説明

水力発電装置用導水装置

【課題】発電用水車を容易に保守・点検できる水力発電装置用導水装置を提供する。
【解決手段】水力発電装置10は、架台1、樋状の導水装置本体21を有する導水装置2、及び発電用水車3を備える。架台1は、上流側水路USと下流側水路DSの間に段差Dfを有する水路の下流側に配置される。導水装置本体21は、架台1に連結し、上流側水路USからの流水を導水できる。発電用水車3は、架台1の下部に支持され、導水装置2から落下する流水によって回転できる。導水装置本体21は、上流側水路USからの流水を導水する導水状態と、上流側水路USからの流水を導水することなく、下流側水路DSに放水させる放水状態に変更可能に配置されているので、放水状態では、上流側水路USの水を下流側水路DSに迂回させることなく、発電用水車3を容易に保守・点検できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電装置用導水装置に関する。特に、水路の段差から落下される水の位置エネルギーを利用して、発電用水車を回転させることにより電気エネルギーに変換する水力発電装置用の導水装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
小規模の電力を供給する水力発電所では、例えば、クロスフロー水車と呼ばれる発電用水車を使用している。クロスフロー水車は、入口管から流入され、ガイドベーンで流量が調整された水がケーシングで覆われたランナ(羽根車)の回転軸と交差する方向から流入されて、ランナを回転させることにより、回転軸に連結された発電機を駆動している。
【0003】
クロスフロー水車は、流水がランナの上部から中心部へと流れ、中心部からランナの下部を通過して外部へと流れ落ちる構造となっている。クロスフロー水車は、ランナの上部と下部で回転させる力が2回作用するので、比較的効率がよく、流量の変動に伴う効率の変化も少ないことから、小規模の発電に適している、とされている。
【0004】
一方、小規模の水力発電所で使用されるクロスフロー水車は、ケーシングで覆われているため、流水中の異物が溜まり易いという短所がある。又、整備や清掃のために、大規模な分解を必要とするため、保守費用が嵩むという短所がある。
【0005】
こうしたことから、エネルギーの変換効率ではケーシング形の水車に劣るが、ケーシングを有しない開放型のクロスフロー水車を利用した水力発電装置が出現してきている。なお、開放型のクロスフロー水車が見直されている背景には、低速回転でも有効な電圧を確保できる発電機が開発されてきたことがある。
【0006】
開放型のクロスフロー水車を利用した水力発電装置としては、水深が10cmから20cmと浅く小水量の河川、又は農業用水路及び都市下水路を活用でき、増水時に押し流されるなどの事故を防止できる水力発電装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1による水力発電装置は、水平軸を有するクロスフロー水車と、水路の両翼に設置された一対の固定架台と、これらの固定架台の上部に回転自在に支持され、水平軸と平行に配置された回転軸と、一端部が回転軸に固定され、他端部が水平軸に連結するスイングアームと、を備え、水路の流水量に対応してクロスフロー水車がスイングすることで、発電量を調整し電力負荷の変動に対応できる、としている。
【0008】
又、開放型のクロスフロー水車を利用した水力発電装置としては、水量の増減に係わらず回転可能であり、浮遊ごみの障害を受けない、上方が開放された水路の段差部に設置された水力発電装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2による水力発電装置は、水路の段差部の上流側に設置された架台と、水路の段差部の壁面に近接配置されたクロスフロー水車と、架台とクロスフロー水車を連結する駆動機構と、備え、駆動機構に設けたハンドルを回転すると、クロスフロー水車を上下動でき、又は、クロスフロー水車を取り外すこともできる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−127427号公報
【特許文献2】特開2006−52691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1による水力発電装置は、水路の流水量に対応して、発電量を調整し電力負荷の変動を抑制できるという利点はあるが、水路を流れる流量エネルギーを利用しているだけであり、水路の段差から落下される水の位置エネルギーを利用した、特許文献2による水力発電装置と比べて、エネルギーの利用効率が劣るという問題がある。
【0012】
一方、特許文献2による水力発電装置は、特許文献1による水力発電装置と比べて、エネルギーの利用効率に優れているが、水路の段差部の上流側から水が流れている間は、発電機を含めた水車を保守・点検することが困難であると、いう問題がある。
【0013】
