説明

気泡検出方法及びレジスト塗布方法並びにレジスト塗布装置

【課題】フォトレジスト中への金属等の不純物の溶出を抑制することができるとともに、フォトレジストの流量と気泡の有無を検出することのできる気泡検出方法及びレジスト塗布方法並びにレジスト塗布装置を提供する。
【解決手段】内部に流体が流通される樹脂製配管と、前記樹脂製配管の外部に設けられ、前記流体を加熱するための加熱機構と、前記樹脂製配管の外部に設けられ、前記流体の流れによる温度変化を検出するための温度検出機構と、を具備した流量センサを、内部にフォトレジストが流通されるフォトレジスト供給配管に介挿し、前記流量センサからの信号に基づいて前記フォトレジスト供給配管内を流通する前記フォトレジストの流量を検出するとともに、前記フォトレジスト中の気泡の有無を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡検出方法及びレジスト塗布方法並びにレジスト塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程において、微細な回路パターンを形成するためのフォトリソグラフィー工程で半導体ウエハ等の被処理基板にフォトレジストを塗布するレジスト塗布装置が使用されている。このようなレジスト塗布装置としては、半導体ウエハを保持し、回転させるためのスピンチャックと、スピンチャック上の半導体ウエハ表面にフォトレジストを供給するためのフォトレジスト供給機構と、スピンチャック上の半導体ウエハの周囲を囲むように配置されたカップ等を具備したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、配管内を流れる液体、気体等の流体の流量を測定するための流量センサとして、配管の外側に設けられ配管内部の流体を加熱するための加熱機構と、加熱された流体が配管内部を流れることによって生じる温度変化を測定するための温度測定機構とを具備し、測定される温度情報から配管内部を流れる流体の流量(質量流量)を求める流量センサが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−320999号公報
【特許文献2】特開平5−107093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のレジスト塗布装置では、フォトレジスト供給機構に設けられたベローズポンプ等で一定量のフォトレジストを半導体ウエハ表面に供給し、この後、スピンチャックによって半導体ウエハを回転させることによって、フォトレジストを半導体ウエハの全面に拡散させ、余分なフォトレジストをカップ内に飛散させて半導体ウエハ表面から除去するようになっている。
【0006】
上記のように、従来のレジスト塗布装置では、ある程度余裕を見込んだ量のフォトレジストを半導体ウエハ表面に供給し、余分なフォトレジストをスピンチャックの回転によって振り切って除去するようになっている。しかしながら、近年では半導体装置の回路パターンが微細化される傾向にあり、微細な回路パターンの形成を可能とする高価なフォトレジストを使用することが多くなってきている。
【0007】
このため、フォトレジストの使用量を削減することが求められている。この場合、フォトレジストの供給量を高精度で制御し、必要最低限のフォトレジストを半導体ウエハに供給することが考えられる。しかしながら、フォトレジストの供給量は、0.5ml程度であり、このような少量の流体の流量を精度よく測定することは困難である。また、フォトレジストの供給配管系には、金属等の汚染物が混入することを防止するため、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)等の樹脂製の配管が使用されており、金属配管やガラス配管を用いた流量センサは使用することができないという問題がある。
【0008】
また、フォトレジスト中に気泡が混入し、この気泡が半導体ウエハに供給されると、レジストの塗布状態が不良となり、歩留まりの低下を招くという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、フォトレジスト中への金属等の不純物の溶出を抑制することができるとともに、フォトレジストの流量と気泡の有無を検出することのできる気泡検出方法及びレジスト塗布方法並びにレジスト塗布装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の気泡検出方法一態様は、内部に流体が流通される樹脂製配管と、前記樹脂製配管の外部に設けられ、前記流体を加熱するための加熱機構と、前記樹脂製配管の外部に設けられ、前記流体の流れによる温度変化を検出するための温度検出機構と、を具備した流量センサを、内部にフォトレジストが流通されるフォトレジスト供給配管に介挿し、前記流量センサからの信号に基づいて前記フォトレジスト供給配管内を流通する前記フォトレジストの流量を検出するとともに、前記フォトレジスト中の気泡の有無を検出することを特徴とする。
【0011】
