説明

気体排出物を識別する方法とシステム、およびそのようなシステムを備えた設備

【課題】分析すべき気体をイオン化する装置(2、6)と、イオン化された気体を分析する装置(4、5)とを備えた、制御された圧力下でエンクロージャ(3)内の気体を分析するガス分析システムを提供すること。
【解決手段】本発明によれば、
分析すべき気体をイオン化する装置(2、6)は、エンクロージャ(3)内に含まれれた気体と接触しかつ分析すべき気体からプラズマを発生させる発生器(6)に結合された専用プラズマ源(2)を備え、
イオン化された気体を分析する装置(4、5)は、プラズマが発生する領域の近傍に位置しかつ発生したプラズマによって放出された放射スペクトルの変動を分析する分光計(5)に接続された放射センサ(4)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体排出物を分析する方法およびシステムに関する。より詳細には、本発明は、制御された圧力下でエンクロージャ内の気体排出物を分析する方法およびシステムに関する。本発明はまた、圧力が制御された少なくとも1つのエンクロージャと、圧力が制御された前記エンクロージャ内に含まれた気体を分析するシステムとを含んでいる工業設備に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業における近年の進歩は、本質的には、数平方ミリメートルの構成要素に電子回路を集積させることに関する。この集積は、次第に大きなシリコン基板(直径200mmから300mm)上で行われている。
【0003】
このような回路を製造するのに必要な技術的ステップの数は多い(最大400ステップ)。
【0004】
そのステップのうち、真空処理ステップは、製造工程を通して連続的に生産できる点、および構成要素の幾何的基準を満たす働きをする点で極めて重要である。
【0005】
現場分析システムを設置すると、欠陥が発生するとすぐにそれが認識され、したがって多数のバッチを生産できる反応時間が短縮される。
【0006】
その結果、真空内で行われるプラズマ半導体製造工程の現場における実時間の監視および制御に対して高い要望が生じている。
【0007】
この要求は、様々なステップが行われるチャンバ内だけでなく、排気ラインを構成する様々な構成要素に対しても高まっている。
【0008】
現場検査ステップのうち、有機成分、粒子、カビ(mold)、金属イオン、および気体のまたは凝縮限界にある任意の気体の分析は、以下のことを可能にするため、重要である。
【0009】
最適な製造条件が満たされているかどうか判定すること。例えば、プロセスチャンバより上流の、真空ポンプシステム内で行われる現場分析は、シリコンウェハの環境をよりよく制御できるようにし、それにより製造歩留まりを向上させる。
【0010】
機械を構成する機械的構成要素のエージングを推定すること、したがって、予知保全によって、事態を先取りすることにより機械の保全スケジュールを効果的に管理すること。
【0011】
ガス分析技術を導入する際に直面する問題は、その投資コストと、工程で発生する製造コストおよび品質コストと比較した、欠陥を前もって検出することにより達成される節約とにある。
【0012】
さらに、ポンプシステムを半導体設備に統合することを考慮すると、ガス分析システムはますます小さくしていかなければならない。
【0013】
0.1mbarから1000mbarの範囲で動作するガス分析器は、工程ステップ中に反応種を監視できるようにし、しかも真空設備の出口まで全体にわたって監視できるようにする。このことにより、大気中に解放された気体のモニタリングを向上させる。
【0014】
知られているように、質量分析による残留ガス分析(RGA)は、不活性ガス種および荷電ガス種全てを検出できるようにする。分子は通常、高温フィラメントからの熱電子放出によって放出された電子により、電離箱内でイオン化される。この技術は10−6mbarより低い圧力で適用でき、10−5mbarより高いとき、反応は非線形になり、10−4mbarより高いときは、フィラメントが破損する可能性がある。
【0015】
望ましい範囲(0.1mbarから1000mbar)内で気体を分析する際、フィラメントの破損を避けるために、差圧排気を準備して、分析ユニット内部の圧力を減少させる必要がある。差圧排気装置は、複数の真空ポンプと多数のバルブとを備える。
【0016】
複数の真空ポンプおよびバルブが使用されるため、高圧(0.1mbarから1000mbar)で動作するガス分析器のコストは、残留真空のみを分析するRGAタイプ分析器の6倍である。したがって、このコストは、半導体製造機械のコストやその量的効率、質的効率と比較すると問題となる。
【0017】
さらに、差圧排気を用いた質量ガス分析器は、体積の大きい真空構成要素をいくつか組み込んでいるため、占有する空間が広くなる。これにより、製造室をいくつか備えることがある現在の真空設備に、この分析器を統合するのが困難になっている。
