説明

気液分離装置

【課題】 小さな容積でも、気体に含まれる液体を高効率で分離することができる気液分離装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 気体が流れる部屋(33A)と液体が溜まる部屋(33B)とを有し、前記気体が流れる部屋(33A)で気体に含まれる液体を分離し、この分離した液体を前記液体が溜まる部屋(33B)に導く構成を備える気液分離装置(11)において、前記気体が流れる部屋(33A)には、複数の曲線路によって気体の導入部(32)から気体の導出部(26)に通じる流路が形成され、曲線路における流路の断面積は、下流側が広く形成され、前記曲線路の下流側には、前記分離した液体を前記液体が溜まる部屋(33B)に導く液落下孔(51)が形成されていることを特徴とする気液分離装置(11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体に含まれる液体を分離する気液分離装置に関し、特に、小さな容積でも効率の高い分離性能を有する気液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の気液分離装置を示す、(a)上面図、(b)b−b縦断面図、(c)構成部品である仕切板の斜視図、である。従来の気液分離装置100は、円筒部110a、天板部110b、底部110cに、液体を含む気体を導入する入口管111と、導入した気体が円筒部110aの内部を循環的に流動した後、外部に導出するための出口管112と、含まれる液体が気体から分離されて下部に蓄積してなる液状物を排出する排水管113と、この蓄積した液状物が気流にもまれて再気化することを防止する仕切板114と、が設けられている。
【0003】
そして、入口管111から導入した液体を含む気体は、円筒部110aの内壁面を周方向に回転しつつ、含まれる液滴が遠心力により内壁面に衝突して付着するとともに成長する。さらに、この成長した液滴は、所定の大きさ以上になると、重力により鉛直方向に滴下し、切欠部114aを通過して底部110cに蓄積される。または、内壁面に衝突した気体が円筒部110aにより露点以下に冷却され、含まれる蒸気が結露することによって、この内壁面に付着する場合もありうる。
【0004】
このようにして、気液分離装置100に導入した気体は、図中の矢印Bで示す軌跡に沿ってその内部を周方向に流動しつつ液体が分離され、最終的に、出口管112から外部に導出することとなる。そして、分離した液体は、図中の矢印A方向に流れ底部110cに蓄積したのち、排水管113から外部へ排出される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−1033号公報(段落0011〜0016、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の気液分離装置100では、円筒部110aの内部において流路が規定されていないので、導入した直後に気体が最短のルートで出口管112に直行する場合も有り、含まれる液体の分離が不充分なまま出口管112から導出する効率の悪いものであった。このような従来の気液分離装置100において、気体に含まれる液体の分離を向上させるためには、内容積を大きくする必要があった。
【0006】
ところで、燃料ガス(水素)及び酸素(空気)を電気化学反応させて発電動力を得る燃料電池自動車において、電気化学反応の際に生成する水が、循環的に供給される燃料ガス(水素)の循環経路内に入り込んで発電特性を不安定にさせる。このため、燃料ガス(水素)の循環経路内から水を分離して排出するための装置をこの循環経路に取り付ける必要がある。
しかし、前記した従来の気液分離装置100を取り付けて所望する分離効率を得るとなると容積が大きくなることが避けられず、限られた車内スペースにおける要素部品のレイアウトが制約されて問題となる。
そこで、本発明は、このような問題を解決することを課題とし、小さな容積でも高効率に、気体に含まれる水分等の液体を分離して排出することができる気液分離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、次のような構成を、前記した課題を解決するための手段として備えるものである。すなわち、
