説明

水中溶存酸素の脱気装置

【課題】本発明は、2台の脱気槽を1台のポンプによって連続した脱気処理を行うことができる水中溶存酸素の脱気装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明は、貯水槽4の下方位置に設置され、貯水槽4から給水された被処理水の溶存酸素を除去し、貯水槽4に還流する脱気装置1であって、その上部に給水管5A、5Bが連通状に接続され、かつその下部に排水管6A、6Bが連通杖に接続された2台の気密状の脱気タンク3A、3Bと、排水管6A,6Bに設けられた電動弁10A、10Bと、排水管6A、6Bに電動弁10A,10Bによって切り替え可能な状態で接続された吸引ポンプ7と、吸引ポンプ7に接続された貯水槽還流用としての循環用水管11と、脱気タンク3A、3B内の上部に、その排気口が開口され、かつ外部に排気されるように配管された排気管15とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中溶存酸素の脱気装置に関する。詳しくは、貯水槽に貯水されている水道水から溶存酸素を脱気させる水中溶存酸素の脱気装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
一般のビル、あるいはマンションやアパートなどの集合住宅では貯水槽が設けられ、この貯水槽から各部屋に配水されている。この場合に貯水槽に貯められる水道水中の溶存酸素が水道配管内面に発生する錆の要因となっている。
【0003】
例えば、溶存酸素を1/2に低下させると、同じ錆の量が成長するのに要する時間は、略2倍となる。換言すれば溶存酸素と錆の成長は略比例する。従って、この溶存酸素を除去すれば、錆の発生や成長を大きく抑制することができる。
【0004】
ここで、水中から溶存酸素を脱気させる装置が提案されており、例えば特許文献1に記載されている。具体的には、図5に示すように、気密状態の脱気槽101、水槽102からの処理対象水を脱気槽101内に噴霧状態で給水する給水ノズル103、脱気槽101内から処理対象水を排水して水槽102に循環させるための循環管路104及び脱気槽101の上端部に形成された集気凹部105に一端を臨ませた排気管路106を備え、給水速度より早い速度で排水するか又は十分に給水した後に給水を停止した状態で排水することで脱気槽101内に減圧状態を与えて脱気すると共に、排水を停止した状態で給水するか又は排水速度より速い速度で給水することで脱気槽101内の気体を外部に排出するような構成とされている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−195063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1における脱気装置では、脱気槽101内に先ず給水ノズル103からこの給水ノズル103に水位が近接するまで給水した状態で給水を停止し、それからポンプ107を作動させて排水を行い減圧状態とするものであり、連続した脱気が行うことができない問題がある。
【0007】
また、水槽内に脱気槽を設置する場合には水圧を利用しての脱気槽内への注入が可能となるが、既存の水槽内に設置する場合には非常に煩雑な施工となり、かつ衛生面において問題がある。
【0008】
本発明は以上に点に鑑みて創案されたものであって、2台の脱気槽を1台のポンプによって連続した脱気処理を行うことができる水中溶存酸素の脱気装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明に係る水中溶存酸素の脱気装置は、貯水槽の下方位置に設置され、貯水槽から給水された被処理水の溶存酸素を除去し、貯水槽に還流する脱気装置であって、その上部に給水管が連通状に接続され、かつその下部に排水管が連通杖に接続された2台の気密状の脱気タンクと、それぞれの排水管に設けられた電動弁と、それぞれの排水管に前記電動弁によって切り替え可能な状態で接続された吸引ポンプと、吸引ポンプに接続された貯水槽還流用としての循環用水管と、それぞれの脱気タンク内の上部に、その排気口が開口され、かつ外部に排気されるように配管された排気管とを備える。
【0010】
ここで、貯水槽から被処理水を気密状の脱気タンク内に給水した状態から吸引ポンプによって強制排水を行うことにより、脱気タンク内が減圧状態となり被処理水から溶存酸素が脱気され、その脱気された酸素を排気管によって外部に排気する一連の動作によって溶存酸素の脱気処理が可能となる。更に、2台の脱気タンクによる排水処理を1台の吸引ポンプによって交互、かつ連続して排水処理が行われることにより、効率的な脱気処理を行うことが可能となる。
【0011】
また、それぞれの給水管に、被処理水を噴霧状態で給水する給水ノズルを設けることにより、脱気処理がより一層効率的となる。
【0012】
また、それぞれの給水管に、電磁弁を設けることにより脱気タンクへの給水が交互に行え、これにより脱気処理の連続運転が可能となる。
【0013】
また、脱気タンク内の上端に集気凹部が形成されることによって、分離された脱気ガスを効率的に集気することが可能となる。
【0014】
