説明

気相酸化用の触媒

不活性の担体、及びその上に担持された遷移金属酸化物を含有する5の触媒活性組成物を包含する気相酸化用の触媒、又は触媒前駆体を記載する。触媒(前駆体)は遷移金属酸化物あるいはこれらの化合物前駆体の水性懸濁液あるいは水溶液により不活性の担体を処理することにより入手し、この際懸濁液はバインダー分散液を含有し、且つバインダーはα−オレフィンとビニル−C〜C−カルボキシラートとのコポリマーであり、該コポリマーのビニル−C〜C−カルボキシラート含有率は少なくとも62モル%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性の担体、及びポリマーのバインダーを用いてその上に担持された遷移金属酸化物を含有する触媒活性組成物を包含する気相酸化用の触媒、並びに触媒の使用下で芳香族炭化水素を接触気相酸化してカルボン酸及び/又は無水カルボン酸にする方法に関する。
【0002】
カルボン酸及び/又は無水カルボン酸の数多くは、技術的に芳香族炭化水素、例えばベンゼン、キシレン、ナフタリン、トルエン又はズロールを固定床反応器、有利に管束反応器において接触気相酸化して製造される。この方法で、例えば安息香酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又は無水ピロメリット酸が得られる。一般的に分子酸素を含有する気体、例えば空気と、酸化すべき出発原料とからなる混合物を、反応器中に配置された、少なくとも1つの触媒層がその中に存在する多数の管に導通する。管は温度調節するために熱媒、例えば溶融塩で囲われている。
【0003】
触媒として、いわゆるシェル型のコーティング触媒がこの酸化反応にとって有利であることが実証されており、この場合ステアタイトのような不活性の担体材料上に触媒活性組成物がシェル型に担持されている。このシェル型のコーティング触媒における触媒活性組成物の触媒活性成分として、一般的に二酸化チタン(アナタース変性した形で)と並んで五酸化バナジウムが利用される。更に触媒活性組成物中には多数の他の酸化化合物が少量で含有されていてよく、これは助触媒として触媒の活性及び選択性に影響を及ぼす。
【0004】
この種のシェル型のコーティング触媒を製造するために、活性組成成分及び/あるいはこれら化合物前駆体の水性及び/あるいは有機溶剤を含有する溶液又は懸濁液を、高温で担体材料に噴霧し、これを触媒の全質量に対して所望される活性組成物割合に達するまで行う。
【0005】
コーティングの品質を改善するために、有機バインダー、有利にビニルアセタートとビニルラウラート、ビニルアセタートとアクリラート、スチレンとアクリラート並びにビニルアセタートとエチレンとのコポリマーを、有利に水性分散液の形で懸濁液に添加することが技術的に用いられている。更に有機バインダー添加は、活性組成物が担体に良好に付着するという利点をもつので、その結果、触媒の輸送及び充填が容易になる。
【0006】
200〜500℃の温度で熱処理する際、バインダーは熱分解及び/又は燃焼により担持された層から消失する。一般的に熱処理は現場で、酸化反応器中で行われる。
【0007】
EP−A0744214より、表面被覆を不活性の担体物質に担持することで得られる担体触媒が公知である。有機バインダーとして、ビニルアセタートとビニルラウラート、ビニルアセタートとアクリラート、スチレンとアクリラート、ビニルアセタートとマレアート並びにビニルアセタートとエチレンが記載されている。
【0008】
DE−A19717344は、触媒の製造方法を記載しており、この際酸化物の混合物は水の存在下で粉砕され、引き続き担体物質上に担持される。有機バインダーとして、ビニルアセタートとビニルラウラート、ビニルアセタートとアクリラート、スチレンとアクリラート、ビニルアセタートとマレアート並びにビニルアセタートとエチレンが記載されている。
【0009】
US−A4,397,768は、無水フタル酸を製造するための触媒を記載している。活性組成物はビニルアセタートとビニルラウラート、ビニルアセタートとアクリラート、スチレンとアクリラート、ビニルアセタートとマレアート又はビニルアセタートとエチレンのような有機バインダーを用いて不活性の担体に担持される。
【0010】
DE−A19824532から、エチレン系の不飽和酸無水物と少なくとも2のOH基、多くとも2の窒素原子及び多くとも8のC−原子を有するアルカノールアミンとのポリマーからなるシェル型のコーティング触媒を製造するためのバインダーが公知である。
【0011】
