説明

水処理装置

【課題】カートリッジの取り外しを容易にできるようにするとともに、装置に導入する水又は装置から導出する水の流量低下を抑制することができる水処理装置を提供する。
【解決手段】カートリッジ11と、水を導入する導入路と、カートリッジ11を通過した水を導出する導出路と、カートリッジ11が着脱可能に固定される蓋体12とを備えた浄水器10において、カートリッジ11は、蓋体12に固定される嵌合筒部32を備え、蓋体12は、嵌合筒部32と嵌合し内側に流路を有する大径筒部43と、導入路及び導出路とを備えるとともに、導入路及び導出路の少なくとも一方に、導入路及び導出路の中心軸と平行な中心軸を有する水平連通孔52と、その水平連通孔52に対して垂直に連結された垂直連通孔とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着脱可能なカートリッジに水道水等の原水を通過させることにより特定の物質を除去又は添加する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、固定部に対してカートリッジを着脱する構成により、カートリッジを交換可能な浄水器が知られている。このような浄水器の一例として、図5に示すような構成の装置がある。この従来構成の浄水器100は、カートリッジ101が着脱可能な固定部102を有している。固定部102には、水を装置内に流入する導入口103と、カートリッジ101に収容されたイオン交換樹脂や活性炭等よって処理された水を流出する導出口104とが設けられている。
【0003】
カートリッジ101は、イオン交換樹脂や活性炭等を充填した収容部105と、収容部105に固定される内カバー106と、内カバー106の外側に設けられた外カバー107とを備えている。外カバー107は、固定部102に固定される連結部110を備え、内カバー106は固定部102に固定される出口111を備えている。出口111の内側には、水が通過する流路109が設けられている。
【0004】
また、固定部102は、カートリッジ101を固定するブラケット125を備えるとともに、外カバー107の連結部110を嵌合する第1嵌合部121と、内カバー106の出口111を嵌合する第2嵌合部122とを備えている。第1嵌合部121の内側は、導入口103から流入した原水が通過する流路となっており、第2嵌合部122の内側は、カートリッジ101から送出された水が通過する流路となっている。
【0005】
導入口103から流入した水は、第1嵌合部121内側を通過して、カートリッジ101に送られる。カートリッジ101に流入した水は、収容部105を通過して、出口111の流路109を介して導出口104に送られる。カートリッジ101を固定部102から外す際には、固定部102に対してカートリッジ101を所定角度だけ手で回転する等して取り外す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−82067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記した第1嵌合部121の内側は流路となっているため、第1嵌合部121に内嵌された連結部110は水圧を受ける。カートリッジ101の連結部110が水圧を受けると、連結部110のうち固定部102のブラケット125との接合部128には、ブラケット125に対し押圧されるような力が加わる。その結果、接合部128とブラケット125との摩擦力が増加し、カートリッジ101が固定部102から取り外しにくくなる。
【0008】
一方、連結部110が受ける水圧は、第1嵌合部121の内径αに比例する。このため、第1嵌合部121の内径αを小さくして上記接合部128が受ける力を小さくすると、カートリッジ101を取り外ししやすくなる。尚、第1嵌合部121の内径αを小さくすると、第2嵌合部122の内径も合わせて小さくする必要がある。
【0009】
