説明

水供給装置及びそれを備えた給湯機

【課題】腐食抑制成分除去装置のメンテナンスを必要とせず、長期にわたって使用可能な水供給装置を提供すること。
【解決手段】導入水に腐食抑制成分を溶解させる腐食抑制成分添加装置と、前記腐食抑制成分添加装置の下流側に配設され、一対の対向する電極(16a、16b)、陽イオン交換体17と陰イオン交換体18とから形成され、前記電極(16a、16b)間に配されたイオン交換体20を有する腐食抑制成分除去装置15とを備え、前記腐食抑制成分除去装置15に流入した前記腐食抑制成分は、イオン交換反応により前記導入水から除去させた後、排出されることを特徴とする水供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水設備、給湯設備等の水供給装置に係り、特に、腐食抑制成分除去装置のメンテナンスを必要とせず、長期にわたって使用可能な水供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の装置では、目的の成分を含む材料を水中に溶解させ、配管の腐食を抑制するために用いてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、前記特許文献1に記載された従来の水供給装置を示すものである。図7に示すように、水回路10に、腐食抑制成分添加装置14と、腐食抑制成分添加装置14の下流側に配設された腐食抑制成分除去装置15とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−120700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の構成では、腐食抑制成分除去装置として陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の2段処理による除去手法、もしくは逆浸透膜による除去手法を用いている。しかしながら、このうち陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の2段処理による除去手法は、イオン交換容量により除去能力が制限される。腐食抑制成分の添加量が、イオン交換容量を超えた場合、腐食抑制成分は除去されず、水使用箇所から排出される。
【0006】
このため、イオン交換容量に応じて、定期的にイオン交換体を交換するか、塩化ナトリウムを投入して再生処理を実施する必要がある。前者の場合、使用頻度により交換期間が異なるため、使用量を計測、表示する手段が必要となる。後者の場合、再生処理後、高濃度の塩化ナトリウム水が排出されるため、配管を腐食し装置寿命が短くなる。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、腐食抑制成分除去装置のメンテナンスを必要とせず、長期にわたって使用可能な水供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の水供給装置は、導入水に腐食抑制成分を溶解させる腐食抑制成分添加装置と、前記腐食抑制成分添加装置の下流側に配設され、一対の対向する電極、陽イオン交換体と陰イオン交換体とから形成され、前記電極間に配されたイオン交換体を有する腐食抑制成分除去装置とを備え、前記腐食抑制成分除去装置に流入した前記腐食抑制成分は、イオン交換反応により前記導入水から除去させた後、排出されることを特徴とするものである。
【0009】
これによって、電極に電圧を印加することにより、イオン交換体に吸着した腐食抑制成分を腐食抑制成分除去装置から排出することが可能である。従って、イオン交換体の交換、もしくは、塩化ナトリウム投入を省略でき、メンテナンス回数を低減するとともに、装置の長寿命化を実現することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、腐食抑制成分除去装置のメンテナンスを必要とせず、長期にわたって
使用可能な水供給装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1における水供給装置の構成図
【図2】同腐食抑制成分添加装置の構成図
【図3】同腐食抑制成分除去装置の構成図
【図4】本発明の実施の形態2における腐食抑制成分添加装置の構成図