本発明のレジスト塗布方法の一態様は、被処理基板を保持して回転させる回転保持機構と、内部にフォトレジストが流通されるフォトレジスト供給配管を有し、前記回転保持機構に保持された前記被処理基板の表面にフォトレジストを供給するフォトレジスト供給機構と、を具備したレジスト塗布装置を用いて前記被処理基板にフォトレジストを塗布するレジスト塗布方法であって、内部に流体が流通される樹脂製配管と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体を加熱するための加熱機構と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体の流れによる温度変化を検出するための温度検出機構とを有する流量センサを前記フォトレジスト供給配管に介挿し、前記流量センサからの信号に基づいて、前記フォトレジストの流量を検出するとともに前記フォトレジスト中の気泡の有無を検出し、これらの検出結果に基づいて前記被処理基板への前記フォトレジストの供給を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明のレジスト塗布装置の一態様は、被処理基板を保持して回転させる回転保持機構と、内部にフォトレジストが流通されるフォトレジスト供給配管を有し、前記回転保持機構に保持された前記被処理基板の表面にフォトレジストを供給するフォトレジスト供給機構と、内部に流体が流通される樹脂製配管と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体を加熱するための加熱機構と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体の流れによる温度変化を検出するための温度検出機構とを有し、前記フォトレジスト供給配管に介挿された流量センサと、前記流量センサからの信号に基づいて、前記フォトレジストの流量を検出するとともに前記フォトレジスト中の気泡の有無を検出し、これらの検出結果に基づいて前記被処理基板への前記フォトレジストの供給を制御する制御部とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フォトレジスト中への金属等の不純物の溶出を抑制することができるとともに、フォトレジストの流量と気泡の有無を検出することのできる気泡検出方法及びレジスト塗布方法並びにレジスト塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るレジスト塗布装置の構成を模式的に示す図。
【図2】本発明の一実施形態に用いる流量センサの製造工程を模式的に示す図。
【図3】流量センサの要部構成を模式的に示す図。
【図4】流量センサの全体構成を模式的に示す図。
【図5】気泡の有無による流量センサの測定信号の違いを示すグラフ。
【図6】他の流量センサの要部構成を模式的に示す図。
【図7】図5の流量センサにおける温度シミュレーション結果を示すグラフ。
【図8】図3の流量センサにおける温度シミュレーション結果を示すグラフ。
【図9】フレキシブル基板を用いた流量センサの構成を模式的に示す図。
【図10】硬質な基板を用いた流量センサの構成を模式的に示す図。
【図11】図9及び図10の流量センサにおけるΔTの相違を示すグラフ。
【図12】図9及び図10の流量センサにおける被測定流体の温度の相違を示すグラフ。
【図13】他の流量センサの製造工程を模式的に示す図。
【図14】他の流量センサの要部構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を、図面を参照して実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るレジスト塗布装置100の構成を示すものである。同図に示すように、レジスト塗布装置100は、被処理基板としての半導体ウエハWを保持して回転させるための回転保持機構としてのスピンチャック101を具備している。スピンチャック101の周囲には、スピンチャック101及び半導体ウエハWの周囲を囲むように、カップ102が設けられており、スピンチャック101の上方には、レジスト供給ノズル103と、溶剤供給ノズル104とが配設されている。これらのレジスト供給ノズル103、溶剤供給ノズル104は、ノズル駆動機構105に接続されており、図中矢印で示すように、上下及び水平方向に移動可能とされている。
【0017】
レジスト供給ノズル103は、レジスト供給配管106を介してフォトレジスト供給源107に接続されている。レジスト供給配管106は、PFA製の樹脂製配管からなり、レジスト供給配管106には、上流側(フォトレジスト供給源107側)から順に、ポンプ108、フィルタ109、気泡除去機構110、流量センサ111、開閉バルブ112、サックバックバルブ113が介挿されている。流量センサ111は、後述するように、レジスト供給配管106と同一のPFA製の樹脂製配管10(図1には図示せず。)を備えている。一方、溶剤供給ノズル104は、溶剤供給配管114を介して溶剤供給源115に接続されている。溶剤供給配管114には、開閉弁116が介挿されている。
【0018】