特許文献2による水力発電装置は、発電機を含めた発電用水車を保守・点検するためには、上流側水路の水を下流側水路に迂回させるか、発電機を含めた発電用水車を架台から取り外す必要があり、保守性が劣るという問題がある。上流側水路の水を下流側水路に迂回させることなく、発電機を含めた発電用水車を保守・点検できる水力発電装置が求められている。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0014】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、上流側水路の水を下流側水路に迂回させることなく、発電機を含めた発電用水車を保守・点検できる水力発電装置用導水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上流側水路と下流側水路の間に段差を有する水路の下流側に配置される架台の下部に回転自在に支持された発電用水車に導水する水力発電装置において、架台に連結して、前記上流側水路からの流水を導水し、前記下流側水路に落下する流水で前記発電用水車を回転可能な樋状の導水装置本体を有する導水装置を備え、上流側水路からの流水を導水装置が導水可能な導水状態と、上流側水路からの流水を導水装置が導水することなく下流側水路に落下させる放水状態と、に変更可能に導水装置本体を構成することにより、これらの課題が解決できると考え、これに基づいて、以下のような新たな水力発電装置用導水装を発明するに至った。
【0016】
(1)本発明による水力発電装置用導水装置は、上流側水路と下流側水路の間に段差を有する水路の下流側に配置される架台の下部に回転自在に支持された発電用水車に導水する水力発電装置用導水装置であって、前記架台に連結して、前記上流側水路からの流水を導水し、前記下流側水路に落下する流水で前記発電用水車を回転可能な樋状の導水装置本体を備え、前記導水装置本体は、前記上流側水路からの流水を導水する導水状態と、前記上流側水路からの流水を導水することなく、前記下流側水路に放水させる放水状態と、に変更可能に配置されている。
【0017】
(2)前記導水装置本体は、前記上流側水路から離隔するように、前記水路の下流側に向かって移動自在に前記架台に連結していることが好ましい。
【0018】
(3)前記発電用水車は、羽根車の周囲が開放された上掛け式のクロスフロー水車であることが好ましい。
【0019】
(4)前記架台には、前記発電用水車からの回転が伝動される発電機が配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による水力発電装置用導水装置は、上流側水路からの流水を導水する導水状態と、上流側水路からの流水を導水することなく、下流側水路に放水させる放水状態と、に変更可能に配置された樋状の導水装置本体を備えているので、導水装置本体が導水状態では、上流側水路からの流水を導水して発電用水車を回転できる。一方、導水装置本体が放水状態では、上流側水路の水を下流側水路に迂回させることなく、発電機を含めた発電用水車を容易に保守・点検できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態による水力発電装置用導水装置に備わる導水装置本体を支持する支持フレームの斜視図であり、支持フレームの一部の構成を斜視分解図で示している。
【図3】前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す平面図である。
【図4】前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す正面図である。
【図5】前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す左面図であり、上流側水路からの流水を導水装置本体が導水している状態図である。
【図6】前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す左面図であり、上流側水路からの流水を導水装置本体が導水することなく、下流側水路に放水させている状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[水力発電装置用導水装置の構成]
最初に、本発明の一実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す斜視図である。図2は、前記実施形態による水力発電装置用導水装置に備わる導水装置本体を支持する支持フレームの斜視図であり、支持フレームの一部の構成を斜視分解図で示している。
【0023】
図3は、前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す平面図である。図4は、前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す正面図である。図5は、前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す左面図であり、上流側水路からの流水を導水装置本体が導水している状態図である。
【0024】
(全体構成)
図1及び図3から図5を参照すると、本発明の一実施形態による水力発電装置10は、鉄骨で骨組みされた架台1、水力発電装置用導水装置(以下、導水装置と略称する)2、及び発電用水車3を備えている。架台1は、上流側水路USと下流側水路DSの間に段差Dfを有する水路の下流側に配置されている。