請求項1に係る発明は、気体が流れる部屋を有し、前記気体が流れる部屋で気体に含まれる液体を分離し、この分離した液体を前記気体が流れる部屋から排出する構成を備える気液分離装置において、前記気体が流れる部屋には、複数の曲線路によって気体の導入部から気体の導出部に通じる気液分離用の流路が形成され、前記曲線路の下流側には、分離した前記液体を排出する孔が形成されていることを特徴とする。
【0008】
係る構成により、導入部から導入した気体は、曲線路を曲がりながら流動して導出部から導出されることとなる。この際、気体中の液滴には、曲線路により大きな遠心力が付与することになり、分離が促進することになる。このため、含まれる液滴は、微細なものであっても、曲線路となった流路の隔壁に対し衝突できることになり気体から分離させることが可能になる。また、分離した液体を排出する孔は、気体の流速が低下する部分に形成されることとなるので、例えば一旦排出した液体を大きな負圧により孔から吸い上げるといったことが防止される。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の気液分離装置において、前記流路は、小流路部と、小流路部よりも下流側に流路の断面積が小さい大流路部を有することを特徴とする。
係る構成により、小流路部においては、気体の流速を高め、より多くの液体を付着させ、大流路部で液体を迅速に落とすことができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の気液分離装置において、前記流路の前記気体の導入部の近傍における断面積は、前記流路の前記気体の導出部の近傍における断面積よりも小さいことを特徴とする。
係る構成により、導入部においては、流速を高め隔壁への液体の付着を促進し、導出部においては、負圧により、液体を孔から巻き上げることを防止する。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気液分離装置において、前記孔には、気体が流れる方向に交わる開口面を有するガイド部材が形成されていることを特徴とする。
係る構成において、液体を孔から巻き上げることを防止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、容積が小さくとも、液体を含む気体を導入して、この液体を高い効率で分離・除去して導出することができる気液分離装置が提供される。また、このような気液分離装置が、燃料電池自動車の燃料ガス(水素)の循環経路内に取り付けられることになれば、発電特性の安定性が向上するとともに、車内における要素部品のレイアウトの制約が緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る気液分離装置について説明する。
図1は実施形態に係る気液分離装置の分解斜視図である。
図2(a)は実施形態に係る気液分離装置の上面断面図、(b)はX−X縦断面図である。
図3はガイド部材の詳細を示す斜視図である。
図4は実施形態に係る気液分離装置の適用例を示す、燃料電池自動車の燃料ガス供給システムのブロック図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の気液分離装置11は、上面部材20、第1側枠部材30A、仕切部材50、第2側枠部材30B、底面部材40により外郭が形成されている。さらにこれらの部材により気密性を示す内部空間33が形成されている。そして、内部空間33は仕切部材50により2つの空間に仕切られており、このうち鉛直方向の上側にあって気体が流れる部屋を気液分離室33Aと呼び、同下側にあって液体が溜まる部屋を液溜室33Bと呼ぶこととする。
そして、気液分離室33Aには、導出部26、導入部32が設けられ、液溜室33Bには、排出部41が設けられ、これらの空間の気密状態を解除可能に外部と連通している。さらに気液分離室33Aには、第1隔壁21、第2隔壁22、第3隔壁23、並設隔壁24、案内隔壁25が設けられ、これらにより形成された流路を気体が流動することにより、含まれる液体が分離され、液溜室33Bにおいて回収・蓄積されるものである。
【0015】
導入部32は、側枠部材30の側面に、内部空間33と外部が連通するように設けられ、液体が含まれる気体を導入するものである。
導出部26は、上面部材20に、内部空間33と外部が連通するように設けられている。そして、導入部32から導入した気体が、気液分離用の流路、つまり図2(a)で示す入力流路R、第1コーナー流路S、第2コーナー流路T、第3コーナー流路U、第4コーナー流路V、出力流路W(以下、単に「曲線路」と呼ぶ場合がある)の順番で流動した後に導出するものである。ところで、本実施形態では導出部26は、重力の反対方向に開口しており、この開口の周囲には内部空間33側に突出した返し部材26a(図1参照)が設けられている。
