説明

水処理装置

【課題】本発明は、装置設備のコンパクト化を図るとともに、設備費用を削減することができる水処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の水処理装置10によれば、海水を一次処理する一次処理部50と、一次処理部50によって処理された海水を二次処理する二次処理部52とを容器に並設収容することで、一次処理部50と二次処理部52とを連結する配管を無くしたので、装置設備のコンパクト化が図られ、また、設備費用も削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明装置は、水処理装置に関し、特に逆浸透膜(以下、RO(Reverse 0smosis))膜を使用して海水を淡水に処理する淡水化装置等の水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RO膜を使用した従来の淡水化装置では、逆浸透圧を利用するため、特許文献1の如く、円筒状に構成されたベッセル(圧力容器)内にRO膜エレメントが充填されたモジュールが用いられている。脱塩される海水(被処理水)は、RO膜エレメントに導入されてRO膜に浸透することにより脱塩される。脱塩された透過水(分離水)は、RO膜エレメントの中央部に配置されている芯管に浸透し、芯管からベッセルの外部に排出管を介して取り出される。
【0003】
RO膜としては、特許文献2の如く、濾過膜とメッシュ状のサポートとを重ね合わせて袋状に閉じた濾過膜エレメントを、芯管を中心にロールケーキ状に巻いたスパイラル膜エレメントが知られている。また、多数本の中空糸膜を使用した膜も周知である。更に、ベッセル内において、海水に加える圧力は5MPa以上であり、この圧力に耐え得るようにベッセルや配管部材等は、FRP製等の耐圧部材で構成されている。
【0004】
ところで、淡水化装置等の水処理装置では、特許文献3の如く、被処理水を一次処理する一次処理部と、一次処理部によって処理された被処理水を二次処理する二次処理部とが送液管を介して直列に接続されて、被処理水を2段階に処理するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−534271号公報
【特許文献2】特表2008−534270号公報
【特許文献3】特開2010−119999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一次処理部と二次処理部とを送液管を介して連結した淡水化装置では、一次処理部と二次処理部が多数のモジュールで構成されているため、それぞれを連接する送液管やバルブや配管接続部材の数が膨大になり、淡水化処理設備が大掛かりなものになるという欠点があった。また、この送液管、バルブ、配管接続部材は、防錆と耐久性とを考慮して非常に高価な材質(スーパーステンレス製等)なので、淡水化処理設備の設備費用が莫大になるという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、装置設備のコンパクト化を図るとともに、設備費用も削減することができる水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために、少なくとも被処理水を処理するための複数の水処理部からなる水処理装置であって、水処理部が複数段からなるとともに、前段の水処理部の処理水が次段の水処理部の被処理水となるように多段接続され、前記複数段の水処理部が容器に並設して収容されていることを特徴とする水処理装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、前段の水処理部と次段の水処理部とを容器内に並設して収容することで、前段の水処理部と次段の水処理部とを連結する送液管を無くしたので、装置設備のコンパクト化が図られ、また、設備費用も削減することができる。
【0010】
本発明の前記容器には、該容器内に前記被処理水を導入する導入管と、該導入管から導入された前記被処理水を前記前段の水処理部に導入する導入流路と、前記前段の水処理部によって処理された前記被処理水を前記次段の水処理部に折り返して導入する後次処理部供給流路とが備えられ、前記前段の水処理部を通過した被処理水が、前記後次処理部供給流路を介して前記次段の水処理部に導入されることにより、前記前段の水処理部を通過する前記被処理水の流れ方向と、前記次段の水処理部を通過する前記被処理水の流れ方向とが逆方向に設定されていることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、被処理水は導入管を介して容器内部の導入流路に導入され、導入流路から一次処理部に導入される。そして、被処理水は前段の水処理部を通過して一次処理され、この後、後次処理部供給流路を通過することで折り返されて次段の水処理部に導入される。そして、被処理水は、次段の水処理部を通過して二次処理される。本発明では、前段の水処理部を通過する被処理水の流れ方向と、次段の水処理部を通過する被処理水の流れ方向とを逆方向に設定しているので、双方の流れ方向を同一とした場合の容器と比較して、径は若干大きくなるが、軸方向に無用に長<ならず、コンパクトになる。
