色された毛髪の色保持性を向上させるのに役立つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には毛髪のための組成物に関する。特に、本発明は、人工的に染め上げた毛髪の褪色を改善するための、及び/または毛髪の輝きと手触りを向上させる被膜を付与するための化粧用の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者は、毛髪のようなケラチン繊維の発生を助長し、及び/または制限するための多数の化粧用のそして個人用の手入れ用組成物を活用してきた。1つの一般的な例は、化学的な染料を用いた毛髪の人工的な染色である。例えば、毛髪は直接染料または「永久的な」髪染め料としても知られる酸化性染料を用いて、望みの色を得るために手入れされる。
【0003】
人工的な毛髪の色、特に化学的染料による毛髪の手入れで得られた赤色系の色は、シャンプーと洗髪を繰り返すことによって急速に色褪せることが技術的に知られている。毛髪を染色するために用いられる化学的染料は、毛髪のケラチン繊維の多孔性を増加する傾向がある。多孔性の増加は、表面積の増加をもたらし、毛髪の繊維を透過する液体(例えば、水)の流れを増加させ、化学的染料の分子が毛髪から漉される速さを増加させる。人工的に染色された毛髪は、ほんの少しだけの洗髪の後ですら、根本的な褪色を示すものと考えられる。特には、20%を超える人工的な髪色が、最初の5回の洗髪によって失われることが示されている。
【0004】
近年最も利用される毛髪用製品(例えば、コンディショナー、ヘアジェル、ヘアスプレー)は、特に親水性の組成物として形成されている。このような毛髪製品は、容易に水を用いて除去され、シャンプーを加えてまたは加えないで、毛髪の繊維を水に直接接触する状態におき、それ故に化学的な染料の分子が毛髪から除去されるのを許してしまう。例えば、米国特許第6,706,674号には、ビニル共重合体及びノナクエオス(nonaqueous)溶剤からなる整髪組成物が記載されている。ノナクエオス溶剤は、ポリ水酸化C−Cアルコールを含有している。整髪組成物のあるものは、粘度調整剤としてトリイソステアリル・トリリノレート(トリリノール酸トリイソステアリル)を、及び/または柔軟剤としてフルオロ・C2−8アルキルジメチコーンを含有していると言われている。
【0005】
最近の人工的染色毛髪の色保持の向上及び/または褪色の減少のための進歩は、色保護剤の使用を含むまでになっている。典型的には、これらの色保護剤は乳化、溶解またはその他の方法によって毛髪用組成物に含有させることができ、そのような毛髪用製品組成物に匹敵するまでになっている。色保護剤には、穏やかな界面活性剤、カチオン性コンディショニング剤、アミノ機能性シリコーン、紫外吸収剤、澱粉または砂糖界面活性剤が含まれる。
【0006】
例えば、米国特許第5,922,310号には、人工的毛髪染料の褪色を阻害し、及び/または毛髪の酸化を遅らせる、カチオン性の反酸化性のフェノールを含有する組成物が記載されている。
【0007】
また、米国特許第6,129,909号及び米国特許第6,180,091号には、光沢及び/または髪色の安定性を付与するための、ナフタレンジカルボン酸のジエステルまたはポリエステルを含有する毛髪用組成物が記載されている。ナフタレンジカルボン酸は、光安定特性を付与するために、毛髪用組成物の水相に混合することができると言われている。
【0008】
また、米国特許第5,045,307号には、太陽の紫外線に曝されることにより起こる褪色を低減するための、毛髪の根本的なキャリア組成物と容易に結合する水不溶性のベンゾフェノン化合物の効果的な量を含む毛髪取り扱い組成物の効果的な量の塗布による、染めた毛髪の取り扱い方法が記載されている。
【0009】
また、米国特許第6,143,286号には、カチオン性コンディショニング要素、脂肪族アルコール、非イオン性界面活性剤及び二官能基及び三官能基の両方を有し、含有比が全ての三官能基に対して二官能基が約10から80である特別なシロキサンポリマーを含有するヘアコンディショニング組成物が記載されている。
【0010】
また、米国出願公開公報2005/0188481には、少なくとも1つのアミロースを含有する澱粉を含む組成物と、人工的に染めた毛髪の色の耐久性及び安定性の拡大と向上のためのその使用について記載されている。
【0011】
数多くの毛髪染料製造者が、新たに人工染色した毛髪の、最初のシャンプーの後に使用される「色封止」コンディショナーの中に、色保護剤を混入してきた。しかしながら、このようなコンディショナーの使用は、最初のシャンプーの間における色保持の向上及び/または褪色の低減をもたらすことはできない。最初のシャンプーの間には、新たに人工染色した毛髪は、水またはシャンプーから保護されない。その結果、多くの量の化学的染料の分子がこのときに毛髪から分離され得るため、色保護剤が塗布される前に新たに人工染色した毛髪からの根本的な量の褪色をこうむることになる。
【0012】
色保護剤の進歩にも関わらず、この技術分野においては、人工染色した毛髪の色保持性の向上及び/または褪色の低減の必要性が依然として存在している。それゆえに、人工染色した毛髪の向上した色保持性及び低減した褪色性をもたらす組成物及び方法のための発明が目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,706,674号
【特許文献2】米国特許第5,922,310号
【特許文献3】米国特許第6,129,909号
【特許文献4】米国特許第6,180,091号
【特許文献5】米国特許第5,045,307号
【特許文献6】米国特許第6,143,286号
【特許文献7】米国出願公開公報2005/0188481
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した目的及びその他にしたがって、本発明は人工染色した毛髪の向上した色保持性及び低減した褪色性をもたらす組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の1つの視点においては、染色した毛髪の色保持性の向上のための毛髪用組成物は、適当な媒体中に、(1)シリコーン−ポリウレタンポリマー、(2)膜形成エステル、(3)フルオロシリコーン、の少なくとも2つを、好ましくは3つ全てを有する。多くの実施例の中で、シリコーン−ポリウレタンとしては、ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体、及び/または膜形成エステルとしては、トリイソステアリル・トリリノレート、及び/またはフルオロシリコーンとしては、パーフルオロノニル・ジメチコーンが挙げられる。媒体としては、好ましくは、シリコーン−ポリウレタンポリマー、膜形成エステル、及びフルオロシリコーンが分散可能で、しかし溶解しないものがよい。このような媒体の一例としては、水及び、カチオン系の増粘剤のような増粘剤、を含有する水性の系がある。
【0016】
本発明の他の視点としては、染色した毛髪の色保持性を向上させる方法として、発明された組成物のいずれかの染色した毛髪への塗布を含む方法が提供される。組成物は、湿った毛髪または乾いた毛髪に塗布され、染色の後直ちに、染色の後に最初の洗髪(シャンプー)に先だって、または第1の、第2の、若しくは第3の洗髪の後でさえも、褪色に対する抵抗性がまだ保たれているうちであればよい。
【0017】
本発明のこれらの及び他の視点は、詳細な実施の形態及び実施例を含む以下の本発明の詳細な説明を読んだ後に、この技術分野の技術者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の発明の説明において用いられる用語は、特に断りのない限り、それらの本来の意味に及び学術的な特別な意味に理解されるべきである。ここで用いられる全ての重量百分率は、特に示さない限り、合計の組成物の「重量による%」を意味している。
【0019】
用語「毛髪」は、体の全ての部分の毛を対象とし、頭皮の毛、まつげ、口ひげ、あごひげ、その他を含む。適した用途としては、この組成物は頭皮の毛に塗布される。
【0020】
本発明は、その一部は、膜形成エステルであるトリイソステアリル−トリリノレートが、特にシリコーンポリウレタンポリマー及び/またはフルオロシリコーンと組み合わせることによって、強靱で水と界面活性剤に耐性のある膜を形成することの発見に負うものである。この発明的な組み合わせは、特にシャンプーを繰り返した後に、人工的に染色した毛髪の効果的な色保持性と低減された褪色性をもたらした。さらに、この組み合わせは、毛髪に心地良い触感をも付与したのである。
【0021】
好ましい組成物は、一般的にシリコーン−ポリウレタンポリマー、膜形成の、疎水性のエステル、及び特に好ましいのは疎水性と疎油性の双方を備えたフルオロシリコーン、の組み合わせである。この新しい組み合わせは、人工的に染色された毛髪の向上した色保持性及び/または低減した褪色性を有することが見出された。
【0022】
いかなる理論によっても発明が制限されることを望むものではないが、発明的な組み合わせは、耐水性のフィルムをケラチン繊維の上に形成し、水及び/またはシャンプーに対する防御的なバリアとして機能し、その結果人工的に染色された毛髪の染料分子の保持性を向上させたものと信じられる。耐水性のフィルムは、水のみでは、またシャンプーによっても、容易に除去することができないし、それで化学的染料の分子が毛髪から離れる速度を遅らせたものと考えられる。
【0023】
発明的な組み合わせは、人工的に染色された毛髪に対して、向上した色保持性及び/または低減された褪色性を、シリコーン−ポリウレタンポリマー(a)とエステル(b)とフルオロシリコーン(c)の相対割合、すなわち比a:b:cのどんな範囲に亘っても、もたらすものと期待される。代表的には、a,b及びcは、約1から約50までの独立した範囲をとり、より代表的には約1から約25まで、通常は約1から約10までの範囲をとる。好ましくは、a,b及びcは、約1から約5までの独立した範囲をとり、より好ましくは約1から約3まで、さらに好ましくは約1から約2までの範囲をとり、中でもシリコーン−ポリウレタンポリマーとエステルとフルオロシリコーンの重量比は、約1:1:1から約10:1:10まで、より代表的には約1:1:1から約5:1:5まで、通常は約1:1:1の重量比をとる。
【0024】
これらの3つの主な成分の組み合わせは、それぞれの成分が独立しては、またはシリコーン−ポリウレタンポリマー、エステル若しくはフルオロシリコーンを欠く異なった同等の組成物では見られない恩恵をもたらすものと信じられる。
【0025】
本発明の組成物の幾つかの実施形態に関する最初の成分は、シリコーン−ポリウレタンポリマーである。シリコーン−ポリウレタンポリマーの特性に関しては基本的に何らの制限もなく、有機シロキサンユニットとウレタン結合を含有しているポリマーであれば、本発明の実施に用いることができると考えられる。
【0026】
1つの実施形態においては、シリコーン−ポリウレタンポリマーは、ヒドロキシル官能基化ポリオルガノシロキサンの反応生成物であり、好ましくは2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を有し、半分はジイソシアネートである。ヒドロキシル官能基化ポリオルガノシロキサンは、代表的には式1の構造を有する。
【0027】
【化1】