しかし、導入口103及び導出口104はホースを固定するため等の理由により、ある程度の間隔を保持する必要がある。このため、第1嵌合部121及び第2嵌合部122の内径を小さくした場合、導入口103と第1嵌合部121との重なり、及び導出口104と第2嵌合部122との重なりの面積が小さくなってしまう。即ち、導入口103内の流路103aと第1嵌合部121とが連通する連通口126、導出口104内の流路104aと第2嵌合部122とが連通する連通口127の面積が小さくなる。その結果、導入口103側及び導出口104側の圧力損失が増加してしまい、浄水器100から送出される水の流量が低下してしまう。このような問題は、固定部にカートリッジの連結部を固定するための嵌合部が設けられ、その連結部が水圧を受けるような構造の浄水器であれば生じる問題である。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カートリッジの取り外しを容易にできるようにするとともに、装置に導入する水又は装置から導出する水の流量低下を抑制することができる水処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目標を達成するために、本発明は、カートリッジと、水を導入する導入路と、前記カートリッジを通過した水を導出する導出路と、前記カートリッジが着脱可能に固定される固定部とを備えた水処理装置において、前記カートリッジは、前記固定部に固定される連結部を備え、前記固定部は、前記連結部と嵌合し内側に流路を有する嵌合部と、前記導入路及び前記導出路とが形成されるとともに、前記導入路及び前記導出路の少なくとも一方に、その中心軸と平行な中心軸を有する第1の連通孔と、その第1の連通孔に対して垂直に連結された第2の連通孔とを備えることを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、水処理装置は、導入路及び導出路の少なくとも一方に、その中心軸と平行な中心軸を有する第1の連通孔と、その第1の連通孔に対して垂直に連結された第2の連通孔とを備えるので、嵌合部の内径を小さくしても、水処理装置に導入する水量又は水処理装置から導出される水量の低下を抑制することができる。即ち、嵌合部内の水により連結部は圧力を受け、連結部には固定部に対して押し付けられるような力が加わって、固定部からカートリッジを取り外す際に大きな力を加えなければならないことがある。このため、嵌合部の内径を小さくしてその内側面で受ける水圧を小さくすると、カートリッジを取り外しやすくすることができる。しかし、嵌合部の内径を小さくすると、装置に導入する水及び装置から送出される水の流量が低下してしまうことがある。これに対し、上記発明では第1の連通孔に対して第2の連通孔を垂直に設けたので、嵌合部の内径を小さくしてカートリッジを取り外しやすくしても、第1の連通孔の内径を拡大することなく、装置に導入する水又は装置から導出する水の流量の低下を抑制することができる。
【0013】
この水処理装置において、前記第2の連通孔は、その長手方向が、前記導入路又は前記導出路の中心軸と平行な方向となるように形成されている。
上記構成によれば、開口部を中心軸と直交する方向に拡大しないため、その方向における省スペース化を図ることができる。
【0014】
この水処理装置において、前記第2の連通孔は、前記導入路を構成する壁部と前記導出路を構成する壁部とに形成されている。
これによれば、第2の連通孔は、導入側及び導出側に形成されるとともに、導入路の壁部及び導出路の壁部に形成されている。このため、第1の連通孔その中心軸から水平に広がる方向に拡大することなく、嵌合部と導入路とを連通する孔及び嵌合部と導出路とを連通する孔の開口面積を大きくし、装置の流量低下を効率的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カートリッジの取り外しを容易にできるようにするとともに、装置に導入する水又は装置から導出する水の流量低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の水処理装置を浄水器に具体化した一実施形態の縦断面図。
【図2】同浄水器の要部を示す分解斜視図。
【図3】同浄水器を構成する固定カバーの縦断面を示す斜視図。
【図4】(a)は同浄水器の上部断面図、(b)は(a)のA−A線における断面図、(c)は(a)のB−B線における断面図。
【図5】従来の浄水器の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4に従って説明する。本実施形態では、本発明の水処理装置を、厨房機器の給水管路に配置され、水道水等の原水を浄化及び水質調整する浄水器に具体化している。尚、ここでいう水処理装置とは、着脱可能なカートリッジを備え、該カートリッジに水道水等の原水を通過させることにより物理的又は化学的処理を施し、特定の物質を除去又は添加する装置をいう。例えば上記浄軟水器の他、例えばイオン交換樹脂を収容により水を軟水化する軟水器、活性炭や逆浸透膜により残留塩素等の物質を除去する浄水器、所定のイオンを除去する純水器等を含む。
