説明

気液分離液体サイクロン及び気液分離システム

【課題】定置洗浄が可能であるとともに、第一出口側及び第二出口側の両方の流体流路の洗浄を過不足なく行える気液分離液体サイクロンを提供する。
【解決手段】液体分が取り出される第一接続路73を遮断可能な第一弁74と、気体分が取り出される第二接続路75を遮断可能な第二弁76とをそれぞれ設け、気液混合液を気液分離する通常運転状態においては、第一弁74及び第二弁76の両方を開状態に維持し、液入口7cから洗浄液を受け入れる洗浄運転状態においては、第一弁74及び第二弁76を交互に開状態とする弁制御手段77を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象液である気液混合液を受け入れる液入口と、前記気液混合液を遠心力により気液分離して、液体分を主とする第一成分を送り出す第一出口と、気体分を主とする第二成分を送り出す第二出口とを備えた気液分離液体サイクロン及びこの気液分離液体サイクロンを用いた気液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の気液分離液体サイクロンは、例えば、特許文献1に示されるものがある。この特許文献1に記載のものも、本願と同様に例えば、飲用飲料の処理において、気液分離を良好に行おうとするものである。
気液分離液体サイクロンは、本願と同様に機器内で気液分離対象液の旋回流を発生させ、質量差にもとづいて、気体分と液体分とを分離するものである。この特許文献1に記載の気液分離液体サイクロンでは、液体分が多孔状に形態された分離円錐の外面に遠心力により押し付けられ、液体分のみがろ過分離され、上方に取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−85905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先にも示したように、気液分離液体サイクロンは、飲用飲料等の食品業界で使用される場合がある。食品業界では、例えば、一定品種を連続的に製造している場合は定期的に、異なった品種を製造する場合は、品種が変わる毎に、装置の洗浄を行う必要がある。
しかしながら、特許文献1に記載の気液分離液体サイクロンでは、当該装置が比較的複雑な構造を有するため、その洗浄は、気液分離液体サイクロンを製造ラインから取り外し、分解等して洗浄する必要があった。
このような所謂、非定置洗浄、分解洗浄は、装置の運転効率を低下させるとともに、余分な労力を必要とし、好ましくない。
さらに、気液分離液体サイクロンは、液体分の出口(本願にいう第一出口)と気体分の出口(本願にいう第二出口)との両方を備え、通常の運転状態では、その両方から何らかの成分が送り出される。これに対して、当該気液液体サイクロン内に洗浄液を送り込み、洗浄を定置で(製造ラインに取り付けたまま)行おうとすると、液分は主に液体分の取り出し側である第一出口側を流れるため第二出口側の洗浄が充分、行えない場合もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、所謂、定置洗浄が可能であるとともに、その定置洗浄においても、第一出口側及び第二出口側の両方の流体流路の洗浄を過不足なく行える気液分離液体サイクロンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る、処理対象液である気液混合液を受け入れる液入口と、前記気液混合液を遠心力により気液分離して、液体分を主とする第一成分を送り出す第一出口と、気体分を主とする第二成分を送り出す第二出口とを備えた気液分離液体サイクロンの第1特徴構成は、前記第一出口の下流側に接続される第一接続路に、当該第一接続路を遮断可能な第一弁を、前記第二出口の下流側に接続される第二接続路に、当該第二接続路を遮断可能な第二弁をそれぞれ設け、
