水中探知装置
【課題】FET等の応答速度の限界等により水中探知装置から送信する超音波信号のエンベロープ制御の制御幅が小さく、スプリアスの発生を抑えたりレンジサイドローブのレベルを小さくしたりすることができなかった。
【解決手段】本発明の水中探知装置1は、所定の電圧を供給する電源HVと、制御信号Viにより前記電圧を制御する電圧制御回路40と、ゲート信号G1乃至ゲート信号G4を出力するゲート信号生成部50と、前記電圧制御回路40により制御された電圧および前記ゲート信号生成部50から出力されたゲート信号G1乃至ゲート信号G4に基づいて基準信号VTDを出力するスイッチング回路10と、前記基準信号VTDが印加されることで前記制御信号Viの波形に基づきエンベロープ制御された超音波信号Prを水中に送信する振動子30と、を備えることを特徴とする。
【解決手段】本発明の水中探知装置1は、所定の電圧を供給する電源HVと、制御信号Viにより前記電圧を制御する電圧制御回路40と、ゲート信号G1乃至ゲート信号G4を出力するゲート信号生成部50と、前記電圧制御回路40により制御された電圧および前記ゲート信号生成部50から出力されたゲート信号G1乃至ゲート信号G4に基づいて基準信号VTDを出力するスイッチング回路10と、前記基準信号VTDが印加されることで前記制御信号Viの波形に基づきエンベロープ制御された超音波信号Prを水中に送信する振動子30と、を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンベロープ制御された超音波信号を水中に送信する水中探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中探知装置は、振動子を駆動することにより超音波信号を水中に送信した後、魚群や海底等の物標で反射したエコー信号を受信することで水中を探知する。この時、水中探知装置に求められる性能として、スプリアスの発生が少ないことが挙げられる。
【0003】
また、パルス圧縮方式を用いて探知する際の受信信号には、図9に示すように、レンジサイドローブと呼ばれる時間に対するサイドローブが現れる。このレンジサイドローブのレベルが小さいことも水中探知装置に求められる性能として挙げられる。
【0004】
ここで、特許文献1には、水中に送信する超音波信号のエンベロープの立ち上がりや立ち下がりを緩やかな形状に整形すること(以下、エンベロープ制御と称する)でスプリアスの発生を抑えられることが開示されている。
【0005】
また、パルス圧縮方式を用いて水中を探知する際に現れるレンジサイドローブも、エンベロープ制御した超音波信号を送信することで小さくできることが知られている。
【0006】
そこで、スプリアスの発生を抑えたり、レンジサイドローブのレベルを小さくしたりするために、従来の水中探知装置100ではパルス幅変調(PWM)方式により超音波信号のエンベロープ制御を行っている。
【0007】
以下、水中探知装置100について図10から図12を参照しながら説明する。水中探知装置100では、図10に示すように、電源HVから供給される定電圧の下、スイッチング回路10により基準信号VTDを生成する。この際、ゲート信号生成部20により基準信号VTDはパルス幅変調される。そして、基準信号VTDを振動子30に印加することで、パルス幅変調により制御されたエンベロープを有する超音波信号Prが水中に送信される。
【0008】
具体的には、図11に示すように、スイッチング回路10はフルブリッジ回路である。スイッチング回路10は主にFET1からFET4により構成され、各FETはゲート信号生成部20(図示なし)から出力されるゲート信号G1からゲート信号G4によってスイッチングがそれぞれ制御される。各ゲート信号は、図12(a)に示すように、パルス幅変調されたHiとLoの二値信号であり、ゲート信号G1がHiのときにFET1がONし、ゲート信号G2がHiのときにFET2がONし、ゲート信号G3がHiのときにFET3がONし、ゲート信号G4がHiのときにFET4がONする。
【0009】
そして、電源HVから出力される定電圧の下、FET1およびFET4が共にONのときにトランスの一次側に正方向の電流が流れる。逆に、FET2およびFET3が共にONのときに負方向の電流が流れる。このようにして、図12(b)に示すような各ゲート信号の波形に基づいた基準信号VTDがトランスの一次側に生成される。
【0010】
このように生成された基準信号VTDがトランスで昇圧され、振動子30に印加されることで、振動子30が駆動する。結果、図12(c)に示すようなエンベロープ制御された超音波信号Prを水中に送信することができる。
【特許文献1】特開2004−177276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、スイッチング回路10に設けられたFET等のスイッチングには応答速度の限界が存在し、ゲート信号を所定時間以上立ち上げなければFET等は応答しない。したがって、基準信号VTDのパルス幅Tbを所定時間以下にすることができず、パルス幅変調により制御される超音波信号Prのエンベロープはその制御幅を十分に大きくすることができなかった。
【0012】
このエンベロープの制御幅は、図12(b)に示すように、基準信号のパルス幅TbをFET等の応答限界時間(minと称する)からパルス間隔Taと同じ時間(maxと称する)まで変調した際に最も大きくなる。しかし、この時のエンベロープの制御幅でも十分ではなく、スプリアスは発生していた。さらに、パルス圧縮を用いた際には、レンジサイドローブのレベルをあまり小さくすることはできなかった。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、制御幅をより大きくすることのできるエンベロープ制御を実現し、スプリアスの発生を抑えることのできる水中探知装置を提供することを目的とする。さらに、パルス圧縮方式を用いた際には、レンジサイドローブのレベルも小さくすることのできる水中探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の水中探知装置は、所定の電圧を供給する電源と、制御信号により前記電圧を制御する電圧制御回路と、ゲート信号を出力するゲート信号生成部と、前記電圧制御回路により制御された電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、前記基準信号が印加されることで前記制御信号の波形に基づきエンベロープ制御された超音波信号を水中に送信する振動子と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このように、振動子に印加される基準信号の電圧を制御することで、超音波信号のエンベロープの制御幅を従来よりも大きくすることができる。したがって、超音波信号を送信する際に生じるスプリアスを従来よりも抑えることができる。また、超音波信号のエンベロープを制御信号の波形によって制御でき、超音波信号のエンベロープやその制御幅を簡易に決定することもできる。