【0025】
図1及び図3から図5を参照すると、導水装置2は、架台1に連結している。又、導水装置2は、上流側水路USからの流水を導水できる。発電用水車3は、架台1の下部に支持されている。発電用水車3は、導水装置2から落下する流水によって回転できる。又、架台1の下部には、発電機4を取り付けている(図4又は図5参照)。発電機4は、発電用水車3からの回転が伝動されて発電できる。
【0026】
(架台の構成)
図1及び図3から図5を参照すると、下流側水路DSは、方形状に突出し、略平行に延びる一対のコンクリート堤91・91を上部の両翼に設置している。架台1は、これらのコンクリート堤91・91に懸架されるように、設置されている。
【0027】
図1及び図3から図5を参照すると、架台1は、上部フレーム11、一組の対向する吊り下げフレーム12・13、及び一対一組(4つ)の補強フレーム14で構成している。上部フレーム11は、一対のコンクリート堤91・91に跨るように配置されている。一組の吊り下げフレーム12・13は、上端部が上部フレーム11にねじで固定され、下部に発電用水車3を支持している。補強フレーム14は、一端部が上部フレーム11に固定され、他端部が一組の吊り下げフレーム12・13に固定されている。
【0028】
(上部フレームの構成)
図1及び図3から図5を参照すると、上部フレーム11は、一対のC形のチャンネル部材11a・11a、一対のC形のチャンネル部材11b・11b、複数の台座11c、及び一対のアングル部材11d・11dで構成している。
【0029】
図1及び図3から図5を参照すると、一対のチャンネル部材11a・11aは、一対のコンクリート堤91・91の長手方向に沿って配置されている。一対のチャンネル部材11b・11bは、これらの両端部が一対のチャンネル部材11a・11aの中間部に溶接で接合され、井桁状に組まれている。
【0030】
図1及び図3から図5を参照すると、複数の台座11cは、適宜な間隔を設けて、一対のチャンネル部材11a・11aの底面に溶接で接合されている。台座11cには、コンクリート堤91の上面に当接可能なボルト11fを取り付けている。そして、ボルト11fのねじ込み量を調整することにより、一対のコンクリート堤91・91に対する架台1の姿勢を調整できる。
【0031】
図1及び図3から図5を参照すると、台座11cには、更に、高さ調整可能なブラケット11eを取り付けている。複数のブラケット11eを一対のコンクリート堤91・91にねじ止めすることにより、上部フレーム11を一対のコンクリート堤91・91に固定できる。なお、図1は、一部の台座11c及びブラケット11eの図示を省略している。
【0032】
図1及び図3から図5を参照すると、一対のアングル部材11d・11dは、一対のチャンネル部材11b・11bの間に配置されている。一対のアングル部材11d・11dは、それらの両端面が一対のチャンネル部材11b・11bに溶接で接合されている。そして、一対のアングル部材11d・11dには、一組の吊り下げフレーム12・13の上端部がねじ止めで固定されている。
【0033】
(一組の吊り下げフレームの構成)
【0034】
図1及び図3から図5を参照すると、一組の吊り下げフレーム12・13は、水平状態に配置された一対のアングル部材15・15を中間部に溶接で接合している。これらのアングル部材15・15には、それらの一片に合成樹脂からなる帯状のスライド板15aを取り付けている。これらのアングル部材15・15は、導水装置2の底面を両側から支持している。そして、導水装置2は、一対のスライド板15a・15aを滑動して、上流側水路USから離隔するように、水路の下流側に向かって移動できる(図6参照)。なお、一対のスライド板15a・15aに複数のローラを取り付けて、導水装置2を滑動自在に移動できるように構成してもよい。
【0035】
図4又は図5を参照すると、一組の吊り下げフレーム12・13の下部には、発電用水車3を取り付けている。又、一方の吊り下げフレーム12の下部には、発電機4を取り付けている。なお、発電用水車3及び発電機4の構成は、後述する。
【0036】
(水力発電装置用導水装置の構成)
【0037】
図1及び図3から図5を参照すると、導水装置2は、導水装置本体21、一対の側壁フレーム22・22、一対のC形チャンネル状の支持アーム23・23、及び支持フレーム24で構成している。又、図2を参照すると、支持フレーム24は、一対のローラ24r・24rを両端部に備えている。
【0038】
図1及び図3から図5を参照すると、導水装置本体21は、所定の厚さを有する帯状の展開板が成形されて、方形の樋状の導水路20を形成している。導水装置本体21は、導水路20の底壁21cが水路の下流側に向かって下り傾斜するように配置されている。又、導水装置本体21は、導水路20を構成する一対の側壁21a・21bを有している。一対の側壁21a・21bは、上流側水路USから所定の流量が確保できる高さを有している。
【0039】
図1及び図3から図5を参照すると、側壁フレーム22は、隣接し合う側辺が袋状に折り曲げられ、所定の厚さを有する板金が成形されたモノコック構造に形成されている。そして、一対の側壁フレーム22・22は、それらの長辺が底壁21cと所定の傾斜角度を確保するように、一対の側壁21a・21bに溶接で接合されている。つまり、導水装置本体21と一対の側壁フレーム22・22は、一体となって移動できる。
