水分交換用中空糸膜モジュール
【課題】中空糸膜内に供給される乾燥した酸化剤ガスを充分に加湿することができ、充填された中空糸膜の偏りを抑制して、湿潤したオフガスを均一に流通させることができる水分交換用中空糸膜モジュールを提供する。
【解決手段】筒状ケースと、ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して空間を封止したシール部と、ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有し、かつ第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備える水分交換用中空糸膜モジュール。
【解決手段】筒状ケースと、ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して空間を封止したシール部と、ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有し、かつ第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備える水分交換用中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば燃料電池システムに用いて好適な水分交換用中空糸膜モジュールに係り、特に、被加湿ガスに対する加湿効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池としては、平板状の膜電極構造体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の両側にセパレータが積層された積層体が単位セルとされ、複数の単位セルが例えば数百層積層されて燃料電池スタックとして構成された燃料電池が知られている。膜電極構造体は、正極(空気極、カソード)および負極(燃料極、アノード)を構成する一対の電極の間にイオン交換樹脂等からなる電解質膜が挟まれた三層構造である。このような燃料電池によると、例えば、燃料極側のガス拡散電極に面するガス流路に燃料ガスを流し、空気極側のガス拡散電極に面するガス流路に酸化剤ガスを流すと電気化学反応が起こり、発電が生じる。
【0003】
ここで、上記のような電気化学反応を安定させるためには、膜電極構造体が湿潤していることが望ましい。たとえば、特許文献1には、燃料ガス流路内で燃料ガスに発電生成水が水蒸気となって加わることにより、水蒸気分圧が上昇した使役後のアノード排出ガスを加湿ガスとし、未使役の燃料ガスを加湿する燃料電池システムが開示されている。
【0004】
ところで、近年、燃料電池の高性能化に伴って膜電極構造体は薄くなる傾向にあり、電気化学反応で生成され空気極側に出てくる水が燃料極側へ移動するという現象が生じるようになってきた。このため、燃料ガスを加湿すると燃料極の湿潤状態が過剰となり、燃料と燃料極との接触が妨げられるフラッディングと呼ばれる現象が生じる。一方、空気極側は、湿潤の程度が過剰でも電気化学反応にはさほど差し障りがない場合のあることが知られている。したがって、最近では、燃料ガスを加湿するよりも酸化剤ガスを加湿する技術が重要視されてきている。
【0005】
酸化剤ガスを加湿する従来の自動車用燃料電池システムとして、たとえば、特許文献2には、水蒸気透過膜で区切られた加湿器の一方の空間に乾燥した未使役の酸化剤ガスを供給し、他方の空間に湿潤した使役後の酸化剤ガスの排気(オフガス)を供給して、水蒸気透過膜を介してオフガスから酸化剤ガスへ水分を移動させる技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記技術では、略平面状の水蒸気透過膜を介してその両側からガスを接触させて水分移動を行うため、接触領域が小さく、連続的に供給される酸化剤ガスに対して水分移動が間に合わず、加湿効率が十分ではないという問題があった。
【0007】
このような問題に対して、たとえば、特許文献3〜6には、加湿器内に中空糸膜を充填して、未使役の酸化剤ガスを中空糸膜の中空内部に流通させるともに使役後のオフガスを中空糸膜外壁に接触するように流通させて、中空糸膜を介して水分移動を行う技術が開示されている。これらの技術によれば、加湿器内に微細な中空糸膜が多数充填されているので、水分移動を行うための接触領域は著しく増加しており、特許文献1に記載の技術と比較して加湿効率は向上している。
【0008】
しかしながら、中空糸膜は、水分移動の際の吸湿によって膨潤するため、加湿器内に充填する際にはその寸法変化を考慮して、中空糸膜間に予め空隙を設けて充填しなければならず、密に充填することができない。このように、中空糸膜間には空隙があり、また、中空糸膜は弾性的に変形可能であるため、加湿器内にオフガスを導入すると、ガス流速が最も大きい導入部分においてオフガスが中空糸膜を押し退けて、隙間が形成されてしまう。オフガスは、この隙間をバイパス路として流れてしまうため、加湿器内を均一に流通させることができず、加湿効率が低下するという問題があった。
【0009】
このような問題に対して、特許文献4に記載の技術では、数本の中空糸膜を剛性棒と共に束ねて固定したものを多数製造し、これを加湿器に充填することで、中空糸膜の移動を抑制している。また、特許文献5および6に記載の技術では、加湿器内に仕切り板を設けることによって、オフガスの流路を導き、また、中空糸膜の特定の方向への偏りを抑制している。さらに、加湿器内にメッシュ状の多孔体を設けて、中空糸膜を拘束し、偏りを抑制する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭61−3671号公報
【特許文献2】特開平6−132038号公報
【特許文献3】特願2002−147802号公報
【特許文献4】特願2004−311287号公報
【特許文献5】特願2005−40675号公報
【特許文献6】特願2007−323982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献4に記載の技術では、中空糸膜を剛性棒と共に束ねたものを多数製造する必要があるため、工程数が増大して好ましくない。また、特許文献5および6に記載の技術では、従来よりは中空糸膜の移動は抑制することができるものの、仕切り板で区切られた領域内での偏りまでも抑制することは困難であり、また、ガスを流通させる必要上、仕切り板を完全に閉じた構造とすることはできず、その開口部分における偏りを抑制することはできない。さらに、メッシュによって中空糸膜の偏りを抑制する技術では、メッシュに常に強力な引張力が働くため、メッシュに伸びが生じてしまい、抑制効果が持続しないという問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、中空糸膜内に供給される乾燥した燃料電池未使役のガスを充分に加湿することができるのは勿論のこと、加湿器内に充填された中空糸膜の偏りを抑制して、湿潤した燃料電池使役後のオフガスを加湿器内で均一に流通させることが長期間持続できる水分交換用中空糸膜モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、上記空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有し、かつ第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備えることを特徴としている。
【0014】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、中空糸膜内を経由する第1流体経路に例えば乾燥した未使役のガス(酸化剤ガスあるいは燃料ガス)を流通させ、中空糸膜外を経由する第2流体経路に例えば湿潤した使役後のオフガスを流通させてオフガスの水分を未使役のガスに移動させるにあたり、中空糸膜が充填されている空間内において、第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材が配置されているので、中空糸膜は、多孔部材によって支持されて、その移動が拘束される。これにより、中空糸膜と筒状ケースとの隙間が形成されないので、オフガスは中空糸膜モジュール内を均一に流通し、効率良く水分交換を行うことができる。また、多孔部材は、下流側に向かって凸に膨らんでいるので、中空糸膜によって押圧された際、多孔部材が平面状である場合と比較して、上記断面視での両端に発生する引張力が緩和される。これにより、多孔部材の伸びが抑制され、長期に亘って効果を持続させることができる。
【0015】
本発明では、凸に形成された多孔部材は、第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって複数備えられていることが好ましい。このような多孔部材が複数備えられていると、中空糸膜が充填される空間が、筒状ケース(上流側側面)と多孔部材との間の領域、多孔部材どうしの間の領域、多孔部材と筒状ケース(下流側側面)との間の領域に分割され、それぞれの領域で中空糸膜が保持され、移動がより強固に抑制される。また、それぞれの多孔部材が凸状に形成されているので、引張力を軽減させて伸びを抑制することも同様である。
【0016】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、 上記空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有し、かつ第1流体経路に直交する面での断面視で上記第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備え、第1流体経路に直交する面での断面視で、凸状多孔部材は、第2流体経路および第1流体経路に直交する方向に複数が連続的に接続されて設けられ、該複数設けられた凸状多孔部材は、第2流体経路の下流方向へ複数段設けられ、凸状多孔部材は、第2流体経路の上流側に位置する凸状多孔部材の中央部と、下流側に位置する凸状多孔部材の端部とが接続されるように設けられていることを特徴としている。