上記したスピンチャック101、ノズル駆動機構105、ポンプ108、気泡除去機構110、流量センサ111、開閉バルブ112、サックバックバルブ113、開閉弁116は、制御部120に接続されている。そして、流量センサ111の検出信号等は、制御部120に送られ、スピンチャック101、ノズル駆動機構105、ポンプ108、気泡除去機構110、開閉バルブ112、サックバックバルブ113、開閉弁116等は、制御部120によって制御される。
【0019】
上記構成のレジスト塗布装置では、スピンチャック101上に半導体ウエハWを載置し、スピンチャック101に吸着保持する。そして、この半導体ウエハWに、レジスト供給ノズル103から、所定量のフォトレジストを供給し、スピンチャック101によって、半導体ウエハWを回転させることによって、フォトレジストを半導体ウエハWの全面に拡散させて所定膜厚のフォトレジストの塗布を行う。この時、制御部120は、流量センサ111で正確に流量を測定しつつ、フォトレジストを半導体ウエハWに供給する。これによって、必要最低限の量のフォトレジストを正確に供給することができる。
【0020】
なお、上記のフォトレジストの塗布に先だって、必要により、半導体ウエハW表面に溶剤供給ノズル104から溶剤を供給し、半導体ウエハWの表面を溶剤によって濡らした状態とした後、レジスト供給ノズル103からフォトレジストを供給する。
【0021】
また、制御部120は、流量センサ111によって、フォトレジスト中の気泡の有無を検出し、この検出結果に基づいて、フォトレジストの供給状態を制御する。すなわち、例えば、フォトレジスト中への気泡の混入が検出された場合は、レジスト供給ノズル103からの半導体ウエハWへのフォトレジストの供給を停止する。そして、気泡がレジスト供給ノズル103から排出されるまでフォトレジストを排出する。これによって、気泡が半導体ウエハWに供給され、半導体ウエハW上のフォトレジスト膜の塗布状態が不良となることを防止することができる。
【0022】
次に、上記流量センサ111の構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に用いる流量センサの製造工程を説明するための図である。図2(a)に示すように、この流量センサでは、内部に流体であるフォトレジストが流通される樹脂製配管10を用いる。本実施形態において、樹脂製配管10は、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)から構成されており、内径(直径)が例えば3mm、外径(直径)が例えば4mm、管壁の厚さが例えば500μmとされている。
【0023】
この流量センサを製造する場合、まず、図2(b)に示すように、樹脂製配管10の長手方向中間部に、管壁を外側から切削して薄くした薄肉部10aを設ける。この薄肉部10aにおける管壁の厚さは、例えば、100μm程度とすることが好ましい。すなわち、厚さが500μmの管壁を、略400μm切削して残りの管壁厚が略100μm程度とすることが好ましい。
【0024】
そして、この樹脂製配管10の薄肉部10aに、図3に示すように、加熱機構としてのヒータ11と、温度検出機構としての上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bを配設する。なお、上流側温度センサ12aは、樹脂製配管10の内部を流通する被測定流体の流れ方向(図3中に矢印で示す。)に対して、ヒータ11より上流側に配置されており、下流側温度センサ12bは、ヒータ11より下流側に配置されている。
【0025】
図4に示すように、ヒータ11は、電力供給回路8に電気的に接続されており、電力供給回路8からヒータ11に電力が供給されるようになっている。また、上流側温度センサ12aの測定信号及び下流側温度センサ12bの測定信号は、流量算出モジュール7及び2つの熱容量測定回路9に夫々別々に入力されるようになっている。流量算出モジュール7は、信号線によって電力供給回路8及び2つの熱容量測定回路9に接続されており、電力供給回路8と2つの熱容量測定回路9も信号線によって接続されている。
【0026】
流量算出モジュール7は、温度差検出回路4、流量演算回路5、物性データ変更回路6を具備している。温度差検出回路4は、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bの測定信号からこれらの温度差ΔTを検出する。流量演算回路5は、温度差検出回路4によって検出された温度差ΔT、物性データ変更回路6からの物性データとしての係数ks(又はka)、及び電力供給回路8からヒータ11に供給された電力量に基づく被測定流体の加熱量Wによって被測定流体の流量(質量流量)を算出する。
【0027】
すなわち、流量演算回路5は、較正用の流体Sの比熱Cp、流体Sの熱容量Cs等により定まる流体Sの物性データとしての係数ks及び温度差検出回路4からの温度差ΔTに次式(1)の関係があることに基づいて、質量流量Fを算出する。
W=ks・Cp・F・ΔT (1)
【0028】
任意の被測定流体Aについては、熱容量測定回路9によって測定された被測定流体Aの熱容量Caを用いて、物性データ変更回路6において、次式(2)に基づいて流量算出に必要な被測定流体Aの係数kaを求める。