前記気液混合液を気液分離する通常運転状態においては、前記第一弁及び第二弁の両方を開状態に維持し、前記液入口から洗浄液を受け入れる洗浄運転状態においては、前記第一弁及び第二弁を交互に開状態とする弁制御手段を備えて構成した点にある。
【0007】
上記第1特徴構成を備えた気液分離液体サイクロンは、弁制御手段の働きにより、通常運転時には、前記第一弁及び第二弁の両方を開状態に維持し、第一出口から液体分を主とする第一成分が送り出され、第二出口から気体分を主とする第二成分が送り出される。
一方、洗浄運転状態においては、洗浄液を気液分離液体サイクロン内に受け入れるのであるが、本願に係る気液分離液体サイクロンでは、弁制御手段の働きにより、少なくとも前記第一弁及び第二弁を交互に開状態とされる(他方の弁は閉状態とする)洗浄運転状態が実現される。この交互の開状態は、単一回だけ両方の弁が順に開状態とされる(他方の弁は閉状態とする)ものであってもよいし、開状態とする弁の切換えが繰り返されてもよい。前者の場合は、開状態に維持する時間を比較的長時間として、洗浄対象の部位の洗浄を確実に行える。一方、後者の場合は、洗浄液の脈動を利用して、汚れの剥離等を促すことができる。
【0008】
本発明に係る気液分離液体サイクロンの第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記液入口を側部に前記第二出口を上部に備えた二重円筒形状の上側本体部と、前記上側本体部の下に連結され、下部に前記第一出口を備えた円錐形状の下側本体部とを備えて構成され、前記上側本体部の内筒の口径dが前記下側本体部の最小口径cより大きい点にある。
このような構造を採用することにより、洗浄運転状態に制御される定置洗浄時に気液分離液体サイクロンにより発生する圧力損失が、通常運転状態に制御される製品運転時より大きくならないため、気液分離液体サイクロンより上流側の状態を製品運転時の設定のままで、良好に洗浄を行える。
【0009】
本発明に係る気液分離液体サイクロンの第3特徴構成は、前記液入口を側部に前記第二出口を上部に備えた二重円筒形状の上側本体部と、前記上側本体部の下に連結され、下部に前記第一出口を備えた円錐形状の下側本体部とを備えて構成され、前記上側本体部の外筒の口径a1に対する前記上側本体部の内筒の口径dの比であるd/a1が0.5以下の関係にある点にある。
このような構造を採用することにより、通常運転状態に制御される製品運転時において、第二出口からの液体分の極端な流出がないようにできる。
本発明に係る気液分離液体サイクロンの第4特徴構成は、前記液入口を側部に前記第二出口を上部に備えた二重円筒形状の上側本体部と、前記上側本体部の下に連結され、下部に前記第一出口を備えた円錐形状の下側本体部とを備えて、前記上側本体部内の天面と内筒の交差部を曲面で構成した点にある。
このような構成を採用することにより、接液部の角(上側本体部の天面と内筒の交差部)に汚れが溜まりにくく、定置洗浄において良好に洗浄を行うことができる。
【0010】
本発明に係る気液分離システムの第1特徴構成は、上記第1から第4の何れかの特徴構成を備えた気液分離液体サイクロンから送り出される前記第一成分及び前記第二成分の両方を受け入れる気液分離タンクを備え、
前記気液分離タンクに貯留される液体分のみを取り出し可能に構成されている点にある。
この気液分離システムでは、気液分離が比較的難しいマイクロバブルが含まれていても、そのマイクロバブルを気液分離タンクに形成される液面に良好に浮き上がらせて分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願に係る気液分離液体サイクロンを採用した殺菌・充填システムの構成を示す図
【図2】気液分離液体サイクロンの詳細構成を示す図
【図3】第一弁、第二弁の開閉タイミングを示すタイミングチャート
【図4】本願の別実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の気液分離液体サイクロン7を、殺菌済みの処理対象液aを充填機3に送り、当該処理対象液aを容器2に充填する殺菌・充填システム1に使用した場合について、図1に基づいて説明する。