【0012】
前記流れ方向に特に制約はないが、流路を短くする、すなわち、前段の水処理部の被処理水出口が次段の水処理部の被処理水入口と短くするという観点から、前段の被処理水の流れ方向と次段の被処理水の流れ方向とを逆方向に設定することが好ましい。
【0013】
本発明は、前記前段の水処理部によって前記被処理水から分離された分離水を前記容器から排出する排出管が前記容器に貫通して配置され、前記次段の水処理部によって前記被処理水から分離された次分離水を前記容器から排出する後次分離水排出管が前記容器に貫通して配置され、前記次段の水処理部を通過した前記被処理水を前記容器から排出する後次被処理水排出管が前記容器に貫通して配置されていることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、容器内で分離された一次分離水を排出管から容器の外部に排出することができ、また、分離された二次分離水を後次分離水排出管から容器の外部に排出することができ、更に、次段の水処理部を通過した被処理水を後次被処理水排出管から容器の外部に排出することができる。
【0015】
本発明によれば、前記容器は円筒状に構成されるとともに、前記処理部は一次処理部と二次処理部とからなる二段で構成され、前記一次処理部は、前記容器の内周壁面に沿って複数のモジュールを配置して構成され、前記二次処理部は、前記容器の中心軸に沿って、又は該中心軸周りにモジュールを配置して構成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の前記容器、及びその内部に構成される一次処理部、第二次処理部の形状に制約はないが、円筒状に構成されることが好ましい、また、一次処理部と二次処理部は、複数の円筒形のモジュールから構成されるとともに、その一部が前記一次処理部、残りが前記二次処理部として構成されることが好ましい。更に、前記一次処理部は、前記容器の内周壁面に沿って複数のモジュールを配置して構成され、前記二次処理部は、前記容器の中心軸に沿って、又は該中心軸周りにモジュールを配置して構成することも好ましい実施態様である。
【0017】
本発明によれば、二次処理部に導入される被処理水は、一次処理部において一次分離水が排出されているため、一次処理部に導入される初期の被処理水よりも少ない。つまり、二次処理部は一次処理部よりも被処理水量が少なくなる。また、各処理部の性能や運転条件設計によって、一次処理部と二次処理部の処理量比を適宜設定することができる。例えば、モジュールの設置台数の多い一次処理部を、スペースの広い容器の内周壁面に沿って配置し、モジュールの設置台数の少ない二次処理部では容器の中心軸に沿ってモジュールを1台、又は中心軸周りにモジュールを複数台配置する。これにより、容器内のスペースを有効利用して必要最小限の一次処理部と二次処理部を配置することができる。
【0018】
本発明の前記容器の中心軸に沿って配置される前記二次処理部の1台のモジュールは、そのモジュールの径を、前記容器の内周壁面に沿って配置される前記一次処理部のモジュールの径よりも大径に構成されていることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、前記複数の処理部のそれぞれの次段に対する前段の膜面積の比率が1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、前記複数の処理部のそれぞれの被処理水入口流量に対する被処理水出口流量が1/5以上であり、かつ、前段処理部の分離水流量が次段処理部の分離水量の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0021】
