説明

気体/液体反応のための供給ノズル集成体及びバーナー装置

気体/液体反応系を含む合成反応及び燃焼反応の用途に適した供給ノズル集成体は、液滴の衝撃破壊と凝集とのバランスを好適にとることにより、ザウター平均直径として測定される容認できる液滴の改善を得るか、または維持するためにそれらの噴霧体が互いに衝突するように配置された複数のノズルを含む。この供給ノズル集成体は、酸素及びモデレータガス、例えば、蒸気を供給するために、段階的に延びるバリヤと組み合わさる環状領域であって、好ましくは全てウォータージャケットのような外部環状冷却手段内にある環状領域をバーナー装置内に内蔵することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年1月6日付けで出願された米国特許出願第11/030,925号明細書の優先権を主張する。
1. 発明の分野
本発明は供給ノズルに関し、そしてより具体的には、供給ノズルがバーナー装置の一部である、化学合成反応及び燃焼及びその他の酸化反応を含む、種々の気体/液体反応のための供給ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
2. 技術の背景
種々様々な関連産業が、所望の最終結果を生じさせるために、気体/液体系の反応を採用している。これらは例えば、廃棄物低減産業、化学薬品製造産業、ガス製造産業、及びエネルギー源として燃焼に依存するエネルギー関連産業を含む。これらの産業のそれぞれは共通して、しばしば高温ゾーン内部で1種又は2種以上の液体の流れを微細に噴霧することにより、この反応を生じさせる。ガス化反応の場合、噴霧及びより高い温度の両方が、分子レベル又は分子に近いレベルで混合を改善する液相から気相への変化を促進し、これにより所望の最終結果を促進するために役立つ。この混合は、1種又は2種以上の化合物又は組成物と、特定のガス、例えば空気、酸素、二酸化炭素、蒸気、不活性ガス、例えばアルゴン又は窒素、又はこれらの混合物との混合であることができる。
【0003】
上記タイプの反応のそれぞれに際して、噴霧は一般に、何らかのタイプの反応容器内で行われる。反応容器の1つの共通のタイプは、ハロゲン化炭化水素の混合物である液状化学廃棄物を焼却(バーニング)するために使用される、耐火性ライニングを施された、概ね円筒形の容器であることが多い。これらのうちの多くは塩素化化合物であるので、これらを説明するために「R-Cls」という用語がしばしば使用される。本質的には、同じタイプの燃焼反応は、例えば噴霧された液体流が高温ゾーン内で酸素と混合するような単純な内燃機関におけるように達成され、そして望ましく高度な変換の結果、残留炭素(「すす」)を最小限に含む、水素、二酸化炭素、及び一酸化炭素の最終生成物をもたらす。出発生成物及び所望の最終生成物の必要性に応じて、種々様々な化学合成作業のために、他のタイプの反応容器が使用される。
【0004】
前述の業界は、適切な反応容器内に特定の出発液体流を運ぶのに適した供給ノズルを開発することに照準を合わせて、多くの工夫を行っている。これらの業界は、反応器内の転化率に影響を及ぼす多数の因子を認識しており、そして供給ノズルは、速度、流れ動力学特性、及び液体の噴霧体パターンを変更するように構成されている。これらの構成選択は、本質的に1つの受け入れられている概念、すなわち、液体の液滴サイズは、プロセスの究極の結果、つまり性能を決定する上での重要な要因である、という概念によって動機付けされる。簡単に述べるならば、液滴が余りにも大きい場合、液体流と気体流、例えば酸素との混合率が低下する。混合率が低下すると(分子間の界面の減少による)、液体流の転化率も同様に低下する。転化率が低下すると、その結果、しばしば、すすを形成するか又は反応器を去るおそれのある残留未反応液体状供給となる。このことは、環境に対する望ましくない結果を招くことがある。すすは、設備を汚染するおそれがあり、結果として高価な中断時間を必要とする。このように、供給ノズル技術は一貫して、液滴サイズが適切に小さいままであることを確保するために、供給ノズルの開口部は制限されたままでなければならず、このことはノズルのスループットを制限することを認識している。この固有の液滴サイズ制限は、これまで作業効率を制限しており、そしてその結果、噴霧流が収束しないように配列された複数のバーナーノズルを有する複数の並列な反応容器、又は単一の反応器を使用することになっている。その理由は、当業者が、噴霧流の収束が液滴の増大、ひいては転化率損失を招く傾向を有することを共通の知識として受け入れているからである。
