説明

水処理施設の管理システム

【課題】膜を用いた水処理によって安定した水質および水量の水道水または再生水を供給するため、膜処理施設の設備機器の保守点検頻度設定支援を継続的に実施できる水処理施設の管理システムを提供することである。
【解決手段】診断手段220Dは、破断検出装置S20及び膜間差圧計S10による計測値と管理基準データベース250に格納された管理基準値を用いて膜処理施設の運転状態の異常を診断する。危険優先数評価手段220Bは、診断手段220Dによる診断結果および管理基準データベース250の情報を用いて設備機器の危険優先数を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
浄水施設・再生水製造施設などの水処理施設の管理システムに係り、特に、設備機器の不具合による水質や水量に対するリスクを評価し、そのリスクに基づいて各機器の保守点検手法および点検頻度の設定を支援する管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安全・安心な飲料水の供給が求められており、浄水場では高品質の水の安定供給が益々重要となっている。また、浄水膜の技術開発が進んでおり、大規模な処理場でも従来型の凝集沈殿プロセスに代わり、管理の容易な膜処理の導入が始まっている。一方、近年の渇水に対応するための技術として下水再生水の利用も進んでおり、用途別の水質基準が制定された。
【0003】
飲料水や再生水の安全・安心を向上させるための水質管理としては、運転条件を適正化することの他に、機器の故障による水質悪化や供給水量の低下を防止するための十分な機器管理が重要である。特に、浄水膜処理では水質や水量が機器の劣化や管理状態に依存する度合いが高いため、機器管理が非常に重要となる。
【0004】
各種プラントにおける機器のメンテナンス頻度や内容を設定する方法が提案されている。各種製品の保守診断に関し、所定の出荷先へ出荷された機器を母集団とし、機器の識別情報、故障発生時間情報等の設備保全情報に基づいて、母集団内における信頼性解析を行い、機器のメンテナンス時期の評価を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、原子力プラントにおいて、故障による影響度と発生確率を用いて、機器の保守点検手法と時期の設定を支援するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法で、過去の取得データを用いて構築したモデルを使い、任意の状態量予測および確率分布の評価を行っている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−327201号公報
【特許文献2】特開2004−240642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1記載のものでは、設定した型式の機器または部品に関してメンテナンス時期の設定を行い、製品としての信頼性を向上させることが可能である。しかし、水道水質管理において、水質や水量への影響が大きな機器を優先してメンテナンスしたい場合、特許文献1の方法ではメンテナンス対象の機器を決定するための優先順位付けはできないという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2では、影響度と発生確率を用いて優先順位は設定可能である。しかし、特許文献2は、原子力プラントに関するものであり、本願発明の対象である水処理においては、原水水質の変動や連続モニタリング可能な項目の制約から、精度の高いモデル計算は難しいものである。また、影響度は、多数の水質管理項目を考慮した方法とする必要がある。さらに、水道では、原水の水質変動や設備の更新に応じて定期的に水質管理体制を改善していく必要があるが、継続的な運用手段は述べられていない。
【0009】
本発明の目的は、膜を用いた水処理によって安定した水質および水量の水道水または再生水を供給するため、膜処理施設の設備機器の保守点検頻度設定支援を継続的に実施できる水処理施設の管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、膜を用いて原水を処理する浄水膜処理施設の維持管理を支援する水処理施設の管理システムであって、膜モジュールの破損の有無をモニタリングする破損検出手段と、膜間差圧をモニタリングする差圧検出手段と、前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測に関する情報を格納する浄水プロセスデータベースと、前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測項目の管理基準値を格納する管理基準データベースと、前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測値が前記管理基準データベースに格納された管理基準値の範囲を逸脱した際に提示する措置に関する情報を格納する改善措置データベースと、前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測値と前記管理基準データベースに格納された管理基準値を用いて膜処理施設の運転状態の異常を診断する診断手段と、前記診断手段による診断結果および前記管理基準データベースの情報を用いて設備機器の危険優先数を算出する危険優先数評価手段とを備えるようにしたものである。
かかる構成により、設備機器の故障発生に関するリスクを定量化でき、膜を用いた水処理によって安定した水質および水量の水道水または再生水を供給できるものとなる。
【0011】
(2)上記(1)において、好ましくは、設備機器の保守点検に関する情報を格納する保守点検データベースと、前記保守点検データベースに格納された情報を用いて、危険優先数の変化量から設備機器の保守点検頻度をガイダンスする保守点検頻度設定手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、設備機器の故障発生に関するリスクに基づいて、適切な保守点検体制を構築することができる。