【0028】
ここで、Rは水素、ヒドロキシル基、1から10までの炭素原子を有する適宜に置換された炭化水素基から選ばれ、特には、適宜に置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基から選ばれ、好ましくは、Rは適宜に置換された分岐した、直鎖の、または環状のC1−6のアルキルまたはアルケニル基から選ばれ、それらに限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ビニル、アリル、及びこれらの類似基を含み、またはC1−8のアリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基から選ばれ、それらに限定されるものではないが、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、及びこれらの類似基を含む。
【0029】
ここで、上述したR基のそれぞれは、1つまたはそれ以上のヘテロ原子で適宜置換されたものを含み、ヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、ハロゲン特にフッ素を含み、典型的な例としては、モノ−、ジ−、トリ−フルオロメチル、パーフルオロメチル、及び類似基のような、フルオロアルキル(パーフルオロアルキルを含む)基があり、また以下のような式で表されるアミノ置換C1−6のアルキル基、−(CH1−6−NR及び−(CH1−6−NR−(CH1−6−NRがある。ここで、Rは代表的にはハロゲンであるが、メチル、エチル、プロピル、及び類似基でもよく、ポリエーテル基、それらに限定されるものではないが、−(CHCHO)n−の式で表されるポリエチレンオキサイド基、−(CH(CH)CHO)n−の式で表されるポリプロピレンオキサイド基、そしてそれらの結合体を含み、さらにはアミノオキサイド、フォスフェイト、ヒドロキシル、エステル、及び/またはカルボキシレート活性基、及びそれらの類似基、または、ここでRは付加基−L−OHを含有する。
【0030】
ここで、Lは、結合基または環状基を表し、好ましくは、Lは、1から10までの炭素原子を有する二価の炭化水素から選ばれる環状基であり、二価のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキルから選ばれ、C1−10アルキル基に代表され、それらに限定されるものではないが、−(CH1−10−の式で表される二価の基、好ましくは−(CH1−6−を含み、そしてより好ましくは、Lは−CHCHCH−である。
【0031】
そして、ここでnは0から5,000までの整数であり、好ましくは1から200、より好ましくは10から100、さらに好ましくは10から50である。好ましくは、Rは少なくとも1つまたはそれ以上の場合にメチルを表し、より好ましくは、Rは全てメチルを表し、または基本的に全ての場合にメチルを表す。すなわち、Rは90%、95%、または98%より大きい確率でメチルを表す。
【0032】
本発明の1つの実施形態においては、ヒドロキシル官能基化ポリ有機シロキサンのプレポリマーは、ポリメチルシロキサンを含有し、式1aの構造を有する。
【0033】
【化2】

