説明

気分障害、睡眠障害、または注意欠陥障害を治療するドロキシドパおよびその医薬組成物

本発明は、気分障害、睡眠障害、または注意欠陥障害などの症状を治療するためのドロキシドパを単独で又は1種もしくは複数のさらなる活性成分と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の方法に有用な組成物は、ドロキシドパ、ならびにDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された化合物を含む。本発明の組成物は特に、うつ病、ナルコレプシー、不眠、および注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、種々の症状を治療する方法に関する。具体的には、本出願は、気分障害、睡眠障害、または注意欠陥障害などの種々の症状を治療するために、ドロキシドパを単独で又は1種もしくは複数の追加成分と組み合わせて使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
ドロキシドパは、ノルエピネフリンの公知の合成アミノ酸前駆体であり、この前駆体は、ドパデカルボキシラーゼ(DDC)の作用によってノルエピネフリンに直接変換される。ドロキシドパは一般に、起立性低血圧(OH)の治療に用いられ、抗パーキンソン病薬として分類できる。しかしながらドロキシドパには複数の薬理学的活性が認められ、それには以下のものが含まれる。(1)生体に広く分布している芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼの作用によって1−ノルエピネフリンに直接変換され、したがってノルエピネフリンを補充する効果を有する。(2)血液脳関門を通る脳への限定された透過性を有する。(3)中枢神経系および末梢神経系において低下したノルエピネフリン活性化神経機能を特異的に回復する。そして、(4)種々の組織においてアドレナリン受容体を介して、ノルエピネフリンとして種々の作用を示す。
【0003】
気分障害は、あらゆる種類のうつ病を含み、情動障害と呼ばれることのある精神衛生上の問題の一分類を形成する。もっとも一般的な種類の気分障害には以下のものが含まれる。大うつ病性障害、これは気分障害の他の徴候に加えて、少なくとも2週間にわたる抑うつもしくは過敏性気分、または日常の活動での興味または楽しみの顕著な低下として定義される。気分変調(気分変調性障害)、これは少なくとも1年にわたる慢性軽度の抑うつまたは過敏性気分として定義される。躁うつ病(双極性障害)、これは少なくとも1つの抑うつまたは過敏性気分のエピソードおよび少なくともある期間の躁(持続的に高揚した)気分として定義される。全身の医学的症状(癌、傷害、感染、および慢性疾患など)による気分障害、これはうつ病の症状を誘発し得る。ならびに物質誘発性気分障害、これは投薬、薬物乱用、毒素への暴露、または他の治療形態の影響によってうつ病の症状を呈する。
【0004】
年齢および呈される気分障害の種類に応じて、ヒトはうつ病の様々な症状を示す可能性がある。以下のものがもっとも一般的な気分障害の症状であるが、各個体は異なる症状を経験する可能性がある。症状には、持続的な悲しみの感情、絶望感または無力感、低い自尊心、不適格だと感じること、過度の罪悪感、死の願望、日常の活動またはかつて楽しんでいた活動への興味喪失、人間関係が困難、睡眠障害、食欲または体重の変化、活動力低下、集中困難、決断能力低下、自殺念慮または企図、頻繁な身体愁訴(すなわち、頭痛、腹痛、疲労)、家から逃げ出すまたは逃げ出す恐れ、失敗または拒絶に対する過敏、ならびに過敏性、敵性、または攻撃性を含むことができる。気分障害において、これらの感情はヒトが通常ときに感じることのある感情より強く現れ、さらにこれらの感情は一定期間にわたって継続するか、または個々の家族、友人、共同社会、もしくは仕事への興味を妨げる傾向がある。
【0005】
気分障害に対して現在、様々な治療が利用可能である。現在の治療の例には、抗うつ剤の投薬、心理療法、および家族療法が含まれる。うつ病を治療するために、典型的には3つの主要な型の薬剤が用いられ、それらは三環系抗うつ剤、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAO阻害剤)である。3種の薬剤はすべて患者によって有効性の程度が異なることが知られている。さらに、3種の薬剤はすべて様々な望ましくない副作用を引き起こすことが知られている。毎年、約4400万人の米国人が精神障害を患っていると推定され、精神疾患は現代の健康に影響を及ぼしているもっとも一般的な症状の1つである。したがって、気分障害、特にうつ病の治療に有用なさらなる医薬組成物が当分野において依然として求められている。
【0006】
睡眠障害は広範な症状を包含し、睡眠時無呼吸(睡眠中の短時間、呼吸が停止する)、不眠(入眠もしくは睡眠持続困難、早期覚醒、または睡眠状態誤認を含む)、ナルコレプシー(抑制不能の睡眠要求、覚醒中に睡眠発作が約30秒から約30分持続する)、および不穏下肢症候群(下肢の不快、しばしば入眠時に感じられ、蟻走感、刺痛感、または穿痛感を含むことができ、下肢を動かすか刺激することによって緩和することがある)が含まれる。睡眠障害は多くの場合、うつ病、線維筋痛症、および慢性疲労症候群などの他の症状と併発する。
【0007】
ナルコレプシーは、特に日常生活において機能を果たす個々の能力に悪影響を与えることが知られている。この症状はより広義の過眠症に分類することができ、これは特発性過眠症、反復性過眠症、および内科的症状に起因する過眠症などのさらなる睡眠発作症状を包含する。ナルコレプシーと共通する「睡眠発作」は、仕事中、会話中、さらには運転中など、いつでも起こり得る。ナルコレプシーの4つの典型的な症状は、日中の過剰な眠気、脱力発作(笑い、怒り、驚き、または予期などの強い情動によって引き起こされる筋肉衰弱または麻痺の突然の短期エピソード)、睡眠麻痺(入眠時または睡眠覚醒時の麻痺)、および入眠時幻覚(睡眠開始時に起こる鮮明な夢のような映像)である。寝床での寝返り、下肢痙動、悪夢、および頻繁な覚醒を含む夜間睡眠障害も起こることがある。
【0008】
ナルコレプシーに対する既知の治療法はないが、ある証拠はこの症状が脳灌流の異常に関連している可能性のあることを示唆している。ここに引用することで本明細書の一部をなすもとするJoo et al.,Neuroimage(2005)、28(2):410〜416頁を参照されたい。日中の過剰な眠気は典型的に、メチルフェニダート(たとえば、RITALIN(登録商標))、デキストロアンフェタミン(たとえば、DEXTROSTAT(登録商標)またはDEXEDRINE(登録商標))、メタアンフェタミン(DESOXYN(登録商標))、ペモリン(CYLERT(登録商標))、マジンドール(SANOREX(登録商標))などの刺激剤、ならびに「非刺激性」刺激剤モダフィニル(PROVIGIL(登録商標))で治療される。脱力発作および他のレム睡眠症状は多くの場合、ベンラファキシン(EFFEXOR(登録商標))、フルオキセチン(PROZAC(登録商標))、レボキセチン(EDRONAX(登録商標))、イミプラミン(TOFRANIL(登録商標))、デシプラミン(NORPRAMIN(登録商標)またはPERTOFRAN(登録商標))、プロトリプチリン(TRIPTIL(登録商標)またはVIVACTIL(登録商標))、およびアトモキセチン(STRATERRA(登録商標))などの抗うつ剤の投薬によって治療される。最善の状態で、既知の投薬法は症状を軽減するが、完全には排除しない。さらに、そのような医薬治療はしばしば望ましくない副作用を有する。したがって、睡眠障害、特にナルコレプシーの治療に有用なさらなる医薬組成物が当分野において依然として求められている。
【0009】
不眠は典型的に睡眠の開始および/または維持の困難と説明されるが、この用語は睡眠欠如のあらゆる段階および型を表すのに用いられることがある。不眠という用語によって述べられる症状は実際に、複数の睡眠欠如の型を包含できる。睡眠開始時不眠(睡眠相後退症候群としても知られる)は、主要な睡眠エピソードが所望の睡眠時刻に対して遅延し、睡眠開始時不眠の症状または所望の時刻での覚醒困難がもたらされる障害である。特発性不眠は、おそらく睡眠覚醒系の神経制御の異常のため、長期(多くの場合、生涯)にわたって十分な睡眠を得ることができないものである。そのような状態において、不眠は長期間にわたり、一般に小児期早期に始まり、ときには出生時から存在することもある。精神生理学的不眠は、身体化された緊張(すなわち、不安の身体症状への変換)および学習性の睡眠抑止関連づけの障害であり、不眠および関連する覚醒時の機能低下の愁訴が起こる。
【0010】
不眠の治療は、特定の患者の要求に応じて異なることができる。不眠を治療するための大部分の薬剤は、筋弛緩剤およびCNS抑制剤などの鎮静剤(すなわち、催眠薬)または他の睡眠導入剤である。OTC睡眠補助剤には典型的に、眠気を引き起こす副作用を有する抗ヒスタミン剤(たとえば、ジフェンヒドラミンまたはドキシラミン)が含まれる。処方睡眠補助剤の例には、ゾルピデム(AMBIEN(登録商標))、ザレプロン(SONATA(登録商標))、およびエスゾピクロン(LUNESTA(登録商標))が含まれる。そのような薬剤は一般に、短期間の使用にのみ処方される(またはOTC薬に関しては提案される)。薬物治療を用いない場合、睡眠を誘発するためのいくつかの方法も提案されている。治療に用いられる方法には、良好な睡眠衛生実行後の行動変容および光療法が含まれる。
【0011】
注意欠陥障害は、公式にはアメリカ精神医学会によって注意欠陥/多動性障害、またはAD/HDと認識されているが、ほとんどの素人、さらには一部の専門家も、依然として異なる用語である注意欠陥障害(ADD)または注意欠陥多動性障害(ADHD)を用いている。多くの研究者は、AD/HDはこの障害に関連する主な特徴(不注意、衝動性、および多動性)に従って3つのサブタイプに適切に分類されると考えている。3つのサブタイプは、AD/HD混合優位型、AD/HD不注意優位型、およびAD/HD多動性/衝動性優位型である。
【0012】
これらの3つのサブタイプは、AD/HDを有する一部の患者は静かに座っているか、または行動を抑制するのにほとんどまたはまったく問題ないが、主に不注意である可能性があり、結果として課題または活動に集中するか、または集中を続けるのが非常に困難であることを考慮に入れている。AD/HDの他の患者は、課題に注意を払うことができる可能性があるが、主に多動性/衝動性である可能性があるため集中力を失い、したがって衝動および活動の制御が困難である。もっとも一般的なサブタイプは混合型であり、このサブタイプの患者は3種すべての特徴の著しい症状を有する。
【0013】
AD/HDは神経生物学に基づく発育障害であるが、この症状の特定の原因は現在のところ知られていない。ある証拠は、この障害が多くの場合遺伝的に伝達され、ある種の神経伝達物質の化学的不均衡または欠乏に起因することを示唆している。他の証拠は、AD/HDが部分的には脳の特定領域の低灌流の結果(たとえば、局所大脳血流低下の結果)として生じることを示唆している。ここに引用することで本明細書の一部をなすもとする、Lou、Henriksen、およびBruhn、Archives of Neurology(1984)、41(8)を参照されたい。AD/HDを診断する専門家は、1994年5月に発表された、DSM−IVとして知られるDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、第4版にアメリカ精神医学会(1994)によって示された診断基準を用いる。DSM−IVの基準、および他の重要な診断上の特徴は、AD/HDの徴候である。この障害に関連する主要な特徴は、不注意、多動性、および衝動性である。
【0014】
AD/HDの患者は通常、注意持続時間が短く、注意散漫であると説明され、散漫性および不注意は非同義である。散漫性は、短い注意持続時間、および一部の患者が容易に課題から離れられることを指す。他方、注意は様々な部分を有する過程であり、焦点を合わせること(注意を払うべきものを選び取る)、選択(その瞬間に注意を要するものを選び取る)、および持続(必要な期間、注意を払う)が含まれる。注意にはさらに抵抗(注意する必要のある場所から注意をそらす事柄を回避する)、および移動(必要なときに他のものに注意を移す)が含まれる。DSM−IVに挙げられているとおり、不注意の症状には以下のものが含まれる。細部に周到な注意が払えないか、または学業、仕事、もしくは他の活動において不注意なミスをすることが多い、課題または遊び活動に注意を持続するのが困難であることが多い、直接話しているときに聞いていないように見えることが多い、指示を遂行せず、学業、雑用、仕事場での任務を完遂できないことが多い(反抗行動や指示が理解できないためではない)、課題や活動を順序立てるのが困難であることが多い、精神的努力の持続を要する課題(学業または宿題など)に従事することを避ける、嫌がる、またはしぶることが多い、課題または活動に必要なもの(たとえば、玩具、学校の宿題、鉛筆、本、または道具)をなくすことが多い、外部からの刺激で容易に気を散らすことが多い、日常の活動を忘れることが多い。
【0015】
過剰な活動はもっとも目に見えるAD/HDの徴候である。DSM−IVに挙げられているとおり、多動性の症状には以下のものが含まれる。手もしくは足をそわそわと動かす、または座席でじっとしていないことが多い、教室、または着席していることが期待される他の状況で席を離れることが多い、不適切な状況で過度に走り回ったり、よじ登ったりすることが多い(青年期または成人では、主観的な落ち着きのなさに限定される可能性がある)、静かに遊んだり、余暇活動に従事するのが困難であることが多い、「活動中」であることが多いか、または「モーターで駆動されている」ように振る舞うことが多い、過度に話すことが多い。
【0016】
AD/HDの患者の衝動性には典型的に、満足するのを待ったり、遅らせたりすることが困難であるため、考える前に行動することが包含される。衝動性のためこれらの患者は、不適当なときに話したり、他人を遮ったり、危険を冒すように見える行動に従事したりする。子供は見もせずに通りを走って渡ったり、非常に高い木の上に登ったりすることがある。そのような行動は危険であるが、患者は真の危険追求者ではなく、むしろ衝動を制御するのに非常な困難を有する。DSM−IVに挙げられているとおり、衝動性の症状には以下のものが含まれる。質問が終わる前に答えを口にすることが多い、順番を待つのが困難であることが多い、他人を遮ったり、邪魔をしたりすることが多い。
【0017】
AD/HDの治療に用いるために多くの薬剤が承認されているが、メチルフェニダート(たとえば、RITALIN(登録商標))およびデキストロアンフェタミン(たとえば、DEXTROSTAT(登録商標)またはDEXEDRINE(登録商標))などの刺激剤が、一般にもっとも有効な医薬治療として認められている。他の医薬治療には、アトモキセチン(STRATTERA(登録商標))、ブプロピオン(WELLBUTRIN(登録商標))、およびα−2−アゴニスト、たとえばクロニジン(CATAPRES(登録商標))が含まれる。AD/HDは小児でもっとも多く見られるが、多くの親は刺激剤の投与によって子供を治療するのは望ましくないと考えている。さらに、食欲減退、不眠、不安の増大、および/または過敏性などの望ましくない副作用が生じ得る。したがって、AD/HDの治療に有用なさらなる医薬組成物が当分野において依然として求められている。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、種々の症状または障害の治療に有用である医薬組成物を提供する。これらの医薬組成物は一般に、単独または1種もしくは複数のさらなる医薬活性化合物と組み合わせたドロキシドパを含む。本発明はさらに、様々な症状または障害を治療する方法を提供する。たとえば一態様において、本発明は、治療有効量のドロキシドパまたは医薬的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、もしくは異性体を含む医薬組成物を、その症状の治療を必要としている対象に投与することを含むある症状を治療する方法に関し、その症状は気分障害、睡眠障害、または注意欠陥障害からなる群から選択される。
【0019】
一実施形態において、本発明の方法は、気分障害、特にうつ病を治療することを含む。本明細書では、単独のうつ病という語は本発明によって治療される症状を述べるために用いられることがあるが、うつ病は上に定義したものなど大うつ病性障害の診断症状を指すものであることが理解される。さらなる実施形態において、気分変調(気分変調性障害)、躁うつ病(双極性障害)、全身の医学的症状(癌、傷害、感染、および慢性疾患など)による気分障害、および物質誘発性気分障害などの他の気分障害を治療することもできる。
【0020】
本発明の方法は、特に気分障害の特定の症状に関して有効であることを特徴とすることができる。たとえば、気分障害がうつ病であり、対象がうつ病の少なくとも1つの症状を患っているとき、本発明は、症状を排除する、症状の重症度を低減する、または症状の発生頻度を低減するものであると特徴づけることができる。さらに、有効量の本発明による医薬組成物の投与は、症状の排除、または症状の重症度もしくは頻度の低減という同じ目標を達成するのに有効な量と特徴づけることができる。
【0021】
他の実施形態において、本発明の方法は、睡眠障害を治療することを含む。たとえば本方法は、過眠の症状、特にナルコレプシーの治療を含むことができる。さらなる実施形態において、本発明によって治療される睡眠障害には不眠を含むことができる。特定の実施形態において、有効量の本発明による医薬組成物の投与は、睡眠障害の明らかな症状を予防する(たとえば、覚醒時のナルコレプシー事象、もしくは関連事象の予防、または睡眠時の不眠を予防する)のに有効な量として特徴づけることができる。
【0022】
さらに他の実施形態において、本発明の方法は、注意欠陥障害を治療することを含む。特定の実施形態において、注意欠陥障害は、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の名称に分類される症状を含む。前述と同様、本発明の方法は、特に注意欠陥障害の特定の症状に関して有効であることを特徴とすることができる。たとえば、注意欠陥障害がAD/HDであり、対象がAD/HDの少なくとも1つの症状を患っているとき、本発明は、症状を排除する、症状の重症度を低減する、または症状の発生頻度を低減するものであると特徴づけることができる。さらに、有効量の本発明による医薬組み合わせの投与は、症状の排除、または症状の重症度もしくは頻度の低減という同じ目標を達成するのに有効な量と特徴づけることができる。
【0023】
