説明

気体を貯蔵するための方法および容器

【課題】気体、すなわちアセチレンを貯蔵するための方法および容器、ならびにアセチレンを貯蔵するための炭素質吸着剤の使用を提供する。
【解決手段】アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する圧力容器(典型的にはガスボンベ)に高圧のアセチレンを充填することによってアセチレンを高圧で貯蔵する。該吸着剤は、a)0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;b)0.5cm/g以上のメソ細孔比容;c)0.25g/cm以上のかさ密度;およびd)400m/cm以上の容積当たりの表面積を有する。その代わりに、または上記(a)および(b)に加えて1.5から3.0nmの範囲にある直径を有する細孔の比容は3cm/g以上であるが、メソ細孔比容とミクロ細孔比容との合計は常に1.0cm/g以上でなければならない。好ましくはメソ細孔比容の少なくとも75%は2から5nmの範囲にある直径を有するメソ細孔によってもたらされ、ミクロ細孔の少なくとも90%は少なくとも0.4nmの直径を有する。吸着剤は典型的には易流動性形態またはモノシリック形態をなす。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は気体、すなわちアセチレンを貯蔵するための方法および容器、ならびにアセチレンを貯蔵するための炭素質吸着剤の使用に関する。
アセチレンは産業界において、とくにガス溶接およびガス切断用燃料ガスとして用いられているが、極めて不安定であるという欠点を有している。着火源が存在すると、僅か1.4バールほどの低い圧力にある純アセチレンは激しく分解する。したがってアセチレンはガスボンベの中で加圧下の連続した均一気相としては貯蔵できない。
【0002】
一般的に用いられるアセチレンの工業的貯蔵方法は、活性(すなわち化学的反応性)を低下させるために、適当な溶剤、典型的にはアセトン中にアセチレンを溶解することである。アセチレンの分解を阻止するために、得られたアセチレンの溶液を圧力容器、典型的にはガスボンベ内で固体多孔質塊に吸収させる。この塊は典型的に50から250nmの範囲にあるサイズの細孔を有している。アセトンを溶剤として用いるこの公知の方法の場合に、英国政府の規制によればアセチレンガスボンベは15℃において18.7バール(絶対)の限界安全圧力を有する。この溶解アセチレン貯蔵システムの主な欠点は、とくにアセチレンの大部分をボンベから排出させている場合に高流量でアセチレンを供給できないこと、およびそのアセチレンに付随する若干のアセトン蒸気の排出である。このシステムの他の欠点には、最大許容圧力の限界による限られた貯蔵容量、外界温度の低下に伴う圧力の急激な減少、および分岐管で集配されるボンベの状態でない場合には大量貯蔵または大量輸送の可能性がないことが挙げられる。
【0003】
したがって別のアセチレン貯蔵方法が提案されていることは驚くべきことではない。たとえばずっと以前の1964年にフランス特許第1417235号は、アセチレンの固体吸着剤を含有するアセチレン貯蔵用ボンベの利用を開示している。しかしフランス特許第1417235号にはこの目的に対する特定的な吸着剤は開示されなかった。さらに、約1バールまでの圧力におけるアセチレンの吸着に関する二三の僅かな実験データはあるが、高圧における吸着に関する実験データは全く存在しない。したがって高圧のアセチレンの貯蔵において固体吸着剤は実際には使用されなかった。
【0004】
EP−A−O 467 486はメタン貯蔵用の特定の活性炭吸着剤を開示している。その中に開示された一般的な部類の吸着剤はアセチレンを貯蔵する場合にも使用できると示唆されている。しかしこの目的に対する吸着剤の具体的な例は示されていない。
【0005】
したがって当該技術分野には、高圧のアセチレンの貯蔵に特に適する特定吸着剤に対する要望がある。我々はこの目的に対する吸着剤を研究している際に、適切な吸着剤の選択基準はかなり複雑で、現在の技術水準からは導き出すことができないことを知った。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する圧力容器に高圧のアセチレンを充填することを含む高圧のアセチレンを貯蔵する方法であって、該吸着剤が
a.0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;
b.0.5cm/g以上のメソ細孔比容;
c.0.25g/cm以上のかさ密度;および
d.400m/cm以上の単位容積当たりの表面積
を有する方法が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する高圧アセチレンの貯蔵、輸送および排出用圧力容器であって、該吸着剤が
a.0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;
b.0.5cm/g以上のメソ細孔比容;
c.0.25g/cm以上のかさ密度;および
d.400m/cm以上の単位容積あたりの表面積
を有する圧力容器が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、アセチレンを加圧して貯蔵するための、アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤の使用であって、該炭素質吸着剤が
a.0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;
b.0.5cm/g以上のメソ細孔比容;
c.0.25g/cm以上のかさ密度;および
d.400m/cm以上の単位容積当たりの表面積
を有する使用が提供される。
【0009】
あるいは、本発明の前記3つの態様において、ミクロ細孔比容およびメソ細孔比容の合計が1.0cm/g以上であり、また1.5から3.0nmの範囲の有効直径サイズを有する細孔の比容が0.3cm/g以上、好ましくは0.5cm/g以上である。
