説明

気水分離器の水位制御方法

【課題】 ボイラにより生成される蒸気速度により気水分離器の水位を制御し、ボイラで生成された蒸気から水分を分離し、乾き度の高い良質な蒸気を安定して得られるようにするとともに、ボイラの安全運転が図れるようにした気水分離器の水位制御方法を得る。
【解決手段】 ボイラ1に備えた気水分離器2の水位を制御する方法であって、ボイラ1の給水温度、燃焼量、蒸気圧力とにより、前記気水分離器2の比例目標水位を設定しておき、ボイラ1の運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力を検出し、これらの検出された検出値により比例目標水位を特定し、そして、水位検出手段13により前記気水分離器2の現実の水位を検出し、前記特定された比例目標水位と前記現実の水位との差を常時算出し、前記現実の水位が前記特定された比例目標水位を上回っているときはボイラ1への給水を停止し、前記現実の水位が前記特定された比例目標水位を下回っているときは特定された比例目標水位に達するまでボイラ1へ給水するように給水量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラで生成された蒸気から水分を分離し、乾き度の高い良質な蒸気として安定して得られるようにするとともに、ボイラの安全運転が図れるようにした気水分離器の水位制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気を生成するボイラとして、貫流ボイラが多く使用されている。貫流ボイラでは、水管を加熱することにより生成した蒸気が上部管寄せから取り出され負荷側へ送られるが、上部管寄せから取り出された蒸気には缶水が混ざっており、缶水が混ざった蒸気は水分の多い湿った品質の悪い蒸気となる。
【0003】
そのため、一般に、貫流ボイラには上部管寄せから取り出された蒸気から水分を分離する気水分離器が備えられている。この気水分離器内の水位が高すぎると生成された上記に缶水が同伴されやすく、蒸気の乾き度が低下してしまうといった事態が生じる。一方、気水分離器内の水位が低すぎると、気水分離器の能力が十分発揮され、乾いた品質の良い蒸気が得られるが、水管内の水が低いということも想定される。水管内の水が低いと、水管内で発生した泡の位置が低く、水管のヘッダ部位に泡による水膜が形成できないと、水管が鉄で製造されているため水管の上部、更にはヘッダ部位が火炎により過熱され溶けて破損するといった事態が生じる。
【0004】
そのため、生成された蒸気に混ざる缶水の増大を規制し且つ水管のヘッダ部分に水膜ができる程度に、水管内の水位を制御するために、気水分離器内における水位を一定のレベルに制御するといったことが行われている。
【0005】
気水分離器内における水位を一定のレベルに制御する手段として、気水分離器内の水位を検出し、この検出した水位により水管内に缶水を供給する給水ポンプをオン・オフする制御方法が知られている。かかる気水分離器内の水位の制御方法は、気水分離器の水位に、上限水位と下限水位を設定し、上限水位を検出したとき給水ポンプをオフとし、下限水位を検出したとき給水ポンプをオンとし、気水分離器の水位が常に上限水位と下限水位との間に保たれるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−294204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の気水分離器の水位制御は、気水分離器の水位が常に一定の上限水位と下限水位との間に保たれるように制御するものであるが、これでは、必ずしも乾き度の高い良質な蒸気を安定して得られるものとはいえず、また、火炎により水管の上部、更にはヘッダ部位が破損するといった事態を防ぐことができるとはいえない。
【0007】
何故なら、蒸気の速度が速いと気水分離器に溜まっている水が蒸気に同伴され、水分を含んだ、即ち乾き度の低い蒸気となってしまうからである。このため、例えば、気水分離器の水位を蒸気速度が速い状態に合わせると、気水分離器の上限水位を低く設定することになり、この結果、蒸気速度が遅くなったとき、気水分離器の水位が上限水位にあっても火炎により水管の上部、更にはヘッダ部位が破損するといった事態が生じるおそれがある。また、気水分離器の水位を蒸気速度が遅い状態に合わせると、気水分離器の上限水位を高く設定することになり、この結果、蒸気速度が速くなったとき、気水分離器の水位が上限水位にあっても気水分離器に溜まっている水が蒸気に同伴されてしまい、水分を含んだ、即ち乾き度の低い蒸気となってしまうことになる。
【0008】