【0016】
また、本発明の水中探知装置は、異なる電圧を供給する少なくとも二つの電源と、供給される前記電源を切り替えることで電圧を制御する電圧制御回路と、パルス変調したゲート信号を出力するゲート信号生成部と、前記電圧制御回路により切り替えられた電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、前記基準信号が印加されることで超音波信号を水中に送信する振動子と、を備えることを特徴とする。
【0017】
特に、前記電源の切り替え直後の基準信号のパルス幅は、該切り替え前後の電源の電圧および該切り替え直前の基準信号のパルス幅に基づいて決定されることを特徴とする。
【0018】
このように、基準信号の電圧を必要な超音波信号のエンベロープに応じて切り替える。特に、超音波信号のエンベロープを制御する際に、電圧を切り替えるとともに、この電圧の変化に応じたパルス変調によるエンベロープ制御も行うことで、従来よりもエンベロープの制御幅を簡易に大きくすることができる。
【0019】
また、上述の水中探知装置は、前記ゲート信号生成部は、立ち上がり周期を変化させたゲート信号を出力し、前記振動子は、時間とともに周波数を変化させた超音波信号を送信することを特徴とする。
【0020】
このようにスイッチング回路に供給される電圧の制御に基づいて超音波信号のエンベロープを制御する水中探知装置にパルス圧縮方式を適用することで、パルス圧縮方式を用いて探知を行った際に現れるレンジサイドローブのレベルを従来よりも小さくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、送信する超音波信号のエンベロープの制御幅を従来より簡易に大きくすることができ、スプリアスの発生を抑えることのできる水中探知装置を提供することができる。また、本発明によるエンベロープ制御をパルス圧縮方式を利用した水中探知装置に応用した際には、レンジサイドローブのレベルをより小さくすることができ、エコーレベルの高い海底等の近傍においても魚等の物標の判別をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1を図1から図4を参照しながら説明する。
水中探知装置1では、図1に示すように、電源HVからスイッチング回路10に供給される電圧を電圧制御回路40によって制御する。そして、この制御された電圧に基づいてスイッチング回路10により基準信号VTDが生成される。この時、基準信号VTDのパルス幅はゲート信号生成部50から出力される信号に基づき一定幅となるように制御される。このように制御された基準信号VTDが振動子30に印加されることで、所望のエンベロープを有する超音波信号Prを水中に送信することができる。
【0023】
ここで、超音波信号Prのエンベロープは電圧制御回路40によって制御された電圧の波形に基づいて決定され、エンベロープの制御幅は電圧の制御幅に等しい。したがって、電圧の制御幅を大きくすることによりエンベロープの制御幅を大きくすることができる。
【0024】
また、従来の水中探知装置100では、超音波信号Prのエンベロープ制御を基準信号VTDのパルス幅を変調することで行っていたが、本発明の水中探知装置1では電圧制御回路40による電圧を制御することで行う。したがって、パルス幅を一定幅とすることができるため、基準信号VTDのパルス幅を送信毎に一様に変化させることができ、ゲート信号生成部50によって超音波信号Prのパワーを制御することができる。
【0025】
次に、上述のエンベロープ制御を実現し得る回路構成を図2を用いて説明する。
スイッチング回路10は主にFET1からFET4により構成されるフルブリッジ回路であり、各FETはゲート信号生成部50(図示なし)から出力されるゲート信号G1からゲート信号G4によってスイッチングされる。
【0026】
各ゲート信号はHiとLoの二値信号であり、ゲート信号G1がHiのときにFET1がONし、ゲート信号G2がHiのときにFET2がONし、ゲート信号G3がHiのときにFET3がONし、ゲート信号G4がHiのときにFET4がONする。そして、FET1およびFET4が共にONのときにトランスの一次側に正方向の電流が流れ、逆に、FET2およびFET3が共にONのときに負方向の電流が流れる。このようにして、各ゲート信号に基づいたパルス幅およびパルス間隔から成る基準信号VTDがトランスの一次側に生成される。
【0027】
電圧制御回路40は、スイッチング回路10に供給される電圧を制御する。電圧制御回路40を介して電源HVはスイッチング回路10に接続されており、電圧制御回路40は、この電源HVからスイッチング回路10に供給される電圧を超音波信号Prのエンベロープが所望のエンベロープとなるように制御する。
【0028】
具体的には、電圧制御回路40が具備する誤差アンプ41の−端子に、DAC(Digital Analog Converter)から出力された所望のエンベロープを有した制御信号Viを入力する。この制御信号Viは抵抗R1と抵抗R2の比率に基づいて増幅され、トランジスタ42のベースに出力される。トランジスタ42のエミッタには電源HVが接続されており、トランジスタ42のコレクタには増幅された制御信号Viにより制御された電圧が出力される。このようにして、トランジスタ42を介してスイッチング回路10に制御信号Viで制御された電圧を出力することができ、制御幅の大きな電圧制御を簡易に行うことができる。
【0029】
このように制御された電圧がスイッチング回路10に供給されることで、所望の電圧から成る基準信号VTDがトランスの一次側に生成される。そして、トランスで昇圧された基準信号VTDが振動子30に印加されることで、所望の制御幅を有するエンベロープが形成された超音波信号Prを水中に送信することができる。
【0030】
ここで、制御信号ViはDACを用いて簡易に生成することができ、その制御幅は従来のパルス幅変調方式による制御幅よりも大きくすることができる。つまり、超音波信号Prのエンベロープの制御幅は従来よりも簡易に大きくすることができる。
【0031】
次に、ゲート信号G1からゲート信号G4、制御信号Vi、基準信号VTD、および超音波信号Prの波形を図3を用いて説明する。なお、図3は水中探知装置1の送信期間における各信号波形であり、水中探知装置1はこの送信期間終了後に設けられた所定時間から成る受信期間(図示なし)に超音波信号Prのエコーを受信することで探知を行う。
【0032】
ゲート信号G1およびゲート信号G3は、図3(a)に示すように所定のデューティー比でそれぞれ立ち上がる。ゲート信号G2はゲート信号G1と、ゲート信号G4はゲート信号G3と逆相である。
【0033】
