説明

気体吸着デバイス

【課題】密封された気体吸着材を必要なときに非接触で開封する。
【解決手段】気体吸着デバイス1は、脆性材料のソーダ石灰ガラスからなる気体難透過性容器6と、銅イオン交換されたZSM−5からなり気体難透過性容器6で被われた気体吸着材5と、融点が300℃と気体難透過性容器6より低く、熱膨張率が気体難透過性容器6と異なる、錫を主成分とする半田からなる低融点素材7とからなる気体吸着デバイス1であって、気体吸着デバイス1を低融点素材7の融点より高く、気体難透過性容器6の融点より低い温度に加熱した後、冷却した場合に、低融点素材7と気体難透過性容器6との熱膨張率の差による応力で、気体難透過性容器6が破壊されるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体吸着デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス放電型表示パネル、真空断熱容器など、高真空を必要とする機器が製造されている。
【0003】
これらの機器の特性を向上させるため、気体吸着材(ゲッター)をこれらの内部に設置して残留ガスを除去する試みがなされている。
【0004】
気体吸着材は空気に触れると活性が失われてしまうため、上記の機器内に設置するまでは包材により被っておかなければならない。また、上記の機器に設置後は包材を破壊して気体吸着材を機器内の雰囲気に接触できるようにする必要がある。これを実現する方法として、高周波加熱または光線により包材を加熱して破壊する方法がある。
【特許文献1】特開2004−281282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法では気体吸着材を金属で密閉された空間に設置する際、高周波や光線は金属に遮断されて包材を加熱することができないため、これらの方法を用いるのは不可能である。また、上記の方法では、高周波や光線を照射する工程を加える必要あるため、コストアップにつながるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、プラズマディスプレイパネル製造などの工程において、付加的な工程を加えることなく、気体吸着材の吸着能力を発現することができる気体吸着デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の気体吸着デバイスは、脆性材料からなる気体難透過性容器と、前記気体難透過性容器で被われた気体吸着材と、融点が前記気体難透過性容器より低く、熱膨張率が前記気体難透過性容器と異なる低融点素材とからなる気体吸着デバイスであって、前記気体吸着デバイスを前記低融点素材の融点より高く、前記気体難透過性容器の融点より低い温度に加熱した後、冷却した場合に、前記低融点素材と前記気体難透過性容器との熱膨張率の差による応力で、前記気体難透過性容器が破壊されるように構成したのである。
【0008】
気体吸着デバイスを低融点素材の融点になるまで加熱すると、低融点素材が融解し、脆性材料からなる気体難透過性容器に付着する。この状態で気体吸着デバイスを前記低融点素材の固化温度まで冷却することで、前記低融点素材は前記気体難透過性容器に付着したまま固化する。さらに冷却を続けると、前記気体難透過性容器と前記低融点素材は、それぞれの熱膨張率に従って収縮する。この際、これらの熱膨張率の違いにより、前記低融点素材は前記気体難透過性容器に応力を加える。この結果、前記気体難透過性容器は破壊され、外部と連通(以下、スイッチングと記述)し、気体の吸着が可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気体吸着デバイスを用いることにより、プラズマディスプレイパネルをはじめとする、内部気体除去を必要とし、加熱工程を有する製品の製造工程において、製品内部の気体を、付加的な工程を必要とすることなく、吸着することができる。そのため、製造プロセスが容易かつ安価となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の請求項1に記載の気体吸着デバイスの発明は、脆性材料からなる気体難透過性容器と、前記気体難透過性容器で被われた気体吸着材と、融点が前記気体難透過性容器より低く、熱膨張率が前記気体難透過性容器と異なる低融点素材とからなる気体吸着デバイスであって、前記気体吸着デバイスを前記低融点素材の融点より高く、前記気体難透過性容器の融点より低い温度に加熱した後、冷却した場合に、前記低融点素材と前記気体難透過性容器との熱膨張率の差による応力で、前記気体難透過性容器が破壊されるように構成したものである。
【0011】
気体吸着デバイスを低融点素材の融点まで加熱すると、低融点素材が融解し、脆性材料からなる気体難透過性容器に付着する。この状態で気体吸着デバイスを前記低融点素材の凝固点まで冷却することで、前記低融点素材は前記気体難透過性容器に付着したまま固化し、付着が強固になる。さらに冷却を続けると、前記気体難透過性容器と前記低融点素材は、それぞれの熱膨張率に従って収縮する。この際、これらの熱膨張率の違いにより、前記気体難透過性容器には、前記低融点素材から応力が加わる。前記気体難透過性容器は脆性材料からなるため、応力が一定の値に達すると急激に破壊される。