【0005】
噴霧体の特徴をいくつかの方法で表現できることに留意することは重要である。1つの一般的な方法は、噴霧体の液滴サイズ平均、例えば「ザウター(Sauter)平均直径」(SMD)を使用することである。噴霧体のSMDは、噴霧体全体と同じ、表面積と容積との比を有する平均液滴サイズである。或いは、噴霧体は「容積中位径」(「Dv」)によって特徴付けることもできる。この方法は、噴霧体の所与の比率よりも大きい液滴直径を記述する。例えば噴霧体が或る特定の直径の「Dv90」を有するものとして記述される場合、このことは、噴霧体容積のほぼ90 %が、その直径よりも小さな液滴を成していることを意味する。同様に、或る特定の直径の「Dv50」は、液体の容積のほぼ50%がその直径よりも小さな液滴を成していることを意味する。液滴は、蒸発時間が液滴サイズの二乗に対して比例する、液滴蒸発の「D二乗の法則」と呼ばれるものに従うので、ノズル性能を最良に示すものの1つが噴霧体のDv90である。最適化されたノズルシステムはまた、噴霧体のDv90と液滴のSMDとの正比例関係を示す。これらの関係に照らして、この場合SMDは、任意の噴霧体の明白な特徴付けを提供するために使用することができる。
【0006】
供給ノズルが例えば廃棄物低減産業において、いわゆる「バーナー」の構成部分として使用される場合、別の問題に直面する。本明細書中に使用される場合、「バーナー」という用語は、供給手段、例えばノズル、及び液状供給流と気体、例えば酸素とを、供給流の燃焼を促進するための高温環境内で混合する手段の両方を含む装置を意味する。ノズルを取り囲む環境、すなわち噴霧された液体状供給材料と気体との混合物の高い温度と、しばしば腐食性の性質との組み合わせは、バーナー寿命を短くする傾向がある。このような寿命の短縮は、バーナー及びこれに含まれるノズルを構成するために使用される金属の腐食及び/又は熱疲労に起因する。
【0007】
特に廃棄物低減産業が直面するさらに別の問題は、不適合の液状供給流が単一反応器の対象とされる場合に発生する。このことの例は、一旦流れが混合されると重合することができる少量の重合性モノマーを含有する流れである。これらの状況では予混合は実際的でないことがある。なぜならば高分子材料の形成は設備を汚染し、また、内部混合バーナーの事例において、ポリマー/気体反応が望ましくない生成物をもたらす場合には、バーナーの寿命を短くしさえするおそれがあるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの問題に照らして、制御された液滴サイズを有する、噴霧された液状供給流を、種々のタイプの反応のために反応容器内に効果的に導入する手段を特定することが、当該技術分野において望まれる。このような導入が廃棄物供給流の焼却を達成するように意図されている場合には、液滴サイズを制御すること、そして供給手段を含むバーナーを、バーナー寿命を短くする傾向のある環境因子から保護することも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、単一反応器内部で所与の作業の効率を高めつつ、適切な液滴サイズの維持を確保するように構成された供給手段である。1つの態様では、本発明は気体/液体反応系のための供給手段の改善であって、この改善において、供給ノズル集成体は、噴霧体を形成する少なくとも1つの液状供給流を噴霧するのに適した複数の供給ノズルを含み、供給ノズルは、噴霧体が互いに衝突するように位置決めされている。この衝突の結果、衝突させられた噴霧体の液滴のザウター平均直径は実質的に、衝突前の液滴のザウター平均直径以下となる。適切な数のノズルの選択を含む、ノズルの配列は、転化率を許容できないほど犠牲にすることなしに、所与の期間以内の所望の供給容積を確保するように最適化することができる。
【0010】
別の態様では、本発明は、前記供給ノズル集成体が採用される、気体/液体反応系の反応方法である。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、気体/液体反応系の反応のためのバーナー装置の改善であって、この改善は、衝突させられた噴霧体の液滴のザウター平均直径が実質的に、衝突前の液滴のザウター平均直径以下であるように、噴霧体が互いに衝突するように位置決めされている、噴霧体を形成するために少なくとも1つの液状供給流を噴霧するのに適した複数の供給ノズルを採用する、中心軸に沿って配置された供給ノズル集成体を含む。本発明のバーナー装置はまた、供給ノズル集成体に対して環状に配置されたモデレータガス供給領域、酸素供給領域、混合モデレータガス/酸素供給領域、又はこれらの組み合わせ、を含む。任意選択の環状冷却領域が含まれていてもよい。これらの環状供給領域は、各環状供給領域の外側バリヤが、取り囲まれた環状供給領域の外側バリヤを超えて延び、そして、最も内側の環状領域が、中心に位置する該供給ノズル集成体を超えて延びる外側バリヤを有するように構成されることができる。この特徴は、供給ノズルによって放出された噴霧体が、最も内側の環状供給領域によって形成されたキャップ環境を先ず通ることを保証する。
