説明

気液並行下降流態様で操作する固定床反応器のためのオーバーフロー管を有する事前分配ろ過板

本発明において記載される機器は、フィルタ媒体と、前記機器の下流に位置する分配器板上に到着する液体の流量を調節するためのオーバーフロー管とを含む板を事前分配することによって、下降する気/液並流態様で操作する反応器に給送する気/液仕込原料を事前分配するために用いられる。本発明の機器は、より特定的には、アセチレンおよびジエン化合物を含む仕込原料の選択的水素化処理に適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体および液体を用い、気液併行下降流態様で操作する化学反応器への供給を目的とした分配器板の分野に関する。
【0002】
そのような反応器は、精製分野において、より特定的には種々の石油留分の選択的水素化の反応において、より一般的には、高圧下の水素の流れを必要とする水素化処理において遭遇され、固体閉塞性粒子によって構成される不純物を含み得る重質液体仕込原料で操作する。
【0003】
場合によっては、液体仕込原料は、不純物を含んでおり、その不純物は、触媒床自体の上に析出して、時間の経過とともに、その触媒床の間隙容積を低下させる恐れがある。
【0004】
挙げられ得る閉塞性の液体仕込原料は、炭化水素の混合物を含み、この混合物は、3〜50個、好ましくは5〜30個の炭素原子を含み、場合によっては、無視できない割合の不飽和もしくは多不飽和化合物のアセチレン系もしくはジエン系化合物またはそれら各種化合物の混合物を含み、不飽和化合物の合計割合は、仕込原料中90重量%にもなる。
【0005】
本発明が関わる、挙げられ得る仕込原料の代表的な例は、熱分解ガソリンであり、「熱分解(pyrolysis)」は、当業者に公知の熱分解法を指している。
【0006】
本発明は、触媒床内部における閉塞性粒子の析出を抑制するとともに、本発明の機器の下流に位置する分配器板に到達する液体の流れを調節することができる。この理由から、本発明の機器は、事前分配(pre-distribution)ろ過板またはろ過事前分配器として記載される。
【0007】
本発明の事前分配器の下流に位置する分配器板は、ベンツを含む分配器板であり、該ベンツは、気体と液体とを混合し、最小の液体レベルを有する。一例として、そのような下流の分配器板は、番号FR-2 889 973で出願された仏国特許出願に記載されているのと類似のものであり得る。
【0008】
本発明に記載の事前分配器は、閉塞性の液体仕込原料で操作する反応器の容量を増大させ、下流の分配器板(以後、簡単のために「下流板」と呼ぶことになる)に液体を均質に供給することが保証する。
【0009】
触媒床の中で障害が発生すると、その反応器を通過する流れの圧力降下が増大することが直ちに観察される。
【0010】
圧力降下は、オペレーターがやむなく反応器を停止させ、触媒の一部または全部の交換をすることになるが、このことは明らかに、プロセスサイクルタイムにおけるかなりの低下の原因となる。
【0011】
触媒床の一部における障害の原因は、多くの機構に起因し得る。
【0012】
直接的には、仕込原料流の中に粒子が存在しているために、前記粒子が触媒床の中で析出して、触媒床の空隙率を低下させることにより障害が起きる可能性がある。
【0013】
間接的には、望ましくない化学反応による副生物(その副生物は、総称して「コーク」として知られており、触媒粒子の表面に析出する)の層が形成されることもまた、床の空隙率の低下の原因となり得る。
【0014】
さらに、閉塞性粒子の析出は一般的に床の内部でランダムに起きるために、前記床からの空隙率の分布に不均質性を起こす可能性があり、それによって、下降流態様で移動する液相に偏った(preferential)経路が生じることとなる。
【0015】
そのような偏った経路は、流体力学的な観点からは極端に不利となるが、その理由は、それらによって、床における相の流れの均質性が著しく乱されて、化学反応の進行に関して不均一性をもたらす可能性が有り、また熱的な観点からも不利である。
【0016】
本発明は、そのような現象が起きる可能性を低減させることができる。それらが起きた場合にも、閉塞によって停止させることが必要になる前に、反応器の運転の操作時間を増やすことができる。