【0010】
好ましくは、該炭素質吸着剤は0ないし0.16cm/gのマクロ細孔比容および少なくとも1500m/gの比表面積を有する。
いずれの吸着剤も典型的には多数の種々のサィズの開放性または易接近性細孔を含有する。細孔サイズの分布(すなわち細孔径に対する細孔径の頻度)をプロットすると、得られる曲線は典型的には1つ以上の極大値を有する。本発明に用いるための炭素質吸着剤は、好ましくは少なくとも2つのこのような極大値を有する。本発明に用いるのに適する炭素質吸着剤は少なくとも3つのこのような極大値を有することが典型的に認められる。
【0011】
本明細書で使用する細孔の種類の定義は、IUPACの分類に従う。IUPAC Manual of Symbols and Terminology、Appendix 2、Pt 1、Colloid and Surface Chemistry、Pure Appl.Chem.、31(1972)578を参照されたい。「ミクロ細孔」という用語は直径が2nm未満の細孔を表し、「メソ細孔」という用語は2nmから50nmの範囲の直径を有する細孔を意味し、「マクロ細孔」という用語は50nmを上回る直径を有する細孔を意味する。ミクロ細孔とメソ細孔とを区別する1つの理由は、この2種類の細孔内の気体の吸着性に相違があるからである。気体分子がミクロ細孔内に吸着されると、気体分子目体の間の相互作用よりも気体分子と固体細孔壁との間の相互作用の方が実質的にはるかに大きく、気体−固体の相互作用に後者の相互作用が付加される。ゼロに等しい相互作用のポテンシャルはミクロ細孔中には存在しないので、ミクロ細孔内に閉じ込められるいかなる気体分子も吸着されているとみなすべきである。他方、気体分子がメソ細孔に吸着される場合には、気体分子と細孔壁との間に収着相互作用があるだけでなく、該細孔内に吸着された気体分子間の相互作用もあり、これが比較的強力になることがある。アセチレンの場合には、1.5nmの細孔径(またはサイズ)の近傍においてこの2番目の吸着が起こり始める。我々は、過圧(superatmospheric pressures)下のメソ細孔内のアセチレン吸着機構がアセチレンの疑似凝縮(pseudo−condensation)を含み、それがアセチレンの別の「高密度化(densification)」をもたらし、細孔壁のみに起因する収着相互作用のポテンシャルの影響によって引き起こされるものと比べて、後者の機構はミクロ細孔内の機構に類似しているであろうと考える。2ないし3nmよりも大きいメソ細孔の場合には、これはさらに多くのアセチレン分子に対して凝縮アセチレンの「メニスカス(meniscus)」を生じるかもしれない。アセチレンのように極めて強く吸着される薬品の場合には、1.5から2.5nmの範囲にある収着相の密度は、界面相の熱力学の原理から理解できるであろうようにミクロ細孔内のアセチレンの最大密度を超えるかもしれない。これらの現象は細孔壁の反対側からの収着引力の存在によるものと我々は考える。細孔径が約3nmを上回ると、収着引力は著しく弱くなり、得られる補助的高密度化はあまり顕著には達成されないで、任意のサイズの典型的なメソ細孔のように、アセチレンの準液化(quasi−liquifaction)が依然として高圧で起こるかもしれない。したがって直径またはサイズが1.5から3.0nmの範囲にある細孔がアセチレンを吸着するのにとくに有効であり、また本発明に用いるための吸着剤を調製する場合にこのような細孔の「密度」すなわちメソ細孔比容を最大にすることが概して好ましいと我々は考える。さらに我々は、もっとも有効な細孔サイズは1.8から2.5nmの範囲にある細孔であると考える。
【0012】
比表面積(A)は次式により固体1グラムの表面上の吸着剤の単分子層容量(すなわち完全に充填された単分子層中に収容することができる吸着質の量)に関連する。

A=n

(式中、nは吸着剤1グラム当たりの単分子層中の吸着質のモル数;
は完全な単分子層中の吸着質分子によって占められる平均面積;および
Lはアボガドロ数(S J GreggおよびK S W Sing、Adsorption、Surface Area and Porocity、Academic Press,Inc.、London 1982、p41以下参照)
単分子層容量、したがって比表面積は、最も好適にはaの値が0.16nm(前記GreggおよびSing参照)であるとき、大気圧下で沸点(77K)にある窒素を用いて1つの吸着等温線からBET法によって経験的に求められる。この比表面積は幾何学的比表面積とは異なる量である。2622m/gに等しい幾何学的比表面積の最大の理論値のあることが仮定されている。この値はミクロ細孔を有する黒鉛構造物の基礎面の単一層によって構成される吸着剤のスリット状モデルを仮定して得られた。後者のそれぞれの1つは2つの該層の中間にある。K R Matranga、A L MyersおよびE D Glandt;「Storage of Natural Gas by Adsorptionon Activated Carbon」、Chem Eng Sci47(1992)pp1569−1579を参照されたい。したがって、たとえば3000m/gほどの大きい比表面積Aは幾何学的には実在しないかもしれない。このような比表面積Aと幾何学的比表面積との相違は、多分子層吸着機構を吸着データのBETの解釈へ適用することと単分子層吸着機構および細孔充填機構を吸着データのBETの解釈へ適用することとの相違に反映される。ここに示す比表面積Aの値は単分子層吸着機構をデータの解釈に適用して計算した。
【0013】
細孔サイズの分布は比表面積Aと同じ吸着等温線から求めることができる。
ミクロ細孔比容は吸着法によって極めて正確に求められる。メソ細孔比容は高圧水銀多孔度測定法と吸着法との組合せによって求めるのが望ましい。高圧水銀多孔度測定法は3.0nm以下の細孔サイズに用いることができる。2.0から3.0nmの範囲にある細孔サイズの比容はミクロ細孔比容を求めるのに用いたのと類似の吸着法によって求めるのが好ましい。