【0012】
最後に、さらに別の態様において、本発明は、改善されたバーナー装置を使用して、液状廃棄物流をガス化する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の供給ノズル集成体はシンプルではあるが、しかし、ただ1つの供給ノズルの使用と関連する問題点を回避するための極めて効果的な手段であり、驚くべきことに、「噴霧体」(すなわち噴霧された液状供給流の収束)が、受け入れられないほどに、そして自動的に液滴サイズを増大させ、これにより貧弱な転化及びプロセス性能全体を促進するという、受け入れられている知識から逸れた教示をもたらす。供給ノズルの数を適切に調節し、供給ノズル同士を相対的に位置決めし、そして最大供給速度、開口部形態、及び結果として得られる噴霧体パターンに関して各供給ノズルの特徴を考慮に入れることにより、液滴の衝撃破壊と凝集とのバランスを保ち、そしてこれにより所与の作業にとって望ましい液滴サイズを保証する一方、これと同時に、潜在的な供給流の投入率を最大化するように、噴霧体を衝突させることができることが今や判っている。
【0014】
衝突は、反応容器内部の軌道における或る点でオーバラップする少なくとも2つの噴霧体を必要とする。多くの目的にとって、このオーバラップが、反応容器内への進入後できる限り直ぐに、換言すれば、供給ノズル・開口部のできる限り近くで発生するのを保証することが望ましい。このことは、1つ又は複数(同じもの又は異なったものであってよい)の液状供給流と、少なくとも1つの気体状供給流、例えば酸素との混合率を最大化し、そしてまた、より大型の反応容器の必要性を思いがけずも低減する。このように、本発明の場合、供給ノズルが、互いに密接して、又は互いに或る程度直接に接触した状態で配置されることが好ましい。距離を調節することは、低速度衝突の発生率を高めることにより凝集を増大させる傾向を有し得る任意の気相乱流に対する圧力と速度との最適なバランスを決定するための、日常的な設計分析のことがらである。
【0015】
供給ノズルの相対位置は、衝突領域を増大又は減少させるために用いることができる。例えば、供給ノズルは、図1に示すように、これらの開口部がそれぞれの対応開口部に対して遠位のノズル部分よりも近接し合うように、互いに向かって所定の角度を成すことができる。日常的に採用される技術分析及びモデリングが、最適な配向を決定する助けになるが、しかしこのような角度付き配向が選択される場合には、ノズルの位置は、約0度(平行ノズル)から約90度(互いに直面する)までの本質的にいかなる相対角度をも成すことができる。より好ましいのは約30度〜約60度の角度であり、そして最も好ましいのは、約40度〜約50度の角度である。単純さの目的から、そして重力に従って、角度は下向きであることが好ましい。とはいえ、上向きの角度を採用することもでき、そしてこの角度は、液滴1つ当たりの衝突数を増大させることにより、衝撃破壊と凝集との、結果としての比を増大させることができる。
【0016】
しかしノズルの配向は望ましくは、任意の所与のノズルの噴霧体パターンを考慮に入れてよいことは、当業者には明らかである。各ノズルは、その開口部、及び開口部に通じる流れ導管のジオメトリーに従って、特徴的な(そしていくつかの事例では調節可能な)噴霧体パターンを示す。このようなパターンは、いわゆる「中空コーン」又は「中実コーン」形態であってよく、或いは、扇形状又は扁平コーン形状、又は、中空又は中実円筒形状を形成するものとして記述することができる。他の形態を採用することもできる。ノズルは、加圧渦流ノズル又はその他のタイプであってよい。純度、自己重合可能性、及びその他の特徴を含む、所与の液状供給流に対する必要性が、特定の形態の優先度を決定付けることができるのに対して、商業的に入手可能な工業用加圧渦流ノズルの大部分は、「中空コーン」パターンを示し、従ってこのようなものが単に便宜上、本明細書中では好ましい。「コーン」直径は、もちろん、供給ノズルからの距離に従って変化することになるが、しかし開口部におけるコーンの角度は、多くの商業モデルの場合、ほぼ80度である。従って、単に一例を示す目的で、このようなものを図1及び図2に示す。
