水切り
【課題】施工が行いやすいとともに、透湿防水シートの貼り位置を容易に直すことができる水切りを提供する。
【解決手段】建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、該背板部の表面には、接着層を有し、該接着層は、表面に、前方に向かって突出した突起を複数有するか、又は、前方に向かって突出した状態で点在しているか、又は、断面が半円形の状態で背板部の長さ方向に延びていることのいずれかを特徴として有する。そして、該接着層は、剥離可能なシートにより覆われていることが好ましい。
【解決手段】建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、該背板部の表面には、接着層を有し、該接着層は、表面に、前方に向かって突出した突起を複数有するか、又は、前方に向かって突出した状態で点在しているか、又は、断面が半円形の状態で背板部の長さ方向に延びていることのいずれかを特徴として有する。そして、該接着層は、剥離可能なシートにより覆われていることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に配設されるとともに、外壁材の表面を伝って流下してきた雨水を前方へ排出する水切りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水切りは、金属板を切断、折り曲げて製造された、水平方向に長い形状であり、建築物の外壁の表面を流下した雨水が建築物内部に侵入するのを防ぐために、建築物の土台部や、上下に配置された外壁板の間などに配設されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、釘などにより固定される取付壁部と、該取付壁部の下端から前方斜め下方へ屈曲した傾斜突出壁部と、該傾斜突出壁部の前端から下方へ屈曲した突出端壁部とからなる水切りが開示されている。そして、該取付壁部を釘により建築物の土台に固定して、該水切りを建築物の土台部に固定すること、及びそれにより外壁の外面を伝って流下してきた雨水を外方に導いて滴下させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、薄板状の塩ビ鋼板を折り曲げて断面視Z状に形成した、取付部と、該取付部の下端に形成された水切り部とを備えた水切りが開示されている。なお、水切り部は、取付部の下端から下側の外装材の表面上端部に向かって、該外装材の裏面側から表面側に傾斜するようにして配置され、該外装材の上端面を覆う延出部と、該延出部の先端部から該外装材の表面に沿って下方に延出し、該外装材の表面上端部を覆う別の延出部と、該別の延出部の先端部から該外装材の裏面側に向かって上方に延出する突起部とを備えることも開示されている。そして、該取付部を、上側の外装材と、下側の外装材との間から挿入し、該取付部にビスなどの止着材を打ち込んで固定し、該水切りにより、上側の外装材と下側の外装材の裏面側に雨水などの水が侵入するのを防止することが記載されている。
【0005】
更に、特許文献2には、一枚の長尺な面材からなり、外壁本体に取り付けられる取付部と、該取付部から曲折して設けられた傾斜面と、該傾斜面から更に曲折する露出面とで構成された水切りが開示されている。そして、該水切を、外壁と下屋とが接続される下屋接続部に配することにより、該下屋接続部を防水することが開示されている。
【0006】
このように、水切りは、建築物の土台部や、上下に配置された外壁板の間、外壁と下屋とが接続される下屋接続部などに施工され、それにより外壁材の表面を伝って流下してきた雨水を前方へ排出する。
【0007】
そして、いずれの施工構造にも共通することとして、外壁板と構造躯体の間には透湿防水シートが配されており、それにより該構造躯体の防水が行われている。該透湿防水シートは、該構造躯体に固定された水切りの表面の一部をも覆うよう設けられており、通常、該透湿防水シートの下端は、粘着テープにより水切りに貼り付けられている。なお、風で該透湿防水シートがばたつくことを防ぐためや、吹き返しなどによる下側からの雨水の浸入を防ぐために、該粘着テープは、水切りの長手方向全体に渡って、該透湿防水シートの下端を塞ぐように貼り付けられる。
【0008】
そのため、水切りに粘着シートを貼る作業は手間がかかる。また、透湿防水シート又は粘着テープの貼り位置を直す場合には、該粘着テープと該透湿防水シートが強固に接着し、該透湿防水シートが破れやすいという問題もある。更に、透湿防水シート又は粘着テープの貼り位置を直すことが難しいので、透湿防水シートを貼る際に皺が発生しても直せないという問題もある。
【0009】
そこで、特許文献3には、水切りの固定基体となる取付部の前面に、両面粘着テープなどの粘着テープが予め貼付けられている水切りが開示されている。
【0010】
特許文献3の水切りによれば、取付部の前面に粘着テープが予め貼付けられているので、作業は軽減する。しかし、透湿防水シート又は粘着テープの貼り位置を直す場合に該透湿防水シートが破れやすいという問題は解決できておらず、該透湿防水シートを貼る際に皺が発生しても直せないという問題も解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−96931号公報