【0014】
ミクロ細孔比容は、たとえば窒素についての実験的な吸着等温線およびDubinin−Radushkevichの式、Horvath−Kawazoeの式(G.HorwathおよびK.Kawazoe、J Chem.Eng.Japan、16(1983)470、BJHモデル(E.P.Barrett、L.G.JoynerおよびP.P.Halenda、J.AM.Chem.Soc.、73(1951)373)または他の適当な式のような特定の理論的構成による評価から経験的に求めるのが好ましい。
【0015】
粒状吸着剤のかさ密度は、その吸着剤を圧縮しないときの吸着剤の質量対容積の比である。モノリシック(monolithic)吸着剤のかさ密度は単にそのモノリス(monolith)の質量対容積の比にすぎない。粒状吸着剤は、可能な最密充填(本明細書では充填密度という)に到達するまでその占めている容積内の空隙の比率を減少させるように圧縮することができる。粒状吸着剤のかさ密度(および充填密度)はASTM D−2854に従う方法によって測定することができる。
【0016】
本発明による方法及び圧力容器に用いるための炭素質吸着剤は典型的に実質的なミクロ細孔比容およびメソ細孔比容を有する。好ましくは50%を上回るメソ細孔が2から5nmの範囲の直径を有する。
【0017】
アセチレンは比較的小さな分子であり、同程度に小さなサイズを有するミクロ細孔はアセチレンを吸着する際にメソ細孔よりもはるかに重要な役割を演ずるであろうと期待されるかもしれない。しかし驚くべきことに我々は、アセチレンの吸着の際にメソ細孔も重要な役割を演ずることを見出した。この現象はまだ完全には理解されていないけれども、アセチレンが通常の外界温度を上回る(すなわち30℃を上回る)臨界温度を有するという事実は重要であるかもしれない。その結果、アセチレンの高密度化、したがって吸着質の高濃度化が、ミクロ細孔、とくに直径が1.5から2nmの範囲にあるものの場合と同様に、小さな直径のメソ細孔(すなわち直径が2から5nmの範囲にあるもの、とくに直径が2から3nmの範囲にあるもの)においても達成することができる。さらに、アセチレンの吸着の際にメソ細孔によって演じられた重要な役割がミクロ細孔による吸着に付随する特定の問題を改善する。この問題は、純粋にミクロ細孔の吸着剤が、Brunauer、Deming、DemingおよびTellerによってなされた最初の仕事に続いてIUPAC分類のタイプ1に一致する吸着等温線を有することが知られているということである(BDDT、S.Brunauer、L S Deming、W E DemingおよびE Teller;J.Amer.Chem.Soc.62(1940)1723ff参照)。タイプ1の等温線は、捕捉が極めて少ないか又はそれ以上はない平坦領域に至る低圧において高捕捉量を示し、したがってラングミュアの吸着等温式に概ね一致する。その結果、吸着剤は大気圧に近い圧力において典型的にはすでに飽和に到達し、したがってもしも高圧(たとえば、15バール)にされると、圧力が再び大気圧に戻るときに適正な量の気体を放出することができない。このように、あまりに高すぎることがない圧力で吸着気体の量、すなわち貯蔵容量が極めて大きいとしても、後で排出可能な容量(燃料ガスがアセチレンの場合)とも記す排出可能な気体量、すなわち圧力を高い値から大気圧に近い値まで下げることによって得られる可逆的気体捕捉量は限られる。18バールと考えられる最高作動圧力に貯蔵されたアセチレンガスの量と、1.5バールと考えられる最低作動圧力において吸着剤中に保持されるアセチレンガス量との差は可逆的アセチレン捕捉量(排出可能容量)として本発明の至るところに用いられている。
【0018】
上述のように今日公知のゼオライトモレキュラーシーブのような実質的にミクロ細孔の固体は本発明による方法及び圧力容器に用いるには不適当である。しかし我々は、本発明による方法および圧力容器に用いるのに適するメソ細孔容量の炭素質吸着剤は、限定的な平坦領域を示さないで、中間圧力では絶えず上昇を示し、最高圧力で最後に急激な上昇を示すIUPAC分類のタイプ2の等温線、または実際の作動範囲内ではあまり制限されないガスの捕捉をもたらす他の種類の等温線に、より近づけるように吸着等温線の形を実質的に変えることを見いだした。
【0019】
本発明によって用いられる炭素質吸着剤の上記の性質の結果として、従来の貯蔵方法、すなわちアセチレンをアセトンに溶解し、このアセトンを多孔質塊に吸収させる方法によって得られるのと同等かまたはそれ以上の排出可能な貯蔵容量(すなわち吸着剤1リットル当たりアセチレン125g以上)を一定サイズの圧力容器において25℃で達成することができる。さらに、いうまでもなく本発明による貯蔵方法では貯蔵から放出されるアセチレンをアセトンで汚染する恐れはない。さらにまた我々は、本発明によるアセチレンの吸着貯蔵は、貯蔵圧力が低下するにつれて圧力容器からのアセチレンのさらに均一な放出速度の達成を可能にすると考える。本発明のさらなる利点は、現在英国において溶解アセチレンを貯蔵するのに安全と受け入れられている圧力よりも高い圧力でアセチレンを好適に貯蔵できることであると我々は考える。したがって、高い貯蔵圧力によって通常の貯蔵方法で得られるよりも大きな排出可能なガス容量を得ることができよう。また溶剤の使用を回避することによって、アセトンと多孔質塊とを含有する比較しうる従来のボンベよりも軽量となる本発明による充填圧力容器が得られる。この改良がもたらす程度は従来の多孔質塊と比較した炭素の密度によって決まる。多孔質塊/アセトンシステムの代わりに本発明による適切な吸着剤システムを用いることによって、ボンベを空間の十分に考慮した高度の利用を達成することもできる。
【0020】