特に、一次処理部、二次処理部がともに同等の性能を有する膜分離プロセスである場合、膜分離プロセスに応じて膜面積当たりの分離水量の最大値が決まっているため、一次処理部における分離量を被処理水量から減じた値が、二次処理部に供給され、更に分離水が得られることとなる。また、クロスフローで分離を行う場合は、分離水量に対する被処理水供給量の最大値と被処理水排出量の最小値を決定する必要がある。具体的には、RO膜で二段処理を行う場合は、一次処理水の被処理水供給量に対して二次処理水の被処理水排水量が1/5以上であることが必要である。
【0022】
よって、一次処理部の膜面積が二次処理部の膜面積の1倍以上5倍以下であることが好ましい。更には、海水淡水化の場合は、一次処理の被処理水に比べて二次処理の被処理水は濃度上昇による浸透圧増加が生じるため、一次処理部の膜面積が二次処理部の膜面積に対して1.5〜3倍程度であることが好ましい。これを実現する好適な手段としては、中心軸に沿ったモジュールを大径に構成することによって、中心軸周りに一次処理部、中心軸に沿って二次処理部をバランスよく配置し、更には、容器内のスペースも有効に活用することが可能となり、非常に好ましい実施態様である。
【0023】
本発明によれば、前記複数の処理部における分離膜の阻止性能が前段よりも次段が高いことが好ましい。
【0024】
一次処理部に比べて二次処理部の被処理水は濃縮されているため、一次処理部に比べて阻止性能が高い分離膜を二次処理部に適用すると、一次処理部と二次処理部の分離水質を均一化できるため好ましい。また、一次処理部の分離水と二次処理部の分離水を個別に利用又は処理する場合、一次処理部に比べて阻止性能が低い分離膜を二次処理部に適用すると、阻止性能が同一の分離膜を用いた場合と比べて、二次処理部の分離水を増加させることができる。
【0025】
本発明によれば、二次処理部を複数のモジュールで構成する際のモジュール間のデッドスペースを省くことができ、装置全体の寸法をコンパクト化させることができる。
【0026】
本発明の前記流路構造に特に制約はないが、前記導入管から導入された前記被処理水を、前記一次処理部を構成する複数のモジュールに向けて分散させる分散部材が設けられていることが好ましい。
【0027】
本発明によれば、図6に例示されるように被処理水が第一処理部や第二処理部の被処理水流れ方向と平行でない場合や、モジュールの径が大きく被処理水が偏流し易い場合には、特に効果的である。分散部材の分散作用によって、導入管から導入された前記被処理水は容器の内周壁面に沿って配置された複数のモジュール、又は大径のモジュールに向けて均等に分散する。これにより、一次処理部による被処理水の処理効率が向上する。
【0028】
本発明の前記一次処理部、及び前記二次処理部は特に制約はなく、分離膜以外にも吸着剤、充填塔、イオン交換、砂濾過なども併用することが可能であるが、特に、クロスフローの精密濾過膜や限外濾過膜をはじめとする種々の分離膜、中でもナノ濾過膜や逆浸透膜であることが好ましい。また、被処理水量に対する分離水量の割合である回収率が高い(50%以上)場合に、本発明の適用効果が高い。
【0029】
更に、本発明は、二段処理(一次処理部+二次処理部)のみについて説明しているが、本発明は、更に三段処理以上にも適用することが可能である。
【0030】
本発明によれば、分離膜として逆浸透膜を使用することにより、河川水、下廃水、海水等から淡水を製造する淡水化装置に本発明を適用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の水処理装置によれば、被処理水を前段で処理する前段の水処理部と、前段の水処理部によって処理された被処理水を処理する次段の水処理部とを容器に並設して収容し、前段の水処理部と次段の水処理部とを連結する送液管を無くしたので、装置設備のコンパクト化を図るとともに、設備費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態の水処理装置が設置された海水淡水化処理システムのブロック図
【図2】実施の形態の水処理装置のエレメントの構成を示した斜視図
【図3】図2に示したエレメントがベッセルに組み込まれたモジュールの斜視図
【図4】図2に示したエレメントのRO膜が巻回される前の状態を示したエレメントの正面図
【図5】図2に示したエレメントの正面図
【図6】実施の形態の水処理装置の縦断面図
【図7】(A)は図6のA−A′線に沿う断面図、(B)は図6のB−B′線に沿う断面図、(C)は図6のC−C′線に沿う断面図、(D)は図6のD−D′線に沿う断面図、(E)は図6のE−E′線に沿う断面図、(F)は図6のF−F′線に沿う断面図
【図8】容器の中心軸周りに二次処理部のモジュールを複数台配置したモジュール配置構成の例を示した説明図
【図9】図8に示した容器を容器の軸方向に沿って切断して見た断面図
【図10】容器を8台設置した実施の形態の水処理装置の構造図