本発明者等は、上記問題点を解決するために、ボイラにより生成される蒸気速度により気水分離器の水位を制御することに着目し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、ボイラにより生成される蒸気速度により気水分離器の水位を制御し、ボイラで生成された蒸気から水分を分離し、乾き度の高い良質な蒸気を安定して得られるようにするとともに、ボイラの安全運転が図れるようにした気水分離器の水位制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、ボイラに備えた気水分離器の水位を制御する方法であって、ボイラの給水温度、燃焼量、蒸気圧力とにより、前記気水分離器の比例目標水位を設定しておき、ボイラの運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力を検出し、これらの検出された検出値により比例目標水位を特定し、そして、水位検出手段により前記気水分離器の現実の水位を検出し、前記特定された比例目標水位と前記現実の水位との差を常時算出し、前記現実の水位が前記特定された比例目標水位を上回っているときはボイラへの給水を停止し、前記現実の水位が前記特定された比例目標水位を下回っているときは特定された比例目標水位に達するまでボイラへ給水するように給水量を制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記水位検出手段は、水位検出電極部の表面に耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜が形成された水位検出用電極棒を前記気水分離器に付設された気水分離器水位検出用の金属製の容器に取り付け、電源の一方を前記水位検出用電極棒の外部電源接続端子部と接続し、前記電源の他方を前記容器と接続して通電し、前記水位検出電極部の表面に形成した絶縁被膜を誘電体として、前記水位検出電極部と前記容器との間の静電容量を測定し、この静電容量により前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出することを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の、前記容器に、前記水位検出電極部により検出可能な水位の範囲内における前記容器内の特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を適正に補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の気水分離器の水位制御方法によると、気水分離器の水位を常に最適の水位、即ち、前記ボイラの運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じて特定された比例目標水位とすることができることになり、乾き度の高い良質な蒸気を安定して得ることができるとともに、水管の破損を有効に防止しボイラの安全運転を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の気水分離器の水位制御方法によると、前記水位検出用電極棒の前記水位検出電極部の表面に形成した絶縁被膜は、前記容器内の高温、高圧、薬品に耐えることができ、そして、前記水位検出電極部の表面に形成された前記絶縁被膜を誘電体として、水に接触する前記水位検出電極部の部分がコンデンサとなり、前記水位検出電極部と前記容器との間に発生した静電容量を測定して前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出することから、この測定された静電容量の変化によって前記水位の変化をアナログ的に検出することができることになる。
【0015】
これにより、1本の水位検出用電極棒で前記容器内の水位、即ち前記気水分離器の水位が前記ボイラの運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力により特定された比例目標水位に応じた水位なったことを検出できるので、気水分離器のコンパクト化及びコストダウンを図ることができる。
【0016】
請求項3に記載の気水分離器の水位制御方法によると、前記容器に収容された水内に混在した芥等が前記水位検出電極部へ付着したり、或いは前記水位検出電極部におけるその他の故障原因により静電容量に変化が生じ、前記水位検出用電極棒で検出した水位に誤差が生じても、前記容器内における水の正確な水位を検出することができ、これにより、気水分離器の水位の制御をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る気水分離器の水位制御方法を実施するための最良の形態を説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る気水分離器の水位制御方法を実施するボイラシステムの一例を示す概略構成図、図2は、本例で使用される水位検出用電極棒を示す一部断面正面図である。