【0017】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、凸状の多孔部材が第2流体経路の横方向に複数配列されているのみならず、下流方向へも複数段配列されているので、多孔部材によって囲まれる領域がより細分化されて、それぞれの中空糸膜の移動はより強固に抑制される。また、それぞれの多孔部材が凸状に形成されているので、引張力を軽減させて伸びを抑制することも同様である。
【0018】
本発明では、多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材が設けられ、支持部材は、筒状ケースの軸方向に平行に延在し、多孔部材の端部から離間し、かつ支持部材の側面を上記多孔部材と接して接続され、支持部材の端部を筒状ケースに固定されていることが好ましい。中空糸膜は、多孔部材によって囲まれて移動を抑制されているが、多孔部材がさらに筒状ケース内の空間内で支持部材に接触することによって支持されているので、多孔部材の引張力による伸びを抑制するとともに、中空糸膜の移動をより強固に抑制する。
【0019】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、第1流体経路に直交する面での断面視における第2流体経路に直交する方向に延在する平面状の多孔部材と、多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材を備え、支持部材は、軸方向に平行に延在し、多孔部材の端部から離間しかつ支持部材の側面を多孔部材と接して接続され、支持部材の端部を筒状ケースと固定されていることを特徴としている。
【0020】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、中空糸膜は、平面に延在する多孔部材によって支持されて移動を抑制されているが、多孔部材がさらに筒状ケース内の空間内で支持部材に接触することによって支持されているので、引張力による多孔部材の伸びを抑制するとともに、中空糸膜の移動をより強固に抑制する。
【0021】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有する多孔部材と、第2流体経路に沿って延在し、筒状ケースと多孔部材とを接続する接続用多孔部材を備えることを特徴としている。
【0022】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、中空糸膜は、平面に延在する多孔部材によって支持されて移動を抑制されているが、多孔部材がさらに略垂直方向に延在する別の多孔部材によって筒状ケースとの間を接続されているので、引張力による多孔部材の伸びが抑制されるとともに、中空糸膜の移動をより強固に抑制する。
【0023】
本発明では、複数の多孔部材のうち最も導入口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に第2流体経路の下流側で隣接する多孔部材との間隔が、他の多孔部材どうしの間隔、および最も排出口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に第2流体経路の上流側で隣接する多孔部材との間隔のいずれよりも小さいことが好ましい。複数の多孔部材のうち導入口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に下流側で隣接する多孔部材との間隔が最も小さいので、ガス流速が大きい導入口近傍であっても中空糸膜の移動が抑制される。これにより、中空糸膜と筒状ケースとの隙間が形成されないので、オフガスは中空糸膜モジュール内を均一に流通し、効率良く水分交換を行うことができる。
【0024】
本発明では、中空糸膜の乾燥状態では、中空糸膜どうしの間および中空糸膜と多孔部材との間に形成される空隙部を有し、中空糸膜の膨潤状態では、これらが互いに接触することで空隙部を減少させることが好ましい。このような態様によれば、水分交換用中空糸膜モジュールの運転時にあって中空糸膜と多孔部材を互いに接触させることができ、ケースに沿った隙間の形成が確実に抑制される。
【0025】
本発明では、多孔部材は、少なくともその一端を前記シール部で固定されていることが好ましい。このような態様によれば、ガスの流通に際して力が加わっても多孔部材の移動が抑制されるため、多孔部材と中空糸膜の摩擦による中空糸膜の損傷が抑制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、モジュール内に充填された中空糸膜のうち最も偏りが生じ易い導入口付近の部分において中空糸膜が多孔部材と筒状ケースとの間で保持されて拘束されているので、オフガスの流通による中空糸膜の偏りを抑制し、モジュール内のオフガスを均一に流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】水分交換用中空糸膜モジュールを示す透視斜視図である。
【図2】図1の水分交換用中空糸膜モジュールを示す側方断面図である。
【図3】従来の水分交換用中空糸膜モジュールにおける中空糸膜の偏りを示す側方断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す側方断面図である。
【図6】本発明の多孔部材の変形例を示す図である。
【図7】本発明の多孔部材の変形例を示す図である。
【図8】本発明の多孔部材の変形例を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す断面図である。
【図10】本発明の多孔部材および支持部材の変形例を示す図である。
【図11】本発明の多孔部材および支持部材の変形例を示す図である。
【図12】本発明の多孔部材および支持部材の変形例を示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、実施形態の説明に先立ち、本発明を適用することができる水分交換用中空糸膜モジュールの一般的な構成について、図1および2を参照して説明する。図1および2に示すように、水分交換用中空糸膜モジュールMは、筒状ケース10を有し、この筒状ケース10内の空間(以下、充填空間と略称する場合がある)には、複数の中空糸膜11が、筒状ケース10の軸方向(筒状ケースの延在する方向)と平行に充填されている。複数の中空糸膜11は、吸湿に際して膨張するため、その寸法変化を吸収するために、所定の間隔を介して充填されている。
【0029】
中空糸膜11の両端は、シール部14によって筒状ケース10に固定されている。図1では、中空糸膜11は部分的に省略して図示しているが、中空糸膜11は両端のシール部14間に延在している。シール部14は、上記充填空間における中空糸膜11の外側を合成樹脂等で埋設したものであり、充填空間のみを外部に対して封止するものである。したがって、中空糸膜11の中空内部は封止されておらず、中空糸膜11の中空内部は両端とも外部に連通している。本実施形態では、中空糸膜11の一端側(矢印20)から中空糸膜の中空内部を経由して他端側(矢印21)に至る経路を第1流体経路と定義する。
【0030】
筒状ケース10の一側面(例えば図においては底面)には、ガスの導入口12が設けられており、導入口12の下流側であってかつ対向する面(例えば図においては頂面)には、ガスの排出口13が設けられている。本実施形態では、導入口12(矢印22)から充填空間内でありかつ中空糸膜11の外側を経由して排出口13(矢印23)に至る経路を第2流体経路と定義する。
【0031】
上記の水分交換用中空糸膜モジュールMにおいては、例えば、乾燥した燃料電池未使役のガス20を第1流体経路に導入するとともに、このガスを燃料電池で使役した後の排気ガスであるオフガス22を第2流体経路に導入するので、乾燥した未使役のガス20が中空糸膜11内を通過すると同時に、湿潤した使役後のオフガス22は充填空間内の中空糸膜11の外側を通過する。中空糸膜11は、内外のガス交換は阻止するが、その両面に存在する微細な孔を通じて水分のみを移動させることができるため、高湿潤側から低湿潤側への水分移動が行われる。このようにして、第1流体経路および第2流体経路に導入された乾燥した未使役のガス20および湿潤した使役後のオフガス22それぞれにおいては、水分が移動し、加湿された未使役のガス21および湿度が低下した使役後のオフガス23となって排出される。
【0032】
図3は、従来の水分交換用中空糸膜モジュールにおける問題点を説明するための図である。上述したように、中空糸膜11は、湿潤によって寸法変化するために、乾燥状態にあっては所定の間隔を以って充填空間内に固定されている。また、中空糸膜11は、弾性的に変形する性質を有している。そのため、図3に示すように、オフガス22が導入口12から導入されると、ガス流速が最も大きい導入口12側で圧力が高まり、オフガス22は中空糸膜11を押し退けて変形させ、筒状ケース10の底面に沿って隙間が生じてしまう。オフガスは、矢印24で示すようにこの隙間を経由して下流側(図において右側)へ一気に移動し、その後、排出口13へ向かって流通して排出されてしまう。このように、オフガスは上流側(図において左側)においては中空糸膜11の空隙を通過せず、下流側のみで水分移動が行われるため、中空糸膜11の利用率および加湿効率が低いという問題があった。
【0033】
第1実施形態
