説明

気泡の検出方法及び気泡検出装置

【課題】液体もしくは液体と固体の混合物中の気泡の有無もしくは気泡の発生を検出し、液体反応において、沸騰状態を検出、抑制する方法を提供する。
【解決手段】液体もしくは液体と固体の混合物4に電磁波を照射し、照射した電磁波の変化から、液体もしくは液体と固体の混合物4内に存在する気泡の有無を検出する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体もしくは液体と固体の混合物における気泡の有無もしくは気泡の発生を検出することにより、化学反応を行う化学反応炉および装置において、沸騰を監視、抑制し、運転中の安全性を高め、反応生成物である製品の品質を向上させる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を加熱することで化学反応を行う場合、反応液体が沸点より上昇し沸騰が発生することがある。沸騰は反応装置の爆発を引き起こす可能性があるだけでなく、製品となる反応生成物の品質も劣化させる。このため、溶液の精密な温度制御を行う必要が生じ、複数の温度センサーを用いたり、防爆構造にしたりしなければならなくなるなどの問題点があった。
また化学反応場に電磁波を照射することで、反応物質を加熱するマイクロ波化学反応装置が提案されている(特許文献1)が、急速な加熱ができるため沸騰状態が発生しやすいという課題があった。また、最近ではより工業生産に適した連続生産が可能なフロー式マイクロ波反応装置も開示されている(特許文献2)。連続生産においては、運転中に沸騰状態にならないよう精密な温度制御が必要なほか、製品である反応生成物の品質維持のためには、沸騰時に合成された反応生成物を分離除去するなどの工夫が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−514287号公報
【特許文献2】特許第4022635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は液体もしくは液体と固体の混合物中の気泡の有無もしくは気泡の発生を検出し、液体反応において、沸騰状態を検出、抑制する方法とこれを用いた検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は以下の手段により解決された。
(1)液体もしくは液体と固体の混合物に電磁波を照射し、照射した電磁波の変化から、液体もしくは液体と固体の混合物内に存在する気泡の有無を検出する方法。
(2)液体もしくは液体と固体の混合物に電磁波を照射し、照射した電磁波の変化から、液体もしくは液体と固体の混合物内に気泡が発生したことを検出する方法。
(3)前記電磁波の変化が、電磁波の吸収量の変化、電磁波の反射量の変化、電磁波の位相の変化、もしくはこれらの変化を組み合わせた情報である(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記電磁波の変化が、幅をもった周波数範囲(スペクトル)における個々の周波数成分の、電磁波吸収量の変化、反射量の変化、位相の変化、もしくはこれらの変化を組み合わせた情報である(1)または(2)に記載の方法。
(5)液体もしくは液体と固体の混合物が共振空洞内にあった場合、前記電磁波の変化が、共振周波数の変化である(1)または(2)に記載の方法。
(6)電磁波を照射して液体もしくは液体と固体の混合物を加熱する加熱炉もしくは加熱装置、または化学反応を行う化学反応炉もしくは化学反応装置において、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の方法により、前記液体もしくは液体と固体の混合物内に存在する気泡の有無もしくは気泡の発生を検出する方法。
(7)(6)に記載の方法により検出した結果をもとに反応場の沸騰現象を検出する方法。
(8)(6)に記載の方法により検出した結果をもとに、加熱炉もしくは加熱装置、または化学反応炉もしくは反応装置によって製造される化学物質の品質を安定に維持する方法。
(9)液体もしくは液体と固体の混合物に電磁波を照射する手段と、前記電磁波の変化を検出できる手段を有し、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の方法に用いることのできる気泡検出装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複雑な構成の装置を用いることなく液体反応場での気泡の有無や気泡の発生を的確に検出し、この結果に基づき反応場の沸騰を検出、制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の検出装置の好ましい実施形態の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の検出装置の好ましい実施形態の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】本発明の検出装置の好ましい実施形態の