説明

水の落下エネルギーの動力への転換装置とそれを用いた発電装置

【課題】本考案が解決しようとする課題は、構造的に簡単で、保守や点検が容易で取り扱いやすく、どこにでも設置でき、寿命が長く、経済的な、低落差の流れに適した水の落下エネルギーの動力への転換装置、および、それを用いた発電設備を提供することである。
【解決手段】複数の球体1を連結材3で繋いで環状に構成した移動部4と、それを掛け渡すために上下に設けたスプロケット6a、6bと、さらに、そのスプロケットの間に掛け渡された移動部4の一部を覆う形で設けられた、球体1の外径に等しいか、または、僅かに大きな内径と、複数個の球体1がその中に常時存在する長さとを持ち、かつ、上下方向に延びる円筒部16とを有し、円筒部16の上部より水17を送り、円筒部の下部19より排水することにより、水17により球体1を下方に押して移動部4を回転させて、スプロケット6aの軸より動力を取り出す転換装置、および、それを用いた発電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の落下エネルギーを動力へ転換する装置、および、それを用いた発電設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川を流れる水のエネルギーを活用して動力や電力を得ようとする試みは、大がかりな水力発電所や小規模な水車を利用した揚水装置等の形で、各所で試みられている。
一方、電力等を容易に得ることのできない僻地や遠隔地に置いて、機器や計器の駆動用、照明用等の目的で僅かでも動力や電力を得たいというニーズは数多く存在する。そのような場所においても、多くの場合には付近に小河川や水路などが存在することが多く、そこを流れる水の有する落下エネルギーをうまく利用できれば、そのニーズに応えることができる。
【0003】
しかしながら、それらの利用可能な小河川や水路は、多くの場合に低落差であり、高所にダムを構築して、そこから水路を通して低部に設けた水車まで水を落下させ、水の有する位置のエネルギーを運動のエネルギーに変換して、高効率の水車を回転させる大がかりな設備には向いていない。
【0004】
このような、従来利用されていなかった低落差の小河川や水路を流れる水から動力や電力を取り出すことを狙って、以下のような発明が開示されている。
【特許文献1】特開2004−68655号公報
【特許文献2】特開2003-106247号公報
【特許文献3】特開2002-221140号公報
【0005】
これらはいずれも、従来からある翼車型の水車において、その吸込口や翼車の構造に工夫を加えたり、水流に対する翼車の配置を考慮したものであり、原理的には従来からある水車と大きく変わるものではなく、構造的にも複雑で、長期に渡って安定して運用するためには、頻繁な保守や点検も欠かせないものである。
【0006】
このような設備を必要とするケースを考えると、取り出せる動力や電力が少ないこと、僻地や遠隔地に設置される場合が多いこと、等から、設備的には極めて構造が簡単で、保守や点検が容易で、取り扱いやすいものが望ましい。さらに、設置場所を選ばずどこにでも取付けられること、寿命が長いこと、経済的であることも大切である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、構造的に簡単で、保守や点検が容易で取り扱いやすく、設置場所の選択の自由度が大きく、寿命が長く、経済的な、低落差の水の落下エネルギーを動力に転換するのに適した装置、および、それを用いた発電設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、数珠状に複数の球状または円柱状、あるいは、円柱の両端に半球を取付けた形状の物体(以下「球体」という。)を連結材で繋いで環状に構成した移動部と、該移動部を掛け渡すために上下に設けた複数のスプロケットと、さらに、
該複数のスプロケットの間に掛け渡された該移動部の一部を覆う形で設けられた、該移動部を構成する球体の外径にほぼ等しいか、または、それよりも僅かに大きな内径と、複数個の球体がその中に常時存在する長さとを持ち、かつ、上下方向に延びる円筒部とを有し、