【背景技術】
【0017】
特許文献1および特許文献2には、触媒床の中で発生する圧力降下を低下させ、管を通して流れの一部を偏向させることによってその上昇を最小にすることが可能な機器が記載されている。短回路を形成する一連の管は、触媒床を貫通している。前記管のための入口は、分配器板の下流に位置しており、前記管からの出口は、異なるレベルにおいて触媒床への入口の上方に開口している。したがって、このシステムは、液体のレベルが、床の上流に確立されている限り、気体および液体の流れを独立して偏向させることができる。引用された特許に記載されている機器は、前記のシステムを含む管中の偏向させられた液体と気体の流れとの間の比率を制御することができない。気体は、反応器の運転が開始された時点から偏向させられるが、液体は、ファウリング(fouling)に起因して床の上に十分な液体レベルが確立されてはじめて、偏向させられる。
【0018】
さらに、上記2件の引用特許に記載されている機器からの出口では、流体分配効果は存在せず、そのため、分配器板またはそれと等価なシステムを、その機器の下流におくことを必要とする。本発明の場合では、本発明の機器が下流に置かれた分配器板と組み合わされているとしても、分配機能の一部はろ過システムに組み込まれていて単一の機器となっている。
【0019】
特許文献3では、その発明が関わっている板は、一連のろ過装置によって構成されており、それぞれは、中空のチャンバーと「ろ過体(filtration body)」が充填されたチャンバーとを同心的に交互に配することによって構成されているが、詳細な記述はない。
【0020】
そのようなシステムでは、ろ過機能は、混合および分配機能から完全に分離されているが、それに対して本発明の機器では、ろ過床と、気体のためのベンツおよび液体のための板中のオリフィスによって提供される分配とが一体化されている。
【0021】
本発明の板と一体化されたオーバーフロー管は、下流板の気/液界面を安定化させるように機能し、それによって、前記下流板に液体を均一に供給するのに役立つ。
【0022】
本発明に記載された機器は、下流に位置する分配器板と組み合わされていて、液体の流れにおけるいかなる突然の乱れからもそれを保護する効果を有している。
【0023】
本装置は、仕込原料の第一のろ過を行うために用いられ得、この第一のろ過は、ろ過要素を備えている場合には分配板において完了されてもよい。これは、特許文献4において記載された板を有する場合と同様である。しかしながら、本発明の機器は、仕込原料ろ過要素を含まない下流の分配器板と結合されてよく、この場合、本発明の機器は、それ自体でろ過機能を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第4313908号明細書
【特許文献2】欧州特許第0050505号明細書
【特許文献3】米国特許第3958952号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第2889973号明細書
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の事前分配ろ過板の図を示し、前記板は、特許出願FR-2 889 973に記載されているように、分配器板の上流に置かれている。
【図2】図2は、本発明の事前分配器板と、それに続く下流分配器板(それ故に触媒床事態の下流)を備えた反応器の全体図を示し、気体および液体仕込原料は、触媒床に沿って並行下降流態様で流れる。
【図3】比較例において用いられる図3は、本発明の機器を有するまたは有しない触媒床中の2点の間で起きる圧力降下の時間経過に伴う変化を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
(発明の簡単な説明)
本発明に記載された機器は、ろ過媒体を含む事前分配板によって、気液併行下降流態様で操作する反応器の液体仕込原料を構成する液体の流れに含まれる閉塞性粒子を捕捉することができる。
【0027】
