水中の金属成分の除去方法とその装置
【課題】薬品を一切使用しないで、水中の浮遊物の除去及び鉄・銅等の金属イオン類を選択的に除去する方法と装置を提供することである。
【解決手段】グラフト吸着材成分を両側表面に有し、パネル状に配置した多数の同一サイズのシート状物2を所定の間隔を開けて並列配置して全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽3と、該グラフト吸着材槽3に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給する循環流路を備えた水中の金属成分の除去装置である。
【解決手段】グラフト吸着材成分を両側表面に有し、パネル状に配置した多数の同一サイズのシート状物2を所定の間隔を開けて並列配置して全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽3と、該グラフト吸着材槽3に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給する循環流路を備えた水中の金属成分の除去装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の水質を改善する水中の金属成分の除去方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各被処理水(以下、単に水ということがある)に含まれる金属イオン類の除去を行なう場合には、通常水中の水酸化物として凝集沈殿処理する方法、イオン交換処理法、ろ過処理法、膜分離法などがある。
【0003】
凝集沈殿処理法は、対象水のpHを調整して金属イオンを水酸化物として凝集させて固液分離する方法、あるいは鉄及び/又はアルミニウム化合物を加えてpH調整して形成する鉄又はアルミニウム水酸化物の凝集物と共に水中の金属イオン類が吸着する作用によって固液分離する方法である。
【特許文献1】特許公開2008−6369号公報
【特許文献2】特許公開2005−95812号公報
【特許文献3】特許公開平10−263560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記各被処理水を長年使用する装置、配管などにはスケールが付着するので、前記した特許文献記載の方法などによりスケールの付着防止および付着したスケールの除去が必要となる。
上記凝集沈殿処理法では薬品使用により水中の塩分濃度が逆に増加する事によって「腐食性」及び「スケール性」が増加すること、発生する水酸化物の除去費用が大きいこと及び処理装置自体が大きくなり、処理においては専門的技術者による管理を伴なうことなどが問題点である。
【0005】
また、イオン交換処理法はイオン交換樹脂によって水中の陽イオン及び陰イオンを吸着除去する方法であり、高価なイオン交換樹脂は再生して繰り返して利用されているが、その再生には強酸、強アルカリあるいは食塩などの濃厚溶液が使用され、濃厚な再生廃液が発生するため、その処理コストが大きいという問題点がある。さらに、イオン交換処理法は水中の陽又は陰イオンのほぼ全てを除去するため、水が非常に「腐食性」が高くなる欠点がある。
【0006】
前記ろ過処理法は、砂ろ過器、フィルター等のろ材間隙を通過出来ない粒子を捕捉・分離する方法であるが、この方法ではフィルター等に詰まりを生じた場合はろ材の交換又は洗浄を行う必要がある。
さらに、膜分離法は、微細な穴を持つ膜を通して水をろ過して、懸濁物質から溶解性の化合物までの不純物質を除去する技術である。この方法では、膜自体が非常に高価であり、汚染(ファウリング)により透水性能を維持するために定期的な薬品洗浄を行なう必要があり、また、洗浄廃液処理の処理コストも大きく、さらに分離された濃厚廃液の処理を行う必要がある。また、膜分離法により不純物をほぼ除去した水は「腐食性」が高くなる欠点がある。
【0007】
従来のスケールの付着防止・除去法としての薬品処理法は酸・アルカリ剤等の薬品にて付着物の溶解・除去を行う方法であり、設備の停止及び廃液処理等の問題がある。また、機械洗浄法は高圧洗浄、ブラシ洗浄等の機械洗浄であり、空気・オゾン洗浄を含む場合がある。この機械洗浄法では設備の停止及び排水処理等の問題がある。
物理処理法には、電磁処理、磁気処理、セラミック処理等があり、薬品添加がないので後処理のトラブルがないことが大きな利点となる。
【0008】
本発明の課題は、薬品を一切使用しないで、水中の浮遊物の除去及び鉄・銅等の金属イオン類を選択的に除去する方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は次のような解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、グラフト吸着材成分を両側表面に有し、パネル状に配置した多数の同一サイズのシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽と、該グラフト吸着材槽に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給する循環流路を備えたことを特徴とする水中の金属成分の除去装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、グラフト吸着材槽内の並列された多数のシート状物の間隔に並行して被処理水を流すように循環流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の水中の金属成分の除去装置である。
【0011】
請求項3記載の発明は、循環流路に被処理水照射用のコイル部を配置し、該コイル部に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の水中の金属成分の除去装置である。
【0012】
請求項4記載の発明は、全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽内の多数の同一サイズの両側表面にグラフト吸着材成分を有するシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して、該パネル状のシート状物の間に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給することを特徴とする水中の金属成分の除去方法である。
【0013】
請求項5記載の発明は、鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部に還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルにより変調電磁場を与えることを特徴とする請求項4記載の水中の金属成分の除去方法である。
【0014】
請求項6記載の発明は、鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を前記グラフト吸着材を有する所定の間隔を開けて並列配置したパネル状のシート状物の間に流す工程とグラフト吸着処理前に前記変調電磁場を与える工程を有することを特徴とする請求項5記載の水中の金属成分の除去方法である。
【0015】
請求項7記載の発明は、還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルを巻いたテスト流路中に前記被処理水を流した後、該被処理水を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化する度合及び前記被処理水の乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う度合を確認して、前記被処理水の変調電磁場処理の効果の程度を判定する机上試験を行った後に、該被処理水体に対して変調電磁場処理をすることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の水中の金属成分の除去方法である。
【0016】
次に本発明の特徴点について述べる。
(1)グラフト吸着材成分による金属イオン及び金属成分を含む不溶解性物質の捕集
a.平面型(図3に示すように水の流れ方向に対して垂直方向にシート状物2を配置)にて使用した場合、1段目の表面吸着量が多くなるが、合わせて被処理液中に浮遊物が存在する場合にフィルター的に捕集してしまい、グラフト吸着材表面の官能基と金属イオンの吸着反応が著しく阻害される。
【0017】
b.スリット型(図4に示すように水の流れ方向に対して並行する方向にシート状物2を配置)においてグラフト吸着材を重ねて使用すると液中の金属イオンとグラフト材表面の官能基との吸着反応が阻害される。スリット間隔は2mmにすることが望ましい。
【0018】
c.液中浮遊物の除去
【0019】
本発明ではグラフト吸着材のシート状物を平行スリット型として、スリット間の2mm間隙による流速抵抗と共にカートリッジの構造にて仕切り板を設ける事で液中浮遊物の「固液分離性」を高める工夫をした。
上記グラフト吸着材とは次のような材料である。
ポリオレフィン若しくは天然高分子材を材質とする繊維、織布、不織布、フィルム、中空糸膜、平膜又は糸から製造される高分子基材と、該高分子基材にビニル反応性モノマーをグラフト重合させて形成したグラフト鎖と、該グラフト鎖に導入されたリン酸系、アミドキシム系キレート形成基とを有することを特徴とする金属イオン類を回収する為の吸着材をいう。
【0020】
(2)電磁場処理
a.グラフト吸着材表面への液中浮遊物の付着は吸着能力を阻害する。
(+)帯電性の浮遊物は(−)帯電するグラフト吸着材表面に付着し易いので、電磁場処理を採用する事で液中浮遊物の付着を防止する。
【0021】
b.液中に(+)帯電性の薬剤が混入している場合、電磁場処理の付着防止作用を著しく阻害する。そこで、リン酸型グラフト吸着材の採用により、液中の(+)帯電性薬剤の捕集・除去が可能である。
(+)帯電性薬剤の種類は不明であるが、リン酸型グラフト吸着材は液中のFeイオン及びCaイオン吸着能力に優れている事から(+)帯電性薬剤中の陽イオン物質の吸着・捕集が生じた結果であるものと推定される。
【0022】
c.従来、密閉系冷却水循環の冷却設備において電磁処理する場合、全冷却水循環水量の50%以上の流量を条件とする既存循環配管にて処理をしていた。
この場合、冷却循環が常に行われる配管を選択する必要が有り、2ヶ所以上に設置する必要があった。大型水槽に対してはグラフト吸着材槽の前段にて循環処理ラインに電磁処理する事で水槽内被処理水のスケール性を抑制する事が可能である。
【0023】
本発明で使用する還元(−)型変調電磁場処理は図18に示す変調電磁場発生器を用いる変調電磁場処理装置を利用して原水(被処理流体)に還元(−)型変調電磁場処理を行うものである。
【0024】
また、本発明の水中の金属除去装置では、水中に浮遊する金属類を含む不溶解性物質と溶解する金属イオン類を同時に除去する事が可能である。
不溶解性金属物質とは鉄又は銅、カルシウム・マグネシウム水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩を含む化合物、特に、pH7以下でも不溶解性物質を形成し易い鉄水酸化物は当発明における主たる除去物質であり、溶解性金属物質とは鉄・銅・マンガン・砒素を含む金属イオンである。
【0025】
不溶解性金属物質の除去の必要性は次の通りである。
空調用冷温水設備における冷水貯槽は大量の水を保有している。冷却機で冷やされた冷水を個々の空調用ファンコイルに送り、室内を冷房している。一度、保有した水は長年の間循環使用されているが、「腐食」によって徐々に鉄イオン・銅イオンが溶出してくる。溶出した鉄イオン・銅イオンは水中のアルカリ分と反応して水酸化物として不溶解性の浮遊物を形成し、カルシウム・シリカ成分を吸着して「スケール性」が増す。そのため、空調用ファンコイルの細管部に付着して水の流れを悪くしたり、熱交換効率を悪くする。更に、冬季において温水に切り替わると水のスケール性は増加するので徐々に空調設備の熱交換効率が悪化する。
【0026】
本発明では電磁場処理を用いて電気的反発を利用して設備内の付着物を徐々に剥離・除去させて、当発明の水質改善装置において水中に分散した鉄粒子を含む浮遊物を吸着槽内の仕切り板にて区切られたそれぞれのゾーンで分離・除去する。
【0027】
本発明の装置と方法の適用個所は、例えば空調用冷温水設備である。