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明の検出装置の好ましい実施形態の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の検出装置の好ましい実施形態の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の検出装置の好ましい実施形態の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の検出装置の好ましい実施形態の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図8】本発明の検出装置の好ましい実施形態の他の一例を模式的に示す説明図である。
【図9】実施例4の条件で加熱したときの設定温度と実際の溶液温度およびマイコンが沸騰検出した信号を示すグラフである。
【図10】実施例2でチューブで気泡を入れたとき電磁波照射空間内を通過する間の反射波強度およびループアンテナで検出される信号強度の時間変化を示すグラフである。
【図11】実施例3で加熱沸騰させたときの(a)沸騰前と(b)沸騰時の電磁波照射空間内を通過する間の反射波強度およびループアンテナで検出される信号強度の時間変化を示すグラフである。
【図12】実施例5でチューブにイオン交換水を流通させマイクロ波加熱したときの溶液温度とマイコンが検出した気泡検出信号、流路切換信号を示すグラフであり、沸騰検出による流路の自動切換の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において用いる電磁波とは周波数で空間の電界と磁界が変化することで伝播する波動をいい、好ましくは300MHzから30GHzの周波数をもつ波動である。
物質に電磁波を照射すると、物質のもつ誘電率や透磁率により、異なった量で電磁波が吸収される。この誘電率や透磁率は物質の温度や密度、状態(固体、液体、気体など)によって異なる。特に物質の誘電率は気体と固体では大きく異なるため、電磁波の吸収量や反射量、位相を調べることで、物質中の気泡の有無を間接的に推測することが可能となる。電磁波は非接触で物質に照射することができるため、反応装置の形状が複雑になることもない。また、最近では、電磁波による加熱により反応をおこなうマイクロ波化学反応装置もあり、加熱に利用する電磁波をモニタリングすることで、反応装置内の物質の状態を検出することが可能となる。
【0009】
物質に電磁波を照射すると式1に示す吸収がおこる。
P=1/2×σE+2πεε’’+2πμμ’’ 式1
ここで、Pは物質が吸収する単位体積当たりのエネルギー損失[W/m]、Eは電界強度[V/m]、Hは磁場強度[A/m]、σは電気伝導度[S/m]、fは周波数[s−1]、εは真空の誘電率[F/m]、ε’’は物質の誘電損失率、μは真空の透磁率[H/m]、μ’’は物質の磁気損失率である。この中で、電気伝導度σ、誘電損失率ε’’、磁気損失率μ’’は、物質固有の値であり、例えば水では誘電損失率ε’’が10程度に対して、空気では0と大きく異なっている。このため、反応場中に電磁波を照射したとき、その電磁波の吸収量を測定することができれば、反応場中の気泡の有無を推測することが可能となる。
【0010】
また、電磁波は物質を通過する際、その誘電率ε’および透磁率μに応じて式2に示すように伝搬速度が異なる。
c=c/(√εμ)[m/s] 式2
ここでcは真空中の光速[m/s]であり、εは物質の誘電率、μは透磁率である。一般的な物質はεμとも1以上であることから、伝搬速度cは真空中の光速cより遅くなる。たとえば水では誘電率が80と大きいが、空気では1と大きく異なるため、液体を透過した電磁波と空気を透過した電磁波では位相が異なるため、位相差を検出することで液体中の気泡の有無を推測することができる。
【0011】
化学反応場に電磁波を照射し反応物を加熱することで化学反応を促進する技術があるが(特許文献1)、これらの装置に対し、電磁波の吸収量や反射量、位相を検出することにより、気泡の発生が検出できる。加熱手段と検出手段を兼ねることで、装置構成が複雑になるのを抑えることができる。あらかじめ電磁波の吸収量などを通常時と沸騰時(気泡発生時)とで測定しておき、検量線を作っておいて、気泡の有無を判断したり、気泡発生を検知したりする。
【0012】
本発明の好ましい実施形態を以下に説明する。
図1に本発明の検出装置の好ましい実施形態の一例を示す。これは、加熱用の電磁波を発生するマイクロ波源1と、電磁波を伝達する導波管2、化学反応場となる電磁波照射空間3および反応物4からなる。また電磁波照射空間3には、内部の電界強度もしくは磁界強度を計測するためのセンサー5がある。マイクロ波源1が出力する電磁波強度とセンサー5の信号強度を比較することで、反応物4の電磁波吸収量を求めることができる。あらかじめ、反応物4の通常時と気泡発生時との電磁波吸収量を測定しておけば、センサー5の信号から反応物4における気泡発生を検知することが可能となる。
【0013】