EP−A0068192は、摩耗抵抗のあるシェル型のコーティング触媒の製造方法を記載している。バインダーとしてグルコース又は尿素が推奨される。
【0012】
DE−A2238067から、V/TiOを含有する活性組成物は25質量%のビニルラウラートを有するビニルアセタート−ビニルラウラート−コポリマー分散液を用いて担体物質に担持される担体触媒が判明している。ビニルラウラートを含有するコポリマー分散液は特殊分散液であり、これは大量に提供することができず、且つこれを使用すると触媒の原料費が上昇する。
【0013】
本発明は、市販のコポリマー分散液の使用下で製造され、且つ接触気相酸化に関して高い活性を有する気相酸化用の触媒を提供するという課題に基づく。
【0014】
ところで、ポリマーバインダーのモノマー組成物が、得られたシェル型のコーティング触媒の活性に重大な影響をもつことが判明した。
【0015】
本発明は、不活性の担体、及びその上に担持された遷移金属酸化物を含有する触媒活性組成物を包含する気相酸化用の触媒、又は触媒用の触媒前駆体に関するものであり、その際この触媒(前駆体)は遷移金属酸化物あるいはこれら化合物前駆体、更にバインダー分散液を含有する水性懸濁液あるいは水溶液を用いて不活性の担体を処理することにより入手可能であり、この際バインダーは、α−オレフィンとビニル−C〜C−カルボキシラートとのコポリマーであり、該コポリマーのビニル−C〜C−カルボキシラートの含有率は少なくとも62モル%、有利に63〜95モル%である。
【0016】
得られた触媒の活性にバインダーが及ぼす影響の原因は完全には解明されていない。酸化気相用の触媒は酸化還元作用のあるVのような遷移金属酸化物を含有する。ここで触媒中心としてバナジル基(V=O)又はV−O−Vと担体の架橋又はV−Oと担体の架橋が考えられる。Grzybowska[B.Grzybowska−Swierkosz,”o−キシレン及び他の炭化水素を酸化するためのバナジア−チタニア触媒”,Appl.Catal.A:General157(1997)263〜310頁]によれば、たしかにバナジル基に水素を引き抜く能力が割り当てられるが、しかしながら酸素が非常に強く結合しており、その結果、酸化すべき基質の炭素−水素結合に酸素原子を挿入することは不可能である。一方で、V−O−V担体基又はV−O担体基は酸素原子を挿入することが可能である。Went等[G.T.Went,L.−J.Leu,A.T.Bell,” Vを担持したTiO(アナタース形)中で分散したバナジア種の定量的構造分析”J.Catal.134(1992)479〜491頁]によれば、末端の酸素原子はずっと容易にHにより還元される。以下の実施例で記載されているように、本発明による触媒は昇温還元(TPR)の際にHの取り込みが減少する。明らかにモノマーバナジル種(V=O基を有する)の割合はポリマーバナジル種のために減少している。おそらく本発明により使用されるバインダーにより遷移金属種が錯化され、このことにより担体への析出方法が変更される。
【0017】
本発明によれば、バインダーとしてビニル−C〜C−カルボキシラートの高い含有率を有する、α−オレフィンとビニル−C〜C−カルボキシラートとのコポリマーを使用する(コポリマーの特定のモノマーの”含有率”は、モノマーが共重合した単位における含有率に対する)。通常コポリマーはランダムコポリマーである。適切なビニル−C〜C−カルボキシラートは、とりわけビニルアセタート及びビニルプロピオナートであり、この内ビニルアセタートがとりわけ有利である。コモノマーとして、2〜20の炭素原子を有するα−オレフィン、とりわけエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン又はオクテンが考えられ、この内エチレンが有利である。エチレン−ビニルアセタート−コポリマーはとりわけ有利で、とりわけ63〜70モル%のビニルアセタート及び37〜30モル%のエチレンを有するコポリマーが有利である。
【0018】
本発明により使用されるバインダーは水性分散液として市販されており、例えば35〜65質量%の固体含有率を有する。このバインダー分散液の使用される量は、遷移金属酸化物あるいはこれらの化合物前駆体の溶液又は懸濁液の質量に対して、一般的に2〜45質量%、有利に5〜35質量%、とりわけ有利に7〜20質量%である。この際溶液又は懸濁液中で溶解及び/又は懸濁した遷移金属酸化物あるいはこれらの化合物前駆体の含有率は一般的に20〜50質量%である。
【0019】