この事前分配板はさらに、少なくとも1本の管(「オーバーフロー管」と呼ばれる)を備えているが、それは、実質的に垂直であり、その下端は、下流の分配器板から距離Diのところに位置しており、前記距離Diは、300mm未満、好ましくは、200mm未満となるようにされる。
【0028】
本発明の機器の一つの好ましいバリエーションにおいて、オーバーフロー管は、下流の分配器板の液相の中に浸漬し、液体仕込み原料の流量に深刻で突然の変動が起きたならば、その変動によって起きる影響が、下流の分配器板において弱められるようになっている。
【0029】
したがって、本発明の機器は、液体の流れのろ過および調節の二重の機能を提供する。さらに、それは、気体および液体を良好に分配するのにも役立つが、その理由は、液体の大部分は、事前分配板の基部上に設けられたオリフィスを通過して流れ、気体は事前分配板の断面(section)の全体にわたって規則的に分配されたベンツ(bents)を通過して流れるからである。
【0030】
より正確には、本発明の機器は、気液併行下降流態様で操作する触媒反応器への供給を構成している気相および液相をろ過および事前分配するための板として定義され得るが、その液相は閉塞性粒子と共に仕込まれ、前記事前分配板は、分配器板(「下流」分配器板(10)と呼ばれる)の上流に位置し、以下のものから構成されている:
・ 直径d0を有するオリフィス(7)により孔空けされたプレート(1)、これは実質的に水平であって、反応器の壁面と一体化されており、その上には実質的に垂直なベンツ(3)が固定されており、ベンツは、それらの上端に開口して気体を受け入れ、それらの下端において前記気体を排出し、前記板は、ベンツ(3)を取り巻くろ過床(2)を支持している;
・ 液体オーバーフローとしての役割を果たす少なくとも1本の管(4)(「オーバーフロー管」と呼ばれる)、これはベンツ(3)の上端のレベルの下方に位置する上方レベルから下流の分配器板の基部から距離Diに位置する下方レベルまで実質的に垂直に延び、Diは300mm未満、好ましくは200mm未満である。
【0031】
本発明の機器の好ましいバリエーションにおいて、オーバーフローとしての役割を果たす管(4)は、下流の分配器板(10)の上の液相の中に位置する下方レベルにまで延びている。
【0032】
好ましくは、本発明の機器におけるろ過床は、固体粒子の複数の層によって構成されるが、それらは一般的には不活性であるが、場合によっては触媒的に活性であってもよい。
【0033】
ろ過床は、前記機器のオリフィス(7)の直径d0から30mmを超えない値までの範囲の寸法を有する粒子の単一の層によって構成され得る。
【0034】
好ましくは、ろ過床は、少なくとも2つの粒子層を含み、この場合、上側の第1の層は、直径10〜30mmの範囲の不活性粒子により構成され、下側の第2の層は、直径2〜10mmの範囲の不活性粒子により構成される。
【0035】
好ましくは、気体の流れに作用するベンツ(3)は、事前分配板の全断面にわたって規則的に分散させられ、ベンツの密度は、床断面面積(m)当たり10〜150本の範囲、好ましくは30〜100本の範囲である。
【0036】
板上へ液体の通過を可能にするオリフィス(7)の直径d0は、好ましくは2〜10mmの範囲、より好ましくは3〜6mmの範囲である。
【0037】
オーバーフロー管(4)の直径Dtおよび前記オーバーフロー管からの出口オリフィス(6)の直径dsは、好ましくは、反応器の直径Drの関数として計算され、液体の流量における突然の乱れに容易に適応することができ、決して、下流の分配器板(10)上の液相をかき乱すことがない。
【0038】
オーバーフロー管(4)の直径Dtは、反応器の直径Drに応じて大きくなるが、好ましくは40〜350mmの範囲、より好ましくは70〜250mmの範囲である。
【0039】
前記オーバーフロー管からの出口オリフィス(6)の直径dsは、反応器の直径Drに応じて大きくなるが、好ましくは30〜300mmの範囲である。
【0040】
オーバーフロー管からの出口オリフィス(6)の正確な直径dsは、液体放出のための速度規準、好ましくは150cm/s未満、より好ましくは120cm/s未満を満足させるように決められる。
【0041】
ろ過床の全高Htは、好ましくは100〜800mmの範囲、より好ましくは200〜600mmの範囲である。