図4は、上述した従来の問題を解決することができる本発明の水分交換用中空糸膜モジュールの第1実施形態を示す図である。なお、図4の水分交換用中空糸膜モジュールは、多孔部材30以外の構成要素は図1および2と共通であるため、ここでは共通部分の説明は省略し、第1実施形態特有の構成、作用および効果について説明する。また、以降の実施形態についても同様である。
【0034】
図4に示すように、充填空間内には、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ多孔部材30が、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材30の図において左右の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。多孔部材30は、上流側の中空糸膜11を囲んでいる。
【0035】
多孔部材30は、オフガスを十分に流通させることができる開口部を有し、オフガスのガス圧力を受けても変形しにくい剛性を有し、かつ長期の使用に耐え得るような耐食性を有する材料で構成されている。多孔部材30は、例えばステンレス鋼等の金属やプラスチックからなるメッシュで構成してもよく、その他、開口部を多数打ち抜き形成した板状部材等とすることができる。
【0036】
本発明におけるシール部14を形成する方法としては特に限定されず、任意の固定手段を用いることができる。本実施形態では、筒状ケース10の端部を立てた状態で充填空間に中空糸膜11、凸状の多孔部材30を充填して、下端部を樹脂に浸漬して固定し、続いて上下を反転させて他端部も同様にして樹脂に浸漬して固定するポッティングを採用している。ポッティングの際、浸漬した樹脂は、中空糸膜11の内外を封止してしまうが、中空糸膜11の径よりも中空糸膜11どうしの間隔の方が小さいため、毛細管現象により樹脂の浸漬高さが異なり、中空糸膜11の外部と比較して内部の方が浅く封止される。このため、この部分を切断除去することにより、中空糸膜11内部はモジュール外界に連通させて、中空糸膜11外部のみに樹脂を残存させ、充填空間を封止することができる。
【0037】
本実施形態においては、中空糸膜11の湿潤による膨張率を予め把握しておく。そして膨張率が最大に達した際に中空糸膜11の移動を抑制するため、中空糸膜11どうしの間、および中空糸膜11と多孔部材30の間が互いに接触して隙間無く密に充填されるよう、あるいは隙間が減って密度が高く充填されるようにそれぞれが配置されている。一方乾燥状態においては、これらの間に空隙部(隙間)をもって中空糸膜11と多孔部材30が配置されている。
【0038】
本発明における中空糸膜11としては、公知の中空糸膜を選択することができ、具体的には、フェノールスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸、パーフルオロカーボンスルホン酸等の高分子イオン交換膜で構成されたものや、高分子樹脂系あるいはセラミック系等の中空糸膜が挙げられる。
【0039】
本実施形態によれば、導入口12からオフガスが充填空間内に導入される際に導入口12近傍の中空糸膜11がガス圧力を受けても、多孔部材30が上流の導入口側の中空糸膜11を拘束しているので、導入口12側のケース面と多孔部材30aとの間の領域の中空糸膜11の移動が抑制される。これにより、図5において矢印25で示すように、筒状ケース10に沿って隙間が生じることが抑制されるので、オフガスは充填空間内において上流側から下流側へ向かって均一に流通する。これにより、中空糸膜11の利用率および加湿効率が向上する。
【0040】
また、仮に多孔部材30が平面状であると、筒状ケース10と接している多孔部材30両端に掛かる引張力は過大となり、多孔部材に伸びが生じてしまい、中空糸膜を拘束する性能が弱まるが、本発明では、多孔部材は凸状に曲げられているので、両端に発生する引張力は軽減されている。これにより、多孔部材30の伸びを抑制し、長期に亘って性能を発揮させることができる。
【0041】
凸状多孔部材30の湾曲は大きければ大きいほど、両端の引張力が軽減されて好ましい。しかしながら、湾曲が過度に大きくなると、凸部の高さが高くなり、保持する中空糸膜11の数が増えるため、中空糸膜の動きを拘束する働きが弱まってしまい、筒状ケース10と中空糸膜11との間に隙間が生じてしまう。そのため、凸部の湾曲率は、これらのことを考慮して適宜設定される。
【0042】
また、本実施形態では、予め中空糸膜11の膨張率を考慮した所定の空隙を以って中空糸膜11と多孔部材30a〜30cが配置されているので、水分交換用中空糸膜モジュールの運転時にあっては中空糸膜11と多孔部材30a〜30cを互いに接触させることができ、筒状ケース10に沿った隙間の形成が確実に抑制される。
【0043】
第2実施形態
図6は、本発明の第2実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、図4と同様、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図6に示すように、充填空間内には、導入孔側の多孔部材30aと、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ複数の多孔部材30bおよび30cと、排出口側の多孔部材30dが、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。これらの多孔部材30a〜30dにより、中空糸膜11を、第2流体経路の上流側、中流側、下流側の3つの領域に分割して、各領域にて中空糸膜11を囲んでいる。
【0044】
本実施形態においては、凸状の多孔部材が中空糸膜11を囲んでいるので、導入口12からオフガスが充填空間内に導入される際に導入口12近傍の中空糸膜11がガス圧力を受けても、第1実施形態と同様に、多孔部材の伸びを抑制しつつ、中空糸膜11の移動を抑制するが、特に、複数の凸状多孔部材30a〜30dが中空糸膜11を3つの領域に分割して保持しているので、より強固に中空糸膜11の移動を抑制することができる。これにより、筒状ケース10に沿って隙間が生じることが抑制されるので、オフガスは充填空間内において上流側から下流側へ向かって均一に流通する。これにより、中空糸膜11の利用率および加湿効率が向上する。
【0045】
第3実施形態
図7は、本発明の第3実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図7に示すように、充填空間内には、導入孔側の多孔部材31aと、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ複数の多孔部材31bおよび31cと、排出口側の多孔部材31dが、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。本実施形態ではさらに、凸状の多孔部材31bおよび31cは、第2流体経路に直交する横方向についても、凸状部分が複数のアーチを描くように形成されている。
【0046】
多孔部材31aに対して凸状の多孔部材31bの端部が接合されており、凸状の多孔部材31bの凸部(頂部)に対して凸状の多孔部材31cの端部が接合されており、凸状の多孔部材31cの凸部(頂部)に対して多孔部材31dが接合されている。これらの多孔部材31a〜31dにより、中空糸膜11を、上流側、中流側、下流側の3つの領域においてさらに横方向にも分割して、各領域にて中空糸膜11を囲んでいる。
【0047】
本実施形態においては、多孔部材31a〜31dによって中空糸膜11がさらに細分化されて保持されているので、第1および第2実施形態と比較して、筒状ケース10に沿って隙間が生じることがさらに抑制され、中空糸膜11の利用率および加湿効率が向上する。
【0048】
本実施形態においては、凸状の多孔部材は、図7に示す曲線から形成されるものに限定されず、例えば、図8に示すような、直線で形成された凸状の多孔部材32a〜32dとすることもできる。図8においては、導入口および排出口側の多孔部材32aおよび32dは、図7の多孔部材31aおよび31dと同様であり、凸状の多孔部材32bと32cは、ジグザグに形成されている。
【0049】
第4実施形態
図9は、本発明の第4実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図9に示す第4実施形態では、図6の第2実施形態と同様に、充填空間内には、導入孔側の多孔部材30aと、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ複数の多孔部材30bおよび30cと、排出口側の多孔部材30dが、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。これらの多孔部材30a〜30dにより、中空糸膜11を、上流側、中流側、下流側の3つの領域に分割して、各領域にて中空糸膜11を囲んでいる。本実施形態では、さらに、棒状に形成された支持部材40が、筒状ケース10の軸方向に平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、支持部材40は、その側面にて多孔部材30bおよび30cに接合されて多孔部材30bおよびcを支持しており、多孔部材30bおよびcの端部は、筒状ケース10に接合されて固定されているのは第2実施形態と同様である。
【0050】
支持部材40は、少なくとも上記の多孔部材よりも剛性の高い材料で構成されており、多孔部材と同様、長期の使用に耐え得るような耐食性を有する材料で構成されている。例えばステンレス鋼等の金属やプラスチックを選択することができる。
【0051】
本実施形態によれば、支持部材が多孔部材を支持するので、多孔部材30a〜30dによる中空糸膜11の固定効果がさらに改善される。