【図5】本発明の実施の形態3における給湯装置の構成図
【図6】本本発明の実施の形態4における焼結多孔質体の構成図
【図7】従来の水供給装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、導入水に腐食抑制成分を溶解させる腐食抑制成分添加装置と、前記腐食抑制成分添加装置の下流側に配設され、一対の対向する電極、陽イオン交換体と陰イオン交換体とから形成され、前記電極間に配されたイオン交換体を有する腐食抑制成分除去装置とを備え、前記腐食抑制成分除去装置に流入した前記腐食抑制成分は、イオン交換反応により前記導入水から除去させた後、排出されることを特徴とする水供給装置である。
【0013】
これによって、電極に電圧を印加することにより、イオン交換体に吸着した腐食抑制成分を腐食抑制成分除去装置から排出することが可能である。従って、イオン交換体の交換、もしくは、塩化ナトリウム投入を省略でき、メンテナンス回数を低減するとともに、装置の長寿命化を実現することができる。
【0014】
第2の発明は、特に、第1の発明の水供給装置において、前記陽イオン交換体及び前記陰イオン交換体は、イオン交換樹脂を熱可塑性樹脂粒子と混合し形成した多孔質体であることを特徴とするものである。
【0015】
これによって、通水時の圧力損失を低減することが可能となり、単位時間当たりの処理量を増加することが可能となる。同時に、導入水が、焼結体表面に露出していないイオン交換樹脂粒子にも接触するため、腐食抑制成分除去効率を向上できる。
【0016】
第3の発明は、特に、第2の発明のイオン交換体において、陽イオン交換体を形成したイオン交換樹脂は、弱酸性イオン交換樹脂で、陰イオン交換体を形成したイオン交換樹脂は、弱塩基性イオン交換樹脂であることを特徴とするものである。
【0017】
これによって、イオン交換体の再生時のpHを4より酸性にすることで、再生時の陽イオン吸着作用を抑制し、陽イオン交換体の再生を早く完了することができる。
【0018】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれかの発明の水供給装置において、水分解イオン交換膜の再生時にのみに、腐食抑制成分を水に溶解させることを特徴とするものである。
【0019】
これによって、腐食抑制成分処理水を口等に含むことに、嫌悪感を抱く可能性があることを考慮し、水使用箇所への腐食防止成分流入を防止できる。
【0020】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれかの発明の水供給装置を、浴槽へ注湯する浴槽水注湯回路に配設したことを特徴とする給湯機である。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、第1の実施の形態における水供給装置を示すものである。また、図2は、腐食抑制成分添加装置14の構造図を示すもので、図3は、腐食抑制成分除去装置15の構造図を示すものである。
【0023】
図1に示すように、水回路10に、腐食抑制成分添加装置14と、前記腐食抑制成分添加装置14の下流側に腐食抑制成分除去装置15と、前記腐食抑制成分除去装置15に配設された排水流路13とから構成されている。
【0024】
図2において、ポリリン酸ナトリウムである腐食抑制成分11は、粉末状または顆粒状、あるいは、粉末状と顆粒状との混合物であり、腐食抑制成分収納容器(無機化合物収納手段)12に収納される。腐食抑制成分11は、水に対して溶解性を持つ。図2中の腐食抑制成分11は径が異なる顆粒状のものであり、これを多層状となるように構成すると、腐食抑制成分収納容器12内には多孔質の空間が形成される。腐食抑制成分収納容器12は、水回路10によって連通され、腐食抑制成分添加装置14を構成する。
【0025】
以上のように構成された腐食抑制成分添加装置14について、以下その動作、作用を説明する。
【0026】
水回路10から腐食抑制成分添加装置14に流入する水は、腐食抑制成分収納容器12に形成される多孔質の空間を通過する。水には粘性があるため、多孔質の空間を通過する際に腐食抑制成分11の表面から表面近傍の領域には速度境界層が生成される。腐食抑制成分11の表面近傍の速度境界層の流速は小さく、多孔質空間の中心部を通過する流速は大きい分布となる。