【0042】
好ましくは、本発明の事前分配板のベンツ(3)は、ろ過床の上側レベルを5〜100mmの範囲の高さHcだけ超える。場合によっては、液体の流入を防止するために、気体を流すことを目的としたベンツ(3)の上端にキャップが設けられる。この場合、そのキャップの直径は、好ましくは、ベンツ(3)の直径より10mm大きい。
【0043】
同様にして、オーバーフロー管(4)の中に気体が入り込むことを抑制するために、それぞれのオーバーフロー管(4)の上側部分にキャップ(5)が設けられてもよい。この場合、キャップ(5)の直径は、好ましくは、前記オーバーフロー管(4)の直径Dtよりも少なくとも10mm大きい
好ましくは、それぞれのオーバーフロー管(4)の上側部分は、ろ過床(2)の内側に含まれるように留まっている。ろ過床(2)の上側レベルでフラッシュするオーバーフロー管(4)の特定の場合は、本発明の範囲内に完全に包含される。
【0044】
本発明の事前分配板は、下流に位置する分配器板(10)に供給することができる。前記分配器板は、いかなるタイプのものであってもよいが、特には、特許出願FR-2 889 973に記載されているものに相当するタイプである。
【0045】
好ましくは、下流の分配器板(10)は、気体を流すためのベンツを含み、前記ベンツは、前記ベンツの側壁中に貫通した横長のスリットまたはオリフィスを有していて、ベンツの内側に液体が入り込むことが可能となっており、ベンツ中で気相との混合が起きている。前記気液混合機能は、事前分配板のベンツ(3)では望ましいことではないので、一般的にはそれには横長の開口部を有していない。
【0046】
事前分配板と下流の分配器板とを分離している距離Dcは、機器の基部面が、下流の分配器板(10)の最も高い部分から50mm超に位置するようにされる。「下流の分配器板の最も高い部分」という表現は、最も高いところにある、前記板の終端を意味する。一般的には、それは、図2に見られるように、下流の分配器板(10)に提供されたベンツの上端である。
【0047】
本発明の機器は、気液併行下降流態様の機能を有し、閉塞性の液体仕込原料について操作する、あらゆるタイプの反応器に適用され得る。
【0048】
特に、本発明の事前ろ過分配機器は、水素化処理反応器、選択的水素化反応器、または残油を転化するためもしくは3〜50個、好ましくは5〜30個の炭素原子を含む炭化水素留分を転化するための反応器において使用され得る。
【0049】
本発明のろ過および分配機器は、反応器において使用される触媒のサイクル周期を顕著に延長することが可能であるが、これについては下記実施例において例証する。ろ過床の定期的な交換は、通常、少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも9ヶ月の周期で実施される。
【発明を実施するための形態】
【0050】
(発明の詳細な説明)
図1および2を参照しながら、本発明を説明する。
【0051】
本発明の機器は、事前分配板からなり、該事前分配板は、実質的に水平な基部面(1)(以下においては「基部面」と呼ぶ)を含み、この基部面(1)は、反応器の壁と一体化されており、基部面(1)上には、一群の実質的に垂直なベンツ(3)が固定されており、該ベンツ(3)は、ろ過床(2)の上側レベルの上方に位置する上側開口部と、板(1)の水平面のレベルに実質的に位置する下側開口部とを備えている。
【0052】
基部面(1)にはオリフィス(7)が貫通しており、このオリフィス(7)は、直径d0を有しており、板(1)の断面全体にわたって規則的に分布させられている。
【0053】
供給物の気体部分が、上側開口部を介してベント(3)に浸透し、供給物の液体部分が、ろ過床(2)の上に導入され、その中で徐々に分散させられ、基部面(1)に切り出されたオリフィス(7)を介して板を出る。
【0054】
分配器板は、フィルタとしての役割を果たす粒状固形物の少なくとも1層によって構成されるろ過床(2)を支持し、前記固形物の粒状床は、それぞれのベンツを取り囲んでいる。
【0055】
ベンツ(3)は、好ましくは、ろ過床のレベルより上に、5〜100mmの範囲の高さHcだけ突出している。
【0056】
ろ過床は、あらゆる形状を有する粒子の複数の層を含み得る。
