説明

水冷媒熱交換器

【課題】大流路の外側に小径管を設けた水冷媒熱交換器の場合、高温となる部分で孔食腐食が発生しやすいため、大流路内部を起点とする腐食がろう付け部を介し、小径管に至り、大径管内の水に冷媒と冷凍機油が噴出するという課題を有していた。
【解決手段】本発明の水冷媒熱交換器は、小径管の外面に中径管を設け、中径管端部の開口部または途中に設けた開口部から水を漏らすことで、水漏れを検知でき、中径管を大径管の肉厚より薄くすることで軽量化・合理化を図るというものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯機における水冷媒熱交換器の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1の従来の水冷媒熱交換器について説明する。図4は、第1の従来の水−冷媒熱交換器の構成を示す要部斜視図、図5は大径管1の軸直角の断面図を示す。第1の従来の水−冷媒熱交換器は、大径管1の外面に複数本の小径管3A、3Bを巻き付け、密着させた後、大径管1と小径管3A、3Bとはろう材Mにて接合する。大径管1内を流れる低温の水と小径管3A、3B内を流れる高温の冷媒と熱交換するというものである。
【0003】
一般に、大径管1と小径管3A、3Bの材料には、曲げ加工性や伝熱性に優れる銅を使う。大径管1内を流れる水は、まれに銅を腐食させることがあるが、大径管1と小径管3A、3Bとの接合する部分が、大径管1の外周のわずかな部分であることから、大径管1と小径管3A、3Bが貫通するような腐食は、皆無とされていた(特許文献1参照)。
【0004】
第2の従来の水冷媒熱交換器について説明する。図6は、第2の従来の水−冷媒熱交換器の構成を示す要部斜視図、図7は大径管11の軸直角の断面図を示す。第2の従来の水−冷媒熱交換器は、大径管11の内部に、内部に小径管13を備えた中径管12を複数本ねじり合わせたものを挿入した構成で、小径管内を高温の冷媒、中径管の外側で大径管内を水が流れ、互いに熱交換される。
【0005】
ここで、大径管11と中径管12と小径管13の材料は、曲げ加工性や伝熱性に優れる銅を使う。大径管11内を流れる水が銅を腐食させる水の場合、中径管12の外周を水が覆っていることから、中径管を貫通腐食させることがあるが、中径管内面と小径管外面のところは、中径管内面に設けた溝により隙間を確保でき、この隙間を通り、中径管の端部12Aから水は外部に漏れる構成となっている。このため、腐食により中径管が貫通腐食に至っても小径管内を流れる冷媒と大径管内を流れる水は混合することはない(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−145068号公報
【特許文献2】特開2005−147569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1の従来の構成では、次のような課題を有していた。
【0008】
一般に銅の孔食腐食には、低温で発生するI型孔食と中温から高温で発生すII型孔食がある。II型孔食はシリカなどのスケール成分の析出が影響する。水温が上昇すると、スケール成分の溶解度が減少し析出し、シリカなどのスケール成分は温度の高い部分に付着しやすい。大径管内を流れる低温の水は、小径管内を流れる高温の冷媒と熱交換し、湯となって流出する。
【0009】
ここで大径管の温度分布を局部的に考えると、大径管の内面の温度は、大径管の外面にロウ付けなどで金属接合された小径管の近傍が最も高温となり、その周囲は熱伝導により温められる。したがって、高温で析出しやすいスケール成分は小径管の密着接合された近
傍の大径管内面に付着しやすく、この部分で孔食腐食も発生の確率は高まることになる。大径管内面から発生した孔食腐食は、大径管を貫通し、大径管が小径管とロウ付けなどの銅を主成分とする金属接合であることから外部に漏れることなく、接合部を貫通し、さらに小径管を貫通し、小径管内部に到達する。
【0010】
これにより、大径管内を流れる水に、小径管を流れる冷媒が噴出することになり、冷媒と共に循環している冷凍機油が水中に噴出されてしまう。
【0011】
このように、大径管と小径管との接合する部分が、大径管の外周のわずかな部分で接合されているとしても、そのわずかな部分は局部的に高温であることから孔食腐食の起点になりやすく、外に漏れることなく、貫通腐食に至ってしまい、貯湯タンク内の湯が汚染され、お風呂やカランなどから流出してしまうという課題を有していた。
【0012】