該円筒部の上部より水を送り込み、該円筒部の下部より排水することにより、該水により該球体を下方に押して該移動部を回転させ、それに伴い回転する該スプロケットの軸より動力を取り出す、水の落下エネルギーの動力への転換装置(以下「本転換装置」という。)である。
【0009】
複数の球状または円柱状等の物体を連続して連結材で繋ぎ、さらに、その両端を繋いで環状にし、あたかも数珠のような形に構成したものが水流を受けて移動する移動部となる。この数珠状の移動部を、上下に設けられた複数のスプロケットに掛け渡す。
【0010】
移動体を構成する球体は、必ずしも真の球状である必要はない。後述する円筒部と球体との間から、水がエネルギーを球体に与えずに漏れて行くのをできるだけ防ぐためには、両者の隙間はできるだけ小さいことが望ましく、そのために球体の最大の横断面、すなわち、円筒部と接触しながら移動する部分、は円形である必要があるが、それを移動する方向の横から見た場合は、楕円球状であってもよいし、円柱状であっても良い。スプロケットとのかみ合いの良さを考えると、円柱状であっても前後端に丸みを持たせて、あたかも、円柱の両端に半球を取付けたような形状が望ましいであろう。
【0011】
一方、このスプロケットは、あたかも、自転車の駆動用チェーンベルトが、2個のスプロケットに掛け渡されて、安定した軌跡を描いて回転し、動力を車輪に伝えるように、移動部をほぼたるみ無く支持する。スプロケットの歯に相当する部分は、前述の球体をしっかりと支える形状とし、スプロケットが移動部と相対的に滑ることなく一緒に回転するところも自転車のチェーンベルトと同様である。
【0012】
スプロケットに掛け渡された移動部の一部は、移動部を構成する球体の外径にほぼ等しいか、または、それよりも僅かに大きな内径を持つ円筒部で覆われる。内径が球体の外径にほぼ等しいか、または、それよりも僅かに大きいから、移動部はその円筒部の中を自由に通過可能である。水を円筒部の中に流し入れると、移動部を構成する球体一つ一つが、あたかも、円筒部という水路を閉ざす栓のように機能し、かつ、それ自身が可動であるから、二つの球体と円筒部の内面に囲まれた空間に水を蓄えた状態で、移動部自体が下向きに移動する。
【0013】
円筒部を設ける位置は、上下に設けられている複数のスプロケットの1個のスプロケットと他のスプロケットの間であり、円筒部の一端より水を流し込んだときに、他端より重力によりその水が流れ出すように上下方向に延びるように配置される。上下方向と言っても、水が重力で流れ出せばよいのであるから、必ずしも垂直である必要はない。
【0014】
円筒部は、複数個の球体がその中に常時存在する長さとする。円筒部の上部から送り込まれた水が、連続してその重量により球体を下に押し下げ続け、移動部を連続して回転させるためには、円筒部の中に常に1個の球体が存在すれば良いが、水の有する位置のエネルギーをより完全に利用し、かつ、移動部の回転をより一定の速度にするためには、2個以上の球体が常時円筒部の中に存在することが望ましい。また、当然の事ながら、円筒部が移動部と共に回転するスプロケットの歯と干渉しないように、円筒部の端部はスプロケットから少し離して配置するように配慮する。
【0015】
スプロケットの数は、自転車のチェーンベルトの場合は2個であるが、本転換装置においては、それを設置する場所の障害物を回避したり、移動部からスプロケットに動力を伝えやすくしたり、移動部がスプロケットからはずれにくくするために、3個、あるいは、それ以上の複数個のスプロケットを用いることもある。
【0016】
以上に説明した構成を有する本転換装置において、小河川、水路等の水を円筒部の上部の端部から注ぎ込むと、注ぎ込まれた水の有するエネルギーは、水が球体と円筒部に挟まれた空間に蓄えられた状態で、球体を下に押して行くことにより、移動部を介してスプロケット軸に動力を発生させる。
【0017】
本転換装置は、水量が少なくても効率よく動力への転換が図れるから、今まで水車等が使われていなかった少水量の河川や水路にも適用ができる。さらに、取り扱う水の量が少ないことから、その水をパイプなどを用いて水源から本転換装置までかなりの距離を輸送してもエネルギー損失が少ないので、水源から離れたところにでも設置できる。