【0018】
図1に示すように、浄水器10は、カートリッジ11と、カートリッジ11が着脱可能に固定される固定部としての蓋体12とを備えている。この浄水器10は、蓋体12に設けられた導入口41及び導出口42をジョイントJ1,J2を介して図示しないホース等に接続することによって上記給水管路に連通されるようになっている。即ち、導入口41及び導出口42は、ホースへの接続等の理由で、所定の長さ以上の間隔を保持した位置にそれぞれ設けられている。
【0019】
カートリッジ11は、容器13と、イオン交換樹脂14を収容する樹脂収容ケース15とを備えている。容器13及び樹脂収容ケース15は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)や、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から構成されている。容器13は、有底円筒状に形成され、その内側に樹脂収容ケース15を収容している。樹脂収容ケース15は、有底円筒状であって、その高さは容器13の高さよりも小さく形成されている。容器13と樹脂収容ケース15との間には、上記導入口41から供給された原水が通過するための隙間S1が設けられている。
【0020】
また、樹脂収容ケース15は、内側にイオン交換樹脂14を充填するための収容空間15aを有している。イオン交換樹脂14は、原水に含まれるカルシウムイオン等とイオン交換を行う交換反応基を有する粒状の樹脂である。また樹脂収容ケース15の底面には、不織布からなるフィルタ15bが設けられている。容器13の底部に溜まった原水は、このフィルタ15bを通ってイオン交換樹脂14内に侵入する。
【0021】
樹脂収容ケース15の上部開口には、連結部材16が固定されている。連結部材16は、樹脂収容ケース15と、繊維状活性炭21を収容する活性炭収容ケース20とを連結している。この連結部材16の中央には、通過孔16aが貫通形成されるとともに、その底面には、通過孔16aを取り囲むように連通管固定部16bが突出形成されている。この連通管固定部16bには、樹脂収容ケース15の内側中央を貫通する連通管17の一端が固定される。また、通過孔16aの周囲には、水が通過するための細孔が多数形成されている。さらに、連結部材16の底面には、不織布からなるフィルタ16cが設けられている。
【0022】
連通管17は、その内側に直線状の管路を有し、その他端は樹脂収容ケース15の底部に設けられた連結管固定部15dに固定される。また、フィルタ15bの中央には通過口18が設けられ、この通過口18は、連通管17を連結管固定部15dに固定した際に、連通管17の管路に連通されるようになっている。
【0023】
活性炭収容ケース20は、例えばABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene:共重合
合成樹脂)等の高い剛性を有する樹脂からなり、略有蓋筒状に形成されている。その内部には環状の繊維状活性炭21が、上面を活性炭収容ケース20の内側面に溶着されることにより固定されている。繊維状活性炭21は、繊維状の活性炭の表面に多数の細孔を設け、その繊維に銀を添着させたブロック状の濾過材であって、水に含まれる遊離残留塩素等の不純物を除去するとともに、水中の雑菌が繁殖するのを抑制する。
【0024】
この繊維状活性炭21の底面には、繊維状活性炭21の底面側から水が浸入しないように、略円盤状の活性炭カバー22が溶着されている。繊維状活性炭21に固定された活性炭カバー22と連結部材16との間には、水が流入するための隙間23が設けられ、繊維状活性炭21の側面と活性炭収容ケース20の内側面との間には、水が流入するための隙間24が設けられている。
【0025】
図2に示すように、活性炭収容ケース20の上壁部20aに形成された出口25は管状をなし、上壁部20aから上方(容器13と反対側)に向かって突出形成されている。図1に示すように、この出口25は、内側に導出口42に連通した連通路26を有し、連通路26は、カートリッジ11を通過することにより水質調整及び浄化された水を、導出口42側に送出する。