本発明の方法は、単独のドロキシドパの投与を含むことができ、または1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパの投与を含むことができる。したがって、本発明は様々な医薬組成物の投与を提供する。いくつかの実施形態において、ドロキシドパとの組み合わせにおいて有用な追加活性剤は、DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0024】
一実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパおよびDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物を含む。具体的には、DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物は、ベンセラジド、カルビドパ、ジフルオロメチルドパ、α−メチルドパ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0025】
他の実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパおよびカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物を含む。具体的には、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物は、エンタカポン、トルカポン、ニテカポン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0026】
さらに他の実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパおよびコリンエステラーゼ阻害化合物を含む。具体的には、コリンエステラーゼ阻害化合物は、ピリドスチグミン、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン、ネオスチグミン、メトリホナート、フィゾスチグミン、アンベノニウム、デマルカリウム(demarcarium)、チアフィソベニン(thiaphysovenine)、フェンセリン、エドロホニウム、シムセリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0027】
さらに他の実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパおよびモノアミンオキシダーゼ阻害化合物を含む。具体的には、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物は、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ハルマラ、ブロファロミン、ベンモキシン、5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン、5−メトキシ−α−メチルトリプタミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0028】
さらに他の実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパおよびノルエピネフリン再取り込み阻害化合物を含む。具体的には、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物は、アトモキセチン、レボキセチン、ビロキサジン、マプロチリン、ブプロピオン、ラダファキシン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0029】
さらに他の実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパおよび選択的セロトニン再取り込み阻害化合物を含む。具体的には、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物は、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0030】
さらに他の実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパおよび三環系抗うつ化合物を含む。具体的には、三環系抗うつ化合物は、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0031】
特定の実施形態において、本発明に従って用いるための医薬組成物は、ドロキシドパ、三環系抗うつ剤、およびDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物を含む。
【0032】
ドロキシドパを1種または複数の追加活性剤と組み合わせるとき、併用投与は様々な方法によることができる。たとえば、ドロキシドパと追加活性剤は、同じ医薬組成物であってよい。他の実施形態において、ドロキシドパと追加活性剤は、別の組成物で投与できる。そのような実施形態において、別個の組成物は同時に、または互いに極めて近接して投与できる。あるいは、別個の組成物は異なる時間に投与でき、併用投与される活性剤の効果を最大に高めるために望ましい可能性がある。
【0033】
他の態様において、本発明は、具体的には活性剤の新規な組み合わせを含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、本発明による医薬組成物は、ドロキシドパおよび三環系抗うつ化合物を含む。さらなる実施形態において、組成物はさらに、DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された化合物を含むことができる。特定の実施形態において、本発明による医薬組成物は、ドロキシドパ、三環系抗うつ化合物、およびDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物を含む。
【0034】
さらに他の態様において、本発明は、脳の低灌流(すなわち、脳のある領域への血流の低下)に関連する少なくとも1つの根本原因を有する症状を治療する方法に関する。低灌流の一例は大脳血流の低下である。
【0035】
一実施形態において、本発明は、脳の血流低下に少なくとも部分的に起因する症状を患っている患者を治療する方法に関し、この方法は脳の血流を増加し、それによってその症状を治療するために治療上有効である、ある量のドロキシドパを患者に投与することを含む。特定の実施形態において、その症状は、特に気分障害、睡眠障害、および注意欠陥障害からなる群から選択することができる。
【0036】
本発明のこの態様による方法の遂行において、ドロキシドパは1種または複数の追加活性剤と組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、追加活性剤は、DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明をこのように一般的な言葉で説明したが、ここで添付の図面に言及する。
【図1】組成物の抗うつ作用を判定するために、11種の異なる組成物で処置し、マウス強制水泳試験で評価した11群のマウス(各群10頭)の平均無動時間を例示するグラフである。
【図2】マウス強制水泳試験で評価したすべてのマウスに関して、無動時間目盛上の実際のデータ点を例示するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を種々の実施形態に言及することによって以下により詳しく説明する。これらの実施形態は、この開示が詳細かつ完全なものになるように、さらに当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供されるものである。実際には、本発明は多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。むしろこれらの実施形態は、適用される法的要件を本開示が満たすように提供されるものである。本明細書および添付の請求の範囲で用いられる単数形「a」、「an」、「the」は、文脈により明らかに別段の指示のないかぎり、複数の指示物を含む。
【0039】
本発明は、CNS活性の調節に根拠を見出すことができ、したがってあるレベルの相互連結を含む可能性のある種々の障害の治療に用いることのできる医薬組成物および方法を提供する。具体的には、これらの組成物および方法は、気分障害、睡眠障害、および注意欠陥障害の治療に用いることができる。治療は、単独活性剤としてのドロキシドパの使用を含むことができる。他の実施形態において、治療は、1種または複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパの使用を含むことができる。そのような組み合わせの例は、米国特許出願第2008/0015181号に開示され、その全体はここに引用することで本明細書の一部をなすもとする。本発明で用いられる特定の医薬組成物(または複数の組成物)、および本発明によって提供される治療方法を以下にさらに説明する。
【0040】
(I 定義)
本明細書で用いられる用語「アルキル」は、飽和直鎖、分岐、または環式炭化水素基を意味する。特定の実施形態において、アルキルは、1から10個の炭素原子を含む基を指す(「C1−10アルキル」)。さらなる実施形態において、アルキルは、1から8個の炭素原子(「C1−8アルキル」)、1から6個の炭素原子(「C1−6アルキル」)、または1から4個の炭素原子(「C1−4アルキル」)を含む基を指す。特定の実施形態において、アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、および2,3−ジメチルブチルを指す。置換アルキルは、ハロ(たとえば、Cl、F、Br、およびI)、ハロゲン化アルキル(たとえば、CF、2−Br−エチル、CHF、CHCl、CHCF、またはCFCF)、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシラート、カルボキサミド、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、アジド、シアノ、チオ、スルホン酸、スルファート、ホスホン酸、ホスファート、およびホスホナートからなる群から選択された1つまたは複数の部分で置換されたアルキルを指す。
【0041】
本明細書で用いられる用語「ヘテロアルキル」は、少なくとも1つのC原子がN、O、またはSなどの非炭素原子で置き換えられているアルキル部分を意味する。
【0042】
本明細書で用いられる用語「アルケニル」は、少なくとも1つの飽和C−C結合が二重結合で置き換えられているアルキル部分を意味する。特定の実施形態において、アルケニルは、1から10個の炭素原子を含む基を指す(「C1−10アルケニル」)。さらなる実施形態において、アルキルは、1から8個の炭素原子(「C1−8アルケニル」)、1から6個の炭素原子(「C1−6アルケニル」)、または1から4個の炭素原子(「C1−4アルケニル」)を含む基を指す。特定の実施形態において、アルケニルは、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、または5−ヘキセニルであってよい。
【0043】
本明細書で用いられる用語「ヘテロアルケニル」は、少なくとも1つのC原子がN、O、またはSなどの非炭素原子で置き換えられているアルケニル部分を意味する。
【0044】
本明細書で用いられる用語「アルキニル」は、少なくとも1つの飽和C−C結合が三重結合で置き換えられているアルキル部分を意味する。特定の実施形態において、アルキニルは、1から10個の炭素原子を含む基を指す(「C1−10アルキニル」)。さらなる実施形態において、アルキルは、1から8個の炭素原子(「C1−8アルキニル」)、1から6個の炭素原子(「C1−6アルキニル」)、または1から4個の炭素原子(「C1−4アルキニル」)を含む基を指す。特定の実施形態において、アルキニルは、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、または5−ヘキシニルであってよい。
【0045】
本明細書で用いられる用語「ヘテロアルキニル」は、少なくとも1つのC原子がN、O、またはSなどの非炭素原子で置き換えられているアルキニル部分を意味する。
【0046】
本明細書で用いられる用語「アルコキシ」は、酸素原子で結合された直鎖または分岐鎖アルキル基を意味し(すなわち、−O−アルキル)、ここでアルキルは上記のとおりである。特定の実施形態において、アルコキシは、1から10個の炭素原子を含む酸素結合基を指す(「C1−10アルコキシ」)。さらなる実施形態において、アルコキシは、1から8個の炭素原子(「C1−8アルコキシ」)、1から6個の炭素原子(「C1−6アルコキシ」)、または1から4個の炭素原子(「C1−4アルコキシ」)を含む酸素結合基を指す。
【0047】
本明細書で用いられる用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。
【0048】
本明細書で用いられる用語「アリール」は、各環8員までの安定な単環式、二環式、または三環式炭素環を意味し、少なくとも1つの環はヒュッケル4n+2則で定義される芳香環である。本発明による代表的なアリール基には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびビフェニルが含まれる。アリール基は、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルファート、ホスホン酸、ホスファート、またはホスホナートからなる群から選択された1つまたは複数の部分で置換されてよい。
【0049】
本明細書で用いられる用語「アラルキル」および「アリールアルキル」は、上に定義したアルキル基を介して分子に結合している上に定義したアリール基を意味する。
【0050】
本明細書で用いられる用語「アルカリル」および「アルキルアリール」は、上に定義したアリール基を介して分子に結合している上に定義したアルキル基を意味する。
【0051】
本明細書で用いられる用語「アシル」は、エステル基の非カルボニル部分が直鎖、分岐、または環式アルキルまたは低級アルキル、メトキシメチルを含むアルコキシアルキル、ベンジルを含むアラルキル、フェノキシメチルなどのアリールオキシアルキル、ハロゲン、C−CアルキルまたはC−Cアルコキシで場合によって置換されているフェニルを含むアリール、メタンスルホニルを含むアルキルまたはアラルキルスルホニルなどのスルホン酸エステル、一、二、または三リン酸エステル、トリチルまたはモノメトキシトリチル、置換ベンジル、ジメチル−t−ブチルシリルまたはジフェニルメチルシリルなどのトリアルキルシリルから選択されるカルボン酸エステルを意味する。エステルのアリール基は最適にはフェニル基を含む。
【0052】
本明細書で用いられる用語「アミノ」は、構造NRで表される部分を意味し、第1級アミン、ならびにアルキル基で置換された第2級および第3級アミン(すなわち、アルキルアミノ)を含む。したがって、Rは2つの水素原子、2つのアルキル部分、または1つの水素原子と1つのアルキル部分を表すことができる。
【0053】
本明細書で用いられる用語「アルキルアミノ」および「アリールアミノ」は、それぞれ1つまたは2つのアルキルまたはアリール置換基を有するアミノ基を意味する。
【0054】
本明細書で用いられる用語「ヒドロキシアルキル」は、1つまたは複数のヒドロキシ基を含む上記のアルキル基を意味する。
【0055】
本明細書で用いられる用語「類似体」は、1つまたは複数の個々の原子または官能基が異なる原子または異なる官能基で置き換えられ、一般に類似の特性を有する化合物を生じる化合物を意味する。
【0056】
本明細書で用いられる用語「誘導体」は、別の分子または原子を開始化合物に付加することによって類似の開始化合物から形成される化合物を意味する。さらに本発明によれば、誘導体は、1つまたは複数の原子または分子の付加によって、あるいは2つ以上の前駆体化合物を化合することによって、前駆体化合物から形成された1つまたは複数の化合物を包含する。
【0057】
本明細書で用いられる用語「プロドラッグ」は、哺乳動物に投与されたとき、全体または一部として本発明の化合物に変換される任意の化合物を意味する。
【0058】
本明細書で用いられる用語「活性代謝産物」は、本発明の化合物またはプロドラッグが哺乳動物に投与されたとき、そのような化合物またはそのプロドラッグの代謝によって生じる生理的活性化合物を意味する。
【0059】
本明細書で用いられる用語「治療有効量」または「治療有効用量」は交換可能に用いることができ、本明細書に記載の治療方法によって所望の治療効果を誘出するのに十分な本発明による化合物、またはその生物学的に活性な変形の濃度を意味する。
【0060】
本明細書で用いられる用語「医薬的に許容される担体」は、生物学的活性剤の貯蔵、投与、および/または治癒効果を促進するために当分野で通常用いられている担体を意味する。
【0061】
本明細書で用いられる用語「断続投与」は、治療有効用量の本発明による組成物の投与、その後の中断期間、それに続く治療有効用量のさらなる投与などを意味する。
【0062】
(II 活性剤)
本発明は、医薬組成物、およびそのような医薬組成物を用いる種々の症状の治療方法を提供する。本発明の医薬組成物は、一般に活性剤としてドロキシドパを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は1種または複数のさらなる活性剤を含むことができる。
【0063】
(A ドロキシドパ)
本発明の方法で用いる組成物は、一般に活性成分としてトレオ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)セリンを含み、これは通例ドロキシドパとして知られ、下記の式(I)の示す構造を有する。
【化1】

【0064】
ドロキシドパは、トレオ−β,3−ジヒドロキシ−L−チロシン、(−)−(2S,3R)−2−アミノ−3−ヒドロキシ−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸、およびトレオ−ドパセリン、ならびに一般的用語DOPS、トレオ−DOPS、およびL−DOPSとしても知られている。この化合物は、光学的に活性であることができ、L−トレオ−DOPS、D−トレオ−DOPS、L−エリトロ−DOPS、およびD−エリトロ−DOPSを含む種々の形態で提供され得る。この化合物はラセミ体でも存在できる。L−トレオ異性体が一般に本発明に好ましいが、しかしながら本発明はドロキシドパの他の形態を組み入れる組成物および使用方法も包含する。したがって、本発明の開示を通じて用いられる用語「ドロキシドパ」は、ドロキシドパの任意の単離または精製異性体(たとえば、L−トレオ異性体)、ならびにそのラセミ体を包含することが意図される。