有利にか焼された状態にある触媒活性組成物は、触媒活性組成物の全量に対して1〜40質量%の酸化バナジウム(Vとして計算)及び60〜99質量%の二酸化チタン(TiOとして計算)を含有する。同時に触媒活性組成物はセシウム化合物(Csとして計算)を1質量%まで、リン化合物(Pとして計算)を1質量%まで、及び酸化アンチモン(Sbとして計算)を10質量%まで含有してよい。
【0020】
選択的添加物であるセシウム及びリン以外に原則的に触媒活性組成物中には少量の他の酸化化合物が多数含有されていてよく、これは助触媒として例えばその活性を低下させたり又は高めたりすることにより触媒の活性及び選択性に影響を及ぼす。この種の助触媒として例えばアルカリ金属酸化物、とりわけ上記の酸化セシウム以外に酸化リチウム、酸化カリウム及び酸化ルビジウム、酸化タリウム(I)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化錫、酸化銀、酸化銅、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ヒ素、酸化アンチモン及び酸化セリウムが挙げられる。通常この群からセシウムが助触媒として使用される。
【0021】
さらに上記の助触媒の内で、触媒活性組成物に対して0.01〜0.50質量%の量のニオブ及びタングステンの酸化物が更に有利に添加剤として考えられる。活性は高めるが選択性を低下させる添加剤として特に酸化リン化合物、とりわけ五酸化リンが考えられる。
【0022】
触媒活性組成物は2層又はそれ以上の層で担持されていてもよく、この際例えば内層又は複数の内層は酸化アンチモン含有率を15質量%まで有し、外層は50〜100%低下した酸化アンチモン含有率を有する。この場合、通常触媒の内層はリンを含有しており、外層はリンに乏しいか又はリンを含有しない。
【0023】
触媒活性組成物の層厚は通常0.02〜0.2mm、有利に0.05〜0.15mmである。触媒における活性組成物の割合は通常5〜25質量%、多くの場合7〜15質量%である。
【0024】
使用される二酸化チタンは有利に5〜15m/gのBET−表面積を有するTiOと15〜50m/gのBET−表面積を有するTiOとの混合物からなる。5〜50m/g、有利に13〜28m/gのBET−表面積を有する二酸化チタンも使用してよい。
【0025】
不活性の担体材料としてほぼ全ての従来技術の担体材料、例えば石英(SiO)、磁器、酸化マグネシウム、二酸化錫、炭化ケイ素、ルチル、アルミナ(Al)、ケイ酸アルミニウム、ステアタイト(ケイ酸マグネシウム)、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸セリウム又はこれらの担体材料の混合物を使用してよく、例えばこれらの担体材料は有利に芳香族炭化水素を酸化してアルデヒド、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸にするためのシェル型のコーティング触媒の製造の際に使用される。担体材料は通常非多孔質である。この際、”非多孔質”という表現は”技術的な観点から無効な細孔の量を除いて非多孔質”の意味で理解されるべきである。なぜなら、理想的には細孔を含有すべきでない担体材料に僅かな数の細孔が存在しうるのは技術的な観点から不可避だからである。有利な担体材料として、とりわけステアタイト及び炭化ケイ素が強調されるべきである。担体材料の形は本発明による触媒前駆体及びシェル型のコーティング触媒においては重要でない。例えば触媒担体は球状、リング状、タブレット状、螺旋状、管状、押出物状又は細粒状で使用してよい。これらの触媒担体の寸法は、ふつう芳香族炭化水素の気相部分酸化用のシェル型のコーティング触媒を製造するために使用される触媒担体に一致する。有利にステアタイトは3〜6mmの直径を有する球状又は外径5〜9mm及び3〜8mmの長さと1〜2mmの壁厚を有するリング状で使用する。
【0026】
シェル型のコーティング触媒の個々の層の担持は、任意に自体公知の方法、例えばコーティングドラム中で溶液又は懸濁液を噴霧するか、あるいは流動床中で溶液又は懸濁液を用いてコーティングすることにより行うことができる。
【0027】
触媒活性組成物を有する触媒担体をコーティングする際、一般的に20〜500℃の被覆温度を適用し、この際コーティングは被覆装置において大気圧下又は減圧下で行うことができる。一般的にコーティングは0℃〜200℃、有利に20〜150℃、とりわけ室温〜120℃で行う。
【0028】