【0034】
ここで、L及びnは前述したように定義される。本発明の好ましい実施形態においては、ヒドロキシル官能基化ポリ有機シロキサンは、ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーンであり、ポリメチルシロキサンを含有し、式1bの構造を有する。
【0035】
【化3】

【0036】
ここで、nは上述したように定義される。
ジイソシアネートは、O=C=N−R−N=C=Oの式で表され、ここでRは1から20までの炭素原子を含む二価の炭化水素基であり、1つまたはそれ以上のヘテロ原子で適宜に置換されたものを含み、特にRは、適宜に置換され、分岐し、直鎖の、または環状のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、またはアリールアルキル基から選ばれ、それらに限定されるものではないが、
【0037】
【化4】

及びこれらの混合体、が含まれる。
【0038】
適切なジイソシアネートは、それらに限定されるものではないが、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(SMDI)、トルエンジイソシアネート、2,2’−MDI、2,4’−MDI及び4,4’−MDIを含むメチレンジフェニルジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート、及び類似化合物が含まれる。好ましい実施形態においては、ジイソシアネートとしては、SMDIが含まれ、本質的にSMDIからなり、またはSMDIからなる。
【0039】
ポリ有機シロキサン−ポリウレタンポリマーは、ヒドロキシル官能基化ポリ有機シロキサン及びジイソシアネートに起源を有する繰り返しユニットを含有し、AB交互共重合体の式を有し、ここでユニットAは式2の構造を有する。
【0040】
【化5】

【0041】
ここで、R、L及びnは、前に式1、1a、1bに関して定義された通りである。そして、ユニットBは、式3の構造を有する。
【0042】
【化6】

【0043】
ここで、Rは前に定義された通りであり、そしてユニットA及びBは、直線状の、分岐した、または環状の形状を取り得る。
【0044】
ポリマーが環状のポリマーである場合には、下記のように表すことができる。
【化7】

【0045】
ここで、zは2から2,000までの整数値である。ここでは、ポリ有機シロキサン−ポリウレタンポリマーが環状であるから、このポリマーの繁殖は自己終結性である。しかしながら、直線状ポリマーの場合には、終結は、例えば、高分子化反応が終了まで起こることが許されるならば、ジイソシアネートとの関係において、式1で示されるジヒドロキシルポリ有機シロキサンの理論的な過剰をもたらし、モノアルコールまたはアミン、例えばジアルキルアミン、によって反応を抑制し、モノ−ヒドロキシルポリ有機シロキサンのような式1の類似体である単官能基の反応体及び/または単官能基のイソシアネート反応体の反応混合物の量を増やし、またはその他の適当なウレタン重合反応の終結方法による。したがって、ポリ有機シロキサンポリマーは、多様な終端基を持つことになり、限定するものではないが、−L−OH基を含むヒドロキシル基、トリメチルシリル基を含むトリアルキルシリル基、直線状の、分岐した、または環状のアルキルまたはアリール基のような炭化水素、アミン、キャビノール、シラノール、及びそれらの類似化合物を含む。
【0046】
このポリマーは、また、分岐点またはグラフト点をポリ有機シロキサンの中に包含する。ここで、式1または式2のR基の1つまたはそれ以上が下記のような基である。
【0047】
【化8】

【0048】
ここで、Rは式1で定義した通りであり、そしてRは式3のユニットBにさらに結合する側鎖の−L−O−基を意味し、それは式2のユニットAにさらに結合し、それが続いていく、またはRは−L−OH、前に定義されたR基、または終端基を意味する。ポリ有機シロキサンがこの種の分岐点またはグラフト点を包含する場合には、それらはT−型またはQ−型の分岐またはグラフトを与える、ここでTは、Si原子の上の1つのR基だけが上に示したようなポリ有機シロキサン鎖であることを意味し、Qは、一対のR基の両方がポリ有機シロキサンであることを意味する。
【0049】
ポリ有機シロキサン−ポリウレタンポリマーは、また、官能基化イソシアネートプレポリマーからも作製することができる。例えば、イソシアネートプレポリマーは、下記の式4に示されるポリ有機シロキサンジイソシアネートのような、二官能基型または多官能基型ポリ有機シロキサンイソシアネートであり得る。
【0050】
【化9】