【特許文献2】特開2002−121871号公報
【特許文献3】特開2004−300873号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】登録実用新案第3031123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートの貼り位置を容易に直すことができる水切りを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、該背板部の表面には、接着層を有する水切りを提供する。なお、該接着層は、表面に、前方に向かって突出した突起を複数有するか、又は、前方に向かって突出した状態で点在しているか、又は、断面が半円形の状態で背板部の長さ方向に延びていることのいずれかを特徴として有する。また、本発明では、該接着層が、剥離可能なシートにより覆われていると、保管、運搬の際に、該接着層の接着性能が損なわれないと共に、水切り同士が接着することを防げるので好ましい。
なお、水切りは、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ガルタイト鋼板(登録商標)、アルミ鋼板、ステンレス鋼板、合金めっき鋼板、トタン、銅板などの金属板や、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂板を折り曲げ加工、又は押出加工することにより製造されている。また、接着層は、アクリル酸エステル共重合体からなるアクリル系粘着剤、天然ゴムからなるゴム系粘着剤、ウレタン樹脂からなるウレタン系粘着剤、スチレンーブタジエンースチレン共重合体やスチレンーブタジエンーエチレン−スチレン共重合体などからなるホットメルト系粘着剤などにより形成されているが、一般的な接着剤により形成しても良い。ホットメルト系粘着剤を加熱して溶解するとともに、窒素ガスにより発泡させて接着剤を形成すると、潰れやすいとともに、製造費用が安く抑えられるので、好ましい。そして、剥離可能なシートは、半晒、上質紙、グラシン紙などからなる基材の接着層との剥離側に、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、クレーコートなどにより目止め層が形成され、更にその上にシリコーン樹脂などにより剥離層を形成しているシートである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートの貼り位置を容易に直すことができる水切りを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明にかかる水切りの一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す水切りの右側面図である。
【図3】図3は、図1、2に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明にかかる水切りの他の実施例の正面図である。
【図5】図5は、図4に示す水切りの右側面図である。
【図6】図6は、図4、5に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる水切りの更に他の実施例の正面図である。
【図8】図8は、図7に示す水切りの右側面図である。
【図9】図9は、図7、8に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる水切りの一実施例の正面図であり、図2は、図1に示す水切りの右側面図である。
図1、図2に示す水切りA1は、1枚のガルバリウム鋼板(登録商標)を折曲加工して製造されており、建築物の構造躯体に固定する背板部1aと、背板部1aの下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部1bと、水切り板部1bの前端から下方へ屈曲した前板部1cが連結して形成されている。詳しくは、背板部1aは、平坦な板部である。背板部1aの下方端部からは水切り板部1bが、前方斜め下方へ延びている。水切り板部1bの前端からは前板部1cが、下方に延びている。そして、背板部1aの表面には、アクリル系粘着剤からなる接着層1dが設けられているが、接着層1dは表面に複数の突起部1d1を有しており、突起部1d1は、接着層1dの表面において、前方に突出した形状である。
【0019】
図3は、図1、2に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