【0065】
本発明によって有用なドロキシドパは、様々な従来の方法で調製することができ、特にドロキシドパのL−異性体の単離に有用な方法が含まれる。たとえば、ここに引用することで本明細書の一部をなすもとする、米国特許第3,920,728号、米国特許第4,319,040号、米国特許第4,480,109号、米国特許第4,562,263号、米国特許第4,699,879号、米国特許第5,739,387号、および米国特許第5,864,041号を参照されたい。
【0066】
本発明はまた、1種または複数の医薬的に許容されるドロキシドパのエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、または異性体を含む組成物を包含する。一実施形態において、本発明は、エステル結合の加水分解または酵素分解に起因するドロキシドパの脱カルボキシル化の減速または遅延を可能にする、ドロキシドパエステルの使用を含む。当業者に認識されるとおり、ドロキシドパのエステルは、カルボン酸エステル基の水素を任意の適切なエステル形成基で置き換えることによって形成できる。たとえば、ここに引用することで本明細書の一部をなすもとする米国特許第5,288,898号は、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、tert−ブチルエステル、n−ペンチルエステル、イソペンチルエステル、n−ヘキシルエステルなどを含むN−メチルフェニルセリンの種々のエステルを開示し、本発明はそのようなエステル、ならびに他のエステルを包含する。本発明によって用いることのできるエステル形成基のさらなる例は、米国特許第5,864,041号に開示され、その全体はここに引用することで本明細書の一部をなすもとする。したがって、本発明の化合物は、特にN−置換されているエステルおよびN−置換されていないエステルを含むドロキシドパエステルを包含する。
【0067】
(B 追加の活性剤)
上述のとおり、いくつかの実施形態において、本発明の方法によって用いるための組成物は、ドロキシドパに加えて1種または複数の活性剤を含むことができる。本明細書に記載の症状を治療するために、ドロキシドパと組み合わせることのできる種々の好ましい活性剤を以下に記載する。当然ながらそのような開示は、ドロキシドパと組み合わせることのできるさらなる活性剤の範囲を限定するものとみなされるべきではない。むしろさらなる活性化合物、特に気分障害、睡眠障害、もしくは注意欠陥障害の治療、またはそのような障害に伴う症状の治療、予防、もしくは改善に有用であると特定されている化合物は、本明細書に具体的に開示されている化合物に加えて用いることができる。
【0068】
特定の一実施形態において、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、1種または複数のDOPAデカルボキシラーゼ(DDC)阻害化合物を含む。DDCは、それぞれドパミンおよびセロトニンを生じるレボドパ(L−DOPAまたは3,4−ジヒドロキシ−L−フェニルアラニン)および5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)の脱カルボキシル化を触媒する。同様に、DDCはドロキシドパのノルエピネフリンへの変換を触媒する。DDC阻害化合物は上述の変換を妨げ、前駆薬物(ドロキシドパなど)と組み合わせて中枢神経系内での変換に集中させ、したがってCNS内のドロキシドパ濃度を増大するのに有用である。
【0069】
典型的にDDCの活性を阻害または低減すると認められている任意の化合物を本発明に従って用いることができる。本発明に有用なDDC阻害化合物の非限定的な例には、ベンセラジド、カルビドパ、ジフルオロメチルドパ、α−メチルドパ、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0070】
さらなる実施形態において、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、少なくとも部分的にカテコール−O−メチルトランスフェラーゼの機能を阻害する1種または複数の化合物を含む(そのような化合物は一般に「COMT阻害化合物」と称される)。カテコール−O−メチルトランスフェラーゼは、S−アデノシル−L−メチオニンからドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、およびドロキシドパを含む種々のカテコール化合物(たとえば、カテコールアミン)へのメチル基の移動を触媒する。COMT酵素は、カテコールアミンおよびカテコール構造を有する薬物の神経外不活化に重要であり、一般にカテコールアミンおよびそれらの代謝産物の代謝に関与するもっとも重要な酵素の1つである。これは末梢神経系および中枢神経系を含むほとんどの組織に存在する。
【0071】
COMTの阻害剤は、半減期を増すことにより、カテコール化合物の代謝および排除を遅らせる。したがって、COMT阻害化合物は、天然カテコール化合物のレベルを増大し、投与されたカテコール化合物(たとえばL−β−3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(L−DOPA)、ドパミンの直接前駆体、一般にパーキンソン病の対症療法に用いられる)の薬物動態を変える機能を果たすことができる。COMTの阻害剤は末梢で作用することができ(化合物エンタカポンなど)、他のもの(トルカポンなど)は血液脳関門を越え、したがって中枢および末梢で作用することができる。
【0072】
一般にCOMT阻害剤として認められている任意の化合物を本発明による追加活性剤として用いることができる。本発明によってドロキシドパとの組み合わせに有用なCOMT阻害化合物の非限定的な例には、以下のものが含まれる。[(E)−2−シアノ−N,N−ジエチル−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)プロペンアミド]、エンタカポン(COMTAN(登録商標))とも呼ばれる、4−ジヒドロキシ−4’−メチル−5−ニトロベンゾフェノン、トルカポン(TASMAR(登録商標))とも呼ばれる、および3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メチレン−2,4−ペンタンジオン、ニテカポンとも呼ばれる。上記の例に加えて、米国特許第6,512,136号(その開示は参照により本明細書のに組み込まれる)は、種々の置換2−フェニル−1−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)−1−エタノン化合物を記載し、これらも本発明によるCOMT阻害剤として有用である可能性がある。同様に、米国特許第4,963,590号、英国特許第2200109号、米国特許第6,150,412号、および欧州特許第237929号はそれぞれ、本発明によって有用であり得るCOMT阻害化合物群を記載し、上記文献それぞれの開示はここに引用することで本明細書の一部をなすもとする。
【0073】
本発明の他の実施形態によれば、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、少なくとも部分的にコリンエステラーゼの機能を阻害する1種または複数の化合物を含む。そのようなコリンエステラーゼ阻害化合物は、抗コリンエステラーゼ化合物と称することもできる。コリンエステラーゼ阻害化合物は、可逆性または非可逆性であり得る。本発明は、好ましくは可逆性コリンエステラーゼ阻害化合物(競合的阻害剤または非競合的阻害剤)とみなすことのできる任意の化合物を包含する。非可逆性コリンエステラーゼ阻害剤は一般に、殺虫剤(ジアジノンおよびSevinなど)および化学兵器(タブンおよびサリンなど)としての使用が見出され、本発明には好ましくない。
【0074】
コリンエステラーゼ阻害剤は、一般にアセチルコリンエステラーゼなどのアセチルコリンの分解に関与する化学物質の活性を低下するかまたは妨げることによって、アセチルコリン(またはコリン作動性アゴニスト)のレベルを増大する化合物を含むものと理解される。コリンエステラーゼ阻害剤は、アセチルコリンの放出を刺激する、アセチルコリン受容体の応答を強化する、またはゴナドトロピン放出ホルモン(GNRH)誘導成長ホルモン放出を増強するなど、他の作用機序を有する化合物も含むことができる。さらに、コリンエステラーゼ阻害化合物は、神経節伝達の強化によって作用することもできる。
【0075】
一般にコリンエステラーゼ阻害剤(または抗コリンエステラーゼ化合物)であると認められている任意の化合物が、本発明によって有用である可能性がある。本発明による組成物を調製するためにドロキシドパとの組み合わせで有用なコリンエステラーゼ阻害化合物の非限定的な例には、以下のものが含まれる。3−ジメチルカルバモイルオキシ−1−メチルピリジニウム、ピリドスチグミン(MESTINON(登録商標)またはRegonol)とも呼ばれる、(±)−2,3−ジヒドロ−5,6−ジメトキシ−2−[[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]メチル]−1H−インデン−1−オン、ドネペジル(ARICEPT(登録商標))とも呼ばれる、(S)−N−エチル−3−((1−ジメチル−アミノ)エチル)−N−メチルフェニル−カルバマート、リバスチグミン(Exelon)とも呼ばれる、(4aS,6R,8aS)−4a,5,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−3−メトキシ−11−メチル−6H−ベンゾフロ[3a,3,2ef][2]ベンザゼピン−6−オール、ガランタミン(REMINYL(登録商標)またはRAZADYNE(登録商標))とも呼ばれる、9−アミノ−1,2,3,4−テトラヒドロアクリジン、タクリン(COGNEX(登録商標))とも呼ばれる、(m−ヒドロキシフェニル)トリメチルアンモニウムメチルスルファートジメチルカルバマート、ネオスチグミンとも呼ばれる、1−ヒドロキシ−2,2,2−トリクロロエチルホスホン酸ジメチルエステル、メトリホナートまたはトリクロロホンとも呼ばれる、1,2,3,3A,8,8A−ヘキサヒドロ−1,3a,8−トリメチルピロロ−[2,3−b]−インドール−5−オールメチルカルバマートエステル、フィゾスチグミンとも呼ばれる、[オキサリルビス(イミノエチレン)]−ビス−[(o−クロロベンジル)ジエチルアンモニウム]ジクロリド、アンベノニウム(MYTELASE(登録商標))とも呼ばれる、エチル(m−ヒドロキシフェニル)ジメチルアンモニウム、エドロホニウム(ENLON(登録商標))とも呼ばれる、デマルカリウム、チアフィソベニン、フェンセリン、およびシムセリン。
【0076】
より一般的には、本発明によるコリンエステラーゼ阻害剤として有用な化合物は、カルバマート化合物、特にフェニルカルバマート、有機リン酸化合物、ピペリジン、およびフェナントリン(phenanthrine)誘導体を含むことができる。本発明はさらに、ここに引用することで本明細書の一部をなすもとする米国特許出願第2005/0096387号に開示されている、カルバモイルエスエルであるコリンエステラーゼ阻害剤を含む。
【0077】
上記の化合物群、および特定の化合物は、本発明によって有用であるコリンエステラーゼ阻害化合物の種類を例示するために提供されるものであって、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。実際、本発明は、それらの開示をここに引用することで本明細書の一部をなすもとする以下の文献に記載の化合物を含む種々のさらなるコリンエステラーゼ阻害剤を組み入れることができる。Brzostowska,Malgorzata et al.,「Phenylcarbamates of (−)−Eseroline,(−)−N1−Noreseroline and (−)−Physovenol:Selective Inhibitors of Acetyl and,or Butyrylcholinesterase」、Medical Chemistry Research(1992)Vol.2、238〜246;Flippen−Anderson,Judith L. et al.,「Thiaphysovenol Phenylcarbamates:X−ray Structures of Biologically Active and Inactive Anticholinesterase Agents」、Heterocycles(1993)Vol.36、No.1;Greig,Nigel H. et al.,「Phenserine and Ring C Hetero−Analogues:Drug Candidates for the Treatment of Alzheimer’s Disease」、Medicinal Research Reviews(1995)Vol.15、No.1、3〜31;He,Xiao−shu et al.,「Thiaphysovenine and Carbamate Analogues;A New Class of Potent Inhibitors of Cholinesterases」、Medical Chemistry Research(1992)Vol.2、229〜237;Lahiri,D.K. et al.,「Cholinesterase Inhibitors,β−Amyloid Precursor Protein and Amyloid β−Peptides in Alzheimer’s Disease」、Acta Neurologica Scandinavia(2000年12月)Vol.102(s176)60〜67;Pei,Xue−Feng et al.,「Total Synthesis of Racemic and Optically Active Compounds Related to Physostigimine and Ring−C Heteroanalogues from 3[−2’−(Dimethylamino)ethyl]−2,3−dihydro−5−methoxy−1,3−dimentyl−1H−indol−2−ol」、Helvetica Chimica ACTA(1994)Vol.77;Yu,Qian−sheng et al.,「Total Syntheses and Anticholinesterase Activities of (3aS)−N(8)−Norphysostigmine,(3aS)−N(8)−Norphenserine,Their Antipodal Isomers,and Other N(8)−Substituted Analogues」、J.Med.Chem.(1997)Vol.40、2895〜2901;およびYu,Q.S. et al.,「Novel Phenserine−Based−Selective Inhibitors of Butyrylcholinesterase for Alzheimer’s Disease」、J.Med.Chem.の許可により転載、5月20日、1999、42、1855〜1861。
【0078】
本発明によってドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、特に抗うつ化合物として認められている化合物群から選択できる。本明細書で用いられる抗うつ剤は、気分障害、特にうつ病および/または気分変調の治療に用いられる任意の精神医学薬剤または他の物質(栄養物およびハーブを含む)を指すことができる。本発明による抗うつ剤の非限定的な例には、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NRI)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI、5−HT−NE二重再取り込み阻害剤としても知られている)、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害剤(NDRI)、およびノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤(NASSA)が含まれる。
【0079】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、少なくとも部分的にモノアミンオキシダーゼの機能を阻害する1種または複数の化合物を含む。モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)は、一般にヒトの身体の脳および肝臓に見出され、典型的には脱アミノ化によってモノアミン化合物を分解する機能を果たす酵素であるモノアミンオキシダーゼの活性を阻害することによって作用すると理解されている化合物の一種を含む。
【0080】
モノアミンオキシダーゼ阻害化合物の2つのアイソフォーム、MAO−AおよびMAO−Bが存在する。MAO−Aアイソフォームは、典型的に神経伝達物質として生じるモノアミンを優先的に脱アミノ化する(たとえば、セロトニン、メラトニン、エピネフリン、ノルエピネフリン、およびドパミン)。したがって、MAOIは歴史的に抗うつ剤として、ならびに広場恐怖および社会不安などの他の社会性障害を治療するために処方されている。MAO−Bアイソフォームは、フェニルエチルアミンおよび微量アミンを優先的に脱アミノ化する。ドパミンは両方のアイソフォームで等しく脱アミノ化される。MAOIは可逆性または非可逆性である可能性があり、特定のアイソフォームに選択的である可能性がある。たとえば、MAOIモクロベミド(ManerixまたはAurorixとしても知られている)は、MAO−BよりMAO−Aに対してほぼ3倍選択性が高いことが知られている。
【0081】
一般にMAOIとして認められている任意の化合物が本発明によって有用である可能性がある。本発明による組成物を調製するためにドロキシドパとの組み合わせで有用なMAOIの非限定的な例には、以下のものが含まれる。イソカルボキサジド(MARPLAN(登録商標))、モクロベミド(Aurorix、Manerix、またはMoclodura)、フェネルジン(NARDIL(登録商標))、トラニルシプロミン(PARNATE(登録商標))、セレギリン(ELDEPRYL(登録商標)、EMSAM(登録商標)、または1−デプレニル)、ラザベミド、ニアラミド、イプロニアジド(marsilid、iprozid、ipronid、rivivol、またはpropilniazida)、イプロクロジド、トロキサトン、ハルマラ、ブロファロミン(Consonar)、ベンモキシン(Neuralex)、および5−MeO−DMT(5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン)または5−MeO−AMT(5−メトキシ−α−メチルトリプタミン)などのある種のトリプタミン。