【0012】
(3)上記(2)において、好ましくは、膜処理原水および/または膜処理水を対象とし、濁度,有機物,色度,残留塩素、粒子数のうち少なくとも1つの水質計測を行うセンサを備え、前記センサの計測値も用いて、前記診断手段,前記危険優先数評価手段,保守点検頻度設定手段は、それぞれ、前記診断,危険優先数評価および保守点検頻度設定を行うようにしたものである。
かかる構成により、水質の測定結果を膜処理設備の診断に利用できるため、故障の検出が容易となる。
【0013】
(4)上記(2)において、好ましくは、膜モジュールへ膜処理原水、逆洗水、洗浄用空気、薬液を供給するポンプのうち少なくとも1つのポンプの流量を測定するセンサを備え、前記センサの計測値も用いて、前記診断手段,前記危険優先数評価手段,保守点検頻度設定手段は、それぞれ、前記診断,危険優先数評価および保守点検頻度設定を行うようにしたものである。
かかる構成により、膜処理を行うため必要なポンプの故障の検出が容易となる。
【0014】
(5)上記(1)において、好ましくは、製造した水を使用する際の水質リスクおよび水量リスクを用いて影響度を評価し、この影響度を用いて危険優先数を評価する評価手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、リスクの高い水質項目に対する影響が大きな設備機器をより重要な管理対象として選定できる。
【0015】
(6)上記(1)において、好ましくは、ネットワークを介して複数の水処理施設を接続し、接続された水処理場における設備機器の保守に関する情報を用いて、設備機器の故障発生確率を評価し、この故障発生確率を用いて危険優先数を評価する評価手段を備えるようにしたものである。
かかる構成により、設備機器の故障に係るリスクの精度が向上し、より適正な管理対象を選定できる。
【0016】
(7)上記(1)において、好ましくは、下水処理水を原水とし、膜処理により再生水を製造する設備を対象とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、膜処理施設の設備機器の保守点検頻度設定支援を継続的に実施でき、膜を用いた水処理によって安定した水質および水量の水道水または再生水を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図1〜図9を用いて、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による管理システムを用いた水処理施設システムの構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態による管理システムを用いた水処理施設システムの構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態の水処理システムは、膜処理施設100と、管理サーバ200と、端末300と、ネットワークNWから構成されている。ここで、膜処理施設100としては、一例として膜処理による浄水プロセスの場合を示している。
【0020】
膜処理施設100は、河川・ダム・地下水などの水源から取水された原水WA1を、原水槽110、膜モジュール120、膜ろ過水槽130を経て上水WA2とし、需要家に供給する。
【0021】
原水WA1は、ポンプP1により原水槽110に送られる。原水槽110ではセンサS1により水質,流量,水温等を計測する。
【0022】
次に、原水は、ポンプP2により膜モジュール120へ送られる。膜モジュール120では、原水を有機または無機の材料から作られた膜によりフィルタする。通常の浄水処理に用いられている膜は、孔経が0.01〜10μm程度のMF膜や分格分子量が350から1000Da程度のNF膜であり、膜の種類によって濁質,有機物,コロイド等が除去される。センサS2は、膜モジュール120の流量を計測する。膜間差圧計S10は、膜モジュール120の差圧を測定する。膜破断検知装置S20は、膜ろ過水濁度を計測することで、膜モジュール120の破損を検知する。
【0023】
膜モジュール120は、一定のろ過時間経過後または差圧が所定値を越えた場合に、膜ろ過水槽130からポンプP3によって供給される水を用いて逆洗される。逆洗水は、排水処理槽150に送られる。逆洗水には、濁質,有機物,マンガン等のファウリング物質が高い濃度が含まれている。排水処理槽150では、これらの物質を濃縮し、浄水汚泥Dとして排出する。一方、比較的不純物濃度の低い上澄水は原水槽110に戻される。
【0024】
膜モジュール120でフィルタされた水は、膜ろ過水槽130に蓄えられる。膜ろ過水槽130では、消毒のために塩素注入機140から、残留塩素濃度が所定の値になるように塩素剤が注入される。センサS3は、膜処理および消毒処理がなされた水の水質を計測する。ここで、水質データとは、濁度,TOC(全有機炭素量),残留塩素などである。
【0025】
管理サーバ200は、例えばパーソナルコンピュータ等の計算機や計算機上のソフトウェアからなり、ネットワークNWを介してプロセスデータや水質データの受信を行い、また、端末300から日常点検結果に関する情報を取り込む。管理サーバ200が取り込むプロセスデータとしては、センサS1により計測された流量,水温等や、センサS2により計測された膜モジュール120の流量や、膜間差圧計S10により測定された膜モジュール120の差圧や、膜破断検知装置S20により計測された膜モジュール120の破損情報がある。また、水質データとしては、センサS1により計測された水質や、センサS3により計測された水質がある。さらに、入力されたデータと管理基準を用いた診断、および診断結果に応じた運転管理方法を出力する働きをする。また、管理サーバ200は、機器の故障に関するリスク評価および保守点検頻度を評価する働きをする。管理サーバ200の詳細構成については、図2を用いて後述する。
【0026】