【0017】
円筒形の噴霧体パターンを有するノズルを選択する際には、所望の衝突レベルを保証するために、ノズルが互いに向かうように少なくとも何らかの角度を成すことが必要とされることが、当業者には自動的に明らかになるであろう。反対に、幅広のコーン噴霧体パターンを有するノズルは、互いに離反するように所定の角度を成して(すなわち、図2に示すように、ノズルの開口部は、対応開口部に対して遠位のノズル部分よりも互いに大きく隔たっている)位置決めすることができ、しかもなお少なくとも何らかの衝突を得ることも明らかである。特に多数(3つ以上)のノズルが採用されようとする場合には、衝突の最大化は、衝突の最適化としばしば等価であることを念頭に置くべきである。それというのも、液滴の衝撃破壊と凝集との比の増大は、転化率及び反応効率全体を改善する傾向を有するからである。好ましくは、衝突前の噴霧体の液滴は、約500ミクロン以下のSMDを示す。このことは、衝突させられた噴霧体の液滴のSMDが実質的に同じであることを示唆する。本明細書に使用される場合、「実質的」とは、±5パーセントの範囲内にあることを意味する。このように、衝突前の噴霧体の液滴が例えば300ミクロンのSMDを有する場合、衝突させられた噴霧体の液滴は望ましくは、プラス又はマイナス15ミクロンの、300ミクロン以下の範囲内に含まれる。液状供給流材料の表面張力を考慮に入れることも望ましい。それというのも、表面張力が低い流体ほど、凝集が少ない傾向があり、従って、衝突前及び後の両方で、概ねより低いザウター平均直径を示すからである。
【0018】
衝突が、衝突させられた噴霧体の領域の形状を変えることができることに留意すべきである。例えば、中心ノズルの周りに環状に配列された、全て概ね中心線に向かって所定の角度を成しているいくつかの環状ノズルから生じる、多数の扇形噴霧体が衝突する結果、円筒形構造を有する高密度の噴霧体をもたらし得ることが判っている。単一ノズルの噴霧体パターンの初期形状は、(衝突させられていない)液滴の初期SMDを決定する因子となるが、しかし、衝突させられた噴霧体中では視覚的に認識することはできない。
【0019】
複数の供給ノズルが選択される場合、スペース及び設計上の優先度は、近接するように位置決めされて、ノズルの「集成体(assembly)」(本明細書で定義される場合、複数のノズルが互いに結合されていることを特に必要とはしない)が、「集合体(assemblage)」(本明細書で定義される場合、ノズル自体の物理的結合、及び/又は、液状供給流源との流体連通の支持ラインのうちの少なくともいくつかの物理的結合を必要とする)として構成されることを可能にする、ノズル群を好む傾向を有するようになる。このような群は、7番目の中心ノズルの周りのアレイとして位置決めされた6つのノズルを含む、7つのノズルのための最大化されたパックを示す図3に示唆されている。一般にノズルの数は2〜約100であることが好ましく、3〜25個が製造しやすさのためにより好ましい。例えば中心ノズルの周りの3又は4個のノズルから成るアレイ;三角形のパターンで配列された3つのアレイ;又は半径方向に、又は行又は列を成すように配列されたより数多くのノズルを含む、このテーマに関する多くの変更形も、当業者であれば考えることができる。中心の気体流供給ノズルの周りに環状に液体流供給ノズルを配列することも好ましい。本発明は特に、配列の対称性又は非対称性を必要とすることはないが、少なくも2つの噴霧体の少なくとも何らかの衝突を必要とする。ノズルが互いに向かって所定の角度を成すようにすることが選択される場合には、環状に配列された周囲のノズルに対して凹部を形成された中心ノズルを有する、図1に示されたもののような凹状の構成全体が特に効果的であり得る。
【0020】