また、循環用水管の中途に、水質改善用としての鉱石タンクが連通されることにより、脱気処理された処理水を麦飯石などのミネラル成分を溶出する鉱石に通すことによって水質の改善が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水中溶存酸素の脱気装置では、貯水槽内の被処理水を2台の脱気タンクによる脱気処理を1台の吸引ポンプによって連続的に行いながら還流させることにより効率的な溶存酸素の脱気処理を行うことが可能となると共に、消費電力の節約も図ることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1に、本発明を適用した水中溶存酸素の脱気装置に一例を示す平面説明図、図2に、本発明を適用した水中溶存酸素の脱気装置の正面説明図、図3に、本発明を適用した水中溶存酸素の脱気装置によるフロー図を示す。
【0017】
ここで示す脱気装置1は、基台2上に2個の脱気タンク3A、3Bが並設され、この脱気タンク3A、3Bの上端には給水管5A、5Bがそれぞれ連通状に接続されている。また、脱気タンク3A、3Bの下端には排水管6A、6Bがそれぞれ連通されると共に、吸引ポンプ7介して鉱石タンク8に接続され、更に鉱石タンク8より貯水槽4に連通された構成とされている。
【0018】
給水管5A、5Bは、貯水槽4に連通状とされる1本の給水管5が分岐され、更にその先端が脱気タンク3A、3B内の上部にて給水管5A、5Bの開放端に取付けられる噴射ノズル9によって水の噴射が行われる構成とされている。
【0019】
また、排水管6A、6Bには電動弁10A、10Bが配置され、この電動弁10A、10Bによって脱気タンク3A、3Bの強制排水の切り替えが自在に行える構成とされている。そして吸引ポンプ7によって強制排水された水が鉱石タンク8内を通過して循環用水管11によって貯水槽4に送り込まれる。
【0020】
なお、図中12は制御部であり、給水管5A、5Bからの給水、電動弁10A、10B等の切り替えや吸引ポンプ6の起動の設定を行う構成とされている。
また、吸引ポンプ7は、多段式渦巻式のポンプを使用するものであり、この多段式渦巻式ポンプは、小型で吸水能力が高く、かつ故障し難いために長期間の連続運転を安定的に行うことが可能となる。
【0021】
ここで、脱気装置1はビルの屋上などに設置される貯水槽4の下方位置に設置され、貯水槽4と脱気タンク3A、3Bとの高低差を利用して脱気タンク3A、3B内への被処理水の噴射が可能となる。また、給水管5A、5Bには電磁弁13A、13Bが設けられて同時給水、あるいは切り替え給水が可能な構成とされている。
【0022】
また、脱気タンク3A、3B内の上部には円錐形状の集気凹部14が形成され、この集気凹部14内に脱気タンク3A、3Bの底部より貫通して立ち上げられた排気管15の先端が開放されている。この排気管15には、真空計16および逆止弁17が設けられており、その他端は大気中に開放された構成とされている。
【0023】
また、脱気タンク3A、3Bには、その内部の水位を感知するための上限水位感知センサ18および下限水位感知センサ19が設けられ、この上限水位感知センサ18によって被処理水の満水時の状態を感知すると共に下限水位感知センサ19によって処理終了時を感知する構成とされている。
【0024】
以上の構成よりなる本発明では、電源投入時には、給水管5A、5Bには電磁弁13A、13Bが同時に開いて脱気タンク3A、3Bより高い位置に設置された貯水槽4より被処理水を脱気タンク3A、3B内に満水状態となるまで給水する。
【0025】
ここで、脱気タンク3Aに連通される排水管6Aの電動弁10Aは開の状態とされ、脱気タンク3Bに連通される排水管6Bの電動弁10Bは閉の状態とされ、脱気タンク3A、3B内が満水となったことを上限水位感知センサ18によって感知された時点から、吸引ポンプ6を起動させて被処理水の排水が行われる。
【0026】
この場合に、脱気タンク3A内に減圧状態が形成され、被処理水中の溶存酸素はヘンリーの法則によりガス体となって脱気タンク3Aの上部に分離される。そして吸引ポンプ6の起動によって排水管6Aを通して脱気された処理水は、麦飯石、珊瑚石などのミネラル成分を溶出する鉱石が収納された鉱石タンク8内を通過して循環用水管11より貯水槽4に還流される。
【0027】
次に、脱気タンク3A内の排水の終了を下限水位感知センサ19が感知した時点で、電動弁10Aは閉と同時に、排水管6Bの電動弁10Bが開とし、吸引ポンプ6を起動させて被処理水の排水が行われる。これに伴い脱気タンク3A内への給水が開始されて水位が上昇することにより脱気タンク3A内上部に分離されたガス体は排気管15を通して強制的に外部に排出される。
【0028】
ここで、真空計16は、脱気タンク3A、3B内の減圧度を視認可能とするものであり、吸引ポンプ6を真空計16と連動させて稼働させることにより、脱気タンク3A、3B内の減圧度を一定に保つことが可能となる。
【0029】
一方、脱気タンク3B内の被処理水が強制排水されることにより脱気タンク3B内に減圧状態が形成され、被処理水中の溶存酸素はヘンリーの法則によりガス体をなって脱気タンク3Bの上部に分離される。そして吸引ポンプ6の起動によって排水管6Bを通して脱気された処理水は、麦飯石、珊瑚石などのミネラル成分を溶出する鉱石が収納された鉱石タンク8内を通過して循環用水管11より貯水槽4に循環される。
【0030】