端末300は、ネットワークNWに接続できるパーソナルコンピュータや携帯端末などで、管理サーバ200にアクセスし、膜処理施設100の点検結果の入力や管理サーバ200からの情報提供を受けるのに使用される。
【0027】
次に、図2を用いて、本実施形態による水処理施設の管理システムの構成について説明する。
図2は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの構成を示すブロック図である。
【0028】
本実施形態による水処理施設の管理システムは、管理サーバ200の中に構築される。管理サーバ200は、CPU210と、メモリ220と、データ入出力端末230と、浄水プロセスデータベース240と、管理基準データベース250と、改善措置データベース260と、保守点検データベース270と、トレーサビリティデータベース280と、ネットワークインターフェース(IF)290とを備えている。
【0029】
メモリ220には、データ収集手段220A,危険優先数評価手段220B,保守点検頻度設定手段220C,診断手段220Dおよび検索手段220Eとして機能するプログラムが記憶されており、CPU210は、このプログラムを実行して各種機能を動作させる。
【0030】
ネットワークインターフェース290は、ネットワークNWに接続された端末300および膜処理施設100の機器と情報を通信し、この結果、各種データベースには、ネットワークNWから送られてきた情報や、メモリ220に記憶されたプログラム群を実行して生成された情報、端末300とデータ入出力端末230から設定・入力された情報が格納される。
【0031】
浄水プロセスデータベース220には、ネットワークNW経由で送信されるプロセスデータが格納される。また、端末300とデータ入出力端末230から人手により設定・入力された膜処理施設100に関するプロセスデータや、水質試験データが格納される。
【0032】
管理基準データベース250には、端末300またはデータ入出力端末230から人手により設定・入力されるデータが格納される。格納されるデータとしては、機器の状態を診断するために用いる、水道施設のプロセス計測、水質計測、および保守点検結果の基準値を格納する。
【0033】
ここで、図3を用いて、本実施形態による水処理施設の管理システムの管理基準データベース250に格納される基準値を与える項目について説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの管理基準データベースに格納される基準値を与える項目を選定するためのFTA(フォールトツリー解析)の説明図である。
【0034】
例えば、「膜ろ過水濁度の急激な上昇」という現象が発生した場合、その原因として、「膜ろ過水濁度計の異常」や、「膜モジュールの異常」が考えられる。さらに、「膜ろ過水濁度計の異常」の原因としては、「濁度計の故障」,「サンプリング部の異常」が考えられる。また、「膜モジュールの異常」の原因としては、「膜の破断」,「シール不良」,「コネクタ破損」が考えられる。このようにしてFTAを実行し、図3の例では、例えば、「濁度計の故障」,「サンプリング部の異常」、「膜の破断」,「シール不良」,「コネクタ破損」が、基準値を与える項目として、管理基準データベース250に格納される。
【0035】
図2において、管理基準データベース250には、水道水に含まれ需要家に危害を与える原因物質に関するリスクが格納される。リスクを与える項目としては、本実施例では、水を摂取した場合、需要家に健康被害を及ぼす可能性がある物質に関わる項目、および水を利用する上での阻害要因となる可能性がある物質に関わる項目とする。
【0036】
水道の場合、健康被害の原因物質としては、水道の水質基準にある、ヒ素,カドミウム,水銀,鉛等の金属や、シアン化合物やトリクロロエチレン等の有害物質の他、クリプトスポリジウム等がある。一方、利用上の阻害としては、異臭味や着色がある。臭気の原因物質としては、ジェオスミンやクロラミンや、着色の原因物質としてはマンガンや有機物がある
リスクは、例えば発生頻度と重篤度の積から算出する。発生頻度としては、特定の地点における対象物質濃度が基準値を超えた回数を用いることができる。また、重篤度としては人の健康被害の程度や、利水障害が発生する範囲(人口)などから設定することができる。
【0037】
また、図2に示す改善措置データベース280には、診断手段220Bによって機器の状態が異常と診断された場合に、端末300およびデータ入出力端末230へ提示する改善措置の内容が、各機器の診断項目に関連付けて格納されている。これらの出力や提示内容のデータは、端末端末300またはデータ入出力端末230から人手により設定・入力される。
【0038】
さらに、保守点検データベース270には、膜処理施設100における保守点検対象の機器,項目,頻度,日時および結果が格納される。また、保守点検データベース270には、危険優先数評価手段220Bのための人手による入力情報と、評価結果および保守点検頻度設定手段220Cの設定結果を格納する。
【0039】
ここで、図4を用いて、本実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検データベース270に格納される人手による入力情報について説明する。
図4は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検データベースに格納される人手による入力情報の説明図である。
【0040】
人手による入力情報としては、例えば図4に示すように、機器の故障モード、原因、故障により影響する水質・水量の項目とその影響度,検出度,および発生確率の初期設定値がある。
【0041】
ここで、影響度は、機器の不具合が、給水栓における各水質項目の悪化に与える影響の程度とする。例えば、以下の3段階に設定できる。
「影響度5」:除去性能が大幅に悪化し、許容値を逸脱する
「影響度3」:除去性能が悪化し、原水水質等の条件によっては許容値を逸脱する
「影響度1」:影響が小さく、許容値は逸脱しない。