返し部材26aは、上面部材20を伝って這い上がってきた液体(這い上がろうとしている液体)をブロックして、導出部26から導出されないようにするものである。
排出部41は、液溜室33Bに設けられ、流路を流動した気体から分離して、液溜室33Bに蓄積した液体を外部に排出するものである。
【0016】
仕切部材50は、気液分離室33A及び液溜室33Bの間を仕切るとともに、これら気液分離室33A及び液溜室33Bを連通する複数の液落下孔(孔)51,51…を有している。なお、この液落下孔51は、少なくとも1つ存在すれば機能を発揮するものである。そして、仕切部材50の上面には、第1隔壁21、第2隔壁22、第3隔壁23、並設隔壁24、案内隔壁25(これらを以下、単に「隔壁」と呼ぶ場合がある)が一体的に形成され、これらにより気液分離室33Aが隔てられることにより、図2(a)に示すような、流路が形成される。
ところで、これらの隔壁が形成される部分は、このような仕切部材50の上面に限定されることなく、内部空間33における他の内側面31(例えば、上面部材20、第1側枠部材30Aの内側面31)に形成されるものであってもよい。
【0017】
パッキン部材52は、第1隔壁21、第2隔壁22、第3隔壁23、並設隔壁24のうち仕切部材50に一体的に形成されている側とは反対の先端に設けられている。これらのパッキン部材52により、隔壁と上面部材20と間に隙間がなくなり、この隙間を通って隣接する流路の間で気体が流動するショートカット現象がなくなる。このため、導入した気体は、定められた正規の流路を流動することとなり、気体に含まれる液体の分離効率が向上する。なお、パッキン部材52を用いない構成としてもよい。
【0018】
第1隔壁21は、図1に示すように、導入部32及び導出部26に挟まれる内部空間33の内側面31(上面部材20及び側枠部材30の内側面)から延出するものである。そして、この第1隔壁21が側枠部材30に接する基端21bの反対端である第1先端(先端)21aは、対向する内部空間33の内側面31(側枠部材30の内側面)に対して隙間を有している。この隙間により、図2(a)に示す第4コーナー流路Vが形成される。そして、第1隔壁21により内部空間33は、導出部26に連通する出力流路W及びその他の空間(第1,第2,第3,第4コーナー流路S,T,U,V、入力流路R)に隔てられる。
【0019】
第4コーナー流路Vは、第1先端21a、側枠部材30の内側面31及び第3隔壁23で形成されており、その最大の流路幅d8は、第3コーナー流路Uの末端の流路幅d7よりも大きく構成されている。ここで流動幅d(部位を特定しない場合はこのように記す)の大小関係は、流路の高さ方向の幅が同じであることを考慮すれば、そのまま流路の断面積の大小関係に対応するものである。つまり、流路幅が大きいということは、流路はその部位において断面積が大きく構成されることになり、流路幅が小さいということは、流路はその部位において断面積が狭く構成されることになる。
従って、第4コーナー流路Vにおける曲線路においては、断面積の狭い部分の後に断面積の広い部分が形成されている。このため、第3コーナー流路Uを流動して第4コーナー流路Vに進入してきた気体は、この断面積の広い部分で広がりながら進路を鋭角に反転して出力流路Wに導かれることになる。
【0020】
第2隔壁22は、図1に示すように、第1隔壁21の途中から分岐して延出し、第2先端(先端)22aが対向する内部空間33の内側面31(側枠部材30の内側面)と隙間を有している。この隙間により、図2(a)に示す第2コーナー流路Tが、形成される。さらに、第2隔壁22は、第1隔壁21により隔てられた出力流路W以外の空間を、導入部32に連通する入力流路R、及び第1,第2,第3コーナー流路S,T,Uを含む空間に隔てる。
【0021】
このようにして形成された第1コーナー流路Sは、途中に屈曲22bが設けられている第2隔壁22と、案内隔壁25とにより流路幅が規定されることとなる。そして、第1コーナー流路Sは、この屈曲22b部分の流路幅d2が末端部分の流路幅d1,d3に比較して小さくなるように形成されている。このため、第1コーナー流路Sは、屈曲22b部分で断面積が狭く、さらに進路が曲率を有する構成をとる。このような構成を有することにより、第1コーナー流路Sを流動する気体は、この屈曲22b部分で、流速が高まるとともに流路の壁面に強く押し付けられることになる。
