説明

水中放電加工装置

【課題】水中、狭あい部での遠隔による放電加工作業において、被加工物への柔軟なアクセス動作を実施可能となる水中放電加工装置を提供することにある。
【解決手段】放電加工ヘッド2は、水中に配置される。水中作業装置1は、放電加工ヘッド2を作業アーム3により移動するとともに水中に配置される。運転制御盤6は、水中作業装置1を遠隔で操作するとともに地上に配置される。放電加工用電源4は、放電加工ヘッド2に電源を供給するとともに地上に配置される。放電加工用電源4は、直流電力を発生する直流電源回路7を備える。放電回路ボックス5は、直流電源回路7からケーブル9により供給された直流電力から高周波パルス電力を発生するとともに、水中作業装置1に搭載されている。放電回路ボックス5により発生された高周波パルス電力は、ケーブル10により放電加工ヘッド2に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中放電加工装置に係り、特に、原子炉機器等において水中のある部位を放電加工するに好適な水中放電加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉内で万一ひび等が見つかった場合の原因調査として、実施するひび部位のサンプル採取や、原子炉構造物の補修の一環として部分的に切断加工を実施するときには、切断面の加工品質が良く、切断時の反力の小さい放電加工装置が用いられる。
【0003】
放電加工は、導電性材料を電極として切断対象物との間でパルス電圧を印加することで間欠的に絶縁破壊による放電を発生させて、通電面に生じた放電アーク柱の熱と爆発力により切断対象物を溶融し、スラッジとして飛散することで切断が進むものである。電極と切断対象物との間に電源から加える高周波パルス電力は、電圧が数10Vないし数100V、電流が数Aないし数100A、放電の繰り返しは毎秒数1000回ないし数10万回程度が使用され、極間においては放電と消弧を繰返して、1回のパルス電流によって1個の放電痕を残し、その累積により加工が進行する。また、放電間隙の大きさは数μmないし数10μmであり、両極間の極間距離は加工の進行によって増加するため、常に放電が継続して発生できる間隙を確保するために自動制御により追尾する機能を有する。
【0004】
そのため、従来放電加工電源は、高周波パルス電力を供給するための放電回路と、放電間隙を制御するための電極送り制御回路を内蔵し、オペレーションフロアに配置されて、水中作業装置先端に備えた放電加工ヘッドまでケーブルにて高周波パルス電力を供給する構成としている。このとき放電加工電源と水中作業装置とのケーブル長は数10mの長さを要するため、高周波のパルス波形の崩れや立ち上がりのなまりを防止するためにはケーブル径を大きくする必要があり、水中作業装置の動作に制約を与えていた。特に原子炉底部ほど必要ケーブル長さは増大し、可とう性は著しく悪くなり、狭あい部にアクセスする際に水中作業装置付随する作業アームの動作に大きな支障を与える。
【0005】
市販の放電加工装置に使用するケーブルでは、40mを超える長さで使用すると伝送時の損失による電圧降下や高周波パルス電力の波形の崩れ及び減衰が生じるため、そのままでは使用できないことから、ケーブル径を大きくして導体の断面積を大きくするとともに、従来以下のようにすることが知られている(例えば、特許文献1参照)
(1)放電加工電極ごとに接続する単線の給電ケーブルにおいて、ケーブルが極めて長いことに起因する該ケーブルの抵抗とインダクタンスが増えることによるインピーダンスの増加を軽減するために、電極ごとの複数の給電ケーブルを300mm以下のピッチでツイストしたツイスト方式の給電ケーブルを採用することにより、インピーダンスの増加を抑える。
【0006】
(2)給電ケーブルが極めて長い(40m)ことから、放電時に供給するパルス電流の矩形波の立ち上げりがなまってピーク電流に到達するまでの時間が長くなり、放電の断続周期が長くなることを防止するため、電極側近に最適な容量のコンデンサを設置し、パルス電流の立ち上がりの遅れを該コンデンサから瞬時に流れる電流にて補うことにより切断までの時間を短縮する。
【0007】
【特許文献1】特開平9−38831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの対応において、(1)は電極数が2個以上使用するケースに適用するものであり、1個の場合は適用できない。さらにケーブルも2本必要となるため、水中作業装置の作業アーム動作に与える負荷は大きくなる。
【0009】
また、(2)は電極近辺に設けたコンデンサによりパルス電流の立ち上がりを補うものであるが、ケーブルのインピーダンスによる電圧降下等の電力伝送損失を補償することはできないためケーブル径は太く、現状シュラウド下部に対応させる際には芯径32mm、ケーブル仕上外径約14mmのケーブルが必要となっている。そのためケーブルの可とう性は悪く、かつ単位長さ当りのケーブル重量が大きいため、水中作業装置の作業アームに掛かる負荷の増加、ひいては装置の大型化となり、原子炉底部に対応する装置を考案するに当っては、ケーブルの細径化は必須の課題となっている。