【0082】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、1種または複数のノルエピネフリン再取り込み阻害化合物(NRI)を含む。NRIは、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(NARI)としても知られ、一般にシナプス間隙からシナプス前ニューロン末端へのノルエピネフリン再取り込みを阻害することによって、中枢神経系(CNS)のノルエピネフリンのレベルを上昇させる機能を果たす。ノルエピネフリンは、神経伝達物質として機能し、多くの症状に影響を及ぼすことが知られているカテコールアミンおよびフェニルエチルアミンである。
【0083】
典型的にCNSでノルエピネフリンの再取り込みを阻害すると認められている任意の化合物を本発明によって用いることができる。本発明に有用なNRIの非限定的な例には、アトモキセチン(STRATTERA(登録商標))、レボキセチン(EDRONAX(登録商標)、VESTRA(登録商標)、またはNOREBOX(登録商標))、ビロキサジン(EMOVIT(登録商標)、VIVALAN(登録商標)、VIVARINT(登録商標)、またはVIVILAN(登録商標))、マプロチリン(DEPRILEPT(登録商標)、LUDIOMIL(登録商標)、またはPSYMION(登録商標))、ブプロピオン(WELLBUTRIN(登録商標)またはZYBAN(登録商標))、およびラダファキシンが含まれる。下記のとおり、ブプロピオンはノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害剤としても分類できることに留意されたい。
【0084】
さらに他の実施形態において、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、1種または複数の選択的セロトニン再取り込み阻害化合物(SSRI)を含む。本発明によって有用な特定のSSRIの非限定的な例には、フルオキセチン(PROZAC(登録商標))、パロキセチン(PAXIL(登録商標))、シタロプラム(CELEXA(登録商標))、エスシタロプラム(LEXAPRO(登録商標))、フルボキサミン(LUVOX(登録商標))、およびセルトラリン(ZOLOFT(登録商標))が含まれる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態において、ドロキシドパは、三環系抗うつ剤として認められている1種または複数の化合物と組み合わせることができる。三環系抗うつ剤(TCA)は、抗うつ活性を示し、縮合三環構造を含む化学式を有する任意の化合物を含むものとして説明できる抗うつ化合物の一種である。いくつかの実施形態において、ドロキシドパ(場合によって1種または複数のさらなる化合物)と組み合わせる三環系抗うつ剤は、式(2)の構造を有する化合物を含み、
【化2】

式中、XはC、N、O、またはSであり、Rは中央環の1、2、または3個すべての非縮合原子に存在する置換基であり(各置換基は他の置換基から独立している)、H、カルボニル、ハロ、アミノ、場合により置換されているアルキルもしくはヘテロアルキル、場合により置換されているアルケニルもしくはヘテロアルケニル、場合により置換されているアルキニルもしくはヘテロアルキニル、または場合により置換されているアルカリルもしくはアラルキルの群から選択され、任意の置換基はアルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシアルキル、および場合により置換されているアリールから選択され、nは0から6の整数である。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明によって用いられる三環系抗うつ剤は、アミトリプチリン(ELAVIL(登録商標))、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン(ANAFRANIL(登録商標))、デシプラミン(NORPRAMIN(登録商標))、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン(SINEQUAN(登録商標))、イミプラミン(TOFRANIL(登録商標))、ロフェプラミン、ノルトリプチリン(PAMELOR(登録商標)またはAVENTYL(登録商標))、プロトリプチリン(VIVACTYL(登録商標))、トリミプラミン(SURMONTIL(登録商標))、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0087】
特定の実施形態において、本発明によって用いられる三環系抗うつ剤は、アミトリプチリン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0088】
特に好ましい実施形態において、本発明によって用いられる三環系抗うつ剤は、アミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0089】
三環系抗うつ剤は、ドロキシドパおよび場合によって本明細書に記載のとおり1種または複数のさらなる活性剤と組み合わせて、本発明による特に有用な活性剤となり得る。具体的には、三環系抗うつ剤は、本発明の組み合わせを用いて治療することのできる種々の症状にわたって幅広い適用性を有する本発明による化合物の一種である。
【0090】
当然ながら、本発明の三環系化合物をうつ病の治療に用いられることが十分に認識される。三環系抗うつ剤はまた、いくつかの睡眠障害の治療に有用であることも示されている。たとえば、プロトリプチリン、クロミプラミン、およびイミプラミンは、レム睡眠を抑えることができ、したがってナルコレプシーの予防に有用となる。さらにアメリカ睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine)(AASM)の2007年の報告に示されているとおり、三環系抗うつ剤は、脱力発作、入眠時幻覚、および睡眠麻痺を含む中枢性の他の過眠症の治療に有用である(Morgenthaler et al.,Sleep(2007)、30(12):1705〜1727参照)。
【0091】
さらに三環系抗うつ剤は、少なくとも部分的に脳の前頭前皮質におけるドパミンおよびノルエピネフリンの不足に起因すると考えられているAD/HD症状の治療に有用であり得る。三環系抗うつ剤はこれらの神経伝達物質の再取り込みを遮断し、精神刺激剤が無効であるかまたは禁忌である患者に通例用いられている。TCAはAD/HD患者の多動性および衝動性の制限を促進するのに特に有用である。
【0092】
本発明のさらなる実施形態において、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、1種または複数のセロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物(SNRI)を含む。その名称が示すように、SNRIはCNSのセロトニンとノルエピネフリンの両方のレベルに影響を及ぼす。典型的にSNRIとして認められている任意の化合物を本発明によって用いることができる。本発明によって有用なSNRIの非限定的な例には、ベンラファキシン(EFFEXOR(登録商標))、デスベンラファキシン(PRISTIQ(登録商標))、ミルナシプラン(DALCIPRAN(登録商標))、およびデュロキセチン(CYMBALTA(登録商標))が含まれる。
【0093】
さらなる実施形態によれば、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、1種または複数のノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物(NDRI)を含む。そのような化合物の一例はブプロピオン(WELLBUTRIN(登録商標))である。前述のとおり、この化合物は単にNRIとして分類することもできる。ブプロピオンおよびその代謝産物ラダファキシンは共に、ノルエピネフリンおよびドパミン両方の阻害を示すことができる。
【0094】
さらなる実施形態において、ドロキシドパと組み合わせて用いられる活性剤は、1種または複数のノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤(NaSSA)化合物を含む。そのような化合物の特定の非限定的な例には、ミルタザピン(REMERON(登録商標))およびマプロチリン(LUDIOMIL(登録商標))が含まれる。
【0095】
本発明によってドロキシドパと組み合わせることのできる抗うつ特性を有する他の群の化合物は、ネホパム((+)−ネホパムを含む)などのベンゾオキサゾシン化合物である。たとえば、その全体がここに引用することで本明細書の一部をなすもとする米国特許出願第2006/0019940号は、セロトニン、ノルエピネフリン、およびドパミンに対して再取り込み阻害を示す可能性のあるベンゾオキサゾシン化合物を開示し、そのような化合物は本発明に有用である。
【0096】
上記の化合物に加えて、さらなる種類の化合物を本発明によってドロキシドパと組み合わせることができる。ドロキシドパと組み合わせることのできるさらなる活性剤の非限定的な例には、気分安定剤(リチウム、オランザピン、ベラパミル、クエチアピン、ラモトリジン、カルバマゼピン、バルプロエート、オキシカルバゼピン、リスペリドン、アリピプラゾール、およびジプラシドンなど)、抗精神病薬(ハロペリドールおよび他のブチロフェノン、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジンおよび他のフェノチアジン、ならびにクロザピンなど)、セロトニン受容体アンタゴニスト(5−HT2および5−HT3アンタゴニスト)(トラゾドン、オンダンセトロン、トロピセトロン、ケタンセリン、メチセルジド、シプロヘプタジン、およびピゾチフェンなど)、セロトニン受容体アゴニスト(5−HT1A受容体アゴニスト)(ブスピロンまたはBUSPAR(登録商標)など)、刺激剤[カフェイン、ADDERALL(登録商標)、メチルフェニダート(METADATE(登録商標)、RITALIN(登録商標)、またはCONCERTA(登録商標))、ペモリン(CYLERT(登録商標))、デキストロアンフェタミン(DEXEDRINE(登録商標)、DEXTROSTAT(登録商標)、またはFOCALIN(登録商標))、メタアンフェタミン(DESOXYN(登録商標))、マジンドール(SANOREX(登録商標))、またはモダフィニル(PROVIGIL(登録商標))]、ならびにガンマ−ヒドロキシブチラート(GHB)(XYREM(登録商標))が含まれる。
【0097】
上記の化合物は、化合物および特定の化合物の種類に関して記載しているが、化合物のいくつかの種類の間には実質的な重なりのあることが理解される(気分安定剤、抗精神病薬、抗うつ剤、およびセロトニン受容体アンタゴニストの間など)。たとえば、特定の化合物の種類を例示する特定の化合物はさらに1つまたは複数のさらなる化合物の種類によって適切に同定することができる。したがって、上記の分類は本明細書に記載の症状を治療するためにドロキシドパと組み合わせて有用である化合物の種類の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0098】
ドロキシドパと組み合わせて用いる活性剤のいくつかの特定の例を上に開示したが、そのような化合物は本発明を限定するものとしてみなされるべきではない。むしろ、抗うつ、抗ナルコレプシー、抗不眠、またはAD/HD治療として一般に認められている任意の薬物を、本発明によってドロキシドパと組み合わせて用いることができる。さらに、本発明によれば、記載の症状を治療するために2種以上の追加活性剤をドロキシドパと組み合わせることができる。
【0099】
特定の実施形態において、気分障害、睡眠障害、または注意欠陥障害の治療に用いるために、ドロキシドパを少なくとも1種のさらなる活性剤と組み合わせるように、上記の活性剤を組み合わせることができる。いくつかの実施形態において、ドロキシドパは1種のみのさらなる活性剤と組み合わせることができる。他の実施形態において、ドロキシドパは2種以上のさらなる活性剤と組み合わせることができる。さらに、2種以上のさらなる活性剤をドロキシドパと組み合わせるとき、さらなる活性剤は同一または異なる群の化合物から選択することができる(たとえば、2種の三環系抗うつ剤、または三環系抗うつ剤とDDC阻害剤)。本発明に包含される特定の組み合わせの非限定的な例には、以下のものが含まれる。
a)ドロキシドパ+DDC阻害化合物、
b)ドロキシドパ+COMT阻害化合物、
c)ドロキシドパ+コリンエステラーゼ阻害化合物、
d)ドロキシドパ+MAOI、NRI、SSRI、三環系、SNRI、NDRI、およびNASSAの群から選択された抗うつ剤、
e)ドロキシドパ+DDC阻害化合物+MAOI、NRI、SSRI、三環系、SNRI、NDRI、およびNASSAの群から選択された抗うつ剤、
f)ドロキシドパ+COMT阻害化合物+MAOI、NRI、SSRI、三環系、SNRI、NDRI、およびNASSAの群から選択された抗うつ剤、
g)ドロキシドパ+コリンエステラーゼ阻害化合物+MAOI、NRI、SSRI、三環系、SNRI、NDRI、およびNASSAの群から選択された抗うつ剤、
h)ドロキシドパ+DDC阻害化合物+三環系抗うつ剤、
i)ドロキシドパ+COMT阻害化合物+三環系抗うつ剤、
j)ドロキシドパ+コリンエステラーゼ阻害化合物+三環系抗うつ剤、
k)ドロキシドパ+MAOI+三環系抗うつ剤、
l)ドロキシドパ+NRI+三環系抗うつ剤、
m)ドロキシドパ+SSRI+三環系抗うつ剤、
n)ドロキシドパ+1種または複数のベンセラジド、カルビドパ、ジフルオロメチルドパ、およびα−メチルドパ+1種または複数のアミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、およびプロトリプチリン、
o)ドロキシドパ+1種または複数のエンタカポン、トルカポン、およびニテカポン+1種または複数のアミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、およびプロトリプチリン、
p)ドロキシドパ+1種または複数のピリドスチグミン、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン、ネオスチグミン、メトリホナート、フィゾスチグミン、アンベノニウム、エドロホニウム、デマルカリウム、チアフィソベニン、フェンセリン、およびシムセリン+1種または複数のアミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、
q)ドロキシドパ+1種または複数のイソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン、ラザベミド、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ハルマラ、ブロファロミン、およびベンモキシン+1種または複数のアミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、
r)ドロキシドパ+1種または複数のアトモキセチン、レボキセチン、ビロキサジン、マプロチリン、ブプロピオン、およびラダファキシン+1種または複数のアミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、
s)ドロキシドパ+1種または複数のフルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミン、およびセルトラリン+1種または複数のアミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、
t)ドロキシドパ+DDC阻害化合物+1種または複数のCOMT阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、および抗うつ剤、
u)ドロキシドパ+DDC阻害化合物+COMT阻害化合物、ならびに
v)ドロキシドパ+1種または複数のベンセラジド、カルビドパ、ジフルオロメチルドパ、およびα−メチルドパ+1種または複数のエンタカポン、トルカポン、およびニテカポン。
【0100】
(III 治療方法)
一実施形態において、本発明は気分障害を治療する方法を提供する。具体的には、本発明はうつ病を治療する方法を提供する。本発明の方法は一般に、うつ病を罹患している患者にドロキシドパを投与することを含む。特定の実施形態において、本発明は、うつ病の症状を示しているか、またはうつ病を罹患している診断された患者にドロキシドパを投与することを含む。
【0101】
うつ病は典型的に神経伝達物質セロトニンおよびノルエピネフリンのレベルの低下に関連し、脳内の神経伝達物質レベルを上昇させる手段はうつ病の治療に有効であり得る。このように、うつ病の介入は神経伝達物質再取り込み阻害剤を含んでいるが、しかしながら多くの再取り込み阻害剤は望ましくない副作用も起こす(たとえば、体重変化、睡眠中断、および性機能不全)。
【0102】
ドロキシドパは、DDCとして知られる芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼの作用によってノルエピネフリンに変換される。ドロキシドパは、記載の変換工程によってノルエピネフリンレベルを上昇させる能力のため、気分障害、特にうつ病の治療に有用であると考えられている。うつ病(および他の気分障害)はノルエピネフリンレベルの低下と関連している可能性があるため、特にCNSにおいて、利用可能なノルエピネフリンの量を増大する治療は、そのような症状の治療に有益である。
【0103】
うつ病などの気分障害は、患者がそのような障害のある種の症状を示すときに診断することができる。前述のとおり、気分障害の症状には以下のものを含むことができる。持続的な悲しみの感情、絶望感または無力感、低い自尊心、不適格だと感じること、過度の罪悪感、死の願望、日常の活動またはかつて楽しんでいた活動への興味喪失、人間関係が困難、睡眠障害、食欲または体重の変化、活動力低下、集中困難、決断能力低下、自殺念慮または企図、頻繁な身体愁訴(すなわち、頭痛、腹痛、疲労)、家から逃げ出すまたは逃げ出す恐れ、失敗または拒絶に対する過敏、ならびに過敏性、敵性、または攻撃性。したがって、本発明による気分障害の治療は、記載の症状または気分障害の診断において医療専門家が依存する他の症状のいずれかを排除またはその頻度もしくは重症度を低減することを含むことができる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、症状を排除またはその頻度もしくは重症度を低減するのに有効な量で、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することによって、気分障害の少なくとも1つの症状を示す患者を治療することを含む。特定の実施形態において、気分障害はうつ病である。他の実施形態において、本発明は具体的には、上に示した気分障害の特定の症状のいずれか1つを排除またはその頻度もしくは重症度を低減するものであると記載することができる。一実施形態において、本方法は、うつ病の特定の症状を排除またはその頻度もしくは重症度を低減することを含む。そのような実施形態において、本方法は、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを投与することを含むことができる。本発明の方法の有効性は、治療患者の分析によって、治療患者の自己報告によって、または治療患者評価後に医療専門家によって提供される有効治療の診断によって確立することができる。