【0051】
ここで、R、R及びLは前に定義した通りであり、xは0から5,000までの整数であり、好ましくは1から200まで、より好ましくは10から100まで、さらに好ましくは10から50までである。このプレポリマーは、1つまたはそれ以上のR基において追加のイソシアネート含有基を導入することによって、多官能基型になる。イソシアネート官能基化ポリ有機シロキサンプレポリマーは、式1またはその多官能基型類似体のようなヒドロキシル官能基化ポリ有機シロキサンプレポリマーと反応する。式4に示されるようなプレポリマーは、代表的には約4,000から約15,000ダルトンまでの範囲を有する分子量を持っている。式1,1a,1bに示されるようなプレポリマーは、代表的には約250から約15,000ダルトンまでの範囲を有する分子量を持っている。
【0052】
現在好ましい実施形態においては、本発明の毛髪用組成物において用いられるポリ有機シロキサン−ポリウレタンポリマーは、式1bの化合物と飽和メチレンジフェニルジイソシアネート(SMDI)との反応生成物を含有する共重合体である。典型的なシリコーン−ポリウレタンポリマーは、ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体(化粧品類の国際命名法による呼称。以下、「INCI名」と略する。)である。
【0053】
本発明の組成物の幾つかの実施形態に関する第2の成分は、高分子量の疎水性エステルであり、毛髪に耐水性の疎水性膜を形成できるものである。疎水性エステルは、飽和または不飽和であり、限定するものではないが、脂肪酸のモノエステル、二塩基酸のジエステル、三塩基酸のジエステル、三塩基酸のトリエステル、が含まれる。モノエステルは、直鎖状の、分岐した、または環状のC−C24の、好ましくはC−C24の、より好ましくはC12−C22のモノカルボン酸と、直鎖状の、分岐した、または環状のC−C36の、好ましくはC−C24の、より好ましくはC12−C18のアルコールとのエステル化生成物を含む。ジエステルは、直鎖状の、分岐した、または環状のC−C48のジカルボン酸、代表的にはC−C44のジカルボン酸、より代表的にはC12−C36のジカルボン酸と、直鎖状の、分岐した、または環状のC−C36の、好ましくはC−C24の、より好ましくはC12−C28のアルコールとのエステル化生成物を含む。ジカルボン酸は、例えば、リノレン酸のような不飽和脂肪アルコールの二量化によって形成された二量化酸である。三塩基酸のジエステル及びトリエステルは、C−C72のトリカルボン酸、代表的にはC12−C66のトリカルボン酸と、C−C36の、好ましくはC−C24の、より好ましくはC12−C18のアルコールとのエステル化生成物を含む。トリカルボン酸は、例えば、リノレン酸のような不飽和脂肪アルコールの三量化によって形成された三量化酸である。
【0054】
このエステルは、好ましくは、分子量が少なくとも500であるという意味での高分子量エステルである。幾つかの実施形態においては、エステルの分子量は少なくとも750、少なくとも1000、または少なくとも1200である。このエステルは、好ましくは、疎水性である。本発明の好ましい実施においては、このエステルは媒体に分散可能であるが、溶解はしない。
【0055】
1つの適切な疎水性エステルは、トリイソステアリル・トリリノレート(INCI名)(CAS登録番号103213−22−5)であり、ルブリゾール・アドバンスド・マテリアル社から商品名SCHERCEMOL(登録商標)TISTエステルとして、入手可能である。
【0056】
本発明の組成物の幾つかの実施形態に関する第3の成分は、フルオロシリコーンであり、優れた塗布特性を付与できるものである。このフルオロシリコーンは、好ましくは疎水性と疎油性とを兼ね備えており、媒体に不溶であるが分散性を有することが、より好ましい。基本的には、フルオロシリコーンの性質には何らの制限もない。1つの実施形態においては、フルオロシリコーンは、フッ素置換ポリ有機シロキサンを含有する。フルオロシリコーンは、代表的には、−[Si(R)(R)−O]−の式の繰り返しユニットを含有し、ここで、R及び/またはRはそれぞれアルキル、アリール、またはアルキルアリール(例えば、ベンジル)ラジカルであり、少なくともR及びRの一方は1つまたはそれ以上のフッ素原子で置換されている。好ましくは、少なくともR及びRの一方は、1つまたはそれ以上のフッ素原子を含有するC1−30のアルキル基であり、そして好ましくは−(CF)x−の式(ここでxは1から29までの整数)の部分及び/またはトリフルオロメチル基が存在するという意味での、パーフルオロ部分を含有する。
【0057】
好ましいフルオロシリコーンは、下記の式5の一般構造を有する。
【0058】
【化10】

