説明

気体溶解システム、気体溶解方法、および気体溶解プログラム

【課題】適正な量の気体を供給して所望の気体溶解量で気体を液体に溶解させることが可能な気体溶解技術を提供する。
【解決手段】本願発明の気体溶解システム(1)は、液体を供給する液体供給路(20)、気体を供給する気体供給路(12)、気体を液体に溶解させる溶解部(15)、溶解部の上流側における液体の流量を測定する流量測定部(22)、溶解部の上流側における液体の温度を測定する温度測定部(21)、測定された液体の流量と、測定された液体の温度に対する気体の飽和溶解度特性と、に基づいて気体を液体に溶解させるための必要気体流量を演算する演算部(30)、必要気体流量で気体が供給されるように気体の流量を制御する、溶解部の上流側の気体供給路に設けられた気体流量制御部(13)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体を液体に溶解させる気体溶解装置に係り、特に、過不足無く気体を供給して飽和溶解量の気体を液体に溶解させることが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中の溶存酸素量を高めることができる酸素溶解装置が提案されていた。例えば、特開2004−089968号公報には、図1に示すように、送水管の管壁に管内外を連通させる間隙を設け、間隙の外側に酸素を供給する際に、間隙の外側の酸素圧力を間隙の内側の送水圧力より相対的に小さくなるよう圧力を調整する酸素溶解装置が開示されている。酸素は、酸素室36を形成するように間隙の外側を覆う酸素容器30、および酸素室36に酸素を送る酸素供給管92bを有する。さらに、酸素供給管92bの途中には中継タンク80、送水管における間隙の後流位置にエアーアウト、およびエアーアウトから中継タンク80に配管される回収管73が設けられている。このような軽微な構成により、動力を必要とせず、高い溶解性能が得られる酸素溶解装置が提供できていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−089968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の酸素溶解装置では酸素の供給量を調整していなかったため、種々の不都合を生じていた。例えば、酸素の供給量が少な過ぎた場合には、飽和溶解量の酸素を溶解させることができなかった。逆に、酸素の供給量が多過ぎた場合には、飽和溶解量を超え溶解されなかった酸素を排気せざるを得なかった。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、適正な量の気体を供給して所望の気体溶解量で気体を液体に溶解させることが可能な気体溶解技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一般に、気体の液体に対する飽和溶解量は液体の温度や圧力に依存する。そして液体の量が増えるほど気体の供給量も増やさなければならない。このことから考えると、これら刻々と変動しうる要素を考慮して気体の供給量を制御するのでなければ、過不足のない気体の供給が維持できないのである。本願発明者は、気体を過不足無く供給して液体に溶解させるためにはこれらの要素を考慮しなくてはならないことに気付き、本願発明に想到したのである。
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明の気体溶解システムは、気体を液体に溶解させるための気体溶解システムであって、前記液体を供給する液体供給路と、前記気体を供給する気体供給路と、前記気体を前記液体に溶解させる溶解部と、前記溶解部の上流側における前記液体の流量を測定する流量測定部と、前記溶解部の上流側における前記液体の温度を測定する温度測定部と、測定された前記液体の流量と、測定された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるための必要気体流量を演算する演算部と、前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御する、前記溶解部の上流側の前記気体供給路に設けられた気体流量制御部と、を備えたことを特徴とする。
尚、上述したように、気体の液体に対する飽和溶解度は、液体の温度の他に液体の圧力の影響を受ける。上記システムの演算においては、圧力一定とし固定値を使用する。
【0008】
また本願発明の気体溶解方法は、気体を液体に溶解させるために以下のステップを備えた気体溶解方法でもある。
a)前記液体の流量を測定するステップ;
b)前記液体の温度を測定するステップ;
c)測定された前記液体の流量と、測定された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるために必要気体流量を演算するステップ;
d)前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御するステップ;および
e)前記必要気体流量で供給される前記気体を前記液体に溶解させるステップ。
尚、上記方法の演算においては、圧力一定とし固定値を使用する。
【0009】
また本願発明の気体溶解プログラムは、気体を液体に溶解させるための気体溶解プログラムであって、コンピュータに、以下の機能を実行させるための気体溶解プログラムでもある。
a)前記液体の流量を入力させる機能;
b)前記液体の温度を入力させる機能;
c)入力された前記液体の流量と、入力された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるための必要気体流量を演算させる機能;および