【0104】
さらなる実施形態において、本発明は睡眠障害を治療する方法を提供する。具体的には、本発明は、過眠症として分類される任意の症状(脱力発作を伴うかまたは伴わないナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症、および内科的症状に起因する過眠症を含む)を治療する方法を提供する。他の特定の実施形態において、本発明は不眠症を治療する方法を提供する。本発明の方法は一般に、過眠の症状を患っているまたは不眠を患っている患者にドロキシドパを投与することを含む。
【0105】
治療方法は特定のナルコレプシーの過眠症状に関して以下のとおり記載することができるが、上記のとおり本発明の方法は過眠症の他の症状の治療も包含することが理解される。前に指摘したとおり、ナルコレプシーは典型的に刺激剤および抗うつ剤(すなわち、意識覚醒度を高め、疲労を低減するのに有用な組成物)で治療される。したがって、ナルコレプシー(特に脱力発作などのその症状)はノルエピネフリンなどの神経伝達物質のレベルの低下に関連することがあり、脳内の神経伝達物質レベルを上昇させる手段はナルコレプシーの治療に有効であり得る。ドロキシドパは直接ノルエピネフリンに変換されることから、記載の変換工程によってノルエピネフリンレベルを上昇させる能力のため、睡眠障害、特にナルコレプシーの治療に有用であると考えられている。
【0106】
不眠はノルエピネフリンレベルの異常な上昇と関連する可能性がある。したがって、ノルエピネフリンレベルを正常にする1種または複数の薬物の使用は不眠の治療に有用である可能性がある。
【0107】
本発明による睡眠障害の治療は、睡眠障害の完全な停止を含むことができ、または睡眠障害の頻度もしくは重症度の低減を含むことができる。たとえば、本発明によるナルコレプシーの治療は、特定期間のナルコレプシー事象の完全な不在、ナルコレプシー事象の頻度の低減、またはナルコレプシー事象の重症度の低減によって証明することができる。本明細書で用いられる「ナルコレプシー事象」または「ナルコレプシーエピソード」は、以下のナルコレプシーの既知の症状、日中の過剰な眠気、脱力発作、睡眠麻痺、および入眠時幻覚のいずれか1つまたは複数の発生を意味することが意図される。
【0108】
好ましい実施形態において、本発明によるナルコレプシーの治療は、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも2週、少なくとも3週、少なくとも4週、少なくとも5週、少なくとも6週、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも6カ月、または少なくとも1年の期間、ナルコレプシー事象の完全な不在を達成するのに有効である。特定の実施形態において、本発明はしたがって反復性ナルコレプシーエピソードを患っている患者を治療することを含み、この方法は上記のとおりある期間ナルコレプシー事象の完全な不在を達成するのに有効な量で、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することを含む。このように治療は患者が前に示したナルコレプシーの症状のいずれか1つまたは複数の完全な不在を達成するのに有効である可能性がある。
【0109】
他の実施形態において、治療はナルコレプシー事象の頻度の低減に有効である可能性がある。具体的には、治療は、24時間1日に1事象以下、2日間に1事象以下、3日間に1事象以下、4日間に1事象以下、5日間に1事象以下、6日間に1事象以下、7日間に1事象以下、2週間に1事象以下、3週間に1事象以下、4週間に1事象以下、5週間に1事象以下、6週間に1事象以下、2カ月間に1事象以下、3カ月間に1事象以下、6カ月間に1事象以下、または1年間に1事象以下にナルコレプシー事象の頻度を低減するのに有効である可能性がある。特定の実施形態において、本発明はしたがって反復性ナルコレプシーエピソードを患っている患者を治療することを含み、この方法は上記のとおりある期間ナルコレプシー事象の頻度を低減するのに有効な量で、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することを含む。このように治療は患者が前に示したナルコレプシーの症状のいずれか1つまたは複数の発生頻度を低減するのに有効である可能性がある。
【0110】
さらなる実施形態において、治療はナルコレプシー事象の重症度の低減に有効である可能性がある。たとえば、治療は、患者がナルコレプシー事象を患っている場合、その事象の症状が完全な意識消失を含まない、完全な麻痺を含まない、いずれの麻痺も含まない、またはいずれの幻覚も含まないように有効である可能性がある。特定の実施形態において、本発明はしたがって反復性ナルコレプシーエピソードを患っている患者を治療することを含み、この方法は上記のとおりナルコレプシー事象の重症度を低減するのに有効な量で、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することを含む。このように治療は患者が前に示したナルコレプシーの症状のいずれか1つまたは複数の重症度を低減するのに有効である可能性がある。
【0111】
本発明による不眠の治療は同様に、特定期間の不眠の症状の完全な不在、不眠エピソードの頻度の低減、または不眠エピソードの重症度の低減によって証明することができる。前に指摘したとおり、不眠は種々の症状によって証明することができる。一部の患者では、不眠はその患者にとって通常の時間に床についた後、数時間までの間、入眠できないこととして現れる。たとえば、通常は午後10時に床につく患者において、不眠のエピソードは、最初に床についてから30分後、1時間後、2時間後、3時間後まで、またはさらに長い時間、入眠できないこととして現れる可能性がある。不眠のエピソードは典型的に、連続2日以上、連続3日以上、連続4日以上、連続5日以上、連続6日以上、連続7日以上、またはさらに長い期間現れる可能性がある。他の事例では、不眠は、最初は入眠できるが、睡眠時間中1回または複数回の覚醒によってその睡眠が中断されることとして現れる可能性があり、多くの場合30分間、1時間、2時間、3時間、またはさらに長い時間、再び入眠できないことを伴う。
【0112】
好ましい実施形態において、本発明による不眠の治療は、不眠のエピソードの完全な不在を達成するのに有効である。具体的には、不眠のエピソードは、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも2カ月間、少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、または少なくとも1年間防止される可能性がある。本発明はしたがって反復性不眠エピソードを患っている患者を治療することを含み、この方法は上記のとおりある期間不眠エピソードの完全な不在を達成するのに有効な量で、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することを含む。このように治療は、患者が前に示した入眠困難または睡眠時の反復性覚醒の完全な不在を達成するのに有効である可能性がある。
【0113】
他の実施形態において、治療は不眠エピソードの頻度の低減に有効である可能性がある。具体的には、治療は、1週間に1エピソード以下、2週間に1エピソード以下、3週間に1エピソード以下、4週間に1エピソード以下、5週間に1エピソード以下、6週間に1エピソード以下、2カ月間に1エピソード以下、3カ月間に1エピソード以下、6カ月間に1エピソード以下、または1年間に1エピソード以下に不眠エピソードの頻度を低減するのに有効である可能性がある。特定の実施形態において、本発明はしたがって反復性不眠エピソードを患っている患者を治療することを含み、この方法は上記のとおりある期間不眠エピソードの頻度を低減するのに有効な量で、単独または本明細書に記載の1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することを含む。このように治療は、患者が前に示した入眠困難または睡眠時の反復性覚醒の発生頻度の低減に有効である可能性がある。
【0114】
さらなる実施形態において、治療は不眠エピソードの重症度の低減に有効である可能性がある。たとえば、治療は、患者が不眠エピソードを患っている場合、エピソードの症状が前に患っていたものより重症度が軽くなるように有効である可能性がある。たとえば、入眠困難は、患者が1時間未満、45分未満、30分未満、20分未満、または15分未満に睡眠を達成できるような重症度に低減される可能性がある。同様に、頻繁な覚醒は、患者が8時間の睡眠中に5回未満、4回未満、3回未満、または2回未満目を覚ますような重症度に低減される可能性がある。さらに、睡眠中の頻繁な覚醒を患っている患者が継続して目を覚ましている場合、その症状の重症度は、患者が1時間未満、45分未満、30分未満、20分未満、または15分未満の時間で再び睡眠を獲得できるように低減される。特定の実施形態において、本発明はしたがって反復性不眠エピソードを患っている患者を治療することを含み、この方法は上記のとおり不眠エピソードの重症度を低減するのに有効な量で、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することを含む。このように治療は、患者が前に示した不眠の症状のいずれか1つまたは複数の重症度を低減するのに有効である可能性がある。
【0115】
さらに他の実施形態において、本発明は注意欠陥障害(AD/HD)を治療する方法を提供する。本発明の方法はしたがって、AD/HDを患っている患者にドロキシドパを投与することを含む。
【0116】
歴史的に刺激剤(CNSドパミンレベルに影響を及ぼす)はAD/HDの治療に選択される薬物とされてきたが、しかしながら最近の研究は他の種類の医薬品も有効であり得ることを示している。たとえば、米国食品医薬品局(FDA)は近年、AD/HDの治療にNRIのSTRATTERA(登録商標)(アトモキセチン)の使用を認可し、これはCNSで利用可能なノルエピネフリンのレベルを上昇させることのできる化合物がAD/HDの治療に有効であり得ることを示唆している。ここでも、ドロキシドパは直接ノルエピネフリンに変換されることから、記載の変換工程によってノルエピネフリンレベルを上昇させる能力のため、AD/HDの治療に有用であると考えられている。
【0117】
気分障害と同様に、AD/HDは、患者がその障害のある種の症状を示すときに診断することができる。したがって、本発明によるAD/HDの治療は、記載の症状またはAD/HDの診断において医療専門家が依存する他の症状のいずれかを排除またはその頻度もしくは重症度を低減することを含むことができる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、症状を排除またはその頻度もしくは重症度を低減するのに有効な量で、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することによって、AD/HDの少なくとも1つの症状を示す患者を治療することを含む。他の実施形態において、本発明は具体的には、本明細書に記載のAD/HDの特定の症状のいずれか1つを排除またはその頻度もしくは重症度を低減するものであると説明することができる。そのような実施形態において、本方法は、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数のさらなる活性剤と組み合わせたドロキシドパを投与することを含むことができる。本発明の方法の有効性は、治療患者の分析によって、治療患者の自己報告によって、または治療患者評価後に医療専門家によって提供される有効治療の診断によって確立することができる。
【0118】
驚いたことに、ドロキシドパなどの単一薬剤を、気分障害、睡眠障害、または注意欠陥障害などの種々の症状の治療に使用できる。前に指摘したとおり、ドロキシドパは、特にCNSにおいて、ノルエピネフリンレベルの上昇に有用である。そのようなノルエピネフリンレベルの上昇は、神経伝達物質の直接的な効果に加えて、本発明による利益となる可能性のある間接的な効果も有し得る。理論に拘束されることを望むものではないが、ノルエピネフリンレベルの上昇(特にドロキシドパの変換によりCNSにおいて)に起因する血圧の上昇は、脳の血流の増加をもたらし得る。これは種々の症状に著しい影響を与えることができる。たとえば、うつ病、ナルコレプシー、およびAD/HDはすべて、大脳血流低下(rCBF)と関連があるとされている。ナルコレプシーを中心に扱っているが、Joo et al.,Neuroimage(2005)、28(2):410〜416頁(ここに引用することで本明細書の一部をなすもとする)による最近の研究は、脳灌流の異常によって脱力発作を含むナルコレプシー、情緒不安定(すなわち、うつ)、および注意欠陥の特徴を説明できることを開示している。局所大脳血流(灌流)を増加するメチルフェニダートなどの化合物による他の臨床研究はAD/HDを改善することが見出された。いずれもここに引用することで本明細書の一部をなすもとする、Lee et al.,Hum.Brain Mapp.(2005)、24(3):157〜164、およびKim et al.,Yonsei Med J.(2001)、42(1):19〜29を参照されたい。驚いたことに、ドロキシドパなどの単一薬剤が、大脳血流の低下が根本的な要因である可能性のある種々の症状を首尾よく治療する一環となり得ることを、本発明は見出した。
【0119】
したがって本発明は特に、大脳など、脳の1つまたは複数の部分における血流低下に少なくとも部分的に起因する症状を患っている患者を治療する方法を包含することができる。この方法は特に、単独または本明細書に記載のとおり1種もしくは複数の追加活性剤と組み合わせたドロキシドパを患者に投与することを含むことができる。好ましくは、投与される薬剤(たとえば、ドロキシドパ)または複数の薬剤(たとえば、ドロキシドパ+少なくとも1種の追加薬剤)は、脳血流(たとえば、大脳血流)を増加し、したがってその症状を治療する機能を果たす治療有効量である。
【0120】
1種または複数のさらなる活性成分とドロキシドパの種々の組み合わせも、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の症状の治療に有益である。いくつかの実施形態において、1種または複数のさらなる活性剤は、ドロキシドパに保存効果をもたらす。さらなる実施形態において、1種または複数のさらなる活性剤は、ドロキシドパの作用に相補的効果をもたらし、好ましくは本明細書に記載の症状に伴う1つまたは複数の症状を排除またはその頻度もしくは重症度を低減する。
【0121】
特定の実施形態において、ドロキシドパは1種または複数のDDC阻害剤と組み合わせられる。そのような組み合わせは特に、ノルエピネフリンレベルの上昇におけるドロキシドパの効果に焦点を合わせるのに有益である。ベンセラジドおよびカルビドパなどの多くのDDC阻害剤は中枢神経系に進入しない。むしろ、末梢内にとどまり、そこで化合物(レボドパまたはドロキシドパなど)の活性代謝産物(ノルエピネフリンなど)への脱カルボキシル化を妨げる。このように、非CNS DDC阻害剤がドロキシドパと組み合わせて投与されるとき、DDC阻害剤は末梢でドロキシドパの脱カルボキシル化を妨げ、それによってより多くのドロキシドパがそのままCNSに進入することを可能にする。CNSに入ると(したがって、DDC阻害剤から分離されると)、ドロキシドパはノルエピネフリンに変換され得る。したがって、DDC阻害剤とドロキシドパとの組み合わせは、CNS内にノルエピネフリンを供給するドロキシドパの有効な能力を高め、本明細書に記載の症状の治療において有効であるドロキシドパの必要用量を低減することができる。
【0122】
前述のとおり、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼは、ドパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、およびドロキシドパを含むカテコールアミンの代謝に直接関与する。したがって、COMT阻害剤と組み合わせたドロキシドパを提供することによって、本明細書に記載の症状に影響を及ぼすドロキシドパの作用は保存される。具体的には、COMTの作用を阻害することによって、COMT阻害化合物はドロキシドパ(ならびにノルエピネフリン自体)の代謝を減速または遅延する。これは投与されたドロキシドパのピーク血漿濃度(Cmax)と半減期の両方を増大することによって、ドロキシドパの全血漿濃度に影響を及ぼす。このことは、本明細書に記載の症状の有効な治療を制限することなく、ドロキシドパの投与量を低減できるという点で特に有益である。さらに、COMT阻害剤とドロキシドパとの組み合わせは、ドロキシドパ活性の持続時間を増大する(すなわち、ノルエピネフリン活性の持続時間を増大する)のに有効である可能性があり、これによりドロキシドパの投与頻度を低減できる可能性がある。たとえば、その全体がここに引用することで本明細書の一部をなすもとする、米国特許出願第2008/0015181号を参照されたい。
【0123】
ドロキシドパとMAOIとの組み合わせは、身体のノルエピネフリンレベルを保存する同様の効果を有する。特定の実施形態において、MAOIは、ドロキシドパの変換から形成されたものを含むノルエピネフリンの分解においてモノアミンオキシダーゼの作用を阻害する。したがって、ドロキシドパの半減期が増大されるため、ドロキシドパ血漿濃度はプラスの影響を受ける。このことは、この場合にも本明細書に記載の症状の有効な治療を制限することなく、ドロキシドパの投与量を低減できるという点で特に有益である。さらに、MAOIとドロキシドパとの組み合わせは、ドロキシドパの活性持続時間の増大にも有効であり、これによりこの場合にもドロキシドパの投与頻度を低減できる可能性がある。
【0124】