こうして得られた触媒前駆体を200〜500℃の温度で熱処理することにより、バインダーは熱分解及び/又は燃焼により担持された層から消失する。有利に熱処理は現場で、酸化反応器中で行う。
【0029】
水素を含有する不活性ガス流において25から923Kへと加熱する場合、有利な実施態様において、本発明による触媒はバインダーの熱分解及び/又は燃焼を行ったあと(例えば400℃で4時間か焼したあと)5.5mol/molのバナジウムより少ないH(触媒に含有されるバナジウムのモル量に対するHモル)、有利に5.0mol/molのバナジウムより少ないHを消費することにより優れている。
【0030】
本発明による触媒は、一般的に芳香族炭化水素C〜C10−炭化水素、例えばベンゼン、キシレン、トルエン、ナフタリン又はズロール(1,2,4,5−テトラメチルベンゼン)を気相酸化してカルボン酸及び/又は無水カルボン酸、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、安息香酸及び/又は無水ピロメリット酸にするために適している。
【0031】
とりわけ、新規のシェル型のコーティング触媒により無水フタル酸を製造する際、選択率及び収率を著しく高めることが可能になる。
【0032】
この目的ため本発明により製造される触媒は、例えば溶融塩により外部から反応温度に温度調節される反応管に充填され、反応ガスはこうして準備した触媒層を介して一般的に340〜450℃、有利に320〜420℃及びとりわけ有利に340〜400℃の温度及び一般的に0.1〜2.5bar、有利に0.3〜1.5barのゲージ圧力で一般的に750〜5000h−1の空間速度で通過させる。
【0033】
触媒に添加される反応ガスは、一般的に酸素以外になお適切な反応調節剤及び/又は希釈剤、例えば蒸気、二酸化炭素及び/又は窒素を含有してよい分子酸素を含有する気体と、酸化すべき芳香族炭化水素との混合により製造され、この際分子酸素を含有する気体は、一般的に1〜100モル%、有利に2〜50モル%及びとりわけ有利に10〜30モル%の酸素、0〜30モル%、有利に0〜10モル%の水蒸気並びに0〜50モル%、有利に0〜1モル%の二酸化炭素、残分窒素を含有してよい。反応ガスを製造するために分子酸素を含有する気体を、酸化すべき芳香族炭化水素の気体Nm当たり、一般的に30g〜150gで送入する。
【0034】
2またはそれ以上の帯域、有利に反応管中に存在する触媒層の2の帯域を様々な反応温度に温度調節して気相酸化を実施することは有利であり、そのために例えば反応器を分離された塩浴と一緒に使用してよい。2の反応帯域で反応を実施する場合、一般的に全触媒体積の30〜80モル%を包含する反応ガスの気体入口に最も近い反応帯域は、一般的に気体出口に最も近い反応帯域より1〜20℃、有利に1〜10℃及びとりわけ2〜8℃高い反応温度に温度調節する。代替方法として気相酸化は温度帯域に分割しなくても反応温度で実施することができる。
【0035】
とりわけ有利であると判明したのは、温度構成とは無関係に上記の触媒層の反応帯域において、活性組成物の触媒活性及び/又は化学的組成の点で異なる触媒が使用される場合である。有利に2の反応帯域を使用する際、第1の、つまり反応気体の気体入口に最も近い反応帯域では、第2の、つまり気体出口に最も近い反応帯域に存在する触媒と比べて触媒活性がいくらか低い触媒を使用する。一般的に、第1の帯域において反応気体に含有される芳香族炭化水素の大部分を反応させて最大収率を得るように、温度調節により反応を制御する。
【0036】
有利に3〜5層の触媒系、とりわけ3〜4層の触媒系を使用する。
【0037】
3層の触媒系の有利な実施態様において、触媒は以下の組成物を有する。
【0038】
−第1の、最上層(層a))には
全触媒に対して7〜10質量%の活性組成物、この際この活性組成物は、
6〜11質量%のバナジウム(Vとして計算)
0〜3質量%の三酸化アンチモン
0.1〜1質量%のアルカリ(アルカリ金属として計算)、とりわけ酸化セシウム を含有し、且つ残分として5〜15m/gのBET−表面積を有するアナタース 変性した二酸化チタンを100質量%まで有する。
【0039】
−第2の、中間層(層b))には
全触媒に対して7〜12質量%の活性組成物、この際この活性組成物は、
5〜13質量%のバナジウム(Vとして計算)
0〜3質量%の三酸化アンチモン
0〜0.4質量%のアルカリ(アルカリ金属として計算)、とりわけ酸化セシウム
0〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)