空調用冷温水設備では1000m3を超える大量の水を地下水槽に貯留し、長期間の循環使用が行なわれている。貯留水中には設備内の金属類のために「腐食」によって徐々に溶解し、某ビルの冷水使用期間15年の設備(保有水量2500m3)では鉄4ppm・銅0.7ppmにも濃縮・増加している。
【0028】
冷水中のこれら金属類溶出は設備へのスケール及び腐食障害を更に悪化させる要因で有り、2500m3の水入れ替えには上下水道費が700円/m3とすると約175万円のコストが掛かる事とビル空調設備において設備を停止して水入れ替えを行う事が出来ず、又、設備を停止する事無く、補給水を供給しながら希釈によって水入れ替えをする場合は多くの労力と共に1750万円以上のコストが必要となる。以上の理由より、ほとんどの設備においては長年手付かずの状態である事が多い。
【0029】
設備を停止する事が無く、通常状態で蓄熱槽冷水の一部を循環させながら徐々に水質改善する本発明による技術と装置は非常に有効である。
なお、空調設備の末端に備えられたファンコイルは非常に口径が小さく、清掃作業にはコストも莫大となる。設備を停止する事無く、電磁処理を併用して既存付着物の除去とスケール付着防止はグラフト吸着材による金属類除去と合わせて低コストの処理技術を可能とする。
【0030】
また、(+)帯電性薬品によって処理されていた冷水に対して(−)帯電型(=還元(−)型)電磁処理の適用を行う場合、グラフト吸着材によるイオン吸着に伴ない、水中の(+)帯電性薬剤の除去も可能である事が判り、同設備における当技術と水質改善装置は非常に有効である。
【0031】
また、空調設備蓄熱槽の冷水にはほとんど補給水は供給されない事から時間あたりの電磁処理水量は冷水の全量でなく、その一部分で処理可能である。従来は全体循環水量(m3/時間)の50%以上の流量が流れる既存設備配管に浄化処理を行っていたが、本発明では被処理水の一部を循環処理する事で処理が可能である。
例えば、容量700m3の蓄熱槽に対して吸着処理量(循環水量)150m3/日を最低条件とする。電磁場処理を行った被処理水の電磁場処理の残留効果は導電率200μS/cm程度で約7日間保持する事が可能である。処理回数によって電磁処理水の処理効果は増大する事から被処理水の全体量を処理する必要が無い事が判った。
また、グラフト材は再生使用(塩酸再生)が可能で有るため、グラフト吸着材による処理装置がコンパクト化でき、水質検査及びグラフト材の再生を容易に行うことができる。
【0032】
本発明で使用する机上試験(乾燥液滴界面視察によるラボテスト)は、図18に示す還元(−)型の変調電磁場発生器を用いて、本実施例が適用される空調設備の原水(被処理水)について、図24に示すガラスパイプに本実施例の還元(−)型の変調電磁場発生器13に接続したコイル(コイル部12)を巻き付けておき、これにコイル電流2.0Aで、例えば1回、3回、5回の通液テストを行い、通液していない未処理液と比較するテストを行う。そして、前記比較テストは試料をガラス板上に滴下し、乾燥させた後、界面部の結晶状況を顕微鏡を用いて確認する。界面に結晶性の固体が多く析出すると机上テストの結果が良くなかったと判定し、界面に結晶性の固体が析出しないか少ないと机上テストの結果が良かったと判定する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の効果は以下の通りである。
【0034】
(1)薬品を一切使用しないで水中の浮遊物の除去及び鉄及び/又は銅を含む金属イオン類を選択的に除去することができる。
なお、事前調査としてグラフト吸着材の選択試験とスケール性と電磁処理効果を確認する机上試験を実施することで容易に本発明の実施効果を確認できる。
【0035】
(2)電磁場処理により既存付着物の剥離・除去を行ない、前記金属成分を含んだ浮遊物を仕切り板にて重力固液分離しながら、水中に溶解する無用な金属イオンをグラフト吸着材によって吸着・除去することができる。
【0036】
(3)電磁場処理によるスケール防止作用はグラフト吸着材への浮遊物付着を防止する効果を有し、金属イオン捕集能力を維持させるのに有効である。
【0037】
(4)電磁場処理に対して阻害性を与える(+)帯電性薬品が含まれている被処理水をグラフト吸着材で処理する事によって電磁場処理への阻害影響を抑制、更には消失させる効果が判った。グラフト吸着材処理自体も被処理水のスケール性を低下させる作用を有する事が判り、電磁処理との組み合わせによって相乗効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
【実施例1】
【0039】
まず、グラフト吸着材を用いて水中の鉄・銅等金属イオン及び前記金属成分を含んだ浮遊物の同時除去を行うための装置について説明する。
図1にはグラフト吸着材を用いて水中の鉄・銅等金属イオン及び前記金属成分を含んだ浮遊物の同時除去を行うための原水処理装置の概略図を示す。
原水処理装置1は中央部にスリット体からなるグラフト吸着材槽(スリット体)3を配置し、グラフト吸着材槽(スリット体)3は多数のグラフト吸着材を両側表面に有するパネル状に配置した多数の同一サイズの水透過性のシート状物2(図3,図4参照)を2mm間隙で並列配置して得られる全体に箱状のスリット体3である。各シート状物2の平面が鉛直方向に向くように配置しているので、シート状物2の平面に直交する方向、すなわち並列配置した互いの間隔を開けた多数のシート状物2の平面を原水処理装置1内での原水の流れに直交する方向に向けて配置する(図3)か又は原水の流れ方向に沿って配置する(図4)。したがってグラフト吸着材槽(スリット体)3に流入した原水はシート状物2を透過して流れるか又はシート状物2同士の間隔を通過することになる。
【0040】
また、全体に箱状体となっているグラフト吸着材槽(スリット体)3内の前側端部と後側端部がなす平面に対してそれぞれ間隔を開けて、その前後に第1仕切り板4、第2仕切り板5をスリット体3がなす平面に平行に、かつ鉛直方向に各仕切り板4,5の平面を向けて配置する。また、第1仕切り板4には開口部を設けていないが第2仕切り板5の下方部位には開口部5aを設ける。
【0041】
従って、原水処理装置1は中央部にグラフト吸着材槽(スリット体)3を配置した第1仕切り板4から第2仕切り板5までをゾーンBとすると、グラフト吸着材槽(スリット体)3の前後には原水の流入ゾーン(ゾーンA)と流出ゾーン(ゾーンC)ができる。上記ゾーンAでは流入原水が下降流となって浮遊物の沈降を促し、仕切り板4の上部より溢れた原水はゾーンBに流入して下降流を作る。ゾーンBでの原水の下降流はスリット体3を形成した複数のシート状物2のグラフト吸着材に接触しながらシート状物2自体を透過する。又はシート状物2同士の間隙を流れる間に生じる流動抵抗で更に原水中の浮遊物の分離を促進し、同時にグラフト吸着材に原水中の金属イオンが吸着される。
【0042】
次いで、原水は仕切り板5の下方の開口部5aからゾーンCに流入する。その際に原水の流れは仕切り板5の下方の開口部5aに対向する位置にあるゾーンCを構成する原水処理装置1の水槽壁面に衝突して、原水中の浮遊物は重力沈降し易くなる。
【0043】
このように、グラフト吸着材槽(スリット体)3を含むゾーンBの前端部側にはゾーンAから原水を仕切り板4の上端部からグラフト吸着材槽(スリット体)3の前側面との間隔からゾーンBに流入させてシート状物2のスリット間隔を流れるように誘導することでグラフト吸着材が原水に接触する機会が損なわれず、シート状物2の表面のグラフト吸着材の金属イオンの吸着能力が阻害されない。また、シート状物2のスリット間隔などを流れ出た原水が仕切り板5の下方の開口部5aからゾーンCの該開口部5aに対向する原水処理装置1の水壁面に衝突する構成である。
【0044】
次にシート状物2の平面に対して原水を垂直方向から流入させる場合と平行流として流入させる場合を比較した実験例を説明する。
【0045】
(1)グラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して原水を垂直方向から流入させる場合(図3)
図2に示す原水タンク7内の原水をポンプでくみ出し、グラフト吸着材を有するシート状物2を収納したグラフト吸着材槽(スリット体)3を含む原水処理装置1を経由して原水タンク7に再び戻すような実験装置を用いて次のような実験条件で原水を処理した。
【0046】
(処理条件)
対象処理水量:300L
グラフト吸着材:下記の製造方法で得られるポリエチレン製高分子基材にビニル反応性モノマーをグラフト重合させて形成したグラフト鎖と、該グラフト鎖に導入されたリン酸系キレート形成基とを有するもの。
【0047】
前記グラフト吸着材を有する平型(高さ100mm×幅120mm)のシート状物2を10枚並列配置したグラフト吸着材槽(スリット体)3はA(原水流路断面面積)=1200cm2 、V(体積)=72cm3、 W(重量)=14.4gからなる。
循環水量:0.6L/分、SV(空間速度):500/時間
初期Feイオン濃度:地下水+硝酸鉄(全鉄)4.6ppm
pH:4.6(硝酸pH調整)
【0048】
前記グラフト吸着材の製造方法(特開2004−99715号公報参照)
高分子基材として不織布(倉敷繊維加工(株)製のポリエチレン製(型番EX−02)のもの)を使用し、これに放射線照射することにより反応活性点を生成させた。放射線照射は、電子線を用いて窒素雰囲気下でトータル線量が200kGyになる条件で行った。次いで、リン酸基を有するモノマーとしてモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートとジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートの混合モノマー(モノ/ジ=70/30%)を10〜30%の濃度で、メタノールと純水の混合溶媒(メタノール10〜30重量%)中で3〜24時間、40〜60℃で反応させ、不織布にグラフト鎖を導入した。反応率は60℃で2時間及び12時間反応させると、それぞれ90%、200%であった。
【0049】
前記グラフト吸着材の利用方法
鉄イオン及び鉄水酸化物の様な不溶解性物質が含まれている場合、流入原水に対して垂直な方向に平面を向けて多段に配置した前記製法で得られたグラフト吸着材を有するシート状物2からなるスリット体3の1段目にて2価の鉄イオン吸着と鉄水酸化物の捕捉が行われ、2段目以降のシート状物2による鉄イオン吸着が阻害されている。そこで、2段目以降も鉄イオン吸着が同時に生じる工夫が必要である。
【0050】
シート状物2のスリット間隔を1mmとするとグラフト吸着材の接触部における吸着が不良であった。またシート状物2のスリット間隔を2mmとするとグラフト吸着材に均等に鉄イオンが吸着可能となった。なお、小型な水質改善装置を開発する目的から可能な限り多くのグラフト吸着材を装備することが必要であり、またスリット間を通過する不溶解性物質のグラフト吸着材との接触抵抗を増加させ、電磁処理によって被処理水中のスケール成分の付着性を防止しながら、カートリッジ内にて底部へ沈降・分離性を高めることが必要である。
【0051】
そこで、前述のようにグラフト吸着材を有するシート状物2のスリット間隔を2mmとするスペーサーを設けた。1mm間隔ではシート状物2同士の接触により鉄イオン吸着にムラが見られ、2mm間隔では均等な鉄イオン吸着が得られたことからスリット間隔2mmを採用した。
【0052】
グラフト吸着材槽(スリット体)3を含むゾーンBの前端部側にはゾーンAから原水を仕切り板4の上端部からグラフト吸着材槽(スリット体)3の前側面との間隔からゾーンBに流入させてシート状物2のスリット間隔を流れるように誘導することで水中の浮遊物は2mmのスリット間を下降流で移動する。水と比較して比重の重い浮遊物はこの下降流と共に慣性力が働き、ゾーンBの底部に沈降・堆積し易くなる。そのため、ゾ―ンBの出口5aは底部より上に位置する中間部からゾーンCに流れる構造となっている。
【0053】
また、2mmのスリット間隔に設けられるシート状物2には金属イオンの吸着と共に水中浮遊物の付着を生じ易いが、電磁処理によって水中浮遊物の付着性を抑制する事でスリット間の下降流に沿って浮遊物は凝集し、沈降・分離性が高められる。
【0054】
(2)グラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して原水を平行流で流入させる場合(図4)
図2に示す実験装置を用いて次のような実験条件で原水を処理した。
【0055】
(処理条件)