d)前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御させる機能。
尚、上記プログラムの演算においては、圧力一定とし固定値を使用する。
【0010】
上述したように、気体の液体に対する飽和溶解量は液体の温度や圧力に依存する。溶解対象となる気体の液体に対する飽和溶解度特性が把握されておき、圧力を一定とすれば、液体の温度を測定することにより、測定された温度における液体に対する気体の飽和溶解度、すなわち、測定された温度において単位重量または単位体積の液体に溶解可能な気体の量を把握することができる。特定の飽和溶解度で気体を液体に溶解させるために必要とされる気体の流量は、測定された温度に対する飽和溶解度と気体を溶解させるべき液体の流量とに基づいて演算可能である。
【0011】
かかる発明によれば、気体の飽和溶解度特性を参照可能に格納しているので、液体の温度および流量を測定し、測定された液体の温度において液体の単位重量または単位体積に最大限に溶解させることのできる気体の流量(または重量)、すなわちその温度における飽和溶解度を特定可能であり、供給された液体の流量に対して溶解可能な最大限の気体の流量(または重量)が演算可能である。よって、本願発明によれば、測定された液体の温度において飽和溶解度で気体を液体に溶解させるために必要十分な気体の流量が供給することができる。このため、過剰な気体が供給されて液体に溶解することなく排気されてしまい、高価な気体を浪費することを防止可能である。また、飽和溶解度で溶解させるには少ない量の気体が供給されてしまい、気体を最大限に液体に溶解させることができない、という不都合も防止可能である。
【0012】
本発明は、所望により以下の要素をさらに備えていてもよい。
1−1)本発明の気体溶解システムにおいて、前記溶解部の上流側における前記液体の圧力を測定する圧力測定部をさらに備え、前記演算部は、測定された前記液体の流量と、測定された前記液体の圧力および測定された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記必要気体流量を演算する。
【0013】
1−2)気体を液体に溶解させるための気体溶解プログラムであって、コンピュータに、以下の機能を実行させるための気体溶解プログラムであること。
a)前記液体の流量を入力させる機能;
b)前記液体の温度を入力させる機能;
c)前記液体の圧力を入力させる機能;
d)入力された前記液体の流量と、入力された前記液体の圧力および入力された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるための必要気体流量を演算させる機能;および
e)前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御させる機能。
【0014】
上述したように、気体の液体に対する飽和溶解度は、液体の温度の他に液体の圧力の影響を受ける。かかる発明によれば、液体の温度に加えて液体の圧力に基づいて計測された飽和溶解度特性を用いて必要気体流量を演算するので、より正確に演算された気体流量を供給することができる。
【0015】
2)本発明の気体溶解システムにおいて、前記溶解部は、燒結金属フィルターを備え、前記気体を前記燒結金属フィルターにより前記液体に分散して前記気体を前記液体に溶解させる。
【0016】
燒結金属フィルターとは、金属製の粉体を溶融点前後の温度で焼き固めたもので、この燒結金属に液体や気体を流通させて不純物の除去を図る部材である。焼結金属フィルターは、燒結金属内に微細な流路が複雑に形成されているため、気体を液体中に微細な気泡として分散させることが可能である。すなわち、燒結金属フィルターの一端に液体を接触させ、他端から溶解させたい気体を所定圧力で供給すると、気体が燒結金属により分散した気泡となる結果、気体と液体とが接する表面積が大幅に増大させ、気体を液体に溶解させ易くなる。かかる発明によれば、溶解部が燒結金属フィルターを備えているので、必要気体流量で供給された気体を過不足無く液体に溶解させることが可能である。
【0017】
3)本発明の気体溶解システムにおいて、前記演算部には、前記液体に対する前記気体の溶解度を任意に設定可能に構成されており、前記演算部は、設定された前記気体溶解度が前記気体の飽和溶解度以下であると判断した場合には、前記必要気体流量として、前記気体溶解度で前記気体を前記液体に溶解させるために必要な前記気体の流量を演算する。
【0018】
飽和溶解度以下であれば、気体の流量を調整することによって、液体に溶解させる気体の量を調整可能である。かかる発明によれば、飽和溶解度以下である場合には、指定された溶解度で気体を液体に溶解させるために必要な気体の流量が演算され、その必要気体流量で気体が供給されるので、所望の溶解度で気体を液体に溶解させることができる。
【0019】
4)本発明の気体溶解システムにおいて、前記演算部は、設定された前記気体溶解度が前記気体の飽和溶解度を超えると判断した場合には、前記必要気体流量として、前記気体の飽和溶解度で前記気体を前記液体に溶解させるために必要な前記気体の流量を演算する。
【0020】
飽和溶解度に達するために必要な気体の流量を超える気体をいくら供給しても液体には飽和溶解度より大きな量の気体を溶解することができない。かかる発明によれば、設定された溶解度が飽和溶解度を上回る場合には飽和溶解度とする必要気体流量を供給することとするので気体の浪費を防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、測定された液体の流量と、測定された液体の温度に対する飽和溶解度特性と、に基づき適切な量の気体が供給されるので、過剰な気体が供給されて気体を無駄に排気したり、過少な気体が供給されて期待される気体の溶解量に達しなかったりする不都合を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1の気体溶解システムのシステム構成図。