【0057】
ろ過床のそれぞれの層を構成する粒子のサイズは、好ましくは、そのろ過床の上部から下部へと行くにつれて小さくなる。
【0058】
下部層(または最下層)の粒子の平均サイズは、好ましくは、分配器板の下流に位置する触媒床を構成する触媒の粒子サイズよりも小さい。
【0059】
通常、しかし系統立ててという訳ではなく、それぞれの層の粒子サイズは、2〜30mmである。
【0060】
本発明のろ過および分配機器のバリエーションにおいて、ろ過床は、少なくとも2つの固体粒子層からなり、所与の層の粒子サイズは、直上の層の粒子サイズよりも小さい。
【0061】
本発明の機器の特定のバリエーションにおいて、ろ過床の上側の層の粒子サイズは、10〜30mmの範囲であり、下側の層の粒子サイズは、2〜10mmの範囲である。
【0062】
純粋に例証の目的で、かつ、何等の形の制限を構成することなく、本発明の機器によるろ過床は以下のもので構成されていてよい:
・ ろ過床の全高の25%を示す上側層:ACT 068タイプの粒子からなり、25m
・ mサイズである;
・ ろ過床の全高の25%を示す中間層:ACT 108タイプの粒子からなり、8mmサイズである;
・ ろ過床の全高の50%を示す下側層:触媒粒子のサイズ以下のサイズを有する不活性粒子からなる。
【0063】
ろ過床を形成する粒子は、いかなる形状、例えば、球状または円筒状などを有していてもよく、また内部空隙容量を有していても、有していなくてもよい。それらは一般的には不活性であるが、場合によっては触媒性であってもよい。この後者の場合、ろ過床の活性粒子は、好ましくは、ろ過床の下流に位置する触媒床において使用される触媒と同一の族からの触媒によって構成される。
【0064】
ろ過床はまた、高い空隙率を有しながらも、不純物を捕捉するための大きな面積を与える充填要素、たとえばJOHNSONスクリーン要素によって構成され得る。
【0065】
複数の層を有するろ過床の組成の一例を、以下の詳細な実施例の記述において与える。
【0066】
関連する工業的反応器のほとんどにおいて、ろ過床の全高は、好ましくは100〜800mm、より好ましくは200〜600mmの範囲である。
【0067】
ベンツの内径は、好ましくは10〜150mmの範囲、より好ましくは25〜80mmの範囲である。
【0068】
ベンツ(3)は、好ましくは150〜600mmの範囲、より好ましくは300〜500mmの範囲の距離によって規則的に間隔が空けられる。
【0069】
ろ過床は、下側の層から始まって、時間の経過とともに徐々に閉塞し、界面が、下側の閉塞された部分と、上側の閉塞していない部分との間で生じさせられる。
【0070】
液体は、ろ過床の上側の閉塞されていない部分の上を通ってろ過床中を通過し、オーバーフロー管(4)の上側のレベルに達することによって終わる。次いでそれは前記オーバーフロー管中を通過して、下流の分配器板(10)の近くに、好ましくは下流の分配器板(10)の液相の中に直接導入されるようになる。
【0071】
気相は、ベンツの上側開口部から下側開口部へとベンツ中を通過する。
【0072】
ベンツの上側開口部は、好ましくは、ろ過床より上の、5〜100mmの範囲である高さHcに位置する。ベンツ(3)の上側開口部は、ベンツの前記上側開口部を介した液体の直接的導入を防ぐことを目的とするキャップまたは任意の等価な形状によって保護され得る。この場合、ベント(3)の上端をコートするキャップの直径は、前記ベンツの直径よりも10mm大きい。
【0073】
同様にして、オーバーフロー管すなわち管(4)も、気体の導入を防止するために、キャップまたは任意の等価な形状物を備えてもよい。
【0074】
図1では、オーバーフロー管(4)は、前記オーバーフロー管の直径よりも直径が10mm大きいキャップを備え、オーバーフロー管への気体の任意の流入が可及的に低減させられている。
【0075】
図2では、オーバーフロー管は、下流の分配器板の液相の中に浸漬しており、これは、好ましい構成に相当する。
【0076】
例証の目的で、図1は、上から下まで4層によって構成されたろ過床を示している:
・ 第1の層I:厚さ100mmであり、不活性なACT 068タイプの直径25mmのビーズによって構成されている;
