説明

気泡ポンプ揚水式複合水力発電装置

【課題】ダムや河川を必要としない、揚水された水のみを動力源とした水力発電装置を実現する。
【解決手段】揚水管1と、大吐出量型エアーポンプ15からなる、エネルギー効率の高い気泡ポンプによって揚水を行い、揚水管1に上昇流を発生させ、この末端のノズル2から噴出する水流と、衝動水車9によって得られる動力により、発電機10を駆動させ発電を行う。また、受水槽7から揚水槽3に揚水が行われたことによって、水圧管5に下降流が発生し、これにより末端のノズル6から噴出する水流と、衝動水車11によって得られる動力により、発電機12を駆動させ発電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電に必要な水の全てを、一度下流へ流された水を汲み上げて再び利用することでまかない、ダムや河川を必要とせず、設置場所を選ばない水力発電装置を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の水力発電は、ダムによってせき止められた河川の水の圧力や、河川の上流から水を取り込み下流へ放流する間の落差による水流を利用し発電を行う等、水力発電装置の設置場所には河川の存在が不可欠であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、揚水を行うのに必要なエネルギーを、水力発電によって得られるエネルギーよりも小さく抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、揚水を行うのに気泡ポンプを使用する。このポンプを作動させるための空気を、より小さなエネルギーで送り込めるよう設計することで、エネルギー効率の高い揚水が行えるようにし、課題を解決するものである。
【0005】
気泡ポンプを作動させる原動力は、管内に空気を送り込むエアーポンプである。このポンプが使用するエネルギーを抑えるには、空気を送り込む箇所、管内壁面への水の圧力を下げなければならない。
【0006】
ベルヌーイの定理により、管内を流れる水の流速が速いほど、管内壁面への圧力は低下することが知られている。これを応用し、気泡ポンプによって揚水される水の流量が管下端より流入するとき、摩擦損失が発生しない範囲内で、できる限り管内径を小さくし、管内を流れる水の流速を高め、管内壁面への圧力を低下させることで、空気を送り込むためにエアーポンプが使用するエネルギーを最小限に抑えることができる。
【0007】
そして、この管内を板で細かく仕切り、気泡によって押し上げられる水が、管内壁面と気泡の隙間から気泡の下に回り込むのを防ぐことで、揚水途中の損失を抑えることができ、これによって、エネルギー効率の高い気泡ポンプを実現することができる。
【0008】
この考えに基づき設計された、揚水管1、整流板19、高圧力型エアーポンプ13 、大吐出量型エアーポンプ15から成る気泡ポンプを揚水に使用し、その揚水管1上端のノズル2の先に衝動水車9、発電機10から成る水力発電装置を置き、揚水によって発生する水流によって発電を行う。一方、水圧管5下端のノズル6の先にも衝動水車11、発電機12から成る水力発電装置を置き、水の落差によって発生する水流によって発電を行う。
また、揚水層3、水圧管5、受水槽7は、そこに流れる水の流量に対して十分な流水断面積をとり、摩擦損失が発生しないよう設計する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気泡ポンプを使って揚水を行う水力発電装置によって、ダムや河川を必要とせず、設置場所を選ばない水力発電装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明装置の水圧管側は水の落差を利用した水力発電装置である。このため気泡ポンプの性能によって揚水を行える範囲内で、できるだけ高さのある水圧管を用い、水の落差を大きくするよう本装置の設計をすることで、より大きな電力を得ることができる。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明装置の実施例の構造を示した側面図であり、図2は、これに使用されている揚水管の断面図である。
【0012】
本装置の起動は、高圧力型エアーポンプ13によって行う。起動時、揚水管1下端側面の空気吹き込み口には、揚水槽3の水面から空気吹き込み口までの水深分の水圧がかかっており、空気を送り込むには高圧力型のエアーポンプが必要になる。
【0013】
揚水管1に空気が送り込まれ始めると、揚水が行われ揚水管1内に水流が発生することで、ベルヌーイの定理により管内壁面への圧力が低下する。また、揚水管1内には空気と水が混在する状態になるため見かけ上の水位が低下し圧力が低下する。これら二つの作用により、揚水管1下端側面の空気吹き込み口にかかる圧力が低下するため、より小さな力で空気を送り込めるようになる。ここから大吐出量型エアーポンプ15を作動させ、より多くの空気を送り込むことで、気泡ポンプの揚水効率を上げることができる。
【0014】
揚水された水はノズル2から噴出する。この先に衝動水車9、発電機10から成る水力発電装置を置くことで発電を行い、水は揚水槽3に溜められ、空気は排気口4から排出される。
【0015】
受水槽7から揚水槽3へと水が汲み上げられたため、水圧管5には下降流が発生し、その水がノズル6から噴出する。この先に衝動水車11、発電機12から成る水力発電装置を置くことで発電を行い、水は受水槽7に溜められる。
【0016】
衝動水車11と発電機12は水没を防ぐため気密室8に設置する。気密室8から空気が漏れないよう、水圧管5はその下端を受水槽7の水面下を通る形にし、受水槽7の水位が上昇した場合に備え、高圧力型エアーポンプ17を設置する。
【産業上の利用可能性】
【0017】
これは、ダムや河川を必要とせず、設置場所を限定されない水力発電装置であるために、一般家庭や工場、その他施設での自家発電装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】気泡ポンプ揚水式複合水力発電装置の全体構造を示した側面図である。
【図2】気泡ポンプ揚水式複合水力発電装置の揚水管内部構造を示した断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 揚水管
2 ノズル
3 揚水槽
4 排気口
5 水圧管
6 ノズル
7 受水槽
8 気密室
9 衝動水車
10 発電機
11 衝動水車
12 発電機
13 高圧力型エアーポンプ
14 逆流防止弁
15 大吐出量型エアーポンプ
16 逆流防止弁
17 高圧力型エアーポンプ
18 逆流防止弁
19 整流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡ポンプによって汲み上げられた水が揚水管から噴出する力を利用した水力発電装置と、汲み上げられた水が水圧管を落下する力を利用した水力発電装置を組み合わせた複合水力発電装置。
【請求項2】
管内に整流板を持った構造の揚水管と、起動用高圧力型エアーポンプ 、操業用大吐出量型エアーポンプから成る気泡ポンプ装置。
【請求項3】
エネルギー効率の高い気泡ポンプを設計するための揚水管内径の決定法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−231760(P2007−231760A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51879(P2006−51879)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(306004519)
【Fターム(参考)】