【0013】
この殺菌・充填システム1は、調合タンク4に貯留されている処理対象液aを、殺菌処理して充填機3に送り、容器2に充填するように構成されている。ここで、処理対象液aとしては、ミネラルウオータ、コーヒー飲料、お茶飲料、果汁飲料等、水相当の粘度の飲料等を挙げることができる。一方、容器2としては、缶、ビン、PETボトル等、前記処理対象液aが充填される容器であればどのようなものでもよい。
【0014】
図1に示すように、殺菌・充填システム1の入り側において、処理対象液aは、調合タンク4、殺菌機バランスタンク5(バランスタンクの一例)に貯留されるため、処理対象液aは、ほぼその飽和状態近くまで溶存ガスを含んだ状態となる。
【0015】
殺菌・充填システム1は、処理対象液aを昇圧するとともに昇温する第一処理機構101と、第一処理機構101により処理済みの昇圧・昇温状態にある処理対象液aを、降温する第二処理機構102とを備え、前記第二処理機構102により降温された処理対象液aを、弁機構6aを介して常圧に戻して取り出し可能に構成されている。そして、前記弁機構6aを介して送り出される処理対象液aを受入れる気液分離液体サイクロン7と、この気液分離液体サイクロン7から送り出される液体分を主とする第一成分と気体分を主とする第二成分との両方を受入れる気液分離タンク8を備え、当該気液分離タンク8からタンク内の液体分を、取り出し可能に構成されている。ここで、当該気液分離タンク8からの液体分の取り出しは、クッションタンク送液ポンプ9により行われ、サージタンク10で一旦貯留された後、充填機3に送り込まれる。図2に、気液分離液体サイクロン7の構造を示した。図2(a)が横断面図であり、図2(b)が縦断面図である。
【0016】
さらに具体的には、殺菌・充填システム1は、調合タンク4の下流側に、処理対象液aを貯留する殺菌機バランスタンク5と、前記殺菌機バランスタンク5から取り出される処理対象液aを昇圧する昇圧ポンプ11としてのブースターポンプと、昇圧ポンプ11により昇圧された処理対象液aを液内の菌が殺菌される殺菌温度に昇温保持する昇温保持機構12と、この昇温保持機構12において殺菌された処理対象液aを降温して弁機構6aに送る降温機構13とを備えて構成されている。弁機構6a及び後で説明する弁機構6bは設定された液圧で開放される弁からなり、流路を絞ることで液圧を調整するようになっている。
【0017】
ここで、第一処理機構101には、前記昇圧ポンプ11と前記昇温保持機構12が含まれ、第二処理機構102には前記降温機構13が含まれる。
【0018】
さらに、殺菌機バランスタンク5から昇圧ポンプ11に至る処理対象液aの流路には、殺菌機バランスタンク5の下流側に送液ポンプ14が設けられているとともに、この送液ポンプ14の下流側で昇圧ポンプ11までの間に、流路内の処理対象液aをそのまま予熱することなく昇圧ポンプ11に送る第一流路15aと、流路内の処理対象液aを予熱して昇圧ポンプ11に送る第二流路15bとが並列に備えられ、第一流路15aと第二流路15bとを流れる処理対象液aの割合を調節する調節弁16としての流量コントロールバルブが第一流路15aに設けられている。
【0019】
この第二流路15bを流れる処理対象液aの予熱は、第一処理機構101で処理済みの処理対象液aが保有する熱により実行される。この第二流路15bを流れる処理対象液aの予熱は、プレート式熱交換器17において、最も低温側の低温側熱交換部17cで行われる。
【0020】
前記第一処理機構101は、昇圧ポンプ11、プレート式熱交換器17の最も高温側の高温側熱交換部17aとホールディングチューブ18とを、記載順に処理対象液aが送液される構成が採用されている。この第一処理機構101では、昇圧ポンプ11で昇圧された処理対象液aの温度を、高温側熱交換部17aで高温側熱媒体h(蒸気もしくは温水)によって昇温し、その温度状態をホールディングチューブ18で一定時間保持する。結果、第一処理機構101において、処理対象液aを充分、殺菌することができる。