ka=Ca/Cs (2)
【0029】
なお、熱容量測定回路9は、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bの測定信号及び電力供給回路8からヒータ11に供給された電力量に基づく被測定流体の加熱量Wによって被測定流体Aの熱容量Caを算出し、算出した被測定流体Aの熱容量Caを流量算出モジュール7の物性データ変更回路6に出力する。ここで、熱容量が既知の被測定流体のみの流量を測定する場合は、熱容量測定回路9を省略し、物性データ変更回路6に、各被測定流体の熱容量等の物性データとしての上記した係数を記憶させておき、被測定流体を指定することによって、物性データ変更回路6に記憶された物性データとしての係数を用いて被測定流体の流量を算出するようにしてもよい。
【0030】
上記構成の流量センサでは、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)から構成された樹脂製配管10を用いている。このPFA製の樹脂製配管10は、レジスト塗布装置100のレジスト供給配管106に使用される樹脂製配管と、材質及び内径、外径が同一のものである。このような樹脂製配管10を使用することによって、フォトレジスト中に金属等の不純物が溶出することを抑制することができる。
【0031】
また、上記樹脂製配管10の薄肉部10aに、ヒータ11、上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bを配設しているので、樹脂製配管10内を流通するフォトレジストを効率良く短時間で加熱することができるとともに、高感度でフォトレジストの流れによる温度変化を検出することができる。これによって、高精度でフォトレジストの流量を測定することができる。
【0032】
したがって、余裕を見込んで必要最低限の量以上の多量のフォトレジストを供給する必要がなく、フォトレジストの消費量の低減を図ることができる。フォトレジストは高価であるため、これによって製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
また、フォトレジスト中に気泡が混入した場合は、検出される上記の温度変化が、気泡の無い場合と異なるので、気泡の有無も検出することができる。
【0034】
図5のグラフは、縦軸を温度差ΔT(℃)、横軸を時間(s)として、フォトレジスト中に気泡が有る場合と、無い場合の温度差ΔTの時間変化の相違を示すものである。同図に示すように、フォトレジスト中に気泡が有る場合、フォトレジストを流した際の温度差ΔTの上昇が停滞する。これによって、フォトレジスト中の気泡の存在を検知することができる。前述したとおり、フォトレジスト中に気泡が存在することが検知されると、制御部120は、フォトレジストの供給状態を通常の状態から変更するように制御する。すなわち、例えば、フォトレジスト中への気泡の混入が検出された場合は、レジスト供給ノズル103からの半導体ウエハWへのフォトレジストの供給を停止する。そして、気泡がレジスト供給ノズル103から排出されるまでフォトレジストを排出する。これによって、気泡が半導体ウエハWに供給され、半導体ウエハW上のフォトレジスト膜の塗布状態が不良となることを防止することができる。
【0035】
なお、上記の例では樹脂製配管10に薄肉部10aを設けた流量センサを用いた場合について説明したが、図6に示すように、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)から構成され、内径が3mm、外径が4mm、管壁の厚さが500μmで薄肉部を有しない樹脂製配管20の外側に、ヒータ11、上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bを配設した流量センサを用いてもよい。但しこの場合、薄肉部10aを設けた流量センサを用いた場合に比べて検出精度が低下する。
【0036】
図6に示すように構成した流量センサを用いた場合における上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bで測定される温度検出信号と、図3に示したように、樹脂製配管10の厚さが100μmの薄肉部10aに、ヒータ11、上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bを配設した場合における上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bで測定される温度検出信号をシミュレーションして比較した結果を図7、図8のグラフに示す。
【0037】
図7、図8のグラフにおいて、縦軸は温度、横軸は時間である。シミュレーションは、ヒータ11の上流側0.3mmの位置に上流側温度センサ12a、下流側0.3mmの位置に下流側温度センサ12bを配設し、被測定流体としてシクロヘキサノンの物性値を用いて行った。また、被測定流体の流量がゼロの状態で、時間0〜18秒までヒータ11による加熱を行い、その後、時間18〜20秒の間、流量0.25ml/sで被測定流体を流した場合についてシミュレーションを行った。図7のグラフは、図6に示した構成の場合であり、図8のグラフは図3に示した構成の場合である。
