説明

気相ヒドロホルミル化方法

遷移金属−リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒及び水蒸気の存在下において少なくとも1種のアルデヒドを製造するための、気相触媒ヒドロホルミル化方法。驚くべきことに、供給流体に少量の水蒸気が存在することで触媒活性が維持される。さらに、活性を維持するために、失われたリガンドに代えて追加リガンドを加えてもよい。さらに、緩衝液による触媒の処理が触媒活性を回復させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年10月16日出願の米国仮出願番号No.61/252,450の利益を享受する。
本発明は、1種以上のアルデヒド生成物を製造するための、オレフィン系不飽和化合物をヒドロホルミル化する改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液相中において金属−有機リンリガンド錯体触媒の存在下、オレフィン系不飽和化合物を気体一酸化炭素及び水素と反応させることによりアルデヒドが容易に製造され、好ましい方法は連続ヒドロホルミル化を含み、そしてVIII族−オルガノホスフィットリガンド錯体触媒を含む溶液をリサイクルすることが、当該分野においてよく知られている。ロジウムが好ましいVIII族金属である。そのような方法は、US4,148,830;US4,717,775;及びUS4,769,498に示されている。本明細書において、そのような方法を以後「液相」方法とよぶ。そのような方法により製造されるアルデヒドは広範囲の用途、例えば脂肪族アルコールへの水素化、脂肪族アミンへのアミノ化、脂肪族酸への酸化、及び可塑剤を製造するためのアルドール縮合のための中間体、を有する。この方法は通常、分枝及び未分枝異性体生成物の混合物を形成する。
【0003】
当該分野においては、ノルマルもしくは未分枝アルデヒドはそのイソもしくは分枝異性体よりも価値が高いと考えられている。さらに、分枝異性体に対するノルマル異性体の比は一酸化炭素の分圧の関数であり、典型的には一酸化炭素の分圧が低いほど分枝異性体に対するノルマル異性体の比が高い生成物が得られることが知られている。ロジウム−オルガノホスフィットリガンド錯体により触媒された液相法はとても望ましい分枝異性体に対するノルマル異性体の比を与えることが示された。
【0004】
均質触媒系の不均質形態は一般的なものである。通常、不均質体は活性及び選択性が低いが、触媒/生成物の分離が容易であり、かつ熱除去が容易であるという利点がある。実行可能な不均質ヒドロホルミル化触媒を開発するために長年にわたって多くの研究が行われてきた。初期の触媒は、例えばUS3,352,924、US4,185,038、US4,361,711、US4,386,013、US4,456,694、及びUS5,409,877に報告されているような担持された金属酸化物、例えばシリカ上のロジウムであった。これらの触媒は、イソに対するノルマル(n/i)アルデヒドに関して非選択的であり、水素化のため高レベルの炭化水素を生じた。固定化したヒドロホルミル化触媒はUS3,847,997、US4,487,972、US4,098,727、US4,045,493、US4,504,684、US5,093,297、及びUS4,144,191に報告されている。これらにおいて、ヒドロホルミル化触媒は担体、例えば樹脂に、ある種のアニオンもしくは酸/塩基結合によって結合されている。通常、この種の触媒はスラリーとして液相反応において用いられる。良好な活性及び選択性が得られるが、この触媒は時間とともに金属を反応液に浸出させ、触媒/生成物の分離の利点を価値のないものとしてしまう。他の方法は、リガンドを担体/樹脂に結合することである。US5,789,333、US6,544,923、US6,121,184、US6,229,052、US6,362,354、US6,369,257、US6,380,421、及びUS6,437,192に報告されているように、次いで、結合されたリガンド/樹脂は金属錯体と反応して結合した金属−リガンド触媒前駆体を形成する。金属の浸出は結合した触媒にとっても問題である。US6,229,052及びUS6,369,257は、プロピレンをヒドロホルミル化するための固定層蒸気相触媒としてロジウム/グラフトポリマーを用いることを開示している。蒸気相触媒はスラリー体と同様の結果を与えるにもかかわらず、転化率及び活性は低い。蒸気相触媒により大きな活性低下も観察された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来の方法と比較して、長期にわたり実質的に安定な活性を維持することのできる気相ヒドロホルミル化方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1種のアルデヒド生成物を製造するためのヒドロホルミル化方法であって、気相反応条件においてヒドロホルミル化触媒の存在下で一酸化炭素、水素及び1種以上のオレフィン系不飽和化合物を接触させることを含み、前記触媒が少なくとも1種のオルガノホスフィットリガンドを含むリガンドと触媒金属を含み、前記触媒が担体上に物理吸着されており、少なくとも一部の時間水蒸気が存在している方法である。
【0007】
驚くべきことに、生成物のアルデヒドの分枝に対するノルマルの比は液相触媒においてみられるものと同じであることがわかった。特に、金属−オルガノホスフィット−担体を有する気相触媒がアルデヒド生成物の分枝異性体に対するノルマル異性体のとても高い比を達成することが発見された。金属−オルガノホスフィット−担体触媒の利点は、生成物から分離する必要がないことである。
【0008】
さらに驚くべきことに、供給流にわずかな水蒸気が存在することにより触媒活性が維持されることが見出された。さらに、活性を維持するために、失われたリガンドに代わり追加リガンドを加えてもよい。さらに、緩衝液による触媒の処理によって触媒活性が回復することも見出された。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】時間に対する生成物の形成の割合を示すグラフである。
【図2】時間に対する生成物の形成の割合を示すグラフである。
【図3】時間に対する生成物の形成の割合を示すグラフである。
【図4】時間に対する生成物の形成の割合を示すグラフである。
【図5】時間に対する生成物の形成の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の気相ヒドロホルミル化法は、気相中、工程の少なくとも一部の間に水蒸気の存在下において、オレフィンを対応するアルデヒドにヒドロホルミル化するために、オレフィン系不飽和化合物、一酸化炭素、水素、及び遷移金属−リガンド錯体ヒドロホルミル化触媒を用いる。所望により、この方法は追加リガンドを添加することを含み、また所望により触媒を緩衝液と接触させることを含む。
【0011】
本発明における触媒は、担体上に存在する別個の金属−リガンド錯体である。ここで「物理吸着されている」とは当該分野において周知であり、金属−リガンド錯体が「担体に物理吸着されている」とは、錯体のいずれの原子と担体のいずれの原子との間にシグマ結合が実質的に存在しないことを意味する。こうして、金属−リガンド錯体は担体に物理吸着されている。金属−リガンド錯体と担体の組み合わせを触媒もしくは担持された触媒とよぶ。
【0012】
「気相」とは、蒸気もしくは気体相を意味する。例えば、反応ガスはその露点より高い場合に気相となる。
【0013】
本明細書において「1つ」、「少なくとも1種」、「1種以上」は互換的に用いられている。「含む」、「含有する」及びその類義語は限定する意味を有するものではない。例えば、疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物とは、1種以上の疎水性ポリマーの粒子を含む組成物を意味するものと解釈される。
【0014】
また、端点による数値範囲の記載はその範囲の全ての数値を含む(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0015】
数値範囲及び/又は数値の記載は「約」を含むものと理解される。「約」は記載された値と実質的に同じである値を意味する。
【0016】
本発明のヒドロホルミル化方法において用いることのできる置換されたもしくは未置換のオレフィン系化合物は、2〜8個、好ましくは3〜6個の炭素原子及び1以上の炭素−炭素二重結合(C=C)を含む光学活性な(プロキラル及びキラル)及び非光学活性な(アキラル)不飽和化合物を含む。そのようなオレフィン系化合物は末端もしくは内部不飽和であってよく、直鎖、分枝鎖、又は環式構造であってよい。さらに、そのようなオレフィン系化合物は1種以上のエチレン系不飽和基を含んでいてもよい。混合ブテンのようなオレフィン混合物も用いてよく、たとえばラフィネートI及びラフィネートIIは当業者に良く知られている。そのようなオレフィン系化合物及びそれより得られる対応するアルデヒド生成物も本発明のヒドロホルミル化に悪影響を与えない1種以上の基もしくは置換基を含んでいてよく、好適な基もしくは置換基は、例えばUS3,527,809、US4,769,498に記載されている。
【0017】
一態様において、本発明の方法は、2〜8個、好ましくは3〜6個の炭素原子を含むアキラルαオレフィン及び4〜8個の炭素原子を含むアキラル内部オレフィン、並びにそのようなαオレフィン及び内部オレフィンの出発材料混合物をヒドロホルミル化することによる、非光学活性アルデヒドの製造に特に有用である。
