説明

気泡コンクリートおよび発泡コンクリートを製造するための方法、ならびに前記方法を実施するためのシステム

450以下の密度を有する気泡コンクリートまたは発泡コンクリート成型体を製造するためのプロセスであって、石灰もしくは石灰水和物からなるCaO成分およびSiO成分、ならびに発泡剤もしくは泡からなる、セメントおよび硫酸塩担体無含有の石灰配合物が製造され、前記配合物の構成成分は流し込み可能な組成物を得るために水と混合され、前記組成物は、底部および側壁および端壁を有し平行六面体形状の内部空間を有する鋳型に流し込まれ、前記組成物はコンクリートケーキを得るために鋳型内で初期硬化を受け、鋳型は90°の角度でその側壁の1つへと傾斜させられ、前記ケーキはシェルから取り除かれ、前記ケーキは切断装置内で成型体に切断され、硬化底部は切断されたケーキの長辺の1つの上に配置され、前記硬化底部はケーキおよび鋳型側壁と共にに90°の角度で前記長辺へと傾斜させられ、前記鋳型の側壁が取り外され、前記硬化底部は前記コンクリートケーキとともにオートクレーブ内へ移動させられ、オートクレーブ処理にかけられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、450kg/m以下の密度を有する気泡コンクリートおよび発泡コンクリートを製造するための方法、ならびに前記方法を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、500kg/m以下の密度を有する標準品質等級(EN 771−4およびDIN V 4165−100)の気泡コンクリートは、例外なく、いわゆるセメント配合物を使用して製造されている。この場合には、生石灰、通常は微粉石灰、具体的には白色微粉石灰、セメント、通常はポートランド(Portland)セメント、石英粉もしくはケイ砂または水熱プロセスにおいて反応可能な適切なSiO成分、石膏および/または無水石膏、アルミニウム粉末もしくはアルミニウムペースト、ならびに水から構成された流し込み可能な塊が混合され、型の中に流し込まれる。型の中では、塊は発泡し、固化していわゆるケーキを形成する。固化後、例えば長さ6m、幅1.2m、および高さ0.7mを有する大判ブロックの形状で存在する塊は、一括で成形体に切断され、切断された成形体は一括でオートクレーブに導入され、その中で塊は水熱処理される。その際、成形体材料は、具体的にはトバモライトの形態にあるケイ酸カルシウム水和物相を形成しながら硬化して、気泡コンクリートを形成する。オートクレーブ処理の完了後、硬化した成形体はオートクレーブから一括で取り出され、一般には包装される。
【0003】
石膏が添加されたセメント配合物をベースとするこの方法は、SiO成分、アルミニウム成分、および水とともに、水熱プロセスにおいて反応するCaO成分として生石灰のみを含有する純粋な石灰配合物から始まった数十年間におよぶ開発および最適化の後に開発された。この材料は約30cmの高さを有する平たい型の中に流し込まれ、同一型内でオートクレーブ処理にかけられた。この場合は、発泡高さもまた約30cmであった。砂の代わりに、主としてフライアッシュおよびオイルシェールが使用されたが、それらはどちらもポゾラン活性である。しかし、50cmを超える発泡高さへの移行中に、石灰のクエンチング挙動を制御できず、強度値および収縮挙動が不十分であることが確認され、このために、セメントおよび後にはさらに石膏および/または無水石膏が追加して使用された(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照されたい)。同様に、現在は、発泡コンクリートもまた、もっぱらセメントを用いて製造されている。
【0004】
石灰配合物に関しては、硬生石灰または水硬性石灰を用いた配合物を使用できること、そして頑丈で切断可能な固化した塊またはケーキを製造できること、しかし硬化したばかりの気泡コンクリートのオートクレーブ処理後の強度値は相当に低く、その構造は、成形体内での細孔分布およびケイ酸カルシウム水和物相形成に関して、非均質であることが知られている。さらに、500kg/mを超える密度を有する気泡コンクリートおよび発泡コンクリートのみが、十分な強度値で製造可能である。これらの理由から、セメントの成分として、そして石膏または無水石膏を個別に添加した形態で、石膏を含有するセメント配合物を開発することが必要だった。