【0038】
これらの図7,8のグラフに示されるように、時間0〜18秒までの間は、図6の構成の場合の方が、温度上昇幅が大きくなっている。これは、PFAの熱伝導率が0.25W/m・Kであるのに対して、シクロヘキサノンの熱伝導率が0.12W/m・Kと低く、管壁の厚みが厚い方が、ヒータ11から管壁を伝わって上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bに届く熱が多いことによる。
【0039】
熱式流量センサとして重要な特性は、被測定流体が流れた時間18〜20秒において、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bによって検出される温度差が大きいことである。この温度差については、図8の場合の方が明らかに大きくなっている。したがって、図6に示されるように薄肉部10aを設けない構成の場合に比べて、図3に示した薄肉部10aを設けた構成の場合、高精度でフォトレジストの流量を測定することができる。また、フォトレジストが流れ続けた時に、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bにおける測定温度が一定温度に達するまでの時間も短くなる。
【0040】
また、図9に示すように、ヒータ11、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12b(図9には図示せず。)を、フレキシブル基板50に形成し、フレキシブル基板50を薄肉部10aの周囲に巻き付けるように配設することによって、ヒータ11、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bと、薄肉部10aとが線接触状態で接触するようにすることが好ましい。
【0041】
これによって、例えば、図10に示すように、ヒータ11、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12b(図10には図示せず。)を、硬質な基板51に形成し、ヒータ11、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bと、薄肉部10aとが点接触状態で接触する場合に比べて、ヒータ11の熱を、樹脂製配管10内の被測定流体に効率良く伝達することができる。また、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bによって、効率良く温度を検出することができ、結果として、流量測定を精度良く行うことができる。
【0042】
図11のグラフは、縦軸を温度差、横軸を時間として、図9に示す構成の場合と、図10に示す構成の場合によって、被測定流体を流した際に上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bで検出される温度差の相違をシミュレーションによって調べた結果を示している。図11中、曲線Aは図9に示す線接触の構成の場合、曲線Bは図10に示す点接触の構成の場合を示している。上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bの設置位置は、ヒータ11から上流側及び下流側に0.3mm離れた位置、ヒータによる加熱は37℃以下、ポンプによる流量設定は0.25ml/sである。
【0043】
図11のグラフに示されるように、曲線Aの線接触の構成の場合、曲線Bの点接触の構成の場合に比べて、検出することのできる温度差が明らかに大きくなっている。これによって、フレキシブル基板50を用いた線接触となる構成とすれば、硬質な基板51を用いた点接触の構成の場合に比べて、より効率的に、精度良く被測定流体の流量を測定することができる。
【0044】
図12のグラフは、縦軸を温度、横軸を時間として、図9に示す構成の場合と、図10に示す構成の場合によって生じる被測定流体の温度上昇の相違を、シミュレーションによって調べた結果を示している。図12において、曲線Aは図9に示す線接触の構成の場合、曲線Bは図10に示す点接触の構成の場合を示している。
【0045】
この図12に示されるように、図9に示されるようにフレキシブル基板50を用いた構成とした場合、図10に示されるように硬質な基板51を用いた場合に比べて、より効率的に被測定流体にヒータ11の熱を伝えることができ、短時間でより高い温度に被測定流体を加熱することができる。したがって、フレキシブル基板50を用いた線接触となる構成とすれば、硬質な基板51を用いた点接触の構成の場合に比べて、より効率的に、精度良く被測定流体の流量を測定することができる。
【0046】