【0052】
本実施形態においては、支持部材40は、その側面で多孔部材を支持することを特徴としているので、その限りにおいては、例えば図10に示すように、充填空間の中央寄りの領域に設けることもできる。また、図11に示すように、第3実施形態の水分交換用中空糸膜モジュールに対しても適用することができる。
【0053】
第5実施形態
図12は、本発明の第5実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図12に示す第5実施形態では、平面状の多孔部材33a〜33dが筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。これら多孔部材に接するように、棒状に形成された支持部材40が、筒状ケース10の軸方向に平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。支持部材40は、その側面にて多孔部材33bおよび33cに接合されて多孔部材30bおよびcを支持している。
【0054】
従来技術の問題点として上述したように、平面状の多孔部材においては、両端に発生する引張力によって多孔部材の伸びが問題視されていたが、本実施形態によれば、支持部材が多孔部材を支持するので、たとえ平面状の多孔部材であっても、中空糸膜11の固定効果をさらに増大させることができる。
【0055】
第6実施形態
図13は、本発明の第6実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図13に示す第6実施形態では、平面状の多孔部材33a〜33dが筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。図13に示すように、平面状の多孔部材33a〜33cは、これらに直交する第2流体経路方向に延在する別の多孔部材(接続用多孔部材)34a〜34cによって、筒状ケース10の側面と接合されて固定されている。
【0056】
上述したように平面状の多孔部材においては、両端に発生する引張力によって多孔部材の伸びが問題視されていたが、本実施形態によれば、接続用多孔部材34a〜34cが多孔部材33a〜33cと筒状ケース10間を支持するので、たとえ平面状の多孔部材であっても、中空糸膜11の固定効果をさらに増大させることができる。
【0057】
変形例
上記各実施形態においては、図6〜13に示すように、筒状ケース10の導入口12を設けた側の多孔部材30a〜33aと2番目の多孔部材30b〜33bとの間隔をA1、2番目の多孔部材30b〜33bと3番目の多孔部材30c〜33cとの間隔をA2、3番目の多孔部材30c〜33cと筒状ケース10の排出口13を設けた側の多孔部材30d〜33dとの間隔をA3と定義した場合、最も導入口側の間隔A1が、他の間隔A2およびA3のいずれよりも小さく設定されていると好ましい。
【0058】
上記のような態様では、オフガスの導入口12近傍が最もガス流速が大きく、中空糸膜11の受ける推力が大きいためその移動量も大きくなる傾向がある。そこでA1を最小とすることによって、中空糸膜11の移動量を最小に抑えることができる。
【0059】
上記態様においては、少なくともA1が最小であれば、A2およびA3の関係は限定されず、例えばA2=A3、A2<A3、A2>A3のいずれであってもよい。しかしながら、導入されるオフガスのガス流速は下流側に行くにつれ減衰するので、A1<A2<A3であることが特に好ましい。
【0060】
上記説明においては、多孔部材を4箇所に設けて間隔A1〜A3を定義した例を説明したが、この態様のみに限定されず、多孔部材をn箇所(nは4以上の整数)の任意の数の多孔部材を設けて、間隔A1〜An−1を定義することができる。その際、間隔A1が他の間隔A2〜An−1のいずれよりも小さいことが好ましく、A1<A2<・・・<An−2<An−1がさらに好ましいことも同様である。
【0061】
上記説明においては、第1流体経路に乾燥した未使役のガスを流し、第2流体経路に湿潤した使役後のオフガスを流した例を説明したが、本発明はこの態様のみに限定されるものではなく、第1流体経路に湿潤した使役後のオフガスを流し、第2流体経路に乾燥した未使役のガスを流して水分交換を行うことも可能である。
【0062】
さらに、上記説明では、筒状ケース10の断面が矩形である場合を例にとり説明したが、本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは矩形に限定されるものではなく、例えば断面が多角形の筒状とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、燃料電池から排出されるオフガスの水分を未使役の酸化剤ガスの加湿に再利用することができ、また、水分交換における加湿効率を高めることにより燃料電池の適正な加湿量での運転が可能となるから、厳格な安定運転が要求される車載用燃料電池システムに適用して極めて有望である。
【符号の説明】
【0064】
M…水分交換用中空糸膜モジュール、
10…筒状ケース、
11…中空糸膜、
12…ガス導入口、
13…ガス排出口、
14…シール部、
20…未使役のガス(低湿潤)、
21…未使役のガス(水分交換後)、
22…使役後のオフガス(高湿潤)、
23…使役後のオフガス(水分交換後)、
30〜33…多孔部材、
34…接続用多孔部材、
40…支持部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば燃料電池システムに用いて好適な水分交換用中空糸膜モジュールに係り、特に、被加湿ガスに対する加湿効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池としては、平板状の膜電極構造体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の両側にセパレータが積層された積層体が単位セルとされ、複数の単位セルが例えば数百層積層されて燃料電池スタックとして構成された燃料電池が知られている。膜電極構造体は、正極(空気極、カソード)および負極(燃料極、アノード)を構成する一対の電極の間にイオン交換樹脂等からなる電解質膜が挟まれた三層構造である。このような燃料電池によると、例えば、燃料極側のガス拡散電極に面するガス流路に燃料ガスを流し、空気極側のガス拡散電極に面するガス流路に酸化剤ガスを流すと電気化学反応が起こり、発電が生じる。
【0003】
ここで、上記のような電気化学反応を安定させるためには、膜電極構造体が湿潤していることが望ましい。たとえば、特許文献1には、燃料ガス流路内で燃料ガスに発電生成水が水蒸気となって加わることにより、水蒸気分圧が上昇した使役後のアノード排出ガスを加湿ガスとし、未使役の燃料ガスを加湿する燃料電池システムが開示されている。
【0004】
ところで、近年、燃料電池の高性能化に伴って膜電極構造体は薄くなる傾向にあり、電気化学反応で生成され空気極側に出てくる水が燃料極側へ移動するという現象が生じるようになってきた。このため、燃料ガスを加湿すると燃料極の湿潤状態が過剰となり、燃料と燃料極との接触が妨げられるフラッディングと呼ばれる現象が生じる。一方、空気極側は、湿潤の程度が過剰でも電気化学反応にはさほど差し障りがない場合のあることが知られている。したがって、最近では、燃料ガスを加湿するよりも酸化剤ガスを加湿する技術が重要視されてきている。
【0005】
酸化剤ガスを加湿する従来の自動車用燃料電池システムとして、たとえば、特許文献2には、水蒸気透過膜で区切られた加湿器の一方の空間に乾燥した未使役の酸化剤ガスを供給し、他方の空間に湿潤した使役後の酸化剤ガスの排気(オフガス)を供給して、水蒸気透過膜を介してオフガスから酸化剤ガスへ水分を移動させる技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記技術では、略平面状の水蒸気透過膜を介してその両側からガスを接触させて水分移動を行うため、接触領域が小さく、連続的に供給される酸化剤ガスに対して水分移動が間に合わず、加湿効率が十分ではないという問題があった。
【0007】
このような問題に対して、たとえば、特許文献3〜6には、加湿器内に中空糸膜を充填して、未使役の酸化剤ガスを中空糸膜の中空内部に流通させるともに使役後のオフガスを中空糸膜外壁に接触するように流通させて、中空糸膜を介して水分移動を行う技術が開示されている。これらの技術によれば、加湿器内に微細な中空糸膜が多数充填されているので、水分移動を行うための接触領域は著しく増加しており、特許文献1に記載の技術と比較して加湿効率は向上している。
【0008】
しかしながら、中空糸膜は、水分移動の際の吸湿によって膨潤するため、加湿器内に充填する際にはその寸法変化を考慮して、中空糸膜間に予め空隙を設けて充填しなければならず、密に充填することができない。このように、中空糸膜間には空隙があり、また、中空糸膜は弾性的に変形可能であるため、加湿器内にオフガスを導入すると、ガス流速が最も大きい導入部分においてオフガスが中空糸膜を押し退けて、隙間が形成されてしまう。オフガスは、この隙間をバイパス路として流れてしまうため、加湿器内を均一に流通させることができず、加湿効率が低下するという問題があった。
【0009】
このような問題に対して、特許文献4に記載の技術では、数本の中空糸膜を剛性棒と共に束ねて固定したものを多数製造し、これを加湿器に充填することで、中空糸膜の移動を抑制している。また、特許文献5および6に記載の技術では、加湿器内に仕切り板を設けることによって、オフガスの流路を導き、また、中空糸膜の特定の方向への偏りを抑制している。さらに、加湿器内にメッシュ状の多孔体を設けて、中空糸膜を拘束し、偏りを抑制する技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭61−3671号公報