図3では、図1、図2に示す水切りA1は、背板部1aの裏面を建築物の構造躯体に当接するとともに、水切り板部1bと前板部1cが外壁板Dより下方となり、更に前板部1cが建築物の構造躯体より前方になる位置に固定してある。そして、水切りA1の背板部1aの表面には、透湿防水シートBが、接着層1dにより固定されている。更に、透湿防水シートBの表面には、胴縁がビスCにより固定されており、該胴縁の表面には、外壁板Dが固定されている。この施工構造は、水切りA1を建築物の構造躯体に固定し、それから、水切りA1の背板部1aの表面に透湿防水シートBを固定するのだが、水切りA1の背板部1aの表面には接着層1dが設けられているので、接着層1dにより透湿防水シートBを固定することができる。また、接着層1dは、表面に複数の突起部1d1を有するので、胴縁が固定される前であれば、透湿防水シートBは接着層1dの複数の突起部1d1の頂部に接着した状態、すなわち、接着層1dの全体ではなく一部と接着した状態なので、透湿防水シートBの剥がしと再固定を容易に行うことができる。そのため、透湿防水シートBを貼る際に皺が発生しても、容易に直すことができる。なお、胴縁が固定されることにより、接着層1dの複数の突起部1d1は押し潰され、透湿防水シートBと接着層1dの接着面積は増加するので、透湿防水シートBを確実に固定することができる。
よって、図1、2に示す水切りA1によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートBの貼り位置を容易に直すことができる。
【0020】
図4は、本発明にかかる水切りの他の実施例の正面図であり、図5は、図4に示す水切りの右側面図である。
図4、図5に示す水切りA2も、図1、図2に示す水切りA1と同じように、1枚のガルバリウム鋼板(登録商標)を折曲加工して製造されており、背板部2aと、水切り板部2bと、前板部2cが連結して形成されており、背板部2aの表面には、アクリル系粘着剤からなる接着層が設けられている。しかし、水切りA2は、水切りA1とは接着層の形状が異なる。水切りA2では、背板部2aの表面には、半球形状に突出した形状のアクリル系粘着剤からなる接着層2dが、上下及び左右に複数点在している。
【0021】
図6は、図4、5に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
図6では、図4、図5に示す水切りA2は、背板部2aの裏面を建築物の構造躯体に当接するとともに、水切り板部2bと前板部2cが外壁板Dより下方となり、更に前板部2cが建築物の構造躯体より前方になる位置に固定してある。そして、水切りA2の背板部2aの表面には、透湿防水シートBが、接着層2dにより固定されている。更に、透湿防水シートBの表面には、胴縁がビスCにより固定されており、該胴縁の表面には、外壁板Dが固定されている。この施工構造は、水切りA2を建築物の構造躯体に固定し、それから、水切りA2の背板部2aの表面に透湿防水シートBを固定するのだが、水切りA2の背板部2aの表面には複数の接着層2dが設けられているので、接着層2dにより透湿防水シートBを固定することができる。また、接着層2dは、半球形状に突出した形状であるとともに、複数点在しているので、胴縁が固定される前であれば、透湿防水シートBは接着層2dの頂部に接着した状態、すなわち、接着層2dの全体ではなく一部と接着した状態なので、透湿防水シートBの剥がしと再固定を容易に行うことができる。そのため、透湿防水シートBを貼る際に皺が発生しても、容易に直すことができる。なお、胴縁が固定されることにより、接着層2dは押し潰され、透湿防水シートBと接着層2dの接着面積は増加するので、透湿防水シートBを確実に固定することができる。
よって、図4、5に示す水切りA2によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートBの貼り位置を容易に直すことができる。
【0022】
図7は、本発明にかかる水切りの更に他の実施例の正面図であり、図8は、図7に示す水切りの右側面図である。
図7、図8に示す水切りA3も、図1、図2に示す水切りA1と同じように、1枚のガルバリウム鋼板(登録商標)を折曲加工して製造されており、背板部3aと、水切り板部3bと、前板部3cが連結して形成されており、背板部3aの表面には、接着層が設けられている。しかし、水切りA3は、水切りA1とは接着層の材質と形状が異なる。水切りA3では、背板部3aの表面の接着層3dはスチレンーブタジエンーエチレン−スチレン共重合体を窒素ガスで発泡させた材であり、断面が半円形の状態で背板部3aの長さ方向に延びている。
【0023】
図9は、図7、8に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
図9では、図7、図8に示す水切りA3は、背板部3aの裏面を建築物の構造躯体に当接するとともに、水切り板部3bと前板部3cが外壁板Dより下方となり、更に前板部3cが建築物の構造躯体より前方になる位置に固定してある。そして、水切りA3の背板部3aの表面には、透湿防水シートBが、接着層3dにより固定されている。更に、透湿防水シートBの表面には、胴縁がビスCにより固定されており、該胴縁の表面には、外壁板Dが固定されている。この施工構造は、水切りA3を建築物の構造躯体に固定し、それから、水切りA3の背板部3aの表面に透湿防水シートBを固定するのだが、水切りA3の背板部3aの表面には接着層3dが設けられているので、接着層3dにより透湿防水シートBを固定することができる。また、接着層3dは、断面が半円形の状態で背板部3aの長さ方向に延びているので、胴縁が固定される前であれば、透湿防水シートBは接着層3dの頂部に接着した状態、すなわち、接着層3dの全体ではなく一部と接着した状態なので、透湿防水シートBの剥がしと再固定を容易に行うことができる。そのため、透湿防水シートBを貼る際に皺が発生しても、容易に直すことができる。なお、胴縁が固定されることにより、接着層3dは押し潰され、透湿防水シートBと接着層3dの接着面積は増加するので、透湿防水シートBを確実に固定することができる。