また、上記した流量センサでは、薄肉部10aにおける機械的な強度が低下する。このため、図13に示す構成の流量センサを用いることが好ましい。この流量センサでは、樹脂製配管10の薄肉部10aに、図13(a)に示すように、加熱機構としてのヒータ11と、温度検出機構としての上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bを配設する。なお、上流側温度センサ12aは、樹脂製配管10の内部を流通する被測定流体の流れ方向に対して、ヒータ11より上流側に配置されており、下流側温度センサ12bは、ヒータ11より下流側に配置されている。これらのヒータ11、上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bは、例えば、可撓性を有するフレキシブル基板13上に配設し、フレキシブル基板13を薄肉部10aの周りに巻回すること等によって配設することができる。図14に、上記の薄肉部10a、ヒータ11、上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bの位置関係を、縦断面において模式的に示す。なお、図14に示す矢印は、樹脂製配管10の内部を流通する被測定流体の流れ方向を示している。
【0047】
そして、上記のように、薄肉部10aに、ヒータ11、上流側温度センサ12a、下流側温度センサ12bを配設した樹脂製配管10に対して、チューブ状の補強部材となる熱収縮性チューブ14を被せて図13(b)の状態とする。なお、この段階では、熱収縮性チューブ14は、樹脂製配管10の外径より、大きな内径を有している。これによって、樹脂製配管10の外側に熱収縮性チューブ14を被せ、この状態で熱収縮性チューブ14を、樹脂製配管10の管軸方向に沿って移動できるようになっている。なお、この時、熱収縮性チューブ14に予め切れ目を入れておき、その切れ目からヒータ11への給電線、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bの信号線等のケーブルを接続するための電極パッドが形成されたフレキシブル基板13の一部を熱収縮性チューブ14の外側に取り出しておく。
【0048】
次に、図13(c)に示すように、熱収縮性チューブ14を加熱して収縮させることによって、熱収縮性チューブ14を薄肉部10aの外側に密着させる。これによって、薄肉部10aの外側を覆う、熱収縮性チューブ14製のチューブ状の補強部材を配設することができる。そして、予め熱収縮性チューブ14の外側に取り出してあるフレキシブル基板13の電極パッドにヒータ11への給電線、上流側温度センサ12a及び下流側温度センサ12bの信号線等のケーブルを接続する。なお、熱収縮性チューブ14の管壁の厚さは、図13(c)に示すように、熱収縮性チューブ14を収縮させた状態で、薄肉部10aの部分の管壁の厚さ100μmと熱収縮性チューブ14の管壁の厚さを足し合わせたものが、樹脂製配管10の他の部分管壁の厚さ500μmと同じ程度となるようにすることが好ましい。すなわち、この場合収縮させた状態で熱収縮性チューブ14の管壁の厚さが400μm程度となるようにすることが好ましい。
【0049】
薄肉部10aは、樹脂製配管10の他の部分に比べてその管壁が薄肉とされていることによって物理的強度が低い状態となっている。このため、流量センサを配管に着脱する際等に応力が加わって破損を起こす可能性が高いが、薄肉部10aに熱収縮性チューブ14製のチューブ状の補強部材を配設することによって、上記のような破損が起きる可能性を低減し、十分な堅牢性を確保することができる。熱収縮性チューブ14としては、例えば、樹脂製配管10と同様なPFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)製のものを使用することができる。しかし、PFA製のものに限られるものではなく、他の材質の熱収縮性チューブを用いてもよい。
【0050】
以上、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各種の変形が可能であることは、勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10……樹脂製(PFA製)配管、10a……薄肉部、11……ヒータ、12a……上流側温度センサ、12b……下流側温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が流通される樹脂製配管と、
前記樹脂製配管の外部に設けられ、前記流体を加熱するための加熱機構と、
前記樹脂製配管の外部に設けられ、前記流体の流れによる温度変化を検出するための温度検出機構と、
を具備した流量センサを、内部にフォトレジストが流通されるフォトレジスト供給配管に介挿し、前記流量センサからの信号に基づいて前記フォトレジスト供給配管内を流通する前記フォトレジストの流量を検出するとともに、前記フォトレジスト中の気泡の有無を検出する
ことを特徴とする気泡検出方法。
【請求項2】
請求項1記載の気泡検出方法であって、
前記フォトレジスト中に気泡が有る場合と、無い場合の温度差ΔTの経時的変化によって、前記フォトレジスト中の気泡の有無を検知することを特徴とする気泡検出方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の気泡検出方法であって、
前記樹脂製配管の一部に、管壁の厚さを薄くした薄肉部を設け、当該薄肉部に前記加熱機構及び前記温度検出機構を配置した