【0042】
そして、影響度*は、k×Σ((影響度0)×(水質リスク))として算出される。ここで、kは、係数であり、(1/Σ(水質リスク))で与えられる。例えば、図4の一番上の行の例では、「影響度0」が、それぞれ、「濁度=5」,「有機物=5」,「臭気=1」,「色度=3」,「大腸菌=1」であり、「水質リスク」が、それぞれ、「濁度=20」,「有機物=20」,「臭気=15」,「色度=15」,「大腸菌=20」であるので、影響度*は、(1/(20+20+15+15+20))×(5×20+5×20+1×15+3×15+1×20)として、「3.1」と算出することができる。
【0043】
また、検出度は、機器の不具合が発生したことを検知する手段や機会がどの程度であるかを示すものとする。例えば、以下の5段階に設定できる。
「検出度5」:検出不能(分解点検要)
「検出度4」:故障発生に伴う事象により検出可能だが、検出率が低い
「検出度3」:故障発生に伴う事象により精度よく検出可能
「検出度2」:連続モニタリング機器で検出可能だが、検出率が低い
「検出度1」:連続モニタリング機器で精度よく検出可能。
【0044】
図4の例では、膜モジュールの中空糸破断に関する影響度は濁度の場合5とした。一方、処理水濁度の変化から膜モジュールの異常は認識できるが、原因を中空糸の破断と特定するのは比較的難しいため、検出度は2とした。
【0045】
図2に示したデータ収集手段220Aは、ネットワークインターフェース290を介して得られる膜処理施設100のプロセスデータを収集し、浄水プロセスデータベース220に格納する。
【0046】
危険優先数評価手段220Bは、機器の故障や不具合に関して、その発生頻度、影響度、検出度および関連する水質項目のリスクを用いて危険優先数を評価する。このとき、発生頻度は保守点検データベース270に格納された機器の故障情報や、トレーサビリティデータベース280に格納されている診断手段220Dによる診断結果、または管理者が入力した初期設定値を用いて算出する。危険優先数評価手段220Bの具体的動作については、図6を用いて後述する。
【0047】
保守点検頻度設定手段220Cは、危険優先数と検出度の組み合わせ、および過去に評価した同一機器に関する危険優先数と検出度との比較により、機器の保守点検方法および保守点検頻度を設定する。保守点検頻度設定手段220Cの具体的動作については、図8を用いて後述する。
【0048】
診断手段220Dは、浄水プロセスデータベース220、管理基準データベース250、保守点検データベース270を用い、水質データ、プロセスデータ、保守点検データと各基準値とを比較して、機器の不具合を診断し、診断結果をデータ端末300およびデータ入出力端末230へ出力する。さらに、改善措置データベース260のデータに従って基準値逸脱時の改善措置を出力する。診断手段220Dの具体的動作については、図5を用いて後述する。なお、診断方法としては、基準値との比較による方法以外にも、ファジイやニューラルネットワークなどを用いる方法としてもよいものである。
【0049】
トレーサビリティデータベース280には、診断手段220Dにおける出力情報が格納される。
【0050】
検索手段220Eは、トレーサビリティデータベース280に格納された情報の内、端末300またはデータ入出力端末230から入力される条件を満足する情報を検索し、端末に提示する。
【0051】
次に、図5を用いて、本実施形態による水処理施設の管理システムの診断手段220Dの処理内容について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの診断手段の処理内容を示すフローチャートである。
【0052】
診断手段220Dは、図5に示し処理内容を、定期的または水質データ、プロセスデータまたは保守点検データが新たに入力または更新された時点に実行する。
【0053】
ステップS101において、診断手段220Dは、管理基準データベース250に対象とする計測または点検に関する基準値の有無を確認する。基準値が見つからない場合、管理者は図3に示したFTAを実施し、管理基準データベース250に登録する。基準値がある場合、ステップS102において、管理基準データベース250から基準値を取得する。
【0054】
次に、ステップS103において、浄水プロセスデータベース220および保守点検データベース270から関連するデータを取得する。そして、ステップS104では、取得した基準値の範囲とデータとを比較し、機器の不具合の有無を判断する。機器の不具合があると判断された場合、管理基準DB250に格納されたFTA分析結果から、原因になり得る項目を取得すると共に、改善措置データベース260から対応する改善措置を取得する。
【0055】
次に、ステップS106において、診断結果を端末300およびデータ入出力端末230に出力すると共に、診断結果および改善措置の内容をトレーサビリティデータベース280に記録する。改善措置を実施し原因が明確になった場合は、端末300またはデータ入出力端末280から最終的な原因をトレーサビリティデータベース280に格納する。
【0056】
ここで、診断手段220Dの処理について、膜破断検出装置(ろ過水濁度計測)を例として説明する。
【0057】
既に図3に示した分析がなされており、ろ過水濁度の基準値が設定されているとすると、ステップS102において、濁度の基準値を取得する。次に、ステップS103において、ろ過水濁度の計測値を取得し、ステップS104でこれらを比較する。基準値を逸脱している場合、発生原因である、濁度計の異常や膜破断等の項目を管理基準データベース250から取得する。これらの項目に対応する改善措置として、濁度計の点検,膜の補修もしくは交換等を改善措置データベース260から取得する。最後に取得した発生原因と改善措置の内容を端末300に提示し、トレーサビリティデータベース280に記録する。
【0058】
次に、図6及び図7を用いて、本実施形態による水処理施設の管理システムの危険優先数評価手段220Bの処理内容について説明する。
