説明

気液混合物吸込装置

【課題】 気液混合物、すなわち、水や水蒸気を多量に含む気体や気泡を含む液体を確実に吸い込むことができ、サイホン管内の気泡の排出にも問題なく使用することが可能な気液混合物吸込装置を提供する。
【解決手段】 気液混合物吸込装置11は、密封状態のケーシング12と、該ケーシング12内の液をケーシング外に排出するポンプ13と、気液混合物をケーシング13内に吸い込む吸込経路14と、ケーシング12内のガスをケーシング外に排出する排気経路15とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液混合物吸込装置に関し、例えば、サイホン式取水装置におけるサイホン管内から空気を排出するためなどに用いられる気液混合物吸込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溜池等の水を水田の灌漑用水として供給するための装置として、サイホン式取水装置が用いられている。このサイホン式取水装置では、サイホン管内が減圧状態になるため、水中に溶解している空気が気泡となって分離し、サイホン管の最高地点に空気溜まりが発生するとサイホンが機能しなくなる。このため、サイホン管の最高地点に、サイホン管内の気泡を排出するための気泡排出手段を設けるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−45889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、サイホン式取水装置の設置場所の条件によっては、気泡排出手段が正常に作動しなかったり、あるいは、道路の近くではいたずらされたりするなどの問題があった。また、サイホン管の最高地点に真空ポンプを接続して強制的に気泡を排出することも考えられるが、一般に真空ポンプは気体のみを吸引する構造であり、水や水蒸気を多量に含む気体を吸引した場合、著しく耐久性を損なうとともに、部品交換等のメンテナンスが頻繁に発生するという問題があり、液体も吸引可能な水封式真空ポンプでは、封水用に清水を準備する必要があるという問題を有している。
【0004】
そこで本発明は、気液混合物、すなわち、水や水蒸気を多量に含む気体や気泡を含む液体を確実に吸い込むことができ、サイホン管内の気泡の排出にも問題なく使用することが可能な気液混合物吸込装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の気液混合物吸込装置は、密封状態のケーシングと、該ケーシング内の液をケーシング外に排出するポンプと、気液混合物をケーシング内に吸い込む吸込経路と、ケーシング内のガスをケーシング外に排出する排気経路とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の気液混合物吸込装置によれば、ポンプでケーシング内の液を排出することによってケーシング内に負圧を発生させ、この負圧によって吸込経路から気体、液体及び気液混合物をケーシング内に吸い込む。したがって、ポンプは液のみを吸引するだけであるから、一般的な水中ポンプを利用することができ、従来の真空ポンプに比べて安価で取り扱いも容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の一形態例を示す気液混合物吸込装置の概略図、図2は気液混合物吸込装置をサイホン式取水装置に適用した例を示す説明図である。
【0008】
気液混合物吸込装置11は、密封状態のケーシング12と、該ケーシング12内の液をケーシング外に排出するポンプ13と、気液混合物をケーシング12内に吸い込む吸込経路14と、ケーシング12内のガスをケーシング外に排出する排気経路15とを備えている。
【0009】
ケーシング12は、内部の負圧に耐えられる構造に形成されており、その天板部に、前記排気経路15を構成するパイプの端部が接続している。この排気経路15は、ケーシング12内のガスの全量を排出できるような位置に設置することが望ましく、また、排気経路15を液やガスが逆流してケーシング12内に流入しないように、逆止弁15aを設けておくことが望ましい。但し、排気経路15を小通孔あるいは小口径パイプで形成することにより、逆止弁15aを省略することも可能であり、通気可能な小通孔を天板部に設けるのみであってもよい。
【0010】