【図2】気体の液体に対する温度−飽和溶解度特性。
【図3】実施形態1の気体溶解方法(その1)を説明するフローチャート。
【図4】実施形態2の気体溶解システムのシステム構成図。
【図5】液体(気体)圧力に対する液体に溶解する気体の濃度特性図。
【図6】気体の液体に対する温度および圧力−飽和溶解度特性。
【図7】実施形態2の気体溶解方法(その2)を説明するフローチャート。
【図8】実施形態3の気体溶解システムのシステム構成図。
【図9】実施形態3の気体溶解方法(その3)を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。ただし、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
(実施形態1)
本発明の実施形態1は、液体の温度と液体の流量とを測定し、それらに基づいて気体を液体に溶解させるための必要気体流量を演算し、その流量で気体が供給されるように制御する発明に関する。
【0025】
(システム構成)
図1に本実施形態1における気体溶解システムのシステム構成図を示す。
図1に示すように、本実施形態1における気体溶解システム1は、気体供給系の構成として、気体タンク10、元弁11、気体供給路12、マスフローコントローラ13、逆止弁14、および溶解部15を備えている。また、気体溶解システム1は、液体供給系の構成として、液体供給路20、液体温度センサ21、液体流量センサ22、および液体排出路25を備えている。さらに気体溶解システム1は、元弁11、気体供給路12、マスフローコントローラ13等の各種構成部材を制御する制御部30を備えている。
【0026】
本発明において利用可能な気体は任意に選択可能である。液体に対する溶解度に温度依存性を有する気体であれば、本発明の対象気体として利用することが可能である。例えば、水素、ヘリウム、窒素、二酸化炭素、酸素、塩化水素、アンモニア等、工業的にまたは商業的に利用可能な気体を適用することが可能である。
【0027】
同様に本発明において利用可能な液体も任意に選択可能であるが、少なくとも、利用される気体を溶解することが可能な液体である必要がある。液体として、典型的に水が利用されるが、その他、アルコール類や溶剤、利用目的に応じて何らかの溶質を溶解させた溶液を用いてもよい。
【0028】
まず、気体供給系の構成について説明する。
気体タンク10は、気体を高圧に収納する貯蔵部であり、種々の気体収納構造を利用可能である。元弁11は、気体タンク10から気体を気体供給路12に供給したり遮断したりすることが可能に構成されている。気体供給路12は、気体を流通させる流路を形成する配管である。気体供給路12には、図示しないレギュレータ(調圧弁)を設けて、一定圧力の気体を供給するように構成してもよい。
【0029】
マスフローコントローラ13は、本願発明の気体流量制御部に相当し、熱式流れセンサおよびソレノイドバルブを備えている。マスフローコントローラ13は、制御部30からの流量指令信号CQを入力し、気体供給路12を流れる気体の流量を熱式流れセンサで検出しながらソレノイドバルブを制御して、流量指令信号CQで指令された流量で気体が流通するように制御する。ただし、気体の流量をある程度正確に制御可能であればよく、マスフローコントローラの構造や機能に限定はない。
【0030】
逆止弁14は、下流側から液体が気体供給路12側に逆流することを抑制可能に構成されている。逆流防止の安全対策としては、逆止弁14が簡便であり好ましいが、必須の構成要素ではない。例えば、気体供給路12の圧力を適正に制御可能であり、液体が逆流する危険性が少ないのであれば、特に逆止弁14を設けなくてもよい。
【0031】
溶解部15は、気体供給路12から供給された気体を液体供給路20から供給された気体に溶解させ、液体排出路25に排出するよう構成されている。溶解部15は、その構造に限定はないが、気体と液体とが接触する面積を可能な限り拡大して、気体の液体への溶解を効率的に促進可能な構造を有することが好ましい。例えば、溶解部15として、燒結金属フィルターを用いることが好ましい。
【0032】
焼結金属フィルターは、金属製の粉体を溶融点前後の温度で焼き固めたものであり、例えば、ブロンズ球体粉、SUS(ステンレス)異形粉、SUS球体粉などを溶融させることにより構成されている。燒結金属フィルターは、フィルターを構成する金属粉体の大きさを調整することにより、溶着した粉体の間に形成される間隙の大きさを調整可能に構成されている。焼結金属フィルターは、透過させる液体や気体から不純物を濾過したり、液体または固体から気体成分を除去したり、気体を万遍なく拡散させたりする用途に用いることができる。この焼結金属フィルターは、燒結金属内で微細な流路が複雑に形成されているため、気体を微細な気泡として液体中に分散させ、気体と液体との接触面積を増大させることができるため、本発明の溶解部15の構造として適している。
【0033】
次に液体供給系の構成を説明する。
液体供給路20は、液体を流通させる流路を形成する配管である。本発明の液体として、例えば水のように公共的に供給される液体を利用する場合には、液体供給路20へは公共の水道設備から引水するように構成すればよい。本発明の液体として、水以外の液体を用いる場合には、それらの液体を貯蔵タンクに貯蔵し、その貯蔵タンクから液体気体供給路12に液体を供給するように構成する。液体供給路20には、必要に応じて、図示しない制御弁を設けてもよい。