図6は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの危険優先数評価手段の処理内容を示すフローチャートである。図7は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの危険優先数評価手段によって算出された危険優先数の説明図である。
【0059】
危険優先数評価手段220Bは、図6に示す処理内容を、定期的または新規設備が導入された場合に実行する。
【0060】
ステップS201において、危険優先数評価手段220Bは、トレーサビリティデータベース280および保守点検データベース270から対象機器の故障に関する情報として、発生日時と故障内容を取得する。
【0061】
次に、ステップS202において、入手した情報のうち重複するものを削除し、保守後の経過日数に対する対象機器の故障発生の確率分布を評価する。このとき、確率密度関数としてはワイブル分布などを使用できる。故障発生件数が低く、データを用いた確率分布の算出が不能な場合は、初期設定値を保守点検データベース270から取得する。そして、定期的な保守点検実施間隔における故障の発生確率を算出する。
【0062】
次に、ステップS203において、対象機器の故障に関連する水質項目や水量に関する全ての項目について管理基準DB250からリスクを取得し、ステップS204で保守点検データベース270から影響度と検出度を取得する。これらのデータがデータベースにない場合、故障モード影響解析を実施し入力する。
【0063】
次に、ステップS205では、故障発生確率,影響度,リスク,検出度の積和により、以下の式のようにして、危険優先数を算出する。

(危険優先数)=(故障発生確率)×(検出度)×k×Σ{(影響度0)i×(リスク)i}=(故障発生確率)×(検出度)×(影響度*)

ここで、iは関連する水質項目や水量に関する項目を示しており、全ての関連する項目の影響度とリスクの積を合計して、危険優先数に反映させる。
【0064】
最後に、ステップS206において、算出した保守点検データベース270に格納する。ここでの危険優先数の算出式は各パラメータの数値を直接用いて算出するものであるが、各パラメータの絶対値や範囲に応じた補正をするための係数を乗じてもよいものである。
【0065】
図7は、保守点検データベース270に格納された危険優先数の一例を示している。図7の一番上の行の場合、図4に示した故障発生確率,影響度,リスク,検出度を用いて、「危険優先数=0.2×10−2」が算出され、保守点検データベース270に格納されている。
【0066】
本実施形態では、上述したように、危険優先数を算出して保守点検データベース270に格納している。危険優先数の数値が大きいほど、危険の程度が大きいため、この危険優先数を用いて、優先順位は設定可能である。しかも、膜処理施設の設備機器の保守点検に用いることができる。
【0067】
次に、図8及び図9を用いて、本実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検頻度設定手段220Cの処理内容について説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検頻度設定手段の処理内容を示すフローチャートである。図9は、本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検頻度設定手段による保守点検頻度の増減の説明図である。
【0068】
図8に示す処理は、保守点検頻度設定手段220Cによって、定期的または新規設備が導入された場合に実行される。
【0069】
ステップS301において、保守点検頻度設定手段220Cは、保守点検データベース270から対象機器に関する危険優先数および検出度の情報のうち、最新の値および前回評価された値を取得する。
【0070】
次に、ステップS302において、各項目に関して差分を求める。ステップS303では、危険優先数の大きい項目から順に、図8に示すマトリックスに従って保守点検頻度の増減を求める。
【0071】
図8は、保守点検頻度設定手段220Cによる保守点検頻度の増減について説明するものであり、例えば、ステップS302で求めた危険優先数と検出度の各差分が共に増加傾向、例えば20%以上増加、であれば、保守点検体制または頻度を強化する。また、検出度の差分の変化量が小さい場合、例えば±20%の変化であるが、危険優先数の差分がこれを上回る場合も同様に強化する。
【0072】
本実施例で設定した検出度の場合、その値により保守点検体制の強化または頻度の強化方向を次の中から選択できるようにする。検出度が1→2の時は、有効な連続計測器の導入を検討し、または診断ルールのパラメータを増やして高度化する。検出度が2→3の時は、1→2の時と同様にして、有効な連続計測器の導入を検討し、または診断ルールのパラメータを増やして高度化する。検出度が3→4の時は、故障発生に伴う事象の検出率向上方法を検討したり、または、時間計画保全の強化または予防保全による対応を実行する。故障発生に伴う事象の検出率向上方法としては、例えば、振動によって故障が発生する場合、振動の検出率を向上できる方法(センサの感度向上や他のセンサの導入)を検討する。時間計画保全の強化としては、例えば、危険優先数の関数((点検頻度)=k×(危険優先数))で点検頻度を算出する。検出度が4→5の時は、時間計画保全の強化や、予防保全により対応する。
【0073】
最後に、ステップS304において、評価結果を端末300およびデータ入出力端末230へ出力すると共に、保守点検データベース270に格納する。
【0074】
本実施形態では、上述したように、危険優先数と検出度の各差分に応じて、保守点検頻度を増減することにより、定期的に水質管理体制を改善することが可能となり、継続的な運用が可能となる。
【0075】
本実施形態では、濁度,有機物,色度,残留塩素,粒子数などの水質を計測し、この計測値も用いて、診断手段,危険優先数評価手段,保守点検頻度設定手段は、それぞれ、診断,危険優先数評価および保守点検頻度設定を行うようにしている。