【特許文献2】特開平6−132038号公報
【特許文献3】特願2002−147802号公報
【特許文献4】特願2004−311287号公報
【特許文献5】特願2005−40675号公報
【特許文献6】特願2007−323982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献4に記載の技術では、中空糸膜を剛性棒と共に束ねたものを多数製造する必要があるため、工程数が増大して好ましくない。また、特許文献5および6に記載の技術では、従来よりは中空糸膜の移動は抑制することができるものの、仕切り板で区切られた領域内での偏りまでも抑制することは困難であり、また、ガスを流通させる必要上、仕切り板を完全に閉じた構造とすることはできず、その開口部分における偏りを抑制することはできない。さらに、メッシュによって中空糸膜の偏りを抑制する技術では、メッシュに常に強力な引張力が働くため、メッシュに伸びが生じてしまい、抑制効果が持続しないという問題があった。
【0012】
したがって、本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、中空糸膜内に供給される乾燥した燃料電池未使役のガスを充分に加湿することができるのは勿論のこと、加湿器内に充填された中空糸膜の偏りを抑制して、湿潤した燃料電池使役後のオフガスを加湿器内で均一に流通させることが長期間持続できる水分交換用中空糸膜モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、上記空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有し、かつ第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備えることを特徴としている。
【0014】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、中空糸膜内を経由する第1流体経路に例えば乾燥した未使役のガス(酸化剤ガスあるいは燃料ガス)を流通させ、中空糸膜外を経由する第2流体経路に例えば湿潤した使役後のオフガスを流通させてオフガスの水分を未使役のガスに移動させるにあたり、中空糸膜が充填されている空間内において、第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材が配置されているので、中空糸膜は、多孔部材によって支持されて、その移動が拘束される。これにより、中空糸膜と筒状ケースとの隙間が形成されないので、オフガスは中空糸膜モジュール内を均一に流通し、効率良く水分交換を行うことができる。また、多孔部材は、下流側に向かって凸に膨らんでいるので、中空糸膜によって押圧された際、多孔部材が平面状である場合と比較して、上記断面視での両端に発生する引張力が緩和される。これにより、多孔部材の伸びが抑制され、長期に亘って効果を持続させることができる。
【0015】
本発明では、凸に形成された多孔部材は、第1流体経路に直交する面での断面視で第2流体経路の下流側に向かって複数備えられていることが好ましい。このような多孔部材が複数備えられていると、中空糸膜が充填される空間が、筒状ケース(上流側側面)と多孔部材との間の領域、多孔部材どうしの間の領域、多孔部材と筒状ケース(下流側側面)との間の領域に分割され、それぞれの領域で中空糸膜が保持され、移動がより強固に抑制される。また、それぞれの多孔部材が凸状に形成されているので、引張力を軽減させて伸びを抑制することも同様である。
【0016】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、 上記空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有し、かつ第1流体経路に直交する面での断面視で上記第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備え、第1流体経路に直交する面での断面視で、凸状多孔部材は、第2流体経路および第1流体経路に直交する方向に複数が連続的に接続されて設けられ、該複数設けられた凸状多孔部材は、第2流体経路の下流方向へ複数段設けられ、凸状多孔部材は、第2流体経路の上流側に位置する凸状多孔部材の中央部と、下流側に位置する凸状多孔部材の端部とが接続されるように設けられていることを特徴としている。
【0017】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、凸状の多孔部材が第2流体経路の横方向に複数配列されているのみならず、下流方向へも複数段配列されているので、多孔部材によって囲まれる領域がより細分化されて、それぞれの中空糸膜の移動はより強固に抑制される。また、それぞれの多孔部材が凸状に形成されているので、引張力を軽減させて伸びを抑制することも同様である。
【0018】
本発明では、多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材が設けられ、支持部材は、筒状ケースの軸方向に平行に延在し、多孔部材の端部から離間し、かつ支持部材の側面を上記多孔部材と接して接続され、支持部材の端部を筒状ケースに固定されていることが好ましい。中空糸膜は、多孔部材によって囲まれて移動を抑制されているが、多孔部材がさらに筒状ケース内の空間内で支持部材に接触することによって支持されているので、多孔部材の引張力による伸びを抑制するとともに、中空糸膜の移動をより強固に抑制する。
【0019】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、第1流体経路に直交する面での断面視における第2流体経路に直交する方向に延在する平面状の多孔部材と、多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材を備え、支持部材は、軸方向に平行に延在し、多孔部材の端部から離間しかつ支持部材の側面を多孔部材と接して接続され、支持部材の端部を筒状ケースと固定されていることを特徴としている。
【0020】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、中空糸膜は、平面に延在する多孔部材によって支持されて移動を抑制されているが、多孔部材がさらに筒状ケース内の空間内で支持部材に接触することによって支持されているので、引張力による多孔部材の伸びを抑制するとともに、中空糸膜の移動をより強固に抑制する。
【0021】
本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは、筒状ケースと、筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、筒状ケースの両端において複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、導入口から上記空間内でありかつ中空糸膜の外側を経由して排出口に至る第2流体経路と、空間内で軸方向に延在し、第2流体経路を横切る面を有する多孔部材と、第2流体経路に沿って延在し、筒状ケースと多孔部材とを接続する接続用多孔部材を備えることを特徴としている。
【0022】
上記構成の水分交換用中空糸膜モジュールにあっては、中空糸膜は、平面に延在する多孔部材によって支持されて移動を抑制されているが、多孔部材がさらに略垂直方向に延在する別の多孔部材によって筒状ケースとの間を接続されているので、引張力による多孔部材の伸びが抑制されるとともに、中空糸膜の移動をより強固に抑制する。
【0023】
本発明では、複数の多孔部材のうち最も導入口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に第2流体経路の下流側で隣接する多孔部材との間隔が、他の多孔部材どうしの間隔、および最も排出口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に第2流体経路の上流側で隣接する多孔部材との間隔のいずれよりも小さいことが好ましい。複数の多孔部材のうち導入口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に下流側で隣接する多孔部材との間隔が最も小さいので、ガス流速が大きい導入口近傍であっても中空糸膜の移動が抑制される。これにより、中空糸膜と筒状ケースとの隙間が形成されないので、オフガスは中空糸膜モジュール内を均一に流通し、効率良く水分交換を行うことができる。
【0024】
本発明では、中空糸膜の乾燥状態では、中空糸膜どうしの間および中空糸膜と多孔部材との間に形成される空隙部を有し、中空糸膜の膨潤状態では、これらが互いに接触することで空隙部を減少させることが好ましい。このような態様によれば、水分交換用中空糸膜モジュールの運転時にあって中空糸膜と多孔部材を互いに接触させることができ、ケースに沿った隙間の形成が確実に抑制される。
【0025】
本発明では、多孔部材は、少なくともその一端を前記シール部で固定されていることが好ましい。このような態様によれば、ガスの流通に際して力が加わっても多孔部材の移動が抑制されるため、多孔部材と中空糸膜の摩擦による中空糸膜の損傷が抑制される。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、モジュール内に充填された中空糸膜のうち最も偏りが生じ易い導入口付近の部分において中空糸膜が多孔部材と筒状ケースとの間で保持されて拘束されているので、オフガスの流通による中空糸膜の偏りを抑制し、モジュール内のオフガスを均一に流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】水分交換用中空糸膜モジュールを示す透視斜視図である。