液体温度センサ21は、本発明の温度測定部に相当し、液体供給路20内を流通する液体の温度を検出可能に構成されている。液体温度センサ21は、液体の温度を検出して温度検出信号STを制御部30に出力するように構成されている。気体が溶解される場所における液体の温度を検出すべきであることから、液体温度センサ21は、可能な限り溶解部15に近づけて設置することが好ましい。
液体流量センサ22は、本発明の流量測定部に相当し、液体供給路20内を流通する液体の流量(体積)を測定可能に構成されている。液体流量センサ22は、液体の流量を検出して流量検出信号SQを制御部30に出力するように構成されている。液体流量センサとしては、液体の流量を検出可能なものであればよく、例えば電磁流量計、差圧流量計、アニューバ流量計、ベンチュリ流量計、渦流量計等、種々の測定原理に基づく流量計を利用可能である。また、液体供給路20の断面積Sが把握されているのであれば、液体の流速Vを測定することで液体の流量Q(=S×V)を把握可能であるため、流速センサを流量センサに代えてもよい。
【0034】
図1に示すように、液体供給路20は、分岐点24において溶解部15に接続されている。溶解部15内で、気体と液体とは一定の圧力で接触し、気体が微細な気泡となって液体中に拡散する結果、気体が液体に溶解し、気体が所定の溶解度で溶解した液体となって液体排出路25から排出される。
【0035】
制御部30は、本発明の演算部に相当するコンピュータ装置であり、図示しないが、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、各種インターフェース装置を備えている。制御部30には、本発明の気体溶解用プログラムが搭載されており、当該プログラムを実行することにより、本発明の気体溶解方法を実施可能に構成されている。制御部30は、特に、後述する温度−飽和溶解度特性をデータテーブルとして格納している。制御部30は、必ずしも液体温度センサ21や液体流量センサ22、マスフローコントローラ13の近傍に配置される必要はなく、遠隔地に配置される遠隔操作装置であってもよい。
【0036】
(動作の説明)
次に図面を参照しながら気体溶解システム1の動作を説明する。
図2に液体の温度に対する飽和溶解度特性(曲線)を示す。図2には、気体1に対する飽和溶解度特性q1、気体2に対する飽和溶解度特性q2、気体3に対する飽和溶解度特性q3が、それぞれ例示されている。圧力が一定であることを前提としている。図2に示すように、圧力一定のとき、気体の溶解度は温度に応じて変化する。気体の溶解は発熱反応であり、温度が高いほど気体は液体に溶けにくく、温度が低いほど気体は液体に溶けやすい。気体の種類が異なっても、この傾向は同じである。
【0037】
図2に示すように、圧力が一定の場合、溶解させる気体と溶解対象となる液体とを特定すれば、飽和溶解度は一義的に定まる。よって、温度−飽和溶解度特性が判っていれば、温度が変化してもその温度における飽和溶解度を特定可能である。飽和溶解度は、液体の単位体積または単位重量に対する気体の体積で表される。一定流量(体積)を飽和溶解度で溶解させる気体の流量(体積)は、特定された飽和溶解度と供給される液体の流量とに基づいて容易に演算可能であることが判る。
【0038】
本実施形態1では、制御部30は、システムの圧力がほとんど変化しないという前提で、利用する気体と液体とについて測定された温度−飽和溶解度特性を記憶してある。そして、液体温度センサ21から入力された温度検出信号STの示す液体の温度TLに基づいて必要気体流量Qreqを演算し、その必要気体流量Qreqが供給されるようにマスフローコントローラ13を制御するように動作する。
【0039】
具体的に、測定された液体温度TLに基づき温度−飽和溶解度特性を参照して気体の飽和溶解度DTが得られた場合を考える。飽和溶解度は、単位体積(単位重量)当たりに溶解可能な気体の重量(例えばグラムまたはモル)を示しているので、測定された液体流量QLに基づき必要気体重量WAは、式(1)により得られる。
A=QL×DT …(1)
例えば気体のモル数が判れば、式(2)により気体の体積(すなわち必要気体流量)Vが演算できる。
V=nRT/P … (2)
(ただし、液体にかかる圧力をP[Pa]、体積をV[m3]、気体のモル数をn[mol]、気体定数をR[J/(mol・K)]、絶対温度をT(K)とする。)
【0040】
なお、温度−飽和溶解度特性は、温度を変化させながら、当該気体溶解システム1で使用する液体単位体積当たりに溶解した気体の体積を測定することで得ることができる。幾つかの気体については、化学便覧などに温度−飽和溶解度特性が掲載されているので、それを利用してもよい。
【0041】
また、気体の飽和溶解度の温度依存性は、式(3)で表されるような所定の関係式で近似できる。
LogD=a/T+bxT+cxLogT+d …(3)
(ただし、D:溶解度[w/wt%]、T=(t(温度[℃])+273.15)、a,b,c,d:定数)
【0042】
さらに、オストワルド(Ostwald)溶解度定数、ブンゼン(Bunsen)吸収定数などにより、気体の溶解度を表すことも可能である。よって、飽和溶解度特性のデータテーブルに代えて、このような関係式に基づき測定された温度から飽和溶解度を直接演算するように構成してもよい。
【0043】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、具体的な気体溶解システム1の動作を説明する。当該フローチャートに基づく気体溶解方法1は、図1に示す制御部30が所定の気体溶解用プログラムを実行することにより行われる。
【0044】