【0010】
本発明の目的は、水中、狭あい部での遠隔による放電加工作業において、被加工物への柔軟なアクセス動作を実施可能となる水中放電加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、水中に配置される放電加工ヘッドと、放電加工ヘッドを作業アームにより移動するとともに水中に配置される水中作業装置と、水中作業装置を遠隔で操作するとともに地上に配置される運転制御盤と、放電加工ヘッドに電源を供給するとともに地上に配置される放電加工用電源とを有する水中放電加工装置であって、前記放電加工用電源に備えられ、直流電力を発生する直流電源回路と、前記直流電源回路から第1のケーブルにより供給された直流電力から高周波パルス電力を発生するとともに前記水中作業装置に搭載された放電回路ボックスと備え、前記放電回路ボックスにより発生された高周波パルス電力を第2のケーブルにより前記放電加工ヘッドに供給するようにしたものである。
かかる構成により、水中、狭あい部での遠隔による放電加工作業において、被加工物への柔軟なアクセス動作が実施可能となる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記放電回路ボックスは、放熱部を備え、該放熱部から水中に放熱するようにしたものである。
【0013】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記放電回路ボックスは、直流電力から高周波パルス電力を発生するためのスイッチング素子を備え、該スイッチング素子として、炭化けい素製のスイッチング素子を用いるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水中、狭あい部での遠隔による放電加工作業において、被加工物への柔軟なアクセス動作を実施可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図6を用いて、本発明の一実施形態による水中放電加工装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による水中放電加工装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水中放電加工装置の全体構成図である。
【0016】
図1は、図示しない原子炉圧力容器上蓋、蒸気乾燥器、気水分離器等の上部機構を搬出された状態で、かつ、燃料棒,制御棒,CRD,ICM等を取り外した状態を示している。
【0017】
原子炉圧力容器13の内部には、円筒状の炉心シュラウド14と、炉心シュラウド14の内側下方の中間高さ位置に炉心支持板16が設置されている。また、炉心シュラウド14の内側上部には、図示しない上部格子板が設けられている。また、原子炉圧力容器13の底部には、半割りの球面形状をした下鏡19と、下鏡19から立ち上がり炉心シュラウド14を支持するシュラウドサポート15及びシュラウドサポートプレート18と、同じく下鏡19を貫通して林立するCRDハウジング17が設置されている。
【0018】
これらの構造物は、主に溶接構造となっており、原子炉発電開始初期のプラントは、溶接部位において応力腐食割れの発生する可能性があることから、ここでは、原子炉圧力容器13とシュラウドサポートプレート18との溶接部の放電加工を想定した一例について以下説明する。
【0019】
本実施形態の水中放電加工装置は、先端に放電加工ヘッド2を備えた多自由度を有する作業アーム3を収納した水中作業装置1と、水中作業装置1を遠隔で運転操作を実施するオペレーションフロアに配置した放電加工電源4と、運転制御盤6より構成される。
【0020】
水中作業装置1は、炉心支持板16の燃料支持金具取り付け穴の開口を利用して、炉底部に進入し、CRDハウジング17に着座させる。その後、運転制御盤6を起動し、被加工部(原子炉圧力容器13とシュラウドサポートプレート18との溶接部)を有する方向に旋回して、収納している作業アーム3を屈曲動作させて先端に有する放電加工ヘッド2を目標とするシュラウドサポートプレート18の被加工部に接近させる。
【0021】
放電加工電源4は、直流電源回路7と、放電制御回路24と、電極送り制御回路8とを備えている。放電加工電源4と放電回路ボックス5とは、放電加工電源を供給するケーブル9により接続されている。放電加工電源4と作業アーム3の先端に有する放電加工ヘッド2とは、ケーブル22により接続されている。運転制御盤6と水中作業装置1とは、水中作業装置1の制御ケーブル12により接続されている。放電回路ボックス5と放電加工ヘッド2とは、ケーブル10により接続されている。
【0022】
次に、図2及び図3を用いて、本実施形態による水中放電加工装置による放電加工原理について説明する。