を含有し、且つ残分として場合により層a)のようにアナタース変性した二酸化チ タンを100質量%まで有する。
【0040】
−第3の、最下層(層C))には
全触媒に対して8〜12質量%の活性組成物、この際この活性組成物は、
5〜30質量%のバナジウム(Vとして計算)
0〜3質量%の三酸化アンチモン
0〜0.3質量%のアルカリ(アルカリ金属として計算)、とりわけ酸化セシウム
0.05〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)
を含有し、且つ残分として場合により層a)のようにとりわけアナタース変性した 二酸化チタンを100質量%まで有する。
【0041】
4層の触媒系の有利な実施態様において、触媒は以下の組成物を有する。
【0042】
−第1の層(層a))には
全触媒に対して7〜10質量%の活性組成物、この際この活性組成物は、
6〜11質量%のバナジウム(Vとして計算)
0〜3質量%の三酸化アンチモン
0.1〜1質量%のアルカリ(アルカリ金属として計算)、とりわけ酸化セシウム
を含有し、且つ残分として5〜15m/gのBET−表面積を有するアナタース 変性した二酸化チタンを100質量%まで有する。
【0043】
−第2の層(層b1))には
全触媒に対して7〜12質量%の活性組成物、この際この活性組成物は、
4〜15質量%のバナジウム(Vとして計算)
0〜3質量%の三酸化アンチモン
0.1〜1質量%のアルカリ(アルカリ金属として計算)、とりわけ酸化セシウム
0〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)
を含有し、且つ残分として場合により層a)のようにアナタース変性した二酸化チ タンを100質量%まで有する。
【0044】
−第3の層(層b2))には
全触媒に対して7〜12質量%の活性組成物、この際この活性組成物は、
5〜15質量%のバナジウム(Vとして計算)
0〜3質量%の三酸化アンチモン
0〜0.4質量%のアルカリ(アルカリ金属として計算)、とりわけ酸化セシウム
0〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)
を含有し、且つ残分として場合により層a)のようにアナタース変性した二酸化チ タンを100質量%まで有する。
【0045】
−第4の層(層c)には
全触媒に対して8〜12質量%の活性組成物、この際この活性組成物は、
5〜30質量%のバナジウム(Vとして計算)
0〜3質量%の三酸化アンチモン
0.05〜0.4質量%の五酸化リン(Pとして計算)
を含有し、且つ残分として場合により層a)のようにアナタース変性した二酸化チ タンを100質量%まで有する。
【0046】
一般的に触媒層a)、b)、c)及び/又はd)は、層がそのつど2又はそれ以上の層からなるように配置されていてもよい。この中間層は有利に触媒組成物中間体を有する。
【0047】
種々の触媒の、互いに境界付けられた層の代わりに、1の層からその隣の層へ移行する際に連続する触媒の混合物により1つの帯域を作成することによって、層が半連続的に移行し、且つ活性がほぼ均一に上昇することができる。
【0048】
第1の触媒層の層長は有利に反応器における全触媒充填高の30〜80%より長い。第1の2の、もしくは第1の3の触媒層の層高は有利に全触媒充填高の60〜95%より高い。典型的な反応器は充填高が250cm〜350cmである。触媒層は場合により複数の反応器に分配されていてもよい。
【0049】
所望される場合、例えばDE−A19807018又はDE−A2005969に記載されているように、無水フタル酸を製造するためにもう一つ後設置される仕上げ反応器を組み入れてよい。この際触媒として最後の層の触媒より更に活性の高い触媒を有利に使用する。
【0050】
異なった触媒が存在する複数の反応帯域の使用下で本発明による触媒を用いてPSHの製造を実施する場合、全ての反応帯域において新規のシェル型のコーティング触媒を使用してよい。しかしながら、本発明によるシェル型のコーティング触媒を触媒層の反応帯域の1、例えば第1の反応帯域においてのみ、又は第1の2の反応帯域において使用し、且つ従来方法で製造されるシェル型のコーティング触媒を他の反応帯域において使用する場合でも、一般的に従来方法と比べてすでに著しい利点を達成することができる。第1の反応帯域において、下流の反応帯域のそれと比較してより高いホットスポット温度の方が支配する。ここで出発炭化水素の主要部分が酸化され、所望される酸化物質及び/又は中間体となり、その結果、第1段階又は第1及び第2段階における本発明による触媒の利点が発揮される。