【0018】
季節的に水量が変動する小河川がいくつかあるような地域では、それぞれの小河川からパイプで1台の本転換装置に水を送れるようなアレンジをし、そのときに水量の比較的多い小河川を選んで、そこから水を供給するということも可能である。
いずれにしても、従来からある水車等に比べて適用範囲が広く、設置場所を自由に選べるという利点を有する。
【0019】
本転換装置は、以上に説明したように簡単な構造を有し、高速回転する部分もないから、故障しにくく、保守や点検が容易であるばかりでなく、寿命も長く、経済的である。しかも、低落差の小河川や水路の水が有するエネルギーを効率よく動力に変換することができるので、その点からも見ても経済的である。
【0020】
なお、本転換装置では、前記円筒部の上部から送り込む水の注入口を下向きにすることが望ましい。
【0021】
下向きにすることにより、小河川、水路等の水の有する速度エネルギーの一部も、球体を下に押し下げる力に加算され、スプロケット軸に発生する動力を増加させることができ、低落差の小河川や水路の水が有するエネルギーを一層効率よく動力に変換することができる。
【0022】
また、本転換装置では、前記球体の少なくとも外表面、および/または、前記円筒部の少なくとも内表面が、フッ素樹脂、とくに、ポリテトラフルオロエチレンからなることが望ましい。
【0023】
フッ素樹脂は化学的に安定で、水をはじき、耐熱性、耐薬品製、耐候性に優れている。これらの性質を有することにより、自然の中で、常に水の流れにさらされ続けても、変質や劣化せず、長い寿命を持つことができる。本転換装置の設置場所が僻地や遠隔地であることも多く、できるだけメンテナンスフリーであることが望まれることから、変質や劣化をしないので保守や点検が容易であること、そして、寿命が長いことは、極めて大切な効果である。
また、フッ化樹脂は十分な強度と優れた加工性を有しており、本転換装置に適用することも容易である。
【0024】
さらに、フッ化樹脂は摩擦抵抗が極めて低い物質として知られている。フッ素樹脂のなかでも、特にポリテトラフルオロエチレン(米国デュポン社の登録商標「テフロン」で一般に知られている。)は、現在までに発見されている物質の中で最も摩擦抵抗が低いとされている。
【0025】
これらの摩擦抵抗が極めて低い物質を、球体の少なくとも外表面、および/または、前記円筒部の少なくとも内表面に使うことにより、球体の外径と円筒部の内径との差、すなわち、両者の隙間を、摩擦抵抗をあまり大きくすることなく減少できる。両者の隙間を小さくすることにより、円筒部と球体との間から、水がエネルギーを球体に与えずに漏れて行くのをできるだけ防ぐことができ、しかも、両者間の摩擦係数が小さいので、摩擦抵抗に起因する損失が少なく、低落差の小河川や水路の水が有するエネルギーを動力に転換する転換効率を高く保つことができる。
【0026】
ここで、「前記球体の少なくとも外表面、および/または、前記円筒部の少なくとも内表面」とあるが、「球体の少なくとも外表面」あるいは「円筒部の少なくとも内表面」とは、球体の内部まで、あるいは、円筒部の構成壁の全体を、フッ素樹脂、特に、ポリテトラフルオロエチレン(以下「フッ素樹脂等」で総称する。)で作る必要はなく、両者が接触する部分、すなわち、球体の外表面と円筒部の内表面をフッ素樹脂等で作ればよいことを意味している。両者間の摩擦抵抗低減のためだからである。
【0027】
また、「および/または」としたのは、「球体の少なくとも外表面」と「円筒部の少なくとも内表面」の両方をフッ素樹脂等で作っても良く、また、そのいずれかをフッ素樹脂等で作っても良いことを意味している。一方だけでも摩擦抵抗低減の効果があり、両方ともフッ素樹脂等にすれば、さらに効果があるからである。
【0028】
さらに、本発明は、以上に述べた水の有する落下エネルギーの動力への転換装置を動力源とする発電装置である。本転換装置は、遠隔地や僻地で必要とされる機器や計器の駆動用、照明用等の電力の発電装置の動力源として極めて適している。