図2及び図3は、本発明の一実施形態による水中放電加工装置による放電加工原理の説明図である。
【0023】
図2(A)に示すように、放電加工電源1の内部の直流電源回路7から供給された直流電力を、放電回路ボックス5で高周波パルス電力に変換し、放電加工ヘッド2の放電加工電極と被加工物との間に印加して、絶縁体である炉水中で絶縁破壊を起こす。これにより、図2(B)に示すように、放電アーク柱が発生する
このとき、図2(C)に示すように、被加工物の表面と、放電加工電極の表面が放電アーク柱の熱により溶融するとともに、放電アークの衝撃力により溶融金属は飛散する。
【0024】
その後、図2(D)に示すように、放電アーク柱の消弧とともに絶縁が回復する。
【0025】
再度、図2(A)の絶縁破壊から同様の放電を繰返し、加工を進行させる。このとき、被加工物の表面と、放電加工電極間の間隔は広がるため、放電可能な間隔となるように、常に電極送り制御回路8により制御する。
【0026】
図3は、図2に示した放電加工の進行時の、高周波パルス電力の波形を示している。図3において、図3(A)は高周波パルス電力の電圧を示し、図3(B)は高周波パルス電力の電流を示している。横軸は、時間である。
【0027】
最初に、パルス電圧の立ち上がりにより、放電加工電極と被加工物間に電圧が印加され、絶縁破壊を引き起こすことで、導通してパルス電流が流れるため電圧が低下する。このパルス電流の通電期間に放電アーク柱が生じ、被加工物を溶融する。その後、パルス電流がoffすることで、放電アーク柱が消弧し、絶縁が回復する。このとき、パルス電流の通電時間Tonと消弧時間Toffは数100μs、電流のピーク値は約100〜200A程度と非常に短い周期で放電と消弧を繰返して加工が進行される。
【0028】
次に、図4を用いて、本実施形態による水中放電加工装置のシステム構成について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による水中放電加工装置のシステム構成図である。
【0029】
放電加工電源4は、直流電源回路7と、放電制御回路23と、電極送り制御回路8を内蔵する。直流電源回路7は、商用交流電源を直流に変換するもので、主として変圧器とダイオード若しくはサイリスタ等を組み合わせて整流し、整流した後の波形の脈流を平滑し、かつ交流電源の変動を補償し出力電圧を安定化する。直流電源回路7で変換した直流電力は、ケーブル9を介して水中作業装置1に設置した放電回路ボックス5に供給し、高周波パルス電力に変換する。高周波パルス電力は、ケーブル10により、放電加工電極20に供給される。
【0030】
ここで、従来は、オペレーションフロアに配置した放電加工電源4が高周波パルス電力を発生し、直接、放電加工電極20に供給していた。ケーブル9とケーブル10を合わせた長さは、約40m程度である。これだけの長い距離を、高周波パルス電力を供給する場合は、抵抗成分とインダクタンス成分が伝送損失となり、特にインダクタンス成分は周波数の大きさに応じて増加するため、損失を抑制するためにケーブル仕上がり外径約14mm程度の太いケーブルを使用していた。そのため、ケーブル重量が重く(約0.5kg/m)、かつケーブル曲げ半径も大きいため(約100mm程度)、可とう性も非常に悪い状況にあった。さらに、このケーブルを接続する放電加工ヘッド2を動作する作業アーム3に加わる負荷が大きくなり、作業アーム3を駆動するACサーボモータ24も大きくなるため必然的に装置全体が高剛性化、大型化し、狭あい部対応に適さない装置となっていた。
【0031】
それに対して、本実施形態では、直流電源回路7から放電回路ボックス5までは、ケーブル9により直流電力を供給し、その後、放電回路ボックス5から放電加工電極20までは、ケーブル10により、高周波パルス電力を供給する。このため、ケーブル9の区間は、直流電力で伝送することにより、インダクタンス成分の損失がなくなり、パルス波形の崩れ等を考慮する必要がなくなるため、ケーブル径を細くすることができる(ケーブル仕上がり径約8mm程度)。そのため、ケーブル重量も約1/3程度(約0.2kg/m)に軽量化できて、かつケーブル曲げ半径も約2/3(約60mm程度)と改善が期待できる。また、放電回路ボックス5と放電加ヘッド2間のケーブル10においても、ケーブル長を大幅に短く(例えば、3m)なるため、高周波パルス電力の損失が抑制されることから、同様にケーブル径を細くすることができる(ケーブル仕上がり径約8mm程度)。
【0032】
水中作業装置1の放電加工ヘッド2は、放電加工電極20と、放電加工電極20の送り動作を行うパルスモータ21より構成される。パルスモータ21は、放電加工電源4の電極送り制御回路8によって制御されて、放電加工電極20と被加工物との間を常に放電可能な間隔に制御している。
【0033】
水中作業装置1と作業アーム3は、ACサーボモータ24を各動作軸に連結しており、運転制御盤6のサーボドライバ25及びサーボドライバ25の動作指令を伝達する操作卓26により、ケーブル12を介してACサーボモータ25を運転し、作業アーム3の先端に有する放電加工ヘッド2を被加工物にアクセスする。