対象処理水量:300L
グラフト吸着材:前記したグラフト吸着材を使用
前記グラフト吸着材を有する平型(幅60mm×高さ80mm)のシート状物2を3枚並列配置したグラフト吸着材槽(スリット体)3はA(原水流路断面面積)=144cm2 、V(体積)=0.86cm3、 W(重量)=0.17g からなる。
循環水量:0.6L/分、SV(空間速度):500/時間
初期Feイオン濃度:地下水+硝酸鉄( 全鉄5.2ppm)
pH:4.8(硝酸pH調整)
【0056】
図5にこの実験例の結果を写真で示すが、得られたシート状物2の表面のグラフト吸着材のFeイオンの捕捉状態を示す。図4に示すようにグラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して原水を平行流で流入させる構成によってFeイオンはグラフト吸着材のシート表面全体にほぼ均等補足されていることが分かる。
【0057】
上記(2)で示す実験結果に基づき図4に示すようにグラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して金属イオンを含む模擬水を平行流で流入させる構成によって実証試験を次のような期間と処理条件で行った。
【0058】
試験期間は平成20年2月8日より13日までの5日間
処理条件
処理対象液:模擬水(上水+塩化第二鉄(FeCl3))
対象処理水量:300L
グラフト吸着材:前記したグラフト吸着材を使用
シート状物2(幅100mm×高さ540mm)の89枚/組(図6の写真に示す。)をスリット状に配置する。
A=48000cm2、V=2884cm3、W=577g
使用組数:1組又は3組(89枚/組)
循環水量:3,170L/時間
SV:1,100/h
【0059】
試験結果を表1に示す。
【表1】
表1に示すように本実験により水中の金属体が減少していることが分かる。
【実施例2】
【0060】
次に図7に示すように実施例1で用いたグラフト吸着材のシート状物2のグラフト吸着材槽(スリット体)3による処理と電磁場処理装置8とを組み合わせて水中の鉄成分の除去を行うための装置について説明する。
【0061】
鉄水酸化物の付着防止効果
処理液は精製水に硝酸鉄として全鉄1ppm含む水を用いて、図18に示す(−)帯電型電磁場発生器により以下の条件により電磁場処理を行った。
出力コイル電流値を0.75A(交流)とし、主要周波数:8000Hzとし、塩化ビニール製配管にコイルを11巻きし、該配管に合計5回にわたり、前記処理液を繰り返し流した(通液処理)。
【0062】
電磁場処理の効果の判定は前記机上試験法で説明した界面付近の結晶状況を顕微鏡(100倍)による観察でスケール性の判定で行った。
判定方法は、図8(a)の顕微鏡写真に示すように界面付近への結晶集合性があるとスケール性有りと判定し、図8(b)の顕微鏡写真に示すように界面付近へ結晶集合性が無い場合はスケール性が低下または無しと判定する。
被処理水中に鉄イオンが多く含まれるほどスケール性が高くなる傾向が見られるので、グラフト吸着材による鉄イオンの除去によってスケール性の低下を図った。
【0063】
上記机上試験による結果を受けて下記の表2に示す性質を有する被処理水として某ホテルの空調設備の二次冷水を用いて上記机上テストと同様の電磁場処理机上テスト及びグラフト吸着材処理の机上簡易判定テストを行った。
【表2】
なお、表中の「ND」は「検出せず」の意味である。
【0064】
前記電磁場処理後の被処理水を図1に示すグラフト吸着材を含むシート状物2のグラフト吸着材槽(スリット体)3(被処理水100mlに対して1cm3使用)による原水処理装置1に16時間浸漬した。なお、グラフト吸着処理は机上にて簡易判定する方法として上記「浸漬方法」を用いた。
スケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った。
【0065】
図9(a)には電磁場処理を行ってない場合の顕微鏡写真を示し、図9(b)には前記条件での電磁場処理を行った場合の顕微鏡写真を示し、図9(c)には前記電磁場処理を行った後に、さらにグラフト吸着材処理を行った場合の顕微鏡写真を示す。
【0066】
図9(a)の電磁場処理を行ってない場合には被処理水は強いスケール性を示し、若干であるが、虹色を呈する原因はこの被処理水には防食・スケール防止剤として界面活性剤用いられていることが想定された。また、図9(b)の電磁場処理を行った後の顕微鏡写真からは、被処理水のスケール性が弱まったが、界面への鉄分集合性が残っていることが分かった。すなわち、前記電磁場処理ではスケール抑制効果が弱いことが判明した。そこで図9(c)の顕微鏡写真に示すように前記電磁場処理を行った後に、さらにグラフト吸着材処理を行うとスケール性が低下していることが分かった。グラフト吸着材処理後の被処理水中の溶解性鉄の濃度は0.7mg/Lから0.45mg/Lに減少していた。
【実施例3】
【0067】
次に腐食防止剤等の上記電磁場処理を阻害させる(+)帯電性薬剤の影響の有無について図7に示す装置を用いて調べた。
下記の表3に示す性質を有する被処理水として某ホテルの空調設備の一次冷水を用いて電磁場処理机上試験及びグラフト吸着材処理の机上試験を行った。
【0068】
【表3】
【0069】
机上試験と同じく、電磁場処理装置8の出力コイル電流値は0.75A(交流)であり、主要周波数として8000Hz、塩化ビニール製配管にコイルを11巻きし、該配管に合計5回にわたり、前記処理液を繰り返し流した(通液処理)。
またグラフト吸着材処理の机上試験はグラフト吸着材からなるシート状物2を被処理水100mlに対して1cm2使用して16時間浸漬処理した(ビーカー200mlに被処理水100mlを採取し、グラフト吸着材1cm2を浸漬させる。)。
スケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った。
図10(a)には電磁場処理を行ってない場合の顕微鏡写真を示し、図10(b)には前記条件での電磁場処理を行った場合の顕微鏡写真を示す。
図10(a)に示すように電磁場処理を行ってない場合には界面への結晶集合性が大きく、また、上記電磁場処理を行うと、被処理水中に(+)帯電性薬品の含まれる影響によって逆にスケール性が増加した。
【0070】
そこで、グラフト吸着材による金属イオン捕集処理が及ぼす効果を机上試験した。被処理水(蓄熱槽冷水)100mlに対してグラフト吸着材33cm2を用いて浸漬処理を行った。その結果得られた結果の顕微鏡写真を図10(c)に示す。
グラフト吸着材によって、界面への結晶集合性が低下していることが分かった。グラフト吸着材処理前の鉄分の検出量は0.13mg/Lであったが、グラフト吸着材処理により、鉄分が検出されなかった。
【0071】
また、グラフト吸着材処理後に電磁場処理を行い、スケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った結果を図11に示す。図11に示すようにグラフト材処理によるスケール防止効果と電磁場処理との相乗効果があることが分かった。
【0072】
また、グラフト吸着材の量を変化させて前記グラフト吸着材処理を行った場合と、前記グラフト吸着材処理後に電磁場処理を行った場合のスケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った結果を表4と図12(グラフト吸着剤0cm2)、図13(グラフト吸着材5cm2)、図14(グラフト吸着材7.5cm2)、図15(グラフト吸着材10cm2)、図16(グラフト吸着材20cm2)及び図17(グラフト吸着材35cm2)に示す。グラフト吸着材の面積を増加させることはグラフト吸着材量を増加させたことを示す。
【0073】
【表4】
【0074】
図12(a)、図13(a)、図14(a)、図15(a)、図16(a)及び図17(a)はそれぞれグラフト吸着材処理後の界面付近の結晶の状況を示す顕微鏡写真であり、図12(b)、図13(b)、図14(b)、図15(b)、図16(b)及び図17(b)はグラフト吸着材処理後にそれぞれ電磁場処理を行って、得られた被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を示す顕微鏡写真である。
【0075】
図12(a)〜図14(a)と 図12(b)〜図14(b)までグラフト吸着材処理後の顕微鏡写真によると、界面付近の結晶がはっきり観察でき、スケール性があることが分かり、それらを電磁場処理するとむしろスケール性が増加して電磁場処理が逆効果であることが分かった。しかし図15(a)〜図17(a)のグラフト吸着材10cm2〜35cm2で処理した場合はスケール性が低下又は消失し、これにさらに電磁場処理を行うと図15(b)に示すようにスケール性が消失又は無くなった。
【0076】
このことから被処理水中に(+)帯電性薬品の含まれる場合でも十分にグラフト吸着材と接触させることで(+)帯電性物質を吸着除去でき、さらにこれに(−)帯電性電磁場処理をすることで被処理水中のスケール成分をほぼ完全に消失させることができることが分かった。
なお、図7に示すスリット型グラフト吸着材はカートリッジ型として使用したので取り替え性、メンテナンス性に優れている。
【0077】
また、本発明で使用する還元(−)型変調電磁場処理については以下の通りである。
原水(被処理流体)に還元(−)型変調電磁場処理を行うことができる変調電磁場発生器を用いる変調電磁場処理装置を利用するものである。
【0078】
まず、図18に示す還元(−)型変調電磁場発生器を用いる変調電磁場処理装置(簡単に「還元型装置」ということがある。)の説明をする。
【0079】
図18において、スイープ信号発振回路から連続可変周波数発生回路にスイープ信号が所定時間間隔で発振され、周波数が変化しながら波形整形増幅回路に出力される。このとき連続可変周波数発生回路には周波数幅設定回路と中心周波数設定回路からの出力が入り、それぞれ周波数の幅の中心周波数が設定される。波形整形増幅回路では、レベル設定回路で電磁場強度を設定し、その後、電力増幅回路で適切な大きさの電力を得てコイル部に出力する。
【0080】
なお、電磁場強度とは空間における電磁波の強さを意味し、単位は[V/m]又は[A/m]である。測定方法は使用目的により使い分けるが、本発明においては[A/m]である(Vは電圧、Aは電流、mは長さ)。コイルに流す電流に比例し、センサーを置いた所での磁界の大きさをこの場合の電磁波の強さ又は強度としている。
【0081】
この還元(−)型装置は、20Hz〜1MHzの帯域で連続的に周波数が時間的に変化する方形波の変調交流電流を被処理水流路に巻いたコイルに流す変調電磁場処理装置であり、当該装置により発生する電流により誘起される電磁界により前記水流路を流れる被処理水を処理するものである。
【0082】
この還元(−)型装置から発生する電流を、例えば400msサイクル(任意可変可能)で順次周波数を変えてコイル部に流すと、図19に示す電磁場強度が得られる。なお、図19は周波数に対する電磁場強度のイメージ図であり、6×10-3ガウスの電磁場強度で約4,000〜6,000Hzの周波数帯にピーク値を有する主要周波数を示す。また、前記電磁場強度はコイル2に流す電流値に比例してその大きさが変化する。
P=K×i2×t
P:被処理水液体への変調電磁場照射エネルギー[W]
i:コイルに流れる電流[A]
t:照射時間[秒]
K:定数[H/m3]
【0083】
前記図19に示す電磁場強度のピーク値を示す周波数付近で水中に含まれる粒子のゼータ電位の変化量が図20に示すように変調電磁場処理を行わない場合(未処理時)のゼータ電位(ゼロ値)に比べて大きく低下した値を示すことが分かった。
【0084】
次にコイル部の配置について説明する。
図21には被処理水配管11の外側にコイルを設置する例を示す。コイル部12は被処理水が流れる配管11の外側へ設置され、該コイル部12へ還元(−)型変調電磁場発生器13から変調電磁波を流すとコイル部12より発生する変調電磁場が配管11を透過して被処理水に照射される。配管11の材質によっては電磁波の透過量が異なり、鋼鉄管<ステンレス管<塩化ビニル管の順に電磁波透過量は多くなる。透過率の悪い材質に対してはコイル電流値を増加させて被処理水に必要な変調電磁波量を確保する。
【0085】