【図11】一次処理部を構成する40台のモジュールを備えた従来の水処理装置の構造図
【図12】一次処理部と二次処理部の各モジュールが送液管を介して連結された説明図
【図13】一次処理部と二次処理部の配置に関する変形例を示した説明図
【図14】一次処理部と二次処理部の配置に関する変形例を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明に係る水処理装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
図1は、実施の形態の水処理装置10が組み込まれた海水淡水化処理システム20のブロック図である。
【0035】
同図に示す海水淡水化処理システム20は、海水(被処理水)が貯留されたタンク12、高圧ポンプ14、及び水処理装置10から構成される。タンク12の海水は、高圧ポンプ14によって水処理装置10に高圧で供給され、水処理装置10の後述する一次処理部(前段の水処理部)50及び二次処理部(次段の水処理部)52の各RO膜(分離膜)によって逆浸透処理(脱塩処理)されることにより、脱塩された透過水(分離水)16と、塩分が濃縮された濃縮水(海水:被処理水)18とに分離される。このようにして得られた透過水16は、後述する排出管(排出管66、後次分離水排出管31)を介して水処理装置10の外部に排出され、濃縮水18も同様に排出管(後次被処理水排出管62)を介して水処理装置10の外部に排出される。
【0036】
なお、実施の形態の海水洪水化処理システム20は、高圧ポンプ14によって海水を水処理装置10に高圧で供給しているが、水処理装置10の透過水出口側に高圧の吸引ポンプを接続し、この吸引ポンプによってタンク12から海水を水処理装置10に導入させるようにしてもよい。また、高圧ポンプ14及び吸引ポンプの双方を設けてもよい。
【0037】
タンク12内の海水としては、原海水をそのまま使用してもよいが、前処理を施して原海水に含まれる濁質成分等を除去した海水を使用することが好ましい。前処理としては、フィルタ利用、及び沈殿池に原海水を導入して沈降/浮上分離する方法、また必要に応じて塩素等の殺菌剤を添加し、原海水中の粒子を沈殿除去するとともに微生物を殺菌する等の処理がある。また、原海水に塩化鉄等の凝集剤を添加して濁質成分を凝集させ、これを濾過・沈殿・浮上させて除去した海水を使用してもよい。
【0038】
水処理装置10を構成する、後述の一次処理部50及び二次処理部52は、図2に示すエレメント22を単数、又は複数個直列に接続し、これを図3に示す円筒状のベッセル24に充填してモジュール26、26′とし、このモジュール26、26′を単独で、又は並列に接続することにより構成される。
【0039】
ここで、一次処理部50のモジュールを符号26で示し、二次処理部52のモジュールを符号26′で示す。モジュール26、26′の基本的構造は同一である。
【0040】
ベッセル24の両端は、海水が導入、排出されるように開口されており、導入側の開口部に、高圧ポンプ14によって所定の操作圧力が負荷されるようになっている。なお、図3には、3個のエレメント22、22…を直列に接続したモジュール26、26′が示されているが、エレメント22の個数は3個に限定されるものではない。また、ベッセル24は、高圧(5MPa以上)に耐え得るようにFRP等によって構成されているものもある。
【0041】
図2に示すようにエレメント22は、RO膜28と排出管30とを含む膜ユニット32が集水管34の周囲に配置されて構成されている。膜ユニット32は図4の如く、4枚の袋体状のRO膜28、28…が集水管34の外周部に放射状に接続され、これらのRO膜28、28…を、図5の如く集水管34の周囲にスパイラル状に巻回することにより構成される。袋体状のRO膜28の一端は開口され、この開口部が図4に示す集水管34の透孔36と連通するようにRO膜28が集水管34に接着されている。被処理水である海水は、RO膜28の外表面を流れ、RO膜28を透過することにより脱塩される。そして、RO膜28を透過した脱塩後の透過水は、RO膜28の内側からRO膜28の開口、及び集水管34の透孔36を介して集水管34内に集水され、集水管34から排出管30、31を介してエレメント22から排出される。
【0042】
なお、図4の符号38は、RO膜28の内部に配置されるメッシュ状のスペーサーである。このスペーサー38によって、RO膜28がスパイラル状に巻かれてもRO膜28の内部空間が潰れないように保持される。また、符号40は、隣接するRO膜28、28の間に配置されたメッシュ状のスペーサーである。このスペーサー40もRO膜28と同様に集水管34の外周部に放射状に接着されている。