【0034】
ここで、水中作業装置1に設置する放電回路ボックス5について説明する。
【0035】
放電回路ボックス5は、放電加工電源4から供給される直流電力をもとに、スイッチング素子により高周波パルス電力に変換するもので、高周波パルスの周期は放電制御回路23により制御する。このスイッチング素子は、従来パワーMOSFET等の半導体素子を使用されており、スイッチング素子を内蔵する放電回路ボックス5は、原子炉内の特殊環境である耐水性と耐放射線性を考慮する必要が有る。耐水性は、放電回路ボックス5を水封構造とし、エアーパージすることにより達成される。但し、直流電力を高周波パルス電力に変換する際に、損失分を熱として放散するため、従来放電加工電源4内では常時空冷を実施している。本実施形態では、水中作業装置1の周囲は純水中であることから、放電回路ボックス5をフィン構造の放熱板5Aを設けることにより、冷却している。
【0036】
また、耐放射線性に関して、水中作業装置1は原子炉構造物の中でも放射化量の高い上部格子板及びシュラウド近傍を通過するため、従来のシリコン(Si)半導体を使用しているスイッチング素子では放射線に弱く、採用できない。そこで、放射線に強い半導体素子として炭化けい素(SiC)を用いている。炭化けい素(SiC)の半導体素子は、従来のシリコン(Si)半導体に対して約2桁放射線に強く、かつ耐熱性も優れており(例えば、「独立行政法人 産業技術総合研究所ホームページ 半導体・高分子材料耐放射線性評価研究グループ 研究成果」参照)、当該スイッチング素子に適用でき、水中作業装置1内に設置することが可能となる。
【0037】
次に、図5を用いて、本実施形態による水中放電加工装置の中の水中作業装置1の構成について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による水中放電加工装置の中の水中作業装置の構成を示す断面図である。図5(A)は、水中作業装置1のCRDハウジング17への設置状態を示し、図5(B)は、水中作業装置1の作業アーム3展開状態を示している。
【0038】
水中作業装置1の動作軸は、CRDハウジング17に支持した円筒部分の旋回と、水中作業装置1に収納された作業アーム3の昇降と、多自由度を有する作業アーム3の各軸の屈曲と、放電加工ヘッド2の回転より構成する。旋回軸はACサーボモータ24aの駆動力をギヤ27を介して伝達し、下方の円筒部分を旋回動作させる。昇降軸は、ACサーボモータ24bの回転力をボールスクリュー28にて上下方向の駆動力に変換し、LMガイド29に沿って作業アーム3を指示するテーブル30を昇降動作させる。作業アーム3の屈曲軸は、アーム内の各軸に内蔵したACサーボモータで駆動し、回転軸は作業アーム内先端に内蔵したACサーボモータ24cで駆動する。
【0039】
この構成における対象部位へのアクセス動作は、次のとおりである。まず、水中作業装置1を炉心上部より吊り降ろし、CRDハウジング17に設置する。このとき、上端は図1に示すとおり炉心支持板16の開口孔で拘束される。次に、対象部位の方向に旋回し、円筒形状の開口面から多自由度の作業アーム3を展開して放電加工ヘッド2を接近させる。なお、旋回軸の可動範囲は、予め対象部位の位置は明確であるため、水中作業装置1をCRDハウジング17に設定する際、その方向になるように設定するため、±90°程度の動作範囲で十分と対応できる。また、高さ方向の調整は、作業アーム3での設定を基本とし、微調整に昇降軸を使用する。
【0040】
水中作業装置1には、放電回路ボックス5が内蔵されている。放電回路ボックス5は、テーブル30に固定し、作業アーム3の昇降微調整動作に追従できるようにする。放電加工ボックス5と放電加工電源4間のケーブル9は、水中作業装置1の上端の中央から進入し、ギヤ27の軸中心孔を通過して放電加工ボックス5に接続する。なお、このときケーブル9は、水中作業装置1内に旋回と昇降分の余長を持たせることとするが、先に述べたとおり、旋回と昇降は微調整の動作であるため、大幅な余長とはならない。放電回路ボックス5と放電加工ヘッド2の間のケーブル10は、作業アーム3に沿って布設する。このとき、ケーブル10は各屈曲軸の側面を沿わせることにより、屈曲時に生じる引張りが加わらないようにすることが可能となる。
【0041】
なお、接地ケーブル11は、一例として、水中作業装置1の円筒形状の内部を下方に布設し、CRDハウジング17への挿入部に接続することで原子炉圧力容器13に接地することができる。
【0042】
次に、図6を用いて、本実施形態による水中放電加工装置によるサンプル片の採取動作について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による水中放電加工装置によるサンプル片の採取動作の説明図である。図6(A),(B)はサンプル採取中の状態を示し、図6(A)は上面図であり、図6(B)は側面図である。図6(C),(D)はサンプル採取後にカバー30内に放電加工電極20を収納した状態を示し、図6(C)は上面図であり、図6(D)は側面図である。