制御信号Viは図3(b)に示すような波形であり、制御信号Viの波形を増幅した波形を持つ電圧がスイッチング回路10に供給される。つまり、この制御信号Viにより超音波信号Prのエンベロープは制御される。
【0034】
基準信号VTDは図3(c)に示すような波形であり、ゲート信号G1およびゲート信号G4が共にHiの時に正電圧で立ち上がり、ゲート信号G2およびゲート信号G3が共にHiの時に負電圧で立ち上がる。この基準信号VTDのパルス間隔Taにより超音波信号Prの周波数は決定され、パルス幅Tbと制御信号Viにより制御される電圧とによって超音波信号Prの振幅は決定される。なお、基準信号VTDの電圧レベルのエンベロープは制御信号Viの波形を増幅した波形である。
【0035】
このような基準信号VTDが昇圧されて振動子30に印加されることで、図3(d)に示すような超音波信号Prが水中に送信される。このようにして、制御信号Viの制御幅によって超音波信号Prのエンベロープの制御幅を決定することができる。さらに、基準信号VTDのパルス幅Tbを送信毎に一様に変化させることで超音波信号Prの振幅を一様に変化させることができ、超音波信号Prのパワーを制御することもできる。
【0036】
以上のような水中探知装置1により、エンベロープの制御幅を従来よりも大きくした超音波信号Prを送信することができスプリアスの発生を抑えることができる。さらに、パルス圧縮方式を用いて探知を行う際には、レンジサイドローブのレベルを小さくすることもできる。
【0037】
なお、パルス圧縮は、図4に示すような時間とともに周波数が変化(FM変調)した超音波信号を送信し、そのエコー信号に基づいて所望の周波数成分からなる信号を生成することにより行うことができる。時間とともに周波数が変化した超音波信号を送信するには、ゲート信号生成部50により各ゲート信号の立ち上がり周期を変化させ、パルス間隔Taが時間とともに変化した基準信号VTDを生成すればよい。このようなパルス圧縮を用いることにより、長い時間幅の超音波信号Prを用いて短い時間幅の受信信号を得ることができるため、探知距離を長くとることができるとともに距離分解能を高くすることができる。
【0038】
他に、ゲート信号生成部50は超音波信号Prのパワー制御を行うのではなく、パルス幅変調方式による超音波信号Prのエンベロープ制御を行ってもよい。このようにすることで、エンベロープ制御を電圧制御およびパルス幅変調方式による制御の両方で行うことができ、制御幅のより大きなエンベロープ制御を行うこともできる。
【0039】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2を図5から図8を参照しながら説明する。なお、実施の形態2の水中探知装置2は、電圧制御回路およびゲート信号生成部に関して実施の形態1の水中探知装置1と異なる。以下、水中探知装置2の電圧制御回路60およびゲート信号生成部70について説明し、他の構成については説明を省略する。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態2による水中探知装置2の構成の一例を示す図である。
電圧制御回路60は、スイッチング回路10に供給される電圧を制御する。スイッチング回路10には、この電圧制御回路60を介して電源HV1と電源HV2が接続されており、電圧制御回路60は、これら電源HV1と電源HV2からの電圧供給を切り替える。
【0041】
ゲート信号生成部70は、パルス幅変調方式によりスイッチング回路10で生成される基準信号VTDのパルス幅変調を行う。この時、ゲート信号生成部70は、電圧制御回路60による電源の切り替えに応じたパルス幅変調を行う。
【0042】
このように、電圧制御回路60による電源の切り替えと、ゲート信号生成部70によるパルス幅変調とによって超音波信号Prのエンベロープ制御を行うことでエンベロープの制御幅を従来よりも大きくすることができる。また、電圧制御回路60は、実施の形態1における電圧制御回路40のように電源HVから供給される電圧を制御信号Viによって電圧制御するのではなく、電圧供給する電源を切り替えることによって電圧制御を行うため、電源から供給される電圧の損失を避けることもできる。
【0043】
次に、上述のエンベロープ制御を実現し得る回路構成を図6を用いて説明する。
電圧制御回路60は、ダイオード61およびダイオード62と、FET5から構成される。ダイオード61を介して電源HV1がスイッチング回路10と接続されており、FET5およびダイオード62を介して電源HV2がスイッチング回路10と接続されている。なお、電源HV2の電圧は、電源HV1の電圧よりも高い。
【0044】
FET5は、二値信号から成るゲート信号G5によってスイッチングが制御される。FET5がONすると、電源HV1の電圧よりも電源HV2の電圧の方が高いため、ダイオード62がONする。つまり、スイッチング回路10に電源HV2の電圧が供給される。逆に、FET5がOFFのとき、ダイオード61がONし、スイッチング回路10に電源HV1の電圧が供給される。
【0045】
次に、ゲート信号G1からゲート信号G5、基準信号VTD、および超音波信号Prの波形を図7を用いて説明する。なお、図7は水中探知装置2の送信期間における各信号波形であり、水中探知装置2はこの送信期間終了後に設けられた所定時間から成る受信期間(図示なし)に超音波信号Prのエコーを受信し探知を行う。
【0046】
ゲート信号G1およびゲート信号G3は図7(a)に示すような波形であり、一定周期でそれぞれ立ち上がる。また、ゲート信号G1およびゲート信号G3のパルス幅は変調している。ゲート信号G2はゲート信号G1と、ゲート信号G4はゲート信号G3と逆相である。
【0047】
ゲート信号G5は図7(b)に示すような波形であり、所定の期間にHiとなり、その前後の期間はLoとなる。なお、ゲート信号G5がLoのときは基準信号VTDを生成する際の電圧は電源HV1電圧であり、ここでは前のLoの期間を第1HV1期間とし、後のLoの期間を第2HV1期間と称する。また、ゲート信号G5がHiのときは基準信号VTDを生成する際の電圧は電源HV2電圧であり、ここではこの期間をHV2期間と称する。このようなゲート信号G5によりFET5のスイッチングが制御され、基準信号VTDの電圧制御が行われる。
【0048】
基準信号VTDは図7(c)に示すような波形であり、ゲート信号G1およびゲート信号G4が共にHiの時に正電圧で立ち上がり、ゲート信号G2およびゲート信号G3が共にHiの時に負電圧で立ち上がる。この基準信号VTDのパルス間隔Taにより超音波信号Prの周波数は決定され、パルス幅Tbと制御信号Viにより制御される電圧とによって超音波信号Prの振幅は決定される。なお、基準信号VTDの電圧はゲート信号G5に基づいて供給される電圧である。
【0049】
ここで、基準信号VTDのパルス幅Tbについて各期間に場合分けして説明する。
(1)第1HV1期間:
基準信号VTDのパルス幅Tbは徐々に長くなる。このとき、パルス幅Tbをスイッチング回路10に具備されたFETの応答限界時間(以下、minと称する)から徐々に長くすることで、パルス幅変調に基づく超音波信号Prのエンベロープ制御量を最大限に大きくすることができる。
【0050】
(2)HV2期間:
第1HV1期間においてパルス幅Tbが徐々に長くなった後、本HV2期間における最初のパルスのパルス幅Tbは、直前のパルス幅Tbと電源HV1および電源HV2の電圧差に基づき、電圧の切り替えに際して超音波信号Prのエンベロープが連続となるような長さとなる。そして、パルス幅Tbは徐々に長くなり本HV2期間の中間で最も長くなる。つまり、超音波信号Prの振幅は送信期間を通して最も大きくなる。このとき、パルス幅Tbを本HV2期間の中間でパルス間隔Taと同じ長さ(以下、maxと称する)にすることで、パルス幅変調に基づく超音波信号Prのエンベロープ制御量を最大限に大きくすることができる。以降、パルス幅Tbが徐々に長くなったのと対称的にパルス幅Tbは短くなる。
【0051】
(3)第2HV1期間:
HV2期間においてパルス幅Tbが徐々に短くなった後、本第2HV1期間における最初のパルスのパルス幅Tbは、直前のパルス幅Tbと電源HV1および電源HV2の電圧差に基づき、電圧の切り替えに際して超音波信号Prのエンベロープが連続となるような長さとなる。この長さは、第1HV1期間における最後のパルス幅Tbと等しい。そして、パルス幅Tbは第1HB1期間と対称に徐々に短くなる。このとき、第1HV1期間と同様に、パルス幅Tbがminまで短くすることで、パルス幅変調に基づく超音波信号Prのエンベロープ制御量を最大限に大きくすることができる。
【0052】
このような基準信号VTDが振動子30に印加されることで、図7(d)に示すような超音波信号Prが水中に送信される。以上のように、本実施例では電圧を切り替えたことにより、電圧制御による制御量を加味することができエンベロープの制御幅を従来よりも大きくすることができる。したがって、スプリアスの発生を抑えることのできる水中探知装置を提供することができる。
【0053】
なお、エンベロープ制御として40dBのコントロールをしたい場合、電圧制御による制御幅を20dBとし、パルス幅変調方式による制御幅を20dBとすればよい。また、これら制御幅の割り当ては、実装するFETの応答速度等の機器仕様により決定すればよい。さらに、スイッチング回路によるパルス変調方式は上述のパルス幅変調方式に限られず、パルス密度変調(PDM)方式等でもよい。
【0054】
さらに、パルス圧縮方式を用いて探知を行う際には、レンジサイドローブのレベルを小さくすることもできる。
【0055】
このレンジサイドローブのレベルの大小による探知画像の比較のため、図8(a)に従来の水中探知装置で水中を探知した際の表示例を、図8(b)に本発明の水中探知装置2で水中を探知した際の表示例を示す。なお、両水中探知装置が表示する対象は等しい。また、縦方向は深度を意味し、右側にそのスケールが表示されている。例えば、深度約20m付近には海底が表示されている。さらに横方向は時間を意味し、探知した最新の情報は右側に表示されている。そして、探知毎に画像は右側から左側にスクロールしながら更新され、画像の右側から左側にかけて探知した情報が時系列に表示されている。
【0056】
図8(a)内に示した拡大図において、Aは魚を示すエコーであるが、海底からのエコーのレンジサイドローブにより表示されたノイズと重なってしまい、魚Aの確認はし難い。しかしながら、レンジサイドローブのレベルを低減することができる本発明の水中探知装置2では、図8(b)に示すように海底近傍に表示されるノイズは小さくなっていることがわかる。したがって、図8(b)内の拡大図に示すように、魚Aは容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1による水中探知装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による水中探知装置の一例を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1による各ゲート信号、基準信号、および超音波信号の波形の一例を示す図である。
【図4】FM変調された超音波信号の波形の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2による水中探知装置の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2による水中探知装置の一例を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態2による制御信号、基準信号、および超音波信号の波形の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2による水中探知装置の表示画像の一例を示す図である。
【図9】従来の水中探知装置が受信したエコー波形の一例を示す図である。
【図10】従来の水中探知装置の一例を示す図である。
【図11】従来の水中探知装置の一例を示す回路図である。
【図12】従来の各ゲート信号、基準信号、および超音波信号の波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1、2、100 水中探知装置
10 スイッチング回路
20、50、70 ゲート信号生成部
30 振動子
40、60 電圧制御回路
41 誤差アンプ
42 トランジスタ
61、62 ダイオード
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンベロープ制御された超音波信号を水中に送信する水中探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中探知装置は、振動子を駆動することにより超音波信号を水中に送信した後、魚群や海底等の物標で反射したエコー信号を受信することで水中を探知する。この時、水中探知装置に求められる性能として、スプリアスの発生が少ないことが挙げられる。
【0003】
また、パルス圧縮方式を用いて探知する際の受信信号には、図9に示すように、レンジサイドローブと呼ばれる時間に対するサイドローブが現れる。このレンジサイドローブのレベルが小さいことも水中探知装置に求められる性能として挙げられる。
【0004】
ここで、特許文献1には、水中に送信する超音波信号のエンベロープの立ち上がりや立ち下がりを緩やかな形状に整形すること(以下、エンベロープ制御と称する)でスプリアスの発生を抑えられることが開示されている。
【0005】
また、パルス圧縮方式を用いて水中を探知する際に現れるレンジサイドローブも、エンベロープ制御した超音波信号を送信することで小さくできることが知られている。