【0026】
また、図2に示すように、活性炭収容ケース20の上壁部20aであって、出口25の周囲には、係合部20bが4つ形成されている。これらの係合部20bは、活性炭収容ケース20の外側に嵌合されるカートリッジカバー30と係合する。
【0027】
このような構成の活性炭収容ケース20を、図1に示すように、容器13に収容された樹脂収容ケース15と連結部材16を介して連結すると、活性炭収容ケース20の出口25は、蓋体の開口部から突出した状態となる。
【0028】
次に、活性炭収容ケース20に嵌合されるカートリッジカバー30について図1にしたがって説明する。カートリッジカバー30は、PPS等の樹脂から構成され、容器13から突出した出口25の上から被せられ、その内側面30bに形成されたネジ部と、容器13の外側に設けられたネジ部とを螺合させることにより、容器13に対して固定されている。カートリッジカバー30は、略有蓋筒状をなし、内側面30bには、活性炭収容ケース20の係合部20bと係合する被係合部31が形成されている。
【0029】
また、図2に示すように、カートリッジカバー30の上壁部30aの中央部には、嵌合筒部32が突出形成されている。嵌合筒部32は、上端及び下端が開口した環状をなし、活性炭収容ケース20の出口25を内側に挿入可能に形成されている。また、その外周面32aには、一対の掛止突部33が突出形成されている。各掛止突部33は、外周面32aの所定範囲に亘って形成され、湾曲した形状をなしている。また、各掛止突部33は、嵌合筒部32の中心軸に対して対称となる位置に設けられている。
【0030】
また、嵌合筒部32の上側開口部32bには、カム面35が形成されている。カム面35は、蓋体12の導入口41に設けられる弁機構60(図1参照)を開位置に配置するためのカム面と、閉位置に配置するためのカム面と、閉位置から開位置又は開位置から閉位
置に導くためのカム面とから構成される。具体的には、浄水器10の長手方向(Z軸方向)において最も高い位置に位置し、弁機構60を開位置にする第1のカム面35aと、浄水器10の長手方向において最も低い位置に位置し、弁機構60を閉位置にする第2のカム面35bとを有する。また、第1のカム面35aと第2のカム面35bとを接続する傾斜面であって、弁機構60を閉位置から開位置又は開位置から閉位置に導く第3のカム面35cを有する。
【0031】
各カム面35a,35b,35cは、それぞれ2つ形成され、平面視(反Z軸方向)において時計周り方向に、第2のカム面35b、第3のカム面35c、第1のカム面35a、第2のカム面35b、第3のカム面35c、第1のカム面35aといった順番に配置されている。また、各第1のカム面35aと各掛止突部33とは、嵌合筒部32の周方向において同じ位置に形成されている。さらに、第3のカム面35cの始端及び終端は、円環状のカム面35の幅方向に対して斜めの形状となっている。
【0032】
次に、カートリッジ11に固定される蓋体12について説明する。図2に示すように、蓋体12は、円蓋状の固定カバー40と、固定カバー40の下面に固定されるブラケット55を有している。
【0033】
ブラケット55は、SUS304等のステンレス、又は樹脂等からなり、略長方形状の板状部材から形成されている。また、その板状部材の中央部で、90度屈曲されることにより底部56と側部57とが形成されている。ブラケット55の底部56は、ネジBを挿入するための締結孔56aを有し、該締結孔56aと固定カバー40の下面に設けられたネジ孔とにネジBを通すことによって固定される。底部56に対して垂直に折り曲げられた側部57は、ネジ等(図示略)を挿入するための締結孔57a,57bを有し、これらの締結孔57a,57bにネジ等を通すことにより、浄水器10の外部の部材に対して固定される。即ち、ブラケット55は、固定カバー40及びカートリッジ11と別体であって、その底部56が固定カバー40に固定されるとともに、側部57が外部部材に固定されるため、カートリッジ11を回転させて取り外す際にも、ブラケット55がカートリッジ11と同方向に連れ回ることがない。
【0034】