発電装置として用いるときには、従来から用いられてきた小型の発電機が本転換装置と組み合わせて用いられる。必要に応じて増速装置を介して発電機に繋ぐことや、小河川や水路の水量の変動や必要とされる電力負荷の変動に応じて供給量を調整するために、蓄電設備を設けること、それらを制御する制御装置を設けること等は、従来の技術を活用して行なうことができる。
【発明の効果】
【0029】
以上に説明した通り、本転換装置は、上述の通りの極めて構造が簡単であることから、保守や点検が容易で取り扱いやすく、設置場所の選択の自由度が大きく、寿命が長く、かつ、経済的である。一方、簡単な構造でありながら、小河川や水路等の低落差の流れが有するエネルギーを効率良く動力に転換できる。この転換装置を動力源とする本発明の発電設備もまた、これらの効果を享受することができる。
【0030】
さらに、球体の外表面や円筒部の内表面の材質をフッ素樹脂等にすることにより、さらに保守点検が容易になり、効率的にも向上してさらに経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態をいくつかの実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明はかかる形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えて良いことは言うまでもない。
【0032】
図1は本転換装置の実施例1の説明図、図2および図3は実施例1に用いられる移動部とスプロケットの説明図、図4はスプロケットを複数使用した実施例2の説明図、図5は実施例3の移動部とスプロケットの説明図、そして、図6は本転換装置を用いた発電装置の説明図である。
なお、理解を容易にするために、異なる実施例においても、ほぼ同じ形状を有し、ほぼ同じ機能を有する部材には、同じ付番を付けることにする。
【実施例1】
【0033】
本実施例では、図1および図2に示すように、ほぼ真の球状をした球体1を、それに固定された連結部2を介して連結材3で順次繋いで環状にしたものを移動部4として用いている。球体1はその本体を強度を有する金属、合成樹脂等で構成し、その外面をフッ素樹脂等で被覆して製作される。連結部2は本体と一体で形成しても良いし、本体にネジ止めなどで固着させても良い。
連結材3は強度を有する金属製、合成樹脂製等の環、チェーン、あるいは、ワイヤー等各種のものを用い、従来の技術を活用して製作する。
【0034】
この移動部4は、上下に配置された2個のスプロケット6a、6b(以下、スプロケットを一般に「6」と表示する。)に掛け渡され、ほぼたるみ無く支持されている。スプロケット6a、6bはそれぞれ、軸受(図示されていない。)により回転可能に支持された軸7a、7b(以下、スプロケットの軸を一般に「7」と表示する。)を有している。
スプロケット6a、6bの外周には、移動部4の形状に合わせて作られた複数の歯9が形成されており、移動部4と噛み合って、その動きに従ってスプロケット6a、6bを回転させる。
【0035】
スプロケットの詳細を図3に示す。
図3(a)は、歯9を8個有するスプロケット6の一例の斜視図である。歯9の形状は、球体1を抱きかかえるようなカーブ11を形成するように決定される。歯9の先端部、すなわち、軸7から一番遠い部分には、球体1を繋ぐ連結材3をしっかりと受止めるべく、2個の障壁12が設けられて、樋13を成している。
【0036】
図1の状態で、移動部4をほぼたるみ無くスプロケット6a、6bに掛け渡すと、複数個の球体1が複数個のスプロケットの歯9のカーブ11にしっかりと抱きかかえられるように支持される。このとき、それらの球体1を繋ぐ連結体3は樋13に入っているので、移動部4がスプロケット6a、6bから外れることはない。したがって、移動部4とスプロケット6a、6bは、安定して噛み合いながら回転し、球体1からスプロケットの歯に力を伝達することができる。
【0037】
このようにしてスプロケット6a、6bに掛け渡された移動部4の一部は、図1に示すように円筒部16に覆われる。円筒部16の内径は移動部4を構成する球体1の外径に等しいか、または、それよりも僅かに大きいから、移動部4は円筒部16の中を、大きな摩擦抵抗を受けることもなく、あたかも、可動栓のように自由に通過できる。