図22には投げ込み式のコイル部12とコイル部12へ電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器13を有する投込み照射型の変調電磁場処理装置を示す。処理対象の原水槽14内に、例えば塩化ビニール管からなるコイル設置部材にコイルを巻いたコイル部12を投込み、コイル部12より発生する変調電磁場を原水槽14内の液体に作用させる。
【0086】
図21に示すような、被処理水が流れる配管11の外側にコイルを巻く方法では、配管11の電磁波透過性が良くない場合には配管11内部を通過する被処理水への電磁場の作用が著しく低下する(配管11の材質として、鋼鉄管、鋳鉄管、ステンレス管等の金属材質からなる配管11を用いる場合には、電磁波の透過性が悪く、被処理水への電磁場の作用が著しく低下する。)ので、この場合には、コイル部12を原水槽14内の被処理水中に浸漬した投込み照射型の変調電磁場発生器により被処理水を処理する方法を実施した。図22(a)に示す投込み照射型の変調電磁場処理装置の変調電磁場発信部を図22(b)に示すように絶縁性の合成樹脂製のケース15内に密封することが効果的である。
【0087】
図22に示すコイル部12を水槽14内に投げ込む方式のコイル部12は、図21の被処理水配管11にコイルを巻く方法と比較して配管11の材質に左右されないで電磁場を被処理水に有効に作用させることができる。また、図22に示す方法は図21に示す方法に比べて単位時間当たりの電磁波の照射エネルギーが高い。このように変調電磁波による照射エネルギーが高いため、投げ込み方式のコイル部12により発生させる電磁場強度は小さくても良い。
【0088】
また、被処理水に対する還元力及び酸化力を促進させる変調電磁場を作用させる手段として、図22に示す被処理水が一時的に貯留される水槽14等を有する場合には、コイル部12の投込み照射型の変調電磁場処理装置を採用することで、図21に示す方法に比較して効率的な変調電磁場処理が可能となる。
【0089】
図22に示すように水槽14内の被処理水中に投込み照射型の変調電磁場処理装置のコイル部12を浸漬しておくと、変調電磁場処理装置から発する変調電磁場エネルギーは全て被処理水に供給されるのでエネルギーのロスがない。しかも、図21の配管11内を流れる被処理水とは異なり、水槽14内に被処理水が滞留しているので長時間の電磁波を照射できる。このため、電磁波の照射時間の制御が容易になる。
なお、変調電磁場の処理効果判定は従来より用いている図24に示す机上テスト(ラボテスト)による顕微鏡判定を行うことができる。
【0090】
図23には外部照射方式のコイル部を示す。
図23(a)は被処理水配管11の外側に位置するコイル部12から変調電磁波を照射する外部照射方式コイル部12であり、図23(b)は水槽14内の水面より上側に設置するコイル部12から被処理水に変調電磁波を照射する様子を示す。
【0091】
以上図21〜図23に示すコイル部12からの変調電磁場処理方法のうち、最も少ない電磁場強度で処理が可能な方法は図22に示す投げ込み式である。透過させる物質の影響を受けず、直接、水に照射させることが可能である。
【0092】
以上の還元(−)型装置を用いる変調電磁場処理は、次のような用途に用いられる。
(a)被処理水を用いて壁面にスケールが付着し易い性質又は壁面が腐食性を有する設備へ適用することが最も適している。
特に、被処理水の性質として壁面に対して腐食性を有する場合には壁面を構成する、例えば鋼材の腐食防止を行う必要がある。このような腐食性を有する被処理水を扱う設備に還元(−)型変調電磁場処理が有効である。また、被処理水と(−)帯電性薬剤との併用により還元(−)型変調電磁場処理の相乗効果を生む。
【0093】
但し、一般的な水処理剤は(+)帯電性のものが多く、このような(+)帯電性の水処理剤が混入した場合は還元(−)型電磁場処理が阻害される。
【0094】
また、本発明の実施例で使用する図24に示す机上試験(乾燥液滴界面視察によるラボテスト)は次の通りである。
本出願人の特許である特許第3247942号公報に変調電磁場処理が対象とする被処理水に有効に作用するか否かを机上試験(ラボテスト)で行う方法を開示した。
前記ラボテストは、変調電磁場発生器13を用いて経過時間に対して周波数が変化する方形波の交流電流を流すコイル部12を設けたテスト流路中に結晶化可能な物質を含む被処理水を流した後、該被処理水の水滴試料をガラス板上で乾燥させる際に水滴界面付近へ結晶が集合性を有する場合を「スケール性有り」と判定し、前記界面への結晶集合性を失って小粒子化する場合を「スケール性消失」と判定するものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施例1によるグラフト吸着材を用いて水中の鉄・銅等金属類の同時除去を行うための原水処理装置の概略図を示す。
【図2】本発明の実施例1による原水処理装置を用いる原水処理系の構成図である。
【図3】本発明の実施例1による多数のシート状物の平面に対して直交する方向に原水を流入させる構成を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1による多数のシート状物の平面に対して原水を並行流で流入させる構成を説明する図である。
【図5】図4に示す構成を用いた実験例の結果を写真を示す。
【図6】図4に示す構成による実証試験に用いるシート状物の写真を示す。
【図7】本発明の実施例2,3によるグラフト吸着材のシート状物による処理と電磁場処理との組み合わせて水中の鉄及び銅等金属成分の除去を行うための装置を示す。
【図8】机上試験法で被処理水に電磁場処理を行った結果の判定を説明する界面付近の結晶状況の顕微鏡(100倍)写真であり、図8(a)は界面付近へ結晶集合性がある場合、図8(b)は界面付近へ結晶集合性が無い場合の顕微鏡(100倍)写真である。
【図9】図9(a)には電磁場処理を行っていない場合の顕微鏡写真を示し、図9(b)には前記条件での電磁場処理を行った場合の顕微鏡写真を示し、図9(c)には前記電磁場処理を行った後に、さらにグラフト吸着材処理を行った場合の顕微鏡写真を示す。
【図10】(+)帯電性薬品の含まれる被処理水中に電磁場処理を行ってない場合(図10(a))、電磁場処理を行った場合(図10(b))及び被処理水に対してグラフト吸着の机上浸漬試験を行った場合の界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(図10(c))を示す。
【図11】(+)帯電性薬品の含まれる被処理水をグラフト吸着材処理後に電磁場処理を行った後の界面付近の結晶の状況の顕微鏡写真(100倍)を示す。
【図12】グラフト吸着材の量(0cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図12(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図12(b))を示す。
【図13】グラフト吸着材(5cm2)でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況の顕微鏡写真(100倍)(図13(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶の状況の顕微鏡写真(100倍)(図13(b))を示す。
【図14】グラフト吸着材の量(7.5cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図14(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図14(b))を示す。
【図15】グラフト吸着材の量(10cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図15(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図15(b))を示す。
【図16】グラフト吸着材の量(20cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図16(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図16(b))を示す。
【図17】グラフト吸着材の量(35cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図17(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図1(b))を示す。
【図18】還元(−)型変調電磁場発生器の回路図である。
【図19】図1の還元(−)型変調電磁場発生器による電磁場強度と周波数との関係図である。
【図20】酸化(+)型と還元(−)型の変調電磁場発生器を用いる塩化カリ水溶液中の酸化チタン微粒子の基準値(未電磁場処理水中の酸化チタン微粒子のゼータ電位=ゼロ)との差異と周端数との関係を示す図である。
【図21】被処理水配管の外側にコイルを設置する還元(−)型変調電磁場処理装置の構成図である。
【図22】投げ込み式のコイル部を有する還元(−)型変調電磁場処理装置の構成図である。
【図23】外部照射方式のコイル部を有する還元(−)型変調電磁場処理装置の構成図である。
【図24】本発明で使用する机上試験の方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0096】
1 原水処理装置
2 シート状物
3 グラフト吸着材槽(スリット体)
4 第1仕切り板
5 第2仕切り板
7 原水タンク
8 電磁場処理装置
11 被処理水配管
12 コイル部
13 還元(−)型変調電磁場発生器
14 原水槽
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の水質を改善する水中の金属成分の除去方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各被処理水(以下、単に水ということがある)に含まれる金属イオン類の除去を行なう場合には、通常水中の水酸化物として凝集沈殿処理する方法、イオン交換処理法、ろ過処理法、膜分離法などがある。
【0003】
凝集沈殿処理法は、対象水のpHを調整して金属イオンを水酸化物として凝集させて固液分離する方法、あるいは鉄及び/又はアルミニウム化合物を加えてpH調整して形成する鉄又はアルミニウム水酸化物の凝集物と共に水中の金属イオン類が吸着する作用によって固液分離する方法である。
【特許文献1】特許公開2008−6369号公報
【特許文献2】特許公開2005−95812号公報
【特許文献3】特許公開平10−263560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記各被処理水を長年使用する装置、配管などにはスケールが付着するので、前記した特許文献記載の方法などによりスケールの付着防止および付着したスケールの除去が必要となる。
上記凝集沈殿処理法では薬品使用により水中の塩分濃度が逆に増加する事によって「腐食性」及び「スケール性」が増加すること、発生する水酸化物の除去費用が大きいこと及び処理装置自体が大きくなり、処理においては専門的技術者による管理を伴なうことなどが問題点である。
【0005】
また、イオン交換処理法はイオン交換樹脂によって水中の陽イオン及び陰イオンを吸着除去する方法であり、高価なイオン交換樹脂は再生して繰り返して利用されているが、その再生には強酸、強アルカリあるいは食塩などの濃厚溶液が使用され、濃厚な再生廃液が発生するため、その処理コストが大きいという問題点がある。さらに、イオン交換処理法は水中の陽又は陰イオンのほぼ全てを除去するため、水が非常に「腐食性」が高くなる欠点がある。
【0006】
前記ろ過処理法は、砂ろ過器、フィルター等のろ材間隙を通過出来ない粒子を捕捉・分離する方法であるが、この方法ではフィルター等に詰まりを生じた場合はろ材の交換又は洗浄を行う必要がある。
さらに、膜分離法は、微細な穴を持つ膜を通して水をろ過して、懸濁物質から溶解性の化合物までの不純物質を除去する技術である。この方法では、膜自体が非常に高価であり、汚染(ファウリング)により透水性能を維持するために定期的な薬品洗浄を行なう必要があり、また、洗浄廃液処理の処理コストも大きく、さらに分離された濃厚廃液の処理を行う必要がある。また、膜分離法により不純物をほぼ除去した水は「腐食性」が高くなる欠点がある。
【0007】