底部56の略中央には、カートリッジカバー30の嵌合筒部32を貫入するための貫入孔58が形成されている。貫入孔58の内径は、嵌合筒部32の外径よりも大きく形成されている。また、貫入孔58の中心軸に対して対称な位置には、貫入孔58から外側に張り出すように1対の掛止孔59が形成されている。掛止孔59は、回動開始面59aと回動終了面59bとを有し、回動開始面59aから回動終了面59bに向かうにつれて幅が次第に小さくなるように形成されている。
【0035】
カートリッジ11を蓋体12に固定する際、この掛止孔59には、カートリッジカバー30の掛止突部33が挿入される。単に掛止突部33を掛止孔59に挿入した状態では、掛止突部33は掛止孔59の回動開始面59a側に配置され、掛止状態とならないが、カートリッジ11を締結方向(平面視において図中反時計回り方向)に回転すると、掛止突部33が掛止孔59の内側面に摺接しながら回動終了面59bに向かって移動し、掛止突部33が回動終了面59bに接した状態では、掛止孔59に掛止突部33が掛止された掛止状態となる。
【0036】
固定カバー40は、PPS等の樹脂を用いて、射出成型等により、金型を開口側(図1における反Z軸方向)に抜くことにより形成されている。図1に示すように、その頭頂部には、原水が供給される導入孔41aを内側に有する導入口41と、カートリッジ11によって水質調整及び浄化された水が供給される導出孔42aを有する導出口42とが形成されている。
【0037】
図3は、固定カバー40からジョイントJ1,J2等の部材を取り外した状態の断面を示す斜視図である。固定カバー40の内側面40aであって頭頂部の裏面には、大径筒部43と、この大径筒部43の内側に設けられた小径筒部44とが形成されている。大径筒部43は、略円筒状に形成され、その内径は、カートリッジカバー30の嵌合筒部32を嵌合可能な大きさに形成されている。図1に示すように、蓋体12にカートリッジ11を固定する際には、この大径筒部43に嵌合筒部32が内嵌される。
【0038】
図3に示すように、小径筒部44は、活性炭収容ケース20の出口25を内側に嵌合可能な内径を有している。蓋体12にカートリッジ11を固定する際には、出口25が小径筒部44に内嵌される。
【0039】
また、大径筒部43の外側であって、導入口41の下方には張り出し部45が設けられている。張り出し部45は、大径筒部43の壁面の一部を外側に張り出した部分であって、内側に導入管路45aを有している。また、張り出し部45の長さは、小径筒部44の長さよりも長く、大径筒部43の長さよりも短い。尚、この導入管路45a及び導入孔41aは、導入路を構成する。
【0040】
このような導入管路45aと大径筒部43とを連通する連通孔は、図1中Z方向と平行な中心軸を有する孔と、その孔に垂直(Z方向)に連結した孔とが連結することにより、連通孔の流路断面がいわば3次元的になるように形成されている。詳述すると、図4(a)及び(b)に示すように、導入口41の中心軸X1と平行な中心軸を有する水平連通孔52は、カートリッジ11の嵌合筒部32と小径化された大径筒部43との相対位置関係により、導入孔41aの中心軸X1に対して若干内側に偏倚した位置に設けられている。このため、導入孔41aと水平連通孔52との重なり部分の面積は比較的小さくなっている。また図1に示すように、この水平連通孔52は、大径筒部43に嵌合筒部32を内嵌した際に、第1のカム面35aによって一部閉塞されるが、第3のカム面35cの斜めに形成された始端及び終端と水平連通孔52との間に、水が通過するための隙間S2が形成される。
【0041】
また、図3に示すように、この水平連通孔52には、垂直連通孔51が垂直に連結されている。換言すると、垂直連通孔51は、その中心軸が、水平連通孔52の中心軸に対して直交するように設けられている。この垂直連通孔51は、導入管路45aを構成する壁部45bの一部を切り欠くことで形成されている。垂直連通孔51は、略矩形状であって、その長手方向が、導入口41の中心軸X1と平行になるように形成されている。
【0042】
また、導出孔42aと小径筒部44とを連通する連通孔は、図1中Z方向と平行な中心軸を有する孔と、その孔に垂直(Z方向)に連結した孔とにより、連通孔の流路断面がいわば3次元的になるように形成されている。図4(a)及び(b)に示すように、導入口41の中心軸X1と平行な中心軸を有する水平連通孔53は、導出孔42aに対して若干内側に偏移した偏倚した位置に設けられている。また、図4(a)に示すように、この水平連通孔53には、垂直連通孔54が垂直に連結している。