【0012】
この結果、前記気体吸着デバイスのスイッチングがなされ、気体の吸着が可能になる。
【0013】
ここで、脆性材料とは低靭性の材料であり、応力を加えても変形は小さいが、ある一定の応力に達したところで、原子間の結合が切れ、急激に破壊される材料であり、ガラス、セラミックスなどがこれに相当する。
【0014】
低融点素材とは、温度の上昇により硬度が低下し、ある温度以上では融解して液状になるものであり、プラスチックの他、金属、ガラスなどがこれに相当する。具体的なプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン)、ポリカーボネートなどがあるがこれらに限定するものではない。
【0015】
具体的な金属としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウムなどの単体の金属や、ステンレス、半田などの合金であってもよいが、とくにこれらに指定するものではない。
【0016】
具体的なガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、石英ガラス、ほう珪酸ガラス、クリスタルガラスなどがあるがこれらに限定するものではない。
【0017】
気体難透過性容器とは物質固有の性質である気体透過度が小さいため、当該物質で作製した容器の気体透過度が、104[cm3/m2・day・atm]以下となるものであり、より望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下のものである。
【0018】
ここで、気体難透過性容器と低融点素材の組み合わせとしては、例えば、気体難透過性容器が石英、低融点素材がアルミニウムというように、気体難透過性容器の融点が低融点素材の融点より高いものの中から選択する。線熱膨張率の比は1.5倍以上が望ましく、3倍以上がさらに望ましい。
【0019】
また、請求項2に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1に記載の発明において、気体難透過性容器を、ガラスで構成したものであり、請求項1に記載の発明における気体難透過性容器として、ガラスを用いることができる。で
また、請求項3に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1に記載の発明において、気体難透過性容器を、石英で構成したものである。
【0020】
石英は耐熱温度が高いため、気体吸着デバイスをスイッチングする以前に高温に曝す必要がある場合であっても、気体難透過性を保つことができる。
【0021】
また、請求項4に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1に記載の発明において、気体難透過性容器を、ソーダ石灰ガラスで構成したものである。
【0022】
ソーダ石灰ガラスは安価であり、融点も780℃程度とガラスとしては低く、加工性にも優れるため、気体吸着材を気体難透過性容器で被う工程を安価にでき、安価に気体吸着デバイスを得ることができる。
【0023】
また、請求項5に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、低融点素材が、少なくとも一つ以上の金属からなるものである。
【0024】
金属は沸点が高いため、気体吸着デバイスを適用して真空度を維持しようとする機器内での蒸散が少ないため、低融点素材の蒸散による機器へのダメージが少ない。
【0025】
また、請求項6に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、低融点素材が、アルミニウムであるものである。
【0026】
アルミニウムは融点が660℃と金属としては比較的低いため、比較的低温でスイッチング可能な気体吸着デバイスを得ることができる。また、沸点が2519℃と高いため、真空度を維持しようとする機器内での蒸散が少なく、低融点素材の蒸散による機器へのダメージが少ない。
【0027】
また、請求項7に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、低融点素材が、少なくとも錫を含む合金であるものである。
【0028】
一般に、錫を含む合金の融点は、300℃程度と、金属としては非常に低い。また、一般に、プラズマディスプレイパネルの排気工程における加熱温度が300℃から400℃程度である。このため、低融点素材が錫を含む合金である気体吸着デバイスを用いることにより、付加的な工程を加えることなく低融点素材が融解する。この結果、気体吸着デバイスのスイッチングがなされ、内部の不純物ガスを取り除くことができる。従って、作製のコストを増大することなく、高品位の気体吸着デバイスを得る事ができる。
【0029】
また、請求項8に記載の気体吸着デバイスの発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明において、気体難透過性容器の表面が粗化されているものである。
【0030】