【0006】
そこで、スプリアスの発生を抑えたり、レンジサイドローブのレベルを小さくしたりするために、従来の水中探知装置100ではパルス幅変調(PWM)方式により超音波信号のエンベロープ制御を行っている。
【0007】
以下、水中探知装置100について図10から図12を参照しながら説明する。水中探知装置100では、図10に示すように、電源HVから供給される定電圧の下、スイッチング回路10により基準信号VTDを生成する。この際、ゲート信号生成部20により基準信号VTDはパルス幅変調される。そして、基準信号VTDを振動子30に印加することで、パルス幅変調により制御されたエンベロープを有する超音波信号Prが水中に送信される。
【0008】
具体的には、図11に示すように、スイッチング回路10はフルブリッジ回路である。スイッチング回路10は主にFET1からFET4により構成され、各FETはゲート信号生成部20(図示なし)から出力されるゲート信号G1からゲート信号G4によってスイッチングがそれぞれ制御される。各ゲート信号は、図12(a)に示すように、パルス幅変調されたHiとLoの二値信号であり、ゲート信号G1がHiのときにFET1がONし、ゲート信号G2がHiのときにFET2がONし、ゲート信号G3がHiのときにFET3がONし、ゲート信号G4がHiのときにFET4がONする。
【0009】
そして、電源HVから出力される定電圧の下、FET1およびFET4が共にONのときにトランスの一次側に正方向の電流が流れる。逆に、FET2およびFET3が共にONのときに負方向の電流が流れる。このようにして、図12(b)に示すような各ゲート信号の波形に基づいた基準信号VTDがトランスの一次側に生成される。
【0010】
このように生成された基準信号VTDがトランスで昇圧され、振動子30に印加されることで、振動子30が駆動する。結果、図12(c)に示すようなエンベロープ制御された超音波信号Prを水中に送信することができる。
【特許文献1】特開2004−177276
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、スイッチング回路10に設けられたFET等のスイッチングには応答速度の限界が存在し、ゲート信号を所定時間以上立ち上げなければFET等は応答しない。したがって、基準信号VTDのパルス幅Tbを所定時間以下にすることができず、パルス幅変調により制御される超音波信号Prのエンベロープはその制御幅を十分に大きくすることができなかった。
【0012】
このエンベロープの制御幅は、図12(b)に示すように、基準信号のパルス幅TbをFET等の応答限界時間(minと称する)からパルス間隔Taと同じ時間(maxと称する)まで変調した際に最も大きくなる。しかし、この時のエンベロープの制御幅でも十分ではなく、スプリアスは発生していた。さらに、パルス圧縮を用いた際には、レンジサイドローブのレベルをあまり小さくすることはできなかった。
【0013】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、制御幅をより大きくすることのできるエンベロープ制御を実現し、スプリアスの発生を抑えることのできる水中探知装置を提供することを目的とする。さらに、パルス圧縮方式を用いた際には、レンジサイドローブのレベルも小さくすることのできる水中探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の水中探知装置は、所定の電圧を供給する電源と、制御信号により前記電圧を制御する電圧制御回路と、ゲート信号を出力するゲート信号生成部と、前記電圧制御回路により制御された電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、前記基準信号が印加されることで前記制御信号の波形に基づきエンベロープ制御された超音波信号を水中に送信する振動子と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このように、振動子に印加される基準信号の電圧を制御することで、超音波信号のエンベロープの制御幅を従来よりも大きくすることができる。したがって、超音波信号を送信する際に生じるスプリアスを従来よりも抑えることができる。また、超音波信号のエンベロープを制御信号の波形によって制御でき、超音波信号のエンベロープやその制御幅を簡易に決定することもできる。
【0016】
また、本発明の水中探知装置は、異なる電圧を供給する少なくとも二つの電源と、供給される前記電源を切り替えることで電圧を制御する電圧制御回路と、パルス変調したゲート信号を出力するゲート信号生成部と、前記電圧制御回路により切り替えられた電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、前記基準信号が印加されることで超音波信号を水中に送信する振動子と、を備えることを特徴とする。
【0017】
特に、前記電源の切り替え直後の基準信号のパルス幅は、該切り替え前後の電源の電圧および該切り替え直前の基準信号のパルス幅に基づいて決定されることを特徴とする。
【0018】
このように、基準信号の電圧を必要な超音波信号のエンベロープに応じて切り替える。特に、超音波信号のエンベロープを制御する際に、電圧を切り替えるとともに、この電圧の変化に応じたパルス変調によるエンベロープ制御も行うことで、従来よりもエンベロープの制御幅を簡易に大きくすることができる。
【0019】
また、上述の水中探知装置は、前記ゲート信号生成部は、立ち上がり周期を変化させたゲート信号を出力し、前記振動子は、時間とともに周波数を変化させた超音波信号を送信することを特徴とする。
【0020】
このようにスイッチング回路に供給される電圧の制御に基づいて超音波信号のエンベロープを制御する水中探知装置にパルス圧縮方式を適用することで、パルス圧縮方式を用いて探知を行った際に現れるレンジサイドローブのレベルを従来よりも小さくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、送信する超音波信号のエンベロープの制御幅を従来より簡易に大きくすることができ、スプリアスの発生を抑えることのできる水中探知装置を提供することができる。また、本発明によるエンベロープ制御をパルス圧縮方式を利用した水中探知装置に応用した際には、レンジサイドローブのレベルをより小さくすることができ、エコーレベルの高い海底等の近傍においても魚等の物標の判別をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1を図1から図4を参照しながら説明する。