【0043】
図6(A),(B)に示すように、放電加工電極20は、お椀形状を有している。お椀形状の放電加工電極20の端部はU字形状となっている。このU字形状の端部を被加工物に近接させて、放電加工する。放電加工電極20は、放電間隙を制御するパルスモータ21による回転送り動作によって加工を進行させる。放電により溶融金属が飛散し、被加工物との間に隙間が生じると、放電加工電極20を回転させながら、この端部を徐々に送ることで、放電加工を進行させることができる。そして、母材面に生じたひびの部分から半割り形状のサンプル片32を採取する。
【0044】
図6(C),(D)に示すように、サンプル片32を採取後に、そのまま放電加工電極20の回転を継続し、カバー30内にサンプル片32を放電加工電極20と合わせて収納する。
【0045】
なお、カバー30は、放電加工電極20の保護と、放電加工電極20の回転軸に結合した仕切り板31との組み合わせにより、カバー開口面を閉止して採取したサンプル片32が作業アーム3の動作により原子炉内に落下しないようにするものである。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、放電加工ヘッドをアーム先端に有する水中作業装置内若しくはその近傍に、高周波パルス電力を発生する放電回路を内蔵したボックスを配置することで、放電加工電極に接続するケーブルの細径化を図ることができる。これにより、引き回すケーブルの重量低減と可とう性が向上し、水中作業装置の作業アームに加わる負荷が低減されることから、当該装置の小型化に寄与し、狭あい部に対処可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態による水中放電加工装置の全体構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による水中放電加工装置による放電加工原理の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態による水中放電加工装置による放電加工原理の説明図である。
【図4】本発明の一実施形態による水中放電加工装置のシステム構成図である。
【図5】本発明の一実施形態による水中放電加工装置の中の水中作業装置の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による水中放電加工装置によるサンプル片の採取動作の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1…水中作業装置
2…放電加工ヘッド
3…作業アーム
4…放電加工電源
5…放電回路ボックス
6…運転制御盤
7…直流電源回路8…電極送り制御回路
9,10…放電加工ケーブル
11…接地ケーブル
12…制御ケーブル
13…原子炉圧力容器
14…炉心シュラウド
15…シュラウドサポート
16…炉心支持板
17…CRDハウジング
18…シュラウドサポートプレート
19…下鏡
20…放電加工電極
21…パルスモータ
22…電極送りケーブル
23…放電制御回路
24…ACサーボモータ
25…サーボドライバ
26…操作卓
27…ギヤ
28…ボールスクリュー
29…LMガイド
30…カバー
31…仕切り板
32…サンプル片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に配置される放電加工ヘッドと、放電加工ヘッドを作業アームにより移動するとともに水中に配置される水中作業装置と、水中作業装置を遠隔で操作するとともに地上に配置される運転制御盤と、放電加工ヘッドに電源を供給するとともに地上に配置される放電加工用電源とを有する水中放電加工装置であって、
前記放電加工用電源に備えられ、直流電力を発生する直流電源回路と、
前記直流電源回路から第1のケーブルにより供給された直流電力から高周波パルス電力を発生するとともに前記水中作業装置に搭載された放電回路ボックスと備え、
前記放電回路ボックスにより発生された高周波パルス電力を第2のケーブルにより前記放電加工ヘッドに供給することを特徴とする水中放電加工装置。
【請求項2】
請求項1記載の水中放電加工装置において、
前記放電回路ボックスは、放熱部を備え、
該放熱部から水中に放熱することを特徴とする水中放電加工装置。
【請求項3】
請求項1記載の水中放電加工装置において、
前記放電回路ボックスは、直流電力から高周波パルス電力を発生するためのスイッチング素子を備え、
該スイッチング素子として、炭化けい素製のスイッチング素子を用いることを特徴とする水中放電加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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