【0040】
図5を参照すると、一対の側壁フレーム22・22の長辺は、水平状態に配置されている。図4を参照すると、一対の側壁フレーム22・22は、スライド板15aを介して、一対のアングル部材15・15に支持されている。後述するように、上流側水路USとの接続を解除することにより、導水装置2を図5に示した状態から図6に示した状態に平行移動できる。
【0041】
(支持フレームの構成)
図1から図3及び図5を参照すると、方形状に突出し、略平行に延びる一対のコンクリート堤81・81を上流側水路USから下流側水路DSに向けて、水路の上部の両翼に設置している。支持フレーム24は、一対のコンクリート堤81・81に跨るように配置されている。なお、一対のコンクリート堤81・81は、段差を設けて、一対のコンクリート堤91・91と一体に設置してもよく、別体で設置してもよい。
【0042】
図2を参照すると、支持フレーム24は、C形のチャンネル部材24aで構成されている。チャンネル部材24aは、一組のアングル部材24b・24bを介して、一対のローラ24r・24rを両端部の底面に取り付けている。
【0043】
図2を参照すると、ローラ24rは、中心部にベアリングを装着している。このベアリングにローラピン24pが挿入されると共に、ローラピン24pの両端部が一組のアングル部材24b・24bに回転可能に支持されている。又、ローラピン24pの両端部には、抜け止め用のピン24qが圧入されている。そして、一対のローラ24r・24rは、一対のコンクリート堤81・81上を転動できる。
【0044】
図1を参照すると、支持フレーム24は、一組の平板曲げ部材24c・24cを中央部に溶接で固定している。一組の平板曲げ部材24c・24cの一片は、下流側水路DSに向かって突出しており、一対の支持アーム23・23の上端部がねじ止めされている(図5参照)。
【0045】
一方、図1又は図5を参照すると、一対の支持アーム23・23の下端部は、導水路20を構成する一対の側壁21a・21bがねじ止めされている。そして、導水装置本体21は、一対の支持アーム23・23及び支持フレーム24を一体にして移動できる。
【0046】
このように、図1又は図5を参照すると、導水装置2は、その前部(上流側水路US側)が一対の支持アーム23・23及び支持フレーム24で一対のコンクリート堤81・81に懸架されると共に、その後部(下流側水路DS側)が架台1に設けた一対のアングル部材15・15で支持されている(図4参照)。
【0047】
図2又は図3を参照すると、一対のコンクリート堤81・81には、それらの上面に固定ブラケット82をそれぞれ固定している。固定ブラケット82は、その立設片82aに切り欠き穴82hを設けている(図2参照)。
【0048】
一方、図2を参照すると、支持フレーム24は、固定ブラケット82に向かって突出した一対のボルト部材24d・24dを両端部に保持している。なお、図2では、一方のボルト部材24dのみを図示している。そして、一対のボルト部材24d・24dが固定ブラケット82の切り欠き穴82hに挿入されると共に、ボルト部材24dにナット(図示せず)を締結することにより、支持フレーム24の移動が阻止される。つまり、導水装置2が下流側に平行移動することが阻止される(図6参照)。
【0049】
(発電用水車の構成)
図1及び図3から図5を参照すると、発電用水車3は、一対の両翼円板3a・3a、中央円板3b、複数の羽根3c、及び回転軸3dで構成している。一対の両翼円板3a・3a及び中央円板3bは、所定の間隔を設けた配置されると共に、それらの中心部に回転軸3dを固定している。
【0050】
図1及び図3から図5を参照すると、複数の羽根3cは、それらの両端縁が両翼円板3a及び中央円板3bに溶接で接合されていると共に、回転軸3dの中心から外方に向かって放射状に配置されている。
【0051】
図1及び図3から図5を参照すると、回転軸3dの両端部は、一組の吊り下げフレーム12・13の下部に回転自在に支持されている。導水装置本体21から流水が落下すると、発電用水車3を回転できる。
【0052】
このように、実施形態による発電用水車3は、羽根車の周囲が開放された上掛け式のクロスフロー水車であり、前述したように、内部に空洞を有するので、比較的効率がよく、流量の変動に伴う効率の変化も少ないことから、小規模の発電に適している。
【0053】
(発電機の構成)
図4又は図5を参照すると、回転軸3dは、大きい半径を有するスプロケット5aを一方の端部に固定している。一方、発電機4は、その回転軸に小さい半径を有するスプロケット5bを固定している。これらのスプロケット5a・5bには、チェーン5cが巻き掛けされている。そして、発電機4は、発電用水車3からの回転が伝動されて発電できる。なお、スプロケット5a・5b及びチェーン5cは、巻掛伝動装置5を構成している。又、巻掛伝動装置5を用いることなく、発電用水車3の回転軸3dを発電機4に直結してもよい。
【0054】
図4又は図5を参照すると、発電機4及び巻掛伝動装置5は、箱状のカバー50で覆われており、防水対策が施されている。
【0055】
[水力発電装置用導水装置の作用]