【0043】
図6は、水処理装置10の縦断面図である。
【0044】
なお、図6において、海水の流れ方向が矢印で示されている。また、図7(A)は、図6のA−A′線に沿う断面図である。図7(B)は、図6のB−B′線に沿う断面図である。図7(C)は、図6のC−C′線に沿う断面図である。図7(D)は、図6のD−D′線に沿う断面図である。図7(E)は、図6のE−E′線に沿う断面図である。図7(F)は、図6のF−F′線に沿う断面図である。
【0045】
図6、図7に示すように、実施の形態の水処理装置10は、海水を一次処理する一次処理部50と、一次処理部50によって処理された海水を二次処理する二次処理部52とが円筒状の容器54に並設して収容されている。一次処理部50は、容器54の内周壁面54Aに沿って等間隔で配置された4台のモジュール26、26…によって構成され、これらの4台のモジュール26、26…は、各々の中心軸が容器54の中心軸に対して平行に配置されている。また、二次処理部52は、容器54の中心軸に沿って配置された1本のモジュール26′によって構成され、このモジュール26′は、その中心軸が容器54の中心軸に合致した位置に配置されている。
【0046】
また、図7では、一次処理部50のモジュール26の径と二次処理部52のモジュール26′の径が略等しいように図示しているが、一次処理部50の処理水量と二次処理部52の処理水量の比に応じてモジュール26、26′の径を適宜選択し、二次処理部52のモジュール26′の径を一次処理部50のモジュール26の径より大きく選定してもよい。なお、一次処理部50の、モジュール26は、ベッセル24に収納した形態であってもよく、ベッセル24に収納せず、複数のエレメント22、22…を直列に接続した形態でもよい。図6、図7には後者のモジュール26が示されている。
【0047】
実施の形態の水処理装置10によれば、一次処理部50と二次処理部52とを容器54に並設して収容することで、一次処理部50と二次処理部52とを連結する送液管を無くしている。これにより、水処理装置10によれば、送液管を有する水処理装置と比較して、装置設備のコンパクト化を図ることができるとともに、設備費用も削減することができる。なお、実施の形態では、二段処理(一次処理部50+二次処理部52)のみについて説明したが、本発明は、更に三段処理以上にも適用することが可能である。
【0048】
水処理装置10では、送液管を無くすことで容器54が必要となるが、この容器54は耐久年数が送液管ほど長く要求されない。よって、容器54の材質は高価なスーパーステンレスではなく、高水圧に耐え得る材質(FRP等)でよい。
【0049】
また、図6に示すように容器54には、容器54内に海水を導入する導入管56と、導入管56から導入された海水を一次処理部50に導入する導入流路58と、一次処理部50によって処理された一次濃縮水(海水:被処理水)を二次処理部52に折り返して導入する後次処理部供給流路60とが備えられている。すなわち、この容器54によれば、一次処理部50を通過した一次濃縮水が、後次処理部供給流路60を介して二次処理部52に導入されることにより、一次処理部50を通過する海水の流れ方向Aと、二次処理部52を通過する一次濃縮水の流れ方向Bとが逆方向に設定されている。
【0050】
この容器54によれば、図1のタンク12から導入管56を介して供給された海水は、導入流路58を介して一次処理部50の4台のモジュール26、26…に導かれる。そして、海水は、4台のモジュール26、26…のRO膜28、28…を順次透過したのち前述の如く各々の集水管34、34…に集水されて各々の排出管30、30…から容器54の外部に一次透過水として排出される。また、一次処理部50のRO膜28、28…を透過しなかった一次濃縮水は、後次処理部供給流路60に導入され、ここで折り返されて二次処理部52のモジュール26′に導入される。そして、二次処理部52のRO膜28、28…を通過することで、二次透過水と二次濃縮水(海水:被処理水)とに分離され、二次透過水が、二次処理部52のモジュール26′の排出管31から容器54の外部に排出されるまた、二次処理部52のRO膜28、28…を透過しなかった二次濃縮水は、後次被処理水排出管62を介して容器54の外部に排出される。
【0051】
なお、図6に示す二次処理部52の排出管31は、一次処理部50の排出管30と反対方向に備えられているが、本発明の実施にあたって同じ方向に設けても、また両側に設けても特に差し支えなく、周辺の配管設計に応じて適宜選択することができる。ただし、例えば分離水の濃度が比較的高くなる二次処理部52の排出管31を後処理に連結する場合は、一次処理部50の排出管30と反対側に独立設置することが好ましい。