【0021】
前記第一処理機構101で殺菌処理を終えた処理対象液aは、降温機構13である第二処理機構102を成す前述の低温側熱交換部17cの給熱側流路に送られ、先に説明した第二流路15bを流れる処理対象液aに給熱することで、降温される。この位置でも、処理対象液aは依然、昇圧状態に維持される。
【0022】
前記第二処理機構102から弁機構6aに至る処理対象液aの流路が、流路内の処理対象液aを気液分離液体サイクロン7に送る送り流路19aと、流路内の処理対象液aを前記殺菌機バランスタンク5に戻す戻り流路19bとに分岐されており、前記送り流路19aと前記戻り流路19bとに処理対象液aの流路を切替える切替弁20が設けられている。そして、戻り流路19bに弁機構6bが備えられている。さらに、前記戻り流路19bは、プレート式熱交換器17の中温熱交換部17bの給熱側を通過するように構成されており、この戻り流路19bを流れる処理対象液aは、冷却媒体cとの熱交換により、適切に降温される。
【0023】
先にも示したように、前記弁機構6aの下流側には、気液分離液体サイクロン7及び気液分離タンク8としての給液クッションタンクが備えられているが、当該気液分離タンク8から取り出される液体分が、充填機3により容器2に充填される充填対象液となるように構成されている。なお、本実施例においては、充填機3はロータリ式充填機として構成されており、円周方向等間隔に複数の充填バルブを備えて、複数の容器2を周方向に連続搬送しながら順次充填バルブを開いて所定量の充填を行うようになっている。また、前記気液分離タンク8が、前記充填対象液を貯留する給液クッションタンクとして設けられるとともに、先にも示したように、前記給液クッションタンク8と前記充填機3との間に、クッションタンク側からクッションタンク送液ポンプ9、サージタンク10が備えられている。この気液分離タンク8は、内部圧が大気圧よりわずかに高い圧力(絶対圧で0.108MPa程度)となるように無菌エアを給排して調整される微加圧タンクとして構成され、外気の流入は防止しながら充填対象液aからの気体の放出は許可するようになっている。また、サージタンク10は、内部圧が気液分離タンク8よりも高い所定圧力(絶対圧で0.137〜0.177MPa程度)に維持される加圧タンクとして構成され、供給圧の変動を抑えてほぼ一定の圧力で充填機3に充填対象液aを供給するようになっている。
このようにして、充填機3へ殺菌済みの充填対象液を送ることができる。
【0024】
以下、本願に係る気液分離液体サイクロン7の詳細構成について、図1、図2を参考にして説明する。
気液分離液体サイクロン7は、よく知られているように、処理対象液aである気液混合液を受け入れる液入口7cと、気液混合液を遠心力により気液分離して、液体分を主とする第一成分を送り出す第一出口7aと、気体分を主とする第二成分を送り出す第二出口7bとを備えて構成されており、液入口7cを側部に第二出口7bを上部に備えた二重円筒形状の上側本体部71と、上側本体部71の下に連結され、下部に第一出口7aを備えた円錐形状の下側本体部72とを備えて構成されている。
【0025】
図2(a)に示すように、液入口7cは、処理対象液aを二重管として構成される上側本体部71の外筒71aの内壁に沿った噴流として、上側本体部71内へ導くように先窄まり形状の流路として構成されている。
本願の気液分離液体サイクロン7は、定置洗浄できるように、汚れの溜まりやすい部位のないようにするため、接液部の角が滑らかになるように各部のRをとり、上側本体部71内の天面と内筒71b及び外筒71aの内壁との交差部を0.5〜5.0程度のRを取った曲面とし、接続機器との取り合い部は、へルール構成の接続部72x、71y、71zとしている。
【0026】
この気液分離液体サイクロン7の主要な特性及びディメンジョン(寸法)について説明すると、