また、第2の従来の構成では、次のような課題を有していた。水に接する部分が腐食すると考えると、大径管も中径管も腐食する可能性があるため、肉厚はほぼ同等の肉厚でないと、薄い方が先に腐食し、水漏れを発生させてしまうことになる。そのため、中径管は耐圧を必要としないにもかかわらず、大径管と同等の肉厚が必要で、軽量化・合理化が図れないという課題を有していた。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、小径管の外周に中径管を設けることで、孔食腐食に至ったとしても、事前に水漏れを検知でき、貯湯タンク内の湯を汚染させることのない優れた水冷媒熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の水冷媒熱交換器は、小径管の外周に密着させた中径管を複数備え、大流路の外周に巻き付け、中径管と大流路とを金属接合する。また、中径管の肉厚を、大流路の肉厚より薄くする。また、中径管の内面に多数の溝を設ける。さらに、中径管に多数の開口部を設けるというものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水冷媒熱交換器は、小径管の外周に密着させた中径管を、大流路の外周に巻き付け、中径管と大流路を金属接合させることで、銅を腐食させる可能性の高い水質であっても大流路からの孔食腐食は中径管を貫通腐食した時点で水を確実に外部に漏らす経路を確保でき、水に冷媒が噴出するようなことを防止することができる。また、中径管の肉厚を、大流路の肉厚より薄くすることで、軽量化でき、コストアップも抑制することができる。また、中径管の内面に多数の溝を有することで、確実に外部への流出する経路を確保でき、より確実に水漏れを検知できる。さらに、中径管に多数の開口部を設けることで、内面に溝のない平滑管を使うことで、安価でありながら確実に水漏れを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態における水冷媒熱交換器の要部斜視図
【図2】本発明の第1の実施の形態における断面図
【図3】本発明の第2の実施の形態における水冷媒熱交換器の要部斜視図
【図4】第1の従来の水−冷媒熱交換器の要部斜視図
【図5】第1の従来の水−冷媒熱交換器の断面図
【図6】第2の従来の水−冷媒熱交換器の側面図
【図7】第2の従来の水−冷媒熱交換器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の発明は、水が流れる大流路と、冷媒が流れる小径管と、前記小径管の外周に密着
させた中径管を複数備え、前記大流路の外周に巻き付け、前記中径管と前記大流路とを金属接合したことを特徴とするものである。これにより銅を腐食させ、大流路からの孔食腐食により中径管を貫通腐食したとしても、この時点で水を外部に漏らすことができ、大流路内の水に冷媒が噴出するようなことを防止することができ、貯湯タンク内の湯を汚染させるようなことはない。
【0018】
第2の発明は、中径管の肉厚を、大流路の肉厚より薄くしたことを特徴とするものである。これにより著しい軽量化を図ることができ、大幅な合理化を図ることができる。
【0019】
第3の発明は、中径管の内面に多数の溝を有することを特徴とするものである。これにより、外部への流出経路の流路面積を大きくすることができ、より確実に水を外部に誘導でき、水漏れを検知できる。
【0020】
第4の発明は、中径管に多数の開口部を有するというものである。これにより、内面に溝のない平滑管であっても開口部までの長さが短いことから容易に水を外部に流出させることができ、確実に水漏れを検知できる。また、内面に溝のない平滑管を用いることができ、コストを抑制することができる。
【0021】
(実施の形態1)
実施の形態1について、図1〜図2を用いて説明する。図1に要部斜視図、図2に断面図を示す。
【0022】
図1〜図2において、100は水冷媒熱交換器、101は大流路、102は中径管、102Aは、中径管の端部開口部、103は小径管、105はろう付け部、106は大流路内面に付着したスケール、107は孔食腐食による貫通穴のイメージを示す。
【0023】
図1〜図2において、高温の二酸化炭素の冷媒は中径管102内に密着成形された小径管103内を通る。また、低温の水は、大流路101内を通る。2つの流体は互いに熱交換し、水は高温の湯となって水冷媒熱交換器から流出し、貯湯タンクへ運ばれる。小径管103の外側には中径管102が密着されていることで熱抵抗はほとんどなく、小径管の熱を中径管に伝えることができる。
【0024】
また、図2において、中径管2と大流路101とはろう付けにて金属的に接合されるろう付け部105にて密着している。これにより、中径管の熱を、熱抵抗がほとんどない状態で大流路に伝えることができる。
【0025】