好ましくはミクロ細孔比容とメソ細孔比容との合計が少なくとも1.2cm/gである。より好ましくはミクロ細孔比容とメソ細孔比容との合計が少なくとも1.4cm/gであり、またメソ細孔比容が少なくとも0.7cm/gである。さらにより好ましくはこのメソ細孔比容の少なくとも75%(そして最も好ましくは少なくとも90%)は直径が2から5nmのメソ細孔によってもたらされる。最も好ましくはサイズ(円筒形の場合には直径)が1.5から3nmの範囲にある細孔の総比容が1.0cm/g以上である。
【0021】
アセチレンは約0.4nmという分子サイズを有するので、サイズのさらに小さいミクロ細孔はアセチレンの収着にはほとんどまったく寄与しない。したがって、好ましくはミクロ細孔の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくはそのすべてが少なくとも0.4nmの直径を有する。
【0022】
比表面積が約4500m/gの炭素質吸着剤は公知であるが(EP−A−0 366 796参照)、我々は比表面積が3000から4000m/gの範囲にあるのをとくに好む。比表面積が大きいほど、一般にミクロ細孔比容とメソ細孔比容との合計は大きくなる。しかし比表面積が大きいほど吸着剤のかさ密度および充填密度は小さくなり、したがって一定容積の圧力容器に収容できる吸着剤の有効量は少なくなる。このように、一方では吸着剤の細孔容積または比表面積を最大にすることと、圧力容器に収容できる吸着剤の有効量を最大にするように吸着剤のかさ密度を最大にすることとの間には本質的な矛盾がある。実際に、単位容積当たりの吸着剤の表面積、すなわち吸着剤のかさ密度と比表面積との積は、単独で考えるいずれかのパラメータよりもさらに重要であり、また最大にするのが好ましい。単位容積当たりの表面積は、好ましくは少なくとも800m/cm、より好ましくは少なくとも1000m/cmである。ただし1500m/cmよりも大きい値は実際に得ることは困難である。
【0023】
マクロ細孔比容は最低に保つのが望ましい。したがってマクロ細孔比容は最も好ましくは0.05cm/gよりも小さく、理想的にはゼロである。
本発明によりアセチレンを貯蔵するのに用いるための炭素質物質は好ましくは活性炭である。吸着剤は好ましくは活性炭の易流動性ペレットの形をとる。あるいは吸着剤はビーズ、ミクロビーズ、繊維、ディスクの形をとるか、または1つ以上のモノリシック体を含むことができる。粒状の吸着剤は1種以上の広範囲の粒度を有することができる。
【0024】
好ましくは炭素質吸着剤のかさ密度は最小かさ密度の0.25g/cmを上回り、少なくとも0.3g/cmである。より好ましくはかさ密度は少なくとも0.35g/cmである。上記のように、ミクロ細孔容積とメソ細孔容積とのある合計に対するかさ密度が大きいほど本発明による圧力容器の排出可能な貯蔵容量は大きくなる。かさ密度が大きいほど圧力容器から排出中に粒状吸着剤がアセチレンで水簸される(elutriated)可能性は少なくなる。前記ペレットを圧力容器内のその場で1つ以上のモノリシック体に形成させることによってこのような水簸を防ぐための役目を達成することができる。したがって炭素質吸着剤は、結合剤によって団結させることができる活性炭の凝集した個々のペレット(または他の小さな凝集体)の1つ以上のモノリスの形をとることができる。それによって大きなかさ密度(粒子密度の値に近く、典型的には最大0.8g/cm)に到達することができるが、典型的には吸着容量のいくらかの損失を犠牲にし、また結合剤は若干の細孔を閉塞する傾向があるので、ガスを排出することができる速度の少なくともいくらかの低下がある。多数の種々の結合剤の任意の1つを使用することができる。たとえば結合剤はピッチ、クレー、セルロースタイプの物質、またはたとえばフェノール樹脂のようなポリマー(たとえばNOVALAK)、もしくはポリ(テトラフルオロ)エチレンのようなポリエチレンタイプの物質であることができる。好ましくはアセチレンを圧力容器に充填する前に粒状炭素質吸着剤を圧縮させる。したがって密度が増大して充填密度に近づくことができる。
【0025】
この圧力容器は、他の形の容器を使用することもできようが、好ましくは使いやすい大きさのガスボンベの形をとる。炭素質吸着剤の1つ以上のモノリスを使用する場合には、容器の開放端部領域から挿入することができる。次いで端部を容器の残部に溶接することができる。圧力容器には加圧したアセチレンを通常の方法で充填することができる。貯蔵圧力(完全に充填した圧力容器の)は好ましくは15から30バールの範囲にある。より好ましくは貯蔵圧力は18から30バールの範囲、すなわち英国で、アセチレンのアセトン溶液の貯蔵に安全と考えられている圧力を上回る圧力である。
【0026】
本発明による圧力容器はアセチレンを充填することができ、−10から+50℃の範囲を含むすべての通常の外界温度で使用することができる。
本発明による方法において炭素質吸着剤として用いるのに適する大きな比表面積を有する活性炭ペレットは当該業界で周知の方法によって作ることができる。これらの方法に用いられる主なプロセスは、極めて複雑な場合がある熱分解、部分酸化、および出発原料、通常は有機供給原料の炭化である。技術の現状は、J W Patrick、Porocity in Carbons:Characterization and Applications、Halsted Press、New York、Tronto、1995、331ppに示されている。しかし、石油コークスや他の炭素質出発物質、たとえばやし殻チャーを典型的には過剰量の水酸化カリウム(KOH)と混合し(たとえば米国特許第4082694号、およびT Otowa、Y NojimaおよびM Itoh:「Fundamentals of Adsorption」、Ed.M D LeVan、Kluwer Academic Publishers、Boston、1996、709−716参照)、コークスを400℃で脱水し、ついで不活性(窒素)雰囲気中で600−900℃においてコークスを活性化させることによって比表面積が3000m/gを上回る超活性化炭素質吸着剤をつくる特殊な別の方法がある。