ステップS101において、制御部30は、本実施形態1の気体溶解方法1を実施するタイミングであるか否かを判定する。実施タイミングでない場合には(NO)、当該処理から復帰する。気体溶解方法1の実施タイミングであると判定された場合(YES)、ステップS102に移行し、制御部30は、液体流量センサ22から入力された流量検出信号SQに基づき液体供給路20を流通する液体流量QLを測定する。次いでステップS103に移行し、制御部30は、液体温度センサ21から入力された温度検出信号STを参照し、直近の液体温度TLを測定する。
【0045】
次いでステップS104に移行し、制御部30は、温度−飽和溶解度特性を参照し、測定された液体温度TLにおける気体の飽和溶解度DTを特定する。そしてステップS105に移行し、制御部30は、ステップS102で測定された液体流量QLと飽和溶解度DTとに基づいて気体を液体に飽和溶解度DTで溶解させるために必要な気体の流量(必要気体流量Qreq)を演算する。
【0046】
必要気体流量Qreqが演算されたらステップS106に移行し、制御部30は、溶解部15に供給する気体の流量が必要気体流量Qreqとするための流量指令信号CQをマスフローコントローラ13に出力する。マスフローコントローラ13は、この流量指令信号CQに基づいて気体の流量を調整し、必要気体流量Qreqに調整された気体が溶解部15に供給される。溶解部15では、この気体を微細な気泡として液体に分散させる。このとき、気体の流量は飽和溶解度で気体を液体に溶解させるに必要十分な必要気体流量Qreqに調整されているので、気体を過不足無く液体に溶解させることができる。
【0047】
以上示したように、実施形態1の気体溶解システムによれば以下のような利点を有する。
1)本実施形態1によれば、予め測定され格納されている温度−飽和溶解度特性に基づき、測定された液体の温度において飽和溶解度で気体を液体に溶解させるために必要十分な気体の流量が供給することができる。よって、過剰な流量で気体が供給されて液体に溶解することなく排気されて高価な気体を浪費したり、少ない流量で気体が供給されて飽和溶解度に達しなかったりする不都合も防止可能である。
【0048】
2)本実施形態1によれば、溶解部15が燒結金属フィルターを備えているので、気体と液体とが接する表面積を大幅に増大させ、効率的に気体を液体に溶解させることが可能である。
【0049】
3)本実施形態1によれば、制御部30が温度−飽和溶解度特性をデータテーブルとして記憶し参照可能に構成されているので、利用する気体と液体とを変更する場合に、温度−飽和溶解度特性を示すデータテーブルに変更することで、異なる種類の気体と液体とを取り扱うシステムにも容易に適用させることが可能である。
【0050】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、液体の温度と液体の流量との他に液体の圧力を測定し、それらに基づいて気体を液体に溶解させるための必要気体流量を演算し、その流量で気体が供給されるように制御する発明に関する。上記実施形態1と同様の構成については同じ符号を付すこととし、詳細な説明を適宜省略する。
【0051】
図4に本実施形態2における気体溶解システム1bのシステム構成図を示す。
図4に示すように、本実施形態2における気体溶解システム1bは、気体供給系の構成として、気体タンク10、元弁11、気体供給路12、マスフローコントローラ13、逆止弁14、および溶解部15を備えている。また、液体供給系の構成として、液体供給路20、液体温度センサ21、液体流量センサ22、液体圧力センサ23、および液体排出路25を備えている。
本実施形態2の気体溶解システム1bは、実施形態1のシステムにさらに液体圧力センサ23を液体供給路20に備えている点で、上記実施形態1と異なっている。そして、本実施形態2の制御部30は、液体温度センサ21からの温度検出信号ST、液体流量センサ22からの流量検出信号SQに加えて、液体圧力センサ23から圧力検出信号SPを入力し、液体の流量QLおよび液体の温度TLに加えて、液体の圧力PLに基づいて必要とされる気体の流量を演算可能に構成されている点で、上記実施形態1と異なっている。
【0052】
次に本実施形態2における気体溶解システム1bの動作を説明する。
図5に液体圧力に対して液体に溶解した気体の濃度がどのように変化するかの特性を示す。なお、気体と液体との界面では両者の圧力が平衡するため、液体の圧力を気体の圧力と捉えてもよい。
【0053】
図5に示すように、気体の溶解度はその圧力に比例し、温度が一定のとき、圧力が高いほど気体の溶解度は高くなる。これは、一定量の気体に溶ける気体の体積は圧力とは無関係に一定であるとも言い換えることができる。これをヘンリーの法則(Henry's Law)という。ヘンリーの法則は、圧力が高すぎず、また、温度が低すぎない状態において多くの気体に当てはまる法則である。より具体的には、液体に対する気体の溶解度は、液体に接しているその気体の分圧に比例する。気体の液体に対する溶解が平衡状態にある場合、質量保存の法則から式(4)が成り立つ。
A/CLA=H …(4)
(ここで、CA:気体の濃度(圧力)、CLA:液体中に溶解する気体の濃度、H:定数)
したがって、上記実施形態1で説明した温度−飽和溶解度特性は、ヘンリーの法則に基づいて液体(気体)の圧力に応じて変化するのである。
【0054】