気液分離を実行する通常運転状態において、所定の流量に設定した場合において、サイクロンとしての脱泡効果が発揮できるように、遠心効果Z値が70以上で且つ圧損が0.15MPa以下になるように、上側本体部71の外筒71aの口径a1に対する、下側本体部72の最大口径部72maxから最小口径部72minまでの長さbの比率(b/a1)を4.0〜6.0とし、外筒71aの口径a1に対する下側本体部72の最小口径部72minの口径cの比率(c/a1)を0.2〜0.5としている。
ここで、遠心効果Z値は、以下のように定義される。
Z=2×u2/(g×a1)
gは『重力加速度』、a1は『上側本体部71の外筒71aの口径』、uは『液入口7cの縮小部の流速』である。
【0027】
さらに、図2からも判明するように、上側本体部71の外筒71aの内側に位置する内筒71bの口径dが下側本体部72の最小口径cより大きく構成されるとともに、上側本体部71の外筒71aの口径a1に対する上側本体部71の内筒71bの口径dの比であるd/a1が0.5以下とされている。具体的には、0.4程度である。
【0028】
図1に示すように、第一出口7aの下流側に接続される第一接続路73に、当該第一接続路73を遮断可能な第一弁74を、第二出口7bの下流側に接続される第二接続路75に、当該第二接続路75を遮断可能な第二弁76をそれぞれ設けている。そして、気液混合液aを気液分離する通常運転状態においては、前記第一弁74及び第二弁76の両方を開状態に維持し、前記液入口7cから洗浄液を受け入れる洗浄運転状態においては、前記第一弁74及び第二弁76を交互に開状態とする弁制御手段77を備えている。
【0029】
図3に、上記の弁制御手段77による、通常運転状態と洗浄運転状態とにおける各弁の開閉状態を示した。同図において、横軸は時間を縦軸は弁それぞれの開閉状態を示している。最も上段に通常運転状態のタイミングチャートを示し、中段に一回の切換えで洗浄を行う場合の洗浄運転状態でのタイミングチャートを示し、下段に複数回の切換えで洗浄を行う場合の洗浄運転状態でのタイミングチャートを示した。
【0030】
以下、これまで説明してきた、殺菌・充填システム1の働きについて説明する。
〔通常運転状態〕
この状態では、上記した第一弁74及び第二弁76は常時開状態に維持される。
〔通常運転状態における殺菌・充填運転〕
処理対象液aは常圧・常温の状態で調合タンク4より殺菌機バランスタンク5に供給され、殺菌機バランスタンク5から送液ポンプ14によりプレート式熱交換器17の液液熱交換部である低温側熱交換部17cに処理対象液aの一部が送液され、予熱され、その後、昇圧ポンプ11に入る。
一方、低温側熱交換部17cに入らない処理対象液aは、そのまま昇圧ポンプ11に送液される。昇圧ポンプ11により送液された処理対象液aは、高温側熱交換部17aにて100℃を超える温度に加熱され、ホールディングチューブ18にて、その加熱温度で一定時間保持され、降温機構13で冷却温度90℃まで冷却され、通常の運転時は充填機3側に送液する。
【0031】
なお、高温側熱交換部17aでの加熱の熱媒hには、温水または蒸気が用いられ、温水の温度または流量、蒸気の流量より加熱温度を調節する。
【0032】
また、降温機構13により処理対象液aを冷却する冷媒には、殺菌機バランスタンク5より送液される殺菌前の処理対象液aが用いられ、調節弁16により、殺菌前の処理対象液aの低温側熱交換部17cの第二流路15bに入る割合が調節されることにより、降温機構13での冷却温度を調節する。
【0033】
この殺菌・充填システム1の運転立ち上げ時は、前述の切替弁20を戻り流路19b側に選択し、送液ポンプ14からの送液流量及び高温側熱交換部17aの加熱温度、降温機構13の冷却温度が所定の条件になるように調節しなければならないため、上記した状態に安定するまで、処理対象液aは充填機3側に送液せず、中温熱交換器17bにて降温されて殺菌機バランスタンク5に戻す。
【0034】
あるいは、通常運転時でも、気液分離タンク8である給液クッションタンクが満液となった場合は、処理対象液aは充填機3側に送液されず、中温熱交換器17bにて降温されて殺菌機バランスタンク5に戻す。