【0076】
また、膜モジュールへ膜処理原水、逆洗水、洗浄用空気、薬液を供給するポンプの流量を測定するセンサで測定し、このセンサの計測値も用いて、診断手段,危険優先数評価手段,保守点検頻度設定手段は、それぞれ、診断,危険優先数評価および保守点検頻度設定を行うことができる。
【0077】
なお、以上の説明では、機器の不具合の診断について述べたが、水質や薬注等のプロセス計測が適切な範囲であることを確認するための基準値を管理基準データベース250に記録し、同様に診断と表示を行い、改善措置データベース260に格納した改善措置の情報を提示させることも可能である。
【0078】
また、機器単位で実施例の説明を行ったが、さらに詳細に部品単位での不具合発生の評価や点検頻度の設定を行ってもよい。その場合、図3に示すFTAを部品レベルまで行い、不具合の原因となる部品を特定し、予め保守点検データベース270に、部品の単位で登録する。
【0079】
また、製造した水を使用する際の水質リスクに代えて、水量リスクを用いて影響度を評価し、この影響度を用いて危険優先数を評価することもできる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態では、危険優先数により、膜処理施設の設備機器の保守点検に優先順位を設定して、保守可能となる。また、危険優先数と検出度の各差分に応じて、保守点検頻度を増減することにより、定期的に水質管理体制を改善することが可能となり、継続的な運用が可能となる。したがって、膜処理施設の設備機器の保守点検頻度設定支援を継続的に実施でき、膜を用いた水処理によって安定した水質および水量の水道水または再生水を供給することが可能となる。
【0081】
次に、図10及び図11を用いて、本発明の第2の実施形態による水処理施設の管理システムの構成及び動作について説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態による管理システムを用いた水処理施設システムの構成を示すブロック図である。図11は、本発明の第2の実施形態による管理システムの管理基準データベースに格納する基準値を与える項目を設定するためのFTAの説明図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0082】
膜処理施設は比較的小規模な施設が多いため、機器数が少なく、単一の膜処理施設における故障データから機器の故障発生確率を評価すると、その精度が悪くなるという可能性がある。そこで、本実施形態では、複数の膜処理施設の故障データから機器の故障発生確率を評価するようにしている。
【0083】
図10に示すように、本実施形態の水処理施設システムは、複数の膜処理施設100a,100b,110c,100d,100eと、管理サーバ200Aと、端末300と、ネットワークNWとから構成されている。ここでは、膜処理施設100a〜100eとして、膜処理および粒状活性炭処理による浄水プロセスの場合を例として説明する。
【0084】
膜処理施設100a〜膜処理施設100eは、河川・ダム・地下水などの水源の他、他の浄水場から供給される水を原水とし、飲料水を特に供給するための設備とする。飲料水向けの品質を確保するため、原水の一部または全量を活性炭処理した後、膜処理を行い、飲料水用の貯槽に蓄える構成としている。このとき、処理水水質をセンサでモニタリングし、モニタリング結果に応じてバルブを調整し、活性炭処理槽への流量配分をコントロールできる構成としている。センサでモニタリングする項目としては、飲料水のおいしさと関連のある、有機物,臭気等がある。
【0085】
管理サーバ200Aおよび端末300は、図1〜図9に示したものと同様な構成であり、膜処理施設100a〜100eとネットワークNWを介して接続されている。管理サーバ200Aの動作の内、図1〜図9にて説明したものと相違する点について以下説明する。
【0086】
管理サーバ200Aの診断手段220Dの処理内容について、本実施例の水道施設を対象とした場合について説明する。
【0087】
ここで、図11は、管理基準データベース250に格納しておく基準値を与える項目のうち、活性炭に関する項目を設定するためのFTAの一例を示している。活性炭による処理対象である有機物の処理水での濃度が上昇した場合、活性炭の吸着量の飽和、制御機器やバルブの故障、センサの故障が考えられ、活性炭の使用時間と有機物濃度の積やバルブの開度などが基準値設定項目にできる。
【0088】
診断手段220Dは、管理基準データベース250に格納された基準値を用いて診断を行い、改善措置を端末300に出力する。
【0089】
次に、危険優先数設定手段220Bの処理内容について、本実施例の水道施設を対象とした場合について説明する。
【0090】
図6のステップS201では、トレーサビリティデータベース280および保守点検データベース270から対象機器の故障に関する情報を取得する。このとき、ネットワークに接続された複数の浄水場における同様の設備機器に関する故障情報を全て取得し、これを元に以降の処理を行う。同様の設備機器としては、同型式の機種の他に、仕様が類似する機器や部品を選択する。
【0091】
このような処理を行うことにより、単一の浄水場では故障発生率の精度が悪い場合でも、複数の浄水場のデータを用いることで故障発生率の精度を向上させることができる。
【0092】
また、飲料水の供給を目的としているため、影響度の算出に用いる水質リスクは、おいしい水の条件である臭気、有機物、残留塩素濃度等に関して、また、利水障害の原因となる色度等に関して水質リスクを大きく設定する。例えば、第1の実施形態では、臭気と色度の水質リスクを15としたが、本実施例ではこれらの項目の水質リスクを20として評価する。これにより、活性炭処理に係る機器の危険優先数が上がり、従って、保守点検頻度評価手段220Cにおいて、これらの機器に関する評価が上位に提示される。
【0093】
