説明

気流中における液滴分離装置

本発明は、メインセパレータが目詰まりを起こした際に生じる圧損が大幅に回避され、その結果装置の寿命を延長することが出来る液滴分離装置を提供する。
該装置は気流中から液滴を分離する装置であって、該装置は被浄化気流が流入するプレセパレート室4を備え、該プレセパレート室4により前記被浄化気流が該プレセパレート室4の壁面6において反発した後、壁面領域における流圧により垂直方向上方に(矢印7)変向し、排液部材を備えたメインセパレータ13が前記プレセパレート室4の垂直方向上部に配置され、前記メインセパレータ13は前記被浄化気流を外側から内側に水平方向に(矢印13)透過し、その後中央域において浄化済の気流を垂直方向上方へ(矢印14)変向させるために前記プレセパレート室4と前記メインセパレータ13の間に案内部材8が設置され、該案内部材8は外壁面部に気流の流路を制限する閉鎖領域9を、中央域で気流を通過させる中央開口部11を備え、該中央開口部11に配置された案内部15及び16により、気流が前記メインセパレータ13の外周側に向けて水平方向外側に流入するよう変向されることを特徴とする液滴分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液滴、特にオイルを気流中から分離することを特徴とした、請求項1の前提部分(気流中から液滴を分離する装置)に記載の液滴分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械の利用においては、多くの場合気体が発生する。該気体には液滴、特に油滴が混入することで所謂エアロゾルが形成され、該エアロゾルは気体流路において下流にある部品に損傷を与える可能性がある。こうした液滴は機械的に、すなわち気体が液体中を通過する過程において、あるいは気体が液体中に導入される際に気体中に取り込まれるか、もしくは構造上の条件によって含有されうる。
【0003】
通常スクリューコンプレッサにおいては空気がオイルと接触する。該オイルはシール、冷却、あるいは潤滑のために用いられ、コンプレッサの圧縮容積に対して1〜5kg/mの比率で含有される。しかしながら、こうしたスクリューコンプレッサにおいては該オイルを除去する必要もあるため、多くの場合圧縮空気から油滴を分離する所謂液滴分離器が用いられる。
【0004】
こうした液滴分離器は、一般的に知られるように慣性力を利用した分離器として構成される。該慣性分離器においては、液滴の有する慣性を利用して、壁面において該液滴を除去する。慣性分離器は特に比較的大きな液滴、すなわち通常直径20μm以上の液滴の除去に適している。
液滴分離器の簡易な形態としては、衝突板がある。液滴を帯びた気流は衝突板に衝突するように導かれ、その結果気流が変向する。一方で気流に含まれる液滴は慣性をもつため移動方向が変向せず、衝突板に衝突しその場から排出される。
【0005】
慣性力を利用した分離器の特別な形態として、遠心力を用いた所謂サイクロンがあり、気流は案内部材により湾曲した流路に誘導される。その際液滴は遠心力により、最大値の曲率半径を有する外側の流路に導かれるため、該液滴は気流の外部領域に沿った壁面において分離され、該壁面から排出されるか、あるいは必要があればシステム内に還流される。
【0006】
上記のようなスクリューコンプレッサにおけるサイクロン式オイル分離器の案内部材は、例として特許文献1(DE 36 42 002 C)に開示されている。該特許文献1によると、案内部材に対して軸方向に流入する被浄化気流は、放射方向外側へベクトルを持つ流れに変向され、その結果液滴は外側の環状流路に誘導される。
【0007】
しばしば、こうした液滴分離装置は多段式分離装置として構成され、前記のサイクロンはプレセパレータあるいはポストセパレータとして使用され、所謂排液部材がメインセパレータとして使用される。該排液部材において、液滴を帯びた気流は網目状あるいは多孔性のいずれかの性質を少なくとも一つ備えた排液構造を通過し、該排液構造は例として金網、プラスチックやグラスファイバー製の不織布等を素材とする。
液滴が排液構造を通過する速度は気流が排液構造を通過する速度よりも遅いため、該液滴は重力にしたがって排液構造における重力方向に低い領域に移動し、その場で集結した後に排出される。この場合、多段式構造において、ある特定の排液構造による結果物である小さい液滴同士が集結、すなわち合体して大きい液滴となり、より効率よく気流から除去可能となる。
【0008】
気流における液滴分離を目的として、複数の分離段階ばかりでなく、サイクロンあるいは排液・液滴合体部材を適応に応じて様々に組合せることが可能である。