図6に、液体圧力の変化に対する温度−飽和溶解度特性の変化を示す。図6に示すように、液体の圧力がp1からp3にかけて(p1<p2<p3)大きくなるほど飽和溶解度qp1、qp2、qp3は上昇していく。圧力pにおいて所定の温度tにおける飽和溶解度をqp(t)で表すとすれば、同じ液体温度Tであれば、飽和溶解度は、qp1(T)<qp2(T)<qp3(T)となる。上記実施形態1で説明したように、圧力を一定にすれば温度−飽和溶解度特性は一義的に定まるので、予想される圧力変化の範囲で温度−飽和溶解度特性を予め測定して格納しておけば、温度に加えて圧力が変化した場合でも、その温度およびその圧力における飽和溶解度を特定可能である。飽和溶解度は、液体の単位体積または単位重量に対する気体の重量で表されるので、飽和溶解度と液体の流量とが判れば、飽和溶解度で溶解させるために必要な気体の流量(体積)が演算可能であることが判る。
【0055】
そこで本実施形態2において、制御部30は、複数の圧力について予め測定された温度−飽和溶解度特性が複数記憶してある。制御部30は、温度圧力センサ23から入力された圧力検出信号SPの示す液体圧力PLに基づいて、利用すべき温度−飽和溶解度特性を決定し、液体温度センサ21から入力された温度検出信号STの示す液体温度TLに基づいて、その液体圧力PLおよび液体温度TLにおける飽和溶解度DTPを特定する。そして液体流量センサ22から入力された流量検出信号SQの示す液体流量QLと、特定された飽和溶解度DTPとに基づいて、必要気体流量Qreqを演算し、その必要気体流量Qreqが供給されるようにマスフローコントローラ13を制御するように動作する。測定された圧力に応じた温度−飽和溶解度特性が選択された後の詳細な演算については、上記実施形態1で説明したとおりである。
【0056】
なお、圧力毎の温度−飽和溶解度特性は、温度を変化させながら、当該気体溶解システム1bで使用する液体単位体積当たりに溶解した気体の体積を測定することで得ることができる。圧力に応じて測定される温度−飽和溶解度特性は、一定数の圧力について測定しておけばよい。測定された液体圧力に対応する温度−飽和溶解度特性が存在しない場合には、測定された液体圧力の前後に近似する液体圧力について測定された温度−飽和溶解度特性を用いて補間演算することで、測定された液体圧力および液体温度についての飽和溶解度を得ることができる。また、上記実施形態1で説明したように、所定の関係式に基づいて飽和溶解度を求めるように構成してもよい。
【0057】
次に、図7に示すフローチャートを参照して、具体的な気体溶解システム2の動作を説明する。当該フローチャートに基づく気体溶解方法1bは、制御部30が所定の気体溶解用プログラムを実行することにより行われる。
【0058】
ステップS201において、制御部30は、本実施形態2の気体溶解方法2を実施するタイミングであるか否かを判定する。実施タイミングでない場合には(NO)、当該処理から復帰する。気体溶解方法2の実施タイミングであると判定された場合(YES)、ステップS202に移行し、制御部30は、液体流量センサ22から入力された流量検出信号SQに基づき液体供給路20を流通する液体流量QLを測定する。次いでステップS203に移行し、制御部30は、液体温度センサ21から入力された温度検出信号STを参照し、直近の液体温度TLを測定する。さらにステップS204に移行し、制御部30は、液体圧力センサ23から入力された圧力検出信号SPに基づき液体流路20内の液体圧力PLを測定する。
【0059】
次いでステップS205に移行し、制御部30は、異なる圧力毎に用意されている複数の温度−飽和溶解度特性を参照し、測定された液体圧力PLに対応する温度−飽和溶解度特性を選択する。そしてステップS205に移行し、制御部30は、測定された液体温度TLにおける気体の飽和溶解度DTPを選択された温度−飽和溶解度特性から特定する。
【0060】
なお、液体圧力PLに直接的に対応する温度−飽和溶解度特性が存在しなかった場合には、制御部30は、測定された液体圧力PLに近似する2つの温度−飽和溶解度特性(例えば、測定された液体圧力PLに最も近い相前後する特性)を参照する。そして、それぞれの温度−飽和溶解度特性(例えば、q1およびq2)を参照して、測定された液体温度TLにおける気体の飽和溶解度(例えば、q1について飽和溶解度DT1、q2について飽和溶解度DT2)を特定する。飽和溶解度DTPは、近似する両飽和溶解度DT1およびDT2の補間演算を例えば式(5)の関係式に基づいて算出する。
TP=w・DT1+(1−w)・DT2 …(5)
【0061】
ただし、wは重み付け係数(0<w<1)であり、測定された液体圧力PLと飽和溶解度特性q1およびq2の計測時の圧力との乖離度に応じて定める。例えば、飽和溶解度特性q1の計測時圧力をP1、飽和溶解度特性q2の計測時圧力をP2とすれば、重み付け係数wは、式(6)のように計算可能である。
w=|PL−P2|/|P1−P2| …(6)
【0062】
飽和溶解度DTが演算されたらステップS206に移行し、制御部30は、ステップS202で測定された液体流量QLと飽和溶解度DTPとに基づいて気体を液体に飽和溶解度DTPで溶解させるために必要な気体の流量(必要気体流量Qreq)を演算する。
【0063】
必要気体流量Qreqが演算されたらステップS207に移行し、制御部30は、溶解部15に供給する気体の流量が必要気体流量Qreqとするための流量指令信号CQをマスフローコントローラ13に出力する。マスフローコントローラ13は、この流量指令信号CQに基づいて気体の流量を調整し、必要気体流量Qreqに調整された気体が溶解部15に供給される。溶解部15では、この気体を微細な気泡として液体に分散させる。このとき、気体の流量は飽和溶解度で気体を液体に溶解させるに必要十分な必要気体流量Qreqに調整されているので、気体を過不足無く液体に溶解させることができる。
【0064】
以上示したように、実施形態2の気体溶解システムによれば、上記実施形態1の利点に加え、液体の温度に加えて液体の圧力も考慮して予め計測された温度−飽和溶解度特性を参照するので、圧力が変動するようなシステムにおいても、正確に必要気体流量を演算し、供給することができるという利点を有する。
