水処理システム
【課題】 計量槽や電磁流量計の設置が不要で、システム全体のコストダウンを図ることができるとともに、流量調整槽から処理槽への送水を無駄なく行うことが可能で、省エネルギ効果が得られる水処理システムを提供する。
【解決手段】水処理を行うための処理槽2の前段に流量調整槽3が配備され、流量調整槽3には処理槽2へ被処理水を移送するポンプ5および水位検出手段SW1〜SW4を設ける一方、水位検出手段SW1〜SW4の検出出力に基づきポンプ5動作を制御する制御手段7を有し、制御手段7は、水位検出手段SW1〜SW4で検出される流量調整槽3の水位に応じて必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを求め、この全揚程Hの大きさに応じてポンプ5の運転性能を変化させて処理槽2の処理能力に適合した必要吐出量Qreqの被処理水を処理槽2に移送する。
【解決手段】水処理を行うための処理槽2の前段に流量調整槽3が配備され、流量調整槽3には処理槽2へ被処理水を移送するポンプ5および水位検出手段SW1〜SW4を設ける一方、水位検出手段SW1〜SW4の検出出力に基づきポンプ5動作を制御する制御手段7を有し、制御手段7は、水位検出手段SW1〜SW4で検出される流量調整槽3の水位に応じて必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを求め、この全揚程Hの大きさに応じてポンプ5の運転性能を変化させて処理槽2の処理能力に適合した必要吐出量Qreqの被処理水を処理槽2に移送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理を行うための処理槽の前段に、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して処理槽への移送量を調整する流量調整槽を配備した水処理施設において、流量調整槽から処理槽へ定量的に水を移送するために用いられる水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理施設では、被処理水の処理(例えば、汚水の浄化処理)を行う処理槽の前段に、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して処理槽への移送量を調整する流量調整槽を配備した構成が広く採用されている。
【0003】
このような構成の水処理施設において、効率的な浄化処理を実現するためには、処理槽における浄化処理の負荷を考慮して、流量調整槽から処理槽に対して常に適切な量の被処理水をポンプで定量的に移送することにより、処理槽の負荷を常に一定に保つようにすることが不可欠な要件とされている。
【0004】
ところで、上記の流量調整槽は、流入する水量の変動に応じてその水位が常に変動する。そして、流量調整槽の水位が変動すると、それに応じて処理槽に被処理水を移送するポンプの吐出量も変動するため、処理槽へ被処理水を定量的に移送することができなくなる。そしてその結果、処理槽の負荷にばらつきが生じ、安定した処理を行うことができなくなるという問題点がある。
【0005】
すなわち、ポンプの特性として、吐出量と全揚程の関係を示す周知の運転性能曲線からも分かるように、流量調整槽の水位が変動すると、これに伴いポンプの実揚程が変動するため、ポンプの吐出量も変動し、その結果、処理槽の負荷を考慮した適切な水量の範囲を超えた、過剰の被処理水が流量調整槽から処理槽に送水されてしまったり、適切な水量の範囲を下回る量の被処理水しか流量調整槽から処理槽に送水されない場合が生じることがある。
以下、処理槽の負荷を考慮して処理槽に移送すべき適切な水量を必要送水量と、また、この必要送水量に相当するポンプの吐出量を必要吐出量と称する。
【0006】
このような不具合が生じるのを回避するための方策として、従来技術では、流量調整槽と処理槽との間に計量槽と呼ばれる一種のバッファの役目を果たす槽を介在させるとともに、流量調整槽の水位変動があってもそれに影響されずに常に必要送水量以上の吐出量を確保できる大きな性能をもつポンプを設け、流量調整槽から計量槽に常に必要送水量以上の被処理水(汚水)を移送し、処理槽の処理能力を越える余分な被処理水は流量調整槽へ戻すことにより、計量槽から処理槽に向けて常に適切な量の被処理水が移送されるようにした水処理システム(汚水処理システム)が使用されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−241579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1記載の従来の水処理システムでは、流量調整槽と処理槽との間に計量槽を配置する必要があるので、計量槽の設置のために余分な設備コストがかかるとともに、流量調整槽から計量槽には、常に処理槽に送水すべき必要送水量以上の余分な水を移送する必要があるため、送水のために無駄なエネルギが消費される。
しかも、流量調整槽の水位変動に影響されずに常に必要送水量を越えた十分大きな吐出量を確保できるだけの高揚程仕様の大きな性能をもつポンプを設ける必要があるため、ポンプのコストも高くなるという問題がある。
【0009】
なお、計量槽を省略するとともに、ポンプの回転速度を制御するインバータと、ポンプの吐出量を実測する電磁流量計とを併用し、電磁流量計でポンプの吐出量を常に計測しながら、その計測信号に基づいてインバータの回転速度をフィードバック制御することにより、流量調整槽の水位変動に影響されずに常に処理槽に安定して必要送水量が移送されるようなポンプ運転をする方法も考えられるが、この場合には、高価な電磁流量計の設置が必要となるので、システム全体のコストダウンを図る上で未だ不十分である。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、計量槽や電磁流量計を設置する必要がなく、かつ、従来のような過大な性能をもつポンプも不要で、システム全体としてコストダウンを図ることが可能で、しかも、ポンプによる流量調整槽から処理槽への送水を無駄なく行って、省エネルギを図ることが可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、水処理を行うための処理槽の前段に、外部から流入する水を一時的に貯留して前記処理槽への移送量を調整する流量調整槽が配備されるとともに、流量調整槽から処理槽へ被処理水を移送するポンプが設けられている水処理システムにおいて、次の構成を採用している。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明は、
水処理を行うための処理槽と、
前記処理槽の前段に設けられた、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して前記処理槽への移送量を調整するための流量調整槽と、
前記流量調整槽から前記処理槽へ被処理水を移送するためのポンプと、
前記流量調整槽の水位を検出するための水位検出手段と、
前記水位検出手段からの検出出力に基づいて前記ポンプの動作を制御する制御手段と
を備えた水処理システムであって、
前記制御手段は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記処理槽の処理能力に適合した必要な吐出量の下での全揚程を求め、この全揚程の大きさに応じて前記ポンプの運転性能を変化させることにより、単位時間当たりに略一定量の被処理水が前記処理槽に移送されるように前記ポンプの動作を制御するように構成されていること
を特徴としている。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記水位検出手段は、前記流量調整槽の深さ方向に沿って段階的に配備された複数のフロートスイッチからなり、また、前記制御手段は、各フロートスイッチによる水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を段階的に切替えるものである、ことを特徴としている。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記水位検出手段は、前記流量調整槽内の水位を連続的に検出する圧力式水位計からなり、また、前記制御手段は、前記圧力式水位計からの水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を連続的に変化させるものである、ことを特徴としている。