KOH対とコークスとの重量比は、所望のミクロ細孔対メソ細孔の比率によって1:1から10:1の範囲にあることができる。KOH対コークスの比率が大きいほどメソ細孔の比率が大きくなる。比表面積が3000m/gよりも大きい活性炭を得るには4:1を上回るKOH対コークスの重量比が通常必要である。直接的水蒸気攻撃による炭素の損失を避けるために脱水工程を行う。活性化後、材料に洗浄工程を適用する。洗浄工程の目的は、残留KOHおよび活性化中に生じる塩を除くことである。700℃を超える温度では元素状カリウムが生成して、プロセスが危険になるので、活性化工程の最適温度は700℃である。活性炭の製造に関してさらに補足する情報は、Toshiro Otowa、Ritsuo Tanibata、およびMaso Hohの論文「Production and adsorption characteristics of MAXSORB:high−surface−area activated carbon」、in Gas−Separation and Purification、Volume7、No4、pp241−245(1993)、inEP−A−2 223 223およびinEP−A−0 366 796に開示されている。得られた活性炭は、炭素をクレー、セルロースまたは有機結合剤であることができる結合剤と混合し、圧縮または押出し、ついで約100から150℃の範囲にある高温で乾燥することによってペレット、粒子、ディスクまたはモノリスに成形することができる。本発明によるアセチレン貯蔵用の炭素質吸着剤として使用するのに特に適したものになる性質を有する活性炭を得るように適切な製造プロセスのパラメータを修正することは技術の熟練の範囲内にあることはいうまでもない。
【0027】
ところで添付図面を参照しながら実施例によって本発明による方法および圧力容器を説明しよう。
図1はアセチレンを貯蔵、輸送、および排出させるためのガスボンベの略側面図(部分断面図)である。
【0028】
図2ないし6はすべて二酸化炭素の吸着及び脱着をプロットしたDubinin−Radushkevichの等温線である。
図7は種々の炭素質吸着剤について可逆的アセチレン捕捉量をプロットした容積当たりの表面積のグラフである。
【0029】
図1は縮尺で製図していない。
図1に関連して、鋼鉄製ガスボンベ2はネック部分4および口部6を有する。ボンベ2は圧力容器を作るのに適当な部類の通常の鋼鉄から通常の方法によってつくることができる。このような鋼鉄は当該技術分野では周知であってここに記載する必要はない。ボンベ2は通常のボンベと同様に軸上の安全プラグ10を取り付ける内に凹んだ底部8を有する。安全プラグ10はスクリーンパッキング(gauze packing)12によってボンベ2の内側にガードされる。
【0030】
ボンベ2の口部6は通常のシリンダーバルブ(cylinder valve)14本体の外ネジ山(図示せず)とかみ合う内ネジ山(図示せず)を有する。バルブ14はガス供給パイプ(図示せず)および圧力調節器(図示せず)に接続できるかまたはアセチレンの加圧源からボンベ2にアセチレンを充填することができる口16を有する。バルブ14はボンベ2の内部と導通し、安全プラグ18によって封止される内部通路(図示せず)を有する。バルブ14の構造および製造法は周知であり、さらに述べる必要はない。
【0031】
本発明により加圧したアセチレンの貯蔵に用いるのに適する炭素質吸着剤のペレット20をボンベ2の内部に充填する。ネック部分4の内面頂部にスクリーンパッキング22を備える。スクリーンパッキング22は、アセチレンのデトネーション(detonation)を生じるることがある連続自由空間が存在しないことを保証し、かつ吸着剤の洗浄を最小限にするのを助ける。
【0032】
空のボンベ2は、安全プラグ10の周りに少量のパッキング12を付与することによって本発明による使用の準備ができる。シリンダーバルブ14を装着する前にボンベ2にほぼ口部6のレベルまで炭素質吸着剤のペレットを充填する。この操作中に、炭素質吸着剤のペレットが十分に沈降するように、ボンベ2を数回ガス抜きする。必要ならば、収容できるペレットの数を最大にするようにペレットに圧縮力を加えることができる。しかし圧縮力はペレットを損傷するほど大きくすべきではない。ボンベ2にペレット20を充填した後、ネック部分4の頂部にある空隙を捕捉するようにボンベにスクリーンパッキング22を挿入しシリンダーバルブ14を装着する。このように炭素質吸着剤のペレット20を充填したボンベ2にアセチレン製造部位でアセチレンを充填する。所望の充填圧力、典型的には15から30バールの範囲にあるアセチレンを含有する本管(図示せず)とボンベを導通させるように置く。バルブ14を開位置にしたボンベ内にアセチレンを加圧して流入させる。いったん所要量のアセチレンをボンベ2に充填すると、シリンダーバルブ14を閉じる。次いでアセチレンボンベを集積所(図示せず)に輸送し、そこからボンベ2を販売または貸し出しすることができる。バルブ14を開いてボンベからアセチレンを排出させることができる。
【0033】
本発明によるアセチレンの貯蔵方法および圧力容器をつぎの実施例によってさらに説明する。各実施例で種々の炭素質物質および樹脂物質の吸着特性を説明する。各吸着剤の吸着特性は二酸化炭素の平衡捕捉及び放出によって示される。実験は取扱いが比較的容易な点からアセチレンに先立って二酸化炭素を用いて行い、アセチレンを用いても行った。我々は、二酸化炭素の等温線から得たデータを用いてアセチレンの相当する値を予測することができると考える。これは、収着平衡挙動に関与する両方のガスのある化学的性質と物理的内部特性との間の密接な類似性による。たとえば我々は、NUXIT−ALと呼ぶ炭素質物質上のこの2つのガスの吸着等温線が、もしもデータを同じ相対圧力p/p(式中、pは温度Tにおいて液相として収着される種の飽和蒸気圧)に対してプロットするならば、両者の区別ができないことを認めた。吸着された二酸化炭素の質量からアセチレンの質量に転換するために、我々は、2つのガスの吸着された分子容は実質的に同じと仮定する。臨界温度に近い液化ガスの密度はその分子量の比にほとんど全く一致するので、これには若干の根拠がある。さらに気相におけるこの2種類のガスの分子の物理的サィズは極めて近似する。したがって、本発明による方法に使用するための吸着剤の適性を評価する場合の試験ガスとして二酸化炭素を用いることは妥当と思われる。次いで、これを燃料ガスのアセチレンについて直接測定した高圧吸着等温線について得られた結果によって確認した。下記参照。