【0065】
(実施形態3)
本発明の実施形態3は、所望の気体の溶解度を設定可能に構成した発明に関する。以下では、上記実施形態1の気体溶解システムに任意の気体溶解度を設定可能にした構成の変形例を説明するが、上記実施形態2の気体溶解システムに対しても同様の変形が可能である。上記実施形態1と同様の構成については同じ符号を付すこととし、詳細な説明を適宜省略する。
【0066】
図8に本実施形態3における気体溶解システムのシステム構成図を示す。
図8に示すように、本実施形態3における気体溶解システム1cは、上記実施形態1とほぼ同じ構成を備えている。ただし、オペレータにより情報入力をさせるための操作部31が制御部30に接続されている点で、まず上記実施形態1と異なる。また本実施形態3の制御部30は、操作部31から所望の気体の溶解度が設定された場合に、その所望の気体溶解度で気体を液体に溶解させるために必要な気体の流量を演算可能に構成されている点でも、上記実施形態1と異なる。
【0067】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、具体的な気体溶解システム1cの動作を説明する。当該フローチャートに基づく気体溶解方法3は、制御部30が所定の気体溶解用プログラムを実行することにより行われる。
【0068】
ステップS301において、制御部30は、本実施形態3の気体溶解方法3を実施するタイミングであるか否かを判定する。実施タイミングでない場合には(NO)、当該処理から復帰する。気体溶解方法3の実施タイミングであると判定された場合(YES)、ステップS302に移行し、制御部30は、液体流量センサ22から入力された流量検出信号SQに基づき液体供給路20を流通する液体流量QLを測定する。次いでステップS303に移行し、制御部30は、液体温度センサ21から入力された温度検出信号STを参照し、直近の液体温度TLを測定する。
【0069】
次いでステップS304に移行し、制御部30は、操作部31から入力があった場合には、その入力情報に基づいてオペレータが指示した所望の気体溶解度Ddesを入力する。次いでステップS305に移行し、制御部30は、温度−飽和溶解度特性を参照し、測定された液体温度TLにおける気体の飽和溶解度DTを特定する。次いでステップS306に移行し、制御部30は、気体の飽和溶解度DTと所望の気体溶解度Ddesとを比較する。オペレータの指示した所望の気体溶解度Ddesがその温度における飽和溶解度DT以下になっていれば、所望の気体溶解度Ddesで気体を液体に溶解させることができるが、飽和溶解度DTを超える溶解度で気体を溶解させることは不可能である。
【0070】
そこでステップS307において所望の気体溶解度Ddesが飽和溶解度DT以下であると判定された場合には(YES)、ステップS308に移行し、制御部30は、所望の気体溶解度Ddesで気体を液体に溶解させるに適する必要気体流量Qreqを演算する。一方、所望の気体溶解度Ddesが飽和溶解度DTを超える値であった場合には(NO)、ステップS308に移行し、制御部30は、飽和溶解度DTで気体を液体に溶解させるに適する必要気体流量Qreqを演算する。そしてステップS310に移行し、制御部30は、オペレータに所望の飽和溶解度に代えて飽和溶解度が設定された旨を報知する。
【0071】
なお、所望の気体溶解度Ddesについての必要気体流量は、上記実施形態1の式(1)に飽和溶解度DTに代えて所望の気体溶解度Ddesを代入して算出された気体重量に基づいて必要気体流量Qreqを算出すればよい。
【0072】
必要気体流量Qreqが演算されたらステップS311に移行し、制御部30は、溶解部15に供給する気体の流量が必要気体流量Qreqとするための流量指令信号CQをマスフローコントローラ13に出力し、必要気体流量Qreqに調整された気体が溶解部15に供給される。
【0073】
以上示したように、実施形態3の気体溶解システムによれば、上記実施形態1と同様の利点(操作部31を実施形態2の気体溶解システムに設けた場合には実施形態2の利点)を備える他、所望の気体の溶解度を設定可能に構成したので、気体の溶解度を厳密に制御しなければならない場合に利用することが可能である。
また本実施形態3によれば、設定された気体の溶解度が飽和溶解度を超えていると判定された場合には、その旨報知されるので、オペレータは自ら設定した溶解度で気体を溶解させることができていないことを認識し、適切な措置を採ることができる。
【0074】
(その他の変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用することが可能である。
【0075】
例えば、上記実施形態では、気体に溶解させる液体を一種類であるという前提で説明したがこれに限定されず、複数種類の気体を用いてもよい。具体的には、気体の種類別に、気体タンク、マスフローコントローラ、および必要な弁類からなる気体供給路を複数並列に設け、各マスフローコントローラの下流側で互いに気体供給路を連結接続する。各気体に対する必要気体流量の演算およびマスフローコントローラに対する必要気体流量の設定は、気体毎に設けられた気体供給系で実行すればよい。ヘンリーの法則により、所定の液体に溶解させることのできる気体の溶解度は、それぞれの気体の分圧に比例する。よって、それぞれの気体に対して飽和溶解度または所望の溶解度とするために必要十分な気体流量を設定可能である。
【0076】
また、上記実施形態では、飽和溶解度を求めるためにデータテーブルを利用したが、所定の温度および圧力に対する飽和溶解度をコンピュータが把握可能であれば、その他の構成で飽和溶解度を求めるようにしてもよい。
【0077】