この実施例では、選択した設備機器の故障に関する情報に対して全て同じ処理を行うようにしているが、使用環境やメーカ等に応じて一定の重みを設定し、重みで補正した故障発生率を評価することもできる。
【0094】
以上説明したように、本実施形態により、膜処理施設の設備機器の保守点検頻度設定支援を継続的に実施でき、膜を用いた水処理によって安定した水質および水量の水道水または再生水を供給することが可能となる。
【0095】
また、複数の膜処理施設の故障データから機器の故障発生確率を評価することで、その精度を向上することができる。
【0096】
次に、図12を用いて、本発明の第3の実施形態による水処理施設の管理システムの構成及び動作について説明する。
図12は、本発明の第3の実施形態による管理システムを用いた水処理施設システムの構成を示すブロック図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0097】
本実施形態の水処理施設システムは、再生水製造施設100Bと、管理サーバ200Bと、端末300と、ネットワークNWとから構成されている。ここで、再生水製造施設100Bとしては、一例として活性汚泥による生物処理,膜処理およびオゾン処理によるプロセスの場合を示している。
【0098】
再生水製造施設100Bは、下水からの流入水WA3を、最初沈殿池160、生物処理槽165、最終沈殿池170、膜モジュール120およびオゾン処理槽175により処理して、再生水WA4として需要家に供給する。
【0099】
最初沈殿池160では、流入水WA3に含まれる比較的大きな固形物を重力沈降により分離する。上澄み水を生物処理槽165の活性汚泥で処理する。ここでは、槽の酸素濃度の調整や循環の方法により有機物,窒素,リンが除去される。次に、最終沈殿池170では、処理された水に含まれる活性汚泥を重力沈降によって分離する。さらに、膜モジュール120で水中の粒子を除去した後、オゾン注入機180からオゾン処理槽175へオゾンを供給し、有機物の分解や消毒が行われる。最初沈殿池160や最終沈殿池170で分離された汚泥15の一部が汚泥処理設備185で処理され、埋立て等の最終処分がなされる。
【0100】
このプロセスでは、膜間差圧計S10、破断検出装置S20の他にセンサS31,S32,S33,S34が設置されており、プロセスの各段階でのプロセス、水質データを計測する。ここで水質データとは、有機物、NH3−N、NOx−Nなどである。膜破断検出装置S20としては、濁度計を用いることとする。
【0101】
危険優先数の算出に用いる発生確率や検出度に関しては、前述の実施例と同様である。一方、影響度の評価においては、膜の破断による濁度成分や一部の有機物の漏洩が後段のオゾン処理に与える影響を考慮する必要がある。オゾンは高い酸化電位を持つため有機物との反応性が高く、膜破断による有機物や濁度の漏洩により、オゾンの消費量が増加する。このことにより、オゾン処理の目的の一つである消毒の効果は低下する。従って、膜破断による影響として大腸菌等の微生物によるリスクが関連付けられる。そのため、危険優先数は高くなり、膜モジュールや破断検出装置の保守点検体制はより充実したものとする必要がある。
【0102】
また、管理サーバ200Bは、図2の構成要素に加えて、設備管理データベースを備えた管理システムとすると、以下に述べるように施設の変更への対応が容易になる。この設備管理データベースは、現有する設備機器に関する名称、仕様、稼動時期に関する情報に加え、改良、更新、拡張等の計画に含まれる設備機器に関する情報を格納する。そして、管理者が指定した設備機器を対象として、危険優先数評価手段220Bおよび保守点検頻度設定手段220Cを実行する。
【0103】
一例として、生物処理槽165の処理プロセスが標準活性汚泥法からA2O法に変更される場合について述べる。標準活性汚泥法では下水中の有機物除去が目的であり、リンや窒素は基本的に除去されない。一方、A2O法では生物処理槽での循環と嫌気槽、好気槽、無酸素槽の形成により窒素やリンを除去できる。そのため、A2O法では、循環ポンプや曝気装置の危険優先数評価において、NH3−NやNOx−Nの影響度を高く設定し、再生水製造においてより重要な機器として保守管理体制を構築する。
【0104】
別の例として、センサS35に有機物センサを新たに導入する場合について述べる。生物処理槽における有機物の処理性は流入水量の影響を受けるため、有機物センサがない場合、センサS31における流量測定(流量計)は危険優先数算出に用いる影響度を大きく設定する必要がある。しかし、有機物センサを導入することで、より正確にオゾン処理槽175への流入有機物量を把握でき、オゾン注入機180の制御に反映することが可能となる。そのため、流入水の流量計の影響度は低く、有機物センサの影響度を高く設定することとなり、センサ導入後の保守点検体制を構築できる。
【0105】
これらの評価を設備管理データベースに格納されている計画段階の設備機器に対して実行しておくことで、実際の稼動時にもれがなく適切な保守点検体制とすることができる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態により、膜処理施設の設備機器の保守点検頻度設定支援を継続的に実施でき、膜を用いた水処理によって安定した水質および水量の水道水または再生水を供給することが可能となる。
【0107】