【図2】図1の水分交換用中空糸膜モジュールを示す側方断面図である。
【図3】従来の水分交換用中空糸膜モジュールにおける中空糸膜の偏りを示す側方断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す側方断面図である。
【図6】本発明の多孔部材の変形例を示す図である。
【図7】本発明の多孔部材の変形例を示す図である。
【図8】本発明の多孔部材の変形例を示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す断面図である。
【図10】本発明の多孔部材および支持部材の変形例を示す図である。
【図11】本発明の多孔部材および支持部材の変形例を示す図である。
【図12】本発明の多孔部材および支持部材の変形例を示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、実施形態の説明に先立ち、本発明を適用することができる水分交換用中空糸膜モジュールの一般的な構成について、図1および2を参照して説明する。図1および2に示すように、水分交換用中空糸膜モジュールMは、筒状ケース10を有し、この筒状ケース10内の空間(以下、充填空間と略称する場合がある)には、複数の中空糸膜11が、筒状ケース10の軸方向(筒状ケースの延在する方向)と平行に充填されている。複数の中空糸膜11は、吸湿に際して膨張するため、その寸法変化を吸収するために、所定の間隔を介して充填されている。
【0029】
中空糸膜11の両端は、シール部14によって筒状ケース10に固定されている。図1では、中空糸膜11は部分的に省略して図示しているが、中空糸膜11は両端のシール部14間に延在している。シール部14は、上記充填空間における中空糸膜11の外側を合成樹脂等で埋設したものであり、充填空間のみを外部に対して封止するものである。したがって、中空糸膜11の中空内部は封止されておらず、中空糸膜11の中空内部は両端とも外部に連通している。本実施形態では、中空糸膜11の一端側(矢印20)から中空糸膜の中空内部を経由して他端側(矢印21)に至る経路を第1流体経路と定義する。
【0030】
筒状ケース10の一側面(例えば図においては底面)には、ガスの導入口12が設けられており、導入口12の下流側であってかつ対向する面(例えば図においては頂面)には、ガスの排出口13が設けられている。本実施形態では、導入口12(矢印22)から充填空間内でありかつ中空糸膜11の外側を経由して排出口13(矢印23)に至る経路を第2流体経路と定義する。
【0031】
上記の水分交換用中空糸膜モジュールMにおいては、例えば、乾燥した燃料電池未使役のガス20を第1流体経路に導入するとともに、このガスを燃料電池で使役した後の排気ガスであるオフガス22を第2流体経路に導入するので、乾燥した未使役のガス20が中空糸膜11内を通過すると同時に、湿潤した使役後のオフガス22は充填空間内の中空糸膜11の外側を通過する。中空糸膜11は、内外のガス交換は阻止するが、その両面に存在する微細な孔を通じて水分のみを移動させることができるため、高湿潤側から低湿潤側への水分移動が行われる。このようにして、第1流体経路および第2流体経路に導入された乾燥した未使役のガス20および湿潤した使役後のオフガス22それぞれにおいては、水分が移動し、加湿された未使役のガス21および湿度が低下した使役後のオフガス23となって排出される。
【0032】
図3は、従来の水分交換用中空糸膜モジュールにおける問題点を説明するための図である。上述したように、中空糸膜11は、湿潤によって寸法変化するために、乾燥状態にあっては所定の間隔を以って充填空間内に固定されている。また、中空糸膜11は、弾性的に変形する性質を有している。そのため、図3に示すように、オフガス22が導入口12から導入されると、ガス流速が最も大きい導入口12側で圧力が高まり、オフガス22は中空糸膜11を押し退けて変形させ、筒状ケース10の底面に沿って隙間が生じてしまう。オフガスは、矢印24で示すようにこの隙間を経由して下流側(図において右側)へ一気に移動し、その後、排出口13へ向かって流通して排出されてしまう。このように、オフガスは上流側(図において左側)においては中空糸膜11の空隙を通過せず、下流側のみで水分移動が行われるため、中空糸膜11の利用率および加湿効率が低いという問題があった。
【0033】
第1実施形態
図4は、上述した従来の問題を解決することができる本発明の水分交換用中空糸膜モジュールの第1実施形態を示す図である。なお、図4の水分交換用中空糸膜モジュールは、多孔部材30以外の構成要素は図1および2と共通であるため、ここでは共通部分の説明は省略し、第1実施形態特有の構成、作用および効果について説明する。また、以降の実施形態についても同様である。
【0034】
図4に示すように、充填空間内には、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ多孔部材30が、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材30の図において左右の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。多孔部材30は、上流側の中空糸膜11を囲んでいる。
【0035】
多孔部材30は、オフガスを十分に流通させることができる開口部を有し、オフガスのガス圧力を受けても変形しにくい剛性を有し、かつ長期の使用に耐え得るような耐食性を有する材料で構成されている。多孔部材30は、例えばステンレス鋼等の金属やプラスチックからなるメッシュで構成してもよく、その他、開口部を多数打ち抜き形成した板状部材等とすることができる。
【0036】
本発明におけるシール部14を形成する方法としては特に限定されず、任意の固定手段を用いることができる。本実施形態では、筒状ケース10の端部を立てた状態で充填空間に中空糸膜11、凸状の多孔部材30を充填して、下端部を樹脂に浸漬して固定し、続いて上下を反転させて他端部も同様にして樹脂に浸漬して固定するポッティングを採用している。ポッティングの際、浸漬した樹脂は、中空糸膜11の内外を封止してしまうが、中空糸膜11の径よりも中空糸膜11どうしの間隔の方が小さいため、毛細管現象により樹脂の浸漬高さが異なり、中空糸膜11の外部と比較して内部の方が浅く封止される。このため、この部分を切断除去することにより、中空糸膜11内部はモジュール外界に連通させて、中空糸膜11外部のみに樹脂を残存させ、充填空間を封止することができる。
【0037】
本実施形態においては、中空糸膜11の湿潤による膨張率を予め把握しておく。そして膨張率が最大に達した際に中空糸膜11の移動を抑制するため、中空糸膜11どうしの間、および中空糸膜11と多孔部材30の間が互いに接触して隙間無く密に充填されるよう、あるいは隙間が減って密度が高く充填されるようにそれぞれが配置されている。一方乾燥状態においては、これらの間に空隙部(隙間)をもって中空糸膜11と多孔部材30が配置されている。
【0038】
本発明における中空糸膜11としては、公知の中空糸膜を選択することができ、具体的には、フェノールスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸、パーフルオロカーボンスルホン酸等の高分子イオン交換膜で構成されたものや、高分子樹脂系あるいはセラミック系等の中空糸膜が挙げられる。
【0039】
本実施形態によれば、導入口12からオフガスが充填空間内に導入される際に導入口12近傍の中空糸膜11がガス圧力を受けても、多孔部材30が上流の導入口側の中空糸膜11を拘束しているので、導入口12側のケース面と多孔部材30aとの間の領域の中空糸膜11の移動が抑制される。これにより、図5において矢印25で示すように、筒状ケース10に沿って隙間が生じることが抑制されるので、オフガスは充填空間内において上流側から下流側へ向かって均一に流通する。これにより、中空糸膜11の利用率および加湿効率が向上する。
【0040】
また、仮に多孔部材30が平面状であると、筒状ケース10と接している多孔部材30両端に掛かる引張力は過大となり、多孔部材に伸びが生じてしまい、中空糸膜を拘束する性能が弱まるが、本発明では、多孔部材は凸状に曲げられているので、両端に発生する引張力は軽減されている。これにより、多孔部材30の伸びを抑制し、長期に亘って性能を発揮させることができる。
【0041】
凸状多孔部材30の湾曲は大きければ大きいほど、両端の引張力が軽減されて好ましい。しかしながら、湾曲が過度に大きくなると、凸部の高さが高くなり、保持する中空糸膜11の数が増えるため、中空糸膜の動きを拘束する働きが弱まってしまい、筒状ケース10と中空糸膜11との間に隙間が生じてしまう。そのため、凸部の湾曲率は、これらのことを考慮して適宜設定される。
【0042】
また、本実施形態では、予め中空糸膜11の膨張率を考慮した所定の空隙を以って中空糸膜11と多孔部材30a〜30cが配置されているので、水分交換用中空糸膜モジュールの運転時にあっては中空糸膜11と多孔部材30a〜30cを互いに接触させることができ、筒状ケース10に沿った隙間の形成が確実に抑制される。
【0043】
第2実施形態
