説明

水位測定装置

【課題】被測定貯水部における貯水の短時間の水位変化を無視し、表示部の表示を安定させる。
【解決手段】被測定貯水部Tの水位Sを検知しうる水位検知手段2と、水位検知手段2の検知信号Eが入力される制御手段3と、制御手段3から信号Fに基づいて水位Sに対応した情報を表示する表示部4とを含む水位測定装置1である。制御手段3は、予め定められたサンプリング周期で水位検知手段2の検知信号Eを調べるとともに、検知信号Eが、予め定められた設定水位S1の範囲内の水位を示しているときに、サンプリング周期よりも長い時間、表示部4に設定水位S1の範囲内であることを表示させる信号Fを出力するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定貯水部における貯水の短時間の水位変化があっても、表示部の表示を安定させ得る水位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの排水性能を評価する方法として、例えば、図4(a)に示されるように、タイヤtを車両Mに装着し、テストドライバーにより貯水部bを実車走行(100Rの旋回走行)させて排水試験を行う方法が知られている。この試験方法では、図4(b)に示されるように、貯水部bの水位cを定められた周期で検知する水位検知手段dと、前記水位検知手段dに検知された検知信号が入力される制御装置eと、制御装置eからの信号に基づいて水位状態を表示する表示部fとからなる測定装置aが用いられている。そして、貯水部bに進入する際、テストドライバーは、表示部fにより試験可能な水位状態であることを確認して、排水試験が開始される。また、表示部fには、試験可能な水位状態のときのみ発光する回転灯等が使用されている。
【0003】
しかしながら、このような試験方法は屋外にて行われるため、時間平均的には水位が変化していないにもかかわらず、風による波の影響等により、貯水部の水位が短時間に変化し、これに追随して表示部の表示がオン・オフ(発光・消灯)を繰り返すチャタリングが生じる結果、排水性能試験の開始が正確に判断し難いという問題があった。関連する技術として次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−156378号公報
【特許文献2】実開昭57−105935号公報
【特許文献3】特開平07−174504号公報
【特許文献4】特開2007−225556号公報
【特許文献5】特開2004−333180号公報
【特許文献6】特開2006−29803号公報
【特許文献7】特開平07−198341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、被測定貯水部の短時間における水位変化を無視し、表示部の表示を安定してさせ得る水位測定装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、被測定貯水部の水位を測定する水位測定装置であって、前記被測定貯水部の水位を検知しうる水位検知手段と、前記水位検知手段の検知信号が入力される制御手段と、前記制御手段から信号に基づいて前記水位に対応した情報を表示する表示部とを含み、前記制御手段は、予め定められたサンプリング周期で水位検知手段の検知信号を調べるとともに、前記検知信号が、予め定められた設定水位の範囲内の水位を示しているときに、前記サンプリング周期よりも長い時間、前記表示部に前記設定水位の範囲内であることを表示させる信号を出力するステップとを含むことを特徴とする水位測定装置である。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記長い時間は、前記サンプリング周期の少なくとも3倍である請求項1記載の水位測定装置である。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記水位検知手段は、前記被測定貯水部の底面に当接して自立する本体と、該本体に固着された測定部とを含み、前記本体は、内部に、被測定貯水部の貯水が流入する水位測定空間を提供し、前記測定部は、上端が本体に固定されかつ下端が前記水位測定空間内にのびて被測定貯水部の底面よりも上方で終端するとともに、水との接触による短絡により水位を検知する電極棒である請求項1記載の水位測定装置である。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記電極棒は、前記下端と前記被測定貯水部の底面との距離が、前記設定水位の下限値に設定されている第1の電極棒を含む請求項3記載の水位測定装置である。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記電極棒は、前記下端と前記被測定貯水部の底面との距離が、前記設定水位の上限値に設定されている第2の電極棒を含む請求項3又は4記載の水位測定装置である。
【0011】