【0015】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成において、前記制御手段による前記ポンプの運転性能を変化させる制御は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記ポンプの運転周波数をインバータ部により変化させる制御である、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明(請求項1)によれば、計量槽や電磁流量計を設置しなくても流量調整槽から処理槽へ一定の必要量の被処理水を確実に移送することができ、またポンプ性能としては流量調整槽の水位が低下してポンプ停止水位に近付いた状態で必要送水量を確保できるだけの運転性能があればよく、高揚程仕様の過大な性能のポンプは不要であり、システム全体としてコストダウンを図ることができる。
しかも、従来のように必要量以上の余分な被処理水を常にポンプで移送する必要がなく、ポンプによる流量調整槽から処理槽への送水が無駄なく行われるので、従来に比べて省エネルギ効果が得られる。
【0017】
特に、請求項2記載のように、水位検出手段を複数のフロートスイッチで構成し、制御手段により各フロートスイッチによる水位検出信号に応じてポンプの運転性能を段階的に切替える場合、流量調整槽の水位変動に伴い、ポンプの吐出量は処理槽への必要送水量に対してある程度のばらつきが発生するものの、必要送水量に近似した一定の吐出量を確保することができるので、処理槽の負荷を常に一定に保つことが可能で、かつ安価なフロートスイッチを使用して実施することができる。
【0018】
また、請求項3記載のように、水位検出手段を圧力式水位計で構成し、制御手段により圧力式水位計からの水位検出信号に基づいてポンプの運転性能を連続的に変化させる場合、流量調整槽の水位変動がある場合でも、常に処理槽へ一定の必要送水量を安定して移送することができ、処理槽の負荷を常に一定に保つことが可能となる。
【0019】
また、請求項4記載のように、水位検出手段で検出される水位に応じてポンプの運転周波数をインバータ部で変化させてポンプの運転性能を調整する制御を行えば、比較的簡単なシステム構成によってその制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における水処理システム(汚水処理システム)の構成を示す構成図である。
【図2】同システムのポンプの運転性能を示す特性図である。
【図3】流量調整槽の各水位に対応したフロートスイッチの動作を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1における汚水処理システムの動作説明に供するフローチャートである。
【図5】ポンプの運転性能曲線に対応するポンプの運転周波数との関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2における汚水処理システムの構成を示す構成図である。
【図7】同システムのポンプの運転性能を示す特性図である。
【図8】流量調整槽の各水位とそれに対応したポンプの全揚程との関係を示す特性図である。
【図9】流量調整槽内に設置された圧力式水位計の検出信号電流値とそれに対応した流量調整槽内の水位との関係を示す特性図である。
【図10】圧力式水位計の検出信号電流値とポンプの運転周波数との関係を示す特性図である。
【図11】本発明の実施の形態2における水処理システムの動作説明に供するフローチャートである。
【図12】ポンプの運転性能を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を示して、本発明の特徴をさらに詳しく説明する。
[実施の形態1]
この実施の形態1では、水処理システムとして、汚水を浄化処理するための汚水処理システムを例にとって説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る汚水処理システムの構成を示す構成図である。
【0022】
この実施の形態1の汚水処理システムは、汚水の浄化処理を行う処理槽2の前段に、外部から流入する汚水を一時的に貯留して処理槽2への移送量を調整する流量調整槽3が配備されている。
【0023】
そして、流量調整槽3には、当該槽3から処理槽2へ汚水を移送する電動式のポンプ5が設けられるとともに、当該槽3の水位を検出する水位検出手段が設けられている。
【0024】
この場合の水位検出手段として、流量調整槽3の深さ方向に沿って段階的に複数(ここでは4つ)のフロートスイッチSW1〜SW4が配備されている。すなわち、流量調整槽3の水位の上限としてポンプ始動点を検出するためのフロートスイッチSW1と、流量調整槽3の水位の下限としてポンプ停止点を検出するためのフロートスイッチSW4とを備えるとともに、さらにこれら両フロートスイッチSW1,SW4の間に上下2つのフロートスイッチSW2,SW3が配置されている。
そして、各フロートスイッチSW1〜SW4の設置箇所に対応する流量調整槽3の各水位をL1〜L4とすると、各フロートスイッチSW1〜SW4は、各水位L1〜L4に到達した時点でオンからオフあるいはオフからオンへレベル反転する水位検出信号を出力する。
【0025】
また、この実施の形態1の汚水処理システムは、各フロートスイッチSW1〜SW4からの検出出力に基づいてポンプ5の動作を制御する制御手段7を有する。すなわち、この制御手段7は、後に詳述するように、流量調整槽3の水位に応じてポンプ5の運転周波数(実際にはポンプ5を駆動するポンプモータの駆動周波数)をインバータ制御して、ポンプ5の運転性能を段階的に切替えることにより、常に、処理槽2へ一定の必要送水量が移送されるように制御を行うものであって、パラメータ設定入力部8、全揚程算出部9、およびインバータ部10を有する。
【0026】
図2はポンプ5の運転性能特性図であり、横軸はポンプ5の吐出量Qを、縦軸はポンプ5の全揚程Hをそれぞれ示している。
ここで、パラメータ設定入力部8は、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、各フロートスイッチSW1〜SW4の検出出力に対応したポンプ5の運転性能曲線(図2の符号P1〜P4で示す4つの各曲線)、および各フロートスイッチSW1〜SW4で検出される各水位L1〜L4に対応した配管損失曲線(図2の符号R1〜R4で示す4つの各曲線)をそれぞれ設定入力するものである。また、曲線R1〜R4は、流量調整槽3の各フロートスイッチSW1〜SW4の設置箇所に対応する各水位のレベルL1〜L4に応じた実揚程や配管等の摩擦損失から算出され、曲線P1〜P4は、インバータにより周波数を変化させた時のポンプ5の運転性能曲線であり、実測運転性能を元に以下の式(1),(2)から算出したりするなどして決定することもできる。
【0027】
H2=H1×(fx/f0)2 ……(1)
Q2=Q1×(fx/f0) ……(2)
H1:揚程(実測元データ)
Q1:流量(実測元データ)
H2:揚程(計算データ)
Q2:流量(計算データ)
f0:実測時周波数
fx:変化時周波数
【0028】
また、全揚程算出部9は、パラメータ設定入力部8で設定入力された上記のポンプ5の必要吐出量Qreq、各フロートスイッチSW1〜SW4で検出される流量調整槽3の各水位L1〜L4に対応したポンプ5の実揚程Hr、および配管損失曲線R1〜R4に基づいて、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出するものである。
【0029】
すなわち、全揚程算出部9には、図3に示すように、各フロートスイッチSW1〜SW4からの検出信号出力のオンからオフあるいはオフからオンへのレベル反転の有無によって流量調整槽3の現在の水位がL1〜L4の内のどのレベルにあるかを判定するためのテーブルが予め登録されており、図3に示す関係を用いて、各水位L1〜L4に対応したポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出する。
【0030】
インバータ部10は、全揚程算出部9で算出されるポンプ5の全揚程Hの値に基づいて、この全揚程Hを確保可能なポンプ5の各運転性能曲線P1〜P4の内の一つを選定する運転性能曲線選定部11、この運転性能曲線選定部11で選定された一つの運転性能曲線に対応したポンプ5の運転周波数fを設定する周波数設定部13、およびこの周波数設定部13で設定された運転周波数fの下でポンプ5を駆動するポンプ駆動部14からなる。
【0031】
次に、上記構成を有する汚水処理システムの動作、特にポンプ5の駆動制御動作を主体に、図2に示すポンプ5の運転性能特性図、および図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図4に示すフローチャートにおいて、符号Sは各処理ステップを意味する。
【0032】