図6は、本発明の第2実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、図4と同様、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図6に示すように、充填空間内には、導入孔側の多孔部材30aと、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ複数の多孔部材30bおよび30cと、排出口側の多孔部材30dが、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。これらの多孔部材30a〜30dにより、中空糸膜11を、第2流体経路の上流側、中流側、下流側の3つの領域に分割して、各領域にて中空糸膜11を囲んでいる。
【0044】
本実施形態においては、凸状の多孔部材が中空糸膜11を囲んでいるので、導入口12からオフガスが充填空間内に導入される際に導入口12近傍の中空糸膜11がガス圧力を受けても、第1実施形態と同様に、多孔部材の伸びを抑制しつつ、中空糸膜11の移動を抑制するが、特に、複数の凸状多孔部材30a〜30dが中空糸膜11を3つの領域に分割して保持しているので、より強固に中空糸膜11の移動を抑制することができる。これにより、筒状ケース10に沿って隙間が生じることが抑制されるので、オフガスは充填空間内において上流側から下流側へ向かって均一に流通する。これにより、中空糸膜11の利用率および加湿効率が向上する。
【0045】
第3実施形態
図7は、本発明の第3実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図7に示すように、充填空間内には、導入孔側の多孔部材31aと、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ複数の多孔部材31bおよび31cと、排出口側の多孔部材31dが、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。本実施形態ではさらに、凸状の多孔部材31bおよび31cは、第2流体経路に直交する横方向についても、凸状部分が複数のアーチを描くように形成されている。
【0046】
多孔部材31aに対して凸状の多孔部材31bの端部が接合されており、凸状の多孔部材31bの凸部(頂部)に対して凸状の多孔部材31cの端部が接合されており、凸状の多孔部材31cの凸部(頂部)に対して多孔部材31dが接合されている。これらの多孔部材31a〜31dにより、中空糸膜11を、上流側、中流側、下流側の3つの領域においてさらに横方向にも分割して、各領域にて中空糸膜11を囲んでいる。
【0047】
本実施形態においては、多孔部材31a〜31dによって中空糸膜11がさらに細分化されて保持されているので、第1および第2実施形態と比較して、筒状ケース10に沿って隙間が生じることがさらに抑制され、中空糸膜11の利用率および加湿効率が向上する。
【0048】
本実施形態においては、凸状の多孔部材は、図7に示す曲線から形成されるものに限定されず、例えば、図8に示すような、直線で形成された凸状の多孔部材32a〜32dとすることもできる。図8においては、導入口および排出口側の多孔部材32aおよび32dは、図7の多孔部材31aおよび31dと同様であり、凸状の多孔部材32bと32cは、ジグザグに形成されている。
【0049】
第4実施形態
図9は、本発明の第4実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図9に示す第4実施形態では、図6の第2実施形態と同様に、充填空間内には、導入孔側の多孔部材30aと、第2流体経路を流れるガスの下流方向に凸状に膨らんだ複数の多孔部材30bおよび30cと、排出口側の多孔部材30dが、筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。これらの多孔部材30a〜30dにより、中空糸膜11を、上流側、中流側、下流側の3つの領域に分割して、各領域にて中空糸膜11を囲んでいる。本実施形態では、さらに、棒状に形成された支持部材40が、筒状ケース10の軸方向に平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、支持部材40は、その側面にて多孔部材30bおよび30cに接合されて多孔部材30bおよびcを支持しており、多孔部材30bおよびcの端部は、筒状ケース10に接合されて固定されているのは第2実施形態と同様である。
【0050】
支持部材40は、少なくとも上記の多孔部材よりも剛性の高い材料で構成されており、多孔部材と同様、長期の使用に耐え得るような耐食性を有する材料で構成されている。例えばステンレス鋼等の金属やプラスチックを選択することができる。
【0051】
本実施形態によれば、支持部材が多孔部材を支持するので、多孔部材30a〜30dによる中空糸膜11の固定効果がさらに改善される。
【0052】
本実施形態においては、支持部材40は、その側面で多孔部材を支持することを特徴としているので、その限りにおいては、例えば図10に示すように、充填空間の中央寄りの領域に設けることもできる。また、図11に示すように、第3実施形態の水分交換用中空糸膜モジュールに対しても適用することができる。
【0053】
第5実施形態
図12は、本発明の第5実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図12に示す第5実施形態では、平面状の多孔部材33a〜33dが筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。これら多孔部材に接するように、棒状に形成された支持部材40が、筒状ケース10の軸方向に平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。支持部材40は、その側面にて多孔部材33bおよび33cに接合されて多孔部材30bおよびcを支持している。
【0054】
従来技術の問題点として上述したように、平面状の多孔部材においては、両端に発生する引張力によって多孔部材の伸びが問題視されていたが、本実施形態によれば、支持部材が多孔部材を支持するので、たとえ平面状の多孔部材であっても、中空糸膜11の固定効果をさらに増大させることができる。
【0055】
第6実施形態
図13は、本発明の第6実施形態に係る水分交換用中空糸膜モジュールであって、中空糸膜11内を流れる第1流体経路に直交する向きで切断した断面図である。図13に示す第6実施形態では、平面状の多孔部材33a〜33dが筒状ケース10の軸方向と平行に設けられており、その両端部を図示しないシール部14に埋設されることで固定されている。また、多孔部材の図において上下の両端部は、筒状ケース10に接合されて固定されている。図13に示すように、平面状の多孔部材33a〜33cは、これらに直交する第2流体経路方向に延在する別の多孔部材(接続用多孔部材)34a〜34cによって、筒状ケース10の側面と接合されて固定されている。
【0056】
上述したように平面状の多孔部材においては、両端に発生する引張力によって多孔部材の伸びが問題視されていたが、本実施形態によれば、接続用多孔部材34a〜34cが多孔部材33a〜33cと筒状ケース10間を支持するので、たとえ平面状の多孔部材であっても、中空糸膜11の固定効果をさらに増大させることができる。
【0057】
変形例
上記各実施形態においては、図6〜13に示すように、筒状ケース10の導入口12を設けた側の多孔部材30a〜33aと2番目の多孔部材30b〜33bとの間隔をA1、2番目の多孔部材30b〜33bと3番目の多孔部材30c〜33cとの間隔をA2、3番目の多孔部材30c〜33cと筒状ケース10の排出口13を設けた側の多孔部材30d〜33dとの間隔をA3と定義した場合、最も導入口側の間隔A1が、他の間隔A2およびA3のいずれよりも小さく設定されていると好ましい。
【0058】
上記のような態様では、オフガスの導入口12近傍が最もガス流速が大きく、中空糸膜11の受ける推力が大きいためその移動量も大きくなる傾向がある。そこでA1を最小とすることによって、中空糸膜11の移動量を最小に抑えることができる。
【0059】
上記態様においては、少なくともA1が最小であれば、A2およびA3の関係は限定されず、例えばA2=A3、A2<A3、A2>A3のいずれであってもよい。しかしながら、導入されるオフガスのガス流速は下流側に行くにつれ減衰するので、A1<A2<A3であることが特に好ましい。
【0060】
上記説明においては、多孔部材を4箇所に設けて間隔A1〜A3を定義した例を説明したが、この態様のみに限定されず、多孔部材をn箇所(nは4以上の整数)の任意の数の多孔部材を設けて、間隔A1〜An−1を定義することができる。その際、間隔A1が他の間隔A2〜An−1のいずれよりも小さいことが好ましく、A1<A2<・・・<An−2<An−1がさらに好ましいことも同様である。
【0061】
上記説明においては、第1流体経路に乾燥した未使役のガスを流し、第2流体経路に湿潤した使役後のオフガスを流した例を説明したが、本発明はこの態様のみに限定されるものではなく、第1流体経路に湿潤した使役後のオフガスを流し、第2流体経路に乾燥した未使役のガスを流して水分交換を行うことも可能である。
【0062】
さらに、上記説明では、筒状ケース10の断面が矩形である場合を例にとり説明したが、本発明の水分交換用中空糸膜モジュールは矩形に限定されるものではなく、例えば断面が多角形の筒状とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、燃料電池から排出されるオフガスの水分を未使役の酸化剤ガスの加湿に再利用することができ、また、水分交換における加湿効率を高めることにより燃料電池の適正な加湿量での運転が可能となるから、厳格な安定運転が要求される車載用燃料電池システムに適用して極めて有望である。
【符号の説明】
【0064】
M…水分交換用中空糸膜モジュール、
10…筒状ケース、
11…中空糸膜、
12…ガス導入口、
13…ガス排出口、