【0035】
送り流路19aに設けられる弁機構6a及び戻り流路19bに設けられる弁機構6bは、それぞれ高温側熱交換部17aでの加熱温度が100℃を超えているために付属している。そのため、常に、双方の弁機構6a、6bが作動する。これら弁機構6a、6bの圧力は、通常、0.2〜0.3MPaに設定されている。
【0036】
一方、充填機3側に送液された処理対象液aは、プレート式熱交換器17に入る前は、常温で、飽和状態まで溶存ガスを含むが、充填機3側に出た後は、90℃程度の温度のため、過飽和の状態になりマイクロバブル状の気泡を多く含む。その状態の処理対象液aは、気液分離液体サイクロン7に送液され、マイクロバブル状のものを含む気泡が遠心効果により凝集される。気液分離液体サイクロン7の下の第一出口7aからは、液体分を主とする第一成分が送り出され、上の第二出口7bからは、気体分を主とする第二成分が送り出される。
【0037】
前記第一成分には、気泡が含まれているが、その気泡は気液分離液体サイクロン7内で生じた渦が下の第一出口7aを出た後でも巻き続けているため、配管の曲がり、バルブ等が存在することにより、マイクロバブルより大きな気泡として処理対象液aに含まれる。従って、この位置まで到達すると、その気泡はマイクロバブル状でないため、給液クッションタンク8に供給されてから液面に浮かび分離される。
【0038】
また、気液分離液体サイクロン7の上の第二出口7bからは、サイクロン内部で、凝集、分離された気泡は多少の処理対象液aを含むが、大きな気泡の状態で給液クッションタンク8へと供給され、同様に液面に浮かび上がり分離される。
【0039】
本願に言う気液分離タンク8である給液クッションタンクにて、気泡を分離させた処理対象液(この液が充填対象液である)は、クッションタンク送液ポンプ9によりサージタンク10に送液される。サージタンク10に供給された充填対象液は充填機3へと送液される。
【0040】
サージタンク10からの充填機3への給液は、充填機3が備える充填バルブの開放数の変動に係らず、各充填バルブへの供給圧を一定に維持するために、タンク内を無菌エアで所定圧に加圧して送液するようになっている。
【0041】
ここで、製品運転時の充填系(弁機構6aより下流側)内には、殺菌後の処理対象液aに外気が混入することにより菌に汚染されるのを防止するため、無菌エアの供給により、常に加圧状態に保つ必要があるが、圧力が高いと圧損の問題と気液分離できないという問題が生じるから、給液クッションタンク8内を大気圧よりわずかに圧力の高い微圧状態としている。
【0042】
さらに、充填機3側への送液圧力が弁機構6aの設定圧力を超えると、充填機3側に送液する場合と、殺菌機バランスタンク5に戻る場合とで、送液圧力の違いが生じ、殺菌機バランスタンク5への戻りと充填機3側への送液で切り換えた際に、送液流量が変化し、高温側熱交換部17aでの加熱温度及び降温機構13での冷却温度が設定値から外れてしまうという制御上の問題がでる。
【0043】
従って、気液分離液体サイクロン7の圧損が弁機構6aの設定圧力を超えてしまうと、弁機構6aより上流側で、上述のような運転制御上の問題が生じるため、気液分離液体サイクロン7の圧損と給液クッションタンクの圧力の合計は、弁機構6aの設定圧力よりも低くなるように設定している。
【0044】
〔洗浄運転状態〕
この状態では、上記した第一弁74及び第二弁76は図3の中段もしくは下段のタイミングチャートに従って開閉制御される。
さらに、図1に示す洗浄液導入部80から洗浄液が、殺菌・充填システム1内に洗浄液が導入され、システム全体の洗浄を良好に実施することができる。この洗浄運転状態では、洗浄液の全体が、第一弁74、第二弁76の開閉状態に従って、開状態に保たれる弁側へ流れ、洗浄効果を発揮する。
【0045】
〔別実施形態〕