予めパラメータ設定入力部8により、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、ポンプ5の運転性能曲線(図2の符号P1〜P4で示す各曲線)、各運転性能曲線P1〜P4に対応するポンプ5の運転周波数f1〜f4、および各フロートスイッチの検出出力に対応した配管損失曲線(図2の符号R1〜R4の各曲線)をそれぞれ設定入力しておく。
【0033】
ポンプ電源がオンされた後(S10)、全揚程算出部9は、各フロートスイッチの検出出力に基づいて判定される流量調整槽3の水位に対応したポンプ5の実揚程Hr、パラメータ設定入力部8で設定された上記の配管損失曲線R1〜R4、およびポンプ5の必要吐出量Qreqに基づいて、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出する。
【0034】
すなわち、流量調整槽3に汚水が流入し、例えば流量調整槽3の水位がその上限となるポンプ始動点L1を越えた場合(S11)、その時点でフロートスイッチSW1の検出出力がレベル反転するので、そのポンプ始動点L1の水位に対応したポンプ5の実揚程Hr1を求め、さらに、この実揚程Hr1を始点とする配管損失曲線(図2の符号R1の曲線)とポンプ5の必要吐出量Qreqとから、この必要吐出量Qreqの下でのポンプ5の全揚程(図2の符号H1で示す点)を算出する。
【0035】
次いで、インバータ部10の運転性能曲線選定部11は、全揚程算出部9で算出されたポンプ5の全揚程H1の値に基づいて、この全揚程H1を確保可能なポンプ5の最小の運転性能曲線を選定する。この場合、全揚程H1を確保可能なポンプ5の最小の運転性能曲線はP1であるので、この運転性能曲線P1が選定される。
【0036】
続いて、周波数設定部13は、運転性能曲線選定部11で選定された運転性能曲線P1に対応したポンプ5の運転周波数を設定する。すなわち、図5に示すように、各運転性能曲線P1〜P4に対応するポンプ5の運転周波数f1〜f4は予め決まっているので、ここでは運転性能曲線P1に対応するポンプ5の運転周波数f1(ここでは45Hz)が設定される。ポンプ駆動部14は、この周波数設定部13で設定された運転周波数f1(=45Hz)の下でポンプ5を駆動する(S12)。したがって、この場合、ポンプ5の吐出量は、運転性能曲線P1上で配管損失曲線R1と交差するポンプ運転点aに対応した吐出量となり、処理槽2の必要送水量Qreqよりも少しだけ多めの吐出量となる。
【0037】
この状態からポンプ運転が継続されると、流量調整槽3の水位が次第に低下し(S13)、これに伴ってポンプ5の実揚程も次第に大きくなるため、最大吐出量を確保できるポンプ運転点は、ポンプ5の運転性能曲線P1に沿って符号aに示す位置から符号bに示す位置に向けて次第に移動していく(S14)。そして、ポンプ運転点が配管損失曲線R2と交差するポンプ運転点bに到達し、流量調整槽3の水位が符号L2で示すレベルに到達すると(S15)、フロートスイッチSW2の検出出力がレベル反転するため、全揚程算出部9は、その水位L2に対応したポンプ5の実揚程Hr2を求め、さらに、この実揚程Hr2を始点とする配管損失曲線(図2の符号R2の曲線)とポンプ5の必要吐出量Qreqとから、この必要吐出量Qreqの下でのポンプ5の全揚程(図2の符号H2で示す点)を算出する。
【0038】
次いで、インバータ部10の運転性能曲線選定部11は、全揚程算出部9で算出されたポンプ5の全揚程H2の値に基づいて、この全揚程H2を確保可能なポンプ5の最小の運転性能曲線P2を選定する。続いて、周波数設定部13は、運転性能曲線選定部11で選定された運転性能曲線P2に対応したポンプ5の運転周波数f2(ここでは50Hz)が設定される。ポンプ駆動部14は、この周波数設定部13で演算された周波数f2(=50Hz)の下でポンプ5を駆動する(S16)。したがって、この場合、ポンプ5の吐出量は、運転性能曲線P2上で配管損失曲線R2と交差するポンプ運転点cに対応した吐出量となり、処理槽2の必要送水量Qreqよりも少しだけ多めの吐出量となる。
【0039】
以降、同様にして、S17〜S23までの処理が繰り返され、流量調整槽3の水位低下に伴いポンプ運転点は、d→e→fと移動して行き、ポンプ運転点が配管損失曲線R4と交差するポンプ運転点fに到達し、流量調整槽3の水位が低下してその下限となるポンプ停止点L4を越えると(S23)、フロートスイッチSW4の検出出力がレベル反転するので、ポンプ駆動が停止される(S24)。
【0040】
以上のように、この実施の形態1では、従来のように、計量槽や電磁流量計を設置しなくても流量調整槽3から処理槽2への必要送水量に相当する必要吐出量Qreqの汚水をポンプ5で確実に移送することができ、また、ポンプ5は流量調整槽3の水位が低下して停止水位L4に近付いた状態で必要送水量Qreqを確保できるだけの運転性能があればよいので、従来のような高揚程仕様の過大な性能のポンプは不要であり、システム全体としてコストダウンを図ることができる。しかも、ポンプ5による流量調整槽3から処理槽2への送水が無駄なく行われるので、従来に比べて省エネルギ効果が得られる。
【0041】
しかも、この実施の形態1では、水位検出手段を複数のフロートスイッチSW1〜SW4で構成し、制御手段7により各フロートスイッチSW1〜SW4による水位検出信号の変化に応じてポンプ5の運転性能を段階的に切替えるので、ポンプ5の吐出量は、処理槽2の処理能力に適合した必要送水量に対してある程度のばらつきが発生するものの、処理槽2の必要送水量に近似した吐出量を確保することができ、処理槽2の負荷を常に一定に保つことが可能で、かつ安価なフロートスイッチを使用して実施することができる。
【0042】
なお、この実施の形態1では、流量調整槽3の深さ方向に沿ってポンプ始動点L1とポンプ停止点L4をそれぞれ検出するフロートスイッチSW1,SW4を配置するとともに、フロートスイッチSW1,SW4の間に、2つのフロートスイッチSW2,SW3を配置(すなわち、合計4つのフロートスイッチを配置)し、これに対応して4つの運転性能曲線と配管損失曲線とをそれぞれ設定しているが、本発明はこのような数に限定されるものではなく、3つ以上のフロートスイッチを設け、各フロートスイッチの検出出力に対応して5つ以上の運転性能曲線や配管損失曲線をそれぞれ設定することも可能である。
【0043】
[実施の形態2]
図6は本発明の実施の形態2における汚水処理システムの構成を示す構成図であり、図1に示した実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0044】
この実施の形態2における特徴は、水位検出手段が流量調整槽3内の水位を連続的に検出する圧力式水位計6から構成されており、また、制御手段7は、圧力式水位計6からの水位検出信号に基づいてポンプ5の運転性能を連続的に変化させるように構成されている。
【0045】
すなわち、この制御手段7は、後に詳述するように、流量調整槽3の水位に応じてポンプ5の運転周波数(実際にはポンプ5を駆動するポンプモータの駆動周波数)をインバータ制御することで、ポンプ5の運転性能を連続的に切替えることにより、常に、処理槽2へ一定の必要送水量が移送されるように制御を行うものであって、パラメータ設定入力部8、全揚程算出部9、およびインバータ部10を有する。
【0046】
図7はポンプ5の運転性能特性図であり、横軸はポンプ5の吐出量Qを、縦軸はポンプ5の全揚程Hをそれぞれ示している。ここで、パラメータ設定入力部8は、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、圧力式水位計6で得られる水位検出信号に対応したポンプ5の運転性能曲線(図7の符号f1とf4で示す2つの曲線)、および該圧力式水位計6で得られる水位検出信号で検出される水位L1とL4に対応した配管損失曲線(図7の符号R1とR4で示す2つの曲線)をそれぞれ設定入力するものである。また、曲線R1とR4は、流量調整槽3の該圧力式水位計6の水位検出信号に対応する水位のレベルL1とL4に応じた実揚程や配管等の摩擦損失から算出され、曲線f1とf4は、インバータにより周波数を変化させた時のポンプ5の運転性能曲線であり、実測運転性能を元に、上述の式(1),(2)から算出したりするなどして決定することもできる。
【0047】
全揚程算出部9は、パラメータ設定入力部8で設定入力された上記のポンプ5の必要吐出量Qreq、図9に示す圧力式水位計6で得られる水位検出信号で検出される流量調整槽3の水位L1とL4に対応した、図8に示すポンプ5の実揚程H1とH2、および図7に示す配管損失曲線R1とR4に基づいて、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出するものである。
【0048】