【0027】
腐食抑制成分11は水に対して溶解性を持つため、腐食抑制成分11の表面近傍の腐食抑制成分11の表面分子は、表面近傍の水に溶解し、水の溶解濃度が上昇する。表面近傍の水は流速が小さいため、溶解濃度は高い値となる。これに対して流速の大きい多孔質空間の中心部の流れる水の溶解濃度は低い。
【0028】
このとき、水中に溶解する無機化合物の濃度差が生じた場合は、濃度差に応じて高い方から低い物質が移動する(フィックの法則)ため、表面近傍の水に溶解した無機化合物は濃度の低い中心の水に移動する。この物質拡散の原理を利用することで、腐食抑制成分11を多孔質空間内の水に溶解させることができる。
【0029】
溶解した腐食抑制成分11は、ナトリウムイオンとポリリン酸イオンに各々イオン化する。ポリリン酸イオンは、導入水中のカルシウムイオン、マグネシウムイオン等2価の陽イオンとキレート結合し、これらの陽イオンをコロイド化する。このコロイド粒子がカソード部に吸着し、皮膜を形成する。
【0030】
この形成された皮膜は、炭酸カルシウム結晶がスケールとして配管表面への固着することを防ぐ効果を有する。また、炭酸カルシウム結晶に吸着し、菱面体から球形の核に変化させることによりコロイド化させ、炭酸カルシウム結晶がスケールとして配管表面への固着することを防ぐ効果を有する。
【0031】
ここで、図3に基づいて、腐食抑制成分除去装置15の構成について、詳しく説明する。
【0032】
腐食抑制成分除去装置15は、対向する1組の第1の電極16a、第2の電極16bと、水に溶解している陽イオンを吸着する陽イオン交換体17と水に溶解している陰イオン
を吸着する陰イオン交換体18とが、表裏に極性が異なるよう張り合わせたイオン交換体20とから構成されている。
【0033】
イオン交換体20は、電極16間に複数枚積層されており、平板状の対向した電極16間に平面上にイオン交換体20を積層、また、半径の異なる同心円柱状の対向した電極16間に同心円状や螺旋状にイオン交換体20を積層してもよい。
【0034】
イオン交換体20は、スチレンまたはジビニルベンゼンの重合体または共重合体高分子を基本骨格とし、陽イオン交換体17には、スルホン酸基またはアクリル酸やメタクリル酸等のカルボン酸基を導入しており、陰イオン交換体18には、第4級アンモニウム基または第1〜3級アミノ基を導入している。
【0035】
イオン交換体20を成形する際、ポリエチレン等のイオン交換樹脂をポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂に混練分散させることで、膜の成形性を向上することができる。表裏に極性が異なるよう張り合わせたイオン交換体20は、水分解イオン交換膜と呼ばれ、電圧を印加することでイオン交換体の界面で水の解離が促進されるので、低電圧で水の解離を行うことができる。
【0036】
腐食抑制成分除去装置15は、水中に溶解しているイオンをイオン交換体20で吸着する際と、イオン交換体20に吸着したイオンを脱離する際とで、動作が異なるので、まず、腐食抑制成分除去装置15が水中のイオンをイオン交換体20で吸着する際について説明する。
【0037】
腐食抑制成分除去装置15が水中に溶解している腐食抑制成分11を吸着する際は、水中に溶解した陽イオンCa、Mg、Na、Mn、Fe等の各イオンは陽イオン交換体17で水素イオンに、水中に溶解した陰イオンポリリン酸、Cl、炭酸、硫酸、硝酸等の各イオンは、陰イオン交換体18で水酸化物イオンにイオン交換することで、水中に溶解している各種イオンをイオン交換体20に吸着する。
【0038】
イオン交換体20がイオンを吸着する際、イオン交換体20の陽イオン交換体17側の第1の電極16aを陽極、陰イオン交換体18側の第2の電極16bを陰極となるよう電圧を印加することで、腐食抑制成分除去装置15内のイオンがイオン交換体20に移動するので、イオン交換体のイオン吸着速度を増加させることができる。
【0039】
その際、水分子が電気分解し水素分子と酸素分子を生成する水の理論分解電圧は1.226Vであるので、水の分解電圧未満の電圧を印加することで、水素ガスおよび酸素ガスが発生することなく水に溶解しているイオンを、イオン交換体20で効率的に吸着することができる。
【0040】