【0052】
実施の形態の水処理装置10は、一次処理部50を通過する海水の流れ方向Aと、二次処理部52を通過する一次濃縮水の流れ方向Bとを、容器54内で逆方向に設定しているので,双方の流れ方向を同一とした場合の容器と比較して、径は若干大きくなるが、軸方向に無用に長くならず、コンパクトになる。
【0053】
なお、一次処理部50のモジュール26、26…の各々の排出管30、30…から排出された一次濾過水は、容器54の端部に設けられているタンク64に貯留された後、排出管66を介してタンク64の外部に排出される。
【0054】
ところで、前述の如く実施の形態の容器54は円筒状に構成され、一次処理部50の4台のモジュール26、26…は、容器54の内周壁面54Aに沿って4台配置され、二次処理部52では、容器54の中心軸に沿ってモジュール26′が1台配置されている。
【0055】
二次処理部52に導入される一次濃縮水は、一次処理部50において一次透過水が排出されているため、一次処理部50に導入される初期の海水よりも量が少ない。つまり、二次処理部52は一次処理部50よりも少ない台数で対応できることになる。よって、設置台数の多い一次処理部50のモジュール26、26…を、スペースの広い容器54の内周壁面54Aに沿って配置し、設置台数の少ない二次処理部52のモジュール26′を容器54の中心軸に沿って配置する。これにより、容器54内のスペースを有効利用して必要最小限の一次処理部50側のモジュール26、26…と二次処理部52側のモジュール26′を配置することができる。
【0056】
なお、二次処理部52のモジュール26′の台数は1台に限定されるものではなく、図8及び図9の如く二次処理部52の4台のモジュール26′、26′…を容器54の中心軸の周りに4台配置してもよい。一次処理部50のモジュール26、26…は、容器54の内周壁面54Aに沿って8台配置されている。
【0057】
また、図6に示すように容器54の導入流路58には、導入管56から導入された海水を一次処理部50の4台のモジュール26、26…に向けて分散させる多孔板(分散部材)68が設けられている。この多孔板68に開口された多数の孔70、70…は図7(B)に示すように、多孔板68の中心から外周に向うに従って、その径が大きくなるように構成されている。
【0058】
孔70の径が上述の如く異なる多孔板68の海水分散作用によって、導入管56から導入された海水は、容器54の内周壁面54Aに沿って配置された一次処理部50の4台のモジュール26、26…に向けて均等に分散する。これにより、一次処理部50による海水の処理効率が向上する。また、導入流路58において均等に分散した前記海水は、図7(C)に示す隔壁板72の孔74、74…を介して4台のモジュール26、26…に供給される。これらの孔74、74…は、モジュール26の端部外形円内に多数開口されている。
【0059】
導入管56は、容器54の外周面に接続される以外に、RO膜28の軸方向と同じ向きに接続してもよい。また、排出管66の向きも適宜変更可能である。更に、二次濃縮水の後次被処理水排出管62を、二次透過水の後次分離水排出管31と同軸上に真っ直ぐ配置してもよい。
【0060】
図10は、容器54を8台設置した実施の形態の水処理装置10の構造図である。これに対して、図11は従来の水処理装置100の構造図であり、一次処理部102を構成する40台のモジュール104、104…が示されている。これらの各2台のモジュール104、104が、図12に示す二次処理部106の1台のモジュール108に送液管110を介して連結されている。
【0061】
図11の水処理装置100によれば、主管112に供給された海水は4本のヘッダ管114、114…に分配され、これらのヘッダ管114、114から各導入管116、116を介して一次処理部102の40台のモジュール104、104…に供給される。そして、40台のモジュール104、104…を通過した一次濃縮水は、図12に示した送液管110を介して二次処理部106のモジュール108に供給される。したがって、図11に示した水処理装置100によれば、スーパーステンレス製の高価な送液管110が20本必要となる。
【0062】
これに対して図10に示した実施の形態の水処理装置10によれば、主管76に供給された海水は2本の枝管78、78に分配され、これらの枝管78、78から各導入管56、56…を介して容器54、54…に供給される。海水は各容器54、54…内で一次処理及び二次処理される。