気体吸着デバイスの温度上昇により低融点素材が融解し、気体難透過性容器に付着する。冷却することにより固化した際、熱膨張率の違いにより、低融点素材により気体難透過性容器に応力が加わる。気体難透過性容器の表面の表面粗さが小さい場合(粗化されていない)場合、気体難透過性容器に付着した低融点素材は、歪により外れる可能性ある。一方、請求項8に記載の発明のように表面が粗化されていることにより、熱可塑性素素材と気体難透過性容器の間に歪が生じても、これらの付着は外れない結果、脆性材料からなる気体難透過性容器が破壊されやすくなる。従って、より確実にスイッチングがなされる気体吸着デバイスを得る事ができ、歩留まりを向上することができる。
【0031】
また、請求項9に記載の気体難透過性容器の開封方法の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスの気体難透過性容器の開封方法であって、前記低融点素材を、前記低融点素材の融点より高く前記気体難透過性容器の融点より低い温度に加熱することにより融解し、前記気体難透過性容器に付着させる過程と、融解した前記低融点素材を前記低融点素材の凝固点まで冷却固化する過程と、固化した前記低融点素材を冷却して収縮させ、前記気体難透過性容器に応力を加えることにより破壊する過程からなる方法である。
【0032】
気体吸着デバイスを低融点素材の融点まで加熱すると、低融点素材が融解し、脆性材料からなる気体難透過性容器に付着する。この状態で気体吸着デバイスを前記低融点素材の凝固点まで冷却することで、前記低融点素材は前記気体難透過性容器に付着したまま固化し、付着が強固になる。さらに冷却を続けると、前記気体難透過性容器と前記低融点素材は、それぞれの熱膨張率に従って収縮する。この際、これらの熱膨張率の違いにより、前記気体難透過性容器には、前記低融点素材から応力が加わる。前記気体難透過性容器は脆性材料からなるため、応力が一定の値に達すると急激に破壊される。
【0033】
この結果、前記気体吸着デバイスのスイッチングがなされ、気体の吸着が可能になる。
【0034】
また、請求項10に記載の真空機器の発明は、請求項1に記載の気体吸着デバイスを、請求項9に記載の気体難透過性容器の開封方法を用いて適用した真空機器である。
【0035】
プラズマディスプレイパネルや、真空断熱容器は、しばしばその製造過程に加熱の工程を有する。また、これらの機器は高真空を必要とする一方で、形状変形の自由度が小さいため、内部に気体吸着デバイスを設置した際、外部から力を加えてスイッチングすることは困難である。従って、気体吸着デバイスのスイッチングは自動的になされる必要がある。
【0036】
請求項1に記載の気体吸着デバイスを、請求項9に記載の方法で適用することにより高真空を保つことができる真空機器を得る事ができる。
【0037】
ここで、真空機器とは、真空にすることにより性能を発現するものであり、照明器具、真空断熱材、真空断熱容器、プラズマディスプレイパネル、蒸着装置、スパッタリング装置などである。
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0039】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスを用いたプラズマディスプレイパネル排気工程の概略図である。
【0040】
図1において、気体吸着デバイス1は、ガス排気管2内に設置されている。このガス排気管2は、プラズマディスプレイパネル3の放電空間4につながっている。
【0041】
放電空間4は、一般的な構造をなすものを用いており、それぞれ必要な構成要素が形成されたガラス基板とガラス基板を一定のギャップを保ちながら組み合わせ、封止ガラスにより周囲を封着した後に、ガラス基板に設けた通気孔とガス排気管2を通して製造装置(図示せず)とつなぎあわされている。
【0042】
また、ガス排気管2には、ガラス基板との接続部が太くなった円筒状のガラス管を用いている。また、ガス排気管2の太くなった部分に気体吸着デバイス1が設置されている。
【0043】
図2は本発明の実施の形態1におけるスイッチング前の気体吸着デバイスの概略図である。
【0044】
図2において、気体吸着デバイス1は、気体吸着材5と気体難透過性容器6と低融点素材7からなる。
【0045】
ここで、気体吸着材5は銅イオン交換されたZSM−5であり、気体難透過性容器6はソーダ石灰ガラスであり、低融点素材7は錫を主成分とする半田であり、融点は300℃である。また、気体難透過性容器6の表面はすりガラス状になっている。
【0046】
図3は本発明の実施の形態1における加熱中に低融点素材が溶融している気体吸着デバイスの概略図である。
【0047】
図4は本発明の実施の形態1におけるスイッチング後の気体吸着デバイスの概略図である。
【0048】
図4において、気体難透過性容器6は破壊されており、この部分を通して気体の通過が可能であるため、外部の気体を吸着することができる。
【0049】
以上のように構成されたプラズマディスプレイパネル3の排気工程について、以下その動作、作用を説明する。
【0050】
まず、構造物に付着している不純物を脱離させるためプラズマディスプレイパネル3を300℃まで加熱する。次に排気管2を介して放電空間4内の空気を排出する。十分な時間排気した後、プラズマディスプレイパネル3の加熱を終了して徐冷する。この際、放電管2だけは300℃に保持しておく。この状態で排気を終了し、Ne−Xeの混合体である放電ガスを導入する。放電ガスの導入後ガス排出管2をバーナーで封止した後、保温を終了する。