従って、図7に示すように、流量調整槽3のポンプ始動点L1とポンプ停止点L4、上記の配管損失曲線R1,R4、およびポンプ5の必要吐出量Qreqが分かれば、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での流量調整槽3のポンプ始動点L1とポンプ停止点L4にそれぞれ対応した全揚程H1,H4が求まる。そして、全揚程算出部9には、図8に示すように両点H1,H4を結んで得られる特性曲線が予め登録されている。更に、圧力式水位計6で流量調整槽3の水位Lが検出された場合、この図8の関係を用いて、水位Lに対応したポンプ5の全揚程Hが算出される。
【0049】
インバータ部10は、全揚程算出部9で算出されるポンプ5の全揚程Hの値に基づいて、この全揚程Hを確保するのに必要となる圧力式水位計6で得られる水位検出信号の電流値を流量調整槽3の水位に変換する信号変換部12、この信号変換部12で変換された流量調整槽3内の検出水位に対応したポンプ5の運転周波数fを設定する周波数設定部13、およびこの周波数設定部13で設定された運転周波数fの下でポンプ5を駆動するポンプ駆動部14からなる。
【0050】
この場合の上記の信号変換部12は、図9に示すように、圧力式水位計6で得られる水位検出信号から流量調整槽3内の水位を検知し、図8に示すように、ポンプ5の全揚程Hと、周波数設定部13には、図10に示すように、圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値Iに対応したポンプ5の運転周波数fの関係を示す曲線が予め登録されており、信号変換部12で実揚程に対応した圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値Iが求まると、これに対応したポンプ5の運転周波数fが決定される。
【0051】
次に、上記構成を有する汚水処理システムの動作、特にポンプ5の駆動制御動作を主体に、図7〜図10に示す特性図、および図11に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図11に示すフローチャートにおいて、符号Sは各処理ステップを意味する。
【0052】
まず、パラメータ設定入力部8により、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、および流量調整槽3の水位の上限となるポンプ始動点L1と水位の下限となるポンプ停止点L4に対応した配管損失曲線R1,R4をそれぞれ設定入力しておく。
【0053】
ポンプ電源がオンされた後(S50)、圧力式水位計6でポンプ始動点L1の水位が検出されると(S51)、ポンプ5は最初にf1(ここでは45Hz)の運転周波数で運転が開始される(S52)。これに伴い、流量調整槽3の水位が次第に低下する(S53)。
【0054】
ここで、全揚程算出部9は、圧力式水位計6で水位検出信号が得られた場合、この水位検出信号に基づき、図8に示す関係を用いて、必要吐出量Qreqの下での流量調整槽3の水位Lに対応したポンプ5の全揚程Hを算出する(S54)。例えば、ここでは必要吐出量Qreqの下での流量調整槽3の水位がLxとして検出されると、この水位Lxに対応したポンプ5の全揚程Hxが算出される。
【0055】
続いて、インバータ部10の信号変換部12は、図9に示す関係を用いて、全揚程算出部9で算出された全揚程Hxに対応した圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値を決定する。例えば、ここでは全揚程Hxに対応した圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値がIxであったとする。
【0056】
次いで、周波数設定部13は、図10に示す関係を用いて、信号変換部12で得られた圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値Ixに対応したポンプ5の運転周波数fxを設定する(S55)。したがって、ポンプ5は、必要吐出量Qreqの下でポンプ5の全揚程Hxを確保するために必要な運転周波数fxで運転される(S56)ことになり、流量調整槽3から処理槽2へ必要送水量に相当する必要吐出量Qreqの汚水を確実に移送することができる。
【0057】
そして、流量調整槽3の水位が次第に低下して(S57)、その下限となるポンプ停止点L4よりも水位が低下したことが圧力式水位計6で検出されると(S58)、ポンプ駆動が停止される(S59)。
【0058】
以上のように、この実施の形態2では、水位検出手段を圧力式水位計6で構成し、制御手段7により圧力式水位計6からの水位検出信号に応じてポンプ5の運転性能を連続的に変化させるようにしているので、流量調整槽3の水位変動に対応し、常に処理槽2の処理能力に適合した一定の必要送水量を、実施の形態1の場合よりも一層安定して移送することができ、処理槽2の負荷を常に一定に保つことが可能になる。
【0059】
なお、上記の実施の形態1,2では、水位検出手段としてのフロートスイッチSW1〜SW4、あるいは、圧力式水位計6からの検出信号に応じてポンプ5の運転性能を変化させるための手法として、ポンプ5の運転周波数fを変化させるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポンプモータについて、その定格電流の範囲内で、水位検出手段からの検出信号に応じてポンプモータの駆動電流の大きさを制御することで、ポンプ5の運転性能を変化させることも可能である。
【0060】
すなわち、図2に示したポンプ5の各運転性能曲線P1〜P4の下では、ポンプ5の運転周波数がf1,f2,f3,f4(ここでは45Hz,50Hz,55Hz,60Hz)とそれぞれ一定であるが、図12に示すように、ポンプモータの出力をフル活用(吐出量変化にかからず常に略定格電力の下で運転)した場合のポンプ性能の負荷率を100%とし、該負荷率を100%、90%、80%、…というように、予めポンプ5の負荷率を変えた運転性能曲線P1〜P4を設定し、フロートスイッチSW1〜SW4あるいは圧力式水位計6からの検出出力に応じて、これらの運転性能曲線P1〜P4を選択することでポンプ5の運転性能を変化させるようにしてもよい。
このように構成した場合、ポンプ5の吐出量の小さい領域から吐出量の大きい領域までの広い範囲にわたって、モータ出力を十分に活用することが可能で、高揚程性能を実現できる利点がある。
【0061】
上記実施の形態1,2では、汚水処理を処理するための汚水処理システムを例にとって説明したが、本発明は、汚水処理以外の水処理システム(例えば、上水用の水処理システム)にも適用することが可能である。
【0062】
また、本発明はさらにその他の点においても、上記の実施の形態1,2に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において各種の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
2 処理槽
3 流量調整槽
5 ポンプ
S W1〜SW4…フロートスイッチ(水位検出手段)
6 圧力式水位計(水位検出手段)
7 制御手段
8 パラメータ設定部
9 全揚程算出部
10 インバータ部
11 運転性能曲線選定部
12 信号変換部
13 周波数設定部
14 ポンプ駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理を行うための処理槽の前段に、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して処理槽への移送量を調整する流量調整槽を配備した水処理施設において、流量調整槽から処理槽へ定量的に水を移送するために用いられる水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理施設では、被処理水の処理(例えば、汚水の浄化処理)を行う処理槽の前段に、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して処理槽への移送量を調整する流量調整槽を配備した構成が広く採用されている。
【0003】
このような構成の水処理施設において、効率的な浄化処理を実現するためには、処理槽における浄化処理の負荷を考慮して、流量調整槽から処理槽に対して常に適切な量の被処理水をポンプで定量的に移送することにより、処理槽の負荷を常に一定に保つようにすることが不可欠な要件とされている。
【0004】
ところで、上記の流量調整槽は、流入する水量の変動に応じてその水位が常に変動する。そして、流量調整槽の水位が変動すると、それに応じて処理槽に被処理水を移送するポンプの吐出量も変動するため、処理槽へ被処理水を定量的に移送することができなくなる。そしてその結果、処理槽の負荷にばらつきが生じ、安定した処理を行うことができなくなるという問題点がある。
【0005】