腐食抑制成分除去装置15で水に溶解しているイオンを吸着することで、pHの偏った水を処理した場合は、酸性の場合はアニオン種を水酸化物イオンに、塩基性の場合はカチオン種を水素イオンに交換することで中性の水に近づけることができるので、腐食抑制成分除去装置15により処理した水は、pHによる腐食を防止することができる。
【0041】
また、水の分解電圧未満の電圧を印加していることで、処理水は水の分解ガスを含有しておらず、加熱手段より加熱され気体の溶解度が低下した場合であっても、水の分解ガスは生成せず、貯湯タンクおよび流路に蓄積することがない。
【0042】
なお、腐食抑制成分除去装置15で水に溶解しているイオンを吸着する際に、電極16間に電圧を印加しなくてもよい。イオン交換体20が水に溶解しているイオンを吸着する
作用に変わりはなく、処理水に水の分解ガスを含有しない効果も変わらない。
【0043】
次に、腐食抑制成分除去装置15がイオン交換体20に吸着したイオンを脱離する際の動作、作用を説明する。
【0044】
イオン交換体20がイオンを脱離する際は、水回路10により腐食抑制成分除去装置15に導かれた水は、腐食抑制成分除去装置15で処理された後、三方弁19で切換えられ排水流路13と通って水供給装置から排出される。腐食抑制成分除去装置15では、イオン交換体20の陽イオン交換体17側の第1の電極16aを陰極、陰イオン交換体18側の第2の電極16bを陽極となるよう電圧を印加する。
【0045】
水分子が水素イオンと水酸化物イオンに解離する水の理論解離電圧は0.828Vであるので、水の解離電圧以上の電圧を印加することでイオン交換体20の陽イオン交換体17と陰イオン交換体18界面で水が解離し、イオン交換体20に吸着したイオンと交換し脱離することでイオン交換体が再生する。
【0046】
印加電圧を水の分解電圧未満にすれば、処理水は水の分解ガスを含有しないので、水供給装置から排出する間の排水流路13に、溶存ガスが成長して気泡となり溜まることを防止することができる。
【0047】
なお、印加電圧を水の分解電圧以上にした場合は、排水流路13の配管径を細くし、排水流路13の流速を十分に増加させ、排水流路13内に気泡が滞留しないようにすることで、水の分解ガスが排水流路13に溜まることを防止することができる。
【0048】
水の分解ガスを確実に給湯機から排出できることから、水を解離しイオン交換体を再生するのに十分な電流を与えることができ、再生効率を向上することができるので、再生時間を短縮、再生排水を低減することができる。
【0049】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の第2の形態における腐食抑制成分添加装置14の構造図を示すものである。
【0050】
図4において、腐食抑制成分添加装置14の入口と出口は、浴槽水注湯回路39に接続されている。腐食抑制成分11を収納する腐食抑制成分収納容器12の相当直径d1、浴槽水注湯回路39の相当直径d2とした場合、図4においてそれぞれをd1>d2となる大きさなるように決定した。
【0051】
以上のように構成された水供給装置について、以下その動作、作用を説明する。水回路10に対して、腐食抑制成分11を収納した腐食抑制成分収納容器12、ロ過手段を設けたので、腐食抑制成分添加装置14を水が通過する際に、圧力損失が生じる。圧力損失が生じると、浴槽42へ供給する水の流量が低下する。
【0052】
ここで、腐食抑制成分収納容器12の相当直径d1を、浴槽水注湯回路39の相当直径d2に対して、d1>d2となる大きさとすると、腐食抑制成分収納容器12の平均流速u1は、浴槽水注湯回路39の平均流速u2より小さくなる。水回路10の流体の圧力損失は、流体の平均流速の2乗に比例するため、腐食抑制成分添加装置14を通過する際の圧力損失の増加を低減させることができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態においては、腐食抑制成分収納容器の相当直径を、溶解装置を接続する浴槽水注湯回路の相当直径よりも大とすることにより、腐食抑制成分を通過
する水流による圧力損失を低減し、浴槽への湯はり時間を早く完了することができる。
【0054】
(実施の形態3)
図5は、本発明の第3の実施の形態における給湯装置の構成図を示すものである。
【0055】