【0018】
このため、業界の要望にもかかわらず、ガス分析器を装備している真空設備はほとんどない。
【0019】
半導体を製造する設備に発光分光を使用することも知られている。発光分析は、半導体構成要素または半導体回路をエッチングする工程で、エッチングの終了を検出するために使用される。分析されるプラズマは、発光分光計のみを備える計測器を有する設備の反応器によって生成されるプラズマであり、この発光分光計はエッチング工程からの光を分析することによって、工程自体のステップを監視できるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、発光分析を使用して、半導体設備の製造工程またはエッチング工程のステップを監視することではなく、上記設備の真空環境の全ての気体成分を監視することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
このために、本発明は、分析すべき気体をイオン化する装置と、イオン化された気体を分析する装置とを備えた、制御された圧力下でエンクロージャ内の気体を分析するガス分析システムを提供する。
【0022】
本発明によれば、
分析すべき気体をイオン化する装置は、エンクロージャ内に含まれた気体と接触しかつ分析すべき気体からプラズマを発生させる発生器に結合された専用プラズマ源を備え、
イオン化された気体を分析する装置は、プラズマが発生する領域の近傍に位置しかつ発生したプラズマによって放出された放射スペクトルの変動を分析する分光計に接続された放射センサを備える。
【0023】
プラズマ源は、共振空洞タイプのマイクロ波源、または表面波伝搬原理を用いたタイプのマイクロ波源でよい。
【0024】
代替方法は、誘導結合プラズマ(ICP)タイプの高周波プラズマ源を使用する。そのようなプラズマ源には、石英またはアルミナからなる誘電体が必要である(排出物の化学的性質による。例えば、フッ素含有ガスは石英と激しく反応する)。その誘電体はシーリングとなり、電磁波は透過する。
【0025】
放射センサは、発生したプラズマによって放出された放射スペクトルをピックアップし、それを分光計へ伝達する働きをする光ファイバでよい。
【0026】
第1の実施形態では、分析システムは、気体排出物を監視すべきパイプに直列に統合される。
【0027】
代替実施形態では、分析システムは、外部継手を介してパイプに取り付けられている。
【0028】
本発明はまた、圧力が制御された少なくとも1つのエンクロージャと、圧力が制御された上記エンクロージャ内に含まれた気体を分析するガス分析システムとを含む設備を提供する。
【0029】
本発明によれば、ガス分析システムは、上に規定したようなものである。
【0030】
各プラズマ源は、上記設備が動作する間、低圧から大気圧まで、エンクロージャ内に存在する気体からプラズマを発生させることを可能にする。
【0031】
このタイプのプラズマ源によって得られるイオン化効率は、10−1mbarの圧力では10%に近く、そのため、精度の高い計測が実現される。
【0032】
分光計は、光を回折した後、プラズマの自由電子によって励起されたときに原子、分子、およびイオンが放出する放射の変動を実時間で分析する。
【0033】
したがって、大気圧で動作可能なプラズマ源を、発光スペクトル分析システムと組み合わせて使用することにより、圧力が制御されたエンクロージャの内部にある気体を連続的に診断することができるようになる。
【0034】
イオン化源を動作させるのに差分排気を使用する必要はないが、これを使用することによってガス分析器の体積が減少し、それゆえ分析器を半導体設備に(直列にまたは標準的な継手を介して)容易に統合できる。
【0035】
最後に、この光学分析技術のコストは、光学検出器をただ1つのイオン化源のみに関連させるため、少なくてすむ。これにより、この技術を、半導体産業で使用される設備の真空ラインで一般的に利用しやすくなる。
【0036】
本発明の他の利点および特徴は、添付の図面を参照しながら示す以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のシステムの第1の接続構成を示す図である。
【図2】本発明のシステムの第2の接続構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明のガス分析システム1は、制御された圧力下で、エンクロージャ3内に含まれた気体排出物を分析する働きをする。例えば、エンクロージャ3は、半導体集積回路を製造する設備(図示せず)の真空ライン3でよい。
【0039】
ガス分析システム1の動作原理は、気体をイオン化すること、および気体をイオン化することで生じる放射スペクトルを分析することに基づいている。
【0040】
このために、ガス分析システム1は、分析すべき気体をイオン化する装置を含む。この装置は、エンクロージャ3内の気体と接触する専用プラズマ源2によって構成され、分析すべき気体からプラズマを発生させる。プラズマ源2は、選択されたタイプのプラズマ源2に合う発生器6によって電力を供給される。