【0034】
実施例において吸着データを、本明細書で使用する形式では下記となるDubinin−Radushkevich(DR)の式によって解釈する。

v(p)=vexp[−B(RTlnp/p

(式中、v=吸着したガスの量
vは系の特有定数
Bは別の系の特有定数
R=一般ガス定数
T=測定温度
p=吸着質の平衡圧力
=吸着質の液相の飽和蒸気圧)
R RudzinskiおよびD H Everettによる「Adsorption of Gases on Heterogeneous Surfaces」中に引用されたM M DubininおよびL V Radushkevich、Proc Acad Sci USSR、55,331(1647)を参照されたい。
【0035】
下記の実施例1ないし5は、それぞれ図2ないし6に関連する。各図においてデータは捕捉量(mg/g)(すなわち、吸着剤1g当たりのガスのmg数)の対数(底10)をlog(底10)p/pの平方に対してプロットするDubinin−Radushkevichの方法にしたがってプロットする。
【0036】
25℃において18バールから1.5バール(現在のアセチレンボンベの使用限度)の間で、吸着剤1リットル当たりのアセチレンの排出可能な貯蔵容量を吸着剤ごとにそれぞれの二酸化炭素の等温線から計算して、前記圧力範囲内における吸着剤1リットル当たりの可逆的捕捉量として各実施例に記載する。
実施例1(比較例)
比表面積が830m/g、ミクロ細孔比容が0.15cm/g、メソ細孔比容が0.975cm/g、マクロ細孔比容が0.015cm/g、およびかさ密度が0.69/cmである樹脂AmberiteXAD−4(Aldrich Ltd、The Old Brickyard、New Road、Gillingham、Dorset SP8 AHL、Englandから入手)について25℃で二酸化炭素の等温線を測定した。等温線はDubinin−Radushkevichのプロットとして図2に示す。得られた可逆的アセチレン捕捉量は吸着剤1リットル当たりアセチレン72.6gになる。
【0037】
この実施例は、大きなメソ細孔比容が適当な可逆的アセチレン捕捉量を得るには不適当であることを示す。
実施例2(比較例)
比表面積が2000m/g、ミクロ細孔比容が1.1cm/g、メソ細孔比容がゼロ、およびかさ密度が0.18g/cmである炭素繊維物質Nanofibre A20(Osaka GAS Co Ltd、19−9、6−Chome Torishima、Konohona−ku、Osaka 554、Japanから入手)について25℃で二酸化炭素の等温線を測定した。等温線はDubinin−Radushkevichのプロットとして図3に示す。得られた可逆的アセチレン捕捉量は吸着剤1リットル当たりアセチレン57.1gになる。
【0038】
この実施例は大きなミクロ細孔容積それ自体が適当なアセチレン捕捉量を得るには不十分であることを示す。容積値当たりの比較的小さな捕捉量は低密度によっても影響され、これは極めて大きなミクロ細孔容積によるだけでなく、圧縮を困難にする吸着剤の物理的形状にもよる。
実施例3(比較例)
MAXSORBタイプの炭素物質、試料グレードGO8H(Kansai Coke&Chemicals Co Ltd、5 Misono−cho、Amagasaki、660 Japanから入手)について25℃で二酸化炭素の等温線を測定した。吸着剤は比表面積が2250m/g、細孔比容の合計が1.15cm/g、およびかさ密度が0.3g/cmであった。等温線をDubinin−Radushkevichのプロットとして図4に示す。得られた可逆的アセチレン捕捉量は吸着剤1リットル当たりアセチレン99.6gになる。
【0039】
この実施例は比表面積の大きい値が吸着剤に好ましいアセチレン捕捉量を与えるのにそれ自体十分ではないことを示す。
実施例4(比較例)
やし殻活性炭、AR1(Sutcliffe Speakman Carbons Ltd、Lckett Road、Ashton−in−Maker field、Lancahire、WN4 8DE、Englandから入手)について25℃で二酸化炭素の等温線を測定した。吸着剤は比表面積が1644m/g、ミクロ細孔比容が0.73cm/g、メソ細孔比容が0.26cm/g、マクロ細孔比容が0.34cm/g、およびかさ密度が0.45g/cmであった。等温線をDubinin−Radushkevichのプロットとして図5に示す。得られた可逆的アセチレン捕捉量は吸着剤1リットル当たりアセチレン97.7gになる。
【0040】
この実施例はかさ密度の大きい値が活性炭吸着剤に好ましいアセチレン捕捉性を付与するのにそれ自体不十分であることを示す。
実施例5
比表面積が約3000m/g、ミクロ細孔比容が0.6cm/g、メソ細孔比容が0.9cm/g、マクロ細孔比容が0.15cm/g,およびかさ密度が約0.35g/cmであった。したがって容積当たりの比表面積は約1050m/cmであった。細孔のほとんどは20から55nmの範囲にある直径を有した。直径が0.4nm未満のミクロ細孔は認められなかった。等温線をDubinin−Radushkevichのプロットとして図6に示す。得られた可逆的アセチレン捕捉量(排出可能な容量)は吸着剤1リットル当たりアセチレン143gになる。
【0041】