【0005】
しかし、そのセメント配合物は、認めざるを得ない深刻な欠点を有している。石膏が添加されたために、流し込み可能な塊の中で石灰粒の形成が発生する可能性があり、この悪影響は既知である。時には、いわゆるグレースポットも形成されるが、これはブロック内に不均一にトバモライトが形成されたことの指標であるので、強度が損なわれる。セメントの品質はたびたびで変動するので、配合物の調整が必要になる。気泡コンクリートの製造においては、自社製造からのいわゆる堆積スラッジが配合物に導入される。堆積スラッジの鉱物学的組成は一定ではないが、これはケイ酸カルシウム水和物相が様々な量のセメントから形成されているためである。これは固化およびオートクレーブ・プロセスにおけるケイ酸カルシウム水和物相の形成に作用を及ぼす。さらに、セメント配合物から製造された気泡コンクリート成形体のエッジ破壊強度が不十分な場合がときどきあるが、これはセメント配合物から製造された気泡コンクリート材料が相当に脆性であるためである。
【0006】
しかし気泡コンクリートおよび発泡コンクリート材料の最も重大な欠点は、それがセメント由来および出発混合物に添加された無水石膏/石膏由来の硫酸塩を含有している点である。硫酸塩は浸出する可能性がある。これは気泡コンクリートから構成される建設現場の廃棄物および解体材料のリサイクルをより困難にさせるが、なぜなら造園に使用する硫酸塩の制限値を遵守できないためである。一部の状況下では、建設中に、硫酸塩イオンは使用される鉱物モルタルのケイ酸カルシウム水和物相と反応して、ソーマサイト(thaumasite)(CaSiO×CaSO×CaCO×15HO)を形成する可能性がある。このソーマサイト形成は、体積の増加を伴う結晶化によって材料複合体を破壊する。唯一の有効な対抗策は、使用するモルタルおよびスタッコをそれらのソーマサイト形成に関して試験して制限することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】AT−PS177713
【特許文献2】DE2739188C2
【特許文献3】DE−A−2739181
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、標準品質等級の気泡コンクリートおよび発泡コンクリート製品においてソーマサイト形成を排除し、さらに好ましくはセメント配合物の欠点を補うことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1および14の特徴を有する方法ならびに請求項12に記載の気泡コンクリートを製造するためのシステムによって解決される。本発明の有益な更なる開発は、これらの請求項に従属する従属請求項の中で特徴付けられている。
【0010】
気泡コンクリートに関して以下に開示することは、本質的に発泡コンクリートにも同様に適用される。
【0011】
本発明は、気泡コンクリートを製造するための硫酸塩無含有石灰配合物の使用を提供する。実際には、硫酸塩無含有生石灰配合物自体は既知である。しかし、密度および強度値に関して現在必要とされている品質等級の特性(EN 771−4およびDIN V 4165−100)を有する気泡コンクリートを製造することは未だ可能になっていない。代わりに、その品質等級は、最適なトバモライト形成を達成するために、石膏もまた含有せざるを得ないセメント配合物を用いた場合にのみ保証できる。
【0012】
さらに、これに関連して、セメントに水硬性石灰を補充する、またはセメントを水硬性石灰で置換することも既知である。しかし、この場合には、同様に、品質特性を保証するためには石膏を使用しなければならないことを前提としている(特許文献1)。
【0013】
本発明の範囲内では、450、具体的には400kg/m以下の密度を有する標準品質等級の気泡コンクリートを製造するための石灰配合物の場合に重要なことは、石灰配合物で容易に保証できるケーキの固化した切断可能な堅さではなく、むしろオートクレーブ内に配置される前のケーキの含水量であることが認識された。その原因についての包括的調査後に、石灰配合物由来の大判ケーキの構造は、相当に低重量であるにもかかわらず不安定であること、そしてケーキ内に存在する水が上方から下方へ漏れ出てケーキの下方領域内に集まるという点で、オートクレーブ内での水熱硬化中に不都合に変化することが分かった。ケーキの上方領域は乾き切り、下方領域の塊では水が豊富になり、負荷によって不安定になることでケーキが崩壊する可能性がある。少なくとも構造は大きく変化するので、均質な構造を有する、所要の品質等級の成形体を製造することはできない。