図5において、圧縮機22、給湯熱交換器23、減圧手段24、蒸発器25を冷媒回路26で順に環状に接続してヒートポンプユニット21を構成している。貯湯ユニット27の貯湯タンク28には水が貯留されており、出湯回路30は貯湯タンク28、給湯水ポンプ29、給湯熱交換器23、貯湯タンク28を順に接続する回路である。
【0056】
浴槽水加熱回路35は、貯湯タンク28、風呂熱交換器33、加熱ポンプ34、貯湯タンク28を順に接続する回路であり、風呂熱交換器33の他方の回路には浴槽42が接続されている。浴槽水循環回路41は、浴槽42、浴槽水を搬送する浴槽水ポンプ40、風呂熱交換器33を順に接続する回路である。浴槽水注湯回路39は、貯湯タンク28の水を、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42へ注湯する回路である。
【0057】
この回路には貯湯タンク28の高温の水と水道水を混合する浴槽水混合弁36、注湯する水温を検知する温度検知手段37、浴槽水注湯回路39の回路の開閉を行う浴槽水注湯弁38を順に備える。腐食抑制成分添加装置14は浴槽水注湯弁38の下流側の浴槽水注湯回路39に本体の筐体に収納するように設けた。
【0058】
ヒートポンプユニット21で貯湯タンク28に貯留された水を加熱する運転は、以下のような動作となる。貯湯タンク28の水は、給湯水ポンプ29によって給湯熱交換器23へ搬送され、ヒートポンプサイクル動作によって加熱される。給湯水ポンプ29は給湯熱交換器23で加熱された給湯水の温度が予め決定した温度になる様に、出湯回路30の流量を制御する。
【0059】
浴槽42への湯張り、並びに、浴槽水の加熱は以下のような動作となる。浴槽水注湯回路39の浴槽水混合弁36は、温度検知手段37で検知する注湯温度がリモコン等(図示せず)で予め設定された温度となるように、高温の湯と水道水の混合割合を調整する。所定温度となった浴槽水は、浴槽水注湯回路39、浴槽水循環回路41を順に経由して浴槽42へ流出する。
【0060】
一方、浴槽42の浴槽水を加熱する場合は、貯湯タンク28に貯留された高温の湯を、浴槽水加熱ポンプ34によって風呂熱交換器33へ搬送し、浴槽水ポンプ40より搬送された浴槽水を加熱する。風呂熱交換器33で浴槽水を加熱して温度が下がった給湯水は、給湯水下部回路31が接続する貯湯タンク28の下部より内部へ流入する。
【0061】
以上のように構成された給湯装置について、以下その動作、作用を説明する。利用者が浴槽42へ湯はりを行う場合は、リモコン等で湯はり動作の指示操作を行う。リモコン操作後、予め設定された温度に浴槽水混合弁36で調整された水が、浴槽水注湯弁38を閉から開に制御した場合に、腐食抑制成分添加装置14、腐食抑制成分除去装置15、浴槽水循環回路41を経由して浴槽42に流出する。水が腐食抑制成分添加装置14を通過する際に、腐食抑制成分11が水に溶解するものの、腐食抑制成分除去装置15において腐食抑制成分11を除去するので、浴槽42に腐食抑制成分11を溶解させた水が浴槽42に流入することはない。
【0062】
腐食抑制成分添加装置14は、浴槽水注湯弁38の下流側としたが、浴槽水注湯弁38が開から閉へ制御された場合は、ウォーターハンマー現象が発生し、上流側の回路に設けている、浴槽水混合弁36、貯湯タンク28等は水道圧以上の水圧負荷を与える。下流側
に設けることによって、腐食抑制成分添加装置14への水圧負荷が掛からない。
【0063】
以上のように、本実施の形態においては、浴槽水注湯回路39と、浴槽水注湯弁38とを備え、浴槽水注湯弁38、腐食抑制成分添加装置14、腐食抑制成分除去装置15の順に、これらを浴槽水注湯回路39に配設した給湯装置とした。
【0064】
これにより、溶解装置は浴槽への湯はり停止時などに生じるウォーターハンマー現象(浴槽水注湯回路等の水圧上昇)の影響を受けないため、溶解装置の耐圧構造を簡素化することができる。さらに、浴槽への湯はりの水流を利用するため、湯はりと同時に無機化合物を溶解させた水を浴槽へ供給できるので、利便性が向上する。
【0065】
本発明において、腐食抑制成分添加装置14と腐食抑制成分除去装置15とは給湯機の本体筐体に収納し、浴槽水注湯回路39としているが、浴槽水循環回路41に設けても、同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、本体筐体外部の浴槽水循環回路41に設けることも可能であるが、本体筐体内部の雰囲気温度は、低外気温時であっても貯湯タンク28からの放熱により、筐体内部の雰囲気は常時加温されるため、腐食抑制成分添加装置14の凍結防止などの断熱が不要、または簡素化できる。