【0018】
α及び内部オレフィンの例は、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、2−ブテン、2−メチルプロペン(イソブチレン)、2−メチルブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−ヘプテン、2−オクテン、シクロヘキセン、プロピレン二量体、ブタジエン、ピペリレン、イソプレン、2−エチル−1−ヘキセン、スチレン、3−フェニル−1−プロペン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等、並びに1,3−ジエン、ブタジエン、アルキルアルケノエート、例えばメチルペンテノエート、アルケニルアルカノエート、アルケニルアルキルエーテル、アルケノール、例えばペンテノール、アルケナール、例えばペンテナール、アルキルアルコール、アリルブチレート、ヘキセ−1−エン−4−オール、オクト−1−エン−4−オール、ビニルアセテート、アリルアセテート、3−ブテニルアセテート、ビニルプロピオネート、アリルプロピオネート、メチルメタクリレート、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、3−ブテンニトリル、5−ヘキセンアミド、エウゲノール、イソエウゲノール、サフロール、イソサフロール、アネトール、4−アリルアニソール、インデン、リモネン、β−ピネンを含む。好適な置換された及び未置換のオレフィン系出発材料は、Kirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 4版、1996年に記載されているオレフィン化合物を含む。
【0019】
本発明の方法において水素及び一酸化炭素も必要である。これらの気体は、石油分解及び精製を含むあらゆる出処から得ることができる。好ましくは、合成ガス混合物が用いられる。一酸化炭素及び水素を含む供給材料に転化することのできるあらゆる炭化水素含有供給流を用いることができ、最も好ましくは合成ガスが有用である。反応ゾーンにおける一酸化炭素に対する水素の比は約1:10〜約100:1、又は約50:1〜約1:50、好ましくは約20:1〜約1:20、より好ましくは約10:1〜約1:10である。有用な供給流は天然ガス(主にメタン、但し天然ガスの組成はその源によって異なる)、ナフサ、精製排ガス、LPG、ガスオイル、減圧残油、シェール油、アスファルト、様々な燃料オイル、及びプロセスリサイクル流を含む炭化水素を含む。一態様において、メタノールを一酸化炭素及び水素を含む供給成分に転化することができる。さらに、例えば水−ガスシフト反応によって水素を現場で形成してもよい。
【0020】
反応ゾーンに供給する前に一酸化炭素及び水素を含む原料(例えば合成ガス)を精製してもよい。本発明の方法に用いるため、合成ガスは好ましくは、硫化水素、硫化カルボニル、金属カルボニル、例えば鉄カルボニル及びニッケルカルボニル、アンモニア、塩基性有機化合物、例えばメチルアミン及びエチルアミン、並びに酸を中和する化合物のような阻害物質及び触媒毒を本質的に含まない。
【0021】
触媒は担体に物理吸着された別個の金属−リガンド錯体を含む。好ましくは、ヒドロホルミル化触媒は金属−オルガノホスフィットリガンド錯体触媒を含み、このリガンドは、例えばオルガノモノホスフィットリガンド、オルガノポリホスフィットリガンド、又はこれらの組み合わせを含む。より好ましくは、ヒドロホルミル化触媒は金属−オルガノホスフィットリガンド錯体触媒を含む。
【0022】
本発明の触媒は、担体に金属−リガンド錯体を加えることにより形成され、又は金属前駆体及びリガンドを担体に加えることにより現場で形成される。
【0023】
遷移金属−リガンド錯体触媒の好適な金属は、例えばロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)及びこれらの混合物より選ばれるVIII族金属を含み、好ましい金属はロジウム、コバルト、イリジウム及びルテニウムであり、より好ましくはロジウム、コバルト及びルテニウムであり、最も好ましくはロジウムである。他の可能な金属は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)及びこれらの混合物より選ばれるVIA族金属を含む。VIA族金属とVIII族金属の混合物のような金属の混合物も用いることができる。VIA族金属及びVIII族金属は"Chemistry of the Elements", Greenwood and Earnshaw, Pergamon Press, 1984に規定されている。
【0024】
遷移金属−オルガノホスフィットリガンド錯体触媒に加えて、遊離オルガノホスフィットリガンドが反応ゾーンに存在してもよい。本発明において、「オルガノホスフィットリガンド」とは、オルガノポリホスフィット及びオルガノモノホスフィットの両者のリガンドを包含する。オルガノホスフィットリガンドは錯体であっても未結合であってもよい。「遊離オルガノホスフィットリガンド」とは、錯体触媒のロジウム原子のような金属と錯体を形成していないオルガノホスフィットリガンドを意味する。
【0025】
オルガノホスフィットリガンドは好ましくはオルガノポリホスフィットリガンドを含む。一酸化炭素及び水素が存在する場合、金属はリガンド、一酸化炭素及び水素と直接結合すると考えられる。CO及び水素もリガンドと解釈されるが、本明細書においては「リガンド」とは、特に示さない限り、有機リン種を意味する。
【0026】
「錯体」とは、1種以上の電子リッチな分子(すなわちリガンド)と1種以上の電子不足分子もしくは原子(すなわち遷移金属)の結合により形成される配位化合物を意味する。例えば、用いることのできるオルガノモノホスフィットリガンドは、金属と配位共有結合を形成することのできる、1つの共有されていない電子対を有する1つのリン(III)ドナー原子を有する。用いることのできるオルガノポリホスフィットリガンドは、各々が独立に遷移金属と配位共有結合を形成することのできる、1つの共有されていない電子対を有する2以上のリン(III)ドナー原子を有する。錯体触媒の最終組成は、追加ホスフィットリガンド、例えば水素もしくは配位サイトを満足することのできるアニオン又は金属の核電荷を含んでいてもよい。追加非ホスフィットリガンドの例は、例えば、ハロゲン(Cl、Br、I)、アルキル、アリール、置換されたアリール、アシル、CF3、C25、CN、(R)2PO、及びRP(O)(OH)O(式中、各Rは同一でも異なっていてもよく、置換されたもしくは未置換の炭化水素ラジカル、例えばアルキルもしくはアリールである)、アセテート、アセチルアセトネート、SO4、PF4、PF6、NO2、NO3、CH3O、CH2=CHCH2、CH3CH=CHCH2、C25CN、CH3CN、NH3、ピリジン、(C25)3N、モノオレフィン、ジオレフィン及びトリオレフィン、テトラヒドロフラン等を含む。
【0027】
触媒金属上の有用な配位サイトの数は当該分野において公知である。従って、触媒種はそのモノマー、二量体もしくはより多くの核形態の錯体触媒混合物を含んでよく、これは好ましくは1つの金属分子、例えばロジウムあたり少なくとも1つの錯体形成したオルガノホスフィット含有分子を特徴とする。例えば、ヒドロホルミル化反応に用いられる好ましい触媒の触媒種は、ヒドロホルミル化反応により用いられる一酸化炭素及び水素を考慮して、オルガノホスフィットリガンドに加えて一酸化炭素及び水素と錯体形成する。
【0028】
オルガノホスフィットリガンドは少なくとも1つのホスフィット基を含み、その各々は3つのヒドロカルビルオキシラジカルに結合した1つの3価リン原子を含む。2つのホスフィット基に結合し、架橋するヒドロカルビルオキシラジカルは、より正確には「二価ヒドロカルビルジオキシラジカル」とよばれる。これらの架橋ジラジカルはヒドロカルビルに限定されない。
【0029】
ここで用いられる「アリールオキシ」は−O−アリール(このアリール基は芳香族環を含む)におけるような、1つのエーテル結合に結合した飽和もしくは不飽和アリールラジカルを意味する。好ましいアリールオキシ基は、1つの芳香族環、もしくは2〜4個の縮合したもしくは結合した芳香族環を含み、各環は約5〜約20個の炭素原子を含み、例えばフェノキシ、ナフチルオキシ、またはビフェノキシである。あらゆる前記ラジカル及び基は以下に記載のように、未置換であっても置換されていてもよい。
【0030】
ここで用いられる「末端基」は、リン原子の側鎖であり、2つのホスフィット基を架橋していない(すなわち末端、非架橋)部分を意味する。式Iにおいて、末端基はR1及びR2で表される。
【0031】
ここで用いられる「末端基対」とは、いずれかのリン原子からの側鎖である2つの部分を意味する。「閉鎖末端」とは、少なくとも2つの末端基対を含む部分が互いに結合している(a≧2、b=0)オルガノホスフィットリガンドを意味する。「開放末端」とは、少なくとも1つの末端基対を含む部分が互いに結合していない(b≧0)オルガノホスフィットリガンドを意味する。「二重開放末端」とは、少なくとも2つの末端基対を含む部分が互いに結合していない(b≧0)オルガノホスフィットリガンドを意味する。
【0032】
本発明のヒドロホルミル化法の遊離リガンド及び/又は金属−オルガノホスフィットリガンドのリガンドとして機能する好ましいオルガノホスフィットは、アキラル(光学不活性)又はキラル(光学活性)であってよい。アキラルオルガノポリホスフィットが好ましい。代表的なオルガノポリホスフィットは2以上の3級(3価)リン原子を含み、下式を有するものを含む。
【化1】