なお、本実施例では鉱石タンクを備えた脱気装置について詳述したが、必ずしも鉱石タンクを備える必要性は無く、脱気処理された処理水を貯水槽に循環させる構成であっても構わない。
また、網容器などに収納し、一定期間ごとに網容器自体を取り替えるカートリッジ式とすることが望ましい。
【0031】
次に図4に示すのは、本発明を適用した2台の脱気タンクと比較例として1台の脱気タンクによる処理水の溶存酸素濃度測定結果を示すグラフ図である。
【0032】
ここで、処理前の貯水槽内の水道原水における溶存酸素濃度は9.8mg/lであり、処理開示から5分後における溶存酸素濃度は、1台の脱気タンク(以下「比較例」と称する。)による場合には、7mg/lであり、本発明の2台の脱気タンク(以下「実施例」と称する。)による場合には、5.5mg/lであった。
更に、10分後における溶存酸素濃度は、比較例による場合には、4.5mg/lであり、実施例による場合には、3.6mg/lであり、処理開始から180分の間連続運転した結果、比較例による場合には、1mg/lであり、実施例による場合には、0.5mg/lであった。
【0033】
以上の結果から、2台の脱気タンクによる実施例における脱気処理では短時間で溶存酸素の脱気を行うことを確認することができた。また、実施例と比較例における消費電力を比較した場合には、殆んど消費電力の差がないことが確認できた。したがって、1台の吸引ポンプによって2台の脱気タンクによる脱気処理を行うことで非常に効率的な溶存酸素の脱気処理を行うことが可能となる。
【0034】
本発明による脱気装置は、脱気タンクに貯水槽から被処理水の給水から吸引ポンプによって強制的に排水を行うことにより、脱気タンク内を減圧状態にして被処理水からの脱気を行うと共に分離された気体を外部に排出し、脱気された処理水を再び貯水槽に還流させる。
【0035】
また、貯水槽からの給水を脱気タンクを貯水槽の下方位置に設置することによる落差を利用しての給水を行い、かつ一台の吸引ポンプによって2台の脱気タンクによる被処理水の脱気処理を交互に連続して行うことにより、消費電力を抑制し経済的、かつ短時間での脱気処理が可能となり処理能力が大幅に向上することが可能となる。
【0036】
したがって、1台の吸引ポンプの起動により2台の脱気タンクによる脱気処理を行うことにより非常に効率の良い水道原水の脱気処理を行うことが可能となる。この結果、貯水槽から各部屋等に配管される給水管内の錆の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を適用した水中溶存酸素の脱気装置に一例を示す平面説明図である。
【図2】本発明を適用した水中溶存酸素の脱気装置の正面説明図である。
【図3】本発明を適用した水中溶存酸素の脱気装置による脱気フロー図を示す。
【図4】本発明を適用した2台の脱気タンクと、比較例として1台の脱気タンクによる処理水の溶存酸素濃度測定結果を示したグラフ図である。
【図5】従来の水中溶存酸素の脱気装置の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 脱気装置
2 基台
3A、3B 脱気タンク
4 貯水槽
5A、5B 給水管
6A、6B 排水管
7 吸引ポンプ
8 鉱石タンク
9 噴射ノズル
10A、10B 電動弁
11 循環用水管
12 制御部
13A、13B 電磁弁
14 集気凹部
15 排気管
16 真空計
17 逆止弁
18 上限水位感知センサ
19 下限水位感知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水槽の下方位置に設置され、該貯水槽から給水された被処理水の溶存酸素を除去し、前記貯水槽に還流する脱気装置であって、
その上部に給水管が連通状に接続され、かつその下部に排水管が連通杖に接続された2台の気密状の脱気タンクと、
前記それぞれの排水管に設けられた電動弁と、
前記それぞれの排水管に前記電動弁によって切り替え可能な状態で接続された吸引ポンプと、
前記吸引ポンプに接続された貯水槽還流用としての循環用水管と、
前記それぞれの脱気タンク内の上部に、その排気口が開口され、かつ外部に排気されるように配管された排気管とを備える
水中溶存酸素の脱気装置。
【請求項2】
前記それぞれの給水管に、被処理水を噴霧状態で給水する給水ノズルを設けた
請求項1に記載の水中溶存酸素の脱気装置。
【請求項3】
前記それぞれの給水管に、電磁弁を設けた
請求項1または請求項2に記載の水中溶存酸素の脱気装置。
【請求項4】
前記脱気タンク内の上端に集気凹部が形成された
請求項1、請求項2または請求項3に記載の水中溶存酸素の脱気装置。
【請求項5】
前記循環用水管の中途に、水質改善用としての鉱石タンクが連通された
請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の水中溶存酸素の脱気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−149074(P2010−149074A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331934(P2008−331934)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(503253987)三和浄水 株式会社 (1)
【Fターム(参考)】