【0014】
この問題を解決するために、本発明は、水熱プロセス中のケーキ内の水を不動化するための手段を提供する。
【0015】
これは、本発明のある実施形態によると、以下で図1および図2a〜2dを用いて説明する機械的方法措置によって実施される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】気泡コンクリートを製造するための本発明による方法を概略的にフローチャートで示した図である。
【図2】ケーキを傾斜させる工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
石灰配合物の成分は、気泡コンクリートを製造するための石灰配合物のための硫酸塩無含有成分が貯蔵されている供給容器1からミキサー3に送り込まれ、これに給水管2を通して水が供給される。成分は、例えば生石灰もしくは水硬性石灰などの水熱プロセスにおいて反応可能な少なくとも1つのCaO成分、例えば石英粉もしくは石英砂などの水熱プロセスにおいて反応可能な少なくとも1つのSiO成分、ならびにアルミニウム粉末もしくはアルミニウムペーストである。本配合物には、所望により、例えば石灰石の粉などの、オートクレーブ・プロセス中には不活性である充填剤成分も添加することができる。
【0018】
さらに、本配合物は、製造から出る気泡コンクリート粉および/または原料堆積物スラッジを含有することができる。さらに本配合物は、例えば流動化剤、保水剤および/または例えばCaO成分とポゾラン的に反応する少なくとも1つの追加の微粒子状のSiO追加成分などの混合剤を有することもできる。当該他の微粒子状のSiO追加成分は、水熱条件がなくても、および/または水熱プロセスにおいて、粗SiO主成分(石英粉、石英砂)がCaO成分と反応する前の早期の時点で、CaO成分によりケイ酸カルシウム水和物相を既に形成する。さらに、その微粒子状の性質により、自由水と吸着的に結合する。
【0019】
具体的には、以下のセメント無含有および石膏無含有石灰配合物が使用される(表中の情報は、配合物の乾燥物質に対する重量%で表示した):
【0020】
【表1】

この場合に、水熱プロセスにおいて反応可能な成分のCaO/SiOモル比は、0.15〜0.95、具体的には0.30〜0.40に調整され、0.45〜1.35、具体的には0.48〜0.63の水分/固体比を有する流動性の塊が製造される。流動性は、含水量を適切に変化させると共に流動化剤および/または保水剤を適切に添加することによって調整することができる。
【0021】
本発明は、純粋な石灰配合物を使用し、崩壊を物理的に防止することを意図している。さらに、または代わりに、固化された塊内の自由水の含量は、少なくとも1つの流動化剤および/または1つの保水剤および/または例えば気泡コンクリート粉もしくは砂利および/または水に吸着的および化学的に結合し強度を増加させる例えば微粒子状SiOなどの微粒子状の添加剤などの1つの水用吸着剤の使用によって、および/または流し込み工程中の塊の振動および/または、低含水量での発泡によって、減少および/または不動化され、それにより、負荷が原因でオートクレーブ処理中にケーキの構造が損なわれることがなくなる。
【0022】
具体的には、88重量%を超える、具体的には92〜96重量%のCaO含量を伴う軟生石灰または硬生石灰の形態にある白色微細石灰がCaO成分として使用される。さらに、硫酸塩無含有の水硬性石灰は、単一CaO成分として、または白色微細石灰と組み合わせて使用できるが、このとき水硬性石灰は50〜90、具体的には65〜85重量%のCaO成分を有しているべきである。同様に、生石灰の代わりの石灰水和物または生石灰および石灰水和物の組み合わせの使用は、本発明の範囲内に含まれる。
【0023】
比較的粗いSiO主要成分は主に、0.13の粒径まで、具体的には0.10mmまでの正規Gauss粒径分布を有する通常の微粉度の粉砕した石英砂または石英粉である。SiO含量は、好ましくは80重量%を超え、特に好ましくは85重量%を超える。
【0024】