図2は本発明の検出装置の別の好ましい実施形態を示す。マイクロ波源1から発生した電磁波は入射波としてサーキュレータ6を介して、電磁波照射空間3に伝達される。反応物4で吸収されなかったエネルギーの一部は反射波として再び導波管2に戻ってくる。サーキュレータ6により入射波と分離させ反射波のみがダミーロード7に伝達される。ダミーロード内に取り付けた反射波モニタ8により、反応物4からの反射波を測定することが出来る。この反射波モニター8の信号および/もしくはセンサー5の信号および/もしくはマイクロ波源が出力する電磁波強度の信号から反応物4の電磁波吸収量を求めることができる。
なお、図2のサーキュレータ6やダミーロード7、反射波モニター8の代わりに、導波管2に方向性結合器を取付け、入射波と反射波をモニターすることで同様の計測が可能になる。また、導波管2のかわりに同軸線路を用いることも可能である。
【0014】
マイクロ波反応炉もしくは反応装置ではシングルモードとよばれる電磁波照射方法がある(和田雄二、竹内和彦監修、マイクロ波化学プロセス技術、シーエムシー出版、p80〜91、2006年3月刊)。図3はTE10モードとよばれるシングルモードマイクロ波照射技術に本発明を適用した一例である。マイクロ波源1から照射したマイクロ波は導波管2からアイリスとよばれる開口部10を介して、マイクロ波照射空間3に照射される。マイクロ波はプランジャー9により反射されるがその際に入射波と反射波が重なり、11に示すような電界強度を有するTE10の定在波が形成される。このとき、反応物4の誘電率εに応じてプランジャー9の位置を調整する必要がある。このプランジャー9の位置をモニターすることで、反応物4の状態を検出することができる。プランジャー9の位置の他に電界もしくは磁界センサー4もしくは反射波モニター8もしくはそれらの組合せにより、反応物4の中にある気泡の有無を検出することも可能である。また、本発明はTE10モードに限定されるものではない。
【0015】
流通型のマイクロ波反応炉もしくは反応装置の加熱のために、TMmn0(mは0以上、nは1以上の整数)による電磁波照射方法が知られている。図4は、図2の電磁波照射空間3に代えて、このTM010とよばれるシングルモードマイクロ波照射に組み合わせたものである。周波数を調整できる信号発生源13から発生した電磁波を、増幅器12で増幅し円筒型の電磁波照射空間14に照射する。この円筒管の中心軸には、反応物が流通できるよう反応管15が配置されている。このとき信号発生源13で発生させる電磁波の周波数を適切調整すると、電磁波照射空間14内に定在波を形成することが出来る。たとえば、電界強度分布11に示すよう中心が最も強い電界強度になり、円筒軸の長手方向に電界強度が均一になるTM010の定在波を形成すれば、反応管15内の反応物を均一に加熱することが出来る。このときの信号発生源13の周波数は、反応物の誘電率によって決まるため、周波数をモニタすることで、反応物中の気泡の有無を検出することができる。本実施形態はTMmn0(mは0以上、nは1以上の整数)の定在波に限定されるものではなく、また円筒型のマイクロ波照射空間に限定されるものではない。信号発生源13と増幅器12を用いる構成に限定されるものではなく、周波数を調整できる電磁波発生源でも実現可能である。
【0016】
本発明の検出装置の別の好ましい実施形態として、電磁波の位相を計ることで反応物の状態を検出する場合の構成例を図5に示す。ネットワークアナライザー114の出力を増幅器を介して電磁波照射空間3に入射する。反応物4を透過した電磁波は減衰器115を介して再びネットワークアナライザーに入力をする。ネットワークアナライザーは二つの電磁波の強度比、位相差をリアルタイムで計測することができる。これらの情報から反応物4中の気泡の有無を検出することができる。
【0017】
本発明の検出装置のさらに別の実施形態として、加熱源として電磁波照射を用いない場合の、本発明を実現する構成の一例を図6に示す。加熱源が必要な場合は熱源17を用いても良い。熱源としては電気炉、オイルバス、赤外線照射などを挙げることが出来る。本発明はここに挙げた加熱手法に限定されるものではない。ネットワークアナライザー114から出力される電磁波を電磁波照射空間3にアンテナ18を介して入射する。また、アンテナ19で受信される電磁波を再びネットワークアナライザーへ入力することで、反応物3内を透過する電磁波を解析し反応物内の気泡の有無を検出することができる。加熱源として電磁波を用いない場合であっても、図1〜図5に示した装置と類似の形態をとることはできるため、本発明はこれらの構成例に限定されるものではない。
【0018】
本発明の検出装置のさらに別の実施形態を図7に示す。
本発明による沸騰検出方法を用い、溶液の沸騰を抑制し爆発事故の危険性を抑えることが可能となる。図7に示すように、反射波信号27もしくは電磁界センサ信号26をもとに沸騰検出回路25により沸騰を検知する。沸騰検出回路からの検出信号28をもとに、沸騰を検出したらマイクロ波発生器1のマイクロ波出力を直ちに下げることで定常的な沸騰状態を回避することが可能なる。