【0019】
このボイラシステムは、ボイラ1に蒸気を気水分離する気水分離器2が備えられている。ボイラ1は、円周方向へ所定の間隔で立設された複数の水管3と、この複数の水管3の下端に接続され、給水ポンプ4から給水管5を介して水を導入し複数の水管3へ供給する下部管寄せ6と、複数の水管3の上端に接続され、複数の水管3で生成された蒸気を集め蒸気管7から負荷側へ送りだす上部管寄せ8と、複数の水管3により包囲されて形成された燃焼室9とで構成されたボイラ缶体10を有している。
【0020】
そして、蒸気を負荷側へ送り出す蒸気管7は上部管寄せ8に接続され、この蒸気管7には気水分離器2が接続されている。この気水分離器2と下部管寄せ6とが連結管11で接続され、気水分離器2で蒸気から分離した水分が連結管11を介して下部管寄せ6に戻されるようになっている。
【0021】
気水分離器2は、水管3に供給する給水量を制御して気水分離器2内の水位を制御する水位制御手段12と、気水分離器2内の水位を検出する水位検出手段13を備えている。
【0022】
水位制御手段12は、ボイラ1の水管3へ供給する給水温度、燃焼量、蒸気圧力とを基に気水分離器2の比例目標水位を設定しておき、設定されている比例目標水位から現実の給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じて比例目標水位を特定する比例目標水位特定部14と、給水温度を検出し比例目標水位特定部14へ送信する給水温度検出部15と、ボイラ1の燃焼量を検出し比例目標水位特定部14へ送信する燃焼量検出部16と、ボイラ1で生成される蒸気圧力を検出し比例目標水位特定部14へ送信する蒸気圧力検出部17と、給水温度検出部15と燃焼量検出部16と蒸気圧力検出部17とで検出したボイラの運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力の検出値により比例目標水位特定部14で特定された比例目標水位と水位検出手段13で検出した気水分離器2の現実の水位との差を常時算出し、現実の水位が特定された比例目標水位を上回っているときはボイラ1の水管3へ給水を停止し、現実の水位が特定された比例目標水位を下回っているときは特定された比例目標水位に達するまで給水するように給水量を制御する給水量制御部18とで構成されている。
【0023】
燃焼量検出部16による燃焼量の検出にあっては、燃焼量を燃焼装置へ供給する燃料量に置き換えることが可能であり、燃料量をもって燃焼量として検出するようにしてもよい。
【0024】
気水分離器2の比例目標水位とは、ボイラ1の水管3に供給する給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じた気水分離器2の最適の水位であり、給水温度、燃焼量、蒸気圧力とを総合して算出した数値により設定した水位である。気水分離器2の最適の水位とは、気水分離器2に溜まっている水が負荷側に流れる蒸気に同伴されず、かつ、水管3のヘッダ部位に泡による水膜が形成できる程度の水位をいう。
【0025】
蒸気の速度が速いと気水分離器に溜まっている水が蒸気に同伴され、水分を含んだ乾き度の低い蒸気となってしまう。また、蒸気の速度が遅いと水管3のヘッダ部位に泡による水膜が形成できていない場合があり、火炎により水管の上部、更にはヘッダ部位が破損するといった事態が生じるおそれがある。このため、蒸気速度が速いときは気水分離器2の水位を下げ、蒸気速度が遅いときは気水分離器の水位を上げればよい。
【0026】
本例で気水分離器2の比例目標水位を給水温度、燃焼量、蒸気圧力により設定したのは、給水温度、燃焼量、蒸気圧力により蒸気速度が決まるからである。即ち、給水温度、燃焼量、蒸気圧力と蒸気速度とは、給水温度が高いと蒸気速度が速くなり、燃焼量が大きいと蒸気速度が速くなり、蒸気圧力が高いと蒸気速度が速くなる、といった関係にあることによる。
【0027】
比例目標水位特定部14は、給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じた気水分離器2の最適な水位として設定された比例目標水位を記憶する記憶部と、現実の給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じて比例目標水位を特定するプログラムとを備え、特定した比例目標水位を給水量制御部18へ送信するようになっている。
【0028】