粉砕した石英砂または石英粉の他に、フライアッシュもSiO主要成分として使用できる。粉砕したSiO成分は、好ましくは乾燥粉(<0.1mm)として存在するが、なぜなら、このようにすれば、砂スラリーを用いた場合よりも、ミキサーに送られたいわゆる自由鋳造水の温度によって、鋳造温度への技術的影響をより適切に制御できるからである。それでも、砂スラリーの使用は、複合粉の使用と同様に本発明の範囲内である。複合粉は、一般には、一緒に粉砕された砂および石灰成分からなる。
【0025】
気泡コンクリート粉および/または気泡コンクリート砂利の形態にある硫酸塩無含有気泡コンクリート材料は、例えば1.5mmまで、具体的には1.0mmまでの微粉度値で使用される。硫酸塩無含有気泡コンクリート原料の堆積スラッジは、製造の結果として生じ、循環させられる。堆積スラッジは、例えば水と混合された鋸くずであり、ポンプ輸送することができる。
【0026】
合成シリカ(Winnacker−Kuchler, Chemische Technologie[Chemical Technology], Volume 3, Anorganische Technologie [Inorganic Technology]II, 4th edition, Carl Hauser Verlag Munich, Vienna, 1983, p.75−90)は、微粒子として、すなわち高分散シリカとして使用される。具体的には、火炎加水分解によって製造される焼成シリカ、ならびに沈殿シリカが使用される。沈殿シリカは、未粉砕型または蒸気ジェット粉砕型もしくはスプレー乾燥型またはスプレー乾燥および粉砕型で使用できる。そのような沈殿シリカは、例えば、「DUROSIL」および「SIPERNAT」の名で市販で入手可能である。火炎加水分解からの合成シリカは、名称「AEROSIL」で市販されている。これらの合成シリカの比表面積は、例えば、BET法で10m/g超および20〜50m/gであるべきである。例えば100〜500m/gのより大きな表面積を備える高分散シリカが使用される場合は、使用するために必要な量は減少する。
【0027】
アルミニウム成分は、アルミニウム粉末またはアルミニウムペーストのいずれかとして導入される。
【0028】
メラミンスルホン酸塩類、ナフタレンスルホン酸塩類、ポリカルボン酸エーテル類、または例えばリグニンスルホン酸塩類をベースとするコンクリート産業からの液化剤は、流動化剤として使用できる。これらは、インターネット上で、例えば「Admixture News. No. 1 − January 2008, BASF Construction Chemicals Europe AG.」に記載されている。
【0029】
有効な保水剤は、例えば、デンプンまたはセルロースエーテルである。
【0030】
混合物の成分は、通常通りに、流し込み可能な塊を形成するためにミキサー3内で混合され、流し込み可能な塊は、ブロック形の内部を有し、上部が開放している金属からなる大容量鋳型6内に充填される。内部の寸法は、例えば、長さ6.0m、幅1.2m、高さ0.7mである。
【0031】
鋳型6は、鋳型底部、および鋳型底部を取り囲む2つの側壁、ならびに鋳型底部を取り囲む2つの端壁を有している。側壁および端壁は、鋳型底部から取り外すことができる。鋳型6内では、塊は発泡して固化し、自立し切断安定性を有する生気泡コンクリートケーキを形成する。固化後、鋳型6は第1傾斜装置8内で一方の側壁の方へ傾斜させられ、それにより長辺が上を向き、その結果、その側壁上でその幅の狭い側のうちの1つを下にして立っているケーキもまた長辺が上を向く。鋳型6の他方の側壁ならびに鋳型底部および端壁は取り外される。鋳型の側壁の上で長辺を上に向けて立っているケーキは、傾斜装置8によって輸送ライン9内に運ばれ、端側を前方に向けて第1切断ステーション10内に持ち込まれる;そこで、ケーキの底部層および上部層は、前方から後方へ向かって垂直切断ワイヤーで切除される。その後、ケーキは、ケーキの長手方向に対して横方向に水平に張られた切断ワイヤーを有する第2切断ステーション11内へ運ばれ、そのステーションでは前方から後方への水平切断が実施される。これに引き続いて、ケーキは、ケーキの長手方向に対して90°の角度で横方向に伸びる、好ましくは水平に張られた少なくとも1本の切断ワイヤーを有する第3切断ステーション12(横鋸)に入り、その中でケーキは上方から下方へ切断される。
【0032】