・ 第2の層II:厚さ100mmであり、不活性なACT 108タイプの直径8mmのビーズで構成されている;
・ 第3の層III:厚さ200mmであり、直径2mmの触媒粒子で構成されている;
・ 第4の層IV:直径6.3mmのアルミナビーズである。
【0077】
ACTという用語は、Salindres(Gard)に本拠を置くCTIによって販売されているビーズの商品名である。
【0078】
(実施例)
以下の実施例は、2種の構成の選択的水素化反応器の間を比較例である:
・ 構成A:単一の分配器板を有する;
・ 構成B:構成Aの分配器板を有するが、それに先行して、本発明によるオーバーフロー管を有する事前分配板を有する。
【0079】
反応器は、1メートルの直径および本発明の事前分配板、下流の分配器板および触媒床を含めて5メートルの全高を有していた。
【0080】
触媒床は、選択的水素化を実施するための、慣用される触媒の粒子からなっていた。それは、Niをアルミナ担体上に沈着させて含む触媒であった。
【0081】
下流側の分配器板の下流に位置する触媒床を形成する触媒粒子のサイズは2mmであった。
【0082】
反応器への供給物は、液体部分と気体部分とからなっていた。
【0083】
液体は、50〜280℃の範囲の蒸留範囲を有し、標準条件下に120℃の平均沸点を有する熱分解ガソリンによって構成されていた。
【0084】
気相は、90モル%の水素からなっており、残りは原則的にメタンであった。
【0085】
本発明の事前分配板には以下のものを有していた:
・ 前記板にわたって規則的に分布させられた、直径50mmの10本のベンツ;
・ 直径45mmのオリフィスを備えた、直径50mmの1本のオーバーフロー管;
・ 厚さ40cmの下側層と厚さ10cmの上側層とによって構成されるろ過床。
【0086】
下側層は、直径2mmのアルミナ粒子によって構成され、上側層は、直径25mmのACT 068タイプの粒子により構成されていた。
【0087】
オーバーフロー管は、下流側の分配器板の液相に浸漬されていた。
【0088】
下流の分配器板は、直径25mmおよび高さ175mmの40本のベンツを有しており、各ベンツは、3段階に配置された横長の穴を備えており、液体がベンツに導入され、液体を気体と混合することが可能になっていた。
【0089】
反応器の操作条件下の気体と液体の特性を下記表Iに示す。
【0090】
【表1】

【0091】
図3に示されたグラフは、本発明の事前分配板有りの場合(グラフA)および事前分配板無しの場合(グラフB)の、触媒床の2点の間の圧力降下の変化を示している。
【0092】
縦座標に示された圧力降下は、初期値に対して規格化され、これは、当該技術において周知である相関を用いて決定され、横座標に沿う時間は、10時間の単位で測定された。
【0093】
本発明の事前分配板は、時間の経過に伴って圧力降下、より特定的にはその増加を低減させ得ることが理解され得る、80の時間単位(800時間)の後に、相対的な圧力降下は、事前分配板有りで1.3であり、事前分配板無しで1.7であった。
【0094】
本発明の事前分配板の効果を評価するまた別の方法は、触媒床における圧力降下についての限界許容値を固定し、前記の値に達するそれぞれの時間、すなわち事前分配板有りの場合のTaと、事前分配板無しの場合のTbとを測定することである。TaとTbの間の差(Ta−Tb)は、数ヶ月、典型的には3ヶ月程度のものであり得るが、このことは、閉塞が原因で停止するまでの反応器の運転期間が顕著に長くなったことを表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液併行下降流態様で操作する触媒反応器のための供給物を構成する気相および液相をろ過および事前分配するための機器であって、液相は、閉塞性粒子を満たされており、前記機器は、「下流」分配器板と称される分配器板の上流に位置し、
・ 直径(d0)を有するオリフィス(7)により孔空けされた板;これは、実質的に水平であり、反応器の壁と一体化されており、該板の上に、実質的に垂直なベンツ(3)が固定され、該ベンツ(3)は、それらの上端において開口し、気体を受け入れ、それらの下端において気体を排出し、前記板は、ベンツを取り囲むろ過板を支持している;