給水量制御部18は、比例目標水位特定部14から送信されてきた特定された比例目標水位と水位検出手段13で検出した気水分離器2の現実の水位との差を常時算出し、現実の水位が特定された比例目標水位を上回っているときはボイラ1の水管3へ給水を停止し、現実の水位が特定された比例目標水位を下回っているときは特定された比例目標水位に達するまで給水するように給水ポンプ4へ指令信号を発し、ボイラ1の水管3への給水量を制御するようにしたプログラムを備えている。
【0029】
気水分離器2内の現実の水位を検出する水位検出手段13は、気水分離器2に付設された金属製の容器19に取り付けられる水位検出用電極棒20の水位検出電極部21と容器19との間を通電することにより気水分離器2内の水位を検出するようになっている。
【0030】
本例の水位検出手段13は、気水分離器2に付設された金属製の容器19に取り付けられる、水位検出電極部21の表面に誘電体となる絶縁被膜22が形成された水位検出用電極棒20と、水位検出電極部21と容器19との間を通電することにより水位検出電極部21と容器19との間に発生する静電容量を測定し、測定した静電容量を水位に変換して容器19内の水位を検出し、水位制御手段12の給水量制御部18へ送信する水位検出部23と、容器19に取り付けられ、水位検出電極部21により検出可能な水位の範囲内における容器19内の特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒24と、補正用水位検出用電極棒24と容器19との間を通電することにより容器19内の水の水位が特定の水位に達したことを検出する補正用水位検出部25と、水位検出部23で検出した水位と補正用水位検出部25で検出した水位との差を基に、水位検出部23で変換する静電容量と水位の変換関係を適正に補正する変換関係適正補正部26とを備えている。
【0031】
気水分離器2に付設されている容器19は、上部連通管27を介して気水分離器2と連通し、下部連通管28を介して連結管11と連通している。容器19に取り付けられている水位検出用電極棒20は、容器19内の水位を検出するものであり、一端側に外部電源接続端子部29を、他端側には水位検出電極部21を備えている。また水位検出用電極棒20は、筒状の絶縁体30で保持され、この絶縁体30を介して、外部電源接続端子部29が容器19の外側へ突出し、そして水位検出電極部21が容器19の内側へ突出するように容器19に取り付けられている。
【0032】
水位検出用電極棒20における水位検出電極部21にあってはステンレスで形成され、その表面に形成された誘電体となる絶縁被膜22は、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックにより形成されている。
【0033】
エンジニアリングプラスチックとしては、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアリルエーテルケトン等のケトン系合成樹脂材料が使用されるが、特に、耐熱性の高いポリエーテルエーテルケトンが好ましい。
【0034】
前記のように、その表面に、耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜22が形成されている水位検出電極部21は、その長さが、少なくとも比例目標水位特定部14に記憶されている設定された比例目標水位の測定が可能な長さに設定されている。
【0035】
補正用水位検出用電極棒24は、一端側に外部電源接続端子部31を、他端側には補正用水位検出電極部32を備えており、筒状の絶縁体33で保持され、この絶縁体33を介して、外部電源接続端子部31が容器19の外側へ突出し、そして補正用水位検出電極部32が容器19の内側へ突出するように容器19へ取り付けられている。
【0036】
水位検出手段13の水位検出部23にあっては、水位検出用電極棒20の外部電源接続端子部29に電源34の一方を接続し、電源34の他方を容器19と接続した電源回路に、通電により水位検出電極部21の表面に形成された絶縁被膜22を誘電体として水位検出電極部21と容器19との間の静電容量を測定する測定回路部35と、予め設定した静電容量と容器19内の水位の変換関係が記憶されるとともに、この変換関係に基づき測定回路部35で測定した静電容量を容器19内の水位に変換するプログラムとを備えた水位検出回路部36とを接続した構成となっている。
【0037】
また、水位検出回路部36は、前記変換した水位を変換関係適正補正部26へ送信するとともに、変換関係適正補正部26で補正された変換関係に基づいて変換された容器19内の水位を水位制御手段12の給水量制御部18へ送信する構成となっている。電源34にあっては、本例では交流電源が使用されている。