上式中、Xは2〜40個の炭素原子を含む置換されたもしくは未置換のn価有機架橋ラジカルであり、各R1は同一か相異なり、4〜40個の炭素原子を含む二価有機ラジカルを表し、各R2は同一か相異なり、1〜24個の炭素原子を含む置換されたもしくは未置換の一価炭化水素ラジカルを表し、a及びbは同一でも相異なっていてもよく、0〜6の値を有し、ただしa+bの合計は2〜6であり、nはa+bに等しい。もちろん、aが2以上である場合、各R1ラジカルは同一でも相異なっていてもよく、bが1以上である場合、各R2は同一でも相異なっていてもよい。
【0033】
上記のXで表されるn価(好ましくは二価)炭化水素架橋ラジカルの例及びR1で表される二価有機ラジカルの例は、非環式ラジカル及び芳香族ラジカルの両者を含み、例えばアルキレン、アルキレン−Qm−アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、及びアリーレン-(CH2)y-Qm-(CH2)y-アリーレンラジカル(式中、各yは同一でも相異なっていてもよく、0又は1の値を有し、Qは-C(R3)2-、−O−、−S−、−NR4−、−Si(R5)2−及び−CO−を表し、各R3は同一でも相異なっていてもよく、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル、及びアニシルを表し、R4は水素及び飽和もしくは未置換一価炭化水素ラジカル、例えば1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表し、R5は同一でも相異なっていてもよく、水素又はアルキルラジカルを表し、mは0又は1の値を有する)である。上記X及びR1で表されるより好ましい非環式ラジカルは、二価アルキレンラジカルであり、上記X及びR1で表されるより好ましい芳香族ラジカルは二価アリーレン及びビスアリーレンラジカル、例えば米国特許4,769,498、4,774,361、4,885,401、5,179,055、5,113,022、5,202,297、5,235,113、5,264,616、5,364,950、5,874,640、5,892,119、6,090,987、及び6,294,700に詳細に記載されているものである。上記R2で表される好ましい一価炭化水素ラジカルの例は、アルキル及び芳香族ラジカルを含む。好ましいオルガノホスフィットの例は、下式(II)〜(IV)を有するもののようなビスホスフィットを含む。
【化2】

上式中、式(II)〜(IV)の各R1、R2及びXは式(I)における規定と同じである。好ましくは、各R1及びXは、アルキレン、アリーレン、アリーレン−アルキレン、及びビスアリーレンより選ばれる二価炭化水素基を表し、各R2ラジカルはアルキル及びアリールラジカルより選ばれる一価炭化水素ラジカルを表す。そのような式(II)〜(IV)のオルガノポリホスフィットリガンドは、例えば米国特許4,668,651、4,748,261、4,769,498、4,774,361、4,885,401、5,113,022、5,179,055、5,202,297、5,235,113、5,254,741、5,264,616、5,312,996、5,364,950、及び5,391,801に開示されている。
【0034】
より好ましいオルガノビスホスフィットの例は、下式(V)〜(VII)を有するものである。
【化3】

上式中、Q、R1、R2、X、m、及びyは上記規定と同じであり、各Arは同一であるか異なり、置換されたもしくは未置換のアリールラジカルを表す。最も好ましくは、Xは二価アリール-(CH2)y-(Q)m-(CH2)y-アリールラジカル(式中、各yは独立に0又は1の値を有し、mは0又は1の値を有し、Qは−O−、−S−又は−C(R3)2であり、各R3は同一であるか異なり、水素又はメチルラジカルを表す)を表す。より好ましくは、上記式(V)〜(VII)のR3基の各アルキルラジカルは1〜24個の炭素原子を含み、上記Ar、X、R1及びR2基各アリールラジカルは6〜18個の炭素原子を含み、前記ラジカルは同一であっても異なっていてもよく、Xの好ましいアルキレンラジカルは2〜18個の炭素原子を含み、R1の好ましいアルキレンラジカルは5〜18個の炭素原子を含む。さらに、好ましくは、上記式の二価Arラジカル及びXの二価アリールラジカルは、この式のリン原子にフェニレンラジカルを結合させるこの式の酸素原子に対してオルト位である位置で-(CH2)y-(Q)m-(CH2)y-で表される架橋基が前記フェニレンラジカルに結合しているフェニレンラジカルである。また、フェニレンラジカル上に存在する場合、置換されたラジカルは、リン原子に置換されたフェニレンラジカルを結合させる酸素原子に対してフェニレンラジカルのパラ及び/又はオルト位に結合することが好ましい。
【0035】
有利には、リガンドは非イオン性である。理論によって限定しようとするものではないが、イオン性リガンドは緩衝液処理の有利な特徴を損なうものである。
【0036】
もちろん、上記式(I)〜(VII)の非イオン性及びイオン性オルガノポリホスフィットのR1、R2、X、Q及びArのいずれも、所望により本発明の方法の望ましい結果に悪影響を与えない1〜30個の炭素原子を含むあらゆる好適な置換基によって置換していてもよい。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びシクロヘキシル置換基のような対応する炭化水素ラジカルに加えて、前記ラジカル上に存在してもよい置換基は、例えばシリルラジカル、例えば−Si(R7)3;アミノラジカル、例えば−N(R7)2;ホスフィンラジカル、例えば−アリール−P(R7)2;アシルラジカル、例えば−C(O)R7アシルオキシラジカル、例えば−OC(O)R7;アミドラジカル、例えば−CON(R7)2及び−N(R7)COR7;スルホニルラジカル、例えば−SO27;アルコキシラジカル、例えば−OR7;スルフィニルラジカル、例えば−SOR7;スルフェニルラジカル、例えば−SR7;ホスホニルラジカル、例えば−P(O)(R7)2、並びにハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシラジカル等を含み、ここで各R7ラジカルは独立に、1〜18個の炭素原子を有する一価炭化水素基(例えばアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール及びシクロヘキシルラジカル)を表し、ただし−N(R7)2のようなアミノ置換基においては、各R7は窒素原子と共に複素環ラジカルを形成する二価架橋基をも表し、−C(O)N(R7)2及び−N(R7)COR7のようなアミド置換基においては、Nに結合した各R7は水素であってもよい。もちろん、オルガノポリホスフィットを与える置換されたもしくは未置換の炭化水素ラジカルは同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
置換基のさらなる例は、1級、2級及び3級アルキルラジカル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、neo-ペンチル、n-ヘキシル、アミル、sec-アミル、t-アミル、iso-オクチル、デシル、オクタデシル等;アリールラジカル、例えばフェニル、ナフチル等;アラルキルラジカル、例えばベンジル、フェニルエチル、トリフェニルメチル等;アルカリールラジカル、例えばトリル、キシリル等;脂環式ラジカル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、シクロヘキシルエチル等;アルコキシラジカル、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCH2CH2OCH3、−O(CH2CH2)2OCH3、−O(CH2CH2)3OCH3等;アリールオキシラジカル、例えばフェノキシ等;並びにシリルラジカル、例えば−Si(CH3)3、−Si(OCH3)3、−Si(C37)3等;アミノラジカル、例えば−NH2、−N(CH3)2、−NHCH3、−NH(C25)等;アリールホスフィンラジカル、例えば−P(C65)2等;アシルラジカル、例えば−C(O)CH3、−C(O)C25、−C(O)C65等;カルボニルオキシラジカル、例えば−C(O)OCH3等;オキシカルボニルラジカル、例えば−O(CO)C65等;アミドラジカル、例えば−CONH2、−CON(CH3)2、−NHC(O)CH3等;スルホニルラジカル、例えば−S(O)22H2等;スルフィニルラジカル、例えば−S(O)CH3等;スルフェニルラジカル、例えば−SCH3、−SC25、−SC25等;ホスホニルラジカル、例えば−P(O)(C65)2、−P(O)(CH3)2、−P(O)(C25)2、−P(O)(C49)2、−P(O)(C613)2、−P(O)CH3(C65)、−P(O)(H)(C65)等を含む。
【0038】
閉鎖末端オルガノビスホスフィットリガンドの例は、以下のものを含む。
下式を有する6,6'-[[4,4'-ビス(1,1-ジメチルエチル)-[1,1'-ビナフチル]-2,2'-ジイル]ビス(オキシ)]ビスジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン
【化4】

【0039】
下式を有する6,6'-[[3,3'-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5'-ジメトキシ-[1,1'-ビフェニル]-2,2'-ジイル]ビス(オキシ)]ビスジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン
【化5】

【0040】
下式を有する6,6'-[[3,3',5,5'-テトラキス(1,1-ジメチルプロピル)-[1,1'-ビフェニル]-2,2'-ジイル]ビス(オキシ)]ビスジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン
【化6】