【0038】
円筒部16の上部には、小河川や水路などからの水17の注入口18が設けられる。注入口18は図のように下向きとすることにより、水の有する速度エネルギーの一部も、移動体4を押し下げる力に加算される。注入口18から円筒部16に導かれた水は、球体1を押し下げながら下向きに流れ、円筒部16の下端19から排水される。注入された水17の有していたエネルギーは移動体4に与えられ、スプロケット6a、6bを回転させ、それらの軸7a、7bのいずれか、あるいは、両方から動力として取り出すことができる。
【実施例2】
【0039】
図4には、スプロケットを2個ではなく、4個用いた実施例を示す。
岩盤21を流れてきた小河川は、岩盤22まで流れ落ちており、その間には落差Hがある。この落差H全体を利用して水17の有するエネルギーを活用したいが、落差の途中には岩23が張り出しており、図1のように2個のスプロケットを垂直には配置できない。
【0040】
そこで、本実施例では、上部のスプロケット6cと下部のスプロケット6dの間に、補助のスプロケット6e、6fを設ける。それらの設置場所は、張り出した岩23を避けて移動部4aを掛け渡せるように選定する。
【0041】
スプロケット6cとスプロケット6eの間には円筒部16aを、また、スプロケット6eとスプロケット6dの間には円筒部16bが配置される。岩盤21に設けられた堰25には注水口18が設けられ、堰25により蓄えられた水17は注水口18を通って、円筒部16aに導かれる。
注入口18から円筒部16aに導かれた水は、実施例1と同様に、球体1を押し下げながら斜め下向きに流れ、円筒部16aの下端19aから排水される。
【0042】
円筒部16aの下端19aから排水された水26は、円筒部16bの上端に設けられた受け口27で受止められ、円筒部16bの中を通って球体1を押し下げながら下向きに流れて、円筒部16bの下端19bから排水される。
【0043】
本実施例では、注入された水17が本来有していた落差Hのうち、H分は円筒部16aにおいて、H分は円筒部16bにおいて移動部4aに与えられ、スプロケット6c、6d,6e、6fを回転させ、それらの軸のいずれか、あるいは、その中の複数本の軸から動力として取り出すことができる。
その結果、設置場所の状況が悪く、設置上の障害物23があるにもかかわらず、落差Hのうちの大部分を動力エネルギーとして取り出すことができる。
【0044】
ここでは、本転換装置の設置場所にあった障害物の回避を目的とする場合で、2個を越えるスプロケット使用のケースを説明した。
一方、チェーンからスプロケットに動力を伝えやすくしたり、チェーンがスプロケットからはずれにくくするために、3個、あるいは、それ以上の複数個のスプロケットを用いることは、従来のチェーン・スプロケット伝導機構では良く行なわれてきたことであり、それらの目的で、以上に説明した実施例2と同様な構成を取ることも、十分に考えられる。
【実施例3】
【0045】
図5には、以上の実施例の球体と異なる形状の球体を用いた本発明の実施例を示す。
本実施例で用いる球体29は、図5(a)に示すように、円柱29aの両端に半球29bを取付けた形状を成している。それに固定された連結部2と、それらを繋ぐ連結材3は、実施例1と変わりがない。
【0046】
この球体29を順次繋いで環状にした移動体を掛け渡すスプロケット31は、球体29をしっかりと抱きかかえるように歯32同士の間に、球体29の円柱29aの部分の形状に合わせて、平坦な部分を有するカーブ33を成している。歯32の先端部に平行する2個の障壁を設けて、連結材3をしっかり受止めるべく樋を構成していることは、実施例1と変わりはない。
【0047】
球体29をこのような形状にすることにより、円筒部(図示されていない。)の内面と接触しながら、あるいは、それと近接しながら移動する部分が長くなり、本来持っていたエネルギーを十分に移動体に与えることなく、水が両者の隙間を通り抜けてしまうのを押さえ、水の有するエネルギーをより効率よく動力に変換することができる。