【0019】
本発明の検出装置のさらに別の実施形態を図8に示す。
図8は本発明による沸騰検出方法を用い、沸騰を検出した場合の反応管流路を切りかえ、製品である反応生成物を良品と不良品に分離回収するものである。沸騰検出回路25からの沸騰検出信号28により電磁弁29を駆動させ流路を切り替えることができる。沸騰を検出していないときは、良品用容器30に、沸騰を検出したときは不良品用の保管容器31に分別することで、製品の品質を向上させることができる。
【実施例】
【0020】
次に実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【0021】
実施例1
図4の検出装置を利用し、反射波の強度から反応物中の気泡の有無を検出した結果を示す。反応管15として、内径1mmのテフロン(登録商標)製チューブを用い、テフロンチューブ内にイオン交換水を満たしたものと、チューブ内に、気泡として直径1mmの空気を1箇所に添加したもの2種類を用意した。イオン交換水を満たしたテフロンチューブを内径90mmの電磁波照射空間の中心軸上に挿入したときの共振周波数を調べたところ2.5208GHzであった。そこで、照射するマイクロ波の周波数を2.5208GHzに固定し10Wのマイクロ波を照射したときの反射波強度を反射波モニター8により測定した。また、センサ5に電磁波照射空間の磁界強度を測定するため磁界検出用のループアンテナから得られた信号電圧も測定した。気泡がない場合は反射波がほとんどなく、ループアンテナ信号が大きな値を示していることがわかるが、気泡がある場合には反射波強度が高くなり、ループアンテナ信号が小さくなっている。この差を利用することで、反応管内の気泡の有無を検出できることがわかった。表1は共振周波数の値を示す。気泡なしの場合では共振周波数は2.5208GHzだったのに対し、気泡がある場合は2.5212GHzと+0.4MHzシフトしている。本分析に用いた、マイクロ波照射装置は共振周波数を自動検出することも出来るため、共振周波数をモニターすることで気泡の有無を検知することが可能である。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2
次に、チューブ内を移動する気泡を検知できるか調べるため、内径1mmのテフロン管に送液ポンプを接続し送液速度60ml/hrでイオン交換水を流通させた。このとき、直径0.9×10−3mlの気泡を挿入したとき、気泡が長さ10cmの電磁波照射空間内を通過する間の反射波強度およびループアンテナで検出される信号強度の時間変化を図10に示す。このとき照射するマイクロ波の周波数はこのときの共振周波数2.48GHz、マイクロ波電力は10Wに固定した。気泡がない場合は、反射波電力が小さく、ループアンテナ信号は大きいが、気泡が電磁波照射空間に入ってきたところで反射波の急激な上昇と、ループアンテナ信号の減少が見られる。また、電磁波照射空間を通過している間は、反射波は大きくループアンテナ信号は小さい状態で推移し、再び気泡が電磁波照射空間から出ていところで大きな変化があり、完全に気泡が出ていったところで、初期と同じ値を示していることがわかる。このように、気泡が移動している場合も、反射波およびループアンテナ信号により気泡の有無を検出できることがわかる。
【0024】
実施例3
次にマイクロ波により加熱し、沸点を超えたときに発生する気泡が確認できるかを調べた。上記と同様な装置を用いた。溶液の温度は、電磁波照射空間の外側から放射温度計を用いて、反応管中心部分の外壁温度を計測した。テフロン管にイオン交換水を流通させたところ、マイクロ波電力20Wを照射したところから沸騰による気泡の発生が目視により確認された。このときの、反射波電力およびループアンテナ信号の時間変化を図11に示す。沸騰が起こっていない場合は、反射波電力およびループアンテナ信号は一定の値を示しているが、沸騰による気泡が発生した場合、反射波電力が大きくなりループアンテナ信号が小さくなる様子が確認できる。この信号をモニタリングすることで沸騰が発生したかを検出できることがわかる。
【0025】
実施例4
次に沸騰による気泡発生を自動的に検出できるよう、反射波電力をADコンバータによりマイコンに取り込み、マイコンにより反射波電力の変化を解析し気泡の発生を検知するプログラムを作成した。テフロン管にエチレングリコール(沸点195℃)を50ml/hrで流通させの溶液の温度を0℃から200℃に5分毎に上下させるように温度設定を行った。この条件で加熱したときの設定温度と実際の溶液温度およびマイコンが沸騰検出した信号を図9に示す。設定温度が170℃以下では設定温度と同じように溶液温度が制御できていることがわかる。また、このときは、沸騰検知されていないことがわかる。設定温度170℃以上になると、沸騰検出信号が1回/秒以上を示している。このときチューブ内は沸騰による気泡が連続的に発生しており、本方法で溶液の沸騰の検出が可能であることがわかる。
【0026】
実施例5