よって、図7、8に示す水切りA3によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートBの貼り位置を容易に直すことができる。
【0024】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。例えば、図1、図2の水切りにおいて、突起部1d1を千鳥状に配列しても良いし、ランダムに配列しても良い。また、突起部1d1の形状も円錐形にしても良い。また、図4、図5の水切りにおいて、接着層2dを千鳥状に配列しても良いし、ランダムに配列しても良し、形状も円錐形にしても良い。更に、図7、図8の水切りにおいて、接着層3dを複数配列しても良い。更に、水切りの接着層は、剥離可能なシートにより覆われていても良く、その場合、施工の際に該シートを剥離して用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートの貼り位置を容易に直すことができる水切りを提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
A1〜A3 水切り
B 透湿防水シート
C ビス
D 外壁板
1a〜3a 背板部
1b〜3b 水切り板部
1c〜3c 前板部
1d〜3d 接着層
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に配設されるとともに、外壁材の表面を伝って流下してきた雨水を前方へ排出する水切りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水切りは、金属板を切断、折り曲げて製造された、水平方向に長い形状であり、建築物の外壁の表面を流下した雨水が建築物内部に侵入するのを防ぐために、建築物の土台部や、上下に配置された外壁板の間などに配設されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、釘などにより固定される取付壁部と、該取付壁部の下端から前方斜め下方へ屈曲した傾斜突出壁部と、該傾斜突出壁部の前端から下方へ屈曲した突出端壁部とからなる水切りが開示されている。そして、該取付壁部を釘により建築物の土台に固定して、該水切りを建築物の土台部に固定すること、及びそれにより外壁の外面を伝って流下してきた雨水を外方に導いて滴下させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献1には、薄板状の塩ビ鋼板を折り曲げて断面視Z状に形成した、取付部と、該取付部の下端に形成された水切り部とを備えた水切りが開示されている。なお、水切り部は、取付部の下端から下側の外装材の表面上端部に向かって、該外装材の裏面側から表面側に傾斜するようにして配置され、該外装材の上端面を覆う延出部と、該延出部の先端部から該外装材の表面に沿って下方に延出し、該外装材の表面上端部を覆う別の延出部と、該別の延出部の先端部から該外装材の裏面側に向かって上方に延出する突起部とを備えることも開示されている。そして、該取付部を、上側の外装材と、下側の外装材との間から挿入し、該取付部にビスなどの止着材を打ち込んで固定し、該水切りにより、上側の外装材と下側の外装材の裏面側に雨水などの水が侵入するのを防止することが記載されている。
【0005】
更に、特許文献2には、一枚の長尺な面材からなり、外壁本体に取り付けられる取付部と、該取付部から曲折して設けられた傾斜面と、該傾斜面から更に曲折する露出面とで構成された水切りが開示されている。そして、該水切を、外壁と下屋とが接続される下屋接続部に配することにより、該下屋接続部を防水することが開示されている。
【0006】
このように、水切りは、建築物の土台部や、上下に配置された外壁板の間、外壁と下屋とが接続される下屋接続部などに施工され、それにより外壁材の表面を伝って流下してきた雨水を前方へ排出する。
【0007】
そして、いずれの施工構造にも共通することとして、外壁板と構造躯体の間には透湿防水シートが配されており、それにより該構造躯体の防水が行われている。該透湿防水シートは、該構造躯体に固定された水切りの表面の一部をも覆うよう設けられており、通常、該透湿防水シートの下端は、粘着テープにより水切りに貼り付けられている。なお、風で該透湿防水シートがばたつくことを防ぐためや、吹き返しなどによる下側からの雨水の浸入を防ぐために、該粘着テープは、水切りの長手方向全体に渡って、該透湿防水シートの下端を塞ぐように貼り付けられる。
【0008】