内部ノズル設計の要件は本発明の範囲を超えており、従ってここで詳細に論じる必要はないが、しかし本発明の1つの潜在的な利点は、伝統的なノズル設計の興味深い変更の基礎を示唆する。単に、本発明がここで考えられるタイプの反応のために従来一般に採用されている単一供給ノズルではなく、生成率、ひいては効率を高める複数の供給ノズルを採用するという理由から、化学的に異なる2つ又は3つ以上の液体流を一度に反応器内に供給することが可能である。このように、気体との反応において所望の生成物を生産するために、2種又は3種以上の液状反応体を合成容器内に同時に供給することができ;或いは、不所望の反応がもし存在するならば、禁止レベルのそのような反応に直面することなしに、技術的には反応性であり得る2つ又は3つ以上の液状廃棄物流を廃棄物バーナー容器内に同時に供給することもできる。このことを念頭に置いて、液状供給流源から開口部に延びる少なくとも1つの流れ導管接続部を含有する圧力生成ハウジングを意味するように本明細書中で定義された単一供給ノズルは、2つ以上の流れ導管接続部、ひいては2つ以上の開口部を備えると、同じ目的を達成できることが、当業者には容易に明らかになる。このことは図2においてさらに例示されており、この図において、1つの特定の供給流(R-Cl #1)が開口部142及び148に供給されるのに対して、第2の異なる供給流(R-Cl #2)がただ1つの開口部136に供給されるのが判る。このノズル構成の変化形も、本明細書中の「供給ノズル集成体」という用語の範囲内に含まれる。初期液滴サイズ、ひいては衝突後の液滴サイズをも低減するために、ノズル構成における変更形、具体的には圧力及び/又は流量を高める傾向のある変更形を本発明に採用できることは、当業者にはさらに明らかであろう。
【0021】
本発明の具体的な利点は、不適合液状供給流が反応器内に供給されるようになっている場合に、本発明を採用できることである。本明細書中に使用する場合、「不適合」とは、望ましくない反応生成物を生成するように反応する供給流を意味する。このことの一例は、設備を望ましくない形式で汚染するおそれのある、又は、環境に対する望ましくない因果関係を有する生成物を生成するおそれのあるポリマーを形成するように重合するモノマーである。従って、「適合」とは、供給流が反応することはできるものの、何らかの理由で望ましくない反応生成物を生成することはなく、又は実際に、望ましい反応生成物であり得る供給流を意味する。
【0022】
本発明のさらなる利点は、始動時の問題に関する。多くの事例において、単一ノズル反応器システムに対応する転化率は、必要な圧力上昇に関連して液滴サイズが変化することにより、始動時には劣っている。圧力が作業レベルで安定化されるにつれて、液滴サイズも同様に安定化するが、しかし上昇中には、貧弱な気体/液体反応、不良の変換、及び汚れなどを含む、過大サイズの液滴と関連する問題点の全てが生じ得る。しかし本発明の場合、圧力上昇中に発生する単一ノズル内部のより貧弱な噴霧状態の少なくとも一部を相殺するために使用された液滴を破壊する衝突の効果とともに、ノズルは所望の順序で始動することができる。いくつかの事例において、第7の中心ノズルを取り囲む6つのノズルから成るアレイを使用し、そして先ず中心ノズルを通して供給を開始し、続いてその直後に、残りのノズルを通して追加の供給を行う結果、変化率の改善がもたらされることが判っている。日常的な技術分析及びモデリングが、始動時間中の性能を有意に改善することになる順序付け及び圧力上昇プロフィールを容易に決定する。
【0023】
上記の本発明の供給ノズル集成体は、本発明のバーナー装置内に内蔵することができる。このような装置は、破壊されるようになっている液体が、噴霧された噴霧体の状態で1種又は2種以上の気体と望ましく混合されることを伴う、廃棄物焼却において使用するのに特に適している。このような気体は空気、酸素、二酸化炭素、蒸気、不活性ガス、例えばアルゴン又は窒素、又はこれらの組み合わせとなることができる。本発明のバーナー装置は、中心軸を形成する位置にある本発明の供給ノズル集成体を、供給ノズル集成体に対して環状に配列された不連続の気体供給領域と共に含むことにより、この混合を効果的に達成する手段を提供する。例えば1つの態様では、最も内側の環状領域はモデレータガス供給領域であってよい。このようなモデレータガスは、上に特定した気体のうちのいずれかであってよいが、しかし多くの場合、ガス化が行われ得る温度を下回る温度を好都合に抑制する蒸気である。別の態様では、外方に向かって連続する2つ又は3つ以上の環状供給領域があり、環状供給領域のうちの1つが、モデレータガス供給領域であり、環状供給領域のうちの他のものが酸素供給領域である。本明細書中に使用される場合、「酸素供給領域」という用語は、任意の比率の酸素を含む、ひいては、空気供給材料、並びに概ね1〜100重量パーセントの酸素を含有する空気供給材料を含む気体状供給材料を意味する。
【0024】