【0051】
以上の排気工程において、気体吸着デバイス1の動作作用を説明する。
【0052】
まず、プラズマディスプレイパネル3を300℃まで加熱した際、気体吸着デバイス1も同様に300℃まで加熱される。この際、低融点素材7の融点は300℃であるため融解し、図3に示すように気体難透過性容器6に付着する。ガス排出管2を300℃に保持したままガス排出管2を封止することにより、気体吸着材5は劣化しないまま、放電空間4は外部と遮断される。
【0053】
次に、ガス排出管2の保温を終了すると、気体吸着デバイス1も冷却され、低融点素材7は固化する。ここで、気体難透過性容器6はすりガラス状であるため、固化した低融点素材7は気体難透過性容器6に強固に付着し、容易には離れなくなる。
【0054】
この状態でさらに冷却すると、気体難透過性容器6と低融点素材7の熱膨張率の違いにより、低融点素材7は気体難透過性容器6に応力を加えることになる。ここで、これらの結合が強固であるため、外れることなく、気体難透過性容器6が破壊される。この結果、気体吸着材5はプラズマディスプレイパネル3の放電空間4とつながり、不純物ガスを吸着することができるようになる。
【0055】
本実施の形態の気体吸着デバイス1は、脆性材料のソーダ石灰ガラスからなる気体難透過性容器6と、銅イオン交換されたZSM−5からなり気体難透過性容器6で被われた気体吸着材5と、融点が300℃と気体難透過性容器6より低く、熱膨張率が気体難透過性容器6と異なる、錫を主成分とする半田からなる低融点素材7とからなる気体吸着デバイス1であって、気体吸着デバイス1を低融点素材7の融点より高く、気体難透過性容器6の融点より低い温度に加熱した後、冷却した場合に、低融点素材7と気体難透過性容器6との熱膨張率の差による応力で、気体難透過性容器6が破壊されるように構成したものである。
【0056】
気体吸着デバイス1を低融点素材7の融点まで加熱すると、低融点素材7が融解し、脆性材料からなる気体難透過性容器6に付着する。この状態で気体吸着デバイス1を低融点素材7の凝固点まで冷却することで、低融点素材7は気体難透過性容器6に付着したまま固化し、付着が強固になる。さらに冷却を続けると、気体難透過性容器6と低融点素材7は、それぞれの熱膨張率に従って収縮する。この際、これらの熱膨張率の違いにより、気体難透過性容器6には、低融点素材7から応力が加わる。気体難透過性容器6は脆性材料からなるため、応力が一定の値に達すると急激に破壊される。
【0057】
この結果、気体吸着デバイス1のスイッチングがなされ、気体の吸着が可能になる。
【0058】
本実施の形態の気体難透過性容器の開封方法は、低融点素材7を、低融点素材7の融点より高く気体難透過性容器6の融点より低い温度に加熱することにより融解し、気体難透過性容器6に付着させる過程と、融解した低融点素材7を低融点素材7の凝固点まで冷却固化する過程と、固化した低融点素材7を冷却して収縮させ、気体難透過性容器6に応力を加えることにより破壊する過程からなる方法である。
【0059】
このようにして、気体吸着材5の吸着能力は、放電空間4内の気体の吸着にフルに用いることができる。
【0060】
以上の工程により、付加的な工程を加えることなく、気体吸着材によりプラズマディスプレイ内部の気体量を減少し、高品位のプラズマディスプレイパネルを得る事ができる。
【0061】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における真空断熱容器の概略図である。
【0062】
図5において、真空断熱容器8は内殻9と外殻10の間の空間11に設置された気体吸着デバイス1と開口部12と開口部12を封止する金属ロウ13からなる。
【0063】
ここで、内殻9と外殻10はステンレスからなる。
【0064】
図6は、本発明の実施の形態2におけるスイッチング前の気体吸着デバイスの概略図である。
【0065】
図6において、気体吸着デバイス1は、気体吸着材5と気体難透過性容器6と低融点素材7からなる。
【0066】
ここで、気体吸着材5は銅イオン交換されたZSM−5であり、気体難透過性容器6は石英であり、低融点素材7はアルミニウムである。
【0067】
図7は本発明の実施の形態2における加熱中に低融点素材が溶融している気体吸着デバイスの概略図である。
【0068】
図8は本発明の実施の形態2におけるスイッチング後の気体吸着デバイスの概略図である。
【0069】
以上のように構成された真空断熱容器8の排気工程について、以下その動作、作用を説明する。
【0070】
まず、真空断熱容器8の構成要素は真空加熱炉(図示せず)内に設置する(金属ロウも工程で使用可能とするために設置する)。この後、真空加熱炉内部を0.1torrまで減圧しながら温度を800℃まで上昇する。
【0071】
この結果、空間11内部の空気は内殻9と外殻10に付着している空気と共に開口部12を通して炉内に排出され、空間11内部は炉内と同等にまで減圧される。この後、溶解した金属ロウ13で開口部12を封止する。
【0072】
800℃の状態において低融点素材7は融解し、図7に示すように気体難透過性容器6に付着する。
【0073】