「Determination of Sorption Thermodynamic Functions for Multicomponent Gas Mixtures Sorbed by Molecular Sieves」、M Bolow、Stud Surface Sci Cata1、Vo183(1994),pp209−215に記載されているように、最小死空間(dead volume)とともに等比容法を用い、Osaka Gas M−30吸着剤について、0.04から23.6mmol/gの吸着量の領域にわたり吸着等量線の直接測定によって得られた吸着のデータによってこの等温線のデータを確認した。
【0042】
実施例5は、通常の溶解アセチレン貯蔵系と比較できる可逆的アセチレン捕捉量及び特性を得るには容積、ミクロ細孔比容、およびメソ細孔比容に対して表面積の比較的大きな値が重要であることを示す。
【0043】
図7は、吸着剤の容積およびその可逆的アセチレン捕捉量(排出可能な容量)(吸着剤1リットル当たりのアセチレンのグラム数で表す)に対し表面積間には実質的に直線的関係があることを示す。図7に示す5つの点は上記5つの実施例から取ったものである。
【0044】
図7に示す可逆的アセチレン捕捉量は事実上最低の可逆的捕捉量であることに注目することが重要である。我々は、有効密度を高めるように吸着剤を圧縮することによって可逆的アセチレン捕捉量を、典型的には25%まで増大させること
が実際に可能であると考える。
実施例6
実施例5の場合と同様に、Osaka Gas Co Ltdから入手した超活性化炭素物質、試料グレードM−30の試料についてアセチレン吸着等温線を測定した。1リットル当たりアセチレン128gの可逆的捕捉量(排出可能な容量)が得られ、これは二酸化炭素測定法を用いて予測した値とは10.5%の差があった。
実施例7
比表面積が3027m/g,固体密度が0.32g/ml、ミクロ細孔比容が0.93ml/g、およびメソ細孔比容が0.65m1/gの諸性質を有するモノリシック炭素物質(Kansai Coke&Chemicals Co Ltd、5 Misono−cho、Amagasaki、660 Japan製)を用いて収着測定を行った。この物質はMaxsorbタイプの粉末を圧縮してつくられた。この物質について測定した二酸化炭素の吸着等温線から得られた可逆的アセチレン捕捉量は131g/1であった。アセチレン吸着等温線から直接計算した可逆的アセチレン捕捉量(排出可能な容量)は122g/lであった。これらは大きい値であり、モノリスのかさ密度の小さいことに留意されたい。圧縮操作中大きな圧力を用いて固体密度を増大させることによって、実質的に大きな排出可能なアセチレンの容量を達成できると考えられる。
実施例8
実施例7に用いた物質を調製するのに使用したMAXSORBタイプの活性炭を原料とし、比表面積が2888m/g、かさ密度が0.29g/ml、メソ細孔比容が0.59ml/g、およびミクロ細孔比容が0.92ml/gの諸性質を有する別のモノリシック試料(Kansai Coke&Chemicals Co Ltd、5 Misono−cho、Amagasaki、660 Japanから入手)を用いてアセチレン収着測定を行った。アセチレン吸着等温線から計算した可逆的アセチレン捕捉量(撲出可能な容量)は110g/lであることが判明した。これらは大きな値であり、モノリスのかさ密度の小さいことに留意されたい。かさ密度を増大させることによって、実質的に大きな排出可能なアセチレンの容量を達成することができると考えられる。
実施例9
MAXSORBタイプの活性炭を原料とし、0.5g/mlのかさ密度、2600m/gの比表面積、および1.0cm/gを上回るミクロ細孔比容とメソ細孔比容との合計を有するモノリシック炭素質吸着剤からなる別の試料(Kansai Coke&Chemicals Co Ltd、5 Misono−cho、Amagasaki、660 Japanから入手)を用いてアセチレンの吸着測定を行った。アセチレン吸着等温線から計算した可逆的アセチレン捕捉量(排出可能な容量)は144g/lであることが判明した。
実施例10
やし殻でつくった活性炭から調製し、0.56g/cmの密度、2201m/gの比表面積、1.01cm/gのミクロ細孔比容、および0.23cm/gのメソ細孔比容を有するモノリシック炭素質吸着剤(Sutcliffe Speakman Carbons Ltd、Lockett Road、Ashton−in−Makerfield、Lancashire、WN4 8DE、Englandから入手)を用いて収着測定を行った。25℃の二酸化炭素について第1の吸着等温線をプロットした。この等温線から計算した可逆的アセチレン捕捉量(排出可能な容量)は191g/lであることが判明した。25℃のアセチレンについて測定した第2の吸着等温線をプロットした。可逆的アセチレン捕捉量(排出可能な容量)はこの等温線から144g/lと計算された。
【0045】
以上説明した本発明は、以下の特徴を有する。
(1)アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する圧力容器に高圧のアセチレンを充填することを含む高圧のアセチレンを貯蔵する方法であって、該吸着剤が
a.0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;
b.0.5cm/g以上のメソ細孔比容;
c.0.25g/cm以上のかさ密度;および
d.400m/cm以上の容積当たりの表面積
を有する方法。
(2)アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する圧力容器に高圧のアセチレンを充填することを含む高圧のアセチレンを貯蔵する方法であって、該吸着剤が
a.1.0cm/g以上の、ミクロ細孔比容とメソ細孔比容との合計;
b.0.25g/cm以上のかさ密度;
c.400m/cm以上の容積当たりの表面積;および