また請求項6記載の発明は、前記本体は、貯水の波打ちが前記水位測定空間に伝播するのを防ぐ周囲壁を有する底部が解放された容器状である請求項3乃至5のいずれかに記載の水位測定装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水位測定装置は、被測定貯水部の水位を検知しうる水位検知手段と、前記水位検知手段の検知信号が入力される制御手段と、前記制御手段から信号に基づいて前記水位に対応した情報を表示する表示部とを含むことを特徴とする。このような水位測定装置では、水位検知手段で検知された水位に対応した情報が、制御手段からの信号によって表示部に表示される。また、制御手段は、予め定められたサンプリング周期で水位検知手段の検知信号を調べるとともに、前記検知信号が、予め定められた設定水位の範囲内の水位を示しているときに、前記サンプリング周期よりも長い時間、前記表示部に前記設定水位の範囲内であることを表示させる信号を出力するステップとを含む。これにより、次のサンプリング周期において、風等によって一時的に水位が設定水位の範囲外になった場合でも、前記設定水位の範囲内であることを示す表示が継続する。従って、チャタリング等を防止できる。従って、例えば、本発明を排水性能試験に用いることにより、テストドライバーは、安定した表示部の表示によって、排水性能試験の開始の可否を正確に判断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の水位検知装置の側面図である。
【図2】本発明の一実施形態の水位測定装置のフロー図である。
【図3】(a)乃至(c)は、検知信号及び信号の入出力例を示す図である。
【図4】(a)は、排水試験を説明する平面図、(b)は、(a)の排水試験に用いられる従来の水位測定装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の水位測定装置の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明の水位測定装置は、被測定貯水部の水位を測定するものである。本実施形態の水位測定装置は、例えば、タイヤの排水性能試験、とりわけ、タイヤを車両に装着し、テストドライバーにより被測定貯水部を実車走行して、その時の横加速度を測定するラテラルアクアプレーニング試験の水位測定用として好適に用いられる。
【0015】
このような被測定貯水部は、例えば、乗用車、トラック又は自動二輪車など種々のカテゴリーの車両が実際に走行する雨天時の路面を考慮して、例えば、試験時の水深が5〜15mmに設定される。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態の測定装置1は、被測定貯水部Tの水位Sを検知しうる水位検知手段2と、前記水位検知手段2の検知信号が入力される制御手段3と、前記制御手段3からの信号に基づいて前記水位Sに対応した情報を表示する表示部4とを含んで構成される。
【0017】
また、前記水位検知手段2は、被測定貯水部Tの底面Taに当接して自立する本体5と、該本体5に固着された測定部6とを含んで構成される。
【0018】
本実施形態の本体5は、水面に対し略垂直にのびる周囲壁5aを有しかつ底部5bが解放された容器状かつ円筒状をなす。このような本体5は、該本体部5の内部5cに被測定貯水部Tの貯水が流入する水位測定空間5c1を提供する。
【0019】
また、本実施形態の周囲壁5aは、貯水の波打ちが水位測定空間5c1に伝播するのを防ぎ、測定部6が、正確な水位Sを検知するのに役立つ。なお、本実施形態の本体5の周囲壁5aの下部には、例えば、被測定貯水部Tの貯水をスムーズに流入及び流出させる1又は複数の開口部Oが設けられる。このような本体5は、例えば、ステンレス合金などの導電性を有する金属製材料が好適に採用され、大地に接地される。また、本体5は、円筒状に限定されるものではなく、角柱状や角すい状など種々の形状を採用し得る。
【0020】
また、前記測定部6は、安価かつ、該測定部6の周辺機器が比較的少なく構成できる例えば、周知の電極棒7が望ましい。電極棒7には、所定の電圧が印加され、該電極棒7が、被測定貯水部Tの導電性を有する水と接触することにより、短絡して電流が流れ水位を検知する構造をなす。このように測定部6として電極棒7が使用されると、例えば、周知の超音波センサーを測定部6として使用される場合に比して、パソコン等の補助機器を削減できるため、水位測定装置1の構成を簡易化できる。
【0021】
本実施形態の電極棒7の上端8は、本体5の上部5dに非導電性の固定具を介して固定されている。また、電極棒7の下端9は、前記水位測定空間内5c1内にのび被測定貯水部Tの底面Taよりも上方で終端している。なお、本実施形態の電極棒7は、水面に対して略垂直にのびている。
【0022】
また、前記電極棒7は、少なくとも2本で構成されるのが望ましく、本実施形態では、長さの大きい第1の電極棒10と、該第1の電極棒10よりも長さの小さい第2の電極棒11とから構成され、各電極棒10、11が、略平行に配されている。
【0023】
そして、本実施形態では、第1の電極棒10の下端10aと被測定貯水部Tの底面Taとの距離Laが、予め設定された例えば、設定水位S1の下限値S1aに設定されている。また、第2の電極棒11の下端11aと被測定貯水部Tの底面Taとの距離Lbが、前記設定水位S1の上限値S1bに設定されている。即ち、本実施形態では、前記設定水位S1とは、上下限を有する水位の範囲を示す。従って、本実施形態の水位検知手段2は、第1の電極棒10が短絡しない設定水位S1の下限値S1a未満の水位と、第1の電極棒10が短絡しかつ第2の電極棒11が短絡しない設定水位S1の範囲内の水位と、第2の電極棒11が短絡する設定水位S1の上限値S1bを超える水位とを検知できる。
【0024】
前記制御手段3は、前記水位検知手段2の前記検知信号Eを予め定められたサンプリング周期で調べ、この検知信号に基づいて表示4に所定の信号Fを出力する。
【0025】
前記表示部4は、テストドライバーの視認性を考慮して、回転灯等の発光体で構成されるものが好ましい。本実施形態では、表示部4として1つの回転灯が使用される。
【0026】
次に、このように構成される水位検知装置1の制御手段3の処理手順のフローが図2に示される。