・ オーバーフローとしての役割を果たす少なくとも1本の管(4)(オーバーフロー管(4)と称される);ベンツの上端のレベルの下方に位置し、かつ、ろ過床(2)の内部に含まれた状態に留まる上側レベルから、下流の分配器板の基部から距離(Di)に位置する下側レベルまで実質的に垂直に延び、(Di)は、300mm未満、好ましくは200mm未満である;
により構成され、
前記ろ過床は、前記機器のオリフィス(7)の直径(d0)から30mmを超えない値にわたる範囲のサイズを有する粒子の少なくとも1層によって構成される、機器。
【請求項2】
オーバーフローとしての役割を果たす管(4)は、下流の分配器板の上の液相の中に位置する下側レベルまで延びている、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記ろ過床が、上側の第一層が10〜30mmの範囲の直径を有する不活性粒子により構成され、下側の第二層が2〜10mm範囲の直径を有する不活性粒子により構成された、粒子の少なくとも2層により構成されている、請求項1または2に記載の機器。
【請求項4】
ベンツ(3)の密度は、床断面の面積(m)当たり10〜150本の範囲、好ましくは30〜100本/m(床断面面積)の範囲である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の機器。
【請求項5】
板上へ液体を通過させるためのオリフィス(7)の直径(d0)は、2〜10mmの範囲、好ましくは3〜6mmの範囲である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の機器。
【請求項6】
オーバーフロー管の直径(Dt)は、反応器の直径(Dr)に応じて大きくなり、40〜350mmの範囲、好ましくは70〜250mmの範囲である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の機器。
【請求項7】
オーバーフロー管の出口オリフィスの直径(ds)は、反応器の直径(Dr)に応じて大きくなり、30〜300mmの範囲である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の機器。
【請求項8】
ろ過床の全高(Ht)は、100〜800mmの範囲、好ましくは200〜600mmの範囲である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の機器。
【請求項9】
板のベンツは、ろ過床の上側レベルを、5〜100mmの範囲の高さ(Hc)で超える、請求項1〜8のいずれか1つに記載の機器。
【請求項10】
各オーバーフロー管の上側部分は、気体を制限するキャップを備え、その直径は、前記オーバーフロー管の直径(Dt)より少なくとも10mm大きい、請求項1〜9のいずれか1つに記載の機器。
【請求項11】
事前分配板を下流の分配器板から分離している距離(Dc)は、機器の基部面は、下流の分配器板の最上部から高くとも50mmに位置するようにされる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の機器。
【請求項12】
水素化処理反応器、選択的水素化装置、残油転化反応器または3〜50個、好ましくは5〜30個の炭素原子を含む炭化水素留分を転化するための反応器における、請求項1によるろ過および事前分配機器の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−507677(P2011−507677A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538824(P2010−538824)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/FR2008/001502
【国際公開番号】WO2009/092875
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(509119887)イエフペ (21)
【Fターム(参考)】