【0038】
補正用水位検出部25にあっては、補正用水位検出用電極棒24の外部電源接続端子部31に電源37の一方を接続し、電源37の他方を容器19と接続した電源回路に、通電により補正用水位検出電極部32の下端に水が接触することによる外部電源接続端子部31と容器19との間の導通状態の変化により、容器19内の水が補正用水位検出電極部32の下端に達したことを検出して変換関係適正補正部26へ送信する補正用水位検出回路部38を接続した構成となっている。電源37にあっては、本例では交流電源が使用されている。
【0039】
変換関係適正補正部26にあっては、容器19内の水が補正用水位検出用電極棒24の補正用水位検出電極部32の下端に水が接触して容器19内の水位を検出したことを補正用水位検出回路部38から送信されてきたとき、この補正用水位検出回路部38で検出された容器19内の水位と、このとき水位検出回路部36から送信されてきた水位との差を求め、該差を基に水位検出回路部36に記憶されている静電容量と容器19内の水位の変換関係を適正に補正するプログラムを備え、適正に補正した静電容量と容器19内の水位の変換関係を水位検出回路部36に送信し、水位検出回路部36で検出される水位を適正に補正させる変換関係適正補正回路部39とで構成されている。
【0040】
上記のように構成されたボイラシステムにより、本発明に係る気水分離器の水位制御方法は以下のように実施される。
【0041】
ボイラ1の運転時、加熱された水管3内の缶水が蒸発し、生成された蒸気は上部管寄せ8から取り出され、蒸気管7に接続されている気水分離器2で蒸気内の水分が分離され、分離された水分は気水分離器2内に溜まりながら順次連結管11を介して下部管寄せ6に戻される。
【0042】
本発明では、ボイラ1の運転中常に水位制御手段12を構成する給水温度検出部15でボイラ1の水管3へ供給する給水温度を検出し、燃焼量検出部16で燃焼室9の燃焼量を検出し、蒸気圧力検出部17でボイラ1で生成される蒸気圧力を検出し、これらの検出値を比例目標水位特定部14へ送信する。
【0043】
比例目標水位特定部14は、給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じた気水分離器2の最適の水位として設定され記憶されている比例目標水位から、送信されてきた給水温度、燃焼量、蒸気圧力の検出値を基にした比例目標水位を特定し、この特定した比例目標水位を給水量制御部18に送信する。
【0044】
また、気水分離器2内に溜まった水の水位を、水位検出手段13を構成する容器19に取り付けられる水位検出用電極棒20の水位検出電極部21と容器19との間を通電することにより検出し、この水位を気水分離器2内の現実の水位として給水量制御部18に送信する。
【0045】
そして、給水量制御部18で、比例目標水位特定部14から送信されてきた特定した比例目標水位と水位検出手段13から送信されてきた気水分離器2内の現実の水位との差を常時算出し、現実の水位が特定された比例目標水位を上回っているときは給水ポンプ4を止めて水管3への給水を停止させ、現実の水位が特定された比例目標水位を下回っているときは給水ポンプ4を駆動させて特定された比例目標水位に達するまで水管3へ給水させる。
【0046】
このようにすることにより、気水分離器2内の水位を常に最適の水位、即ち、前記ボイラ1の運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じて特定された比例目標水位とすることができ、乾き度の高い良質な蒸気を安定して得ることができるとともに、水管3の破損を有効に防止しボイラ1の安全運転が図れる。
【0047】
また、本例の水位検出手段13による気水分離器2内の水位の検出は、以下のようにして行われる。
【0048】
水位検出用電極棒20の外部電源接続端子部29と容器19との間を通電すると、水位検出電極部21と水が接触しているとき、水位検出電極部21の表面に形成された絶縁被膜22が誘電体となり、容器19内で水と接触する水位検出電極部21の接触部分がコンデンサとなる。そして、水位検出用電極棒20の外部電源接続端子部29と容器19との間を通電することにより、水位検出電極部21と容器19との間の静電容量が測定回路部35で測定され、この測定された静電容量が水位検出回路部36で水位に変換されて検出され、静電容量の変化による水位の変化がアナログ的に検出される。そして、水位検出回路部36で検出された水位は変換関係適正補正回路部39へ送信される。
【0049】
また、水位検出用電極棒20の外部電源接続端子部29と容器19との間を通電するとともに、補正用水位検出用電極棒24の外部電源接続端子部31と容器19との間を通電すると、容器19内の水が補正用水位検出電極部32の下端に達したとき、補正用水位検出回路部38により、容器19内の水位が検出され変換関係適正補正回路部39へ送信される。