【0051】
本発明を以下の実施例により詳細に説明する。
【0052】
A.触媒の製造
触媒の上層R1.1〜R1.4:
34.64gの二酸化チタン(BET−表面積9m/g)、64.33gの二酸化チタン(BET−表面積20m/g)、7.82gの五酸化バナジウム、2.60gの酸化アンチモン、0.444gの炭酸セシウムを650mlの脱イオン水の中で懸濁し、18時間攪拌する。この懸濁液に下記の第1表に記載されているバインダーを添加する。引き続き、得られた懸濁液を1200gのリング状(7×7×4mm、外径、長さ、内径)のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)へ噴霧し、乾燥する。担持されたシェル状コーティングの質量は完成した触媒の全質量の8.0%であった。この方法で担持された触媒活性組成物は400℃でか焼を4時間行った後、7.12質量%のバナジウム(Vとして計算)、2.37質量%のアンチモン(Sbとして計算)、0.33質量%のセシウム(Csとして計算)及び90.1質量%の二酸化チタンを含有していた。
【0053】
【表1】

【0054】
触媒の中間層R2:
34.32gの二酸化チタン(BET−表面積9m/g)、102.90gの二酸化チタン(BET−表面積20m/g)、11.0gの五酸化バナジウム、2.30gのリン酸二水素アンモニウム、3.66gの酸化アンチモン、0.19gの炭酸セシウムを650mlの水の中で懸濁し、18時間攪拌する。この懸濁液にビニルアセタートとビニルラウラートとからなるコポリマーからなる50gの有機バインダーを50質量%の分散液の形で添加する。引き続き、得られた懸濁液を1200gのリング状(7×7×4mm、外径、長さ、内径)のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)へ噴霧し、乾燥する。担持されたシェル状コーティングの質量は完成した触媒の全質量の10.0%であった。この方法で担持された触媒活性組成物は400℃でか焼を4時間行った後、7.12質量%のバナジウム(Vとして計算)、0.40質量%のリン(Pとして計算)、2.37質量%のアンチモン(Sbとして計算)、0.10質量%のセシウム(Csとして計算)及び88.91質量%の二酸化チタンを含有していた。
【0055】
触媒の下層R3:
24.56gの二酸化チタン(BET−表面積9m/g)、73.67gの二酸化チタン(BET−表面積30m/g)、24.99gの五酸化バナジウム及び1.71gのリン酸二水素アンモニウムを650mlの水の中で懸濁し、18時間攪拌する。この懸濁液にビニルアセタートとエチレンとからなるコポリマー(モル比63:37)からなる58.6gの有機バインダーを50質量%の分散液の形で添加する。引き続き、得られた懸濁液を1200gのリング状(7×7×4mm、外径、長さ、内径)のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)へ噴霧し、乾燥する。担持されたシェル状コーティングの質量は完成した触媒の全質量の9.3%であった。この方法で担持された触媒活性組成物は400℃でか焼を4時間行った後、19.81質量%のバナジウム(Vとして計算)、0.45質量%のリン(Pとして計算)及び78.63質量%の二酸化チタンを含有していた。
【0056】
B.昇温還元(TPR)による触媒R1.1〜R1.4の触媒試験
昇温還元は、単位時間当たり一定温度の上昇を伴う水素/不活性ガス流の中で試験体を加熱することにより行った。Monti及びBaikerの提案[D.A.M.Monti、A.Baiker、”昇温還元。パラメトリック感度及び反応速度パラメーターの評価”、J.Catal.83(1983)323〜335頁]に基づく構造の配置を使用した。試験体を2のガラスウールプラグの間のルースな層としてU字形のガラス管に充填した。U管はセラミック製の管状炉中に存在していた。まず触媒を、空気(酸素過剰)を導通させながら400℃で4時間か焼した。
【0057】
冷却したあと試験体を10K/分の加熱速度で周囲温度から923Kの最終温度へと加熱した。試験体の温度は層近くの熱電対シース中で計測し、2秒間隔で記録した。4.2%の水素を有する水素/アルゴン流をU管に導通した。排ガス中の水素含量は熱伝導度検出器により測定した。熱伝導度検出器を較正するためにCuOからCu(O)への還元を利用した。水素の消費量は温度に依存して記録した。検査された温度間隔におけるHの全消費量は積算して決定した。