そのため、水切りに粘着シートを貼る作業は手間がかかる。また、透湿防水シート又は粘着テープの貼り位置を直す場合には、該粘着テープと該透湿防水シートが強固に接着し、該透湿防水シートが破れやすいという問題もある。更に、透湿防水シート又は粘着テープの貼り位置を直すことが難しいので、透湿防水シートを貼る際に皺が発生しても直せないという問題もある。
【0009】
そこで、特許文献3には、水切りの固定基体となる取付部の前面に、両面粘着テープなどの粘着テープが予め貼付けられている水切りが開示されている。
【0010】
特許文献3の水切りによれば、取付部の前面に粘着テープが予め貼付けられているので、作業は軽減する。しかし、透湿防水シート又は粘着テープの貼り位置を直す場合に該透湿防水シートが破れやすいという問題は解決できておらず、該透湿防水シートを貼る際に皺が発生しても直せないという問題も解決できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−96931号公報
【特許文献2】特開2002−121871号公報
【特許文献3】特開2004−300873号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】登録実用新案第3031123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートの貼り位置を容易に直すことができる水切りを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、該背板部の表面には、接着層を有する水切りを提供する。なお、該接着層は、表面に、前方に向かって突出した突起を複数有するか、又は、前方に向かって突出した状態で点在しているか、又は、断面が半円形の状態で背板部の長さ方向に延びていることのいずれかを特徴として有する。また、本発明では、該接着層が、剥離可能なシートにより覆われていると、保管、運搬の際に、該接着層の接着性能が損なわれないと共に、水切り同士が接着することを防げるので好ましい。
なお、水切りは、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ガルタイト鋼板(登録商標)、アルミ鋼板、ステンレス鋼板、合金めっき鋼板、トタン、銅板などの金属板や、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂板を折り曲げ加工、又は押出加工することにより製造されている。また、接着層は、アクリル酸エステル共重合体からなるアクリル系粘着剤、天然ゴムからなるゴム系粘着剤、ウレタン樹脂からなるウレタン系粘着剤、スチレンーブタジエンースチレン共重合体やスチレンーブタジエンーエチレン−スチレン共重合体などからなるホットメルト系粘着剤などにより形成されているが、一般的な接着剤により形成しても良い。ホットメルト系粘着剤を加熱して溶解するとともに、窒素ガスにより発泡させて接着剤を形成すると、潰れやすいとともに、製造費用が安く抑えられるので、好ましい。そして、剥離可能なシートは、半晒、上質紙、グラシン紙などからなる基材の接着層との剥離側に、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、クレーコートなどにより目止め層が形成され、更にその上にシリコーン樹脂などにより剥離層を形成しているシートである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートの貼り位置を容易に直すことができる水切りを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明にかかる水切りの一実施例の正面図である。
【図2】図2は、図1に示す水切りの右側面図である。
【図3】図3は、図1、2に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明にかかる水切りの他の実施例の正面図である。
【図5】図5は、図4に示す水切りの右側面図である。
【図6】図6は、図4、5に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる水切りの更に他の実施例の正面図である。
【図8】図8は、図7に示す水切りの右側面図である。
【図9】図9は、図7、8に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる水切りの一実施例の正面図であり、図2は、図1に示す水切りの右側面図である。
図1、図2に示す水切りA1は、1枚のガルバリウム鋼板(登録商標)を折曲加工して製造されており、建築物の構造躯体に固定する背板部1aと、背板部1aの下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部1bと、水切り板部1bの前端から下方へ屈曲した前板部1cが連結して形成されている。詳しくは、背板部1aは、平坦な板部である。背板部1aの下方端部からは水切り板部1bが、前方斜め下方へ延びている。水切り板部1bの前端からは前板部1cが、下方に延びている。そして、背板部1aの表面には、アクリル系粘着剤からなる接着層1dが設けられているが、接着層1dは表面に複数の突起部1d1を有しており、突起部1d1は、接着層1dの表面において、前方に突出した形状である。