14…シール部、
20…未使役のガス(低湿潤)、
21…未使役のガス(水分交換後)、
22…使役後のオフガス(高湿潤)、
23…使役後のオフガス(水分交換後)、
30〜33…多孔部材、
34…接続用多孔部材、
40…支持部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記空間内で上記軸方向に延在し、上記第2流体経路を横切る面を有し、かつ上記第1流体経路に直交する面での断面視で上記第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備えることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記凸に形成された多孔部材は、前記第1流体経路に直交する面での断面視で前記第2流体経路の下流側に向かって複数備えられていることを特徴とする請求項1に記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項3】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記空間内で上記軸方向に延在し、上記第2流体経路を横切る面を有し、かつ上記第1流体経路に直交する面での断面視で上記第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備え、
上記第1流体経路に直交する面での断面視で、上記凸状多孔部材は、上記第2流体経路および上記第1流体経路に直交する方向に複数が連続的に接続されて設けられ、該複数設けられた凸状多孔部材は、上記第2流体経路の下流方向へ複数段設けられ、上記凸状多孔部材は、上記第2流体経路の上流側に位置する凸状多孔部材の中央部と、下流側に位置する凸状多孔部材の端部とが接続されるように設けられていることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材が設けられ、
上記支持部材は、
前記軸方向に平行に延在し、
上記多孔部材の端部から離間し、かつ上記支持部材の側面を上記多孔部材と接して接続され、
上記支持部材の端部を前記筒状ケースに固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項5】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記第1流体経路に直交する面での断面視における上記第2流体経路に直交する方向に延在する平面状の多孔部材と、
上記多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材を備え、
上記支持部材は、
上記軸方向に平行に延在し、
上記多孔部材の端部から離間し、かつ上記支持部材の側面を上記多孔部材と接して接続され、
上記支持部材の端部を上記筒状ケースと固定されていることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項6】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記空間内で上記軸方向に延在し、上記第2流体経路を横切る面を有する多孔部材と、
上記第2流体経路に沿って延在し、上記筒状ケースと上記多孔部材とを接続する接続用多孔部材を備えることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項7】
前記複数の多孔部材のうち最も前記導入口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に上記第2流体経路の下流側で隣接する多孔部材との間隔が、他の多孔部材どうしの間隔、および最も前記排出口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に上記第2流体経路の上流側で隣接する多孔部材との間隔のいずれよりも小さいことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項8】
前記中空糸膜の乾燥状態では、中空糸膜どうしの間および中空糸膜と前記多孔部材との間に形成される空隙部を有し、上記中空糸膜の膨潤状態では、これらが互いに接触することで上記空隙部を減少させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項9】
前記多孔部材は、少なくともその一端を前記シール部で固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項1】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記空間内で上記軸方向に延在し、上記第2流体経路を横切る面を有し、かつ上記第1流体経路に直交する面での断面視で上記第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備えることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記凸に形成された多孔部材は、前記第1流体経路に直交する面での断面視で前記第2流体経路の下流側に向かって複数備えられていることを特徴とする請求項1に記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項3】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記空間内で上記軸方向に延在し、上記第2流体経路を横切る面を有し、かつ上記第1流体経路に直交する面での断面視で上記第2流体経路の下流側に向かって凸に形成された多孔部材とを備え、
上記第1流体経路に直交する面での断面視で、上記凸状多孔部材は、上記第2流体経路および上記第1流体経路に直交する方向に複数が連続的に接続されて設けられ、該複数設けられた凸状多孔部材は、上記第2流体経路の下流方向へ複数段設けられ、上記凸状多孔部材は、上記第2流体経路の上流側に位置する凸状多孔部材の中央部と、下流側に位置する凸状多孔部材の端部とが接続されるように設けられていることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材が設けられ、
上記支持部材は、
前記軸方向に平行に延在し、
上記多孔部材の端部から離間し、かつ上記支持部材の側面を上記多孔部材と接して接続され、
上記支持部材の端部を前記筒状ケースに固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項5】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記第1流体経路に直交する面での断面視における上記第2流体経路に直交する方向に延在する平面状の多孔部材と、
上記多孔部材に比して高い剛性を有する棒状の支持部材を備え、
上記支持部材は、
上記軸方向に平行に延在し、
上記多孔部材の端部から離間し、かつ上記支持部材の側面を上記多孔部材と接して接続され、
上記支持部材の端部を上記筒状ケースと固定されていることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項6】
筒状ケースと、
上記筒状ケース内の空間に軸方向に延在させて充填された複数の中空糸膜と、
上記筒状ケースの両端において上記複数の中空糸膜を固定して上記空間を封止したシール部と、
上記筒状ケースの一側面に設けられた導入口と、
上記導入口が設けられた側面の対向面に設けられた排出口と、
上記中空糸膜の一端側から中空糸膜の中空内部を経由して他端側に至る第1流体経路と、
上記導入口から上記空間内でありかつ上記中空糸膜の外側を経由して上記排出口に至る第2流体経路と、
上記空間内で上記軸方向に延在し、上記第2流体経路を横切る面を有する多孔部材と、
上記第2流体経路に沿って延在し、上記筒状ケースと上記多孔部材とを接続する接続用多孔部材を備えることを特徴とする水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項7】
前記複数の多孔部材のうち最も前記導入口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に上記第2流体経路の下流側で隣接する多孔部材との間隔が、他の多孔部材どうしの間隔、および最も前記排出口側に設けられた多孔部材とその多孔部材に上記第2流体経路の上流側で隣接する多孔部材との間隔のいずれよりも小さいことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項8】
前記中空糸膜の乾燥状態では、中空糸膜どうしの間および中空糸膜と前記多孔部材との間に形成される空隙部を有し、上記中空糸膜の膨潤状態では、これらが互いに接触することで上記空隙部を減少させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【請求項9】
前記多孔部材は、少なくともその一端を前記シール部で固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水分交換用中空糸膜モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−25155(P2011−25155A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173467(P2009−173467)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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