本発明のバーナー装置の特に好ましい特徴は、環状領域の外側バリヤに関する。図1及び図2に示されているように、そして下でさらに論じるように、外側バリヤは、液体状供給材料と各気体状供給材料との混合率が最大化され、そして混合を妨害するおそれのある乱流が最小化されるように、連続して延びていてよい。有意には、第1の外側バリヤは供給ノズル集成体の端部を超えて延びているので、最も内側の環状供給領域の気体供給が、「キャップ環境」、すなわち、供給ノズルからの噴霧体と、最も内側の環状領域を通って供給された気体とだけが最初に混合される領域を形成する傾向を有することができる。供給ノズル集成体に何らかの保護、又はその他の利益をもたらし、そしてこれにより供給ノズル集成体、ひいてはバーナーの寿命を潜在的に延長するように、温度及びこの「キャップ環境」の組成を制御できることが、当業者には明らかになる。例えば、この「キャップ環境」内で一貫した温度を維持することができ、このことは、供給ノズル集成体を製造するために使用することができる金属に対する熱応力を低減する。
【0025】
最後に、1つの態様において、バーナー装置及び/又は反応器自体に対する熱応力をさらに低減するために、何らかのタイプの外側冷却手段を採用することができる。例えば、環状供給領域のいずれか又は全てに対して外側に配置することができる環状冷却手段は、望ましい温度制御を提供することができる。このような手段は、例えば、装置から離れる方向に経路を進む前に水が装置から熱を除去することを伴う、開ループ型又は閉ループ型のジャケット内に低温水又は冷水が連続的に供給される伝統的なウォータージャケットであってよい。このようなウォータージャケットは、バーナー装置の最終的な外側「層」を形成することができる。
【0026】
図面を検討することは、本発明の概念全体を理解する上で読者を補助する。しかしながら、図面は、例示的に過ぎないものであるように意図されており、またそのようなものとして解釈されるべきであり、そして本発明の範囲、又は発明者の添付の特許請求の範囲を示すものではない。
【0027】
図1は、本発明の供給ノズル集成体を含む本発明のバーナー装置の輪郭を示す断面図である。この図面において、供給ノズル集成体12は、暗示的に円筒形のバーナー装置15の本質的に中心に配置されている状態で示されている。先ず供給ノズル集成体を見ると、3つの別個のノズル18, 21及び24が示されていることが判る。各ノズルは、ノズル本体27、ヘッド30、及び開口部33を有している。開口部33は、ノズル導管39を介して供給流導管36に流体連通している。ノズル導管39は、液状供給流源(図示せず)と流体連通している。供給ノズル集成体の壁42に対して外側に、第1のモデレータガス供給領域45を構成する環状領域がある。この環状モデレータガス供給領域45は、ノズル・開口部33を超えて延びる第1のモデレータガス外側バリヤ48を有している。供給ノズル集成体12の中心軸51から図面の外縁部に向かって、従って暗示的には内側の中心からバーナー装置の外側に向かって移動すると、次の環状領域は酸素供給領域54である。この場合もやはり、この領域は、モデレータガス供給領域バリヤ48を超えて延びる、その酸素供給領域バリヤ57によって取り囲まれている。次の環状部は、すぐ先行の酸素供給領域バリヤ57を超えて延びる第2のモデレータガス供給領域バリヤ63を有する、第2のモデレータガス供給領域60である。最後に、バーナー装置の外側の最後の環状部は、例えばウォータージャケットであってよい冷却手段バリヤ66である。ノズル集成体から外方に向かって各環状部のバリヤが徐々に延びる効果は、結果として、本質的にそして好ましくは円筒形構造であるもの、すなわち全体としてのバーナー装置に凹状の出口をもたらすことが読者に判る。ノズル18及び24が中心ノズル21に向かって内向きに所定の角度を成すようにすることにより達成された広範囲の噴霧体衝突を示すように、中空コーン噴霧体69, 72及び75が図示されている。符号を付けた矢印は、中心供給導管36内への液状供給流の導入;モデレータガス供給領域45及び60内へのモデレータガスの導入;酸素供給領域54内への酸素の導入;及び冷却手段バリヤ66内への水の導入を示す。また、中空コーン噴霧体69, 72及び75が通過しなければならないモデレータガス・キャップ環境78も示されている。これは、乱流によって支援される気体/液体混合の大部分が、モデレータガス・キャップ環境78を超えて発生し、これにより、酸素(又は他の気体)単独による、又は液体と混合された酸素(又は他の気体)によるノズルヘッド30の暴露を低減することを示す。
【0028】