いくつかの実施形態において、ドロキシドパとコリンエステラーゼ阻害剤との組み合わせは特に有効であり得る。たとえば、特定の実施形態において、ピリドスチグミンをドロキシドパと組み合わせることができ、ピリドスチグミンは神経節神経伝達を強化し、ドロキシドパは節後ニューロンにノルエピネフリンを負荷するように作用する。
【0125】
さらなる実施形態において、CNSでノルエピネフリンの利用可能性を直接高めることが知られている1種または複数の化合物とドロキシドパを組み合わせることは特に有用である。上記のとおり、ドロキシドパはノルエピネフリンに直接変換される作用を有するが、しかしながら過剰なシナプス前再取り込みが行われている場合、ノルエピネフリンの生成は無効となり得る。ドロキシドパとNRIの組み合わせは、CNSノルエピネフリンレベルを保存する機能を果たす。
【0126】
ドロキシドパとさらなる活性成分との組み合わせはまた、本明細書に記載の症状の治療において特に有用である。たとえば、ドロキシドパを1種または複数の抗うつ剤と組み合わせることによって相加効果を提供できる。さらに、神経伝達物質レベルに影響を及ぼす治療は、最大有効性に達するために1から3週の「蓄積」期を必要とすることが知られている。したがって、ドロキシドパを、本明細書に記載の前記症状に伴う別の症状を即時に軽減できる1種または複数のさらなる活性剤と組み合わせることは有用であり得る。うつ病の治療に特に有効である、ドロキシドパと抗うつ剤および本明細書に記載の1種または複数のさらなる活性剤との組み合わせのこの能力を、以下に示す実施例において例示する。
【0127】
三環系抗うつ剤とドロキシドパの組み合わせに起因する明らかな相乗効果の観点から、本発明にはさらに、そのような化合物が用いられる任意の症状の治療において、三環系抗うつ剤の治療有効性を高める方法が含まれる。たとえば、ドロキシドパと三環系抗うつ剤の組み合わせは、本明細書に記載の気分障害、睡眠障害、および注意欠陥障害を治療するそのような抗うつ剤の治療有効性を高めるだけでなく、神経障害性疼痛、夜間遺尿症、頭痛(片頭痛を含む)、不安、神経性大食症、過敏性腸症候群、持続性しゃっくり、および間質性膀胱炎の治療を強化するためにも用いることができる。
【0128】
(IV 生物学的に活性な変形)
活性剤として本明細書に開示の種々の化合物の生物学的に活性な変形も特に本発明に包含される。そのような変形は、元の化合物の一般的な生物学的活性を保持しているべきであるが、しかしながら追加的な活性の存在は本発明におけるその使用を必ずしも制限しない。そのような活性は、一般にそのような活性の同定に有用であるとして当業者に認識される標準的な試験方法およびバイオアッセイを用いて評価することができる。
【0129】
本発明の一実施形態によれば、適切な生物学的に活性な変形には、本明細書に記載の化合物の類似体および誘導体が含まれる。実際、本明細書に記載のものなどの単一の化合物は、類似の活性を有し、したがって本発明によって有用である類似体または誘導体の全ファミリーを生じることができる。同様に、本明細書に記載のものなどの単一の化合物は、本発明に有用な化合物のより大きな種類の単一のファミリーメンバーを表すことができる。したがって本発明は、本明細書に記載の化合物だけでなく、そのような化合物の類似体および誘導体、特に当分野で一般に知られ、当業者に認識される方法によって同定可能なものを完全に包含する。
【0130】
活性剤として本明細書に開示した化合物はキラル中心を含有することができ、それらは(R)もしくは(S)立体配置であることができ、またはそれらの混合物を含むことができる。したがって、本発明はさらに適用可能な場合、個別であるかまたは任意の割合で混合されている本明細書に記載の化合物の立体異性体を含む。これに限定されるものではないが、立体異性体は、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ混合物、およびそれらの組み合わせを含むことができる。そのような立体異性体は、エナンチオマー出発材料を反応させるか、または本発明の化合物の異性体を分離することによって、従来の技法を用いて調製および分離できる。異性体は幾何異性体を含むことができる。幾何異性体の例には、これに限定されるものではないが、シス異性体または二重結合を交差するトランス異性体が含まれる。他の異性体も本発明の化合物に含まれることが企図される。異性体は純粋な形態で、または本明細書に記載の化合物の他の異性体との混合物として用いることができる。
【0131】
光学活性形態を調製し、活性を判定するための種々の方法が当分野で知られている。そのような方法には、本明細書に記載の標準試験、当分野でよく知られている他の類似の試験が含まれる。本発明による化合物の光学異性体を得るために用いることのできる方法の例には、以下のものが含まれる。
i)個々のエナンチオマーの巨視的結晶を手作業で分離する結晶の物理的分離。この技法は特に、分離したエナンチオマーの結晶が存在し(すなわち、材料が集塊である)、結晶が視覚的に区別可能な場合に用いることができる。
ii)個々のエナンチオマーがラセミ化合物の溶液から個別に結晶化され、それが固体状態の集塊である場合にのみ可能である同時結晶化。
iii)エナンチオマーと酵素の異なる反応速度に基づいてラセミ化合物を部分的または完全に分離する酵素的分割。
iv)酵素的不斉合成、合成の少なくとも1つの段階で酵素反応を用いて、所望のエナンチオマーのエナンチオマー的に純粋であるかまたは富化された合成前駆体を得る合成技法。
v)生成物に不斉(すなわち、キラリティ)が生じる条件下でアキラル前駆体から所望のエナンチオマーを合成する化学的不斉合成、これはキラル触媒またはキラル補助剤を用いて達成することができる。
vi)ラセミ化合物を、個々のエナンチオマーをジアステレオマーに変換するエナンチオマー的に純粋な試薬(キラル補助剤)と反応させるジアステレオマー分離。次いで、得られたジアステレオマーを、より明確になっている構造差に基づいてクロマトグラフィまたは結晶化によって分離し、後にキラル補助剤を除去して所望のエナンチオマーを得る。
vii)一次および二次不斉転換、ラセミ化合物のジアステレオマーを平衡化して、所望のエナンチオマーのジアステレオマーが優勢な溶液を得るか、または最終的に原理上はすべての材料が所望のエナンチオマーの結晶性ジアステレオマーに変換されるように、所望のエナンチオマーのジアステレオマーの優先的な結晶化によって平衡を乱す。次いで、所望のエナンチオマーをジアステレオマーから分離する。
viii)動力学的条件下でエナンチオマーとキラル、非ラセミ試薬または触媒との反応速度が同じでないことに基づいて、ラセミ化合物を部分的または完全に分割すること(または部分的に分割された化合物のさらなる分割)を含む動力学的分割。
ix)所望のエナンチオマーが非キラル出発材料から得られ、合成過程にわたって立体化学的な完全性が損なわれないか、または最小限にしか損なわれない、非ラセミ前駆体からのエナンチオ特異的合成。
x)固定相との異なる相互作用に基づいて液体移動相でラセミ化合物のエナンチオマーを分離する、キラル液体クロマトグラフィ。移動相は異なる相互作用を誘発するために、固定相はキラル材料で作製することができるか、または移動相は追加のキラル材料を含有できる。
xi)ガス状移動相におけるそれらの固定非ラセミキラル吸着相を含有するカラムとの異なる相互作用に基づいて、ラセミ化合物を揮発させ、エナンチオマーを分離する、キラルガスクロマトグラフィ。
xii)1つのエナンチオマーが特定のキラル溶媒に優先的に溶解することに基づいてエナンチオマーを分離する、キラル溶媒による抽出。ならびに
xiii)ラセミ化合物を薄膜障壁と接触させるキラル膜輸送。障壁は典型的に、一方がラセミ化合物を含有する2種混和性流体を分離し、濃度または圧力の差異などの駆動力によって膜障壁を通る優先的な輸送が起こる。ラセミ化合物の一方のエナンチオマーのみを通過させる膜の非ラセミキラル性の結果として分離が起こる。
【0132】
化合物は場合によって、一方のエナンチオマーが過剰に存在する、具体的には95%以上、または98%以上、100%を含む程度まで存在するエナンチオマー混合物など、エナンチオマー的に富んだ組成物として提供することができる。
【0133】
活性剤として本明細書に記載の化合物は、本発明による薬理学的活性が維持されるならば、エステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、または代謝産物の形態であることもできる。本発明の化合物のエステル、アミド、塩、溶媒和物、プロドラッグ、および他の誘導体は、たとえばここに引用することで本明細書の一部をなすもとする、J.March、Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms and Structure、第4版(New York:Wiley−Interscience、1992)に記載されている方法など、当分野で一般に知られている方法によって調製することができる。
【0134】
本発明によって有用な化合物の医薬的に許容される塩の例には酸付加塩が含まれる。しかしながら、医薬的に許容されない酸の塩は、たとえば化合物の調製および精製に有用である可能性がある。本発明に適切な酸付加塩には、有機酸および無機酸が含まれる。好ましい塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびイセチオン酸から形成された塩が含まれる。他の有用な酸付加塩には、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸などが含まれる。医薬的に許容される塩の特定の例には、これに限定されるものではないが、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオアート、ヘキシン−1,6−ジオアート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、およびマンデル酸塩が含まれる。
【0135】
酸付加塩は、適切な塩基で処理することによって、遊離塩基に再変換することができる。本発明に有用な化合物に存在できる酸部分の塩基性塩の調製は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリエチルアミンなどの医薬的に許容される塩基を用いて、類似の方法で調製することができる。
【0136】
本発明による活性剤化合物のエステルは、その化合物の分子構造内に存在できるヒドロキシルおよび/またはカルボキシル基の官能化によって調製することができる。アミドおよびプロドラッグも当業者に知られている技法を用いて調製することができる。たとえば、アミドは適切なアミン反応物を用いてエステルから調製することができ、あるいはアンモニアまたは低級アルキルアミンとの反応によって無水物または酸塩化物から調製することができる。さらに、本発明の化合物のエステルおよびアミドは、温度0℃から60℃で適切な有機溶媒中(たとえば、テトラヒドロフラン、アセトン、メタノール、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド)、カルボニル化剤(たとえば、ギ酸エチル、無水酢酸、メトキシアセチルクロリド、塩化ベンゾイル、イソシアン酸メチル、クロロギ酸エチル、メタンスルホニルクロリド)および適切な塩基(たとえば、4−ジメチルアミノピリジン、ピリジン、トリエチルアミン、炭酸カリウム)との反応によって製造できる。プロドラッグは典型的に、ある部分の共有結合によって調製され、これによって個体の代謝系によって改変されるまで治療上不活性である化合物が生じる。医薬的に許容される溶媒和物の例には、これに限定されるものではないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、またはエタノールアミンと組み合わせた本発明による化合物が含まれる。
【0137】
固体組成物の場合、本発明の方法に用いられる化合物は種々の形態で存在できることが理解される。たとえば、化合物は安定および準安定な結晶形態、ならびに等方性および非晶質形態で存在することができ、それらはすべて本発明の範囲内であることが意図される。
【0138】
本発明による活性剤として有用な化合物が塩基である場合、所望の塩は当分野で知られる任意の適切な方法で調製することができ、遊離塩基を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、または酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸およびガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸および酒石酸などのアルファ−ヒドロキシ酸、アスパラギン酸およびグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸および桂皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸などのスルホン酸などの有機酸で処理することを含む。
【0139】
活性剤として本明細書に記載の化合物が酸である場合、所望の塩は当分野で知られる任意の適切な方法で調製することができ、遊離酸をアミン(第一級、第二級、または第三級)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物などの無機または有機塩基で処理することを含む。適切な塩の例示的な例には、グリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸、アンモニア、第一級、第二級、および第三級アミン、ならびにピペリジン、モルホリン、およびピペラジンなどの環状アミンから誘導された有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム、およびリチウムから誘導された無機塩が含まれる。
【0140】
本発明はさらに、本明細書に記載の活性剤化合物のプロドラッグおよび活性代謝産物を含む。化合物の活性、バイオアベイラビリティ、または安定性を増大するため、または他の点で化合物の特性を変更するために、本明細書に記載の任意の化合物をプロドラッグとして投与できる。プロドラッグの典型的な例には、活性化合物の官能部分に生物学的に不安定な保護基を有する化合物が含まれる。プロドラッグには、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、ヒドロキシル化、脱ヒドロキシル化、加水分解、脱水分解(dehydrolyzed)、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、および/または脱リン酸化されて、活性化合物を生成できる化合物が含まれる。好ましい実施形態において、本発明の化合物は、異常増殖細胞に対して抗増殖活性を有するか、またはそのような活性を示す化合物に代謝される。
【0141】
いくつかのプロドラッグリガンドが知られている。一般に、遊離アミンまたはカルボン酸残基など、化合物の1つまたは複数のヘテロ原子のアルキル化、アシル化、または他の親油性修飾は極性を低下させ、細胞内への通過を可能にする。遊離アミンおよび/またはカルボン酸部分の1つまたは複数の水素原子と置き換えることのできる置換基の例には、これに限定されるものではないが、以下のものが含まれる。アリール、ステロイド、炭水化物(糖を含む)、1,2−ジアシルグリセロール、アルコール、アシル(低級アシルを含む)、アルキル(低級アルキルを含む)、スルホン酸エステル(メタンスルホニルおよびベンジルなどのアルキルまたはアリールアルキルスルホニルを含み、ここでフェニル基は本明細書に示すアリールの定義で規定された1つまたは複数の置換基で場合によって置換されている)、場合によって置換されているアリールスルホニル、脂質(リン脂質を含む)、ホスファチジルコリン、ホスホコリン、アミノ酸残基または誘導体、アミノ酸アシル残基または誘導体、ペプチド、コレステロール、またはインビボで投与されたとき遊離アミンおよび/またはカルボン酸部分を提供する、医薬的に許容される他の脱離基。所望の効果を得るために、これらの任意のものを開示の活性剤と組み合わせて用いることができる。
【0142】
(V 医薬組成物)
本発明の方法で用いられる個々の活性剤化合物を原料のままの化学形態で投与することも可能であるが、化合物を医薬組成物として送達することが好ましい。したがって、活性剤として本明細書に記載の1種または複数の化合物を含む医薬組成物が本発明によって提供される。したがって本発明の方法で用いられる組成物は、上に記載した医薬的に活性な化合物、または医薬的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、類似体、誘導体、もしくはプロドラッグを含む。さらに、組成物は様々な組み合わせで調製および送達できる。たとえば、組成物は活性成分をすべて含有する単一の組成物を含むことができる。あるいは、組成物は、別の活性成分を含むが、同時に、連続して、またはごく近接した時間に投与されることが意図される複数の組成物を含むことができる。
【0143】
本明細書に記載の活性剤化合物は、1種または複数の医薬的に許容される担体、および場合によって他の治療成分と共に調製および送達できる。担体は組成物の他の任意の成分と適合性であり、受容者に有害でないという点で許容可能であるべきである。担体はさらに薬剤の望ましくない任意の副作用を低減する可能性がある。そのような担体は当分野で知られている。その全体がここに引用することで本明細書の一部をなすもとする、Wang et al.,(1980)J.Parent.Drug.Assn.34(6):452〜462を参照されたい。
【0144】
組成物は、短期、迅速開始、迅速相殺、制御放出、持続放出、遅延放出、およびパルス放出組成物を含むことができ、これらの組成物によって本明細書に記載の化合物の投与が達成される。その全体がここに引用することで本明細書の一部をなすもとする、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Publishing Company、Eaton、Pennsylvania、1990)を参照されたい。
【0145】
本発明の方法に用いる医薬組成物は種々の送達様式に適し、経口、非経口(静脈内、筋肉内、皮下、皮内、関節内、滑液包内、髄腔内、動脈内、心内、皮下、眼窩内、関節包内、脊髄内、幹内(intrastemal)、および経皮を含む)、局所(皮膚、口腔、および舌下を含む)、膣、尿道、および直腸投与が含まれる。投与は、鼻腔噴霧、外科的移植、内部外科的塗布、輸液ポンプによることができ、またはカテーテル、ステント、バルーン、もしくは他の送達装置によることもできる。もっとも有用かつ/または有益な投与様式は、特に受容者の症状および治療される障害に応じて多様であり得る。
【0146】