【0041】
一実施形態では、プラズマ源2は、共振空洞タイプのマイクロ波源、または表面波伝搬原理を用いたタイプのマイクロ波源である。この場合、発生器6は、マイクロ波発生器である。
【0042】
別の実施形態では、プラズマ源2は、誘導結合高周波プラズマ(ICP)タイプの高周波(RF)プラズマ源である。この場合、発生器6はRF発生器である。
【0043】
プラズマを分析するため、本発明のガス分析システム1は、専用プラズマ源2の近傍に位置するプローブ4を有しかつ生成されたプラズマが放出する放射スペクトルの変動を分析する分光計タイプのイオン化ガス分析装置4、5を含む。イオン化ガス分析装置4、5は、分析されるエンクロージャ3内でプラズマ源2の近傍に位置する一端と、発光分光計5に接続された他端を有するプローブ光ファイバ4を含む。プラズマの自由電子によって励起された原子、分子、およびイオンが放出する放射は、光ファイバ4を介して発光分光計5に伝達される。発光分光計5は、放射の変動を分析し、そこからイオン化気体の成分に関する情報を導き出す。
【0044】
図1は、気体排出物を監視すべきパイプ3に直列に統合された本発明のシステム1の図である。
【0045】
図2に示される別の接続構成では、本発明のシステム1は、外部継手7を介してパイプ3に取り付けることができる。
【0046】
当然、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、当業者は本発明を逸脱することなく多数の変形を実現できる。特に、プラズマを発生させる解決法はどのようなものでも説明した方法の代わりに使用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガス分析システム
2 専用プラズマ源
3 エンクロージャ
4 放射センサ
5 分光計
6 発生器
7 外部継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析すべき気体をイオン化する装置(2、6)と、イオン化された気体を分析する装置(4、5)とを備えた、制御された圧力下でエンクロージャ(3)内の気体を分析するガス分析システムであって、
分析すべき気体をイオン化する前記装置(2、6)が、エンクロージャ(3)内に含まれた気体と接触しかつ分析すべき気体からプラズマを発生させる発生器(6)に結合された専用プラズマ源(2)を備え、
イオン化された気体を分析する前記装置(4、5)が、プラズマが発生する領域の近傍に位置しかつ発生したプラズマによって放出された放射スペクトルの変動を分析する分光計(5)に接続された放射センサ(4)を備えることを特徴とするガス分析システム。
【請求項2】
プラズマ源(2)が共振空洞タイプのマイクロ波源であることを特徴とする請求項1に記載のガス分析システム。
【請求項3】
プラズマ源(2)が表面波伝搬原理を用いたマイクロ波源であることを特徴とする請求項1に記載のガス分析システム。
【請求項4】
プラズマ源(2)が誘導結合プラズマ(ICP)タイプの高周波プラズマ源であることを特徴とする請求項1に記載のガス分析システム。
【請求項5】
放射センサ(4)が、発生したプラズマによって放出された放射スペクトルをピックアップしてそれを分光計(5)へ伝達する働きをする光ファイバであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のガス分析システム。
【請求項6】
気体排出物を監視すべきパイプ(3)内に直列に統合されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のガス分析システム。
【請求項7】
外部継手(7)を介してパイプ(3)に取り付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のガス分析システム。
【請求項8】
圧力が制御された少なくとも1つのエンクロージャ(3)と、圧力が制御された前記エンクロージャ内に含まれた気体を分析するガス分析システム(1)とを含んでいる設備であって、ガス分析システム(1)が請求項1から7のいずれか一項に記載のガス分析システムであることを特徴とする設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−78616(P2010−78616A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−2484(P2010−2484)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【分割の表示】特願2000−7613(P2000−7613)の分割
【原出願日】平成12年1月17日(2000.1.17)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)
【Fターム(参考)】