従来のスケールの付着防止・除去法としての薬品処理法は酸・アルカリ剤等の薬品にて付着物の溶解・除去を行う方法であり、設備の停止及び廃液処理等の問題がある。また、機械洗浄法は高圧洗浄、ブラシ洗浄等の機械洗浄であり、空気・オゾン洗浄を含む場合がある。この機械洗浄法では設備の停止及び排水処理等の問題がある。
物理処理法には、電磁処理、磁気処理、セラミック処理等があり、薬品添加がないので後処理のトラブルがないことが大きな利点となる。
【0008】
本発明の課題は、薬品を一切使用しないで、水中の浮遊物の除去及び鉄・銅等の金属イオン類を選択的に除去する方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は次のような解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、グラフト吸着材成分を両側表面に有し、パネル状に配置した多数の同一サイズのシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽と、該グラフト吸着材槽に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給する循環流路を備えたことを特徴とする水中の金属成分の除去装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、グラフト吸着材槽内の並列された多数のシート状物の間隔に並行して被処理水を流すように循環流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の水中の金属成分の除去装置である。
【0011】
請求項3記載の発明は、循環流路に被処理水照射用のコイル部を配置し、該コイル部に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の水中の金属成分の除去装置である。
【0012】
請求項4記載の発明は、全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽内の多数の同一サイズの両側表面にグラフト吸着材成分を有するシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して、該パネル状のシート状物の間に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給することを特徴とする水中の金属成分の除去方法である。
【0013】
請求項5記載の発明は、鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部に還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルにより変調電磁場を与えることを特徴とする請求項4記載の水中の金属成分の除去方法である。
【0014】
請求項6記載の発明は、鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を前記グラフト吸着材を有する所定の間隔を開けて並列配置したパネル状のシート状物の間に流す工程とグラフト吸着処理前に前記変調電磁場を与える工程を有することを特徴とする請求項5記載の水中の金属成分の除去方法である。
【0015】
請求項7記載の発明は、還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルを巻いたテスト流路中に前記被処理水を流した後、該被処理水を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化する度合及び前記被処理水の乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う度合を確認して、前記被処理水の変調電磁場処理の効果の程度を判定する机上試験を行った後に、該被処理水体に対して変調電磁場処理をすることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の水中の金属成分の除去方法である。
【0016】
次に本発明の特徴点について述べる。
(1)グラフト吸着材成分による金属イオン及び金属成分を含む不溶解性物質の捕集
a.平面型(図3に示すように水の流れ方向に対して垂直方向にシート状物2を配置)にて使用した場合、1段目の表面吸着量が多くなるが、合わせて被処理液中に浮遊物が存在する場合にフィルター的に捕集してしまい、グラフト吸着材表面の官能基と金属イオンの吸着反応が著しく阻害される。
【0017】
b.スリット型(図4に示すように水の流れ方向に対して並行する方向にシート状物2を配置)においてグラフト吸着材を重ねて使用すると液中の金属イオンとグラフト材表面の官能基との吸着反応が阻害される。スリット間隔は2mmにすることが望ましい。
【0018】
c.液中浮遊物の除去
【0019】
本発明ではグラフト吸着材のシート状物を平行スリット型として、スリット間の2mm間隙による流速抵抗と共にカートリッジの構造にて仕切り板を設ける事で液中浮遊物の「固液分離性」を高める工夫をした。
上記グラフト吸着材とは次のような材料である。
ポリオレフィン若しくは天然高分子材を材質とする繊維、織布、不織布、フィルム、中空糸膜、平膜又は糸から製造される高分子基材と、該高分子基材にビニル反応性モノマーをグラフト重合させて形成したグラフト鎖と、該グラフト鎖に導入されたリン酸系、アミドキシム系キレート形成基とを有することを特徴とする金属イオン類を回収する為の吸着材をいう。
【0020】
(2)電磁場処理
a.グラフト吸着材表面への液中浮遊物の付着は吸着能力を阻害する。
(+)帯電性の浮遊物は(−)帯電するグラフト吸着材表面に付着し易いので、電磁場処理を採用する事で液中浮遊物の付着を防止する。
【0021】
b.液中に(+)帯電性の薬剤が混入している場合、電磁場処理の付着防止作用を著しく阻害する。そこで、リン酸型グラフト吸着材の採用により、液中の(+)帯電性薬剤の捕集・除去が可能である。
(+)帯電性薬剤の種類は不明であるが、リン酸型グラフト吸着材は液中のFeイオン及びCaイオン吸着能力に優れている事から(+)帯電性薬剤中の陽イオン物質の吸着・捕集が生じた結果であるものと推定される。
【0022】
c.従来、密閉系冷却水循環の冷却設備において電磁処理する場合、全冷却水循環水量の50%以上の流量を条件とする既存循環配管にて処理をしていた。
この場合、冷却循環が常に行われる配管を選択する必要が有り、2ヶ所以上に設置する必要があった。大型水槽に対してはグラフト吸着材槽の前段にて循環処理ラインに電磁処理する事で水槽内被処理水のスケール性を抑制する事が可能である。
【0023】
本発明で使用する還元(−)型変調電磁場処理は図18に示す変調電磁場発生器を用いる変調電磁場処理装置を利用して原水(被処理流体)に還元(−)型変調電磁場処理を行うものである。
【0024】
また、本発明の水中の金属除去装置では、水中に浮遊する金属類を含む不溶解性物質と溶解する金属イオン類を同時に除去する事が可能である。
不溶解性金属物質とは鉄又は銅、カルシウム・マグネシウム水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩を含む化合物、特に、pH7以下でも不溶解性物質を形成し易い鉄水酸化物は当発明における主たる除去物質であり、溶解性金属物質とは鉄・銅・マンガン・砒素を含む金属イオンである。
【0025】
不溶解性金属物質の除去の必要性は次の通りである。
空調用冷温水設備における冷水貯槽は大量の水を保有している。冷却機で冷やされた冷水を個々の空調用ファンコイルに送り、室内を冷房している。一度、保有した水は長年の間循環使用されているが、「腐食」によって徐々に鉄イオン・銅イオンが溶出してくる。溶出した鉄イオン・銅イオンは水中のアルカリ分と反応して水酸化物として不溶解性の浮遊物を形成し、カルシウム・シリカ成分を吸着して「スケール性」が増す。そのため、空調用ファンコイルの細管部に付着して水の流れを悪くしたり、熱交換効率を悪くする。更に、冬季において温水に切り替わると水のスケール性は増加するので徐々に空調設備の熱交換効率が悪化する。
【0026】
本発明では電磁場処理を用いて電気的反発を利用して設備内の付着物を徐々に剥離・除去させて、当発明の水質改善装置において水中に分散した鉄粒子を含む浮遊物を吸着槽内の仕切り板にて区切られたそれぞれのゾーンで分離・除去する。
【0027】
本発明の装置と方法の適用個所は、例えば空調用冷温水設備である。
空調用冷温水設備では1000m3を超える大量の水を地下水槽に貯留し、長期間の循環使用が行なわれている。貯留水中には設備内の金属類のために「腐食」によって徐々に溶解し、某ビルの冷水使用期間15年の設備(保有水量2500m3)では鉄4ppm・銅0.7ppmにも濃縮・増加している。
【0028】
冷水中のこれら金属類溶出は設備へのスケール及び腐食障害を更に悪化させる要因で有り、2500m3の水入れ替えには上下水道費が700円/m3とすると約175万円のコストが掛かる事とビル空調設備において設備を停止して水入れ替えを行う事が出来ず、又、設備を停止する事無く、補給水を供給しながら希釈によって水入れ替えをする場合は多くの労力と共に1750万円以上のコストが必要となる。以上の理由より、ほとんどの設備においては長年手付かずの状態である事が多い。
【0029】
設備を停止する事が無く、通常状態で蓄熱槽冷水の一部を循環させながら徐々に水質改善する本発明による技術と装置は非常に有効である。
なお、空調設備の末端に備えられたファンコイルは非常に口径が小さく、清掃作業にはコストも莫大となる。設備を停止する事無く、電磁処理を併用して既存付着物の除去とスケール付着防止はグラフト吸着材による金属類除去と合わせて低コストの処理技術を可能とする。
【0030】
また、(+)帯電性薬品によって処理されていた冷水に対して(−)帯電型(=還元(−)型)電磁処理の適用を行う場合、グラフト吸着材によるイオン吸着に伴ない、水中の(+)帯電性薬剤の除去も可能である事が判り、同設備における当技術と水質改善装置は非常に有効である。
【0031】
また、空調設備蓄熱槽の冷水にはほとんど補給水は供給されない事から時間あたりの電磁処理水量は冷水の全量でなく、その一部分で処理可能である。従来は全体循環水量(m3/時間)の50%以上の流量が流れる既存設備配管に浄化処理を行っていたが、本発明では被処理水の一部を循環処理する事で処理が可能である。
例えば、容量700m3の蓄熱槽に対して吸着処理量(循環水量)150m3/日を最低条件とする。電磁場処理を行った被処理水の電磁場処理の残留効果は導電率200μS/cm程度で約7日間保持する事が可能である。処理回数によって電磁処理水の処理効果は増大する事から被処理水の全体量を処理する必要が無い事が判った。
また、グラフト材は再生使用(塩酸再生)が可能で有るため、グラフト吸着材による処理装置がコンパクト化でき、水質検査及びグラフト材の再生を容易に行うことができる。
【0032】
本発明で使用する机上試験(乾燥液滴界面視察によるラボテスト)は、図18に示す還元(−)型の変調電磁場発生器を用いて、本実施例が適用される空調設備の原水(被処理水)について、図24に示すガラスパイプに本実施例の還元(−)型の変調電磁場発生器13に接続したコイル(コイル部12)を巻き付けておき、これにコイル電流2.0Aで、例えば1回、3回、5回の通液テストを行い、通液していない未処理液と比較するテストを行う。そして、前記比較テストは試料をガラス板上に滴下し、乾燥させた後、界面部の結晶状況を顕微鏡を用いて確認する。界面に結晶性の固体が多く析出すると机上テストの結果が良くなかったと判定し、界面に結晶性の固体が析出しないか少ないと机上テストの結果が良かったと判定する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の効果は以下の通りである。
【0034】
(1)薬品を一切使用しないで水中の浮遊物の除去及び鉄及び/又は銅を含む金属イオン類を選択的に除去することができる。
なお、事前調査としてグラフト吸着材の選択試験とスケール性と電磁処理効果を確認する机上試験を実施することで容易に本発明の実施効果を確認できる。
【0035】
(2)電磁場処理により既存付着物の剥離・除去を行ない、前記金属成分を含んだ浮遊物を仕切り板にて重力固液分離しながら、水中に溶解する無用な金属イオンをグラフト吸着材によって吸着・除去することができる。
【0036】
(3)電磁場処理によるスケール防止作用はグラフト吸着材への浮遊物付着を防止する効果を有し、金属イオン捕集能力を維持させるのに有効である。