水中探知装置1では、図1に示すように、電源HVからスイッチング回路10に供給される電圧を電圧制御回路40によって制御する。そして、この制御された電圧に基づいてスイッチング回路10により基準信号VTDが生成される。この時、基準信号VTDのパルス幅はゲート信号生成部50から出力される信号に基づき一定幅となるように制御される。このように制御された基準信号VTDが振動子30に印加されることで、所望のエンベロープを有する超音波信号Prを水中に送信することができる。
【0023】
ここで、超音波信号Prのエンベロープは電圧制御回路40によって制御された電圧の波形に基づいて決定され、エンベロープの制御幅は電圧の制御幅に等しい。したがって、電圧の制御幅を大きくすることによりエンベロープの制御幅を大きくすることができる。
【0024】
また、従来の水中探知装置100では、超音波信号Prのエンベロープ制御を基準信号VTDのパルス幅を変調することで行っていたが、本発明の水中探知装置1では電圧制御回路40による電圧を制御することで行う。したがって、パルス幅を一定幅とすることができるため、基準信号VTDのパルス幅を送信毎に一様に変化させることができ、ゲート信号生成部50によって超音波信号Prのパワーを制御することができる。
【0025】
次に、上述のエンベロープ制御を実現し得る回路構成を図2を用いて説明する。
スイッチング回路10は主にFET1からFET4により構成されるフルブリッジ回路であり、各FETはゲート信号生成部50(図示なし)から出力されるゲート信号G1からゲート信号G4によってスイッチングされる。
【0026】
各ゲート信号はHiとLoの二値信号であり、ゲート信号G1がHiのときにFET1がONし、ゲート信号G2がHiのときにFET2がONし、ゲート信号G3がHiのときにFET3がONし、ゲート信号G4がHiのときにFET4がONする。そして、FET1およびFET4が共にONのときにトランスの一次側に正方向の電流が流れ、逆に、FET2およびFET3が共にONのときに負方向の電流が流れる。このようにして、各ゲート信号に基づいたパルス幅およびパルス間隔から成る基準信号VTDがトランスの一次側に生成される。
【0027】
電圧制御回路40は、スイッチング回路10に供給される電圧を制御する。電圧制御回路40を介して電源HVはスイッチング回路10に接続されており、電圧制御回路40は、この電源HVからスイッチング回路10に供給される電圧を超音波信号Prのエンベロープが所望のエンベロープとなるように制御する。
【0028】
具体的には、電圧制御回路40が具備する誤差アンプ41の−端子に、DAC(Digital Analog Converter)から出力された所望のエンベロープを有した制御信号Viを入力する。この制御信号Viは抵抗R1と抵抗R2の比率に基づいて増幅され、トランジスタ42のベースに出力される。トランジスタ42のエミッタには電源HVが接続されており、トランジスタ42のコレクタには増幅された制御信号Viにより制御された電圧が出力される。このようにして、トランジスタ42を介してスイッチング回路10に制御信号Viで制御された電圧を出力することができ、制御幅の大きな電圧制御を簡易に行うことができる。
【0029】
このように制御された電圧がスイッチング回路10に供給されることで、所望の電圧から成る基準信号VTDがトランスの一次側に生成される。そして、トランスで昇圧された基準信号VTDが振動子30に印加されることで、所望の制御幅を有するエンベロープが形成された超音波信号Prを水中に送信することができる。
【0030】
ここで、制御信号ViはDACを用いて簡易に生成することができ、その制御幅は従来のパルス幅変調方式による制御幅よりも大きくすることができる。つまり、超音波信号Prのエンベロープの制御幅は従来よりも簡易に大きくすることができる。
【0031】
次に、ゲート信号G1からゲート信号G4、制御信号Vi、基準信号VTD、および超音波信号Prの波形を図3を用いて説明する。なお、図3は水中探知装置1の送信期間における各信号波形であり、水中探知装置1はこの送信期間終了後に設けられた所定時間から成る受信期間(図示なし)に超音波信号Prのエコーを受信することで探知を行う。
【0032】
ゲート信号G1およびゲート信号G3は、図3(a)に示すように所定のデューティー比でそれぞれ立ち上がる。ゲート信号G2はゲート信号G1と、ゲート信号G4はゲート信号G3と逆相である。
【0033】
制御信号Viは図3(b)に示すような波形であり、制御信号Viの波形を増幅した波形を持つ電圧がスイッチング回路10に供給される。つまり、この制御信号Viにより超音波信号Prのエンベロープは制御される。
【0034】
基準信号VTDは図3(c)に示すような波形であり、ゲート信号G1およびゲート信号G4が共にHiの時に正電圧で立ち上がり、ゲート信号G2およびゲート信号G3が共にHiの時に負電圧で立ち上がる。この基準信号VTDのパルス間隔Taにより超音波信号Prの周波数は決定され、パルス幅Tbと制御信号Viにより制御される電圧とによって超音波信号Prの振幅は決定される。なお、基準信号VTDの電圧レベルのエンベロープは制御信号Viの波形を増幅した波形である。
【0035】
このような基準信号VTDが昇圧されて振動子30に印加されることで、図3(d)に示すような超音波信号Prが水中に送信される。このようにして、制御信号Viの制御幅によって超音波信号Prのエンベロープの制御幅を決定することができる。さらに、基準信号VTDのパルス幅Tbを送信毎に一様に変化させることで超音波信号Prの振幅を一様に変化させることができ、超音波信号Prのパワーを制御することもできる。
【0036】
以上のような水中探知装置1により、エンベロープの制御幅を従来よりも大きくした超音波信号Prを送信することができスプリアスの発生を抑えることができる。さらに、パルス圧縮方式を用いて探知を行う際には、レンジサイドローブのレベルを小さくすることもできる。
【0037】
なお、パルス圧縮は、図4に示すような時間とともに周波数が変化(FM変調)した超音波信号を送信し、そのエコー信号に基づいて所望の周波数成分からなる信号を生成することにより行うことができる。時間とともに周波数が変化した超音波信号を送信するには、ゲート信号生成部50により各ゲート信号の立ち上がり周期を変化させ、パルス間隔Taが時間とともに変化した基準信号VTDを生成すればよい。このようなパルス圧縮を用いることにより、長い時間幅の超音波信号Prを用いて短い時間幅の受信信号を得ることができるため、探知距離を長くとることができるとともに距離分解能を高くすることができる。
【0038】
他に、ゲート信号生成部50は超音波信号Prのパワー制御を行うのではなく、パルス幅変調方式による超音波信号Prのエンベロープ制御を行ってもよい。このようにすることで、エンベロープ制御を電圧制御およびパルス幅変調方式による制御の両方で行うことができ、制御幅のより大きなエンベロープ制御を行うこともできる。