【0019】
図3は、図1、2に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
図3では、図1、図2に示す水切りA1は、背板部1aの裏面を建築物の構造躯体に当接するとともに、水切り板部1bと前板部1cが外壁板Dより下方となり、更に前板部1cが建築物の構造躯体より前方になる位置に固定してある。そして、水切りA1の背板部1aの表面には、透湿防水シートBが、接着層1dにより固定されている。更に、透湿防水シートBの表面には、胴縁がビスCにより固定されており、該胴縁の表面には、外壁板Dが固定されている。この施工構造は、水切りA1を建築物の構造躯体に固定し、それから、水切りA1の背板部1aの表面に透湿防水シートBを固定するのだが、水切りA1の背板部1aの表面には接着層1dが設けられているので、接着層1dにより透湿防水シートBを固定することができる。また、接着層1dは、表面に複数の突起部1d1を有するので、胴縁が固定される前であれば、透湿防水シートBは接着層1dの複数の突起部1d1の頂部に接着した状態、すなわち、接着層1dの全体ではなく一部と接着した状態なので、透湿防水シートBの剥がしと再固定を容易に行うことができる。そのため、透湿防水シートBを貼る際に皺が発生しても、容易に直すことができる。なお、胴縁が固定されることにより、接着層1dの複数の突起部1d1は押し潰され、透湿防水シートBと接着層1dの接着面積は増加するので、透湿防水シートBを確実に固定することができる。
よって、図1、2に示す水切りA1によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートBの貼り位置を容易に直すことができる。
【0020】
図4は、本発明にかかる水切りの他の実施例の正面図であり、図5は、図4に示す水切りの右側面図である。
図4、図5に示す水切りA2も、図1、図2に示す水切りA1と同じように、1枚のガルバリウム鋼板(登録商標)を折曲加工して製造されており、背板部2aと、水切り板部2bと、前板部2cが連結して形成されており、背板部2aの表面には、アクリル系粘着剤からなる接着層が設けられている。しかし、水切りA2は、水切りA1とは接着層の形状が異なる。水切りA2では、背板部2aの表面には、半球形状に突出した形状のアクリル系粘着剤からなる接着層2dが、上下及び左右に複数点在している。
【0021】
図6は、図4、5に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
図6では、図4、図5に示す水切りA2は、背板部2aの裏面を建築物の構造躯体に当接するとともに、水切り板部2bと前板部2cが外壁板Dより下方となり、更に前板部2cが建築物の構造躯体より前方になる位置に固定してある。そして、水切りA2の背板部2aの表面には、透湿防水シートBが、接着層2dにより固定されている。更に、透湿防水シートBの表面には、胴縁がビスCにより固定されており、該胴縁の表面には、外壁板Dが固定されている。この施工構造は、水切りA2を建築物の構造躯体に固定し、それから、水切りA2の背板部2aの表面に透湿防水シートBを固定するのだが、水切りA2の背板部2aの表面には複数の接着層2dが設けられているので、接着層2dにより透湿防水シートBを固定することができる。また、接着層2dは、半球形状に突出した形状であるとともに、複数点在しているので、胴縁が固定される前であれば、透湿防水シートBは接着層2dの頂部に接着した状態、すなわち、接着層2dの全体ではなく一部と接着した状態なので、透湿防水シートBの剥がしと再固定を容易に行うことができる。そのため、透湿防水シートBを貼る際に皺が発生しても、容易に直すことができる。なお、胴縁が固定されることにより、接着層2dは押し潰され、透湿防水シートBと接着層2dの接着面積は増加するので、透湿防水シートBを確実に固定することができる。
よって、図4、5に示す水切りA2によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートBの貼り位置を容易に直すことができる。
【0022】
図7は、本発明にかかる水切りの更に他の実施例の正面図であり、図8は、図7に示す水切りの右側面図である。
図7、図8に示す水切りA3も、図1、図2に示す水切りA1と同じように、1枚のガルバリウム鋼板(登録商標)を折曲加工して製造されており、背板部3aと、水切り板部3bと、前板部3cが連結して形成されており、背板部3aの表面には、接着層が設けられている。しかし、水切りA3は、水切りA1とは接着層の材質と形状が異なる。水切りA3では、背板部3aの表面の接着層3dはスチレンーブタジエンーエチレン−スチレン共重合体を窒素ガスで発泡させた材であり、断面が半円形の状態で背板部3aの長さ方向に延びている。
【0023】
図9は、図7、8に示す水切りを用いて形成された建築物の土台部の施工状態を示す断面図である。