【0037】
(4)電磁場処理に対して阻害性を与える(+)帯電性薬品が含まれている被処理水をグラフト吸着材で処理する事によって電磁場処理への阻害影響を抑制、更には消失させる効果が判った。グラフト吸着材処理自体も被処理水のスケール性を低下させる作用を有する事が判り、電磁処理との組み合わせによって相乗効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施の形態について図面とともに説明する。
【実施例1】
【0039】
まず、グラフト吸着材を用いて水中の鉄・銅等金属イオン及び前記金属成分を含んだ浮遊物の同時除去を行うための装置について説明する。
図1にはグラフト吸着材を用いて水中の鉄・銅等金属イオン及び前記金属成分を含んだ浮遊物の同時除去を行うための原水処理装置の概略図を示す。
原水処理装置1は中央部にスリット体からなるグラフト吸着材槽(スリット体)3を配置し、グラフト吸着材槽(スリット体)3は多数のグラフト吸着材を両側表面に有するパネル状に配置した多数の同一サイズの水透過性のシート状物2(図3,図4参照)を2mm間隙で並列配置して得られる全体に箱状のスリット体3である。各シート状物2の平面が鉛直方向に向くように配置しているので、シート状物2の平面に直交する方向、すなわち並列配置した互いの間隔を開けた多数のシート状物2の平面を原水処理装置1内での原水の流れに直交する方向に向けて配置する(図3)か又は原水の流れ方向に沿って配置する(図4)。したがってグラフト吸着材槽(スリット体)3に流入した原水はシート状物2を透過して流れるか又はシート状物2同士の間隔を通過することになる。
【0040】
また、全体に箱状体となっているグラフト吸着材槽(スリット体)3内の前側端部と後側端部がなす平面に対してそれぞれ間隔を開けて、その前後に第1仕切り板4、第2仕切り板5をスリット体3がなす平面に平行に、かつ鉛直方向に各仕切り板4,5の平面を向けて配置する。また、第1仕切り板4には開口部を設けていないが第2仕切り板5の下方部位には開口部5aを設ける。
【0041】
従って、原水処理装置1は中央部にグラフト吸着材槽(スリット体)3を配置した第1仕切り板4から第2仕切り板5までをゾーンBとすると、グラフト吸着材槽(スリット体)3の前後には原水の流入ゾーン(ゾーンA)と流出ゾーン(ゾーンC)ができる。上記ゾーンAでは流入原水が下降流となって浮遊物の沈降を促し、仕切り板4の上部より溢れた原水はゾーンBに流入して下降流を作る。ゾーンBでの原水の下降流はスリット体3を形成した複数のシート状物2のグラフト吸着材に接触しながらシート状物2自体を透過する。又はシート状物2同士の間隙を流れる間に生じる流動抵抗で更に原水中の浮遊物の分離を促進し、同時にグラフト吸着材に原水中の金属イオンが吸着される。
【0042】
次いで、原水は仕切り板5の下方の開口部5aからゾーンCに流入する。その際に原水の流れは仕切り板5の下方の開口部5aに対向する位置にあるゾーンCを構成する原水処理装置1の水槽壁面に衝突して、原水中の浮遊物は重力沈降し易くなる。
【0043】
このように、グラフト吸着材槽(スリット体)3を含むゾーンBの前端部側にはゾーンAから原水を仕切り板4の上端部からグラフト吸着材槽(スリット体)3の前側面との間隔からゾーンBに流入させてシート状物2のスリット間隔を流れるように誘導することでグラフト吸着材が原水に接触する機会が損なわれず、シート状物2の表面のグラフト吸着材の金属イオンの吸着能力が阻害されない。また、シート状物2のスリット間隔などを流れ出た原水が仕切り板5の下方の開口部5aからゾーンCの該開口部5aに対向する原水処理装置1の水壁面に衝突する構成である。
【0044】
次にシート状物2の平面に対して原水を垂直方向から流入させる場合と平行流として流入させる場合を比較した実験例を説明する。
【0045】
(1)グラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して原水を垂直方向から流入させる場合(図3)
図2に示す原水タンク7内の原水をポンプでくみ出し、グラフト吸着材を有するシート状物2を収納したグラフト吸着材槽(スリット体)3を含む原水処理装置1を経由して原水タンク7に再び戻すような実験装置を用いて次のような実験条件で原水を処理した。
【0046】
(処理条件)
対象処理水量:300L
グラフト吸着材:下記の製造方法で得られるポリエチレン製高分子基材にビニル反応性モノマーをグラフト重合させて形成したグラフト鎖と、該グラフト鎖に導入されたリン酸系キレート形成基とを有するもの。
【0047】
前記グラフト吸着材を有する平型(高さ100mm×幅120mm)のシート状物2を10枚並列配置したグラフト吸着材槽(スリット体)3はA(原水流路断面面積)=1200cm2 、V(体積)=72cm3、 W(重量)=14.4gからなる。
循環水量:0.6L/分、SV(空間速度):500/時間
初期Feイオン濃度:地下水+硝酸鉄(全鉄)4.6ppm
pH:4.6(硝酸pH調整)
【0048】
前記グラフト吸着材の製造方法(特開2004−99715号公報参照)
高分子基材として不織布(倉敷繊維加工(株)製のポリエチレン製(型番EX−02)のもの)を使用し、これに放射線照射することにより反応活性点を生成させた。放射線照射は、電子線を用いて窒素雰囲気下でトータル線量が200kGyになる条件で行った。次いで、リン酸基を有するモノマーとしてモノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートとジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートの混合モノマー(モノ/ジ=70/30%)を10〜30%の濃度で、メタノールと純水の混合溶媒(メタノール10〜30重量%)中で3〜24時間、40〜60℃で反応させ、不織布にグラフト鎖を導入した。反応率は60℃で2時間及び12時間反応させると、それぞれ90%、200%であった。
【0049】
前記グラフト吸着材の利用方法
鉄イオン及び鉄水酸化物の様な不溶解性物質が含まれている場合、流入原水に対して垂直な方向に平面を向けて多段に配置した前記製法で得られたグラフト吸着材を有するシート状物2からなるスリット体3の1段目にて2価の鉄イオン吸着と鉄水酸化物の捕捉が行われ、2段目以降のシート状物2による鉄イオン吸着が阻害されている。そこで、2段目以降も鉄イオン吸着が同時に生じる工夫が必要である。
【0050】
シート状物2のスリット間隔を1mmとするとグラフト吸着材の接触部における吸着が不良であった。またシート状物2のスリット間隔を2mmとするとグラフト吸着材に均等に鉄イオンが吸着可能となった。なお、小型な水質改善装置を開発する目的から可能な限り多くのグラフト吸着材を装備することが必要であり、またスリット間を通過する不溶解性物質のグラフト吸着材との接触抵抗を増加させ、電磁処理によって被処理水中のスケール成分の付着性を防止しながら、カートリッジ内にて底部へ沈降・分離性を高めることが必要である。
【0051】
そこで、前述のようにグラフト吸着材を有するシート状物2のスリット間隔を2mmとするスペーサーを設けた。1mm間隔ではシート状物2同士の接触により鉄イオン吸着にムラが見られ、2mm間隔では均等な鉄イオン吸着が得られたことからスリット間隔2mmを採用した。
【0052】
グラフト吸着材槽(スリット体)3を含むゾーンBの前端部側にはゾーンAから原水を仕切り板4の上端部からグラフト吸着材槽(スリット体)3の前側面との間隔からゾーンBに流入させてシート状物2のスリット間隔を流れるように誘導することで水中の浮遊物は2mmのスリット間を下降流で移動する。水と比較して比重の重い浮遊物はこの下降流と共に慣性力が働き、ゾーンBの底部に沈降・堆積し易くなる。そのため、ゾ―ンBの出口5aは底部より上に位置する中間部からゾーンCに流れる構造となっている。
【0053】
また、2mmのスリット間隔に設けられるシート状物2には金属イオンの吸着と共に水中浮遊物の付着を生じ易いが、電磁処理によって水中浮遊物の付着性を抑制する事でスリット間の下降流に沿って浮遊物は凝集し、沈降・分離性が高められる。
【0054】
(2)グラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して原水を平行流で流入させる場合(図4)
図2に示す実験装置を用いて次のような実験条件で原水を処理した。
【0055】
(処理条件)
対象処理水量:300L
グラフト吸着材:前記したグラフト吸着材を使用
前記グラフト吸着材を有する平型(幅60mm×高さ80mm)のシート状物2を3枚並列配置したグラフト吸着材槽(スリット体)3はA(原水流路断面面積)=144cm2 、V(体積)=0.86cm3、 W(重量)=0.17g からなる。
循環水量:0.6L/分、SV(空間速度):500/時間
初期Feイオン濃度:地下水+硝酸鉄( 全鉄5.2ppm)
pH:4.8(硝酸pH調整)
【0056】
図5にこの実験例の結果を写真で示すが、得られたシート状物2の表面のグラフト吸着材のFeイオンの捕捉状態を示す。図4に示すようにグラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して原水を平行流で流入させる構成によってFeイオンはグラフト吸着材のシート表面全体にほぼ均等補足されていることが分かる。
【0057】
上記(2)で示す実験結果に基づき図4に示すようにグラフト吸着材を有するシート状物2のスリットに対して金属イオンを含む模擬水を平行流で流入させる構成によって実証試験を次のような期間と処理条件で行った。
【0058】
試験期間は平成20年2月8日より13日までの5日間
処理条件
処理対象液:模擬水(上水+塩化第二鉄(FeCl3))
対象処理水量:300L
グラフト吸着材:前記したグラフト吸着材を使用
シート状物2(幅100mm×高さ540mm)の89枚/組(図6の写真に示す。)をスリット状に配置する。
A=48000cm2、V=2884cm3、W=577g
使用組数:1組又は3組(89枚/組)
循環水量:3,170L/時間
SV:1,100/h
【0059】
試験結果を表1に示す。
【表1】
表1に示すように本実験により水中の金属体が減少していることが分かる。
【実施例2】
【0060】
次に図7に示すように実施例1で用いたグラフト吸着材のシート状物2のグラフト吸着材槽(スリット体)3による処理と電磁場処理装置8とを組み合わせて水中の鉄成分の除去を行うための装置について説明する。
【0061】
鉄水酸化物の付着防止効果
処理液は精製水に硝酸鉄として全鉄1ppm含む水を用いて、図18に示す(−)帯電型電磁場発生器により以下の条件により電磁場処理を行った。
出力コイル電流値を0.75A(交流)とし、主要周波数:8000Hzとし、塩化ビニール製配管にコイルを11巻きし、該配管に合計5回にわたり、前記処理液を繰り返し流した(通液処理)。
【0062】
電磁場処理の効果の判定は前記机上試験法で説明した界面付近の結晶状況を顕微鏡(100倍)による観察でスケール性の判定で行った。
判定方法は、図8(a)の顕微鏡写真に示すように界面付近への結晶集合性があるとスケール性有りと判定し、図8(b)の顕微鏡写真に示すように界面付近へ結晶集合性が無い場合はスケール性が低下または無しと判定する。
被処理水中に鉄イオンが多く含まれるほどスケール性が高くなる傾向が見られるので、グラフト吸着材による鉄イオンの除去によってスケール性の低下を図った。
【0063】
上記机上試験による結果を受けて下記の表2に示す性質を有する被処理水として某ホテルの空調設備の二次冷水を用いて上記机上テストと同様の電磁場処理机上テスト及びグラフト吸着材処理の机上簡易判定テストを行った。
【表2】
なお、表中の「ND」は「検出せず」の意味である。
【0064】
前記電磁場処理後の被処理水を図1に示すグラフト吸着材を含むシート状物2のグラフト吸着材槽(スリット体)3(被処理水100mlに対して1cm3使用)による原水処理装置1に16時間浸漬した。なお、グラフト吸着処理は机上にて簡易判定する方法として上記「浸漬方法」を用いた。
スケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った。
【0065】
図9(a)には電磁場処理を行ってない場合の顕微鏡写真を示し、図9(b)には前記条件での電磁場処理を行った場合の顕微鏡写真を示し、図9(c)には前記電磁場処理を行った後に、さらにグラフト吸着材処理を行った場合の顕微鏡写真を示す。