上記の実施形態では、本願に係る気液分離液体サイクロン7、及びこの気液分離液体サイクロン7と気液分離タンク8とを組み合わせ構成される気液分離システムを、殺菌・充填システム1に採用する例を示したが、本願に係る気液分離液体サイクロン7は、例えば、飲料の調合を実行する調合システム200に採用することもできる。
図4に、このような調合システム200の例を示した。この例では混合機201において混合を行い、本願に係る気液分離液体サイクロン7と調合タンク202とで、システムを構成する例を示した。
この例の場合も、第一弁74、第二弁76と、これらを開閉操作制御する弁制御手段77の働きにより、交互に弁を開閉制御して、洗浄を定置洗浄状態で(設備系に設備したままで)行える。
【産業上の利用可能性】
【0046】
定置洗浄が可能であるとともに、その定置洗浄においても、第一出口側及び第二出口側の両方の流体流路の洗浄を過不足なく行える気液分離液体サイクロンを提供することができた。
【符号の説明】
【0047】
7 気液分離液体サイクロン
7a 第一出口
7b 第二出口
7c 液入口
8 気液分離タンク(給液クッションタンク)
71 上側本体部
72 下側本体部
73 第一接続路
74 第一弁
75 第二接続路
76 第二弁
77 弁制御手段
a 処理対象液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象液である気液混合液を受け入れる液入口と、前記気液混合液を遠心力により気液分離して、液体分を主とする第一成分を送り出す第一出口と、気体分を主とする第二成分を送り出す第二出口とを備えた気液分離液体サイクロンであって、
前記第一出口の下流側に接続される第一接続路に、当該第一接続路を遮断可能な第一弁を、前記第二出口の下流側に接続される第二接続路に、当該第二接続路を遮断可能な第二弁をそれぞれ設け、
前記気液混合液を気液分離する通常運転状態においては、前記第一弁及び第二弁の両方を開状態に維持し、前記液入口から洗浄液を受け入れる洗浄運転状態においては、前記第一弁及び第二弁を交互に開状態とする弁制御手段を備えた気液分離液体サイクロン。
【請求項2】
前記液入口を側部に前記第二出口を上部に備えた二重円筒形状の上側本体部と、前記上側本体部の下に連結され、下部に前記第一出口を備えた円錐形状の下側本体部とを備えて構成され、前記上側本体部の内筒の口径dが前記下側本体部の最小口径cより大きい請求項1記載の気液分離液体サイクロン。
【請求項3】
前記液入口を側部に前記第二出口を上部に備えた二重円筒形状の上側本体部と、前記上側本体部の下に連結され、下部に前記第一出口を備えた円錐形状の下側本体部とを備えて構成され、前記上側本体部の外筒の口径a1に対する前記上側本体部の内筒の口径dの比であるd/a1が0.5以下の関係にある請求項1又は2記載の気液分離液体サイクロン。
【請求項4】
前記液入口を側部に前記第二出口を上部に備えた二重円筒形状の上側本体部と、前記上側本体部の下に連結され、下部に前記第一出口を備えた円錐形状の下側本体部とを備えて、前記上側本体部内の天面と内筒の交差部を曲面で構成した請求項1〜3のいずれか一項記載の気液分離液体サイクロン。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の気液分離液体サイクロンから送り出される前記第一成分及び前記第二成分の両方を受け入れる気液分離タンクを備え、
前記気液分離タンクに貯留される液体分のみを取り出し可能に構成されている気液分離システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−260033(P2010−260033A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115040(P2009−115040)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(393028357)シブヤマシナリー株式会社 (77)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【Fターム(参考)】