しかしながら、例えば構造上の理由からプレセパレータが以下のように設計された場合、すなわち被浄化気流が直接流入する際に、気流が壁面に対して近垂直方向に衝突する流路が選択されるように設計された場合、壁面領域において垂直方向上部に変向した気流はなお多量の液滴を含むため、下流にある排液構造に好ましくない負担がかかる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】DE 36 42 002 C
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、メインセパレータが目詰まりを起こした際に生じる圧損が大幅に回避され、その結果装置の寿命を延長することが出来る液滴分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は気流中から液滴を分離する装置に関する。該液滴分離装置は被浄化気流が導かれるプレセパレート室を備え、該被浄化気流は該プレセパレート室の壁面に衝突後反発し、その結果前記壁面領域における流圧が垂直方向上部に向かって変向する。
さらに、プレセパレータ(プレセパレータ室)の垂直方向上部にメインセパレータが配置され、該メインセパレータは排液部材を備える。該排液部材は外側から内側へ水平方向に被浄化気流を透過し、中央空間において浄化済の気流が垂直方向上側に向かって開放される。
プレセパレート室とメインセパレータの間の案内部材は、閉鎖領域を介して外壁面に設置され、中央には開口部を備える。該案内部材は気流の流路を制限して中央開口部に誘導するが、あるいは中央域部分のみに案内部を設置し、水平方向外側からメインセパレータに向かって流入するよう気流を変向させることも可能である。
【0012】
ここで言う被浄化気流は、例としてスクリューコンプレッサにおけるオイルを含んだ圧縮空気のことである。
本発明によると、オイルは流入気流にともなって壁面に噴射された後、案内部材に誘導されて上方に流れるのが好ましい。この際壁面領域内における案内部材の形状によってオイル流れが制限されるため、メインセパレータあるいは排液部材に対してオイルによる高負担をかけずに済む。したがって、メインセパレータが目詰まりを起こした際に生じる圧損が大幅に回避され、その結果装置の寿命を延長することが出来るため、プレセパレータにおける分離性能を最大限に活用出来るという好ましい効果が生じる。
本発明の装置において、オイルはプレセパレート室における重力方向下部に移動し、その後排出される。
【0013】
本発明の装置は、プレセパレート室、案内部材及び排液部材を備えた状態で好ましくはシリンダー状に実施され、被浄化気流が該気流に対応するように配置された流入口を水平方向に通過して、プレセパレート室における中央空間に流入することにより、液滴を帯びた気流がプレセパレート室において流入口とは対面側にある壁面に十分に衝突することが可能となる。
【0014】
案内部材における案内部は、特に好ましくは案内部材に対して接線(半径)方向に内側から外側に向かって変位しており、そのため気流が排液部材に対して接線(半径)方向に流入する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、メインセパレータが目詰まりを起こした際に生じる圧損が大幅に回避され、その結果装置の寿命を延長することが出来る液滴分離装置を提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スクリューコンプレッサにおける圧縮空気のためのオイル分離装置の略図であり、該オイル分離装置は本発明における案内部材を備える。
【図2】案内部材の第1実施形態における詳細側面図である。
【図3】案内部材の第2実施形態における平面図である。
【図4】案内部材の第3実施形態における平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は図面が示す実施形態によって理解可能である。
【0018】
(第1実施形態)
図1に示すのは、スクリューコンプレッサにおける圧縮空気からオイルを分離する装置1の略図である。該装置については本明細書の導入部分にて詳述済である。
【0019】
液滴あるいは油滴を帯びた気流(圧縮空気)2は流入口3を通って装置1におけるプレセパレート室4に流入する。矢印5は気流が流入口とは対面側にあるプレセパレート室4の壁面6に衝突する流路を示す。さらに該気流は、装置1内での流れ方向において矢印7に沿って上方に変向される。この時点では、気流は多量の運動エネルギーを有するため液滴を大量に含んでいる。すなわち、排液部材を備え、プレセパレータ室より重力方向上部に配置されたメインセパレータ13に該気流が直接衝突した場合、多量の液滴によってメインセパレータの目詰まりが短期間で生じる。