前記ポンプ13は、一般的な電動式水中ポンプであって、停止時には液が逆流可能な型式のものを使用することができる。ポンプ13の吸込口13aは、ケーシング12の底部近傍に開口しており、ケーシング12内の底部から液を吸引するように形成されている。ポンプ13に吸い込まれた液は、ポンプ13の吐出経路13bからケーシング外へ排出される。なお、ポンプ13への配線は、通常は、配線貫通部を密封状態としておくことが好ましいが、僅かな隙間が有っても差し支えなく、前記排気経路15を利用することも可能である。
【0011】
吸込経路14の位置は、前記吸込口13aの近傍でなければ任意に設定することができる。この吸込経路14には、逆流を防止するための逆止弁14aが設けられている。なお、吸込経路14はケーシング12の壁部を貫通していなくてもよく、逆止弁14aをケーシング12の外部に設けておくこともできる。また、気液混合物の状態によっては、逆止弁14aを省略することもでき、ポンプ13の運転に連動して開閉する自動弁を用いることもできる。
【0012】
このように形成した気液混合物吸込装置11は、通常は、前記ケーシング12を液中に設置した状態で使用する。ケーシング12内に液が無い状態で気液混合物吸込装置11を液中に沈めると、ガスの浮力と周囲の液圧との関係から、吐出経路13bからポンプ13を逆流して吸込口13aを通り、外部の液がケーシング12内に流入するとともに、排気経路15の逆止弁15aが開いてケーシング12内のガスが排気経路15から外部に排出され、最終的にはケーシング12内のガスが液で置換された状態となる。
【0013】
この状態でポンプ13を運転すると、ケーシング12内の液が吸込口12aから吸い込まれて吐出経路12bから排出される状態となり、ケーシング12内は、ポンプ13の能力に応じた負圧状態となる。ケーシング12内が負圧になると、吸込経路14の逆止弁14aが開き、吸込経路14を通して気体、液体及び気液混合物といった流体がケーシング12内に吸い込まれる状態となる。このとき、排気経路15の逆止弁15aは閉じ状態となっているので、排気経路15からガスや液がケーシング12内に流入することはない。
【0014】
なお、排気経路15に逆止弁15aを設けないときでも、排気経路15が小通孔又は小口径パイプであって、吸込経路14からの吸込量に比べて排気経路15からの逆流量が十分に少ない場合は、ポンプ13の運転によって吸込経路14から流体を十分に吸い込むことが可能である。
【0015】
ポンプ13の運転は、ケーシング12内の液が無くなるまで継続することができる。ポンプ13を停止すると、前記同様に、ポンプ13を逆流してケーシング12内に液が流入するとともに、ケーシング12内のガスが排気経路15から外部に排出され、ケーシング12内のガスが液で置換される。
【0016】
このように、ポンプ13でケーシング12内の液を排出することによって発生させた負圧を利用して吸込経路14からケーシング12内に流体を吸い込むので、流体が気体、液体、気液混合物のいずれであっても吸い込むことができる。また、ポンプ13として汎用の水中ポンプを使用することができるので、気液混合物吸込装置11を低コストで製作することができる。
【0017】
なお、気液混合物吸込装置11は、ケーシング12を液中に設置した状態で使用できない場合は、吐出経路12bにケーシング12より大きな内容積の貯液槽を接続しておき、ポンプ13の運転でケーシング12内から排出された液を貯液槽に貯留し、ポンプ13を停止したときに貯液槽内の液がケーシング12内に逆流するようにしておけばよい。但し、この場合、初回のみは貯液槽に液を溜めておく必要がある。
【0018】
次に、サイホン式取水装置に前記気液混合物吸込装置11を適用した例を説明する。サイホン式取水装置は、溜池21から取水して灌漑用のパイプライン22に給水するためのものであって、堤体23を跨ぐようにして比較的大きな口径のサイホン管24を配置している。このサイホン管24の溜池側には、取水フロート25に設けられた吸入口に逆止弁を介して接続するフレキシブル管26と、サイホン管24内を満水状態にするための注水ポンプ27とが設けられており、パイプライン22側は遮断弁28を介してパイプライン22に接続している。なお、サイホン式取水装置は、従来のサイホン式取水装置、例えば、前記特許文献1に記載されたサイホン式取水装置において、気泡の排出手段を除いて同じ基本構成を採用することができる。
【0019】
そして、サイホン管24の最高地点には、サイホン管24内の気泡を上昇させてサイホン管24内から取り除くための空気溜29が設けられており、この空気溜29に、気液混合物吸込装置11の前記吸込経路14が接続されている。気液混合物吸込装置11は、フロート31の下部に設置されており、溜池21の水面が変動しても常に水面下の所定位置に保持されるように形成されている。また、吸込経路14の全体あるいはその一部は、気液混合物吸込装置11の上下動に追随するためのフレキシブル管で形成されている。さらに、吸込経路14は、空気溜29内の空気を確実に吸い込むことができるように、比較的小口径のパイプを用いて空気溜29の最上部に接続することが好ましい。