医薬組成物は、単位投与形態で好都合に利用できる可能性があり、そのような組成物は薬学分野で一般に知られている任意の方法で調製することができる。一般的に言えば、そのような調製方法は、本発明の活性化合物を1種または複数の成分からなることのできる適切な担体または他の補助剤と組み合わせること(種々の方法によって)を含む。次いで、活性成分と1種または複数の補助剤との組み合わせを物理的に処理して、送達に適した形態で組成物を提供する(たとえば、錠剤に成形するか、または水性懸濁液を形成する)。
【0147】
経口投与に適した医薬組成物は、それぞれ所定量の活性剤を含有する、錠剤、カプセル剤、カプレット、およびカシェ剤(急速溶解または発泡を含む)などの種々の形態をとることができる。組成物は、粉末または顆粒、水性または非水性液体の溶液または懸濁液、および液体エマルション(水中油型および油中水型)の形態であることもできる。活性剤は、ボーラス、舐剤、またはペーストとして送達することもできる。上記の投与形態の調製方法は一般に当分野で知られ、任意のそのような方法が本発明による組成物の送達に用いられるそれぞれの投与形態の調製に適していることが一般に理解される。
【0148】
一実施形態において、活性剤化合物は、不活性希釈剤または食用担体などの医薬的に許容されるビヒクルと組み合わせて経口で投与することができる。経口組成物は、硬質または軟質シェルゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に圧縮するか、または患者の食事の食品に直接組み入れることもできる。組成物および調剤の割合は多様であってよいが、そのような治療上有用な組成物中の物質の量は、好ましくは有効な投与量レベルが得られるような量である。
【0149】
活性剤化合物を含有する硬カプセルは、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を用いて製造することができる。そのような硬カプセルは化合物を含み、さらにたとえば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなどの不活性固体希釈剤を含む追加成分を含むことができる。化合物を含有する軟ゼラチンカプセルは、ゼラチンなどの生理的に分解可能な組成物を用いて製造することができる。そのような軟カプセルは化合物を含み、化合物は水、またはピーナツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油などの油媒質と混合されていてもよい。
【0150】
舌下錠は非常に迅速に溶解するように設計されている。そのような組成物の例には、酒石酸エルゴタミン、二硝酸イソソルビド、イソプロテレノールHCLが含まれる。これらの錠剤の組成物は、薬物に加えて、ラクトース、粉末スクロース、デキストロース、およびマンニトールなどの種々の可溶性賦形剤を含有する。本発明の固体投与形態は場合によって被覆されていてよく、適切な被覆材料の例には、これに限定されるものではないが、セルロースポリマー(酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、および酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、酢酸フタル酸ポリビニル、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、メタクリル樹脂(EUDRAGIT(登録商標)の商品名で市販されているものなど)、ゼイン、シェラック、および多糖類が含まれる。
【0151】
医薬調剤の粉末および顆粒組成物は、既知の方法を用いて調製することができる。そのような組成物は、患者に直接投与することができ、あるいは錠剤を形成する、カプセルを充填する、または水性もしくは油性ビヒクルを加えることによって水性もしくは油性懸濁液もしくは溶液を調製するなど、さらなる投与形態の調製に用いることができる。これらの組成物はそれぞれ、さらに分散剤または湿潤剤、懸濁化剤、および保存剤などの1種または複数の添加剤を含むことができる。追加の賦形剤(たとえば、充填剤、甘味剤、香味剤、または着色剤)もこれらの組成物に含むことができる。
【0152】
経口投与に適した医薬組成物の液体組成物は、液体形態、または使用前に水もしくは他の適切なビヒクルで再構成することを意図した乾燥製品の形態で調製、包装、および販売することができる。
【0153】
本明細書に記載の1種または複数の活性剤化合物を含有する錠剤は、たとえば、場合によって1種または複数の補助剤または副成分と共に圧縮または造形することによる工程など、当業者に容易に知られる任意の標準的な工程によって製造することができる。これらの錠剤は、場合によって被覆されているか、または分割線を刻まれていてもよく、活性剤の徐放または制御放出を提供するように製剤化することができる。
【0154】
組成物に用いる補助剤または副成分は、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、希釈剤、界面活性剤、安定剤、保存剤、香味剤、および着色剤などの、当分野で一般に許容可能とみなされる任意の医薬成分を含むことができる。結合剤は一般に、錠剤の凝集性を促進し、圧縮後に錠剤が無傷のままであることを確保するために用いることができる。適切な結合剤には、これに限定されるものではないが、デンプン、多糖類、ゼラチン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ロウ、ならびに天然および合成ゴムが含まれる。許容される充填剤には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、タルク、カオリン、粉末セルロース、および微結晶性セルロース、ならびにマンニトール、尿素、スクロース、ラクトース、デキストロース、塩化ナトリウム、およびソルビトールなどの可溶性材料が含まれる。潤滑剤は錠剤の製造を容易にするのに有用であり、植物油、グリセリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびステアリン酸が含まれる。錠剤の崩壊を促進するのに有用である崩壊剤には、一般にデンプン、粘土、セルロース、アルギン、ゴム、および架橋ポリマーが含まれる。一般に錠剤に嵩を提供するために含まれる希釈剤には、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、および粉末糖を含むことができる。本発明による組成物で用いるのに適した界面活性剤は、アニオン、カチオン、両性、または非イオン性界面活性剤であってよい。安定剤は、酸化反応などの活性剤の分解につながる反応を阻害または減少するために組成物に含まれることができる。
【0155】
固体投与形態は、コーティングを適用するなど、活性剤の遅延放出を提供するように製剤化することができる。遅延放出コーティングは当分野で知られ、それを含有する投与形態は任意の知られている適切な方法で調製することができる。そのような方法は一般に、固体投与形態の調製後(たとえば、錠剤またはカプレット)、遅延放出コーティング組成物を適用することを含む。適用は、無気噴霧、流動層コーティング、コーティングパンの使用などの方法によることができる。遅延放出コーティングとして用いる材料は、セルロース材料(たとえば、酪酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびカルボキシメチルエチルセルロース)、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、およびそのエステルのポリマーおよびコポリマーなど、本質的にポリマーであってよい。
【0156】
本発明による固体投与形態は、持続放出(すなわち、長時間にわたって活性剤が放出される)であることもでき、さらに遅延放出であってもなくてもよい。持続放出組成物は当分野で知られ、一般に不溶性プラスチック、親水性ポリマー、または脂肪族化合物などの、徐々に分解可能または加水分解可能な材料のマトリクス中に薬物を分散することによって調製される。あるいは、固体投与形態はそのような材料で被覆することができる。
【0157】
非経口投与用の組成物には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および組成物を意図される受容者の血液と等張にする溶質などの追加剤をさらに含有することができる水性および非水性滅菌注射液が含まれる。組成物には、懸濁化剤および増粘剤を含む水性および非水性滅菌懸濁剤が含まれ得る。そのような非経口投与用の組成物は、たとえば単位投与または多回投与容器、たとえば密封アンプルおよびバイアル中に提供することができ、使用直前に滅菌液体担体、たとえば水(注射用)の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze−dried(lyophilized))状態で貯蔵することができる。即時注射液および懸濁液は、上に記載したような種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0158】
本発明の方法で用いるための組成物は経皮的に投与することもでき、活性剤は長時間受容者の表皮に密に接触したままであるように適合された積層構造(一般に「パッチ」と呼ばれる)に組み込まれる。典型的にそのようなパッチは、単層「薬物入り粘着剤」パッチ、または活性剤が粘着層とは分離した層に含有されている多層パッチとして利用可能である。両方の型のパッチはまた、一般に支持層、および受容者の皮膚に適用される前に除去されるライナーも含有する。経皮薬物送達パッチは受容者の皮膚から半透過性膜および粘着層によって分離されている支持層の下にある貯留層からなることもできる。経皮薬物送達は、受動拡散、エレクトロトランスポート、またはイオントフォレシスによって行われてよい。
【0159】
直腸送達用の組成物には、直腸坐剤、クリーム、軟膏、および液剤が含まれる。坐剤は、ポリエチレングリコールなどの当分野で一般に知られている担体と組み合わせた活性剤として提供することができる。そのような投与形態は、迅速にまたは長時間にわたって崩壊するように設計されていてもよく、崩壊が完了する時間は約10分などの短時間から約6時間などの長時間までの範囲であってよい。
【0160】
局所組成物は、皮膚、口腔、および舌下を含む、体表面に活性剤を送達するのに適し、当分野で容易に知られている任意の形態であってよい。局所組成物の典型的な例には、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、および液剤が含まれる。口内に投与するための組成物にはロゼンジが含まれる。
【0161】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示の化合物および組成物は医療装置によって送達できる。そのような送達は一般に、任意の挿入可能または移植可能な医療装置によることができ、これに限定されるものではないが、ステント、カテーテル、バルーンカテーテル、シャント、またはコイルが含まれる。一実施形態において、本発明は、その表面が本明細書に記載の化合物または組成物で被覆されているステントなどの医療装置を提供する。本発明の医療装置は、たとえば、本明細書に開示したものなどの疾患または症状を治療、予防、または別の方法でその進行に影響を及ぼす任意の用途において用いることができる。
【0162】
本発明の他の実施形態において、本明細書に記載の1種または複数の活性剤を含む医薬組成物は断続的に投与される。治療有効用量の投与は、たとえば持続放出組成物のように、連続様式で達成することができ、またはたとえば1日に1、2、もしくは3回以上の投与のように、所望の1日用量レジメンによって達成することができる。「中断期間」とは、組成物の連続的な持続放出投与または連日投与の中断が意図される。中断期間は、連続的な持続放出投与または連日投与の期間より長くても短くてもよい。中断期間中、関連する組織における組成物成分のレベルは治療中に得られる最大レベルより実質的に低い。中断期間の好ましい長さは有効用量の濃度、および用いられる組成物の形態によって決まる。中断期間は、少なくとも2日、少なくとも4日、または少なくとも1週であってよい。他の実施形態において、中断期間は、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、またはそれより長い期間である。持続放出組成物が用いられるとき、その組成物の体内における残留時間が長いため、中断期間は延長されなければならない。あるいは、持続放出組成物の有効用量の投与頻度をそれに応じて低減できる。本発明の組成物の投与の断続スケジュールは、疾患または障害の所望の治療効果、および最終的な治療が達成されるまで継続できる。
【0163】
組成物の投与は、本明細書に記載の医薬活性剤の投与、または1種もしくは複数のさらなる医薬活性剤と組み合わせた本明細書に記載の1種もしくは複数の医薬活性剤の投与(すなわち、併用投与)を含む。したがって、本明細書に記載の医薬活性剤は固定組み合わせで投与できることが認識される(すなわち、両方の活性剤を含有する単一の医薬組成物)。あるいは、医薬活性剤は同時に投与することができる(すなわち、同時に投与される別の組成物)。他の実施形態において、医薬活性剤は連続して投与される(すなわち、1種または複数の医薬活性剤の投与、それに続く1種または複数の医薬活性剤の別個の投与)。当業者は所望の治療効果を可能にするもっとも好ましい投与方法を認識する。
【0164】
治療有効量の本発明による組成物の送達は、治療有効量の組成物の投与によって獲得することができる。したがって一実施形態において、治療有効量はうつ病の治療に有効な量である。他の実施形態において、治療有効量はナルコレプシーの治療に有効な量である。さらに他の実施形態において、治療有効量はAD/HDの治療に有効な量である。さらなる実施形態において、治療有効量はうつ病の症状の治療に有効な量である。さらに他の実施形態において、治療有効量はナルコレプシーの症状の治療に有効な量である。さらに他の実施形態において、治療有効量はAD/HDの症状の治療に有効な量である。
【0165】
医薬組成物に含まれる活性剤は、重大な毒性作用なしにインビボで治療量の活性成分を患者に送達するのに十分な量で存在する。薬物組成物中の活性剤の濃度は、その薬物の吸収、不活化、および排出速度、ならびに当業者に知られている他の要因によって決まる。投与量は治療される症状の重症度によっても異なることに留意されたい。任意の特定の対象の場合、具体的な投与量レジメンは個体の要求および組成物の投与を実行または監督する人間の専門的判断に応じて調節されるべきであり、本明細書に示した投与量範囲は例示的なものにすぎず、特許請求される組成物の範囲または実施の限定を意図しないことがさらに理解される。活性成分は1度に投与することができ、または様々な時間間隔で投与されるいくつかのより小さい用量に分割することもできる。
【0166】
本発明による治療有効量は、受容者の体重に基づいて決定できる。あるいは、治療有効量は固定用量の点から説明できる。さらに他の実施形態において、本明細書に開示の1種または複数の活性剤の治療有効量は、その活性剤の投与によって達成されるピーク血漿濃度の点から説明できる。当然ながら、治療量は1日を通して投与されるいくつかの分画投与量に分割できることが理解される。医薬的に許容される塩およびプロドラッグの有効投与量範囲は、送達される親ヌクレオシドの重量に基づいて算出できる。塩またはプロドラッグ自体が活性を示す場合、有効投与量は、塩またはプロドラッグの重量を用いて上記のとおり、または当業者に知られている他の手段によって推定できる。
【0167】
本明細書に記載の1種または複数の活性剤を含む本発明の組成物は、治療有効量で哺乳動物、好ましくはヒトに投与されることが企図される。本明細書に記載の任意の症状または疾患を治療する化合物または組成物の有効用量は、通常の技法を用いて、または類似の状況下で得られた結果を観察することによって容易に決定できる。組成物の有効量は、対象の体重、性別、年齢、および病歴に応じて多様であることが予期される。当然ながら、他の要因も送達される組成物の有効量に影響を及ぼすことがあり、これに限定されるものではないが、関与する特定の疾患、その疾患の関与の程度または重症度、個々の患者の応答、投与される特定の化合物、投与様式、投与される調剤のバイオアベイラビリティ特性、選択される用量レジメン、および併用薬剤の使用が含まれる。化合物は、好ましくは治療される症状に伴う望ましくない状態および臨床的徴候を緩和するのに十分な期間投与される。有効性および用量を決定する方法は当業者に知られている。たとえば、ここに引用することで本明細書の一部をなすもとするIsselbacher et al.,(1996)、Harrison’s Principles of Internal Medicine 13版、1814〜1882を参照されたい。
【0168】
いくつかの実施形態において、ドロキシドパの治療有効量は様々な範囲を包含することができ、適切な範囲は治療される症状の重症度およびドロキシドパと組み合わせられる1種または複数の追加化合物の存在に基づいて決定できる。特定の実施形態において、ドロキシドパの治療有効量には、約10mgから約2g、約10mgから約1g、約20mgから約900mg、約30mgから約850mg、約40mgから約800mg、約50mgから約750mg、約60mgから約700mg、約70mgから約650mg、約80mgから約600mg、約90mgから約550mg、約100mgから約500mg、約100mgから約400mg、または約100mgから約300mgが含まれる。
【0169】
本発明に従ってドロキシドパと組み合わせることのできる1種または複数の追加化合物の治療有効量は、投与形態に含まれるドロキシドパの量、および所望のドロキシドパと追加化合物の比率に関連して決定できる。有利には、本発明は組み合わせの製剤化において高い柔軟性を可能にする。たとえば、1種または複数の追加化合物によって提供される保存効果は、ドロキシドパをより少ない量で使用し、依然としてドロキシドパ単独の使用で得られる治療効果と同じかまたはより良好な効果を得ることを可能にする。同様に、その1種または複数の追加化合物に典型的に推奨される投与量より少ない、ある量の1種または複数の追加化合物を用いることによって、ドロキシドパの治療効果を高めることができる。本発明によってドロキシドパと組み合わせた1種または複数の追加化合物は、その化合物単独で用いるために典型的に推奨される量で含まれることができる。
【0170】
一実施形態において、ドロキシドパと1種または複数の追加化合物の比率は、約500:1から約1:10の範囲である。さらなる実施形態において、ドロキシドパと追加化合物の比率は、約250:1から約1:5、約100:1から約1:2、約80:1から約1:1、約50:1から約2:1、または約20:1から約3:1の範囲である。
【0171】
(VI 製品)