【0066】
図9(a)の電磁場処理を行ってない場合には被処理水は強いスケール性を示し、若干であるが、虹色を呈する原因はこの被処理水には防食・スケール防止剤として界面活性剤用いられていることが想定された。また、図9(b)の電磁場処理を行った後の顕微鏡写真からは、被処理水のスケール性が弱まったが、界面への鉄分集合性が残っていることが分かった。すなわち、前記電磁場処理ではスケール抑制効果が弱いことが判明した。そこで図9(c)の顕微鏡写真に示すように前記電磁場処理を行った後に、さらにグラフト吸着材処理を行うとスケール性が低下していることが分かった。グラフト吸着材処理後の被処理水中の溶解性鉄の濃度は0.7mg/Lから0.45mg/Lに減少していた。
【実施例3】
【0067】
次に腐食防止剤等の上記電磁場処理を阻害させる(+)帯電性薬剤の影響の有無について図7に示す装置を用いて調べた。
下記の表3に示す性質を有する被処理水として某ホテルの空調設備の一次冷水を用いて電磁場処理机上試験及びグラフト吸着材処理の机上試験を行った。
【0068】
【表3】
【0069】
机上試験と同じく、電磁場処理装置8の出力コイル電流値は0.75A(交流)であり、主要周波数として8000Hz、塩化ビニール製配管にコイルを11巻きし、該配管に合計5回にわたり、前記処理液を繰り返し流した(通液処理)。
またグラフト吸着材処理の机上試験はグラフト吸着材からなるシート状物2を被処理水100mlに対して1cm2使用して16時間浸漬処理した(ビーカー200mlに被処理水100mlを採取し、グラフト吸着材1cm2を浸漬させる。)。
スケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った。
図10(a)には電磁場処理を行ってない場合の顕微鏡写真を示し、図10(b)には前記条件での電磁場処理を行った場合の顕微鏡写真を示す。
図10(a)に示すように電磁場処理を行ってない場合には界面への結晶集合性が大きく、また、上記電磁場処理を行うと、被処理水中に(+)帯電性薬品の含まれる影響によって逆にスケール性が増加した。
【0070】
そこで、グラフト吸着材による金属イオン捕集処理が及ぼす効果を机上試験した。被処理水(蓄熱槽冷水)100mlに対してグラフト吸着材33cm2を用いて浸漬処理を行った。その結果得られた結果の顕微鏡写真を図10(c)に示す。
グラフト吸着材によって、界面への結晶集合性が低下していることが分かった。グラフト吸着材処理前の鉄分の検出量は0.13mg/Lであったが、グラフト吸着材処理により、鉄分が検出されなかった。
【0071】
また、グラフト吸着材処理後に電磁場処理を行い、スケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った結果を図11に示す。図11に示すようにグラフト材処理によるスケール防止効果と電磁場処理との相乗効果があることが分かった。
【0072】
また、グラフト吸着材の量を変化させて前記グラフト吸着材処理を行った場合と、前記グラフト吸着材処理後に電磁場処理を行った場合のスケール性の判定を被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を顕微鏡検査(100倍)で行った結果を表4と図12(グラフト吸着剤0cm2)、図13(グラフト吸着材5cm2)、図14(グラフト吸着材7.5cm2)、図15(グラフト吸着材10cm2)、図16(グラフト吸着材20cm2)及び図17(グラフト吸着材35cm2)に示す。グラフト吸着材の面積を増加させることはグラフト吸着材量を増加させたことを示す。
【0073】
【表4】
【0074】
図12(a)、図13(a)、図14(a)、図15(a)、図16(a)及び図17(a)はそれぞれグラフト吸着材処理後の界面付近の結晶の状況を示す顕微鏡写真であり、図12(b)、図13(b)、図14(b)、図15(b)、図16(b)及び図17(b)はグラフト吸着材処理後にそれぞれ電磁場処理を行って、得られた被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況を示す顕微鏡写真である。
【0075】
図12(a)〜図14(a)と 図12(b)〜図14(b)までグラフト吸着材処理後の顕微鏡写真によると、界面付近の結晶がはっきり観察でき、スケール性があることが分かり、それらを電磁場処理するとむしろスケール性が増加して電磁場処理が逆効果であることが分かった。しかし図15(a)〜図17(a)のグラフト吸着材10cm2〜35cm2で処理した場合はスケール性が低下又は消失し、これにさらに電磁場処理を行うと図15(b)に示すようにスケール性が消失又は無くなった。
【0076】
このことから被処理水中に(+)帯電性薬品の含まれる場合でも十分にグラフト吸着材と接触させることで(+)帯電性物質を吸着除去でき、さらにこれに(−)帯電性電磁場処理をすることで被処理水中のスケール成分をほぼ完全に消失させることができることが分かった。
なお、図7に示すスリット型グラフト吸着材はカートリッジ型として使用したので取り替え性、メンテナンス性に優れている。
【0077】
また、本発明で使用する還元(−)型変調電磁場処理については以下の通りである。
原水(被処理流体)に還元(−)型変調電磁場処理を行うことができる変調電磁場発生器を用いる変調電磁場処理装置を利用するものである。
【0078】
まず、図18に示す還元(−)型変調電磁場発生器を用いる変調電磁場処理装置(簡単に「還元型装置」ということがある。)の説明をする。
【0079】
図18において、スイープ信号発振回路から連続可変周波数発生回路にスイープ信号が所定時間間隔で発振され、周波数が変化しながら波形整形増幅回路に出力される。このとき連続可変周波数発生回路には周波数幅設定回路と中心周波数設定回路からの出力が入り、それぞれ周波数の幅の中心周波数が設定される。波形整形増幅回路では、レベル設定回路で電磁場強度を設定し、その後、電力増幅回路で適切な大きさの電力を得てコイル部に出力する。
【0080】
なお、電磁場強度とは空間における電磁波の強さを意味し、単位は[V/m]又は[A/m]である。測定方法は使用目的により使い分けるが、本発明においては[A/m]である(Vは電圧、Aは電流、mは長さ)。コイルに流す電流に比例し、センサーを置いた所での磁界の大きさをこの場合の電磁波の強さ又は強度としている。
【0081】
この還元(−)型装置は、20Hz〜1MHzの帯域で連続的に周波数が時間的に変化する方形波の変調交流電流を被処理水流路に巻いたコイルに流す変調電磁場処理装置であり、当該装置により発生する電流により誘起される電磁界により前記水流路を流れる被処理水を処理するものである。
【0082】
この還元(−)型装置から発生する電流を、例えば400msサイクル(任意可変可能)で順次周波数を変えてコイル部に流すと、図19に示す電磁場強度が得られる。なお、図19は周波数に対する電磁場強度のイメージ図であり、6×10-3ガウスの電磁場強度で約4,000〜6,000Hzの周波数帯にピーク値を有する主要周波数を示す。また、前記電磁場強度はコイル2に流す電流値に比例してその大きさが変化する。
P=K×i2×t
P:被処理水液体への変調電磁場照射エネルギー[W]
i:コイルに流れる電流[A]
t:照射時間[秒]
K:定数[H/m3]
【0083】
前記図19に示す電磁場強度のピーク値を示す周波数付近で水中に含まれる粒子のゼータ電位の変化量が図20に示すように変調電磁場処理を行わない場合(未処理時)のゼータ電位(ゼロ値)に比べて大きく低下した値を示すことが分かった。
【0084】
次にコイル部の配置について説明する。
図21には被処理水配管11の外側にコイルを設置する例を示す。コイル部12は被処理水が流れる配管11の外側へ設置され、該コイル部12へ還元(−)型変調電磁場発生器13から変調電磁波を流すとコイル部12より発生する変調電磁場が配管11を透過して被処理水に照射される。配管11の材質によっては電磁波の透過量が異なり、鋼鉄管<ステンレス管<塩化ビニル管の順に電磁波透過量は多くなる。透過率の悪い材質に対してはコイル電流値を増加させて被処理水に必要な変調電磁波量を確保する。
【0085】
図22には投げ込み式のコイル部12とコイル部12へ電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器13を有する投込み照射型の変調電磁場処理装置を示す。処理対象の原水槽14内に、例えば塩化ビニール管からなるコイル設置部材にコイルを巻いたコイル部12を投込み、コイル部12より発生する変調電磁場を原水槽14内の液体に作用させる。
【0086】
図21に示すような、被処理水が流れる配管11の外側にコイルを巻く方法では、配管11の電磁波透過性が良くない場合には配管11内部を通過する被処理水への電磁場の作用が著しく低下する(配管11の材質として、鋼鉄管、鋳鉄管、ステンレス管等の金属材質からなる配管11を用いる場合には、電磁波の透過性が悪く、被処理水への電磁場の作用が著しく低下する。)ので、この場合には、コイル部12を原水槽14内の被処理水中に浸漬した投込み照射型の変調電磁場発生器により被処理水を処理する方法を実施した。図22(a)に示す投込み照射型の変調電磁場処理装置の変調電磁場発信部を図22(b)に示すように絶縁性の合成樹脂製のケース15内に密封することが効果的である。
【0087】
図22に示すコイル部12を水槽14内に投げ込む方式のコイル部12は、図21の被処理水配管11にコイルを巻く方法と比較して配管11の材質に左右されないで電磁場を被処理水に有効に作用させることができる。また、図22に示す方法は図21に示す方法に比べて単位時間当たりの電磁波の照射エネルギーが高い。このように変調電磁波による照射エネルギーが高いため、投げ込み方式のコイル部12により発生させる電磁場強度は小さくても良い。
【0088】
また、被処理水に対する還元力及び酸化力を促進させる変調電磁場を作用させる手段として、図22に示す被処理水が一時的に貯留される水槽14等を有する場合には、コイル部12の投込み照射型の変調電磁場処理装置を採用することで、図21に示す方法に比較して効率的な変調電磁場処理が可能となる。
【0089】
図22に示すように水槽14内の被処理水中に投込み照射型の変調電磁場処理装置のコイル部12を浸漬しておくと、変調電磁場処理装置から発する変調電磁場エネルギーは全て被処理水に供給されるのでエネルギーのロスがない。しかも、図21の配管11内を流れる被処理水とは異なり、水槽14内に被処理水が滞留しているので長時間の電磁波を照射できる。このため、電磁波の照射時間の制御が容易になる。
なお、変調電磁場の処理効果判定は従来より用いている図24に示す机上テスト(ラボテスト)による顕微鏡判定を行うことができる。
【0090】
図23には外部照射方式のコイル部を示す。
図23(a)は被処理水配管11の外側に位置するコイル部12から変調電磁波を照射する外部照射方式コイル部12であり、図23(b)は水槽14内の水面より上側に設置するコイル部12から被処理水に変調電磁波を照射する様子を示す。
【0091】
以上図21〜図23に示すコイル部12からの変調電磁場処理方法のうち、最も少ない電磁場強度で処理が可能な方法は図22に示す投げ込み式である。透過させる物質の影響を受けず、直接、水に照射させることが可能である。
【0092】
以上の還元(−)型装置を用いる変調電磁場処理は、次のような用途に用いられる。
(a)被処理水を用いて壁面にスケールが付着し易い性質又は壁面が腐食性を有する設備へ適用することが最も適している。
特に、被処理水の性質として壁面に対して腐食性を有する場合には壁面を構成する、例えば鋼材の腐食防止を行う必要がある。このような腐食性を有する被処理水を扱う設備に還元(−)型変調電磁場処理が有効である。また、被処理水と(−)帯電性薬剤との併用により還元(−)型変調電磁場処理の相乗効果を生む。
【0093】
但し、一般的な水処理剤は(+)帯電性のものが多く、このような(+)帯電性の水処理剤が混入した場合は還元(−)型電磁場処理が阻害される。
【0094】
また、本発明の実施例で使用する図24に示す机上試験(乾燥液滴界面視察によるラボテスト)は次の通りである。
本出願人の特許である特許第3247942号公報に変調電磁場処理が対象とする被処理水に有効に作用するか否かを机上試験(ラボテスト)で行う方法を開示した。