本発明では、ケーキが切断プロセス後に長辺を上に向けた配置で第2傾斜装置13へ移動させられ、その装置内では長辺を上に向けて立っているケーキが硬化ラックと結合され、その後、硬化ラックと共にその幅の広い側の方へ傾斜させられることが不可欠である。この配置で、ケーキは硬化ラックと共にオートクレーブ15内に移動させられ、その中で水熱硬化が通常通りに行われる。
【0033】
ケーキが幅の広い側の方へ傾斜させられることにより、驚くべきことに、純粋石灰配合物の場合において、混合剤を用いなくても、添加剤を用いなくても、振動を用いなくても、ケーキへの負荷が非常に小さいままとなり、それによりケーキ内に十分な水が不動化されたままとなり、400kg/m以下の密度を有する必要な品質等級を有する気泡コンクリートの製造に適したケーキの構造が維持されるという結果が達成される。長辺を上に向けて立っているケーキの負荷と比較して、その負荷は相当にわずかとなるために、ケーキが崩壊するほどの量の水は漏出しない。その代わりに、400kg/m以下の密度を有し、必要な品質等級特性を有する気泡コンクリートから構成される硫酸塩無含有成型ブロックを製造することができ、これはセメント配合物から製造された気泡コンクリートに相当するものである。
【0034】
混合剤を用いずに、添加剤を用いずに、そして振動を用いずに、0.75まで、具体的には0.70mまでのケーキ高さは、損傷を与えずに容易にオートクレーブ処理することができる。高さがより高いケーキをオートクレーブ処理することが想定される場合において、必要とされる流し込み可能性のために必要とされるよりも少ない水分を有する塊を流し込む場合には振動を実施することができる、および/または流動化剤を配合物に加えることができる、および/または具体的には、流し込み可能な塊が流し込みのために正常な量の水を有すると考えられる場合は、保水剤および/または高分散シリカを加えることができ、それによりケーキ内で水を不動化できる。これらの追加の手段および/または方策を用いると、石灰配合物由来のケーキは長辺を上に向けていてもオートクレーブ処理することが可能になるので、結果として第2傾斜装置を排除できる。これは特に、単一の反応性で高度に純粋な高分散シリカ、例えば石灰のCaOH含量に対して3〜15、具体的には5〜8重量%の量のマイクロシリカしか有していない石灰配合物に当てはまる。シリカのSiO含量は、この場合、92重量%未満であるべきではない。高分散シリカは、具体的には20〜50m/gのBET比表面積で使用される。大きな比表面積に起因して、水が吸着的に結合され、具体的には生の状態のケーキにおいて既に、ケイ酸カルシウム水和物相が石灰成分により形成され、その結果、水はオートクレーブ・プロセスのために不動化され、オートクレーブ内でのケーキの崩壊を回避できる。
【0035】
EP1892226A2から、気泡コンクリート混合物へマイクロ多孔性またはナノ多孔性粒子の形態にあるマイクロ多孔性またはナノ多孔性シリカを加えることは既知である。マイクロ多孔性またはナノ多孔性であるこの種のシリカは、損傷せずにオートクレーブ・プロセスを乗り切り、粒子はそれらが結合している基本マトリックス内に残存する。本発明は、そのようなマイクロ多孔性またはナノ多孔性シリカを用いて実施することはできないが、それは高分散シリカがポゾラン的に反応し、ケイ酸カルシウム水和物相を形成することが重要なためである。
【0036】
オートクレーブの能力をより確実に利用するために、硬化ラック上に乗っている相互に積み重ねられた複数のケーキは、各例において、硬化ラックがオートクレーブ内で別々に支持されており、硬化ラックの下方に置かれているケーキ上に硬化ラックが乗っていなければ、オートクレーブ内で同時に硬化させることができる。
【0037】
硬化ラックの上で幅の広い側を下に向けた状態のケーキのオートクレーブ処理は、例えばDE−A−2108300またはDE−A−2307031から既知である。これらの既知の方法では、ケーキは切断のために最初に完全に鋳型から外され、つり上げ装置または吸引装置を備える切断装置へ移動させられる。石灰配合物からなるケーキは、その不安定な構造および堅さのために、この輸送を乗り切ることができない。DE−958639Bによる切断方法と、上記の2例の公開公報文書[公開審査のために公表された未審査の特許]に対応する、ケーキの幅の広い側の方への傾斜法と、の組み合わせだけが、切断後に、石灰配合物由来の気泡コンクリートの製造を可能にする。これに関連して、第2傾斜プロセスは、これに関連して自明ではない追加の方策を表しているが、なぜなら、現状技術において、他方の成型体の上部に配置された成型体がオートクレーブ処理中に一緒にケーキングすることを防止するために、または底部層を除去するために、傾斜が実施されたからである。