すなわち、ポンプの特性として、吐出量と全揚程の関係を示す周知の運転性能曲線からも分かるように、流量調整槽の水位が変動すると、これに伴いポンプの実揚程が変動するため、ポンプの吐出量も変動し、その結果、処理槽の負荷を考慮した適切な水量の範囲を超えた、過剰の被処理水が流量調整槽から処理槽に送水されてしまったり、適切な水量の範囲を下回る量の被処理水しか流量調整槽から処理槽に送水されない場合が生じることがある。
以下、処理槽の負荷を考慮して処理槽に移送すべき適切な水量を必要送水量と、また、この必要送水量に相当するポンプの吐出量を必要吐出量と称する。
【0006】
このような不具合が生じるのを回避するための方策として、従来技術では、流量調整槽と処理槽との間に計量槽と呼ばれる一種のバッファの役目を果たす槽を介在させるとともに、流量調整槽の水位変動があってもそれに影響されずに常に必要送水量以上の吐出量を確保できる大きな性能をもつポンプを設け、流量調整槽から計量槽に常に必要送水量以上の被処理水(汚水)を移送し、処理槽の処理能力を越える余分な被処理水は流量調整槽へ戻すことにより、計量槽から処理槽に向けて常に適切な量の被処理水が移送されるようにした水処理システム(汚水処理システム)が使用されている(例えば、下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−241579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1記載の従来の水処理システムでは、流量調整槽と処理槽との間に計量槽を配置する必要があるので、計量槽の設置のために余分な設備コストがかかるとともに、流量調整槽から計量槽には、常に処理槽に送水すべき必要送水量以上の余分な水を移送する必要があるため、送水のために無駄なエネルギが消費される。
しかも、流量調整槽の水位変動に影響されずに常に必要送水量を越えた十分大きな吐出量を確保できるだけの高揚程仕様の大きな性能をもつポンプを設ける必要があるため、ポンプのコストも高くなるという問題がある。
【0009】
なお、計量槽を省略するとともに、ポンプの回転速度を制御するインバータと、ポンプの吐出量を実測する電磁流量計とを併用し、電磁流量計でポンプの吐出量を常に計測しながら、その計測信号に基づいてインバータの回転速度をフィードバック制御することにより、流量調整槽の水位変動に影響されずに常に処理槽に安定して必要送水量が移送されるようなポンプ運転をする方法も考えられるが、この場合には、高価な電磁流量計の設置が必要となるので、システム全体のコストダウンを図る上で未だ不十分である。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、計量槽や電磁流量計を設置する必要がなく、かつ、従来のような過大な性能をもつポンプも不要で、システム全体としてコストダウンを図ることが可能で、しかも、ポンプによる流量調整槽から処理槽への送水を無駄なく行って、省エネルギを図ることが可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、水処理を行うための処理槽の前段に、外部から流入する水を一時的に貯留して前記処理槽への移送量を調整する流量調整槽が配備されるとともに、流量調整槽から処理槽へ被処理水を移送するポンプが設けられている水処理システムにおいて、次の構成を採用している。
【0012】
すなわち、請求項1記載の発明は、
水処理を行うための処理槽と、
前記処理槽の前段に設けられた、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して前記処理槽への移送量を調整するための流量調整槽と、
前記流量調整槽から前記処理槽へ被処理水を移送するためのポンプと、
前記流量調整槽の水位を検出するための水位検出手段と、
前記水位検出手段からの検出出力に基づいて前記ポンプの動作を制御する制御手段と
を備えた水処理システムであって、
前記制御手段は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記処理槽の処理能力に適合した必要な吐出量の下での全揚程を求め、この全揚程の大きさに応じて前記ポンプの運転性能を変化させることにより、単位時間当たりに略一定量の被処理水が前記処理槽に移送されるように前記ポンプの動作を制御するように構成されていること
を特徴としている。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記水位検出手段は、前記流量調整槽の深さ方向に沿って段階的に配備された複数のフロートスイッチからなり、また、前記制御手段は、各フロートスイッチによる水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を段階的に切替えるものである、ことを特徴としている。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、前記水位検出手段は、前記流量調整槽内の水位を連続的に検出する圧力式水位計からなり、また、前記制御手段は、前記圧力式水位計からの水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を連続的に変化させるものである、ことを特徴としている。
【0015】
また、請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成において、前記制御手段による前記ポンプの運転性能を変化させる制御は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記ポンプの運転周波数をインバータ部により変化させる制御である、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明(請求項1)によれば、計量槽や電磁流量計を設置しなくても流量調整槽から処理槽へ一定の必要量の被処理水を確実に移送することができ、またポンプ性能としては流量調整槽の水位が低下してポンプ停止水位に近付いた状態で必要送水量を確保できるだけの運転性能があればよく、高揚程仕様の過大な性能のポンプは不要であり、システム全体としてコストダウンを図ることができる。
しかも、従来のように必要量以上の余分な被処理水を常にポンプで移送する必要がなく、ポンプによる流量調整槽から処理槽への送水が無駄なく行われるので、従来に比べて省エネルギ効果が得られる。
【0017】
特に、請求項2記載のように、水位検出手段を複数のフロートスイッチで構成し、制御手段により各フロートスイッチによる水位検出信号に応じてポンプの運転性能を段階的に切替える場合、流量調整槽の水位変動に伴い、ポンプの吐出量は処理槽への必要送水量に対してある程度のばらつきが発生するものの、必要送水量に近似した一定の吐出量を確保することができるので、処理槽の負荷を常に一定に保つことが可能で、かつ安価なフロートスイッチを使用して実施することができる。
【0018】
また、請求項3記載のように、水位検出手段を圧力式水位計で構成し、制御手段により圧力式水位計からの水位検出信号に基づいてポンプの運転性能を連続的に変化させる場合、流量調整槽の水位変動がある場合でも、常に処理槽へ一定の必要送水量を安定して移送することができ、処理槽の負荷を常に一定に保つことが可能となる。
【0019】
また、請求項4記載のように、水位検出手段で検出される水位に応じてポンプの運転周波数をインバータ部で変化させてポンプの運転性能を調整する制御を行えば、比較的簡単なシステム構成によってその制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における水処理システム(汚水処理システム)の構成を示す構成図である。
【図2】同システムのポンプの運転性能を示す特性図である。
【図3】流量調整槽の各水位に対応したフロートスイッチの動作を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1における汚水処理システムの動作説明に供するフローチャートである。
【図5】ポンプの運転性能曲線に対応するポンプの運転周波数との関係を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態2における汚水処理システムの構成を示す構成図である。
【図7】同システムのポンプの運転性能を示す特性図である。
【図8】流量調整槽の各水位とそれに対応したポンプの全揚程との関係を示す特性図である。
【図9】流量調整槽内に設置された圧力式水位計の検出信号電流値とそれに対応した流量調整槽内の水位との関係を示す特性図である。
【図10】圧力式水位計の検出信号電流値とポンプの運転周波数との関係を示す特性図である。
【図11】本発明の実施の形態2における水処理システムの動作説明に供するフローチャートである。