【0022】
並設隔壁24は、第1コーナー流路Sの曲率を有する流路中に、気体の流動方向に沿って、設けられている。このような並設隔壁24が存在していることにより、この部分を流動する気体は、整流され気体の流動抵抗を低減することに寄与する。さらに気体に対する接触面積が向上するので、気体に含まれる液体の除去効果を高める効果も発揮される。
【0023】
第2コーナー流路Tは、第2先端22a、側枠部材30の内側面31及び第3隔壁23で形成されており、その最大の流路幅d4は、第1コーナー流路Sの末端の流路幅d3よりも大きく構成されている。
従って、第2コーナー流路Tは、第1コーナー流路Sの末端よりも断面積の広い部分を有することなる。そして、第1コーナー流路Sを流動して第2コーナー流路Tに進入してきた気体は、広がるとともに進路を鋭角に反転させて第3コーナー流路Uに導びかれる。
【0024】
第3隔壁23は、第1先端21a及び第2先端22aに挟まれる内部空間33において、内側面31から延出し、第2隔壁22との間に第3コーナー流路Uを形成するものである。この第3コーナー流路Uは、屈曲22b部分の流路幅d6が末端部分の流路幅d5,d7に比較して大きくなるように形成されている。
従って、第3コーナー流路Uは、第2コーナー流路Tの末端の断面積の狭い部分の後に、断面積の広い部分が形成されるように構成されていることとなる。そして、第2コーナー流路Tを流動して第3コーナー流路Uに進入してきた気体は、広がるとともに進路を鋭角に反転させて第4コーナー流路Vに導びかれる。
【0025】
液落下孔51,51…は、第1隔壁21、第2隔壁22、第3隔壁23に交わる任意の直線Yに対し導出部26から離れた部分に偏って配置されている。そして、これら複数の液落下孔51が成す面に対し、第1コーナー流路S及び出力流路Wは、液落下孔51に向けて下り坂になるように形成される斜面50a(図1参照)を有している。このような斜面50aが形成されていることにより、これらの流路上に落下してたまった液体は斜面50aを下って液落下孔51,51…に導かれることとなる。
【0026】
ガイド部材54は、図2(a)に示すように、複数の液落下孔51,51…のうち、流動する気体の最下流側に設けられている液落下孔51に設けられている。そして、ガイド部材54は、図3に示すように、気体が流動する方向と交わる開口面53を有している。このようなガイド部材54が存在することにより、流路の表面に溜まった液体は、流動する気体の風圧に押されて吹き飛ばされるようなことがあっても確実に捕捉されることとなる。また、ガイド部材54の開口面53は、大きな風圧を受けることになるので、いったん液溜室33Bに入った液体が、逆流して、最下流にある液落下孔51から這い上がってくることを防止する。
【0027】
(動作説明)
次に、図2を参照して、本実施形態にかかる気液分離装置の動作説明を行う。
まず、導入部32から、液体が含まれる気体が入力流路Rに導入され、第1コーナー流路Sに沿って流動する。なお、この液体が含まれる気体とは、液体が細かいミスト状になった液滴が浮遊し、かつ液体が気化した蒸気が飽和している状態を示していることとする。
まず液体を含む気体が、導入部32から入って入力流路Rから第1コーナー流路Sに進入する。この第1コーナー流路Sは、併設隔壁24により区画されているので流動する気体は整流され圧力損失が少なくなる。さらにこの第1コーナー流路Sは、曲率を有するので、流動する気体は、並設隔壁24及び案内隔壁25に押し付けられるとともに、含まれている液滴に慣性力がかかり、その一部は、並設隔壁24及び案内隔壁25に叩き付けられて付着して気体から分離することになる。
【0028】
第1コーナー流路Sを通過した気体は、次に、本願発明における小流路部である第2コーナー流路Tに進入する。この第2コーナー流路Tにおいて気体は、進行方向を鋭角に曲げられので、含まれる液滴には大きな遠心力がかかり、壁面に叩き付けられて付着する。さらに、本願発明における大流路部である第2コーナー流路Tの下流側(出口側)では流路の断面積が広がるので流速が低下し液滴は重力により沈降する。これにより、気体に含まれる液滴の分離がすすむ。
【0029】
第2コーナー流路Tを通過した気体は、次に、第3コーナー流路Uに進入する。この第3コーナー流路Uにおいても、屈曲22bの部分において、気体は進行方向を鋭角に曲げられるとともに広がるので、前記した同様のメカニズム(遠心力、重力)により、気体から液体がさらに分離することとなる。さらに、流路の断面積は、下流にいくほど広がっていく構成を有しているので、気体の流速は低下していき、液滴が気流から重力により落下して気液分離する効果が高まる。