【0043】
図4(c)は、図4(a)のB−B線における導出口42の斜め方向の断面を示している。図4(c)に示すように、垂直連通孔54は、導出口42の壁部42bを一部切り欠くことで形成されている。図4(a)に示すように、垂直連通孔54は、その中心軸が、導出口42の中心軸X2に直交するとともに、略矩形状に形成され、その長手方向が、中心軸X2になるように形成されている。
【0044】
また、図1に示すように、導入口41の内部には、弁機構60が設けられている。図2
に示すように、弁機構60は、弁体61と、バネ62と、逆止弁63とを有している。弁体61は、略円柱状に形成され、その下端は、固定カバー40の導入管路45aに挿入されている。上端部は、下端部よりも直径が大きく、導入孔41a内に挿入されている。また、上端部と下端部との間には、上端部の外周面に突出形成された段差部61aが設けられている。段差部61aは、上記大径筒部43の開口に当接することにより導入孔41aと大径筒部43の内側とを非連通状態とし、図1に示すように、上記開口から離間することで、導入孔41aと大径筒部43とを連通状態とする。尚、弁体61の段差部61aが開口に当接した位置を閉位置といい、段差部61aが開口から離間した位置を開位置という。
【0045】
この弁機構60の作用について説明する。弁体61の上端部であって、段差部61aとジョイントJ1との間には、弁体61を閉位置に付勢するバネ62が固定されている。固定カバー40の大径筒部43にカートリッジ11の嵌合筒部32を嵌合し、小径筒部44にカートリッジ11の出口25を嵌合すると、弁体61の下端は、嵌合筒部32に形成されたカム面35に当接した状態となる。このとき、弁体61の下端は、第2のカム面35bに当接し、バネ62の付勢力により弁体61は閉位置に配置される。蓋体12に対してカートリッジ11を締結方向(反時計回り方向)に回すと、弁体61は、第2のカム面35bから第3のカム面35cを摺接し、最も高い位置に設けられた第1のカム面35aに到達する。弁体61が第3のカム面35cから第1のカム面35aに移動する際、弁体61の段差部61aは、バネ62の付勢力に抗して、開口46から徐々に離間し、弁体61の下端が第1のカム面35aに到達すると段差部61aが開口46から離間した開位置に配置される。
【0046】
また、弁体61の先端には、逆止弁63が取り付けられている。逆止弁63は、大径筒部43側から導入孔41aに逆流してきた水を導入口41から排出するのを抑止する弁である。
【0047】
次に、蓋体12にカートリッジ11を固定する工程について説明する。この蓋体12に対し、カートリッジ11を固定する際、図1に示すように、まずカートリッジ11の嵌合筒部32と出口25とを、蓋体12の大径筒部43と小径筒部44とにそれぞれ嵌合する。このとき、弁体61の下端は、嵌合筒部32の第2のカム面35bに当接するので、弁体61は閉位置に配置される。また、嵌合筒部32の掛止突部33は、ブラケット55の掛止孔59に挿入される。尚、図1は、カートリッジ11を蓋体12に対し完全に固定した状態を示している。
【0048】
そして、カートリッジ11を締結方向(平面視において反時計回り方向)に回転させることにより、弁体61の下端は、第2のカム面35bから第3のカム面35cを摺接し、第1のカム面35aに当接した状態になる。これにより、弁体61は開位置に配置され、その段差部61aは導入孔41aに連通した開口46から離間した状態となる。また掛止突部33は、カートリッジ11の回転に伴い、掛止孔59の側面に案内されながら回動開始面59aから回動終了面59bまで移動する。これにより、掛止突部33が掛止孔59によって掛止された状態となる。その結果、カートリッジ11は、蓋体12に対し、出口25と小径筒部44との嵌合、嵌合筒部32と大径筒部43との嵌合、掛止突部33と掛止孔59との掛止等により固定される。
【0049】
次に浄水器10内の水の流れについて説明する。蓋体12にカートリッジ11が固定された状態で、導入口41に連結したホース等から水が供給されると、その水は、導入孔41aから導入管路45aに流れ込む。導入管路45aに流れ込んだ原水は、上記隙間S2と垂直連通孔51とを介して大径筒部43の内側に流れ込む。
【0050】