【図12】ポンプの運転性能を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を示して、本発明の特徴をさらに詳しく説明する。
[実施の形態1]
この実施の形態1では、水処理システムとして、汚水を浄化処理するための汚水処理システムを例にとって説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る汚水処理システムの構成を示す構成図である。
【0022】
この実施の形態1の汚水処理システムは、汚水の浄化処理を行う処理槽2の前段に、外部から流入する汚水を一時的に貯留して処理槽2への移送量を調整する流量調整槽3が配備されている。
【0023】
そして、流量調整槽3には、当該槽3から処理槽2へ汚水を移送する電動式のポンプ5が設けられるとともに、当該槽3の水位を検出する水位検出手段が設けられている。
【0024】
この場合の水位検出手段として、流量調整槽3の深さ方向に沿って段階的に複数(ここでは4つ)のフロートスイッチSW1〜SW4が配備されている。すなわち、流量調整槽3の水位の上限としてポンプ始動点を検出するためのフロートスイッチSW1と、流量調整槽3の水位の下限としてポンプ停止点を検出するためのフロートスイッチSW4とを備えるとともに、さらにこれら両フロートスイッチSW1,SW4の間に上下2つのフロートスイッチSW2,SW3が配置されている。
そして、各フロートスイッチSW1〜SW4の設置箇所に対応する流量調整槽3の各水位をL1〜L4とすると、各フロートスイッチSW1〜SW4は、各水位L1〜L4に到達した時点でオンからオフあるいはオフからオンへレベル反転する水位検出信号を出力する。
【0025】
また、この実施の形態1の汚水処理システムは、各フロートスイッチSW1〜SW4からの検出出力に基づいてポンプ5の動作を制御する制御手段7を有する。すなわち、この制御手段7は、後に詳述するように、流量調整槽3の水位に応じてポンプ5の運転周波数(実際にはポンプ5を駆動するポンプモータの駆動周波数)をインバータ制御して、ポンプ5の運転性能を段階的に切替えることにより、常に、処理槽2へ一定の必要送水量が移送されるように制御を行うものであって、パラメータ設定入力部8、全揚程算出部9、およびインバータ部10を有する。
【0026】
図2はポンプ5の運転性能特性図であり、横軸はポンプ5の吐出量Qを、縦軸はポンプ5の全揚程Hをそれぞれ示している。
ここで、パラメータ設定入力部8は、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、各フロートスイッチSW1〜SW4の検出出力に対応したポンプ5の運転性能曲線(図2の符号P1〜P4で示す4つの各曲線)、および各フロートスイッチSW1〜SW4で検出される各水位L1〜L4に対応した配管損失曲線(図2の符号R1〜R4で示す4つの各曲線)をそれぞれ設定入力するものである。また、曲線R1〜R4は、流量調整槽3の各フロートスイッチSW1〜SW4の設置箇所に対応する各水位のレベルL1〜L4に応じた実揚程や配管等の摩擦損失から算出され、曲線P1〜P4は、インバータにより周波数を変化させた時のポンプ5の運転性能曲線であり、実測運転性能を元に以下の式(1),(2)から算出したりするなどして決定することもできる。
【0027】
H2=H1×(fx/f0)2 ……(1)
Q2=Q1×(fx/f0) ……(2)
H1:揚程(実測元データ)
Q1:流量(実測元データ)
H2:揚程(計算データ)
Q2:流量(計算データ)
f0:実測時周波数
fx:変化時周波数
【0028】
また、全揚程算出部9は、パラメータ設定入力部8で設定入力された上記のポンプ5の必要吐出量Qreq、各フロートスイッチSW1〜SW4で検出される流量調整槽3の各水位L1〜L4に対応したポンプ5の実揚程Hr、および配管損失曲線R1〜R4に基づいて、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出するものである。
【0029】
すなわち、全揚程算出部9には、図3に示すように、各フロートスイッチSW1〜SW4からの検出信号出力のオンからオフあるいはオフからオンへのレベル反転の有無によって流量調整槽3の現在の水位がL1〜L4の内のどのレベルにあるかを判定するためのテーブルが予め登録されており、図3に示す関係を用いて、各水位L1〜L4に対応したポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出する。
【0030】
インバータ部10は、全揚程算出部9で算出されるポンプ5の全揚程Hの値に基づいて、この全揚程Hを確保可能なポンプ5の各運転性能曲線P1〜P4の内の一つを選定する運転性能曲線選定部11、この運転性能曲線選定部11で選定された一つの運転性能曲線に対応したポンプ5の運転周波数fを設定する周波数設定部13、およびこの周波数設定部13で設定された運転周波数fの下でポンプ5を駆動するポンプ駆動部14からなる。
【0031】
次に、上記構成を有する汚水処理システムの動作、特にポンプ5の駆動制御動作を主体に、図2に示すポンプ5の運転性能特性図、および図4に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図4に示すフローチャートにおいて、符号Sは各処理ステップを意味する。
【0032】
予めパラメータ設定入力部8により、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、ポンプ5の運転性能曲線(図2の符号P1〜P4で示す各曲線)、各運転性能曲線P1〜P4に対応するポンプ5の運転周波数f1〜f4、および各フロートスイッチの検出出力に対応した配管損失曲線(図2の符号R1〜R4の各曲線)をそれぞれ設定入力しておく。
【0033】
ポンプ電源がオンされた後(S10)、全揚程算出部9は、各フロートスイッチの検出出力に基づいて判定される流量調整槽3の水位に対応したポンプ5の実揚程Hr、パラメータ設定入力部8で設定された上記の配管損失曲線R1〜R4、およびポンプ5の必要吐出量Qreqに基づいて、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出する。
【0034】
すなわち、流量調整槽3に汚水が流入し、例えば流量調整槽3の水位がその上限となるポンプ始動点L1を越えた場合(S11)、その時点でフロートスイッチSW1の検出出力がレベル反転するので、そのポンプ始動点L1の水位に対応したポンプ5の実揚程Hr1を求め、さらに、この実揚程Hr1を始点とする配管損失曲線(図2の符号R1の曲線)とポンプ5の必要吐出量Qreqとから、この必要吐出量Qreqの下でのポンプ5の全揚程(図2の符号H1で示す点)を算出する。
【0035】
次いで、インバータ部10の運転性能曲線選定部11は、全揚程算出部9で算出されたポンプ5の全揚程H1の値に基づいて、この全揚程H1を確保可能なポンプ5の最小の運転性能曲線を選定する。この場合、全揚程H1を確保可能なポンプ5の最小の運転性能曲線はP1であるので、この運転性能曲線P1が選定される。
【0036】
続いて、周波数設定部13は、運転性能曲線選定部11で選定された運転性能曲線P1に対応したポンプ5の運転周波数を設定する。すなわち、図5に示すように、各運転性能曲線P1〜P4に対応するポンプ5の運転周波数f1〜f4は予め決まっているので、ここでは運転性能曲線P1に対応するポンプ5の運転周波数f1(ここでは45Hz)が設定される。ポンプ駆動部14は、この周波数設定部13で設定された運転周波数f1(=45Hz)の下でポンプ5を駆動する(S12)。したがって、この場合、ポンプ5の吐出量は、運転性能曲線P1上で配管損失曲線R1と交差するポンプ運転点aに対応した吐出量となり、処理槽2の必要送水量Qreqよりも少しだけ多めの吐出量となる。
【0037】
この状態からポンプ運転が継続されると、流量調整槽3の水位が次第に低下し(S13)、これに伴ってポンプ5の実揚程も次第に大きくなるため、最大吐出量を確保できるポンプ運転点は、ポンプ5の運転性能曲線P1に沿って符号aに示す位置から符号bに示す位置に向けて次第に移動していく(S14)。そして、ポンプ運転点が配管損失曲線R2と交差するポンプ運転点bに到達し、流量調整槽3の水位が符号L2で示すレベルに到達すると(S15)、フロートスイッチSW2の検出出力がレベル反転するため、全揚程算出部9は、その水位L2に対応したポンプ5の実揚程Hr2を求め、さらに、この実揚程Hr2を始点とする配管損失曲線(図2の符号R2の曲線)とポンプ5の必要吐出量Qreqとから、この必要吐出量Qreqの下でのポンプ5の全揚程(図2の符号H2で示す点)を算出する。
【0038】