【0038】
本発明の第二実施形態による、長辺を上に向けて配置したケーキのオートクレーブ処理を維持しながらなされる、混合剤および/または添加剤および/または振動による本発明によって設定された課題の解決もまた現状技術から引き出すことはできないが、なぜなら、オートクレーブ・プロセスにおいて石灰配合物をベースとするケーキの場合に起こる問題は未知であったからである。
【0039】
図2aは、鋳型側壁上で長辺を上に向けて立っている切断されたケーキのポジショニングを示しており、ケーキは切断システムから出てくるが、図示はされていない。側壁17は、輸送装置21上にある。ケーキ16は、水平軸18の周囲で傾斜させることのできる傾斜台19によって保持された硬化ラック20の正面に配置されている。
【0040】
図2bによると、ケーキ16は、側壁17および輸送装置21によって硬化ラック20まで押される。
【0041】
ケーキ16は、側壁17および輸送装置21と共に、傾斜台19を用いて水平軸18の周囲で90°傾斜させられ、その幅の広い側で硬化ラック20上に横たわる(図2c)。
【0042】
その後、側壁17および輸送装置21は、ケーキから側方へ引き離される(図2d)。
【0043】
その後、硬化ラック20は、ケーキ16とともに、オートクレーブ15へ運ばれ、傾斜台19は側壁17および輸送装置21とともに傾斜させられ、輸送装置21は側壁17とともに傾斜システムから運び出される(図示していない)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
450kg/m以下、具体的には400kg/m以下の密度を有する標準品質等級の気泡コンクリート成型体または発泡コンクリート成型体を水熱的に製造するための方法であって、以下の特徴の組み合わせを特徴とする方法:
セメント無含有かつ硫酸塩担体無含有であり具体的にはさらに硫酸塩無含有である石灰配合物であって、生石灰、具体的には白色微細石灰および/または水硬性石灰もしくはそれらの水和物から構成される水熱プロセスにおいて反応可能な少なくとも1つのCaO成分と、水熱プロセスにおいて反応可能な、具体的には0.13mmまでの粒径を有する粉砕された石英砂の形態にある、少なくとも1つのSiO成分と、アルミニウム粉末もしくはアルミニウムペーストまたは事前に作製された泡の形態にある発泡剤と、から構成される石灰配合物が製造され、前記配合物の組成は、オートクレーブ処理された気泡コンクリートまたは発泡コンクリート体の450kg/m以下の密度を保証できるように選択され;
前記配合物の成分はミキサー内に配置され水と混合されて流し込み可能な塊を生成し、このとき生石灰が添加される場合は、該石灰はクエンチして石灰水和物を形成し;
水分を含有する塊は、底部、取り外し可能な側壁および端壁、ならびにブロック型の内部を有する大容量の長方形の鋳型内に充填され;
鋳型内では、前記塊に対して、気泡コンクリートの製造においては孔形成発泡および固化がなされ、発泡コンクリートの製造においては固化がなされて、自立し切断安定性を有する生コンクリートケーキが形成され;
鋳型は、一方の側壁の方へ90°傾斜させられ、ケーキは、底部、端壁、および他方の側壁を取り外すことによって型から外され;
その幅の狭い側のうちの1つを下にして長辺を上に向けて立っているケーキは、切断ステーションで切断されて、水平および垂直切断によって少なくとも1つの成型体を生成し;
長辺を上に向けて立っている硬化底部、具体的には硬化ラックは、切断されたケーキの幅の広い側に設置され、硬化底部は傾斜装置によってケーキおよび鋳型側壁と共にその幅の広い側の方へ90°傾斜させられ、その結果ケーキはその幅の広い側で硬化底部上に横たわるようになり;
鋳型側壁は取り外され、硬化底部は切断されたコンクリートケーキとともにオートクレーブ内に配置され、コンクリートケーキはその中でオートクレーブ処理され;
オートクレーブ処理後に、水熱硬化したコンクリート材料は、オートクレーブから取り出される。
【請求項2】
気泡コンクリートのための配合物は、乾燥固体部分に対して重量%で示した以下の成分量から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【表1】