【0050】
そして、補正用水位検出回路部38から変換関係適正補正回路部39へ容器19内の水位を検出したことが送信されてくると、変換関係適正補正回路部39により、補正用水位検出回路部で検出された容器19内の水位と、このとき水位検出回路部36から送信されてきた水位とに差が生じたとき、この差を基に水位検出回路部36に記憶されている静電容量と容器19内の水位の変換関係が適正に補正されて水位検出回路部36に送信され、水位検出回路部36は、適正に補正された静電容量と容器19内の水位の変換関係に基づき容器19内の水位を検出し、この水位を水位制御手段12の給水量制御部18に送信する。
【0051】
従って、容器19内の水位、即ち気水分離器2内の水位がより正確に検出され、この正確な水位が給水量制御部18に送信されることになり、気水分離器2内の水位を、ボイラ1の運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力に応じて特定された比例目標水位に、より確実に制御することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る気水分離器の水位制御方法を実施するボイラシステムの一例を示す概略構成図。
【図2】本例で使用される水位検出用電極棒を示す一部断面正面図。
【符号の説明】
【0053】
1 ボイラ
2 気水分離器
3 水管
4 給水ポンプ
5 給水管
6 下部管寄せ
7 蒸気管
8 上部管寄せ
9 燃焼室
10 ボイラ缶体
11 連結管
12 水位制御手段
13 水位検出手段
14 比例目標水位特定部
15 給水温度検出部
16 燃焼量検出部
17 蒸気圧力検出部
18 給水量制御部
19 容器
20 水位検出用電極棒
21 水位検出電極部
22 絶縁被膜
23 水位検出部
24 補正用水位検出用電極棒
25 補正用水位検出部
26 変換関係適正補正部
27 上部連通管
28 下部連通管
29 外部電源接続端子部
30 絶縁体
31 外部電源接続端子部
32 補正用水位検出電極部
33 絶縁体
34 電源
35 測定回路部
36 水位検出回路部
37 電源
38 補正用水位検出回路部
39 変換関係適正補正回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラに備えた気水分離器の水位を制御する方法であって、ボイラの給水温度、燃焼量、蒸気圧力とにより、前記気水分離器の比例目標水位を設定しておき、ボイラの運転時における給水温度、燃焼量、蒸気圧力を検出し、これらの検出された検出値により比例目標水位を特定し、そして、水位検出手段により前記気水分離器の現実の水位を検出し、前記特定された比例目標水位と前記現実の水位との差を常時算出し、前記現実の水位が前記特定された比例目標水位を上回っているときはボイラへの給水を停止し、前記現実の水位が前記特定された比例目標水位を下回っているときは特定された比例目標水位に達するまでボイラへ給水するように給水量を制御することを特徴とする気水分離器の水位制御方法。
【請求項2】
前記水位検出手段は、水位検出電極部の表面に耐熱性、耐高圧性、耐薬品性の高いエンジニアリングプラスチックによる絶縁被膜が形成された水位検出用電極棒を前記気水分離器に付設された気水分離器水位検出用の金属製の容器に取り付け、電源の一方を前記水位検出用電極棒の外部電源接続端子部と接続し、前記電源の他方を前記容器と接続して通電し、前記水位検出電極部の表面に形成した絶縁被膜を誘電体として、前記水位検出電極部と前記容器との間の静電容量を測定し、この静電容量により前記容器内における前記水位検出電極部と接触する水の水位を検出することを特徴とする請求項1に記載の気水分離器の水位制御方法。
【請求項3】
前記容器に、前記水位検出電極部により検出可能な水位の範囲内における前記容器内の特定の水位を検出する補正用水位検出用電極棒を併設し、この補正用水位検出用電極棒が検出した特定の水位と、前記静電容量を測定して検出した水位との差を求め、この差を基に、前記静電容量を測定して検出する水位を適正に補正することを特徴とする請求項2に記載の気水分離器の水位制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−89207(P2008−89207A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267841(P2006−267841)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】