前記ラボテストは、変調電磁場発生器13を用いて経過時間に対して周波数が変化する方形波の交流電流を流すコイル部12を設けたテスト流路中に結晶化可能な物質を含む被処理水を流した後、該被処理水の水滴試料をガラス板上で乾燥させる際に水滴界面付近へ結晶が集合性を有する場合を「スケール性有り」と判定し、前記界面への結晶集合性を失って小粒子化する場合を「スケール性消失」と判定するものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施例1によるグラフト吸着材を用いて水中の鉄・銅等金属類の同時除去を行うための原水処理装置の概略図を示す。
【図2】本発明の実施例1による原水処理装置を用いる原水処理系の構成図である。
【図3】本発明の実施例1による多数のシート状物の平面に対して直交する方向に原水を流入させる構成を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1による多数のシート状物の平面に対して原水を並行流で流入させる構成を説明する図である。
【図5】図4に示す構成を用いた実験例の結果を写真を示す。
【図6】図4に示す構成による実証試験に用いるシート状物の写真を示す。
【図7】本発明の実施例2,3によるグラフト吸着材のシート状物による処理と電磁場処理との組み合わせて水中の鉄及び銅等金属成分の除去を行うための装置を示す。
【図8】机上試験法で被処理水に電磁場処理を行った結果の判定を説明する界面付近の結晶状況の顕微鏡(100倍)写真であり、図8(a)は界面付近へ結晶集合性がある場合、図8(b)は界面付近へ結晶集合性が無い場合の顕微鏡(100倍)写真である。
【図9】図9(a)には電磁場処理を行っていない場合の顕微鏡写真を示し、図9(b)には前記条件での電磁場処理を行った場合の顕微鏡写真を示し、図9(c)には前記電磁場処理を行った後に、さらにグラフト吸着材処理を行った場合の顕微鏡写真を示す。
【図10】(+)帯電性薬品の含まれる被処理水中に電磁場処理を行ってない場合(図10(a))、電磁場処理を行った場合(図10(b))及び被処理水に対してグラフト吸着の机上浸漬試験を行った場合の界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(図10(c))を示す。
【図11】(+)帯電性薬品の含まれる被処理水をグラフト吸着材処理後に電磁場処理を行った後の界面付近の結晶の状況の顕微鏡写真(100倍)を示す。
【図12】グラフト吸着材の量(0cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図12(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図12(b))を示す。
【図13】グラフト吸着材(5cm2)でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶の状況の顕微鏡写真(100倍)(図13(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶の状況の顕微鏡写真(100倍)(図13(b))を示す。
【図14】グラフト吸着材の量(7.5cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図14(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図14(b))を示す。
【図15】グラフト吸着材の量(10cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図15(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図15(b))を示す。
【図16】グラフト吸着材の量(20cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図16(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図16(b))を示す。
【図17】グラフト吸着材の量(35cm2 )でグラフト吸着材処理を行った被処理水をガラスプレート上で乾燥させて得られる界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図17(a))とその後に電磁場処理を行った後の同じく界面付近の結晶状況の顕微鏡写真(100倍)(図1(b))を示す。
【図18】還元(−)型変調電磁場発生器の回路図である。
【図19】図1の還元(−)型変調電磁場発生器による電磁場強度と周波数との関係図である。
【図20】酸化(+)型と還元(−)型の変調電磁場発生器を用いる塩化カリ水溶液中の酸化チタン微粒子の基準値(未電磁場処理水中の酸化チタン微粒子のゼータ電位=ゼロ)との差異と周端数との関係を示す図である。
【図21】被処理水配管の外側にコイルを設置する還元(−)型変調電磁場処理装置の構成図である。
【図22】投げ込み式のコイル部を有する還元(−)型変調電磁場処理装置の構成図である。
【図23】外部照射方式のコイル部を有する還元(−)型変調電磁場処理装置の構成図である。
【図24】本発明で使用する机上試験の方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0096】
1 原水処理装置
2 シート状物
3 グラフト吸着材槽(スリット体)
4 第1仕切り板
5 第2仕切り板
7 原水タンク
8 電磁場処理装置
11 被処理水配管
12 コイル部
13 還元(−)型変調電磁場発生器
14 原水槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフト吸着材成分を両側表面に有し、パネル状に配置した多数の同一サイズのシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽と、該グラフト吸着材槽に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給する循環流路を備えたことを特徴とする水中の金属成分の除去装置。
【請求項2】
グラフト吸着材槽内の並列された多数のシート状物の間隔に並行して被処理水を流すように循環流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の水中の金属成分の除去装置。
【請求項3】
循環流路に被処理水照射用のコイル部を配置し、該コイル部に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の水中の金属成分の除去装置。
【請求項4】
全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽内の多数の同一サイズの両側表面にグラフト吸着材成分を有するシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して、該パネル状のシート状物の間に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給することを特徴とする水中の金属成分の除去方法。
【請求項5】
鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部に還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルにより変調電磁場を与えることを特徴とする請求項4記載の水中の金属成分の除去方法。
【請求項6】
鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を前記グラフト吸着材を有する所定の間隔を開けて並列配置したパネル状のシート状物の間に流す工程とグラフト吸着処理前に前記変調電磁場を与える工程を有することを特徴とする請求項5記載の水中の金属成分の除去方法。
【請求項7】
還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルを巻いたテスト流路中に前記被処理水を流した後、該被処理水を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化する度合及び前記被処理水の乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う度合を確認して、前記被処理水の変調電磁場処理の効果の程度を判定する机上試験を行った後に、該被処理水に対して変調電磁場処理をすることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の水中の金属成分の除去方法。
【請求項1】
グラフト吸着材成分を両側表面に有し、パネル状に配置した多数の同一サイズのシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽と、該グラフト吸着材槽に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給する循環流路を備えたことを特徴とする水中の金属成分の除去装置。
【請求項2】
グラフト吸着材槽内の並列された多数のシート状物の間隔に並行して被処理水を流すように循環流路が設けられていることを特徴とする請求項1記載の水中の金属成分の除去装置。
【請求項3】
循環流路に被処理水照射用のコイル部を配置し、該コイル部に20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流す還元(−)型変調電磁場発生器を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の水中の金属成分の除去装置。
【請求項4】
全体に箱状のスリット体としたグラフト吸着材槽内の多数の同一サイズの両側表面にグラフト吸着材成分を有するシート状物を所定の間隔を開けて並列配置して、該パネル状のシート状物の間に鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を循環供給することを特徴とする水中の金属成分の除去方法。
【請求項5】
鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部に還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルにより変調電磁場を与えることを特徴とする請求項4記載の水中の金属成分の除去方法。
【請求項6】
鉄及び/又は銅イオンを含む金属イオンを溶解する被処理水又は鉄成分及び/又は銅成分を含む金属成分を含有する不溶解性物質を含む被処理水の少なくとも一部を前記グラフト吸着材を有する所定の間隔を開けて並列配置したパネル状のシート状物の間に流す工程とグラフト吸着処理前に前記変調電磁場を与える工程を有することを特徴とする請求項5記載の水中の金属成分の除去方法。
【請求項7】
還元(−)型変調電磁場発生器から20Hz〜1MHzの帯域で周波数が時間的に変化する交流電流を流すコイルを巻いたテスト流路中に前記被処理水を流した後、該被処理水を乾燥させ、乾燥後にできる結晶体粒径が小粒子化する度合及び前記被処理水の乾燥物の界面付近への結晶体の集合性を失う度合を確認して、前記被処理水の変調電磁場処理の効果の程度を判定する机上試験を行った後に、該被処理水に対して変調電磁場処理をすることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の水中の金属成分の除去方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−22987(P2010−22987A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190334(P2008−190334)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(598084666)株式会社第一テクノ (8)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(598084666)株式会社第一テクノ (8)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】
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