【0059】
ここで、mは1から5,000までの整数、好ましくは1から200まで、より好ましくは10から100まで、そしてさらに好ましくは10から50まで、nは1から4,999までの整数、好ましくは1から200まで、より好ましくは10から100まで、そしてさらに好ましくは10から50まで、そしてxは0から12までの整数である。1つの適切なフルオロシリコーンは、パーフルオロノニル・ジメチコーンであり、商品名PECOSIL(登録商標)FSL−150,FSL−300,FSH−150,FSH−300,FSU−150及びFSU−300として、フェニックス・ケミカル社から販売されており、これらは全てケミカル・アブストラクツ番号CAS259725−95−6を有している。
【0060】
本発明の毛髪用組成物は、化粧品として許容される媒体を含有する。「化粧品として許容される」とは、媒体が人間の外皮に接触しても安全であることを意味している。この技術分野で知られているどのような化粧品として許容される媒体も、使用できるものと考えられる。この媒体としては、水または疎水性または親水性の有機溶剤が含まれる。適切な親水性の溶剤としては、限定されるものではないが、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、等)、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、キャプリリルグリコール、グリセリン、カルビトール、例えばエチレングリコールモノメチル、モノエチル及びモノブチルエーテルのようなグリコールエーテル、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなプロピレングリコールのエーテル、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはモノブチルエーテルのようなジプロピレングリコール及びジエチレングリコールアルキルエーテル、そしてこれらの全ての結合物を含む。水は、好ましい媒体の成分である。典型的には、媒体中における水の量は、重量で約20%から約99%まで、より典型的には、約60%から約95%までである。
【0061】
適切な疎水性の媒体としては、炭化水素オイルが含まれ、これらは飽和または不飽和であり、脂肪的な特性を有し、直線状のまたは分岐した鎖を有し、または脂肪環または芳香族環を有している。基本的には全てのオイルが使用できるものと考えられるが、特に高い疎水性のオイルが好ましい。適切な限定されない例としては、野菜オイル、オクチルパルミテート、イソプロピルミリステート及びイソプロピルパルミテートのようなエステル、ジカプリルエーテルのようなエーテル、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコールのような脂肪族アルコール、イソオクタン、イソドデカン及びイソヘキサデカンのようなイソパラフィン、ジメチコーン、環状シリコーン、及びポリシロキサンのようなシリコーンオイル、鉱物油、石油、イソエイコサン及びポリイソブテンのような炭化水素オイル、天然または合成ワックス、これらの類似物が含まれる。
【0062】
適切な疎水性の炭化水素オイルは、飽和または不飽和であり、脂肪的な特性を有し、直線状のまたは分岐した鎖を有し、または脂肪環または芳香族環を有している。これらに含まれる炭化水素オイルは、6−20の炭素原子を有し、より好ましくは10−16の炭素原子を有する。代表的な炭化水素は、デカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカン、及びC8−20のイソパラフィンである。パラフィン性の炭化水素は、エクソン社からISOPARSの商標名で、そしてパーメチルコーポレーションから、入手することが出来る。加えて、パーメチルコーポレーションによってパーメチル99A(登録商標)の商品名で製造されている、C12のイソパラフィン(イソドデカン)のようなC8−20のパラフィン性の炭化水素も、適しているものと期待される。イソヘキサデカン(パーメチルR(登録商標)の商品名を有する)のような、種々の流通経路で入手できるC16のイソパラフィンも適している。好ましい揮発性の炭化水素の例としては、イソドデカン及びイソデカンのようなポリデカンを含み、例えばパーメチル99A(プレパース社)及びエクソン・ケミカルズ社から入手できるイソパーシリーズのようなC−CからC12−C15までのイソパラフィンを含んでいる。代表的な炭化水素溶剤は、イソドデカンである。
【0063】
この媒体は、シリコーンオイル相を含有することができ、シリコーンオイル相は揮発性のシリコーンオイル、不揮発性のシリコーンオイル、及びそれらの混合物を含むことができる。揮発性のシリコーンオイルとは、周囲温度ですぐに蒸発してしまうオイルを意味している。典型的には、揮発性のシリコーンオイルは、25℃において約1Paから約2kPaまでの範囲の蒸気圧を示し、好ましくは25℃において約0.1から約10センチストークス、好ましくは約5センチストークスかそれ未満、より好ましくは約2センチストークスかそれ未満の粘度を有し、そして約35℃から約250℃までで、大気圧で沸騰する。
【0064】
揮発性のシリコーンは、環状及び線状の揮発性のジメチルシロキサンシリコーンを含む。1つの実施形態においては、揮発性のシリコーンは、四量体(D4)、五量体(D5)、及び六量体(D6)のシクロメチコーン、またはそれらの混合物を含むシクロジメチコーンを含む。特に、揮発性のシクロメチコーン−ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチル−シクロテトラシロキサン、及びデカメチル−シクロペンタシロキサンを挙げることができる。適切なジメチコーンポリマーは、ダウ・コーニング200(登録商標)フルードの商品名でダウ・コーニング社から入手することができ、0.65から600,000センチストークスの範囲の、またはそれ以上の粘度を有している。適切な非極性の揮発性媒体シリコーンオイルは、米国特許第4,781,917号に開示されており、ここではその全体を参考として取り入れるものとする。追加の揮発性シリコーン材料は、Toddらによって「化粧品のための揮発性シリコーンフルード」として「化粧剤及び化粧品類」の91:27−32(1976)に述べられており、ここではその全体を参考として取り入れるものとする。線状の揮発性シリコーンは、一般的に25℃において約5センチストークス未満の粘度を有しており、これに対して環状のシリコーンは25℃において約10センチストークス未満の粘度を有している。種々の粘度の揮発性シリコーンの例としては、ダウ・コーニング200、ダウ・コーニング244、ダウ・コーニング245、ダウ・コーニング344、及びダウ・コーニング345(ダウ・コーニング社製)、SF−1204及びSF−1202シリコーンフルード(GEシリコーンズ社製)、GE7207及び7158(ゼネラル・エレクトリック社製)、及びSWS−03314(SWSシリコーンズ社製)が含まれる。線状の、揮発性シリコーンは、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、及びドデカメチルペンタシロキサンのような低分子量のポリジメチルシロキサン化合物が含まれる。
【0065】
不揮発性シリコーンオイルは、典型的には、ポリアルキルシロキサン、ポリアリールシロキサン、ポリアルキルアリールシロキサン、またはそれらの混合物を含有する。ポリジメチルシロキサンは、不揮発性シリコーンオイルとして好ましい。この不揮発性シリコーンオイルは、典型的には、25℃において約10から約60,000センチストークスまでの粘度を有し、好ましくは約10及び約10,000センチストークスの間、さらに好ましくは約10及び約500センチストークスの間であり、大気圧において250℃を超える沸点を有している。限定されない例としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコーン)、フェニルトリメチコーン、及びジフェニルジメチコーンが含まれる。
【0066】
この媒体は、単一相、二相系、またはエマルジョンを含有できる。エマルジョンは、水中のオイル、水中のシリコーン、オイル中の水、シリコーン中の水、及びそのようなものを含む。エマルジョンとして形成されると、分散媒が典型的には含まれる。ここで、製品としては、スプレーを意味し、単一相媒体、または水相と油相(油相としてはシリコーンオイルを含有する)を含有する二相媒体を用いるのが好ましい。一方では、媒体は無水性であることが期待される。無水性の媒体は、好ましくはシリコーンオイルを含有する。ここで用いられる「無水性の」という用語は、典型的には、最大5%の水を含有する組成物を、より典型的には最大1%の水を含有する組成物を、そして通常は周囲の条件から吸収される量の水を含有する組成物を意味する。
【0067】
1つの実施形態においては、本発明のシリコーン−ポリウレタンポリマー、膜形成エステル、及びフルオロシリコーンの組み合わせは、媒体に分散可能であるが溶解しない。髪色の褪色は、組み合わせがより両立できる異なった媒体と比較したとき、両立しない媒体中で組み合わせが形成された場合に、際だって遅くなることが、予期せずに見出された。いかなる理論によっても限定されることを望むものではないが、相分離が、毛髪のケラチン繊維上への本発明の組み合わせの積層を向上させ、それによって耐水性の膜が形成されて、水及び/またはシャンプーに対する防御的な遮蔽をもたらしたものと信じられる。
【0068】
好ましい実施形態においては、媒体は水及び増粘剤を含有する増粘された水系である。増粘剤は、ノニオン性、カチオン性、アニオン性または非イオン性である。好ましくは、増粘剤は、カチオン性増粘剤であり、制限するものではないが、カチオン性コンディショニングポリマーを含む。適切なカチオン性ポリマーとしては、これらに制限するものではないが、カチオン化セルロース、カチオン化グアガム、ジアリル化四価アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体、ポリクォーターニウム−37、及びこれらの混合物を含む。種々のカチオン性増粘剤の中で、特筆すべきものは、ポリクォーターニウム−37(INCI名)である。
【0069】
その他の適切な増粘剤としては、例えば、アクリル酸ホモポリマー(ルブリゾール社からCARBOPOL(登録商標)の商品名で販売されている)、アクリル酸/C10−30アルキルアクリレートのクロスポリマー(CARBOPOL(登録商標)1342及び1382の商品名で、またPEMULINS(登録商標)TR−1及びTR−2の商品名でBFグッドリッチ社から、入手可能である)、アクリレート/ステアレース−20・イタコネート共重合体(STRUCTURE(登録商標)2001の商品名でナショナルスターチ社から入手可能である)、アクリレート/セテス−20・イタコネート共重合体(STRUCTURE(登録商標)3001の商品名でナショナルスターチ社から入手可能である)、ベントナイト、PVM/MA−デカジエンクロスポリマー(これは、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体と1,9−デカジエンがクロスリンクしたクロスポリマーである。)(商業的には、STABILEZEQM(登録商標)の商品名でインターナショナルスペシャルティーズプロダクツ社から入手可能である)、アクリレート/ステアレース−20・メタクリレート共重合体(ACRYSOL(登録商標)ICS−1の商品名でローム・アンド・ハーズ社から販売されている)、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合体(HYPAN(登録商標)SA−100H、SR−150Hの商品名でリボ社から販売されている)、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体(CARBOSET(登録商標)514,515,525,XL−19,XL−19X2,X1−28,XL−40,526の商品名でBFグッドリッチ社から販売されている)、アクリル酸アンモニウム/アクリロ窒素共重合体(HYPAN(登録商標)SS−201の商品名でリボ社から販売されている)、クロスリンクしたポリアクリル酸のナトリウム塩であるクォーターニウム−18・ベントナイト(PNC430,PNC410,PNC400の商品名で3V社から販売されている)、ステアラルコニウム・ベントナイト(CLAYTON(登録商標)の商品名でサザン・クレー・プロダクツ社から販売されている)、クォーターニウム−18・ヘクトライト(ベントーン38)、ステアラルコニウム・ヘクトライト(ベントーン27)、ポリアクリル酸(CARBOPOL(登録商標)400の商品名でBF社から、そしてAQUATREAT(登録商標)の商品名でアルコ社から販売されている)、トリヒドロキシステアリン(THIXICIN(登録商標)の商品名でレオックス社から、またFLOWTONE(登録商標)の商品名でサザン・クレー・プロダクツ社から商業的に入手可能である)、ジメチルアミノエチル・メタクリルアミド及びアクリルアミドの共重合体(SALCARE(登録商標)SC63としてチバ・スペシャルティーズ社から)、アクリル系ポリマーアニオン性またはカチオン性増粘剤(SYNTHALEN(登録商標)の商品名で3V社から販売されている)、ポリアクリレート−1・クロスポリマー(INCI名)(CARBOPOL(登録商標)AquaCCの商品名でルブリゾール社から販売されている)、アクリル酸ナトリウム共重合体(TINOVIS(登録商標)ADMの商品名でチバ社から販売されている)、ポリアクリルアミドメチレンプロパン・スルホン酸(Cosmedia HSP−1180の商品名でコグニス・ケア・ケミカルズ社から販売されている)を含む。
【0070】
増粘剤は、好ましくは媒体の重量の約0.001%から約25%まで、より好ましくは約0.1%から約15%まで、さらに好ましくは約0.5%から約5%まで含有される。
【0071】
シリコーンポリウレタンポリマー、膜形成エステル、及びフルオロシリコーンは、合計して媒体を含む組成物の重量で約1%から約50%まで含有される。より典型的には、シリコーンポリウレタンポリマー、膜形成エステル、及びフルオロシリコーンは、合計して重量で約1%から約25%まで、または媒体を含む組成物の重量で合計して約1%から約10%まで含有される。
【0072】
本発明の組成物は、典型的には毛髪用製品に関連するその他の活性な、及び不活性な成分を適宜含有する。これらのその他の成分の性質及び添加量は、ケラチン繊維の上に疎水性の被膜を形成する安定な毛髪用製品とするために適したものであることが好ましい。好ましくは、これらのその他の成分は、ケラチン繊維を向上させる少なくとも1つの生活性な成分を含む。毛髪用製品のために追加的な活性の、及び/または不活性の成分を選択することは、この技術分野における熟練した技術に属する。適切なその他の成分は、これらに限られるものではないが、アミノ酸、抗酸化剤、チェレーティング剤、顔料、柔軟剤、乳化剤、エクシピエント、充填剤、芳香剤、ゲル化剤、ヒューメクタント、ミネラル、保湿剤、光安定化剤(例えば、UV吸収剤)、防腐剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、粘度及び/またはレオロジー調整剤、ビタミン、ワックス及びこれらの混合物を含むものである。本発明の発明的な毛髪用製品は、ふけ予防、防臭、日よけ、及び/または防汗の成分をも含むことができる。
【0073】
この組成物は、これらに限定されるものではないが、ジェル、クリーム、リキッド、エマルジョン、スプレー、及び類似のあらゆる適切な形状を取り得る。
【0074】
本発明は、ケラチン繊維に、適切な媒体中にシリコーン−ポリウレタンポリマー、被膜形成性エステル、及びフルオロシリコーンを組み合わせた毛髪用組成物を塗布することによって、人工的に染色された毛髪の色保持性の向上及び/または褪色性の低減のための方法を提供する。しかしながら、本発明は、人工的に染色された毛髪への応用に限定されるものではない。本発明の方法及び組成物は、あらゆる毛髪に(染められていてもいなくても)ケラチン繊維の上に耐水性の被膜を形成するために応用することができる。
【0075】
本発明の毛髪用組成物は、化学的染料を用いた人工的な染色の後のいかなる時にも、湿ったまたは乾いた毛髪に塗布することができる。好ましくは、毛髪用組成物は、人工的に染色された後の、最初の洗髪の前に塗布される。より好ましくは、毛髪用組成物は、化学的染料を用いた人工的な染色に続いて、直ちに毛髪に塗布される。しかしながら、最初のシャンプーの後であっても、2回目のまたは3回目のシャンプーの後であっても、本組成物が毛髪に塗布されることによって確かな利益が得られる。加えて、毛髪用組成物は、利用者の好みのいかなる時でも、再塗布することができる。1つの実施形態においては、毛髪用組成物は、毎回の洗髪の前に再塗布される。
【0076】
本発明に関する製造の主たる好ましい実施形態においては、全ての3つの成分(シリコーン−ポリウレタン、エステル、及びフルオロシリコーン)が含まれるが、本発明はこれに限定されるものではない。幾つかの実施形態においては、本発明の組成物は、これらの3つの成分のうち2つを含有する。したがって、以下の組み合わせも本発明の範囲内と考えられる:シリコーン−ポリウレタンと疎水性エステル、シリコーン−ポリウレタンとフルオロシリコーン、及び疎水性エステルとフルオロシリコーン。これらの組成物は、2つの成分を重量比で約10:1から約1:10まで、または約5:1から約1:5まで、または約2:1から約1:2まで、または約1:1で含有し得る。幾つかの実施形態においては、2成分の組み合わせは、色保持性の追加的な向上を、及び好適には相乗効果的な向上をもたらすものと信じられる。
〔実施例〕
【実施例1】
【0077】
表1に示されるように、シリコーン−ポリウレタンポリマー、高分子量エステル、及びフルオロシリコーンが、1:1:1の重量比で含有される組成物が作製された。ここで、媒体は(i)及び水中のオイルのエマルジョン系、または(ii)及びポリクォーターニウム−37で増粘された水を含有する水系である。
【0078】
【表1】