真空断熱容器8を冷却すると、低融点素材7も冷却され凝固点である660℃付近で固化する。さらに温度を下げると、アルミニウムである低融点素材7と石英である気体難透過性容器6の熱膨張率が異なるため、低融点素材7はが冷却されることによる収縮により、気体難透過性容器6に応力を加える。気体難透過性容器6は脆性材料であるため、特定の温度に達した時点で破壊される。この結果、気体吸着デバイス1はスイッチングがなされ、空間11内部の残留空気の吸着が可能になる。
【0074】
以上の様に、気体吸着デバイス1を用いることにより、気体吸着材5で吸着すべき気体が存在する空間11と外部を遮断するまでは、気体難透過性容器6において気体吸着材5を保護し、空間11と外部を遮断した後は、外部から非接触で付加的な工程を加えることなく、空間11内部の気体を吸着可能とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の気体吸着デバイスを用いることにより、プラズマディスプレイパネルをはじめとする、内部気体除去を必要とし、加熱工程を有する製品の製造工程において、製品内部の気体を、付加的な工程を必要とすることなく、吸着することができる。そのため、製造プロセスが容易かつ安価となる。したがって、プラズマディスプレイパネル、真空断熱容器、電界放出型表示装置など高真空を必要とし、加熱の工程を有する機器に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施の形態1における気体吸着デバイスを用いたプラズマディスプレイパネル排気工程の概略図
【図2】本発明の実施の形態1におけるスイッチング前の気体吸着デバイスの概略図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱中に低融点素材が溶融している気体吸着デバイスの概略図
【図4】本発明の実施の形態1におけるスイッチング後の気体吸着デバイスの概略図
【図5】本発明の実施の形態2における真空断熱容器の概略図
【図6】本発明の実施の形態2におけるスイッチング前の気体吸着デバイスの概略図
【図7】本発明の実施の形態2における加熱中に低融点素材が溶融している気体吸着デバイスの概略図
【図8】本発明の実施の形態2におけるスイッチング後の気体吸着デバイスの概略図
【符号の説明】
【0077】
1 気体吸着デバイス
3 プラズマディスプレイパネル
5 気体吸着材
6 気体難透過性容器
7 低融点素材
8 真空断熱容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脆性材料からなる気体難透過性容器と、前記気体難透過性容器で被われた気体吸着材と、融点が前記気体難透過性容器より低く、熱膨張率が前記気体難透過性容器と異なる低融点素材とからなる気体吸着デバイスであって、前記気体吸着デバイスを前記低融点素材の融点より高く、前記気体難透過性容器の融点より低い温度に加熱した後、冷却した場合に、前記低融点素材と前記気体難透過性容器との熱膨張率の差による応力で、前記気体難透過性容器が破壊されるように構成した気体吸着デバイス。
【請求項2】
気体難透過性容器が、ガラスである請求項1に記載の気体吸着デバイス。
【請求項3】
気体難透過性容器が、石英である請求項1に記載の気体吸着デバイス。
【請求項4】
気体難透過性容器が、ソーダ石灰ガラスである請求項1に記載の気体吸着デバイス。
【請求項5】
低融点素材が、少なくとも一つ以上の金属からなる請求項1から4のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項6】
低融点素材が、アルミニウムである請求項1から5のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項7】
低融点素材が、少なくとも錫を含む合金である請求項1から5のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項8】
気体難透過性容器の表面が粗化されている請求項1から7のいずれか一項に記載の気体吸着デバイス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の気体吸着デバイスの気体難透過性容器の開封方法であって、前記低融点素材を、前記低融点素材の融点より高く前記気体難透過性容器の融点より低い温度に加熱することにより融解し、前記気体難透過性容器に付着させる過程と、融解した前記低融点素材を前記低融点素材の凝固点まで冷却固化する過程と、固化した前記低融点素材を冷却して収縮させ、前記気体難透過性容器に応力を加えることにより破壊する過程からなる気体難透過性容器の開封方法。
【請求項10】
請求項1に記載の気体吸着デバイスを、請求項9に記載の気体難透過性容器の開封方法を用いて適用した真空機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−94599(P2010−94599A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267019(P2008−267019)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】