【0058】
【表2】

【0059】
C.無水フタル酸の製造(R1及びR2からなる2の触媒層を有する構造化された層)
下方から上方へ、それぞれ1.30mのR2触媒及び1.50mのR1.1もしくはR1.4触媒を25mmの内径を有する、長さ3.3mの鉄管に充填した。鉄管は温度調節するために溶融塩により囲われており、可動熱電対を有する2mmの熱電対シースを触媒温度の測定に使用した。1時間毎に上方から下方へ約40g/Nmで99.3質量%のo−キシレンの負荷を有する4.0Nmの空気を管に導通した。下記の第3表で一覧にされている結果が得られた。”PSA−収率”は純粋o−キシレンの100の質量部に対する質量部で表される得られた無水フタル酸である。
【0060】
【表3】

【0061】
本発明による触媒R1.1の使用下でより高いPSA−収率及び品質の改善された生成物を得られることが見て取れる。
【0062】
D.無水フタル酸の製造(R1.R2及びR3からなる3つの触媒層を有する構造化された層)
下方から上方へ、そのつど0.70mの触媒R3、0.60mの触媒R2及び1.50mの触媒R1.1を25mmの内径を有する、長さ3.85mの鉄管に充填した。鉄管は温度調節するために溶融塩により取り囲まれており、可動熱電対を有する2mmの熱電対シースを触媒温度の測定に使用した。1時間毎に上方から下方へ約70g/Nmで99.3質量%のo−キシレンの負荷を有する4.0Nmの空気を管に導通した。下記の第4表で一覧にされている結果が得られた。
【0063】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性の担体、及びその上に担持された遷移金属酸化物を含有する触媒活性組成物を包含する気相酸化用の触媒、又は遷移金属酸化物あるいはこれら化合物前駆体の水性懸濁液あるいは水溶液により不活性の担体を処理することにより入手可能な触媒前駆体であり、この際懸濁液はバインダー分散液を含有し、且つバインダーはα−オレフィンとビニル−C〜C−カルボキシラートとのコポリマーであり、該コポリマーのビニル−C〜C−カルボキシラート含有率は少なくとも62モル%である、気相酸化用の触媒。
【請求項2】
ビニル−C〜C−カルボキシラートコポリマーがビニルアセタートコポリマーである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
ビニルアセタートコポリマーがエチレン−ビニルアセタート−コポリマーである、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
エチレン−ビニルアセタート−コポリマーが63〜70モル%のビニルアセタート及び37〜30モル%のエチレンを含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
触媒活性組成物が、触媒活性組成物の全量に対して、Vとして計算して1〜40質量%の酸化バナジウム及びTiOとして計算して60〜99質量%の二酸化チタンを含有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
触媒活性組成物が、触媒活性組成物の全量に対して、Csとして計算してセシウム化合物を1質量%まで、Pとして計算してリン化合物を1質量%まで、及びSbとして計算して酸化アンチモンを10質量%まで含有する、請求項5に記載の触媒。
【請求項7】
芳香族炭化水素及び分子酸素を含有する気体を包含する気体状の流を高温で請求項1から6までのいずれか1項に記載の触媒と接触させる、アルデヒド、カルボン酸及び/又は無水カルボン酸を製造する方法。
【請求項8】
触媒を現場で触媒前駆体から製造する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
芳香族炭化水素としてo−キシレンあるいはナフタリンあるいはo−キシレンとナフタリンとからなる混合物を酸化して無水フタル酸にする、請求項7又は8に記載の方法。

【公表番号】特表2007−500592(P2007−500592A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522301(P2006−522301)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008596
【国際公開番号】WO2005/011862
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】