説明

水力発電所

本発明は、
上方の水のレベルと下方の水のレベルを有する流路を備え、
流路内に直列に配置され、かつそれぞれロータ、ハウジングおよび吸出し管を有する2個の水車を備えた
水力発電所に関する。
本発明は、
流れ方向に見て最初の機械が半径流水車、デリア水車または軸流水車であり、
流れ方向に見て二番目の機械が半径流水車、デリア水車または軸流水車である
ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械、特に水車と、この水車によって駆動される発電機とを備えた水力発電所に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所はいろいろな形態が知られている。この水力発電所は例えば河川の流れエネルギーを利用する河川水力発電所を含んでいる。更に、貯水池式水力発電所が知られている。この貯水池式水力発電所は上方の貯水池と下方の貯水池を有する。機械ユニットはこの両貯水池の間に配置され、水車と発電機からなっている。揚水式発電所の場合、水車はエネルギー需要が少ないときにポンプとして運転可能である。その場合、水車は下方の貯水池内の水の一部を上方の貯水池に戻す。
【0003】
ペルトン水車を除くすべての種類の水車が本発明のために考慮される。従って、例えばフランシス水車、デリア水車またはカプラン水車が考慮される。一般的に、水車のような流体機械のロータと、発電機のロータは、1本の同じ軸を有するがしかし、分離された軸を有していてもよい。
【0004】
これらのすべての水力発電所において、水車の上流に落下管が設けられている。水車は一般的に、らせん状の入口ハウジングを有する。この入口ハウジングは水を水車ロータの翼に向ける。
【0005】
水車の下流に吸出し管が配置されている。この吸出し管はらせん状ハウジングに直接取り付けられている。吸出し管は一般的に、流れ方向に漏斗状に拡がっている。吸出し管は下方の水のレベルの下側で開口している。
【0006】
キャビテーションは流体機械の重大な問題である。キャビテーションは極めて不利である。キャビテーションは機械の効率を低下させ、そして完全に破壊されるまで関与部品の大きな損傷を生じることになる。キャビテーションに関連して、流体機械の設計および位置決めの際、しばしば、エネルギー利用を犠牲にする妥協をしなければならない。
【0007】
キャビテーションの危険は落差、すなわち上方の水のレベルと下方の水のレベルの間の高さの差と共に増大する。この危険は更に、回転数と共に増大する。
【0008】
構造的な手段に加えて、流体機械を所定の寸法だけ下方の水のレベルの下方に配置することにより、キャビテーションを弱める試みがなされた。この寸法は「セッティング」と呼ばれる。従って、セッティングは下方の水のレベルと水車ロータ間の間隔である。ロータを低い位置に配置することは、構造的コストを必要とする。ロータが低い位置に配置されればされるほど、発電所建屋のために土を多く掘り出さなければならない。これは地質状態に依存して多大なコスト、例えば爆破作業に伴う多大なコストを必要とする。
【0009】
従って、セッティングは発電所の投資コスト、ひいてはキロワット時のコストにとってきわめて重要である。
【0010】
直列に配置された2個の水車を有する水力発電所は公知である。特許文献1と特許文献2参照。しかしながら、これらの水力発電所は欠点を有する。これらの水力発電所は例えばキャビテーションの危険を望ましい程度に低減する機能を発揮しない。更に、複雑で、製作のために多大なコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】スイス国特許出願公開第283184A号明細書
【特許文献2】スイス国特許出願公開第126465A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の根底をなす目的は、キャビテーションの危険が低減され同時に、大きなセッティングに伴う構造的コストが低減されるように、冒頭で述べた種類の水力発電所を形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は請求項1の特徴によって達成される。
【0014】
本発明者は次の解決策を見い出した。本発明者は直列に配置した2個の水車を流路内に設けた。流れ方向に見て最初の水車は半径流水車、デリア水車または軸流水車である。流れ方向に見て二番目の水車は半径流水車、デリア水車または軸流水車である。最初の水車は例えばフランシス水車であり、二番目の水車はカプラン水車である。
【0015】
2個の水車の間に絞りやサージタンクを配置しないで、2個の水車を互いに直接続けて配置すると合目的である。水車のロータの回転軸は同じ測地高さに配置可能である。しかしながら、回転軸の高さがずれていてもよい。更に、2個よりも多い水車を互いに組み合わせることができる。
【0016】
本発明は、落差が大きい場合および例えば環境保護の理由から小径の水車が有利である用途の場合に、きわめて有利に適用可能である。
【0017】
本発明による手段により、セッティングをゼロに抑えることができ、それによってロータを下方の水のレベルの高さに配置することができる。場合によっては、ロータを下方の水のレベルの上方に配置することができる。流れの抵抗によって、回転数を自由に選定することができる。
【0018】
本発明は勿論、揚水式発電所にも適用可能である。
【0019】
本発明は次の他の効果を奏する。
発電機として、市販の標準製品を使用することができる。この標準製品は20メガワット範囲の段階、例えば40,60,80メガワット等を有するかまたは他の出力を有する。
水力発電所のコンセプトを標準化することにより、関与機器を低コスト供給可能であるだけでなく、迅速に供給可能である。