次に、実施形態による導水装置2の作用及び効果を説明する。図6は、前記実施形態による水力発電装置用導水装置の構成を示す左面図であり、上流側水路からの流水を導水装置本体が導水することなく、下流側水路に放水させている状態図である。
【0056】
図1及び図3から図5を参照すると、通常は、導水装置2の前部が上流側水路USに接続しており、上流側水路USからの流水を導水して、発電用水車3を回転できる。一方、発電機4を含めた発電用水車3を保守・点検する場合は、発電用水車3が停止していることが好ましい。そして、発電用水車3を停止する手順を以下に説明する。
【0057】
最初に、図2を参照して、ボルト部材24dに締結されたナット(図示せず)をボルト部材24dから取り外すことにより、一対の固定ブラケット82・82と支持フレーム24の結合を解除できる。
【0058】
次に、導水装置2を下流側に移動させる。この場合、図5又は図6に示されるように、支持フレーム24に設けた一対のローラ24r・24rが一対のコンクリート堤81・81上を転動すると共に、図4に示されるように、導水装置2の底面が一対のスライド板15a・15aを滑動するので、導水装置2の移動が容易である。
【0059】
図6に示された状態まで導水装置2を下流側に移動させると、導水装置2は、上流側水路USからの流水を導水することなく、上流側水路USからの流水を下流側水路DSに放水させる。これにより、発電用水車3を停止できるので、発電機4を含めた発電用水車3を容易に保守・点検できる。
【0060】
このように、実施形態による導水装置2は、上流側水路USからの流水を導水する導水状態と、上流側水路USからの流水を導水することなく、下流側水路DSに放水させる放水状態に変更可能に配置された樋状の導水装置本体21を備えているので、導水装置本体21が導水状態では、上流側水路USからの流水を導水して発電用水車3を回転できる。一方、放水状態では、上流側水路USの水を下流側水路DSに迂回させることなく、発電機4を含めた発電用水車3を容易に保守・点検できる。
【0061】
又、実施形態による発電用水車3は、羽根車の周囲が開放された上掛け式のクロスフロー水車を用いているので、比較的効率がよく、流量の変動に伴う効率の変化も少ないことから、小規模の発電に適している。更に、実施形態による発電用水車3は、ケーシングで覆われていないので、流水中の異物が溜まり難いという長所がある。又、整備や清掃のために、大規模な分解を必要とせず、保守費用が低減できるという利点がある。
【0062】
本発明は、上流側水路と下流側水路の間に段差を有する水路に設置される、好適な水力発電装置用導水装置を開示したが、この場合、水路は、農業用水路であってもよく、コンクリートで囲われた小さな河川であってもよく、上流側水路は暗渠であってもよい。
【0063】
又、本発明は、発電機を含めた発電用水車が容易に保守・点検できる水力発電装置用導水装置を開示したが、異常増水が予測される場合は、導水装置を下流側に移動して、上流側水路からの流水を下流側水路に放水させておくと、水力発電装置の損出を防止できる。
【0064】
実施形態による水力発電装置は、小規模の電力を供給する水力発電所と比べて発電能力に劣る点は否めないが、水路の多い我国でにあっては、実施形態による水力発電装置を多数、設置することによって、クリーンな電気エネルギーを供給することに貢献できる。
【符号の説明】
【0065】
1 架台
2 導水装置(水力発電装置用導水装置)
3 発電用水車
10 水力発電装置
21 導水装置本体
DS 下流側水路
Df 段差
US 上流側水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側水路と下流側水路の間に段差を有する水路の下流側に配置される架台の下部に回転自在に支持された発電用水車に導水する水力発電装置用導水装置であって、
前記架台に連結して、前記上流側水路からの流水を導水し、前記下流側水路に落下する流水で前記発電用水車を回転可能な樋状の導水装置本体を備え、
前記導水装置本体は、前記上流側水路からの流水を導水する導水状態と、前記上流側水路からの流水を導水することなく、前記下流側水路に放水させる放水状態と、に変更可能に配置されている水力発電装置用導水装置。
【請求項2】
前記導水装置本体は、前記上流側水路から離隔するように、前記水路の下流側に向かって移動自在に前記架台に連結している請求項1記載の水力発電装置用導水装置。
【請求項3】
前記発電用水車は、羽根車の周囲が開放された上掛け式のクロスフロー水車である請求項1又は2記載の水力発電装置用導水装置。
【請求項4】
前記架台には、前記発電用水車からの回転が伝動される発電機が配置されている請求項1から3のいずれかに記載の水力発電装置用導水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−83173(P2013−83173A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222286(P2011−222286)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(503027137)株式会社渡会電気土木 (7)
【Fターム(参考)】