次いで、インバータ部10の運転性能曲線選定部11は、全揚程算出部9で算出されたポンプ5の全揚程H2の値に基づいて、この全揚程H2を確保可能なポンプ5の最小の運転性能曲線P2を選定する。続いて、周波数設定部13は、運転性能曲線選定部11で選定された運転性能曲線P2に対応したポンプ5の運転周波数f2(ここでは50Hz)が設定される。ポンプ駆動部14は、この周波数設定部13で演算された周波数f2(=50Hz)の下でポンプ5を駆動する(S16)。したがって、この場合、ポンプ5の吐出量は、運転性能曲線P2上で配管損失曲線R2と交差するポンプ運転点cに対応した吐出量となり、処理槽2の必要送水量Qreqよりも少しだけ多めの吐出量となる。
【0039】
以降、同様にして、S17〜S23までの処理が繰り返され、流量調整槽3の水位低下に伴いポンプ運転点は、d→e→fと移動して行き、ポンプ運転点が配管損失曲線R4と交差するポンプ運転点fに到達し、流量調整槽3の水位が低下してその下限となるポンプ停止点L4を越えると(S23)、フロートスイッチSW4の検出出力がレベル反転するので、ポンプ駆動が停止される(S24)。
【0040】
以上のように、この実施の形態1では、従来のように、計量槽や電磁流量計を設置しなくても流量調整槽3から処理槽2への必要送水量に相当する必要吐出量Qreqの汚水をポンプ5で確実に移送することができ、また、ポンプ5は流量調整槽3の水位が低下して停止水位L4に近付いた状態で必要送水量Qreqを確保できるだけの運転性能があればよいので、従来のような高揚程仕様の過大な性能のポンプは不要であり、システム全体としてコストダウンを図ることができる。しかも、ポンプ5による流量調整槽3から処理槽2への送水が無駄なく行われるので、従来に比べて省エネルギ効果が得られる。
【0041】
しかも、この実施の形態1では、水位検出手段を複数のフロートスイッチSW1〜SW4で構成し、制御手段7により各フロートスイッチSW1〜SW4による水位検出信号の変化に応じてポンプ5の運転性能を段階的に切替えるので、ポンプ5の吐出量は、処理槽2の処理能力に適合した必要送水量に対してある程度のばらつきが発生するものの、処理槽2の必要送水量に近似した吐出量を確保することができ、処理槽2の負荷を常に一定に保つことが可能で、かつ安価なフロートスイッチを使用して実施することができる。
【0042】
なお、この実施の形態1では、流量調整槽3の深さ方向に沿ってポンプ始動点L1とポンプ停止点L4をそれぞれ検出するフロートスイッチSW1,SW4を配置するとともに、フロートスイッチSW1,SW4の間に、2つのフロートスイッチSW2,SW3を配置(すなわち、合計4つのフロートスイッチを配置)し、これに対応して4つの運転性能曲線と配管損失曲線とをそれぞれ設定しているが、本発明はこのような数に限定されるものではなく、3つ以上のフロートスイッチを設け、各フロートスイッチの検出出力に対応して5つ以上の運転性能曲線や配管損失曲線をそれぞれ設定することも可能である。
【0043】
[実施の形態2]
図6は本発明の実施の形態2における汚水処理システムの構成を示す構成図であり、図1に示した実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0044】
この実施の形態2における特徴は、水位検出手段が流量調整槽3内の水位を連続的に検出する圧力式水位計6から構成されており、また、制御手段7は、圧力式水位計6からの水位検出信号に基づいてポンプ5の運転性能を連続的に変化させるように構成されている。
【0045】
すなわち、この制御手段7は、後に詳述するように、流量調整槽3の水位に応じてポンプ5の運転周波数(実際にはポンプ5を駆動するポンプモータの駆動周波数)をインバータ制御することで、ポンプ5の運転性能を連続的に切替えることにより、常に、処理槽2へ一定の必要送水量が移送されるように制御を行うものであって、パラメータ設定入力部8、全揚程算出部9、およびインバータ部10を有する。
【0046】
図7はポンプ5の運転性能特性図であり、横軸はポンプ5の吐出量Qを、縦軸はポンプ5の全揚程Hをそれぞれ示している。ここで、パラメータ設定入力部8は、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、圧力式水位計6で得られる水位検出信号に対応したポンプ5の運転性能曲線(図7の符号f1とf4で示す2つの曲線)、および該圧力式水位計6で得られる水位検出信号で検出される水位L1とL4に対応した配管損失曲線(図7の符号R1とR4で示す2つの曲線)をそれぞれ設定入力するものである。また、曲線R1とR4は、流量調整槽3の該圧力式水位計6の水位検出信号に対応する水位のレベルL1とL4に応じた実揚程や配管等の摩擦損失から算出され、曲線f1とf4は、インバータにより周波数を変化させた時のポンプ5の運転性能曲線であり、実測運転性能を元に、上述の式(1),(2)から算出したりするなどして決定することもできる。
【0047】
全揚程算出部9は、パラメータ設定入力部8で設定入力された上記のポンプ5の必要吐出量Qreq、図9に示す圧力式水位計6で得られる水位検出信号で検出される流量調整槽3の水位L1とL4に対応した、図8に示すポンプ5の実揚程H1とH2、および図7に示す配管損失曲線R1とR4に基づいて、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での全揚程Hを算出するものである。
【0048】
従って、図7に示すように、流量調整槽3のポンプ始動点L1とポンプ停止点L4、上記の配管損失曲線R1,R4、およびポンプ5の必要吐出量Qreqが分かれば、ポンプ5の必要吐出量Qreqの下での流量調整槽3のポンプ始動点L1とポンプ停止点L4にそれぞれ対応した全揚程H1,H4が求まる。そして、全揚程算出部9には、図8に示すように両点H1,H4を結んで得られる特性曲線が予め登録されている。更に、圧力式水位計6で流量調整槽3の水位Lが検出された場合、この図8の関係を用いて、水位Lに対応したポンプ5の全揚程Hが算出される。
【0049】
インバータ部10は、全揚程算出部9で算出されるポンプ5の全揚程Hの値に基づいて、この全揚程Hを確保するのに必要となる圧力式水位計6で得られる水位検出信号の電流値を流量調整槽3の水位に変換する信号変換部12、この信号変換部12で変換された流量調整槽3内の検出水位に対応したポンプ5の運転周波数fを設定する周波数設定部13、およびこの周波数設定部13で設定された運転周波数fの下でポンプ5を駆動するポンプ駆動部14からなる。
【0050】
この場合の上記の信号変換部12は、図9に示すように、圧力式水位計6で得られる水位検出信号から流量調整槽3内の水位を検知し、図8に示すように、ポンプ5の全揚程Hと、周波数設定部13には、図10に示すように、圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値Iに対応したポンプ5の運転周波数fの関係を示す曲線が予め登録されており、信号変換部12で実揚程に対応した圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値Iが求まると、これに対応したポンプ5の運転周波数fが決定される。
【0051】
次に、上記構成を有する汚水処理システムの動作、特にポンプ5の駆動制御動作を主体に、図7〜図10に示す特性図、および図11に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図11に示すフローチャートにおいて、符号Sは各処理ステップを意味する。
【0052】
まず、パラメータ設定入力部8により、処理槽2への必要送水量に相当するポンプ5の必要吐出量Qreq、および流量調整槽3の水位の上限となるポンプ始動点L1と水位の下限となるポンプ停止点L4に対応した配管損失曲線R1,R4をそれぞれ設定入力しておく。
【0053】
ポンプ電源がオンされた後(S50)、圧力式水位計6でポンプ始動点L1の水位が検出されると(S51)、ポンプ5は最初にf1(ここでは45Hz)の運転周波数で運転が開始される(S52)。これに伴い、流量調整槽3の水位が次第に低下する(S53)。
【0054】
ここで、全揚程算出部9は、圧力式水位計6で水位検出信号が得られた場合、この水位検出信号に基づき、図8に示す関係を用いて、必要吐出量Qreqの下での流量調整槽3の水位Lに対応したポンプ5の全揚程Hを算出する(S54)。例えば、ここでは必要吐出量Qreqの下での流量調整槽3の水位がLxとして検出されると、この水位Lxに対応したポンプ5の全揚程Hxが算出される。
【0055】
続いて、インバータ部10の信号変換部12は、図9に示す関係を用いて、全揚程算出部9で算出された全揚程Hxに対応した圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値を決定する。例えば、ここでは全揚程Hxに対応した圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値がIxであったとする。