複雑な排水系が不要である。なぜなら、漏れと排出流れが自由に流出可能であるからである。
掘り出しが少ししか必要でないかまたは全く必要でないので、コストのかかる地質的な鑑定や検査が不要である。
発電所建屋と機械ユニットのための基礎が非常に簡単で低コストである。
【0020】
本発明を図に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】フランシス水車と下流に配置されたカプラン水車を有する水力発電所を概略的に示す。
【図2】水平軸を有するフランシス水車と下流に配置された他の水車の軸方向断面図である。
【図3】垂直軸を有するフランシス水車と下流に配置された他の水車を概略的に示す。
【図4】垂直軸を有するカプラン水車と下流に配置された他の水車を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明の基本原理を示している。図1に示した水力発電所は上方の水10を有する。この上方の水は圧力管路20と遮断要素30を経てフランシス水車1に供給される。フランシス水車1は発電機40を駆動する。水は水車を通過した後で、第2水車50を通って下方の水60へ流れる。
【0023】
図2は水平軸を有するフランシス水車1を示している。この水車は次の重要な要素を備えている。
複数の翼2.1を有するロータ2、ロータ2を取り囲むらせんハウジング3、ロータ2に相対回転しないように連結されかつ水平に配置された軸4、曲管を拡張する排出管5.2を有する吸出し管5。
【0024】
水車は運転時に(図示していない)発電機を駆動する。そのロータは同様に軸4上に装着されている。
【0025】
他の水車はここには示していない。この他の水車は排出管内に配置可能である。
【0026】
フランシス水車1は図3に再度示してある。この水車は垂直軸4を備えている。吸出し管5内に配置された図示していない第2水車は、フランシス水車1の下流に配置されている。
【0027】
図4に示した水車はカプラン水車である。このカプラン水車は垂直軸4を有する。
【0028】
この水車の下流に(図示していない)第2水車が配置されている。
【0029】
水力発電所が直列に接続された2個以上の水車を有する場合には、この水車は同じ測地レベル、例えば低い水位の高さに配置可能である。上方または下方へのある程度の偏差は可能である。すべての流体機械の測地高さを選定すると、セッティングが最小限に抑えられるように、そして同時に上流の流体機械に対する十分な背圧が下流の流体機械によって生じるように、下流の各流体機械が配置される。
【0030】
2個の流体機械または場合によってはすべての流体機械は共通の軸を備えていてもよいし、それぞれ別個の軸を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 水車
2 ロータ
2.1 翼
3 ハウジング
4 軸
5 吸出し管
5.1 曲管
5.2 排出管
10 上方の水
20 圧力管路
30 遮断要素
40 発電機
50 水車
60 下方の水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方の水のレベルと下方の水のレベルを有する流路を備え、
流路内に直列に配置され、かつそれぞれロータ(2)、ハウジング(3)および吸出し管(5)を有する2個の水車を備えた
水力発電所において、
流れ方向に見て最初の機械が半径流水車、デリア水車または軸流水車であり、
流れ方向に見て二番目の機械が半径流水車、デリア水車または軸流水車であることを特徴とする水力発電所。
【請求項2】
最初の水車がフランシス水車であり、二番目の水車がカプラン水車であることを特徴とする請求項1記載の水力発電所。
【請求項3】
ロータ(2)の重心が上方の水のレベルと下方の水のレベルの間あるいは下方の水のレベルの上方または下方に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の水力発電所。
【請求項4】
流体機械が異なる構造の水車(1)または同一構造の水車(1)であることを特徴とする請求項3記載の水力発電所。
【請求項5】
少なくとも1個の流体機械および/または少なくとも1個の二番目の流体機械が、最初の流体機械の下流に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の垂直発電所。
【請求項6】
最初の流体機械が下方の水のレベルの高さあるいは下方の水のレベルの上方または下方の高さに配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の水力発電所。
【請求項7】
二番目の流体機械が下方の水のレベルの高さあるいは下方の水のレベルの上方または下方の高さに配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の水力発電所。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−529348(P2010−529348A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510677(P2010−510677)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004268
【国際公開番号】WO2008/148497
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(595013047)フォイト パテント ゲーエムベーハー (22)
【氏名又は名称原語表記】Voith Patent GmbH
【Fターム(参考)】