本発明はまた、本明細書に記載の1種または複数の活性剤を含む組成物を提供する製品を含む。この製品は、乾燥または液体形態で、任意の担体と共に本発明による使用に適した組成物を含有するバイアルまたは他の容器を含むことができる。具体的には、製品は、本発明による組成物と共に容器を含むキットを含むことができる。そのようなキットにおいて、組成物は様々な組み合わせで送達できる。たとえば、組成物は、活性成分すべてを含む単回投与量を含む。あるいは、複数の活性成分が提供される場合、組成物は複数投与量を含むことができ、それぞれが1種または複数の活性成分を含み、それらの投与量は組み合わせて、連続して、または他の極めて近接した時間に投与されるものである。たとえば、投与量は固体形態(たとえば、錠剤、カプレット、カプセルなど)または液体形態(たとえば、バイアル)であることができ、それぞれ単一活性成分を含むが、組み合わせの投与にはブリスターパック、袋などで提供される
【0172】
製品はさらに、本発明を実施するために、容器上のラベルの形態および/または容器が包装される箱に含まれる挿入物の形態で使用説明書を含む。使用説明書は、バイアルが包装される箱に印刷することもできる。使用説明書は、十分な投与量、および対象または当分野の作業者がその医薬組成物を投与できる投与情報などの情報を含有する。当分野の作業者は、組成物を投与する可能性のある任意の医師、看護師、技術者、配偶者、または他の介護者を包含する。医薬組成物は対象によって自己投与されることもできる。
【0173】
本発明をここに様々な実施例を具体的に言及して説明する。以下の実施例は本発明を限定するものではなく、むしろ代表的な実施形態として示されるものである。
【実施例】
【0174】
[うつ病の治療]
うつ病の治療において、単独または他の薬物と組み合わせたドロキシドパの効果を、抗うつ剤の評価に一般に用いられるうつ病のマウスモデルであるマウス強制水泳試験(FST)を用いて評価した。Porsolt et al.,Arch.Int.Pharmacodyn.(1977)、229:327〜336の方法を用いて、うつ病(すなわち、FSTモデルで評価される「学習性無力感」)を測定した。簡潔に言えば、体重22g(±2g)の雄CD−1マウスを試験前、一晩絶食させた。マウスを各10頭の11群に無作為に分けた。各群のマウスを、表1に略述したビヒクル単独、薬物、または薬物組成物で処置し、それぞれの群に戻した。
【0175】
【表1】

【0176】
表1において、ビヒクル、2%TWEEN(登録商標)80(すなわち、ポリソルベート80)はすべての試験組成物に含まれた。投与1時間後、高さ6cmの水を含有する容量1リットルのガラスビーカー(高さ14.5cm、直径10.5cm)に室温(22から24℃)で6分間、試験マウスを入れた。その後、最後の4分以内の動物の無動持続期間を記録した。マウスがもがくのを止め、頭を水より上に保つのに必要な動きだけで水に浮いたままであるとき、マウスは無動であると判定した。データは群平均の有意差に関してANOVAで分析し、次いで必要に応じてT検定によって統計的に有意な群を識別した。
【0177】
図1および図2に例示したとおり、ビヒクル単独で試験した試験マウスは、過去のコントロール値と比べてわずかに低下した無動パターンを示した(すなわち、過去のコントロール値190±30秒に対して平均無動時間138.3±20.4秒)。コントロール群の通常値より低い値はおそらく平均を外れた2頭の動物によるものであった(図2参照)。デシプラミン、エンタカポン、フルオキセチン、またはベンラファキシン単独での処置もマウスが無動で過ごした時間の長さを有意に低減しなかった(デシプラミン136.4秒、エンタカポン129.9秒、フルオキセチン158.2秒、およびベンラファキシン117.5秒)。さらに、ドロキシドパ+カルビドパ(191.8秒)、ドロキシドパ+カルビドパ+エンタカポン(161.1秒)、またはドロキシドパ+カルビドパ+フルオキセチン(139.3秒)の投与によって、無動で過ごした時間は低減されなかった。アミトリプチリン単独による処置は、マウスが無動で過ごした時間の長さを有意に低減した(60.6秒)。驚いたことに、ドロキシドパ+カルビドパ+アミトリプチリンによる処置は、動物が無動で過ごした時間の長さに有意な低減をもたらした(20.0秒、p<0.005)。さらに、アミトリプチリンにドロキシドパ+カルビドパが追加されることにより、アミトリプチリン単独で見られたものと比べて、マウスのうつ病スコアが有意に低減された(p<0.05)。
【0178】
このモデルにおいてこれらの化合物は活性であることが報告されているが(Dableh et al.,Eur.J.Pharmacol.(2005)、507:99〜105、およびDhir et al.,Pharmacol.(2007)、80:239〜43参照)、表1からわかるように、デシプラミン、フルオキセチン、またはベンラファキシンによる処置はうつ病を軽減できなかった。しかしながらこのモデルの有効性は、10mg/kgのアミトリプチリによって、試験マウスが無動で過ごした時間の有意な低減が誘発されたことによって確認された。さらに、アミトリプチリンによって誘発された無動時間の低減度は、以前に文献で報告されたものと類似している(Lamberti et al.,Br.J.Pharmacol.(1998)、123:1331〜1336)。対照的に、アミトリプチリンにドロキシドパ+カルビドパを追加することによって無動時間の著しい低減がもたらされ、ドロキシドパがアミトリプチリンと相乗的に作用したことを示唆している。理論に拘束されることを望むものではないが、この特定の組み合わせに見られた相乗効果は、三環系抗うつ剤(アミトリプチリンは一例である)のノルアドレナリン作動性系に対する特異的作用、およびドロキシドパの三環系抗うつ剤作用に対する増大効果のために生じる可能性がある。
【0179】
本明細書に記載した本発明の多くの改変および他の実施形態が、前述の説明に示した教示の利益を有するこれらの発明に関係する分野の技術者に想到される。したがって、本発明は開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、改変および他の実施形態が添付の請求の範囲に含まれるように意図されることが理解される。本明細書では特定の用語が用いられているが、それらは一般的かつ記述的な意味でのみ用いられ、限定のためではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気分障害、睡眠障害、および注意欠陥障害からなる群から選択された症状を治療する方法であって、治療有効量のドロキシドパ、または医薬的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグを含む医薬組成物を、その症状の治療を必要としている対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記方法が気分障害を治療することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気分障害がうつ病である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象がうつ病の少なくとも1つの症状を患っており、前記方法が前記症状を排除すること、前記症状の重症度を低減すること、または前記症状の発生頻度を低減すること含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が睡眠障害を治療することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記睡眠障害が過眠の症状である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記過眠の症状がナルコレプシーである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記睡眠障害が不眠である請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が注意欠陥障害を治療することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記注意欠陥障害が、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象がAD/HDの少なくとも1つの症状を患っており、前記方法が前記症状を排除すること、前記症状の重症度を低減すること、または前記症状の発生頻度を低減することを含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が1種または複数の追加活性剤を投与することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記1種または複数の追加活性剤が、ドロキシドパと同じ医薬組成物に製剤化される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記1種または複数の追加活性剤が、ドロキシドパと別の医薬組成物で投与される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記1種または複数の追加活性剤が、DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された化合物を含む請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記1種または複数の追加活性剤が、DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物が、ベンセラジド、カルビドパ、ジフルオロメチルドパ、α−メチルドパ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記1種または複数の追加活性剤が、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物が、エンタカポン、トルカポン、ニテカポン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1種または複数の追加活性剤が、コリンエステラーゼ阻害化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記コリンエステラーゼ阻害化合物が、ピリドスチグミン、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン、ネオスチグミン、メトリホナート、フィゾスチグミン、アンベノニウム、デマルカリウム、チアフィソベニン、フェンセリン、エドロホニウム、シムセリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記1種または複数の追加活性剤が、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記モノアミンオキシダーゼ阻害化合物が、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン、ニアラミド、イプロニアジド、イプロクロジド、トロキサトン、ハルマラ、ブロファロミン、ベンモキシン、5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン、5−メトキシ−α−メチルトリプタミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1種または複数の追加活性剤が、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物が、アトモキセチン、レボキセチン、ビロキサジン、マプロチリン、ブプロピオン、ラダファキシン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記1種または複数の追加活性剤が、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記選択的セロトニン再取り込み阻害化合物が、フルオキセチン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルボキサミン、セルトラリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記1種または複数の追加活性剤が、三環系抗うつ化合物を含む請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記三環系抗うつ化合物が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記三環系抗うつ化合物が、アミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記1種または複数の追加活性剤が、三環系抗うつ化合物、ならびにDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された第3の活性剤を含む請求項15に記載の方法。
【請求項32】
前記第3の活性剤がDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物がカルビドパである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記三環系抗うつ剤がアミトリプチリンであり、前記第3の活性剤がDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物である請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記1種または複数の追加活性剤が、DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、ならびにカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された第3の活性剤を含む請求項15に記載の方法。
【請求項36】
前記第3の活性剤がカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ドロキシドパが、L−トレオ異性体にエナンチオマー的に富んだ混合物の形態で投与される請求項1に記載の方法。
【請求項38】
a)ドロキシドパ、または医薬的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグと、
b)三環系抗うつ化合物と
を含む医薬組成物。
【請求項39】
前記三環系抗うつ化合物が、アミトリプチリン、アモキサピン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ジベンゼピン、ドスレピン、ドキセピン、イミプラミン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミプラミン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記三環系抗うつ化合物が、アミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
c)DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された化合物をさらに含む請求項38に記載の医薬組成物。
【請求項42】
c)前記群の化合物がDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物である請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物が、ベンセラジド、カルビドパ、ジフルオロメチルドパ、α−メチルドパ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
a)ドロキシドパ、または医薬的に許容されるそのエステル、アミド、塩、溶媒和物、もしくはプロドラッグと、
b)アミトリプチリン、ブトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された三環系抗うつ化合物と、
c)ベンセラジド、カルビドパ、ジフルオロメチルドパ、α−メチルドパ、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されたDOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物と
を含む請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項45】
ドロキシドパ、アミトリプチリン、およびカルビドパを含む請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
脳の血流低下に少なくとも部分的に起因する症状を患っている患者を治療する方法であって、脳の血流を増加するために治療上有効量のドロキシドパを患者に投与することを含む方法。
【請求項47】
前記症状が、気分障害、睡眠障害、および注意欠陥障害からなる群から選択される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
DOPAデカルボキシラーゼ阻害化合物、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害化合物、コリンエステラーゼ阻害化合物、モノアミンオキシダーゼ阻害化合物、ノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、選択的セロトニン再取り込み阻害化合物、三環系抗うつ化合物、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害化合物、ノルエピネフリンドパミン再取り込み阻害化合物、ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された1種または複数の追加活性剤を投与することをさらに含む請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−526820(P2010−526820A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507617(P2010−507617)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/062879
【国際公開番号】WO2008/137923
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(507075587)チェルシー・セラピューティクス,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】