【0067】
また、給湯機を貯湯式給湯機とした場合、貯湯タンクには高温の湯を貯湯するので、この高温の湯を腐食抑制成分添加装置14と腐食抑制成分除去装置15とへ供給することによって機器の殺菌、滅菌を行うことができる。
【0068】
(実施の形態4)
本発明のイオン交換体20である水分解イオン交換膜の、陽イオン交換体17や陰イオン交換体18は、イオン交換樹脂51を、ポリエチレン粒子52と混合した後、焼結して得た多孔質体であるが、図6はその構造図を示すものである。これらの多孔質体は以下の方法によって得た。
【0069】
平均粒子径50ミクロン以上300ミクロン以下で、合成樹脂の流動性の指数であるMFRが3g/10min以下のポリエチレン粒子と、平均粒子径が30ミクロン以上、かつ、ポリエチレンの平均粒子径以下のイオン交換樹脂とをブレンダーを用いて均一に混合した。
【0070】
このとき全体に占めるイオン交換樹脂の重量濃度を、5重量%以上60重量%以下とした。得られた混合粉を金型に充填し、雰囲気温度がポリエチレン樹脂の融点+50度未満の槽内に5分以上放置して多孔質体53を得た。得られた多孔質体53は気孔54を有し、この気孔54を導入水が通過することで、大量の導入水を通水しても圧力損失を低くできる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように、本発明にかかる水供給装置は、信頼性向上、運転効率向上に繋がり、貯湯式給湯機の他、ガス熱源の給湯機等にも利用できる。
【符号の説明】
【0072】
10 水回路
11 腐食抑制成分
12 腐食抑制成分収納容器
13 排水流路
14 腐食抑制成分添加装置
15 腐食抑制成分除去装置
16a 第1の電極
16b 第2の電極
17 陽イオン交換体
18 陰イオン交換体
20 イオン交換体(水分解イオン交換膜)
21 ヒートポンプユニット
27 貯湯ユニット
28 貯湯タンク
36 浴槽水混合弁
37 温度検知手段
38 浴槽水注湯弁
39 浴槽水注湯回路
42 浴槽
51 イオン交換樹脂
52 ポリエチレン粒子
53 多孔質体
54 気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入水に腐食抑制成分を溶解させる腐食抑制成分添加装置と、前記腐食抑制成分添加装置の下流側に配設され、一対の対向する電極、陽イオン交換体と陰イオン交換体とから形成され、前記電極間に配されたイオン交換体を有する腐食抑制成分除去装置とを備え、前記腐食抑制成分除去装置に流入した前記腐食抑制成分は、イオン交換反応により前記導入水から除去させた後、排出されることを特徴とする水供給装置。
【請求項2】
前記陽イオン交換体及び前記陰イオン交換体は、イオン交換樹脂を熱可塑性樹脂粒子と混合し形成した多孔質体であることを特徴とする請求項1に記載の水供給装置。
【請求項3】
前記陽イオン交換体を形成したイオン交換樹脂は、弱酸性イオン交換樹脂で、前記陰イオン交換体を形成したイオン交換樹脂は、弱塩基性イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の水供給装置。
【請求項4】
前記水分解イオン交換膜の再生時にのみに、前記腐食抑制成分を水に溶解させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水供給装置。
【請求項5】
前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の水供給装置を、浴槽へ注湯する浴槽水注湯回路に配設したことを特徴とする給湯機。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−61421(P2012−61421A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207504(P2010−207504)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】