図2は、図1の態様における変更形を示す。ここでもやはり、図面は、本発明の、しかし何らかの改変が加えられた供給ノズル集成体112をここでもまた内蔵する本発明のバーナー装置の断面図である。図2において、ノズルは、118, 121及び124で示される。その一方で、供給ノズル集成体112の内部の詳細が示されている。内部の特徴は、1つの中心供給導管127と、1つの環状供給導管130とを含む。環状供給導管130は、通路133を介して、ノズル118及びその開口部136と流体連通しているが、しかし、中心供給導管127は、中心通路139を介してノズル121及びその開口部142と、そして、分岐供給通路145を介してやはりノズル124及びその開口部148と流体連通していることに注目される。3つのノズルのそれぞれの概略的に示された噴霧体パターンが暗示的に中空コーンであること、並びに、ノズル118及び124が互いに外方に向かって所定の角度を成していることは、結果として衝突領域151, 153及び154をもたらす。図2はさらに、環状モデレータガス供給領域157及びそのモデレータガス供給領域バリヤ160;環状酸素供給領域163及びその酸素供給領域バリヤ166;及びこれらに対して外側に位置する、環状冷却手段169を示している。符号を付けた矢印は、それぞれ中心供給導管127及び環状供給導管130内への2つの異なる供給材料R-Cl#1及びR-Cl#2の導入、並びに、環状モデレータガス供給領域157内へのモデレータガスの導入、環状酸素供給領域163内への酸素の導入、及び環状冷却手段169内への水の導入を示す。ノズル・開口部136, 142及び148において放出された噴霧体は、酸素と混合する前にモデレータガス・キャップ環境173を通過しなければならない。
【0029】
図3は、供給ノズル集成体201内部で採用することができるような、7つのノズルから成るアレイの端部断面の単純な概略図である。最小の円は、図2において133に対応するような、ノズル内部の通路204を表す。より大きい円は、ノズルヘッド自体の外側断面207を表し、そして最大であり且つ周囲を取り囲む円は、供給ノズル集成体201の外壁213を表す。
【0030】
上で論じられた説明、図面、及び例は、本発明を理解するために、そして当業者には典型的な理解レベルと組み合わせて本発明を実施するために必要な一般的な概念、意味、及び方法を当業者に提供するように意図されたものである。従って、本発明の範囲内にあると考えられる全ての態様がここに明示的に記載されているわけではないこと、そして、例えば、本明細書中に明示的に又は詳細に記載されていない供給ノズル集成体及びバーナー装置材料、配向、構造、配列、及び用途を含む各態様の多くの変更形がなおも、本発明の全体的な範囲内に含まれることが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の供給ノズル集成体を内蔵し、そして単一液状供給流によって供給されるものとして示された、バーナー装置の1つの態様の輪郭を示す断面図である。
【図2】図2は、2つ以上の液状供給流によって供給される、本発明のバーナー装置内に内蔵された供給ノズル集成体の別の態様を示す断面図である。
【図3】図3は、供給ノズル集成体ハウジング内部の7つのノズルから成るアレイを示す端部断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体/液体反応系のための供給手段において、改善が、噴霧体を形成する少なくとも1つの液状供給流を噴霧するのに適した複数の供給ノズルを有する供給ノズル集成体を含み、衝突させられた該噴霧体の液滴のザウター平均直径が実質的に、衝突前の液滴のザウター平均直径以下であることを条件として、該噴霧体が互いに衝突するように該複数の供給ノズルが位置決めされている、気体/液体反応系のための供給手段。
【請求項2】
該複数が2〜約100である請求項1に記載の供給ノズル集成体。
【請求項3】
該供給ノズルのうちの少なくともいくつかが、中心の供給ノズル又は中心の気体流の周りに環状に配列されている請求項2に記載の供給ノズル集成体。
【請求項4】
該供給ノズルが、互いに向かって、又は互いに離反するように所定の角度を成している請求項1に記載の供給ノズル集成体。
【請求項5】
該衝突させられた噴霧体の液滴の該ザウター平均直径が、約500ミクロン以下である請求項1に記載の供給ノズル集成体。
【請求項6】
気体/液体反応系の反応方法において、改善が、噴霧体を形成する複数の供給ノズルを有する供給ノズル集成体を通して、少なくとも1つの液状供給流を噴霧することを含み、衝突させられた噴霧体の液滴のザウター平均直径が実質的に、衝突前の液滴のザウター平均直径以下であることを条件として、該噴霧体が反応容器内で互いに衝突するように位置決めされている、気体/液体反応系の反応方法。