大径筒部43内に流入した原水は、カートリッジ11の嵌合筒部32と出口25との間の隙間を通って、容器13と活性炭収容ケース20との間の隙間及び容器13と樹脂収容ケース15との間の隙間S1に流入し、容器13の底部に到達する。容器13の底部に到達した水の一部は、樹脂収容ケース15の底部に設けられたフィルタ15bを通って、イオン交換樹脂14に浸透する。また、容器13の底部に到達した水のうち、イオン交換樹脂14に浸透しない水は、連通管17に流入する。
【0051】
イオン交換樹脂14に浸透した水は、イオン交換樹脂14と間でイオン交換をしながら粒子間を上昇する。このように軟水化された水は、フィルタ16cを通過して、連結部材16の細孔を通過し、連結部材16と活性炭収容ケース20との間の隙間23に流れ込む。また、連通管17に流入した水は、連結部材16と活性炭収容ケース20との間の隙間23に流れ込む。
【0052】
隙間23に流入した水は、活性炭収容ケース20と繊維状活性炭21との間の隙間24に流入し、繊維状活性炭21の側面から内部に浸透する。繊維状活性炭21によって不純物が除去且つ抗菌されることにより浄化された水は、環状の繊維状活性炭21の内側の空間21Sに流入し、出口25の連通路26を通過して、固定カバー40の小径筒部44に流入する。小径筒部44に流入した水は、水平連通孔53及び垂直連通孔54を介して導出孔42aに流入し、導出孔42aを通じて外部に送出される。
【0053】
そして、使用期間が経過したカートリッジ11を交換する際には、浄水器10内には水が満たされている。このため、大径筒部43内の水により、嵌合筒部32の上面は圧力を受けている。嵌合筒部32に水圧がかかると、嵌合筒部32の側面の掛止突部33は、ブラケット55の底部56側に押し付けられるような力を受ける。この際、大径筒部43の内径が大きいと、嵌合筒部32が受ける水圧が大きくなり、掛止突部33とブラケット55との摩擦力が増大して、カートリッジ11を手で容易には取り外せなくなる。
【0054】
このため、本実施形態の浄水器10は、その大径筒部43の内径を、手で容易にカートリッジ11を取り外せるような内径にしている。一方、導入口41と導出口42とは一定間隔以上を保持しなければならないため、導入孔41aと大径筒部43との重なり、導出孔42aと小径筒部44との重なりの面積が小さくなるが、本実施形態では、水平連通孔52,53に連結する垂直連通孔51,54を設けたので、導入側及び導出側での圧力損失の低下を抑制することができる。即ち、カートリッジ11を蓋体12から取り外ししやすい構成でありながら、浄水器10から送出される水の流量の低下を抑制することができる。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、浄水器100は、導入路及び導出路に、その中心軸X1,X2と平行な中心軸を有する水平連通孔52,53と、その水平連通孔52,53に対して垂直に連結された垂直連通孔51,54とを備えるので、大径筒部43の内径を小さくしても、装置に導入する水量及び装置から導出される水量の低下を抑制することができる。即ち、カートリッジ11の取り外しを容易にするために大径筒部43の内径を小さくすると、装置に導入する水又は装置から送出される水の流量が低下してしまうことがある。これに対し、水平連通孔52,53に対して垂直連通孔51,54を垂直に設け、圧力損失を低下させたので、水平連通孔52,53の内径を拡大することなく、装置に導入する水又は装置から導出する水の流量の低下を抑制することができる。
【0056】
(2)上記実施形態では、垂直連通孔51,54は、その長手方向が、導入孔41a及び導出孔42aの中心軸X1,X2と平行な方向に延びている。このため、水平連通孔52,53を中心軸X1,X2に直交する方向に拡大することなく、開口面積を大きくする
ことができるので、大径筒部43の小径化と、大径筒部43に関わる小径筒部44、嵌合筒部32及び出口25等との小径化とを図ることができる。
【0057】
(3)上記実施形態では、垂直連通孔51は導入路を構成する壁部45bと、導出路を構成する壁部42bに形成した。このため、原水の導入量及び導出量を良好に確保することができる。
【0058】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、本発明の水処理装置を、水を軟水化及び浄化する浄軟水器に具体化したが、その他の水処理装置に具体化してもよい。例えば、イオン交換樹脂のみが収容されている軟水器、活性炭や逆浸透膜等のフィルタを収容した浄水器に具体化してもよい。また、水中の所定のイオンを除去するいわゆる純水器、アルカリイオン水等を生成する整水器に具体化してもよい。