【0063】
このように図10に示した実施の形態の水処理装置10は、図11、図12に示した従来の水処理装置100と比較して、装置設備のコンパクト化を図ることができるとともに、多数本の送液管110が不要になるので、設備資用も削減できることが分かる。
【0064】
なお、一次処理部のモジュール26と二次処理部のモジュール26′の配置、及びサイズは、上述した形態に限定されるものではない。例えば図13に示すように、容器54の内周面に沿って一次処理部のモジュール26を複数配置し、その内側に、モジュール26よりも大径なモジュール26′を配置した形態でもよい。この形態によれば、二次処理部を複数のモジュールで構成する際のモジュール間のデッドスペースを省くことができ、装置全体の寸法をコンパクト化させることができる。
【0065】
また、モジュール26、26′の導入管56及び排出管30、31の配置上の制約がある場合には、図14に示すように、上下方向に複数のモジュール26を配置し、その両側にモジュール26′を配置してもよい。
【0066】
一方、一次処理部のモジュール26、26…の膜面積は、二次処理部のモジュール26′の膜面積の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0067】
また、一次処理部のモジュール26、26…、及び二次処理部のモジュール26′において、それぞれの被処理水入口流量に対する被処理水出口流量は、1/5以上であり、かつ、一次処理部のモジュール26、26…の分離水流量が二次処理部のモジュール26′の分離水量の1倍以上5倍以下であることが好ましい。
【0068】
一次処理部、二次処理部がともに同等の性能を有する膜分離プロセスである場合、膜分離プロセスに応じて膜面積あたりの分離水量の最大値が決まっているため、一次処理部における分離量を被処理水量から減じた値が、二次処理部に供給され、更に分離水が得られることとなる。また、クロスフローで分離を行う場合は、分離水量に対する被処理水供給量の最大値と被処理水排出量の最小値を決定する必要がある。具体的には、RO膜28で二段処理を行う場合は、一次処理水の被処理水供給量に対して二次処理水の被処理水排水量が1/5以上であることが必要である。
【0069】
よって、一次処理部の膜面積が二次処理部の膜面積の1倍以上5倍以下であることが好ましい。また、海水淡水化の場合は、一次処理部の被処理水に比べて二次処理部の被処理水は濃度上昇による浸透圧増加が生じるので、一次処理部の膜面積が二次処理部の膜面積に対して1.5〜3倍程度であることが好ましい。これを実現する好適な手段としては、中心軸に沿ったモジュールを大径に構成することによって、中心軸周りに一次処理部、中心軸に沿って二次処理部をバランスよく配置し、更には、容器内のスペースも有効に活用することが可能となり、非常に好ましい実施態様である。
【0070】
また、一次処理部、及び二次処理部における分離膜の阻止性能が、一次処理部よりも二次処理部が高いことが好ましい。
【0071】
一次処理部に比べて二次処理部の被処理水は濃縮されているため、一次処理部よりも阻止性能が高い分離膜を二次処理部に適用すると、一次処理部と二次処理部の分離水質を均一化できるため好ましい。また、一時処理部の分離水と二次処理部の分離水を個別に利用又は処理する場合、一次処理部よりも阻止性能が低い分離膜を二次処理部に適用すると、阻止性能が同一の分離膜を用いた場合と比較して、二次処理部の分離水を増加させることができるので好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
実施の形態では、RO膜を使用して海水を淡水化処理する水処理装置について説明したが、分離膜はRO膜に限定されるものではない。すなわち、分離膜を使用して被処理水を水処理する装置であれば、本発明の構成を適用できる。また、被処理水は海水に限定されるものではなく、RO膜等の分離膜もしくはその他の分離プロセスを使用して、水道水や下水を処理した再生水等の水中の溶存物質、濁質、微生物等を除去する水処理装置であっても、本発明の構成を適用できる。
【符号の説明】
【0073】