【実施例4】
【0048】
図6は、以上に説明した転換装置を用いた本発明の発電設備である。
動力への転換装置41は、実施例1で説明した様に、移動部4をスプロケット6aと6bに掛け渡し、水の注入口18を有する円筒部16を設けてある。スプロケット6aの軸7aは、増速装置42を介して発電機43に、転換装置41で発生した動力を伝える。
【0049】
発電機43で発生した電力は、電力負荷44に送られる。余剰電力が発生した場合には、蓄電装置45に一旦蓄えられる。発電電力量が電力負荷の要求量より足りなくなれば、系統制御装置46の働きにより、蓄電装置45に蓄えられていた電力が発電電力に加算されて電力負荷44に送られる。
【0050】
発電機を制御する発電制御装置47や、それと系統制御装置46との連携を図る総合制御装置48を設けることは、従来の発電設備と同様である。
これら、増速装置42、発電機43、蓄電装置45、系統制御装置46、発電制御装置47、総合制御装置48等には、従来小型発電設備に使われてきた機器、設備、あるいは、技術が活用できる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
小河川や水路などの水の有するエネルギーを有効に利用でき、特に、僻地や遠隔地の機器や計器の駆動用、照明用等の用途に用いる動力や電気を供給するのに用いられる。構造が簡単で、保守・点検等の取り扱いが楽なうえに、設置場所の選択の自由度が大きいので、容易に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の動力への転換装置の実施例1の説明である。
【図2】実施例1の移動部の説明図である。
【図3】実施例1のスプロケットの説明図である。
【図4】スプロケットを複数使用した本発明の転換装置の実施例2の説明図である。
【図5】異なる形状の球体を用いた本発明の転換装置の実施例3の移動部およびスプロケットの説明図である。
【図6】本発明の発電装置の実施例の説明図である。
【符号の説明】
【0053】
1 球体
2 連結部
3 連結材
4、4a 移動部
6、6a、6b、・・6f、31 スプロケット
7、7a、7b 軸
9、32 歯
11、33 カーブ
12 障壁
13 樋
16、16a、16b 円筒部
17、26 水
18 注入口
19、19a、19b 円筒部の下端
21、22 岩盤
23 岩
25 堰
27 受け口
29 球体
29a 円柱
29b 半球
41 動力への転換装置
42 増速装置
43 発電機
44 電力負荷
45 蓄電装置
46 系統制御装置
47 発電制御装置
48 総合制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数珠状に複数の球状または円柱状、あるいは、円柱の両端に半球を取付けた形状の物体(以下「球体」という。)を連結材で繋いで環状に構成した移動部と、該移動部を掛け渡すために上下に設けた複数のスプロケットと、さらに、
該複数のスプロケットの間に掛け渡された該移動部の一部を覆う形で設けられた、該移動部を構成する球体の外径にほぼ等しいか、または、それよりも僅かに大きな内径と、複数個の球体がその中に常時存在する長さとを持ち、かつ、上下方向に延びる円筒部とを有し、
該円筒部の上部より水を送り込み、該円筒部の下部より排水することにより、該水により該球体を下方に押して該移動部を回転させ、それに伴い回転する該スプロケットの軸より動力を取り出す、水の落下エネルギーの動力への転換装置。
【請求項2】
前記球体の少なくとも外表面、および/または、前記円筒部の少なくとも内表面が、フッ素樹脂、とくに、ポリテトラフルオロエチレンからなる請求項1記載の転換装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の転換装置を動力源とする発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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