【0041】
下式を有する6,6'-[[3,3',5,5'-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-[1,1'-ビフェニル]-2,2'-ジイル]ビス(オキシ)]ビスジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン
【化7】

【0042】
下式を有する(2R,4R)-ジ[2,2'-(3,3',5,5'-テトラキス-t-アミル-1,1'-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスフィット
【化8】

【0043】
下式を有する(2R,4R)-ジ[2,2'-(3,3',5,5'-テトラキス-t-ブチル-1,1'-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスフィット
【化9】

【0044】
下式を有する(2R,4R)-ジ[2,2'-(3,3'ジアミル-5,5'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスフィット
【化10】

【0045】
下式を有する(2R,4R)-ジ[2,2'-(3,3'ジ-t-ブチル-5,5'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスフィット
【化11】

【0046】
下式を有する(2R,4R)-ジ[2,2'-(3,3'ジ-t-ブチル-5,5'-ジエトキシ-1,1'-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスフィット
【化12】

【0047】
下式を有する(2R,4R)-ジ[2,2'-(3,3'ジ-t-ブチル-5,5'-ジエチル-1,1'-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスフィット
【化13】

【0048】
下式を有する(2R,4R)-ジ[2,2'-(3,3'ジ-t-ブチル-5,5'-ジメトキシ-1,1'-ビフェニル)]-2,4-ペンチルジホスフィット
【化14】

【0049】
下式を有する6-[[2'-[(4,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-1,3,2-ベンゾジオキサホスホル-2-イル)オキシ]-3,3'-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5'-ジメトキシ[1,1'-ビフェニル]-2-イル]オキシ]-4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
【化15】

【0050】
下式を有する6-[[2'-[1,3,2-ベンゾジオキサホスホル-2-イル)オキシ]-3,3'-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5'-ジメトキシ[1,1'-ビフェニル]-2-イル]オキシ]-4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
【化16】

【0051】
下式を有する6-[[2'-[(5,5-ジメトキシ-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-イル)オキシ]-3,3'-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5'-ジメトキシ[1,1'-ビフェニル]-2-イル]オキシ]-4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
【化17】

【0052】
開放末端オルガノビホスフィットリガンドの例は、以下のものを含む。
下式を有するリン酸の2'-[[4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]-3,3'-ビス(1,1-ジメチルエチル)-5,5'-ジメトキシ[1,1'-ビフェニル]-2-イルビス(4-ヘキシルフェニル)エステル
【化18】

【0053】
下式を有するリン酸の2-[[2-[[4,8-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2,10-ジメトキシジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキソホスフェピン-6-イル]オキシ]-3-(1,1-ジメチルエチル)-5-メトキシフェニル]メチル]-4-メトキシ-6-(1,1-ジメチルエチル)フェニルジフェニルエステル
【化19】

【0054】
二重開放オルガノビスホスフィットリガンドの例は以下のものを含む。
下式を有するリン酸の3-メトキシ-1,3-シクロヘキサメチレンテトラキス[3,6-ビス(1,1-ジメチルエチル)-2-ナフタレニル]エステル
【化20】

【0055】
下式を有するリン酸の2,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-1,4-フェニレンテトラキス[2,4--ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エステル
【化21】

【0056】
下式を有するリン酸のメチレンジ-2,1-フェニレンテトラキス[2,4--ビス(1,1-ジメチルエチル)フェニル]エステル
【化22】

【0057】
下式を有するリン酸の[1,1'-ビフェニル]-2,2'-ジイルテトラキス[2-(1,1-ジメチルエチル)-4-メトキシフェニル]エステル
【化23】

【0058】
より好ましい態様において、二重開放末端オルガノビスホスフィットリガンドの例は以下のものを含む。
【化24】

上式中、R2は上記規定と同じであり、各R28は独立に、C1-20アルキルラジカル又はアルコキシラジカルであり、各R29は独立に、水素原子、C1-20アルキルラジカル又はアルコキシラジカルである。
【0059】
最も好ましい態様において、二重開放末端オルガノビスホスフィットリガンドは下式のリガンドUである。
【化25】

【0060】
本発明の方法において用いることのできるオルガノモノホスフィットは、1つのホスフィット基を含むあらゆる有機化合物を含む。オルガノモノホスフィットの例は下式を有するものを含む。
【化26】

上式中、R8は、三価非環式及び三価環式ラジカルのような4〜40個の炭素原子を含む置換されたもしくは未置換の三価炭化水素ラジカル、例えば1,2,2-トリメチロールプロパンのような三価アルキレンラジカル、又は1,3,5-トリヒドロキシシクロヘキサンより得られるもののような三価シクロアルキレンラジカルを表す。そのようなオルガノモノホスフィットは、例えばUS4,567,306に詳細に記載されている。
【0061】
ジオルガノホスフィットの例は下式を有するものを含む。
【化27】

上式中、R9は4〜40個の炭素原子を含む置換されたもしくは未置換の二価炭化水素ラジカルを表し、Wは1〜18個の炭素原子を含む置換されたもしくは未置換の一価炭化水素ラジカルを表わす。
【0062】
上記式中のWで表される置換されたもしくは未置換の一価炭化水素ラジカルの例は、アルキル及びアリールラジカルを含み、R9で表される置換されたもしくは未置換の二価炭化水素ラジカルの例は、二価非環式ラジカル及び二価芳香族ラジカルを含む。二価非環式ラジカルの例は、例えばアルキレン、アルキレン−オキシ−アルキレン、アルキレン−NX2−アルキレン(Xは水素又は置換されたもしくは未置換の炭化水素ラジカルである)、アルキレン−S−アルキレン、及びシクロアルキレンラジカルを含む。より好ましい二価非環式ラジカルは、例えばUS3,415,906及びUS4,567,302に開示されているような二価アルキレンラジカルである。二価芳香族ラジカルの例は、例えばアリーレンビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、アリーレン−オキシ−アリーレン、アリーレン−NX2−アリーレン(X2は上記規定と同じである)、アリーレン−S−アリーレン、及びアリーレン−S−アルキレンを含む。より好ましくは、R9は、例えばUS4,599,206及びUS4,717,775に開示されているような二価芳香族ラジカルである。
【0063】
より好ましいジオルガノモノホスフィットの例は、下式のものを含む。
【化28】

上式中、Wは上記規定と同じであり、各Arは同一であるか異なり、置換されたもしくは未置換の二価アリールラジカルを表し、各yは同一であるか異なり、0もしくは1の値を有し、Qは−C(R10)2−、−O−、−S−、−NR11−、−Si(R12)2−及び−CO(式中、各R10は同一であるか異なり、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル、及びアニシルを表し、R11は水素又は1〜10個の炭素原子を有するアルキルラジカル、好ましくはメチルを表し、各R12は同一であるか異なり、水素又は1〜約10個の炭素原子を有するアルキル、好ましくはメチルを表し、mは0又は1の値を有する。そのようなジオルガノモノホスフィットは、例えばUS4,599,206、US4,717,775及びUS4,835,299に詳細に記載されている。
【0064】
トリオルガノモノホスフィットの例は、下式を有するものを含む。
【化29】