【0079】
人工的に染色された毛髪の色保持性は、それぞれの媒体を含有する毛髪用組成物で処理された。毛髪サンプルは、赤色系を有する化学的染料で処理されて、人工的な髪色を添加され、それから本発明の組成物で処理された。その後、毛髪サンプルは、ADVANCED TECHNIQUES(登録商標)(アボン・プロダクツ社)の名称で販売されている市販のシャンプー製品で洗浄され、水でリンスされた。この処理、洗浄とリンスのサイクルは、15回繰り返された。色保持性は、カチオン性で増粘された水系ベースの組成物で処理された毛髪サンプルの方が、水中のオイルエマルジョンに比較して、注目すべきほど優れていた。
【実施例2】
【0080】
毛髪用組成物への、シリコーン−ポリウレタン及び/またはフルオロシリコーンとの組み合わせにおけるトリイソステアリル・トリリノレート(INCI名)、高分子量疎水性エステルの追加の効果が、毛髪用組成物で処理された染色毛髪の色保持性との関係で調査された。組成物は、表2にしたがって作製され、ここで媒体は(i)伝統的な毛髪用組成物(媒体A)か、(ii)カチオン性化合物で増粘された水を含有する水系(媒体B)か、(iii)水とシリコーンオイルを含有する二相系(媒体C)である。
【0081】
【表2】