【0039】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2を図5から図8を参照しながら説明する。なお、実施の形態2の水中探知装置2は、電圧制御回路およびゲート信号生成部に関して実施の形態1の水中探知装置1と異なる。以下、水中探知装置2の電圧制御回路60およびゲート信号生成部70について説明し、他の構成については説明を省略する。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態2による水中探知装置2の構成の一例を示す図である。
電圧制御回路60は、スイッチング回路10に供給される電圧を制御する。スイッチング回路10には、この電圧制御回路60を介して電源HV1と電源HV2が接続されており、電圧制御回路60は、これら電源HV1と電源HV2からの電圧供給を切り替える。
【0041】
ゲート信号生成部70は、パルス幅変調方式によりスイッチング回路10で生成される基準信号VTDのパルス幅変調を行う。この時、ゲート信号生成部70は、電圧制御回路60による電源の切り替えに応じたパルス幅変調を行う。
【0042】
このように、電圧制御回路60による電源の切り替えと、ゲート信号生成部70によるパルス幅変調とによって超音波信号Prのエンベロープ制御を行うことでエンベロープの制御幅を従来よりも大きくすることができる。また、電圧制御回路60は、実施の形態1における電圧制御回路40のように電源HVから供給される電圧を制御信号Viによって電圧制御するのではなく、電圧供給する電源を切り替えることによって電圧制御を行うため、電源から供給される電圧の損失を避けることもできる。
【0043】
次に、上述のエンベロープ制御を実現し得る回路構成を図6を用いて説明する。
電圧制御回路60は、ダイオード61およびダイオード62と、FET5から構成される。ダイオード61を介して電源HV1がスイッチング回路10と接続されており、FET5およびダイオード62を介して電源HV2がスイッチング回路10と接続されている。なお、電源HV2の電圧は、電源HV1の電圧よりも高い。
【0044】
FET5は、二値信号から成るゲート信号G5によってスイッチングが制御される。FET5がONすると、電源HV1の電圧よりも電源HV2の電圧の方が高いため、ダイオード62がONする。つまり、スイッチング回路10に電源HV2の電圧が供給される。逆に、FET5がOFFのとき、ダイオード61がONし、スイッチング回路10に電源HV1の電圧が供給される。
【0045】
次に、ゲート信号G1からゲート信号G5、基準信号VTD、および超音波信号Prの波形を図7を用いて説明する。なお、図7は水中探知装置2の送信期間における各信号波形であり、水中探知装置2はこの送信期間終了後に設けられた所定時間から成る受信期間(図示なし)に超音波信号Prのエコーを受信し探知を行う。
【0046】
ゲート信号G1およびゲート信号G3は図7(a)に示すような波形であり、一定周期でそれぞれ立ち上がる。また、ゲート信号G1およびゲート信号G3のパルス幅は変調している。ゲート信号G2はゲート信号G1と、ゲート信号G4はゲート信号G3と逆相である。
【0047】
ゲート信号G5は図7(b)に示すような波形であり、所定の期間にHiとなり、その前後の期間はLoとなる。なお、ゲート信号G5がLoのときは基準信号VTDを生成する際の電圧は電源HV1電圧であり、ここでは前のLoの期間を第1HV1期間とし、後のLoの期間を第2HV1期間と称する。また、ゲート信号G5がHiのときは基準信号VTDを生成する際の電圧は電源HV2電圧であり、ここではこの期間をHV2期間と称する。このようなゲート信号G5によりFET5のスイッチングが制御され、基準信号VTDの電圧制御が行われる。
【0048】
基準信号VTDは図7(c)に示すような波形であり、ゲート信号G1およびゲート信号G4が共にHiの時に正電圧で立ち上がり、ゲート信号G2およびゲート信号G3が共にHiの時に負電圧で立ち上がる。この基準信号VTDのパルス間隔Taにより超音波信号Prの周波数は決定され、パルス幅Tbと制御信号Viにより制御される電圧とによって超音波信号Prの振幅は決定される。なお、基準信号VTDの電圧はゲート信号G5に基づいて供給される電圧である。
【0049】
ここで、基準信号VTDのパルス幅Tbについて各期間に場合分けして説明する。
(1)第1HV1期間:
基準信号VTDのパルス幅Tbは徐々に長くなる。このとき、パルス幅Tbをスイッチング回路10に具備されたFETの応答限界時間(以下、minと称する)から徐々に長くすることで、パルス幅変調に基づく超音波信号Prのエンベロープ制御量を最大限に大きくすることができる。
【0050】
(2)HV2期間:
第1HV1期間においてパルス幅Tbが徐々に長くなった後、本HV2期間における最初のパルスのパルス幅Tbは、直前のパルス幅Tbと電源HV1および電源HV2の電圧差に基づき、電圧の切り替えに際して超音波信号Prのエンベロープが連続となるような長さとなる。そして、パルス幅Tbは徐々に長くなり本HV2期間の中間で最も長くなる。つまり、超音波信号Prの振幅は送信期間を通して最も大きくなる。このとき、パルス幅Tbを本HV2期間の中間でパルス間隔Taと同じ長さ(以下、maxと称する)にすることで、パルス幅変調に基づく超音波信号Prのエンベロープ制御量を最大限に大きくすることができる。以降、パルス幅Tbが徐々に長くなったのと対称的にパルス幅Tbは短くなる。
【0051】
(3)第2HV1期間:
HV2期間においてパルス幅Tbが徐々に短くなった後、本第2HV1期間における最初のパルスのパルス幅Tbは、直前のパルス幅Tbと電源HV1および電源HV2の電圧差に基づき、電圧の切り替えに際して超音波信号Prのエンベロープが連続となるような長さとなる。この長さは、第1HV1期間における最後のパルス幅Tbと等しい。そして、パルス幅Tbは第1HB1期間と対称に徐々に短くなる。このとき、第1HV1期間と同様に、パルス幅Tbがminまで短くすることで、パルス幅変調に基づく超音波信号Prのエンベロープ制御量を最大限に大きくすることができる。
【0052】
このような基準信号VTDが振動子30に印加されることで、図7(d)に示すような超音波信号Prが水中に送信される。以上のように、本実施例では電圧を切り替えたことにより、電圧制御による制御量を加味することができエンベロープの制御幅を従来よりも大きくすることができる。したがって、スプリアスの発生を抑えることのできる水中探知装置を提供することができる。
【0053】
なお、エンベロープ制御として40dBのコントロールをしたい場合、電圧制御による制御幅を20dBとし、パルス幅変調方式による制御幅を20dBとすればよい。また、これら制御幅の割り当ては、実装するFETの応答速度等の機器仕様により決定すればよい。さらに、スイッチング回路によるパルス変調方式は上述のパルス幅変調方式に限られず、パルス密度変調(PDM)方式等でもよい。
【0054】
さらに、パルス圧縮方式を用いて探知を行う際には、レンジサイドローブのレベルを小さくすることもできる。