上式中、各R13は同一であるか異なり、1〜24個の炭素原子を有する置換されたもしくは未置換の一価炭化水素ラジカル、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、又はアラルキルラジカルである。トリオルガノモノホスフィットの例は、例えばトリアルキルホスフィット、ジアルキルアリールホスフィット、アルキルジアリールホスフィット、及びトリアリールホスフィット、例えばトリフェニルホスフィット、トリス(2,6-トリイソプロピル)ホスフィット、トリス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェニル)ホスフィット、並びにより好ましいトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィットを含む。これらの一価炭化水素ラジカル部分は官能化されていてもよいが、ただしこの官能基は遷移金属と相互作用しないか又はヒドロホルミル化を阻害しないものである。官能基の例は、アルキルもしくはアリールラジカル、エーテル、ニトリル、アミド、エステル、−N(R11)2、−Si(R12)3、ホスフェート等(R11及びR12は前記の規定と同じである)を含む。そのようなトリオルガノモノホスフィットはUS3,527,808及びUS5,277,532に詳細に記載されている。
【0065】
金属−リガンド錯体に加えて、遊離リガンド(すなわち、金属と錯体を形成していないリガンド)も反応ゾーンに存在していてよく、好ましくは担体に物理吸着している。この遊離リガンドは前記オルガノホスフィットリガンドのあらゆるものに対応する。本発明のヒドロホルミル化方法は、金属1モルあたり約0.1モル以下〜約100モル以上の遊離リガンドを含み得る。好ましくは、本発明のヒドロホルミル化方法は、触媒金属1モルあたり約1〜約50モルのリガンド、より好ましくは約1.1〜約4モルのリガンドの存在下で行われる。この量のリガンドは、存在する金属に結合した(錯体を形成した)リガンドの量と遊離(錯体を形成していない)リガンドの量の合計である。所望により、例えば所定の量の遊離リガンドを維持するために、いずれの時点において、適当な方法で担体に追加リガンドを加えてもよい。
【0066】
上記の好ましいオルガノビスホスフィットリガンドを含むあらゆるオルガノポリホスフィットリガンドを、リン(III)原子の1つをのぞいてすべてをリン(V)原子に転化するように酸化させてもよい。得られる酸化されたリガンドはオルガノモノホスフィット−ポリホスフェート、又は好ましくはオルガノモノホスフィット−モノホスフェートを含み、これは本発明のオルガノモノホスフィットリガンドを与えるように、遷移金属に対して少なくとも2/1モル過剰で用いられる。
【0067】
本発明のヒドロホルミル化方法に存在する金属−リガンド錯体の量は、望ましいヒドロホルミル化方法を触媒するに必要な最小の量である。通常、プロピレンのヒドロホルミル化において、金属、好ましくはロジウムの量は、金属の乾燥重量+担体の乾燥重量を基準として、約0.001wt%より多く、好ましくは約0.1wt%より多い。金属の量は約15wt%未満、好ましくは1wt%未満である。ブテンのようなC4以上のオレフィンに対しては、金属の好適な量はより多くてもよい。それは、高級オレフィンはプロピレンと比べて活性が低いからである。一方、粉末形態(例えば100%金属−リガンド錯体)のRh−リガンド錯体を用いてもよいが、これは高価であり、固体状態不均一触媒用途に固有の酷使に耐えるほど強くなく、従って担持された触媒が好ましい。ロジウムはとても高価な金属であるため、触媒の量は通常最小に維持され、温度等の他のパラメータは所望の反応性を得るように調整してよい。
【0068】
本発明の方法に用いることのできるオルガノポリホスフィット及びオルガノモノホスフィットの両者(遊離及び錯体形態を含む)は、遷移金属に対する各リガンドのモル比が、遷移金属の当量に対して少なくとも2当量のP(III)原子であるような量で用いられる。好ましくは、各リガンドの量は遷移金属の1モルあたり少なくとも2.5モルであるが、好ましくは10モル未満であり、さらにより好ましくは遷移金属の当量に対して4当量未満のP(III)である。あるいは、固体リガンド(例えばイオン性リガンド塩)を担体として用いる場合、触媒金属に対するリガンドのモル比の上限はない。
【0069】
遷移金属、オルガノポリホスフィットリガンド、及びオルガノモノホスフィットリガンドの量は公知の分析法によって容易に決定することができる。この分析より、必要なモル比が容易に計算され、決定される。遷移金属、好ましくはロジウム、の量は、原子吸収もしくは誘導結合プラズマ(ICP)法により決定される。リガンドの存在及びその量は31P核磁気共鳴スペクトル(NMR)により又は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析することができる。これは、錯体はテトラヒドロフラン(THF)又はトルエンのような溶媒によって担体から容易に分離するため可能である。
【0070】
例えば、加水分解もしくは酸化によって分解したリガンドに代えるため、気相反応ゾーンに追加リガンドを加えてもよい。担体上のオルガノホスフィットリガンドの量は、連続ヒドロホルミル化方法の間のいずれにおいても、例えば所定量のオルガノホスフィットリガンドを連続的にもしくは断続的に触媒層に加えるといった適当な方法で増加させてもあるいは維持してもよい。
【0071】
有機リンリガンド用の好ましいキャリア液体はアルデヒド生成物である。他の好適なキャリア液体は揮発性有機化合物、例えばTHFもしくはトルエンを含み、これは担体にリガンドを付着させる反応の際に容易に揮発する。キャリア液体の混合物も用いることができる。本発明において、オルガノホスフィットリガンドは、キャリア液体を蒸発させる際に容易に再導入し、金属−リガンド錯体を形成することができる。
【0072】
ロジウムの量は、最初に投入したロジウムの量が不十分であるとわかった場合に、リガンド添加と同様にして必要に応じて増加させることができる。
【0073】
本発明において用いられる担体は、用いられるヒドロホルミル化条件において不活性である固体粒状材料である。この担体は例えば、シリカ、γ−アルミナ、チタニア、ジルコニア、アルミナシリケート、クレー、及び活性炭のような担体材料から選択される。高表面積の担体を低表面積の担体上に付着させた混合複合体担体も用いてよい。担体の表面積は問題ではないように考えられ、従って広範囲の表面積、例えば少なくとも約1m2/g以上(BETにより測定)が十分である。
【0074】
本発明において用いられるカーボン担体は当該分野において公知である。非グラファイト化活性担体が好ましい。この担体は、気体、蒸気、及びコロイド状固体に対する高い吸着能及び比較的高い比表面積を特徴とする。
【0075】
本発明のヒドロホルミル化方法は非対称であっても不非対称であってもよく、好ましい方法は不非対称であり、連続、半連続、もしくはバッチ法のいずれの形態で行ってもよい。ここで「ヒドロホルミル化」とは、1種以上の置換されたもしくは未置換のオレフィン系化合物を1種以上の置換されたもしくは未置換のアルデヒドに転化することを含む操作可能な非対称及び不非対称ヒドロホルミル化気相法を意味する。
【0076】
特定の反応条件はそれほど問題ではなく、少なくとも1種の所望の生成物を形成するに十分な反応条件であってよい。正確な反応条件は、高い触媒選択性、活性、寿命及び操作の容易性、並びに出発材料の反応性及び安定性等によってきまる。
【0077】
本発明において、GHSVは気体時間空間速度であり、これは触媒上の気体流の速度である。これは1時間あたり触媒上を通過する気体の体積(25℃、1気圧)を触媒の体積で割ることにより求められる(供給材料のリットル/hr/触媒のリットル)。GHSVは、例えば反応条件、供給材料の組成、及び用いる触媒の量及びタイプのような多くのファクターによって大きく異なる。GHSVは約1〜約30,000hr-1、好ましくは少なくとも約500hr-1、より好ましくは少なくとも1,000hr-1に維持される。
【0078】
通常、本発明のヒドロホルミル化方法はあらゆる操作可能な反応温度で行ってよい。反応ゾーンにおける温度は約15℃〜約200℃、好ましくは約50℃〜約150℃、特に好ましくは約75℃〜約125℃の温度範囲より選ばれる。一態様において、この温度は約−25℃より高く、約200℃未満である。
【0079】
通常、本発明のヒドロホルミル化方法はあらゆる操作可能な反応圧力で行ってよい。通常、水素、一酸化炭素及びオレフィン出発化合物を含む総気体圧力は約1psia(6.9kPa)〜約10,000psia(68.9MPa)である。しかし、通常、水素、一酸化炭素及びオレフィン出発化合物の総気体圧力は、好ましくは約2,000psia(613.8MPa)未満、より好ましくは約500psia(3.4MPa)未満である。さらに、本発明のヒドロホルミル化方法の一酸化炭素分圧は約1psia(6.9kPa)〜約1000psia(6,890kPa)であり、より好ましくは約3psia(20.7kPa)〜約800psia(5,516kPa)であり、さらに好ましくは約20psia(137.8kPa)〜約100psia(689kPa)であり、水素分圧は好ましくは約5psia(34.5kPa)〜約500psia(3,450kPa)であり、より好ましくは約10psia(68.9kPa)〜約300psia(2070kPa)である。一態様において、水素、一酸化炭素及びオレフィン出発化合物を含む総気体圧力は約25psia(173kPa)より高く、約2,000psia(13,800kPa)未満である。
【0080】
ヒドロホルミル化反応は、触媒の固定層を用いてチューブ状反応器内で行われる。反応体は、チューブ状反応器内の固定層に下向きもしくは上向き、あるいは他の非垂直角度、又はこれらの組み合わせで供給することにより触媒に供給される。プラグフローによって操作し、反応ゾーン内の乱流を最小にするようにデザインされた反応器を用いてもよい。ヒドロホルミル化反応は触媒の動的層中で行ってもよい。そのような反応において、触媒層は触媒の流動層の場合のように動く。
【0081】
オレフィン反応体が沸点の高い容易に気化しない材料である場合、低沸点非反応性溶媒又は希釈剤で希釈し、蒸気相中の固体触媒上に移してもよい。希釈度は、ある場合には、まったく大きてもよく、もちろん、そのような条件はヒドロホルミル化のコストに悪影響を与える。好適な溶媒及び希釈剤は、脂肪族及び芳香族炭化水素、水蒸気、エステル、非凝縮ケトン等を含む。
【0082】
水蒸気は、連続及び/又は断続的に、反応条件において触媒と接触される。一態様において、水は反応の活性を実質的に維持する量で存在する。理論により限定するものではないが、水蒸気は触媒阻害剤もしくは触媒毒として作用する一部分解したリガンドフラグメントの分解を促進すると考えられる。水蒸気は、1以上の供給流を水含有容器(例えばバブラー)に通す、又は触媒の上流の反応ゾーン又は供給流に直接水蒸気を注入するようないくつかの方法で導入することができる。水の量は重要であるとは考えられないが、触媒への供給材料は反応器ないで露点より高いことが好ましく、また触媒上の不純物を加水分解するに十分な量であることが好ましい。
【0083】