【請求項7】
該液状供給流が、ハロゲン化及び非ハロゲン化炭化水素から成る群から選択されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該複数が2〜約100である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ザウター平均直径が約500ミクロン以下の液滴を形成するように、該噴霧体が互いに衝突する請求項6に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの液状供給流があり、そして前記供給流のうちの少なくとも2つが不適合である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
気体/液体反応系の反応のためのバーナー装置において、改善が、(1)噴霧体を形成する少なくとも1つの液状供給流を噴霧するのに適した複数の供給ノズルを採用する、中心軸に沿って配置された、中心に位置する供給ノズル集成体を含み、衝突させられた噴霧体の液滴のザウター平均直径が実質的に、衝突前の液滴のザウター平均直径以下であることを条件として、該噴霧体が互いに衝突するように位置決めされており、この際、該供給ノズル集成体は中心に位置しており;(2)該供給ノズル集成体に対して環状に配置されたモデレータガス供給領域、酸素供給領域、混合モデレータガス/酸素供給領域、又はこれらの組み合わせを含み、最も内側の環状領域が中心に位置する該供給ノズル集成体を超えて延びる外側バリヤを有することを条件として、各環状供給領域の外側バリヤが、近接する取り囲まれた環状領域の外側バリヤを超えて延びている、気体/液体反応系の反応のためのバーナー装置。
【請求項12】
1つ又は2つ以上の追加の環状のモデレータガス供給領域又は酸素供給領域をさらに含む請求項11に記載のバーナー装置。
【請求項13】
全てのモデレータガス供給領域、混合モデレータガス/酸素供給領域、及び酸素供給領域の外側に、環状冷却手段をさらに含む請求項11に記載のバーナー装置。
【請求項14】
該環状冷却手段が、ウォータージャケットである請求項11に記載のバーナー装置。
【請求項15】
液状廃棄物流をガス化する方法において、改善が、噴霧体を形成する複数の供給ノズルを採用する供給ノズル集成体内で当該液状廃棄物流を噴霧するために、バーナー装置を介して少なくとも1つの液状廃棄物流を供給することを含み、衝突させられた該噴霧体の液滴のザウター平均直径が実質的に、衝突前の液滴のザウター平均直径以下であることを条件として、該噴霧体が互いに衝突するように該供給ノズルが位置決めされており;該供給ノズル集成体が中心軸に沿って配置されており;そして、各環状供給領域の外側バリヤが、近接する取り囲まれた環状領域の外側バリヤを超えて延びることを条件として、そしてさらに、該供給ノズルによって放出された噴霧体が、最も内側の環状供給領域によって形成されたキャップ環境を先ず通るように、最も内側の環状領域が、中心に位置する該供給ノズル集成体を超えて延びる外側バリヤを有することを条件として、該供給ノズル集成体に対して環状にモデレータガス供給領域、酸素供給領域、混合モデレータガス/酸素供給領域、又はこれらの組み合わせが配置されている、液状廃棄物流をガス化する方法。
【請求項16】
該液状廃棄物流が、ハロゲン化及び非ハロゲン化炭化水素である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ザウター平均直径が約500ミクロン以下の液滴を形成するように、該噴霧体が互いに衝突する請求項15に記載の方法。
【請求項18】
該モデレータガスが蒸気又は二酸化炭素である請求項15に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも2つの液状供給流があり、そして前記供給流のうちの少なくとも2つが不適合である請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−526490(P2008−526490A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550377(P2007−550377)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/045293
【国際公開番号】WO2006/073713
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】