【請求項3】
流し込み可能な塊の水/固体比は、0.45〜1.35、具体的には0.48〜0.63に調整されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水熱プロセスにおいて反応する成分のCaO/SiOモル比は、0.15〜0.95、具体的には0.30〜0.40に調整されることを特徴とする、請求項1〜3の一項以上に記載の方法。
【請求項5】
メラミンスルホン酸塩類および/またはリグニンスルホン酸塩類および/またはナフタレンスルホン酸塩類および/またはポリカルボン酸エーテル類が、流動化剤として使用されることを特徴とする、請求項2〜4の一項以上に記載の方法。
【請求項6】
デンプンまたはセルロースエーテルが、保水剤として使用されることを特徴とする、請求項2〜5の一項以上に記載の方法。
【請求項7】
合成シリカが、微粒子状SiO追加成分として使用されることを特徴とする、請求項2〜6の一項以上に記載の方法。
【請求項8】
焼成シリカおよび/または沈殿シリカが、合成シリカとして使用されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
10m/gを超える、具体的には20〜50m/gのBET表面積を有する合成シリカが使用されることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記流し込み可能な塊は、それが流し込まれるとき、および/または鋳型内に存在するときに振動させられることを特徴とする、請求項1〜9の一項以上に記載の方法。
【請求項11】
前記切断されたケーキは、0.4〜0.8m、具体的には0.5〜0.7mの高さで製造されることを特徴とする、請求項1〜10の一項以上に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも以下の装置のプロセス−技術結合を特徴とする、請求項1〜11の一項以上に記載の方法によって気泡または発泡コンクリート成形体を製造するためのシステム:
供給容器1;ミキサー3;ミキサー3につながる給水管2;取り外し可能な側壁および端壁を有する鋳型6を備える鋳造ステーション;前記鋳型の幅の狭い側壁の方へ固化されたケーキを含む鋳型6を傾斜させるために構成された第1傾斜装置8;長辺を上に向けて立っているケーキを切断するための切断ステーション10、11、12を有する切断ライン9;硬化ラック送り装置;鋳型側壁および硬化ラックと共に切断されたケーキをその幅の広い側の方へ90°傾斜させるために構成された第2傾斜装置13;オートクレーブ;前記装置間の輸送手段;発泡コンクリート製造用の、ミキサー(3)への泡供給ラインを有する泡生成装置。
【請求項13】
流し込み中および/または流し込み後に前記流し込み可能な塊を振動させるための振動装置を特徴とする、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
450kg/m以下、具体的には400kg/m以下の密度を有する標準品質等級の気泡または発泡コンクリート成型体を水熱的に製造するための方法であって、以下の特徴の組み合わせを特徴とする方法:
セメント無含有かつ硫酸塩担体無含有であり具体的にはさらに硫酸塩無含有である石灰配合物であって、生石灰、具体的には白色微細石灰および/または水硬性石灰もしくはそれらの水和物から構成される水熱プロセスにおいて反応可能な少なくとも1つのCaO成分と、水熱プロセスにおいて反応可能な、具体的には0.13mmまでの粒径を有する粉砕された石英砂の形態にある、少なくとも1つのSiO成分と、気泡コンクリート製造用のアルミニウム粉末もしくはアルミニウムペーストまたは発泡コンクリート製造用の事前に作製された泡の形態にある発泡剤と、高分散合成シリカと、から構成される石灰配合物が製造され;
前記配合物の成分はミキサー内に配置され水と混合されて流し込み可能な塊を生成し、このとき石灰はクエンチして石灰水和物を形成し;
水分を含有する塊は、底部、取り外し可能な側壁および端壁、ならびにブロック型の内部を有する大容量の長方形の鋳型内に充填され;
鋳型内では、前記塊に対して、気泡コンクリートの製造においては孔形成発泡および固化がなされ、発泡コンクリートの製造においては固化がなされて、自立し切断安定性を有する生コンクリートケーキが形成され;