【0020】
図2において側面図の詳細を示す本発明の案内部材8は、閉鎖領域9を介して装置1の壁面と連結する。そのため、矢印7に沿った気流は上方に到達することなく、矢印10に沿って再びプレセパレータ(プレセパレート室)4に還流する。
以上のように、大量の液滴がプレセパレータ(プレセパレート室)4内に保持されメインセパレータ13の目詰まりが回避可能となる。
【0021】
案内部材8における中央開口部11を通過した被浄化気流は、矢印12に沿ってメインセパレータ13に対して水平方向に到達し、メインセパレータ13の下流に移動した後、矢印14に沿って装置から排出される。
【0022】
(第2、第3実施形態)
図3及び図4において、外周側の閉鎖領域9によって支持される中央開口部11より、気流を内側から外側に向かって接線(半径)方向に変向させながらメインセパレータ外周側に導く羽根状案内部15及びリング円に設けた環状羽根16の異なる実施形態を示す。
該案内部により気流は接線(半径)方向に変向し、矢印12に沿って開口部11を通過し、図1に示すようにメインセパレータ13の外側へ誘導される。
【符号の説明】
【0023】
液滴分離装置 1
プレセパレート室 4
壁面 6
案内部材 8
閉鎖領域 9
中央開口 11
案内部 15、16
メインセパレータ 13

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流中から液滴を分離する装置であって、
該装置は被浄化気流が流入するプレセパレート室4を備え、該プレセパレート室4により前記被浄化気流が該プレセパレート室4の壁面6において反発した後、壁面領域における流圧により垂直方向上方に(矢印7)変向し、
排液部材を備えたメインセパレータ13が前記プレセパレート室4の垂直方向上部に配置され、前記メインセパレータ13は前記被浄化気流を外側から内側に水平方向に(矢印13)透過し、その後中央域において浄化済の気流を垂直方向上方へ(矢印14)変向させるために前記プレセパレート室4と前記メインセパレータ13の間に案内部材8が設置され、該案内部材8は外壁面部に気流の流路を制限する閉鎖領域9を、中央域で気流を通過させる中央開口部11を備え、該中央開口部11に配置された案内部15及び16により、気流が前記メインセパレータ13の外周側に向けて水平方向外側に流入するよう変向されることを特徴とする液滴分離装置。
【請求項2】
前記プレセパレート室4、前記案内部材8及び前記排液部材がシリンダー状に構成されることを特徴とする請求項1に記載の液滴分離装置。
【請求項3】
前記被浄化気流が前記プレセパレート室4の中央空間に水平方向に流入し、その結果該気流が前記プレセパレート室4において流入口とは対面側にある前記壁面6に十分に衝突することを特徴とする請求項1または2に記載の液滴分離装置。
【請求項4】
前記案内部材8における前記案内部15及び16が案内部材8に対して接線(半径)方向に内側から外側に向かって変位して設置され、そのため気流が前記プレセパレータ13の前記排液部材に対して接線(半径)方向に流入することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1に記載の液滴分離装置。
【請求項5】
前記被浄化気流がスクリューコンプレッサにおけるオイルを帯びた圧縮空気であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1に記載の液滴分離装置。
【請求項6】
前記オイルが前記プレセパレータ4内で重力方向下方に誘導された後排出されることを特徴とする請求項5に記載の液滴分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−500320(P2011−500320A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530416(P2010−530416)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064102
【国際公開番号】WO2009/053326
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(505229863)マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (86)
【Fターム(参考)】