【0030】
第3コーナー流路Uを通過した気体は、次に、第4コーナー流路Vに進入する。この第4コーナー流路Vにおいても、気体は進行方向を鋭角に曲げられるとともに、断面積が大きくなることにより広がる。このため、前記した同様のメカニズムにより、気体から液体がさらに分離することとなる。
第4コーナー流路Vを通過した気体は、次に、出力流路Wに進入しそのまま直進して導出部26から導出することとなる。
【0031】
なお、曲線路における流路の断面積は、下流側が広く形成されていることにより、この広い部分に進入した気体は断熱膨張することもありうる。このように断熱膨張した気体は温度が降下するが、この温度の降下は、飽和蒸気状態にある気体から蒸気状態の(気化している)液体を凝結させる。この凝結した液体は、気体中に浮遊している液滴に吸収されるとともにこの液滴が肥大化させる。この肥大化した液滴には、流路の曲率半径が小さい部分で、非常に大きな遠心力が付与されるので流路の壁面に付着しやすくなり、液体の分離がさらに促進されることになる。
また、第2,第3,第4コーナー流路T,U,Vの下流側(曲線路の下流側)は、気体の流速が低下する部分(負圧が低下する部分)であるので、この部分に液落下孔51が設けられていることにより、負圧による水の吸い上げが抑制されることになる。
【0032】
一方、流路の壁面に付着した液滴は、液滴同士が合体して大きくなると、重力方向に落下して、図2(b)に示す仕切部材50の上面に到達する。そして、これら上面に到達した液体のうち、斜面50aに到達したものは最大傾斜線であるフォールラインに沿って移動する。さらに、液体は、流動する気体にあおられて仕切部材50の上面を移動するうちに、いずれかの液落下孔51の開口にはまり、液溜室33Bに落下する。また、最下流の液落下孔51には、ガイド部材54が設けられているので、上流部分にある液落下孔51を潜りぬけてきた液体も最終的にはこの最下流の液落下孔51において捕捉される可能性が高い。
このように落下して、液溜室33Bに蓄積した液体は、適時、排出部41に設けられた開閉バルブ(図示せず)が開くことにより、導入する気体の圧力におされて外部に排出されることとなる。
【0033】
このように気液分離装置11に気体を導入すると、その気体は、流路を進行する前半の過程においては、流路の曲率部分で大きな遠心力が印加されて流路の壁面に付着することの寄与率が高く、後半の過程においては、気体の流速が低下することで重力による液滴の落下の寄与率が高くなることになる。このようにして、本発明にかかる気液分離装置11では、高効率に液体を分離して気体を導出することができる。
【0034】
(気液分離装置の適用例)
図4を参照して、第1実施形態に係る気液分離装置11の適用例について説明する。
図4に示す燃料電池自動車の燃料ガス供給システムは、水素タンク1と、エゼクタ2と、燃料電池3と、エア排気部7と、逆止弁8と、コンプレッサ9と、気液分離装置11と、開閉バルブ60とから構成される。
【0035】
水素タンク1は、高圧の水素ガスが充填されており、エゼクタ2に対して水素を供給するものである。
エゼクタ2は、後記する逆止弁8から送られてくる燃料オフガスと水素タンク1から供給される水素ガスを混合し、その混合ガスを燃料ガスとして燃料電池3の燃料極(燃料電池3の左側:図示せず)へ送出するポンプである。
燃料電池3へ供給された燃料ガスは、その一部が発電に利用され、残りが燃料オフガスとして気液分離装置11に送られる。この燃料オフガスは、発電時の水素と酸素との反応により、熱と生成した水分(カソード極で生成したものが電解質膜を介して移動してきたもの)とを多量に含むこととなり、高温多湿な状態を有する。
【0036】
このような燃料オフガスが流入した気液分離装置11において、前記した動作に従い、含まれる液体(液滴)が除去される。このように除去された液体は、開閉バルブ60が適時動作することにより外部へ排出される。
気液分離装置11により除湿された燃料オフガスは、逆止弁8を経由して再びエゼクタ2に送られる。なお、逆止弁8は、気液分離装置11からエゼクタ2への方向には気体を通すが、その逆向きには気体を通さないバルブである。
【0037】
コンプレッサ9は、酸素を含んだ外部の空気を適量取り込み、燃料電池3の空気極(燃料電池3の右側:図示せず)に供給するものである。