【0082】
毛髪用組成物のための媒体は、下記の表3にしたがって作製された。
【0083】
【表3】

【0084】
それぞれの媒体を含有する毛髪用組成物で処理された、人工的に染色された毛髪の色保持性は、以下に述べる試験方式を用いて試験された。
【0085】
[色保持性試験方法]
毛髪サンプルは、市販の化学的染料、CLAIROL HYDRIENCE(登録商標)Ruby Twilight3RR(プロクター・アンド・ギャンブル社)またはL’OREAL PREFERENCE Medium Brown(ロレアル社)によって、製造業者の指示にしたがって処理された。それぞれの毛髪サンプルは、流れる温水によって5分間リンスされた。それぞれの毛髪サンプルは、タオルでぬぐって残った湿気の大部分を除去した。ピペットを用いて、0.5mLの毛髪用組成物が毛髪サンプルの上に置かれ、下方への動きを繰り返すことによって、手作業で全体に分布させられた。毛髪サンプルは、空気乾燥するために、室温で72時間放置された。それから、それぞれの毛髪サンプルは、合計15回に亘って洗浄され、リンスされ、処理され、乾燥された。
【0086】
毎回、毛髪サンプルは、最初に、流れる温水で、100から110°Fの間の温度で、30秒間リンスされた。毛髪サンプルからの余分な水は、毛髪サンプルを中指と人差し指の間でしごいて、手作業で除去された。
【0087】
それぞれの毛髪サンプルを洗うために、ピペットを用いて、0.5mLの市販のシャンプーが毛髪サンプルに塗布された。シャンプーは、30秒間下方への動きを繰り返すことによって、手作業で毛髪サンプルの全体に分布させられた。シャンプーされた毛髪サンプルは、流れる温水の中に置かれて、100から110°Fの間の温度で、30秒間リンスされた。毛髪サンプルからの余分な水は、毛髪サンプルを中指と人差し指の間でしごいて、手作業で除去された。ピペットを用いて、0.5mLの毛髪用組成物が毛髪サンプルの上に置かれ、下方への動きを繰り返すことによって、手作業で全体に分布させられた。
【0088】
毛髪用組成物で処理された毛髪サンプルは、空気乾燥するために120°Fに昇温されたオーブンの中に、毛髪サンプルに残された全ての湿気が蒸発するまで放置された。一度毛髪サンプルが乾燥されると、毛髪サンプルは繰り返して、リンス、洗浄、リンス、処理及び乾燥の段階にあと14回曝される。
【0089】
それぞれの毛髪サンプルの色保持性は、制御された毛髪サンプルとの比較によって、視覚的に評価される。制御された毛髪サンプルは、同一の市販の化学的染料によって製造者の指示にしたがって人工的に染色された毛髪サンプルであり、他のいかなる毛髪用組成物によっても処理されず、洗浄と乾燥の繰り返しにも曝されていない。評価結果は、下記の表4に示されている。毛髪用組成物で処理された毛髪サンプルのうち、染色した毛髪の明らかな色保持性をもたらしたものは、表4で2つのアスタリスク(”**”)で示されており、幾らかの色保持性をもたらしたものは、表4で1つのアスタリスク(”*”)で示されている。
【0090】
【表4】