また、再生水製造施設においても、適切な保守点検体制とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施形態による管理システムを用いた水処理施設システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの管理基準データベースに格納される基準値を与える項目を選定するためのFTAの説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検データベースに格納される人手による入力情報の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの診断手段の処理内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの危険優先数評価手段の処理内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの危険優先数評価手段によって算出された危険優先数の説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検頻度設定手段の処理内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第1の実施形態による水処理施設の管理システムの保守点検頻度設定手段による保守点検頻度の増減の説明図である。
【図10】本発明の第2の実施形態による管理システムを用いた水処理施設システムの構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による管理システムの管理基準データベースに格納する基準値を与える項目を設定するためのFTAの説明図である。
【図12】本発明の第3の実施形態による管理システムを用いた水処理施設システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0109】
100,100a〜100e…水道施設
100B…再生水製造施設
110…原水槽
120…膜モジュール
130…膜ろ過水槽
140…塩素注入機
150…排水処理槽
160…最初沈殿池
165…生物処理槽
170…最終沈殿池
175…オゾン処理槽
180…オゾン注入機
185…汚泥処理設備
200,200A,200B…管理サーバ
300…端末
210…CPU
220…メモリ
220A…データ収集手段
220B…危険優先数評価手段
220C…保守点検頻度設定手段
220D…診断手段
220E…検索手段
230…データ入出力端末
240…浄水プロセスデータベース
250…管理基準データベース
260…改善措置データベース
270…保守点検データベース
280…トレーサビリティデータベース
290…ネットワークインターフェース(IF)
WA1…原水
WA2…上水
WA3…流入水
WA4…再生水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を用いて原水を処理する浄水膜処理施設の維持管理を支援する水処理施設の管理システムであって、
膜モジュールの破損の有無をモニタリングする破損検出手段と、
膜間差圧をモニタリングする差圧検出手段と、
前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測に関する情報を格納する浄水プロセスデータベースと、
前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測項目の管理基準値を格納する管理基準データベースと、
前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測値が前記管理基準データベースに格納された管理基準値の範囲を逸脱した際に提示する措置に関する情報を格納する改善措置データベースと、
前記破損検出手段及び差圧検出手段による計測値と前記管理基準データベースに格納された管理基準値を用いて膜処理施設の運転状態の異常を診断する診断手段と、
前記診断手段による診断結果および前記管理基準データベースの情報を用いて設備機器の危険優先数を算出する危険優先数評価手段とを備えたことを特徴とする水処理施設の管理システム
【請求項2】
請求項1の水処理施設の管理システムにおいて、さらに、
設備機器の保守点検に関する情報を格納する保守点検データベースと、
前記保守点検データベースに格納された情報を用いて、危険優先数の変化量から設備機器の保守点検頻度をガイダンスする保守点検頻度設定手段を備えたことと特徴とする水処理施設の管理システム。
【請求項3】
請求項2の水処理施設の管理システムにおいて、
膜処理原水および/または膜処理水を対象とし、濁度,有機物,色度,残留塩素、粒子数のうち少なくとも1つの水質計測を行うセンサを備え、
前記センサの計測値も用いて、前記診断手段,前記危険優先数評価手段,保守点検頻度設定手段は、それぞれ、前記診断,危険優先数評価および保守点検頻度設定を行うことを特徴とする水処理施設の管理システム。
【請求項4】
請求項2の水処理施設の管理システムにおいて、
膜モジュールへ膜処理原水、逆洗水、洗浄用空気、薬液を供給するポンプのうち少なくとも1つのポンプの流量を測定するセンサを備え、
前記センサの計測値も用いて、前記診断手段,前記危険優先数評価手段,保守点検頻度設定手段は、それぞれ、前記診断,危険優先数評価および保守点検頻度設定を行うことを特徴とする水処理施設の管理システム。
【請求項5】
請求項1の水処理施設の管理システムにおいて、さらに、
製造した水を使用する際の水質リスクおよび水量リスクを用いて影響度を評価し、この影響度を用いて危険優先数を評価する評価手段を備えることを特徴とする水処理施設の管理システム。
【請求項6】
請求項1の水処理施設の管理システムにおいて、
ネットワークを介して複数の水処理施設を接続し、
接続された水処理場における設備機器の保守に関する情報を用いて、設備機器の故障発生確率を評価し、この故障発生確率を用いて危険優先数を評価する評価手段を備えることを特徴とする水処理施設の管理システム
【請求項7】
請求項1の水処理施設の管理システムにおいて、
下水処理水を原水とし、膜処理により再生水を製造する設備を対象とする水処理施設の管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−330843(P2007−330843A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162242(P2006−162242)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】