ことを特徴とする気泡検出方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載の気泡検出方法であって、
前記樹脂製配管が、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)から構成されていることを特徴とする気泡検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の気泡検出方法であって、
前記薄肉部は、前記樹脂製配管の外側を切削することによって形成されていることを特徴とする気泡検出方法。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項記載の気泡検出方法であって、
前記温度検出機構が、前記加熱機構より前記被測定流体の流れに対して上流側に配設された上流側温度検出機構と、下流側に配設された下流側温度検出機構とによって構成されている
ことを特徴とする気泡検出方法。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の気泡検出方法であって、
前記加熱機構及び前記温度検出機構がフレキシブル基板に形成され、前記薄肉部の周囲に、前記フレキシブル基板が、少なくともその一部が巻回されるように配置されている
ことを特徴とする気泡検出方法。
【請求項8】
被処理基板を保持して回転させる回転保持機構と、
内部にフォトレジストが流通されるフォトレジスト供給配管を有し、前記回転保持機構に保持された前記被処理基板の表面にフォトレジストを供給するフォトレジスト供給機構と、
を具備したレジスト塗布装置を用いて前記被処理基板にフォトレジストを塗布するレジスト塗布方法であって、
内部に流体が流通される樹脂製配管と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体を加熱するための加熱機構と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体の流れによる温度変化を検出するための温度検出機構とを有する流量センサを前記フォトレジスト供給配管に介挿し、
前記流量センサからの信号に基づいて、前記フォトレジストの流量を検出するとともに前記フォトレジスト中の気泡の有無を検出し、これらの検出結果に基づいて前記被処理基板への前記フォトレジストの供給を制御する
ことを特徴とするレジスト塗布方法。
【請求項9】
請求項8記載のレジスト塗布方法であって、
前記フォトレジスト中に気泡が有る場合と、無い場合の温度差ΔTの経時的変化によって、前記フォトレジスト中の気泡の有無を検知することを特徴とするレジスト塗布方法。
【請求項10】
請求項8又は9記載のレジスト塗布方法であって、
前記フォトレジスト中への気泡の混入が検出された場合、前記フォトレジストの供給を停止することを特徴とするレジスト塗布方法。
【請求項11】
請求項8〜10いずれか1項記載のレジスト塗布方法であって、
前記樹脂製配管の一部に、管壁の厚さを薄くした薄肉部を設け、当該薄肉部に前記加熱機構及び前記温度検出機構を配置する
ことを特徴とするレジスト塗布方法。
【請求項12】
被処理基板を保持して回転させる回転保持機構と、
内部にフォトレジストが流通されるフォトレジスト供給配管を有し、前記回転保持機構に保持された前記被処理基板の表面にフォトレジストを供給するフォトレジスト供給機構と、
内部に流体が流通される樹脂製配管と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体を加熱するための加熱機構と、前記樹脂製配管の外部に設けられ前記流体の流れによる温度変化を検出するための温度検出機構とを有し、前記フォトレジスト供給配管に介挿された流量センサと、
前記流量センサからの信号に基づいて、前記フォトレジストの流量を検出するとともに前記フォトレジスト中の気泡の有無を検出し、これらの検出結果に基づいて前記被処理基板への前記フォトレジストの供給を制御する制御部と
を具備したことを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項13】
請求項12記載のレジスト塗布装置であって、
前記フォトレジスト中に気泡が有る場合と、無い場合の温度差ΔTの経時的変化によって、前記フォトレジスト中の気泡の有無を検知することを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項14】
請求項12又は13記載のレジスト塗布装置であって、
前記フォトレジスト中への気泡の混入が検出された場合、前記フォトレジストの供給を停止することを特徴とするレジスト塗布装置。
【請求項15】
請求項12〜14いずれか1項記載のレジスト塗布装置であって、
前記樹脂製配管の一部に、管壁の厚さを薄くした薄肉部を設け、当該薄肉部に前記加熱機構及び前記温度検出機構を配置した
ことを特徴とするレジスト塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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