バッチモード法に必要な水の最小量は、触媒に供給される時間あたりの水の量(モル/hr)を水が存在する時間をかけ、この値を触媒層中に存在するRhのモル数と比較することにより推定される。水のモル数は、有利には、Rhのモル数の少なくとも0.001倍であり、少なくとも0.01倍、少なくとも0.1倍、さらに好ましくはRhのモル数と少なくとも等しくてもよい。一態様において、水が連続的に存在する連続操作において、水の量は有利には、モル−モル基準で、分解するリガンドの量以上である。リガンドの分子量に応じて、典型的なオルガノホスフィットリガンド分解速度は、通常のヒドロホルミル化条件において、1日あたり担持された触媒1リットルに対してリガンド0.6g未満であり、好ましくは0.1g未満であり、最も好ましくは0.06g未満である。過剰の水蒸気は、本発明の方法にそれほど悪影響を与えない希釈流として作用する。それは、ほとんどの場合、多量の不活性ガスがすでに存在しているからである。しかしながら、液体に凝縮する過剰の水を避けることが好ましい。これは、加熱し及び/又は他の供給流で希釈した場合に得られる混合した供給流の露点が十分高いように、周囲温度において1つの供給流のみを飽和させることによって達成される。
【0084】
供給流が加水分解用の水を十分に含まない場合、活性の低下が観察される。活性を回復させるために追加量の水蒸気を加えてもよい。操作条件に応じて、水を加えてもよく、供給流条件(すなわちオレフィンの多少)に応じて変えてもよい。原料(オレフィンもしくは合成ガス)は通常の操作において十分な水を含み、追加水蒸気は必要ないべきであるが、必要に応じて触媒活性を維持するために加える水の量を変えてもよい。
【0085】
供給流が、未反応オレフィン、合成ガス、不活性ガス(アルカン、N2等)並びにアルデヒド蒸気を含むような、従来の液相ヒドロホルミル化反応器の放出流である場合、原料、触媒回収及び処理法(US6,307,110、US5,183,943、US5,741,942)及びアルドール縮合反応(US4,148,830)のような様々な源からの水蒸気を含んでよい。新たな液相反応器触媒溶液は十分な量の水を含まなくてよく、従って液相反応器の排出液中に定常量の水蒸気が確立するまで追加水を加えることが必要であろう。
【0086】
本発明のヒドロホルミル化方法は、他のプロセス排出流、例えば他のオレフィン含有流から価値のある反応体を回収する同様の利点を有するような、カルボニル化もしくは水素化からの排出流に用いてもよい。
【0087】
一態様において、触媒は緩衝液、好ましくは水性緩衝液と接触される。有利には、緩衝液は反応停止後に触媒と接触される。理論付けようとするものではないが、緩衝液はホスフィット分解物を除去すると考えられる。この分解物は触媒阻害剤もしくは触媒毒として作用し、さらに追加ホスフィットリガンドの分解を触媒するとも考えられる。
【0088】
好適な緩衝液の例は、US5,741,942のカラム39に記載されており、溶液のpHが3〜9(好ましくは4〜8、最も好ましくは4.5〜7.5)であるようなオキシ酸塩(及び対応する酸との混合物)を含む。緩衝液の例は、ホスフェート、ホスフィット、カーボネート、シトレート、及びボレート化合物より選ばれる1種以上のアニオンとアンモニウム及びアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウム等)からなる群より選ばれる1種以上のカチオンの混合物を含む。好ましい緩衝液は、ホスフェートもしくはシトレート緩衝液を含む。緩衝液の混合物を用いてもよい。例えば、US4,567,306及びUS4,835,299に教示されているように、オルガノホスフィットリガンドの加水分解により形成した酸性加水分解副生成物を除去するために、所望により、有機窒素化合物を緩衝液に加えてもよい。好ましい窒素化合物は、揮発性であり、pKa±3pH単位を示すべきである。緩衝液は有利には、水、又は水と極性有機溶媒、例えばジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、もしくはC1-C10アルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールもしくはこれらの混合物)との混合物を含む。リガンド及び触媒の浸出を防ぐために、緩衝液溶媒への溶解性が低いリガンド及び触媒により緩衝液処理を行うことが望ましい。通常のイオン効果緩衝液はこの進出を促進する。さらに、高濃度緩衝液溶液は触媒浸出量を最小にするかもしれない。緩衝液処理に好ましいリガンドは水溶性の低い(1ppm未満)ものである(これはOECD Guidelines for Testing of Chemicals, Vol.105, "Water Solubility", July 27, 1995に記載されている高速液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィーによって容易に決定される)。
【0089】
緩衝液処理の頻度は、リガンド分解の速度、方法の開始時に存在するリガンドの量、担体表面積、及び他の因子に依存する。幸いにも、緩衝液洗浄が必要であるいくつかの指標がある。水蒸気が接触したにもかかわらず活性が低下したことは、追加量のリガンドの分解が発生し、この分解生成物を除去して活性を向上させることが必要であることを示している。理論により限定するものではないが、分解生成物は最終的に堆積し、触媒の活性サイトをブロックし、担体の細孔を詰まらせ、及び/又は触媒阻害剤として機能する。他の指標は、上記のリガンド分解速度を基準とした計算より調べられる。緩衝液処理は、特定の量のリガンドが分解し、触媒の活性サイトをブロックするもしくは妨げるときを予想するそのような計算に基づいて開始される。第一の近似式として、同じリガンドを用いる液相触媒におけるリガンド分解速度を用いて、反応温度が同じとして本発明の気相方法におけるリガンド分解速度を推定することができる。いずれの方法によっても、所望の特性を維持するために定期的に計画した基準できまった処理を行う。
【0090】
緩衝液処理は通常持続時間が短く、有利にはせいぜい数時間である。この処理は好ましくは100℃未満、より好ましくは70℃未満、最も好ましくは40℃未満において行われる。この処理はバッチモード又は連続的に行ってよい。緩衝液の量は有利には、触媒上に存在する酸不純物を中和するに十分な量である。緩衝液処理の終了は、処理の前後の緩衝液のpHを測定することにより決定される。0.5pHユニット未満(好ましくは0.1pHユニット未満)のpH低下は、ほとんどの酸不純物が除去されたことを示している。より大きなpH低下は、さらなる処理が必要であることを示唆している。またpH低下は緩衝液の濃度にも依存しているが、通常緩衝液供給溶液中の0.001〜0.5モルの緩衝液濃度が好ましい。所望により、残留塩を除去するために、緩衝液処理後に水洗浄が行われる。リガンドの酸化を防ぐために、緩衝液及び水洗浄液はすべて脱気する(O2及び過酸化物を除く)べきである。この処理は操作圧力において、好ましくは不活性ガス(例えばN2)もしくは合成ガス下において行うことができる。
【0091】
本発明の方法を従来の液相ヒドロホルミル化反応ゾーンの排出流で用いる場合、気相反応器への供給材料(以後「反応ガス」又は「反応生成物ガス」とする)は、限定するものではないが、反応において形成された少なくとも1種のアルデヒド生成物、及び所望により未反応オレフィン、一酸化炭素、及び/又は水素を含む未転化反応体を含む反応混合物を含むものとする。
【0092】
反応生成物及び出発材料に加えて、気相反応器及び/又は液相反応器から出るヒドロホルミル化反応ガスは少量の追加化合物、例えばこの方法の間に現場で形成したもしくは故意に加えたものをも含んでいてよい。そのような追加成分の例は、水、触媒溶媒、及び現場で形成した生成物、例えば飽和炭化水素、及び/又は出発材料に対応する未反応異性体化オレフィン、及び/又は高沸点アルデヒド縮合生成物、及び/又は触媒及び/又はオルガノホスフィットリガンドの1種以上の分解性生物(オルガノホスフィットリガンドの加水分解により形成した副生成物を含む)を含む。
【0093】
排気流の組成に応じて、オレフィンを生成物に転化するに必要な化学量論量を維持するために、追加一酸化炭素及び水素を加えることが必要である。所望により、液相反応器から凝結物(又は混入した液体)を除去するために、気相反応器の上流にノックアウトポット、デミスター又は凝結器を配置することが望ましい。高圧において高い反応速度が観察される場合には、気相ヒドロホルミル化反応器に入る排出流の圧力を高めるために上流ガスコンプレッサーを用いてもよい。
【0094】
所望の生成物の回収及び精製は適当な手段で行ってよい。本発明の方法の所望の生成物は従来の方法において回収され、1以上の分離器もしくは分離ゾーンを用いて粗反応生成物から所望の反応生成物を回収してもよい。好適な分離及び精製方法は、例えば蒸気相からの凝結、蒸留、相分離、抽出、吸着、結晶化、膜法、誘導体形成等を含む。
【0095】
一態様において、気相中のアルデヒド生成物は気相水素化反応器に送られ、アルデヒドが少なくとも1種のアルコールに転化される。これは反応器の間でアルデヒドを精製してもしくは精製することなく行われる。
【実施例】
【0096】
本発明の方法を以下の例を参照してさらに説明する。この例は本発明の使用の純粋な例示である。この例の記載を参照すれば、他の態様は当業者に明らかであろう。
【0097】
以下の例において、反応速度は、時間あたり触媒1立方フィート当たり形成したアルデヒドの量(ポンド)で示し(lb/ft3 cat-hr)、ガス流速は時間あたりの標準リットル(SLH)で示す。オレフィン供給材料の純度は99.8パーセント以上である。特に示さない限り、部及びパーセントはすべて重量基準である。
【0098】
一般的ヒドロホルミル化方法
方法A:316本のステンレス製Uチューブ又はガラス製チューブからなる気相反応器において反応を行う。チューブを熱制御オイル浴中で加熱する。反応系はコンピュータにより制御され、無人で24時間操作可能である。H2、CO、オレフィン及びN2は独立に反応器に供給される。反応器の下降流側はガラスビーズが充填されており、プレヒータとして機能する。触媒は反応器の上昇流部位の初めに配置されている。触媒容量は1.5mLである。チューブの残りにはガラスビーズが充填されている。反応器を出る生成物流は気相中に保持され、オンラインガスクロマトグラフ(GC)に送られ、そこで分析される。生成物混合物中に観察される唯一の化合物は未反応供給材料、イソアルデヒド、及びノルマルアルデヒドである。飽和炭化水素もしくはアルドール縮合生成物は検出されない。
【0099】
方法B:反応器は気体供給原料用の入口ラインと生成物流用の出口ラインを備えた120mLのFisher Porter(商標)である。入口ラインはチューブの底まで延び、スパージャーが末端となっている。反応チューブを熱制御オイルバス中で加熱する。反応系はコンピュータ制御され、無人で24時間操作可能である。H2、CO、オレフィン及びN2を独立に反応器に入れる。反応器から出る生成物流を気相中に保ち、オンラインGCに送り、流体を分析する。反応チューブにはまず開放上部口からガラスビーズを入れ、次いで1.00g(2.5mL)の担体を加える。次いで反応器をオイルバスに入れ、ガラス反応器の反応体入り口及び生成物出口ラインに接続する。窒素パージ下において触媒溶液をシリンジにより担体層に加える。触媒溶液でできるだけ担体層を覆うようにする。合成ガス(H2:CO=1:1、100psig)流を開始し、系を70℃に加熱し、2時間維持する。次いでオレフィン流を開始する。
【0100】
以下のようにして触媒を洗浄する。(1)オレフィン流を停止し、H2:COを1:1(100psig)に調整する。(2)pH=6.71の燐酸ナトリウム緩衝液(0.08モル)をシリンジによって加え、触媒層/ガラスビーズを完全に覆う。(3)合成ガスをこの液体に10分間散布し、次いでシリンジによってできるだけ液体を除去する。合成ガス流を2時間保ち、次いでオレフィン流を再び開始し、合成ガス比を元に戻す。リガンドを以下のようにして加える。オレフィンを停止し、H2:COを1:1(100psig)に調整する。あらかじめロジウムを加えた1.5当量のリガンドを含むTHF溶液をシリンジによって触媒層に加える。合成ガス流を2時間保ち、次いでオレフィンを再び開始し、合成ガス比をヒドロホルミル化条件に再び調整する。