d.1.5から3.0nmの範囲にあるサイズを有する細孔の0.3cm/g以上の比容
を有する方法。
(3)1.5から3.0nmの範囲にあるサイズを有する細孔の該比容が0.3cm/g以上である(1)記載の方法。
(4)該メソ細孔比容の少なくとも75%が2から5nmの範囲にある直径を有するメソ細孔によってもたらされる(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)該ミクロ細孔の少なくとも90%が少なくとも0.4nmの直径を有する(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)容積当たりの該表面積が800から1500m/cmの範囲にある(1)〜(5)のいずれかに記載の方法。
(7)該吸着剤が、活性炭の凝集または圧縮体の1つ以上のモノリスの形をとる(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する、加圧したアセチレンの貯蔵、輸送、および排出用の圧力容器であって、該吸着剤が
a.0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;
b.0.5cm/g以上のメソ細孔比容;
c.0.25g/cm以上のかさ密度;および
d.400m/cm以上の容積当たりの表面積を有する圧力容器。
(9)アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する、加圧したアセチレンの貯蔵、輸送、および排出用の圧力容器であって、該吸着剤が
a.1.0cm/g以上の、ミクロ細孔比容とメソ細孔比容との合計;
b.0.25g/cm以上のかさ密度;
c.400m/cm以上の容積当たりの表面積;および
d.1.5から3.0nmの範囲にあるサイズを有する細孔の0.3cm/g以上の比容を有する圧力容器。
(10)1.5から3.0nmの範囲にあるサイズを有する細孔の比容が0.3cm/g以上である(8)記載の圧力容器。
(11)該メソ細孔比容の少なくとも75%が2から5nmの範囲にある直径を有するメソ細孔によってもたらされる(8)〜(10)のいずれかに記載の圧力容器。
(12)該ミクロ細孔の少なくとも90%が少なくとも0.4nmの直径を有する(8)〜(11)のいずれかに記載の圧力容器。
(13)容積当たりの該表面積が800から1500m/cmの範囲にある(8)〜(12)のいずれかに記載の圧力容器。
(14)該吸着剤が、活性炭の凝集体の1つ以上のモノリスの形をとる(8)〜(13)のいずれかに記載の圧力容器。
(15)加圧したアセチレンを充填する場合の(8)〜(14)のいずれかに記載の圧力容器。
(16)アセチレンを加圧して貯蔵するための、アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤の使用であって、該炭素質吸着剤が
a.0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;
b.0.5cm/g以上のメソ細孔比容;
c.0.25g/cm以上のかさ密度;および
d.400m/cm以上の容積当たりの表面積
を有する使用。
(17)アセチレンを加圧して貯蔵するための、アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤の使用であって、該炭素質吸着剤が
a.1.0cm/g以上の、ミクロ細孔比容とメソ細孔比容との合計;
b.0.25g/cm以上のかさ密度;
c.400m/cm以上の容積当たりの表面積;および
d.1.5から3.0nmの範囲のサイズを有する細孔の0.3cm/g以上の比容
を有する使用。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1はアセチレンを貯蔵、輸送、および排出させるためのガスボンベの略側面図(部分断面図)である。
【図2】図2は二酸化炭素の吸着及び脱着をプロットしたDubinin−Radushkevichの等温線である。
【図3】図3は二酸化炭素の吸着及び脱着をプロットしたDubinin−Radushkevichの等温線である。
【図4】図4は二酸化炭素の吸着及び脱着をプロットしたDubinin−Radushkevichの等温線である。
【図5】図5は二酸化炭素の吸着及び脱着をプロットしたDubinin−Radushkevichの等温線である。
【図6】図6は二酸化炭素の吸着及び脱着をプロットしたDubinin−Radushkevichの等温線である。
【図7】図7は種々の炭素質吸着剤について可逆的アセチレン捕捉量をプロットした容積当たりの表面積のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチレンを可逆的に吸着することができる炭素質吸着剤を含有する圧力容器に高圧のアセチレンを充填することを含む高圧のアセチレンを貯蔵する方法であって、該吸着剤が
a.0.5cm/g以上のミクロ細孔比容;
b.0.5cm/g以上のメソ細孔比容;
c.0.25g/cm以上のかさ密度;および
d.400m/cm以上の容積当たりの表面積
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−100962(P2007−100962A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289854(P2006−289854)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【分割の表示】特願平9−517151の分割
【原出願日】平成8年10月31日(1996.10.31)
【出願人】(591009657)ザ・ビーオーシー・グループ・ピーエルシー (7)
【氏名又は名称原語表記】THE BOC GROUP PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】