先ず、水位検知装置1の主電源がオンされることにより、第1及び第2の電極棒10、11が検知信号E1、E2を夫々制御手段3に出力する。制御手段3は、計時を開始し(ステップST1)、予め定めたサンプリング周期が経過したか否かを判断する(ステップST2)。本実施形態では、サンプリング周期は、0.3秒に設定されている。計時開始後、サンプリング周期が経過すると(ステップST2でY)、制御手段3は、第1、第2の電極棒10、11の検知信号E1、E2を内部メモリー等に時記憶する水位チェックを行う(ステップST3)。
【0027】
次に、前記検知信号E1及びE2が、前記下限値S1aを超えかつ上限値S1b未満の水位(即ち、水位Sが設定水位S1の範囲内にあること)を示していると(ステップST4及びステップST5でともにY)、制御手段3は、前記サンプリング周記よりも長い時間、前記表示部4に被測定貯水部Tの水位Sが、前記設定水位S1の範囲内であることを表示させる信号Fを出力する(ステップST6)。また制御手段3は、ステップST6のオン信号を継続している間も、ステップST1戻り、以降のステップを繰り返し処理する。これにより、次のサンプリング周期で水位Sが設定水位S1の範囲内でない場合(例えば、ステップST4でN)、そのときには、前記信号Fが出力され続けている状態であるため、前記設定水位S1の範囲内であることを示す表示が継続される。従って、表示部3の表示が安定し、チャタリング等を防止できる。従って、例えば、本発明をラテラルアクアプレーニング試験用の水位測定装置として用いることにより、試験の開始の可否を運転中のテストドライバーが正確に判断することができる。前記長い時間としては、好ましくはサンプリング周期の3倍以上の時間に設定されるのが望ましく、本実施形態では、1.0秒に設定されている。
【0028】
図3(a)乃至(c)には、上記制御手段3の具体的な処理手順が示される。図3(a)では、サンプリング周期毎に、検知信号E1、E2が、設定水位S1の範囲内であることを示している。これにより、制御手段3がサンプリング周期毎に信号Fを出力して、表示部4には、継続して設定水位S1の範囲内であることが表示されている。なお、この実施形態では、信号Fの出力時間は、サンプリング周期の3倍を超え、かつ4倍未満である。図3(b)には、最初のサンプリング周期では、検知信号E1、E2が設定水位S1の範囲内であることを示し、以降のサンプリング周期では、検知信号E1、E2が設定水位S1の範囲外であることを示している。これにより、制御手段3が、最初のサンプリング周期では信号Fを出力し、以降のサンプリング周期では信号Fを出力しない。これにより、表示手段4が、設定水位S1の範囲内であることを4回目のサンプリング周期を超えて表示した後、設定水位S1の範囲外であることを表示する。図3(c)には、最初と4回目のサンプリング周期で、検知信号E1、E2が、設定水位S1の範囲内であることを示している。また、2、3及び5回目のサンプリング周期では、検知信号E1、E2が、設定水位S1の範囲外であることを示している。これにより、最初と4回目のサンプリング周期で信号Fが出力され、表示手段4には、継続して設定水位S1の範囲内であることが表示される。
【0029】
以上本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施することができる。例えば、上記実施形態では、表示部4である回転灯を1つ使用したが、回転灯を2つ用いて各電極棒10及び11の検知信号E1、E2を夫々出力する制御手段3を用いた態様でも良い。
【符号の説明】
【0030】
1 水位測定装置
2 水位検知手段
3 制御手段
4 表示部
E 検知信号
F 信号
S 水位
S1 設定水位
T 被測定貯水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定貯水部の水位を測定する水位測定装置であって、
前記被測定貯水部の水位を検知しうる水位検知手段と、
前記水位検知手段の検知信号が入力される制御手段と、前記制御手段から信号に基づいて前記水位に対応した情報を表示する表示部とを含み、
前記制御手段は、予め定められたサンプリング周期で水位検知手段の検知信号を調べるとともに、前記検知信号が、予め定められた設定水位の範囲内の水位を示しているときに、前記サンプリング周期よりも長い時間、前記表示部に前記設定水位の範囲内であることを表示させる信号を出力するステップとを含むことを特徴とする水位測定装置。
【請求項2】
前記長い時間は、前記サンプリング周期の少なくとも3倍である請求項1記載の水位測定装置。
【請求項3】
前記水位検知手段は、前記被測定貯水部の底面に当接して自立する本体と、該本体に固着された測定部とを含み、
前記本体は、内部に、被測定貯水部の貯水が流入する水位測定空間を提供し、
前記測定部は、上端が本体に固定されかつ下端が前記水位測定空間内にのびて被測定貯水部の底面よりも上方で終端するとともに、水との接触による短絡により水位を検知する電極棒である請求項1記載の水位測定装置。
【請求項4】
前記電極棒は、前記下端と前記被測定貯水部の底面との距離が、前記設定水位の下限値に設定されている第1の電極棒を含む請求項3記載の水位測定装置。
【請求項5】
前記電極棒は、前記下端と前記被測定貯水部の底面との距離が、前記設定水位の上限値に設定されている第2の電極棒を含む請求項3又は4記載の水位測定装置。
【請求項6】
前記本体は、貯水の波打ちが前記水位測定空間に伝播するのを防ぐ周囲壁を有する底部が解放された容器状である請求項3乃至5のいずれかに記載の水位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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