10…装置、12…タンク、14…高圧ポンプ、16…透過水、18…濃縮水、20…淡水化処理システム、22…エレメント、24…ベッセル、26…一次処理部のモジュール、26′…二次処理部のモジュール、28…RO膜、30…排出管、31…後次分離水排出管、32…膜ユニット、34…集水管、36…透孔、38…スペーサー、40…スペーサー、50…一次処理部、52…二次処理部、54…容器、54A…内周壁面、56…導入管、58…導入流路、60…後次処理部供給流路、62…後次被処理水排出管、64…タンク、66…排出管、68…多孔板、70…孔、72…隔壁板、74…孔、76…主管、78…枝管、100…水処理装置、102…一次処理部、104…モジュール、106…二次処理部、108…モジュール、110…送液管、112…技管、114…ヘッダ管、A…海水流れ方向、B…一次処理水の流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被処理水を処理するための複数の水処理部からなる水処理装置であって、水処理部が複数段からなるとともに、前段の水処理部の処理水が次段の水処理部の被処理水となるように多段接続され、前記複数段の水処理部が容器に並設して収容されていることを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記容器には、該容器内に前記被処理水を導入する導入管と、該導入管から導入された前記被処理水を前記前段の水処理部に導入する導入流路と、前記前段の水処理部によって処理された前記被処理水を前記次段の水処理部に折り返して導入する後次処理部供給流路とが備えられ、前記前段の水処理部を通過した被処理水が、前記後次処理部供給流路を介して前記次段の水処理部に導入されることにより、前記前段の水処理部を通過する前記被処理水の流れ方向と、前記次段の水処理部を通過する前記被処理水の流れ方向とが逆方向に設定されている請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記前段の水処理部によって前記被処理水から分離された分離水を前記容器から排出する排出管が前記容器に貫通して配置され、前記次段の水処理部によって前記被処理水から分離された次分離水を前記容器から排出する後次分離水排出管が前記容器に貫通して配置され、前記次段の水処理部を通過した前記被処理水を前記容器から排出する後次被処理水排出管が前記容器に貫通して配置されている請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記容器は円筒状に構成されるとともに、前記処理部は一次処理部と二次処理部とからなる二段で構成され、前記一次処理部は、前記容器の内周壁面に沿って複数のモジュールを配置して構成され、前記二次処理部は、前記容器の中心軸に沿って、又は該中心軸周りにモジュールを配置して構成されている請求項1、2又は3に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記容器の中心軸に沿って配置される前記二次処理部の1台のモジュールは、そのモジュールの径を、前記容器の内周壁面に沿って配置される前記一次処理部のモジュールの径よりも大径に構成されている請求項4に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記導入流路には、前記導入管から導入された前記被処理水を前記一次処理部の複数のモジュールに向けて分散させる分散部材が設けられている請求項4、又は5に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記複数の処理部はナノ濾過膜もしくは逆浸透膜からなる請求項1〜6のいずれかに記載の水処理装置。
【請求項8】
前記複数の処理部のそれぞれの次段に対する前段の膜面積の比率が1倍以上5倍以下である請求項7に記載の水処理装置。
【請求項9】
前記複数の処理部における分離膜の阻止性能が前段よりも次段が高い請求項7、又は8に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記複数の処理部のそれぞれの被処理水入口流量に対する被処理水出口流量が1/5以上であり、かつ、前段処理部の分離水流量が次段処理部の分離水量の1倍以上5倍以下である請求項7、8又は9に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−76073(P2012−76073A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113790(P2011−113790)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、最先端研究開発支援プログラム(最先端PG(Mega−ton Water System)100万m3/日規模大型プラント構成最適化 インテリジェントメガトンモジュールシステム)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】