エア排気部7は、コンプレッサ9によって外部から取り入れられ、燃料電池3で使用した空気を排出するものである。
【0038】
以上のように本発明を適用した燃料電池自動車の燃料ガス供給システムでは、発電の過程において、循環する燃料オフガス中に混入する水分を、循環経路の途中に配置されている気液分離装置11により、高効率に排出することが可能である。しかも、この気液分離装置11は容積が小さいので、燃料電池自動車の複雑な設計レイアウトの自由度を制限することがない。さらに分離した液体を頻繁に排出する必要がないので、燃料である水素の使用を節約することができる。
【0039】
以上の説明において、気体とは、燃料電池自動車に用いられる場合においては、水素ガスを主成分とする気体であるが、特に限定されることなく、空気等にも適用することができる。また、気体に含まれる液体とは、燃料電池自動車に用いられる場合においては、主に水であるが、これも特に限定されることなく、有機溶媒等にも適用することができる。さらにその液体の状態も、微細化して気体中に浮遊する液滴(ミスト)であったりする。また、本発明は燃料電池車以外にも、船舶やその他移動体に適用してもよい。
また、本発明において流路は、仕切部材50に設けられた隔壁(第1,第2,第3隔壁21,22,23等)により形成されていることとしたが、これらの隔壁はその他の部材(例えば、上面部材20、第1側枠部材30A等)に設けられるものであってもよい。さらに本発明においては、エゼクタ2を設置して水素ガスを循環しているが、ポンプを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る気液分離装置の分解斜視図である。
【図2】(a)は本実施形態に係る気液分離装置の上面断面図、(b)はX−X縦断面図である。
【図3】ガイド部材の詳細を示す斜視図である
【図4】本実施形態に係る気液分離装置の適用例を示す、燃料電池自動車の燃料ガス供給システムのブロック図である。
【図5】従来の気液分離装置を示す、(a)上面図、(b)b−b縦断面図、(c)構成部品である仕切板の斜視図、である。
【符号の説明】
【0041】
11 気液分離装置
21 第1隔壁
21a 第1先端
22 第2隔壁
22a 第2先端
22b 屈曲
23 第3隔壁
24 並設隔壁
26 導出部
26a 返し部材
31 内側面
32 導入部
33 内部空間
33A 気液分離室(気体が流れる部屋)
33B 液溜室(液体が溜まる部屋)
41 排出部
50 仕切部材
50a 斜面
51 液落下孔(孔)
53 開口面
R 入力流路
S 第1コーナー流路(曲線路)
T 第2コーナー流路(曲線路)
U 第3コーナー流路(曲線路)
V 第4コーナー流路(曲線路)
W 出力流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が流れる部屋を有し、前記気体が流れる部屋で気体に含まれる液体を分離し、この分離した液体を前記気体が流れる部屋から排出する構成を備える気液分離装置において、
前記気体が流れる部屋には、複数の曲線路によって気体の導入部から気体の導出部に通じる気液分離用の流路が形成され、
前記曲線路の下流側には、前記分離した液体を排出する孔が形成されていることを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
前記流路は、小流路部と、小流路部よりも下流側に流路の断面積が小さい大流路部を有することを特徴とする請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
前記流路の前記気体の導入部の近傍における断面積は、前記流路の前記気体の導出部の近傍における断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気液分離装置。
【請求項4】
前記孔には、気体が流れる方向に交わる開口面を有するガイド部材が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の気液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−142252(P2006−142252A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338375(P2004−338375)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】