以上のように構成された水冷媒熱交換器について、以下の動作、作用を説明する。水質が銅を腐食させる成分(例 硫酸イオン、硝酸イオン、イオン状シリカ、重炭酸イオンなど)を含んでいる場合、II型孔食を発生することがある。イオン状シリカは水温の上昇とともに析出し、シリカとなって大流路内面に付着し始める。腐食の起点となる周囲にはシリカが析出し、起点部分では電位的にもpH的にも腐食しやすい環境となり、加速的に腐食が進むことになる。
【0026】
局部的に腐食しやすい環境が整うことで、腐食は横に広がる全面腐食ではなく、局部に集中する孔食腐食が発生する。孔食腐食による貫通穴107は、大流路を貫通し、さらにろう付け部105と中径管102を貫通し、小径管103の外面に達する。大流路101内の水はこの貫通穴107を通り、小径管103の外面に達するが、中径管102の内面の溝が流路となって管軸方向に誘導され、中径管端部の開口部102Aから漏れることになる。これにより、水漏れであることが検出できる。
【0027】
また、中径管は水の誘導路として使用するだけであり、耐圧を必要としないことから中径管の最小肉厚を大流路の最小肉厚より薄くすることができ、軽量化・合理化を図ることができる。
【0028】
このように本発明の水冷媒熱交換器は、小径管の外周に密着させた中径管を、大流路の外周に巻き付け、中径管と大流路を金属接合させることで、銅を腐食させる可能性の高い水質であっても大流路からの孔食腐食は中径管を貫通腐食した時点で水を確実に外部に漏らす経路を確保でき、水に冷媒が噴出するようなことを防止することができる。また、中径管の肉厚を、大流路の肉厚より薄くすることで、軽量化でき、コストアップも抑制することができる。
【0029】
また、中径管の内面に多数の溝を有することで、確実に外部への流出する経路を確保でき、より確実に水漏れを検知できる。
【0030】
(実施の形態2)
実施の形態2について、図3を用いて説明する。図3は実施の形態2の要部斜視図である。実施の形態1と異なる部分について以下説明する。
【0031】
図3において、112は中径管、112Aは中径管の端部開口部、112Bは中径管に設けた多数の穴を示す。
【0032】
図3において、実施の形態1との違いは、中径管112の形状にある。中径管112は小径管103の外面に密着させたものであるが、中径管112には複数の開口部112Bを設けている。
【0033】
このように構成された水冷媒熱交換器について、以下の動作、作用を説明する。孔食腐食により小径管103の外面に達した場合、中径管端部の開口部112Aまで達しなくても、複数の開口部112Bに達すれば、水漏れであることが検出できる。中径管112の内面に溝を設けることなく、安価な平滑管を使用することができ、穴の数を少なくすれば、合理化を図ることができる。
【0034】
なお、図1〜図3は大流路に円管を用いて説明したが、大流路が箱型の内部を仕切り、蛇行して流す流路であり、その箱型の大流路に小径管を巻きつけて、ろう付けした水冷媒熱交換器であっても同様の効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係る水冷媒熱交換器は、ヒートポンプサイクルと給湯サイクルが一体に構成された一体型ヒートポンプ式給湯機、別体に構成された分離型ヒートポンプ式給湯機、給湯用熱交換器で加熱したお湯をそのまま出湯できる直接出湯型ヒートポンプ式給湯機などの各種ヒートポンプ給湯機の水―冷媒熱交換器に適用でき、給湯機能のほかに、浴槽給湯、暖房機能、乾燥機能を有するヒートポンプ装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
100 水冷媒熱交換器
101 大流路
102、112 中径管
103 小径管
102A、112A 中径管端部の開口部
112B 中径管に設けた開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる大流路と、冷媒が流れる小径管と、前記小径管の外周に密着させた中径管を複数備え、前記大流路の外周に巻き付け、前記中径管と前記大流路とを金属接合したことを特徴とする水冷媒熱交換器。
【請求項2】
前記中径管の肉厚を、大流路の肉厚より薄くしたことを特徴とする請求項1に記載の水冷媒熱交換器。
【請求項3】
前記中径管の内面に多数の溝を有することを特徴とする請求項1または2に記載の水冷媒熱交換器。
【請求項4】
前記中径管に開口部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水冷媒熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−11390(P2013−11390A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−144017(P2011−144017)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】