【0101】
例1−Rh=0.5wt%
以下のようにして触媒を調製する。N2ドライボックス中において、0.0267gのRh(CO)2AcAc及び0.0865gのリガンドD(リガンドD:Rh=1)を1.5mLのテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。この溶液を1ステップで2.04gの10-20メッシュKA−160(市販入手可能なシリカ)に加える。この混合物を穏やかに振盪し、ついでドライボックスから出し、密閉したバイアルにいれ、約1/2時間回転させる。この触媒は0.5wt%のロジウムを含んでいる。次いで、0.760g(1.5mL)の触媒を反応器チューブに入れる。この触媒は、H2:CO=1:1中において70℃、100psigにおいて2時間加熱することにより「活性化」される。流速は約10SLHである。
【0102】
この後、プロピレンを加え、プロピレン=6.74SLH、H2=2.6SLH、及びCO=1.60SLHに調整し、圧力80psig及び温度70℃において方法Aに従う。ノルマル−イソ生成物の比(n/i)=26.9及び119.3lb/ft3 cat-hrにおいて約6時間まず触媒を活性を過度にする。48時間以内で活性は35lb/ft3 cat-hrに低下する。温度を60℃に下げ、17lb/ft3 cat-hrのアルデヒド活性において1週間操作する。この間、n/iは29で比較的一定のままである。
【0103】
理論付けようとするものではないが、最初の過活性は触媒に対して毒性である分解性生物の形成前の活性であると考えられ、活性の低下はそのような触媒毒の堆積によるものと考えられる。アルドール反応からの現場で形成した水(及び供給材料からの不純物)が、それが形成するのと同じ速度で毒を分解する時点において活性レベルは安定する。
【0104】
例2−Rh=0.125wt%
ロジウムの量が0.125wt%であり、リガンドD:Rhの比が1.5であり、当初の条件が50℃及び50psigであることを除き、例1を繰り返す。48時間後、60のn/i及び59.2lb/ft3 cat-hrのアルデヒド形成において触媒活性はピークである。この活性は低下し、21.7lb/ft3 cat-hrにおいて200時間比較的安定を保つ。n/iは本質的に一定である。
【0105】
例3−Rh=0.06wt%及び水飽和合成ガス
ロジウムの量が0.06wt%であり、リガンドD:Rhの比が1.5であり、当初の条件が60℃及び25psigであることを除き、例1を繰り返す。まず48lb/ft3 cat-hrまで上昇し、ついで31lb/ft3 cat-hrまで低下する。時間に対する活性を図1に示す。9日において、合成ガスを反応器に入れる前に水に通すことにより水で飽和させる。40のn/iにおいて33lb/ft3 cat-hrに活性は上昇する。図1は触媒に対する安定化効果を明確に示している。
【0106】
例4
例1と同様にしてリガンドU:Rh=1.5である0.125wt%ロジウム触媒を調製し、60℃、25psigにて方法Aを用いて実験を行う。触媒はH2:CO=1:1にて60℃で2時間加熱することにより「活性化」する。流速は約10 SLHである。次いでプロピレンを加え、プロピレン=6.74SLH、H2=2.6SLH、及びCO=1.60SLHに調整する。合成ガスは開始から43日まで水で飽和しない。触媒活性は時間とともに徐々に上昇し、20.5lb/ft3 cat-hrで一定となる(当初の上昇は残留触媒活性を示している)。この条件でn/iは114である。39日で開始し、全ての速度は半分に低下する。活性及びn/iはそれぞれ17.5lb/ft3 cat-hr及び100に低下する。42日において、水−飽和合成ガスが開始する。70日まで活性は21lb/ft3 cat-hrまで徐々に上昇し、1/2の流速においてさえも当初の触媒の活性よりも高い。
【0107】
例5−(方法B)
ガラス反応器チューブに、入口ガス供給スパージャー以上のレベルまでガラスビーズを入れる。次に、10-20メッシュのKA-160を担体として加え、反応器をシールし、N2中に入れる。例1と同様にして、しかし方法Bを用いて、THFに溶解したRh(CO)2AcAc及びリガンドD(L:Rh=1.15)をシリンジにてKA-160に加える。ロジウム濃度は520ppmである。プロピレンを加える前に例1と同様にして触媒を現場で活性化させる。反応の間、リガンドを触媒に加える。以下のようにして定期的に緩衝液によって触媒も洗浄する。結果を図3に示す。実験は70℃、100psig、H2=2.80SLH、CO=1.60SLH、及びプロピレン=6.74SLHにて開始する。合成ガスは水飽和する(残留触媒活性化期間及び当初の過活性は存在しない)。4日において、THF中0.5当量のリガンドDを触媒に加える。37.2lb/ft3 cat-hr及びn/i比52において活性は一定となる。8日から39日まで、活性は一定である。
【0108】
温度は39日において80℃に上昇する。他の条件はすべて同じである。活性は40lb/ft3 cat-hrに上昇し、n/iは33に低下する。
【0109】
緩衝液洗浄1−42日において、圧力は1atmに低下し、合成ガス/プロピレンを止め、N2を開始する。4mLの燐酸ナトリウム緩衝液を加える。触媒層を溶液で覆う。緩衝液を15分間保持し、次いでシリンジによって除去する。触媒をH2及びCOにより、80℃、100psigにおいて2時間再活性化させ、次いで当初の流れを再び確立する。42日から56日まで、この条件に反応を保つ。活性は約30lb/ft3 cat-hrであり、n/i=30である。
【0110】
緩衝液洗浄2−63日において、温度を100℃に高め、他の条件は同じである。63日及び69日において緩衝液洗浄を行う。この条件において緩衝液洗浄により安定な活性を維持する。
【0111】
例6
以下のようにしてトリオスガノホスフィットリガンドを用いて触媒を製造する。全ての工程をN2下で行う。0.0033gのRh(CO)2AcAc及び0.0818gのトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィットを1.419gのテトラグリムに溶解する。穏やかに加熱後、1.374gのこの混合物を2.001gのKA-160に加える。この混合物を0.5時間回転させる。得られる触媒は354ppmのロジウムを含み、リガンド:Rhのモル比は10である。
【0112】
この触媒を用いて、以下の条件:80℃、150psig、H2=1.44SLH、CO=0.8SLH、及びプロピレン=1.86SLHにおいて例5に記載のようにしてプロピレンをヒドロホルミル化する。最初のならし期間後、アルデヒド活性=15.5lb/ft3 cat-hr、n/i=1.7である。160時間後、活性=7.9lb/ft3、n/i=1.7である。
【0113】
以下のようにしてトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィットから触媒担体を調製する。3.64gのトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィットを0.9gのスターチと混合し、ダイ中で17,000psigにおいて1時間プレスする。得られた個体ペレットを粉砕し、8−20メッシュにふるいわけする。この担体材料は約80%トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィット及び20%スターチである。N2下において、0.0043gのRh(CO)2AcAc及び0.0211gのリガンドCを1.008gのメタノールに溶解する。0.913gのこの混合物を2.003gのトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフィット/スターチ担体に加える。この材料をよく混合し、真空中に2時間おく。
【0114】
この触媒を用いて、80℃、150psig、H2=1.42SLH、CO=0.8SLH、プロピレン=1.86SLH、及びN2=7.0SLHにおいて実験を行うことを除き、例5の方法に従いプロピレンをヒドロホルミル化する。得られたデータを図4に示す。
【0115】
2は4日で止め、他の条件はすべて同じである。8日において、活性=1.5lb/ft3 cat-hr、n/i=10.3である。28日において温度を90℃に高める。活性は=3lb/ft3に上昇し、n/iは5に低下する。
【0116】
例8(緩衝液洗浄を含む)
例5に記載のようにして触媒を調製する。この例において、供給材料は1−ブテンである。この目的は、1−ブテンが気相触媒により容易にヒドロホルミル化されるか否かを決定することである。
【0117】
2:CO=1:1において70℃で2時間加熱することにより触媒を活性化する。流速は約10SLHである。この後、1−ブテンを加え、1−ブテン=6.74SLH、H2=5.2SLH、及びCO=3.2SLHに調整する。圧力を50psigに、温度を70℃にセットする。この触媒は過活性であり、n−バレルアルデヒド及びi−バレルアルデヒドのみを形成する。8時間後、n−バレルアルデヒド活性は82lb/ft3 cat-hrであり、n/i=112である。1−ブテン転化率は約55%である。この当初の結果は、1−ブテンのヒドロホルミル化がこの触媒で起こることを明確に示している。この結果を図5に示す。
【0118】
約24時間操作後、n−バレルアルデヒド活性は47lb/ft3 cat-hrに低下する。この時点において、圧力は1atmに低下し、合成ガス/プロピレンを止め、N2を開始する。触媒層を4mLの燐酸ナトリウム緩衝液で覆う。緩衝液を15分間保持し、次いでシリンジで除去する。触媒をH2及びCOにより80℃、100psigにおいて2時間再活性化させ、次いで当初の流れを再び確立する。図5に示すように、2日において110lb/ft3 cat-hrで高いn−バレルアルデヒドが回復する。この活性は5日で約47lb/ft3 cat-hrに低下する。6日において、1−ブテン流は20%に上昇する。これは急上昇を引き起こす。12時間後、n−バレロアルデヒド活性=60lb/ft3 cat-hr及びn/i=142である。7日でブテンは2回増加し、最初は20%、次いで10%増加し、実験終了まで条件を維持する。
【0119】
9日において、n−バレロアルデヒド活性=58lb/ft3 cat-hr、n/i=208である。この活性は46.4に低下し、18日において停止する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のアルデヒド生成物を製造するためのヒドロホルミル化方法であって、気相反応条件においてヒドロホルミル化触媒の存在下で一酸化炭素、水素及び1種以上のオレフィン系不飽和化合物を接触させることを含み、前記触媒が少なくとも1種のオルガノホスフィットリガンドを含むリガンドと触媒金属を含み、前記触媒が担体上に物理吸着されており、少なくとも一部の時間水蒸気が存在している方法。
【請求項2】
アルデヒドがいくらか形成された後に、追加量のリガンドが触媒と少なくとも1回接触する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
アルデヒドがいくらか形成された後に、触媒が緩衝溶液と接触する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
水の量(モル)がRhの量(モル)の少なくとも約0.001倍である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記リガンドが下式
【化1】