鋳型は、一方の側壁の方へ90°傾斜させられ、ケーキは、底部、端壁、および他方の側壁を取り外すことによって型から外され;
鋳型の側壁上でその幅の狭い側のうちの1つを下にして長辺を上に向けて立っているケーキは、切断ステーションで切断されて、水平および垂直切断によって少なくとも1つの成型体を生成し;
切断されたケーキは、鋳型の側壁上で長辺を上に向けて立った状態でオートクレーブ内に配置され、そこでオートクレーブ処理され;
オートクレーブ処理後に、水熱硬化したコンクリート材料は、オートクレーブから取り出される。
【請求項15】
気泡コンクリートの製造のための配合物は、乾燥固体部分に対して重量%で示した以下の成分量から選択されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【表2】

【請求項16】
流し込み可能な塊の水/固体比は0.45〜1.35、具体的には0.48〜0.63に調整されることを特徴とする、請求項14および/または15に記載の方法。
【請求項17】
水熱プロセスにおいて反応する成分のCaO/SiOモル比は、0.15〜0.95、具体的には0.30〜0.40に調整されることを特徴とする、請求項14〜16の一項以上に記載の方法。
【請求項18】
メラミンスルホン酸塩類および/またはリグニンスルホン酸塩類および/またはナフタレンスルホン酸塩類および/またはポリカルボン酸エーテル類が、流動化剤として使用されることを特徴とする、請求項15〜17の一項以上に記載の方法。
【請求項19】
デンプンまたはセルロースエーテルが、保水剤として使用されることを特徴とする、請求項15〜18の一項以上に記載の方法。
【請求項20】
合成シリカが、高分散SiO追加成分として使用されることを特徴とする、請求項15〜19の一項以上に記載の方法。
【請求項21】
焼成シリカおよび/または沈殿シリカが、合成シリカとして使用されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
10m/gを超える、具体的には10〜500m/g、好ましくは20〜50m/gのBET表面積を有する合成シリカが使用されることを特徴とする、請求項20および/または21に記載の方法。
【請求項23】
前記流し込み可能な塊は、それが流し込まれるとき、および/または鋳型内に存在するときに振動させられることを特徴とする、請求項14〜22の一項以上に記載の方法。
【請求項24】
前記切断されたケーキは、1〜1.5m、具体的には1.1〜1.25mの高さで製造されることを特徴とする、請求項14〜23の一項以上に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも以下の装置のプロセス−技術結合によって特徴付けられる気泡または発泡コンクリート成型体を製造するためのシステムが使用されることを特徴とする、請求項14〜24の一項以上に記載の方法:
供給容器1;ミキサー3;ミキサー3につながる給水管2;取り外し可能な側壁および端壁を有する鋳型6を備える鋳造ステーション;前記鋳型の幅の狭い側壁の方へ固化されたケーキを含む鋳型6を傾斜させるために構成された第1傾斜装置8;長辺を上に向けて立っているケーキを切断するための切断ステーション10、11、12を有する切断ライン9;オートクレーブ;前記装置間の輸送手段;発泡コンクリート製造用の、ミキサー(3)への泡供給ラインを有する泡生成装置。
【請求項26】
流し込み中および/または流し込み後に前記流し込み可能な塊を振動させるための振動装置を有するシステムが使用されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【公表番号】特表2011−516379(P2011−516379A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502304(P2011−502304)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050312
【国際公開番号】WO2009/121635
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510255358)クセラ テヒノロギー−ウント フォルシュングスゲゼルシャフト エムベーハー (1)
【Fターム(参考)】