【0020】
サイホン式取水装置は、サイホン管24や取水フロート25を所定位置に設置すると、フレキシブル管26先端の吸入口から逆止弁を介して溜池21の水がフレキシブル管26やサイホン管24の溜池側に流入する。このとき、サイホン管24内の空気は、開状態の遮断弁28を通って、あるいは、空気溜29、吸込経路14を通って気液混合物吸込装置11から外部に排出される。
【0021】
次に、遮断弁28を閉じて注水ポンプ27を運転し、注水ポンプ27からサイホン管24内への注水を開始する。この注水によってサイホン管24内の空気が吸込経路14を経て気液混合物吸込装置11から外部に排出され、遮断弁28までのサイホン管24内が満水状態になる。なお、フレキシブル管26側は、逆止弁が閉じることによって吸入口から水が流出することはない。このサイホン管24内の満水状態は、気液混合物吸込装置11から空気が排出されなくなったことで確認できる。また、気液混合物吸込装置11のケーシング12内には、サイホン管24からの水が流入し、また、ポンプ13を逆流した水が流入することによって満水状態となる。
【0022】
サイホン管24内が満水状態になった後、注水ポンプ27を停止し、遮断弁28を開くと、サイホン効果によって溜池21の水がパイプライン22に供給される。この状態でサイホン管24内は減圧状態になるが、吸込経路14の逆止弁14aが閉じ状態になるので、ケーシング12内に空気が残っていても、この空気がサイホン管24内に流入することはない。
【0023】
このようにしてサイホン式取水装置で給水を行うと、水中に溶解している空気が気泡となり、最高地点を通過する際にサイホン管24内から空気溜29に上昇し、空気溜29に捕捉される。この状態で気液混合物吸込装置11のポンプ13を運転してケーシング12内に負圧を発生させることにより、空気溜29に捕捉された空気を空気溜29から吸込経路14を経てケーシング12内に吸い込むことができ、サイホン管24や空気溜29内から空気を確実に排出することができる。
【0024】
また、空気溜29内の空気を全て吸い込んだ後は、空気溜29内に流入した水を吸込経路14から吸い込むことになるが、前述のように、気液混合物吸込装置11は、気体、液体、気液混合物のいずれであっても吸い込むことができるので、何ら問題となることはない。
【0025】
サイホン式取水装置に付設した気液混合物吸込装置11の運転は、各種条件に応じて適当に設定することができるが、通常は、一定時間間隔で一定時間だけ行うようにすればよく、例えばタイマーを設けて2,3時間毎に数秒乃至数分だけ気液混合物吸込装置11を運転することにより、空気溜29内の空気を確実に排出することができる。これにより、サイホン管24内に空気が溜まってサイホンが機能しなくなることを防止でき、サイホン式取水装置による給水を長期間にわたって安定した状態で継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一形態例を示す気液混合物吸込装置の概略図である。
【図2】気液混合物吸込装置をサイホン式取水装置に適用した例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
11…気液混合物吸込装置、12…ケーシング、13…ポンプ、13a…吸込口、13b…吐出経路、14…吸込経路、14a…逆止弁、15…排気経路、15a…逆止弁、21…溜池、22…パイプライン、23…堤体、24…サイホン管、25…取水フロート、26…フレキシブル管、27…注水ポンプ、28…遮断弁、29…空気溜、31…フロート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封状態のケーシングと、該ケーシング内の液をケーシング外に排出するポンプと、気液混合物をケーシング内に吸い込む吸込経路と、ケーシング内のガスをケーシング外に排出する排気経路とを備えていることを特徴とする気液混合物吸込装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−283733(P2006−283733A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108225(P2005−108225)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)
【Fターム(参考)】