【0091】
これらの結果は、トリイソステアリル・トリリノレートがフルオロシリコーン、特にパーフルオロノニル・ジメチコーンとの組み合わせにおいて、伝統的な毛髪コンディショナー組成物を媒体として、当該毛髪コンディショナー組成物によって処理された染色された毛髪の色保持性を際だって高めることを示している。表4に示されるように、媒体Aにおけるトリイソステアリル・トリリノレートとパーフルオロノニル・ジメチコーンの重量で2%の組み合わせ(例えば、サンプル9)は、フルオロシリコーンを外してトリイソステアリル・トリリノレートを追加するよりも、そして高分子量疎水性エステルを外してパーフルオロノニル・ジメチコーンを追加するよりも、優れた色保持性をもたらす。表4の結果から分かるように、媒体Aへのトリイソステアリル・トリリノレートの重量で5%までの添加は、フルオロシリコーンがなければ(サンプル1及び4)、人工的な毛髪色の保持性に何らの目に見える向上をもたらさない。同様に、媒体Aへのパーフルオロノニル・ジメチコーンの重量で5%までの添加も、高分子量疎水性エステルがなければ(サンプル3及び6)、人工的な毛髪色の保持性に何らの目に見える向上をもたらさない。
【0092】
トリイソステアリル・トリリノレートとフルオロシリコーンとを組み合わせた時に必要とされるトリイソステアリル・トリリノレートのより低い閾値は、カチオン性化合物で増粘された水を含む水系で得られる。パーフルオロノニル・ジメチコーンとの組み合わせにおける重量で1%まで低いトリイソステアリル・トリリノレートの添加(サンプル8及び9)は、カチオン性化合物で増粘された水を含む水系(媒体B)においては、人工的な毛髪色の色保持性に目に見える向上をもたらす。対照的に、媒体Bへのトリイソステアリル・トリリノレートの重量で5%までの添加は、フルオロシリコーンがなければ(サンプル1及び4)、人工的な毛髪色の保持性に何らの目に見える向上をもたらさない。媒体Bへのパーフルオロノニル・ジメチコーンの添加は、高分子量疎水性エステルがない場合には、パーフルオロノニル・ジメチコーンの量が5%まで増加した時に限り、色保持性の目に見える向上をもたらす。それゆえに、媒体Bにおける結果は、トリイソステアリル・トリリノレートとフルオロシリコーンとの組み合わせは、もし劇的でなくとも、少なくとも付随的であり、目に見える色保持効果のために必要なトリイソステアリル・トリリノレートの低い閾値が存在することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工的に染色された毛髪に、
(1)シリコーン−ポリウレタンポリマーと、
(2)被膜形成性エステルと、
(3)フルオロシリコーンと、
(4)媒体と
を含有し、且つ、前記シリコーン−ポリウレタンポリマー、前記被膜形成性エステル、及び前記フルオロシリコーンが、前記媒体に分散はするが溶解はしない組成物を、塗布することを特徴とする毛髪の色保持性を向上方法。
【請求項2】
前記組成物は、重量基準で1から5部の前記シリコーン−ポリウレタンポリマー、1から5部の前記被膜形成性エステル、及び1から5部の前記フルオロシリコーンを含有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項3】
シリコーン−ポリウレタンポリマーと被膜形成性エステルとフルオロシリコーンの重量比が約1:1:1であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項4】
前記シリコーン−ポリウレタンポリマーは、ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体(INCI名)を含有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項5】
前記被膜形成性エステルは、C−C72トリカルボン酸の分岐したC−C24アルコールとのトリエステルをからなることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項6】
前記被膜形成性エステルの分子量は、約1000よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項7】
前記被膜形成性エステルは、トリイソステアリル・トリリノレート(INCI名)であることを特徴とする請求項6に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項8】
前記フルオロシリコーンは下記の構造を有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【化11】

ここで、mは1から5,000までの整数であり、
ここで、nは0から4,999までの整数であり、
ここで、xは0から12までの整数である。
【請求項9】
前記フルオロシリコーンは、パーフルオロノニル・ジメチコーン(INCI名)であることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項10】
化粧品として使用可能な媒体は、水及び増粘剤からなることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項11】
前記増粘剤は、カチオン性増粘剤であることを特徴とする請求項10に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項12】
前記カチオン性増粘剤は、ポリクォーターニウム−37(INCI名)であることを特徴とする請求項11に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項13】
前記シリコーン−ポリウレタンポリマー、前記被膜形成性エステル、前記フルオロシリコーンは、合計で前記組成物の重量の約1%から約20%までが含有されることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項14】
前記シリコーン−ポリウレタンポリマー、前記被膜形成性エステル、前記フルオロシリコーンは、合計で前記組成物の重量の約1%から約10%までが含有されることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項15】
前記組成物は、最初のシャンプーの前に毛髪に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項16】
前記組成物は、最初のシャンプーの後であるが2回目のシャンプーの前に毛髪に塗布されることを特徴とする請求項1に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項17】
人工的に染色された毛髪の、前記毛髪に組成物を塗布することを含んだ、色保持性を向上させる方法であって、前記組成物は、
(1)ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体と、
(2)トリイソステアリル・トリリノレートと、
(3)パーフルオロノニル・ジメチコーンと、
(4)媒体と
を含有し、前記ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体、前記トリイソステアリル・トリリノレート、及び前記パーフルオロノニル・ジメチコーンのうち少なくとも1つは、前記媒体に分散するが溶解しないことを特徴とする毛髪色保持性向上方法。
【請求項18】
前記ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体、前記トリイソステアリル・トリリノレート、及び前記パーフルオロノニル・ジメチコーンのそれぞれが、前記媒体に分散するが溶解しないことを特徴とする請求項17に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項19】
前記媒体は、水及びカチオン性増粘剤をからなることを特徴とする請求項17に記載の毛髪色保持性向上方法。
【請求項20】
(1)シリコーン−ポリウレタンポリマーと、
(2)被膜形成性エステルと、
(3)フルオロシリコーンと、
(4)媒体と
を含有し、且つ、前記シリコーン−ポリウレタンポリマー、前記被膜形成性エステル、及び前記フルオロシリコーンが、前記媒体に分散はするが溶解はしないことを特徴とする人工的に染色された毛髪に塗布して色保持性を向上させる組成物。
【請求項21】
(1)ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体と、
(2)トリイソステアリル・トリリノレートと、
(3)パーフルオロノニル・ジメチコーンと、
(4)水及びカチオン性増粘剤を含有する媒体と
を含有すると共にし、前記ビス−ヒドロキシプロピルジメチコーン/SMDI共重合体、前記トリイソステアリル・トリリノレート、及び前記パーフルオロノニル・ジメチコーンは、合計で前記組成物の重量の約1%から約20%までの範囲で含有することを特徴とする人工的に染色された毛髪に塗布して色保持性を向上させる組成物。

【公表番号】特表2011−519853(P2011−519853A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507507(P2011−507507)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038195
【国際公開番号】WO2009/134555
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(399130393)エイボン プロダクツ インコーポレーテッド (75)
【Fターム(参考)】