(上式中、Xは2〜40個の炭素原子を含む置換されたもしくは未置換のn価有機架橋ラジカルを表し、各R1は同一か又は互いに異なり、4〜40個の炭素原子を含む二価有機ラジカルを表し、各R2は同一か又は互いに異なり、1〜24個の炭素原子を含む置換されたもしくは未置換の一価炭化水素ラジカルを表し、a及びbは同一か又は互いに異なり、0〜6の値を表し、但しa+bの合計は2〜6であり、n=a+bである)
により表されるオルガノポリホスフィットリガンドを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
供給流体としてヒドロホルミル化反応器の排流を用いる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ヒドロホルミル化反応の開始後に少なくとも1回、追加量のリガンドが反応ゾーンに供給される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
遷移金属がロジウム、コバルト、イリジウム、ルテニウム、及びこれらの混合物より選ばれるVIII族金属である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
オルガノポリホスフィットリガンドの混合物が用いられ、又はオルガノモノホスフィットリガンドの混合物が用いられ、又はオルガノポリホスフィットリガンドの混合物とオルガノモノホスフィットリガンドの混合物とが一緒に用いられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種のアルデヒド生成物を連続製造するためのヒドロホルミル化方法であって、連続反応条件においてヒドロホルミル化反応ガス中で、触媒金属及びリガンドAの錯体を含む触媒金属−リガンド錯体の存在下において1種以上のC2-4アキラルオレフィン、一酸化炭素、及び水素を接触させる工程を含み、前記金属がロジウムを含み、前記錯体が担体上に物理吸着されており、前記接触が約−25℃超、約200℃未満の温度において、一酸化炭素、水素及びオレフィン反応体を含む総ガス圧が約25psia(172kPa)超、約2000psia(13789kPa)未満であるように行われ、少なくとも一部の時間水蒸気が存在しており、水の量が1日あたりRhの当量に対して少なくとも約0.001モル当量の水である方法。
【請求項11】
ヒドロホルミル化による少なくとも1種のアルデヒド生成物の製造方法であって、(a)気相反応条件において反応ゾーンにおいて、ヒドロホルミル化触媒の存在下で一酸化炭素、水素及び1種以上のオレフィン系不飽和化合物を接触させること、ここで前記触媒は少なくとも1種のオルガノホスフィットリガンドを含むリガンド及び触媒金属を含む担持された触媒であり、前記触媒は担体に担持されており、反応の活性を実質的に維持するに十分な量の水蒸気が少なくとも一部の時間存在しており、以下の工程の少なくとも1つ、(b)ヒドロホルミル化反応の開始後少なくとも1回、反応ゾーンに追加量のリガンドを加えること、及び(c)担持された触媒を緩衝液と接触させること、を含む方法。
【請求項12】
前記緩衝液が液体溶液であり、触媒と緩衝液を接触させる前に反応を止め、接触後に前記緩衝液が反応ゾーンから実質的に取り出され、反応が再び開始される、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−508274(P2013−508274A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534224(P2012−534224)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/051576
【国際公開番号】WO2011/046781
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(508168701)ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー (19)
【Fターム(参考)】