次に図8に示す装置における実施例を示す。上記のマイコンによる沸騰検出信号にもとづき電磁弁29を動作するようにした。テフロン管にイオン交換水を60ml/hrで流通させ溶液の温度を60℃から80℃まで120秒おきに5℃きざみに上昇させ、その後5℃きざみで下降させるよう温度制御をおこなった。なお、温度計測は、マイクロ波照射空間の出口から2cmの位置に熱電対を挿入して計測しており、マイクロ波照射空間内部の溶液温度より20℃低い値を示す。この条件で加熱したときの設定温度と実際の溶液温度およびマイコンによる沸騰検出回路25が沸騰検出した信号およびバルブの位置を指令する流路切換信号28を図12に示す。流路は通常は良品用容器30(図12ではOK位置)に溶液を流通させるようになっており、沸騰検出回路25が気泡を検出した瞬間から、30秒間の間は不良品容器31(図12ではNG位置)に溶液を分別できるように制御している。制御温度が70℃以下では、気泡を検出しておらず、溶液は良品容器30に回収されるが、設定温度を75℃に変化させたとき、沸騰による気泡を検出している。検出後30秒間は、流路が不良品回収容器31に切り替わり溶液が選別されていることがわかる。その後、設定温度が80℃の場合は、連続的な沸騰が発生を検出し、溶液は不良品回収容器31に分別できている。このような機構を実際の化学合成プロセスに組み込むことで安定した品質の合成製品を良品容器30に選別回収することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 マイクロ波源
2 導波管もしくは同軸管もしくは同軸線路
3 電磁波照射空間
4 反応物
5 電界強度センサーもしくは磁界強度センサー
6 サーキュレータ
7 ダミーロード
8 反射波モニター
9 プランジャー
10 アイリス
11 電磁波照射空間内の電界強度分布
12 増幅器
13 信号発生器
14 円筒型電磁波照射空間
15 反応管
17 加熱源
18 電磁波照射アンテナ
19 電磁波受信アンテナ
25 沸騰検出回路
26 電磁界センサ信号
27 反射波信号
28 沸騰検出回路からの検出信号
29 電磁弁
30 良品用容器
31 不良品用容器
114 ネットワークアナライザー
115 減衰器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体もしくは液体と固体の混合物に電磁波を照射し、照射した電磁波の変化から、液体もしくは液体と固体の混合物内に存在する気泡の有無を検出する方法。
【請求項2】
液体もしくは液体と固体の混合物に電磁波を照射し、照射した電磁波の変化から、液体もしくは液体と固体の混合物内に気泡が発生したことを検出する方法。
【請求項3】
前記電磁波の変化が、電磁波の吸収量の変化、電磁波の反射量の変化、電磁波の位相の変化、もしくはこれらの変化を組み合わせた情報である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記電磁波の変化が、幅をもった周波数範囲(スペクトル)における個々の周波数成分の、電磁波吸収量の変化、反射量の変化、位相の変化、もしくはこれらの変化を組み合わせた情報である請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
液体もしくは液体と固体の混合物が共振空洞内にあった場合、前記電磁波の変化が、共振周波数の変化である請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
電磁波を照射して液体もしくは液体と固体の混合物を加熱する加熱炉もしくは加熱装置、または化学反応を行う化学反応炉もしくは化学反応装置において、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法により、前記液体もしくは液体と固体の混合物内に存在する気泡の有無もしくは気泡の発生を検出する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法により検出した結果をもとに反応場の沸騰現象を検出する方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法により検出した結果をもとに、加熱炉もしくは加熱装置、または化学反応炉もしくは反応装置によって製造される化学物質の品質を安定に維持する方法。
【請求項9】
液体もしくは液体と固体の混合物に電磁波を照射する手段と、前記電磁波の変化を検出できる手段を有し、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法に用いることのできる気泡検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−237598(P2012−237598A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105533(P2011−105533)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(511113730)合同会社トリニティ (1)
【Fターム(参考)】