【0055】
このレンジサイドローブのレベルの大小による探知画像の比較のため、図8(a)に従来の水中探知装置で水中を探知した際の表示例を、図8(b)に本発明の水中探知装置2で水中を探知した際の表示例を示す。なお、両水中探知装置が表示する対象は等しい。また、縦方向は深度を意味し、右側にそのスケールが表示されている。例えば、深度約20m付近には海底が表示されている。さらに横方向は時間を意味し、探知した最新の情報は右側に表示されている。そして、探知毎に画像は右側から左側にスクロールしながら更新され、画像の右側から左側にかけて探知した情報が時系列に表示されている。
【0056】
図8(a)内に示した拡大図において、Aは魚を示すエコーであるが、海底からのエコーのレンジサイドローブにより表示されたノイズと重なってしまい、魚Aの確認はし難い。しかしながら、レンジサイドローブのレベルを低減することができる本発明の水中探知装置2では、図8(b)に示すように海底近傍に表示されるノイズは小さくなっていることがわかる。したがって、図8(b)内の拡大図に示すように、魚Aは容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態1による水中探知装置の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1による水中探知装置の一例を示す回路図である。
【図3】本発明の実施の形態1による各ゲート信号、基準信号、および超音波信号の波形の一例を示す図である。
【図4】FM変調された超音波信号の波形の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2による水中探知装置の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2による水中探知装置の一例を示す回路図である。
【図7】本発明の実施の形態2による制御信号、基準信号、および超音波信号の波形の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2による水中探知装置の表示画像の一例を示す図である。
【図9】従来の水中探知装置が受信したエコー波形の一例を示す図である。
【図10】従来の水中探知装置の一例を示す図である。
【図11】従来の水中探知装置の一例を示す回路図である。
【図12】従来の各ゲート信号、基準信号、および超音波信号の波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1、2、100 水中探知装置
10 スイッチング回路
20、50、70 ゲート信号生成部
30 振動子
40、60 電圧制御回路
41 誤差アンプ
42 トランジスタ
61、62 ダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電圧を供給する電源と、
制御信号により前記電圧を制御する電圧制御回路と、
ゲート信号を出力するゲート信号生成部と、
前記電圧制御回路により制御された電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、
前記基準信号が印加されることで前記制御信号の波形に基づきエンベロープ制御された超音波信号を水中に送信する振動子と、
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
異なる電圧を供給する少なくとも二つの電源と、
供給される前記電源を切り替えることで電圧を制御する電圧制御回路と、
パルス変調したゲート信号を出力するゲート信号生成部と、
前記電圧制御回路により切り替えられた電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、
前記基準信号が印加されることで超音波信号を水中に送信する振動子と、
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水中探知装置において、
前記電源の切り替え直後の基準信号のパルス幅は、該切り替え前後の電源の電圧および該切り替え直前の基準信号のパルス幅に基づいて決定されることを特徴とする水中探知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の水中探知装置において、
前記ゲート信号生成部は、立ち上がり周期を変化させたゲート信号を出力し、
前記振動子は、時間とともに周波数を変化させた超音波信号を送信することを特徴とする水中探知装置。
【請求項1】
所定の電圧を供給する電源と、
制御信号により前記電圧を制御する電圧制御回路と、
ゲート信号を出力するゲート信号生成部と、
前記電圧制御回路により制御された電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、
前記基準信号が印加されることで前記制御信号の波形に基づきエンベロープ制御された超音波信号を水中に送信する振動子と、
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
異なる電圧を供給する少なくとも二つの電源と、
供給される前記電源を切り替えることで電圧を制御する電圧制御回路と、
パルス変調したゲート信号を出力するゲート信号生成部と、
前記電圧制御回路により切り替えられた電圧および前記ゲート信号生成部から出力されたゲート信号に基づいて基準信号を出力するスイッチング回路と、
前記基準信号が印加されることで超音波信号を水中に送信する振動子と、
を備えることを特徴とする水中探知装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水中探知装置において、
前記電源の切り替え直後の基準信号のパルス幅は、該切り替え前後の電源の電圧および該切り替え直前の基準信号のパルス幅に基づいて決定されることを特徴とする水中探知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の水中探知装置において、
前記ゲート信号生成部は、立ち上がり周期を変化させたゲート信号を出力し、
前記振動子は、時間とともに周波数を変化させた超音波信号を送信することを特徴とする水中探知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図8】
【公開番号】特開2009−180670(P2009−180670A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21385(P2008−21385)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】
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