また飽和溶解度は中間情報であり、必ずしもシステムが出力しなければならない情報ではない。このため、測定された液体の温度や液体の圧力から直接的に必要気体流量を求めるように構成してもよい。
【0078】
さらに、上記実施形態では、液体について温度や圧力を測定していたが、気体の温度や気体の圧力を利用して液体の温度や液体の圧力の代用とすることが可能であり、また、溶解部や液体供給路の温度を利用したりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の気体溶解システム、気体溶解方法、および気体溶解プログラムは、最大量の、または、所望の量の気体を液体に溶解させる用途の工業プラント等に適用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を液体に溶解させるための気体溶解システムであって、
前記液体を供給する液体供給路と、
前記気体を供給する気体供給路と、
前記気体を前記液体に溶解させる溶解部と、
前記溶解部の上流側における前記液体の流量を測定する流量測定部と、
前記溶解部の上流側における前記液体の温度を測定する温度測定部と、
測定された前記液体の流量と、測定された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるための必要気体流量を演算する演算部と、
前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御する、前記溶解部の上流側の前記気体供給路に設けられた気体流量制御部と、
を備えたことを特徴とする気体溶解システム。
【請求項2】
前記溶解部は、
燒結金属フィルターを備え、
前記気体を前記燒結金属フィルターにより前記液体に分散して前記気体を前記液体に溶解させる、
請求項1に記載の気体溶解システム。
【請求項3】
前記溶解部の上流側における前記液体の圧力を測定する圧力測定部をさらに備え、
前記演算部は、
測定された前記液体の流量と、測定された前記液体の圧力および測定された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記必要気体流量を演算する、
請求項1または2に記載の気体溶解システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記液体に対する前記気体の溶解度を任意に設定可能に構成されており、
前記演算部は、設定された前記気体の溶解度が前記気体の飽和溶解度以下であると判断した場合には、前記必要気体流量として、前記気体の溶解度で前記気体を前記液体に溶解させるために必要な前記気体の流量を演算する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の気体溶解システム。
【請求項5】
前記演算部は、設定された前記気体の溶解度が前記気体の飽和溶解度を超えると判断した場合には、前記必要気体流量として、前記気体の飽和溶解度で前記気体を前記液体に溶解させるために必要な前記気体の流量を演算する、
請求項4に記載の気体溶解システム。
【請求項6】
気体を液体に溶解させるための気体溶解方法であって、
前記液体の流量を測定するステップと、
前記液体の温度を測定するステップと、
測定された前記液体の流量と、測定された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるための必要気体流量を演算するステップと、
前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御するステップと、
前記必要気体流量で供給される前記気体を前記液体に溶解させるステップと、
を備えたことを特徴とする気体溶解方法。
【請求項7】
前記液体の圧力を測定するステップを備え、
前記必要気体流量を演算するステップでは、測定された前記液体の流量と、測定された前記液体の圧力および測定された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記必要気体流量を演算する、
請求項6に記載の気体溶解方法。
【請求項8】
気体を液体に溶解させるための気体溶解プログラムであって、
コンピュータに、
前記液体の流量を入力させる機能と、
前記液体の温度を入力させる機能と、
入力された前記液体の流量と、入力された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるための必要気体流量を演算させる機能と、
前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御させる機能と、
を実行させるための気体溶解プログラム。
【請求項9】
気体を液体に溶解させるための気体溶解プログラムであって、
コンピュータに、
前記液体の流量を入力させる機能と、
前記液体の温度を入力させる機能と、
前記液体の圧力を入力させる機能と、
入力された前記液体の流量と、入力された前記液体の圧力および入力された前記液体の温度に対する前記気体の飽和溶解度特性と、に基づいて前記気体を前記液体に溶解させるための必要気体流量を演算させる機能と、
前記必要気体流量で前記気体が供給されるように前記気体の流量を制御させる機能と、
を実行させるための気体溶解プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−207724(P2010−207724A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56787(P2009−56787)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】