図9では、図7、図8に示す水切りA3は、背板部3aの裏面を建築物の構造躯体に当接するとともに、水切り板部3bと前板部3cが外壁板Dより下方となり、更に前板部3cが建築物の構造躯体より前方になる位置に固定してある。そして、水切りA3の背板部3aの表面には、透湿防水シートBが、接着層3dにより固定されている。更に、透湿防水シートBの表面には、胴縁がビスCにより固定されており、該胴縁の表面には、外壁板Dが固定されている。この施工構造は、水切りA3を建築物の構造躯体に固定し、それから、水切りA3の背板部3aの表面に透湿防水シートBを固定するのだが、水切りA3の背板部3aの表面には接着層3dが設けられているので、接着層3dにより透湿防水シートBを固定することができる。また、接着層3dは、断面が半円形の状態で背板部3aの長さ方向に延びているので、胴縁が固定される前であれば、透湿防水シートBは接着層3dの頂部に接着した状態、すなわち、接着層3dの全体ではなく一部と接着した状態なので、透湿防水シートBの剥がしと再固定を容易に行うことができる。そのため、透湿防水シートBを貼る際に皺が発生しても、容易に直すことができる。なお、胴縁が固定されることにより、接着層3dは押し潰され、透湿防水シートBと接着層3dの接着面積は増加するので、透湿防水シートBを確実に固定することができる。
よって、図7、8に示す水切りA3によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートBの貼り位置を容易に直すことができる。
【0024】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。例えば、図1、図2の水切りにおいて、突起部1d1を千鳥状に配列しても良いし、ランダムに配列しても良い。また、突起部1d1の形状も円錐形にしても良い。また、図4、図5の水切りにおいて、接着層2dを千鳥状に配列しても良いし、ランダムに配列しても良し、形状も円錐形にしても良い。更に、図7、図8の水切りにおいて、接着層3dを複数配列しても良い。更に、水切りの接着層は、剥離可能なシートにより覆われていても良く、その場合、施工の際に該シートを剥離して用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、施工が行いやすいとともに、透湿防水シートの貼り位置を容易に直すことができる水切りを提供することができる。
【符号の説明】
【0026】
A1〜A3 水切り
B 透湿防水シート
C ビス
D 外壁板
1a〜3a 背板部
1b〜3b 水切り板部
1c〜3c 前板部
1d〜3d 接着層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、
背板部の表面には、接着層を有し、
接着層の表面には、前方に向かって突出した突起を複数有する
ことを特徴とする水切り。
【請求項2】
建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、
背板部の表面には、前方に向かって突出した接着層が点在している
ことを特徴とする水切り。
【請求項3】
建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、
背板部の表面には、断面が半円形の状態で該背板部の長さ方向に延びた接着層を有する
ことを特徴とする水切り。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水切りであって、
前記背板部の表面の接着層は、剥離可能なシートにより覆われている
ことを特徴とする水切り。
【請求項1】
建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、
背板部の表面には、接着層を有し、
接着層の表面には、前方に向かって突出した突起を複数有する
ことを特徴とする水切り。
【請求項2】
建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、
背板部の表面には、前方に向かって突出した接着層が点在している
ことを特徴とする水切り。
【請求項3】
建築物の構造躯体に固定する背板部と、該背板部の下方において前方斜め下方へ屈曲した水切り板部と、該水切り板部の前端から下方へ屈曲した前板部とを有する水切りであって、
背板部の表面には、断面が半円形の状態で該背板部の長さ方向に延びた接着層を有する
ことを特徴とする水切り。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の水切りであって、
前記背板部の表面の接着層は、剥離可能なシートにより覆われている
ことを特徴とする水切り。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−149207(P2011−149207A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11642(P2010−11642)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】
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