【0059】
・上記実施形態では、第1の連結孔及び第2の連結孔を、導入路及び導出路に設けたが、いずれか一方に設けるようにしてもよい。
・第1の連結孔、第2の連結孔の形状は特に限定されず、円形状、矩形状等の形状にすることができる。
【0060】
・上記実施形態では、蓋体12とカートリッジ11とを固定する際に、掛止突部33及び掛止孔59とを掛止状態とするようにしたが、掛止突部33及び掛止孔59を省略するようにしてもよい。
【0061】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理装置において、前記固定部は、前記嵌合部、前記流路及び前記第1の連通孔及び第2の連通孔が形成された流路形成部材を備えるとともに、前記カートリッジの掛止部が挿入される掛止孔と、前記流路形成部材に締結される第1締結部と、前記水処理装置の外部の部材に締結される第2締結部とを有するプレートとを備え、前記カートリッジを前記固定部に装着する際には、前記掛止部を前記掛止孔に挿入し前記カートリッジを前記固定部に対して締結方向に回転させて前記掛止部及び前記掛止孔を掛止状態とし、前記カートリッジを前記固定部から取り外す際には、前記カートリッジを反締結方向に回転させて前記掛止部及び前記掛止孔の掛止状態を解除することを特徴とする水処理装置。
【0062】
(a)に記載の発明によれば、水処理装置には、カートリッジの掛止部が挿入さえる掛止孔と、固定部に固定される第1締結部と、浄水器の外部の部材に締結される第2締結部とを備えるプレートが備えられる。このため、カートリッジを固定部に対して反締結方向に回転させて取り外す際、プレートがカートリッジの回転に伴い連れ回らないとともに、プレートが強固に固定されているので、掛止部と掛止孔との掛止状態をさらに容易に解除できる。
【符号の説明】
【0063】
10…浄水器、11…カートリッジ、12…固定部を構成する蓋体、25…連結部としての出口、26…連通路、40…流路形成部材としてのカートリッジカバー、41a…導入路を構成する導入孔、42…第1締結部としての底部、42a…導出路を構成する導出孔、43…第2締結部としての側部、44…嵌合部としての小径筒部、45…掛止孔、45a…導入路を構成する導入管路、42b,45b…壁部、52,53…水平連通孔、51,54…垂直連通孔、55…ブラケット、X1,X2…中心軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジと、水を導入する導入路と、前記カートリッジを通過した水を導出する導出路と、前記カートリッジが着脱可能に固定される固定部とを備えた水処理装置において、
前記カートリッジは、前記固定部に固定される連結部を備え、
前記固定部は、前記連結部と嵌合し内側に流路を有する嵌合部と、前記導入路及び前記導出路とを備えるとともに、前記導入路及び前記導出路の少なくとも一方に、前記導入路及び前記導出路の中心軸と平行な中心軸を有する第1の連通孔と、その第1の連通孔に対して垂直に連結された第2の連通孔とを備えることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記第2の連通孔は、その長手方向が、前記導入路及び前記導出路の中心軸と平行な方向になるように形成されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水処理装置において、
前記第2の連通孔は、前記導入路を構成する壁部と前記導出路を構成する壁部とに形成されていることを特徴とする水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−143709(P2012−143709A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4069(P2011−4069)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(591024719)クリタック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】