【0056】
次いで、周波数設定部13は、図10に示す関係を用いて、信号変換部12で得られた圧力式水位計6で得られる水位検出信号電流値Ixに対応したポンプ5の運転周波数fxを設定する(S55)。したがって、ポンプ5は、必要吐出量Qreqの下でポンプ5の全揚程Hxを確保するために必要な運転周波数fxで運転される(S56)ことになり、流量調整槽3から処理槽2へ必要送水量に相当する必要吐出量Qreqの汚水を確実に移送することができる。
【0057】
そして、流量調整槽3の水位が次第に低下して(S57)、その下限となるポンプ停止点L4よりも水位が低下したことが圧力式水位計6で検出されると(S58)、ポンプ駆動が停止される(S59)。
【0058】
以上のように、この実施の形態2では、水位検出手段を圧力式水位計6で構成し、制御手段7により圧力式水位計6からの水位検出信号に応じてポンプ5の運転性能を連続的に変化させるようにしているので、流量調整槽3の水位変動に対応し、常に処理槽2の処理能力に適合した一定の必要送水量を、実施の形態1の場合よりも一層安定して移送することができ、処理槽2の負荷を常に一定に保つことが可能になる。
【0059】
なお、上記の実施の形態1,2では、水位検出手段としてのフロートスイッチSW1〜SW4、あるいは、圧力式水位計6からの検出信号に応じてポンプ5の運転性能を変化させるための手法として、ポンプ5の運転周波数fを変化させるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポンプモータについて、その定格電流の範囲内で、水位検出手段からの検出信号に応じてポンプモータの駆動電流の大きさを制御することで、ポンプ5の運転性能を変化させることも可能である。
【0060】
すなわち、図2に示したポンプ5の各運転性能曲線P1〜P4の下では、ポンプ5の運転周波数がf1,f2,f3,f4(ここでは45Hz,50Hz,55Hz,60Hz)とそれぞれ一定であるが、図12に示すように、ポンプモータの出力をフル活用(吐出量変化にかからず常に略定格電力の下で運転)した場合のポンプ性能の負荷率を100%とし、該負荷率を100%、90%、80%、…というように、予めポンプ5の負荷率を変えた運転性能曲線P1〜P4を設定し、フロートスイッチSW1〜SW4あるいは圧力式水位計6からの検出出力に応じて、これらの運転性能曲線P1〜P4を選択することでポンプ5の運転性能を変化させるようにしてもよい。
このように構成した場合、ポンプ5の吐出量の小さい領域から吐出量の大きい領域までの広い範囲にわたって、モータ出力を十分に活用することが可能で、高揚程性能を実現できる利点がある。
【0061】
上記実施の形態1,2では、汚水処理を処理するための汚水処理システムを例にとって説明したが、本発明は、汚水処理以外の水処理システム(例えば、上水用の水処理システム)にも適用することが可能である。
【0062】
また、本発明はさらにその他の点においても、上記の実施の形態1,2に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において各種の変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
2 処理槽
3 流量調整槽
5 ポンプ
S W1〜SW4…フロートスイッチ(水位検出手段)
6 圧力式水位計(水位検出手段)
7 制御手段
8 パラメータ設定部
9 全揚程算出部
10 インバータ部
11 運転性能曲線選定部
12 信号変換部
13 周波数設定部
14 ポンプ駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理を行うための処理槽と、
前記処理槽の前段に設けられた、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して前記処理槽への移送量を調整するための流量調整槽と、
前記流量調整槽から前記処理槽へ被処理水を移送するためのポンプと、
前記流量調整槽の水位を検出するための水位検出手段と、
前記水位検出手段からの検出出力に基づいて前記ポンプの動作を制御する制御手段と
を備えた水処理システムであって、
前記制御手段は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記処理槽の処理能力に適合した必要な吐出量の下での全揚程を求め、この全揚程の大きさに応じて前記ポンプの運転性能を変化させることにより、単位時間当たりに略一定量の被処理水が前記処理槽に移送されるように前記ポンプの動作を制御するように構成されていること
を特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記水位検出手段は、前記流量調整槽の深さ方向に沿って段階的に配備された複数のフロートスイッチからなり、また、前記制御手段は、各フロートスイッチによる水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を段階的に切替えるものである、ことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
前記水位検出手段は、前記流量調整槽内の水位を連続的に検出する圧力式水位計からなり、また、前記制御手段は、前記圧力式水位計からの水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を連続的に変化させるものである、ことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項4】
前記制御手段による前記ポンプの運転性能を変化させる制御は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記ポンプの運転周波数をインバータ部により変化させる制御である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水処理システム。
【請求項1】
水処理を行うための処理槽と、
前記処理槽の前段に設けられた、外部から流入する被処理水を一時的に貯留して前記処理槽への移送量を調整するための流量調整槽と、
前記流量調整槽から前記処理槽へ被処理水を移送するためのポンプと、
前記流量調整槽の水位を検出するための水位検出手段と、
前記水位検出手段からの検出出力に基づいて前記ポンプの動作を制御する制御手段と
を備えた水処理システムであって、
前記制御手段は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記処理槽の処理能力に適合した必要な吐出量の下での全揚程を求め、この全揚程の大きさに応じて前記ポンプの運転性能を変化させることにより、単位時間当たりに略一定量の被処理水が前記処理槽に移送されるように前記ポンプの動作を制御するように構成されていること
を特徴とする水処理システム。
【請求項2】
前記水位検出手段は、前記流量調整槽の深さ方向に沿って段階的に配備された複数のフロートスイッチからなり、また、前記制御手段は、各フロートスイッチによる水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を段階的に切替えるものである、ことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項3】
前記水位検出手段は、前記流量調整槽内の水位を連続的に検出する圧力式水位計からなり、また、前記制御手段は、前記圧力式水位計からの水位検出信号に基づいて前記ポンプの運転性能を連続的に変化させるものである、ことを特徴とする請求項1記載の水処理システム。
【請求項4】
前記制御手段による前記ポンプの運転性能を変化させる制御は、前記水位検出手段で検出される水位に応じて前記ポンプの運転周波数をインバータ部により変化させる制御である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−24073(P2013−24073A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157748(P2011−157748)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000150844)株式会社鶴見製作所 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000150844)株式会社鶴見製作所 (56)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]