説明

水和ケイ酸の製造方法

【課題】良好な細孔体積、良好な吸油量、および良好な粒度分布を兼ね備えた水和ケイ酸を製造できる方法を提供する。
【解決手段】ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を添加して中和することにより反応液中で粒子を析出させる水和ケイ酸の製造方法において、前記粒子が析出している期間内に、前記反応液に対して超音波を照射することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水和ケイ酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙は嵩高化および軽量化される傾向にあるが、印刷用紙を軽量化すると紙に印刷した場合の不透明度(以下、印刷後不透明度と称する)が低下し、その結果、印字が紙の反対面から透き通って見えるという問題が生じる。印刷後不透明度も含め、紙の不透明度を向上させるために紙に様々な填料を添加することが一般に行われている。不透明度を向上させるという目的のために無機系及び有機系の各種填料の研究開発が行われているが、現在においても、なお安価で十分に不透明度の向上効果のあるものは開発されるに至っていない。又、最近ではますます紙の軽量化が促進される傾向が強いので、既存の填料より更に不透明度を向上させる能力を持った填料の出現が強く望まれている。
【0003】
現在使用されている不透明度向上用の填料の中で、水和ケイ酸は、他の種類の填料より価格も安く、又パルプに添加して抄紙した場合、インクの浸透を抑制することによる印刷後不透明度を付与する効果があり、期待されている。しかし、白紙不透明度に対する効果を含めてまだ十分満足すべき水準に到達していない。
【0004】
水和ケイ酸の特性うち、吸油量はインクの浸透を抑制する能力の指標となるものであり、印刷後不透明度の向上に大きく寄与している。
水和ケイ酸の細孔体積は、これが大きい方が吸油量は増大するが、大きすぎると粒子がもろくなる。
また、水和ケイ酸の粒度分布が広くて粗粒を多く含有していると、紙からの填料の脱落が多くなり填料歩留まりが悪くなってしまうるので、粒度分布の均一性が高いことが望ましい。
しかし、水和ケイ酸の製造において、良好な細孔体積、良好な吸油量、および良好な粒度分布のすべてを同時に実現することは容易ではない。
例えば下記特許文献1では、高細孔体積と微細粒径を兼備した水和ケイ酸を製造することを目的として、サンドグラインダーやホモミキサーなどの湿式粉砕機を使用して水和ケイ酸を製造する方法が提案されているが、この方法は製造コストが高いうえ、得られた水和ケイ酸は、吸油量に対する全細孔体積が大きいので、もろく崩れ易いという問題がある。
一方、超音波に関する技術としては、下記特許文献2に、水性顔料分散体に超音波を照射することにより、スラリー中の顔料の分散性を向上させる方法が開示されている。この方法における超音波は顔料の粒子構造に影響を与えるものではない。
【特許文献1】特許第2908253号公報
【特許文献2】特開2004−285172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、良好な細孔体積、良好な吸油量、および良好な粒度分布を兼ね備えた水和ケイ酸を製造できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。
すなわち、本発明は、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を添加して中和することにより反応液中で粒子を析出させる水和ケイ酸の製造方法において、前記粒子が析出している期間内に、前記反応液に対して超音波を照射することを特徴とする水和ケイ酸の製造方法である。
本発明では、前記鉱酸の添加量が前記ケイ酸アルカリ水溶液を中和するのに必要な鉱酸の全量のうちの60%に達する前に、前記超音波を照射することが望ましい。
本発明では、前記反応液の温度を70℃以下として前記鉱酸を添加する第1の工程と、前記第1の工程の後に、前記反応液の温度を70℃超として前記鉱酸を添加する第2の工程を有することが好ましい。
本発明では、前記超音波の照射時の出力が、前記反応液1リットル当たり10〜300ワットであることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な細孔体積、良好な吸油量、および良好な粒度分布を兼ね備えた水和ケイ酸が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるケイ酸アルカリ水溶液は、特に限定されないが、ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液が好適である。ケイ酸アルカリ水溶液のモル濃度は、ケイ酸ナトリウムの場合、モル比(SiO/NaO)が2.0〜3.4の範囲から選ぶのが好適である。
【0009】
本発明で水和ケイ酸を析出させる時に用いられる鉱酸としては公知のものが何等制限なく使用でき、これらを単独、又は二種以上を併用してもよい。具体的には、鉱酸として塩酸、硫酸、硝酸等があげられるが、硫酸が入手容易で、比較的安価であるために好適に用いられる。鉱酸の濃度は、特に制限されないが一般には10〜30質量%の範囲から選べばよい。
【0010】
本発明の方法では、ケイ酸アルカリ水溶液へ鉱酸を添加して中和反応を生じさせる。これにより反応液中で水和ケイ酸の粒子が生成し、析出される。
本発明では、該粒子が析出している期間内に、反応液に対して超音波を照射する。ここでの「粒子が析出している期間」の起点は粒子が析出しはじめる時点であり、終点は、ケイ酸アルカリ水溶液を中和するのに必要な鉱酸の全量を添加し終えた時点とする。
【0011】
鉱酸の添加は、反応液を均一な状態を保ちながら行うことが好ましい。具体的には、ケイ酸アルカリ水溶液(反応液)を攪拌しながら鉱酸を添加して粒子を析出させることが好ましい。鉱酸の添加は、ケイ酸アルカリ水溶液を中和するの必要な量(当量)の全部を1回で添加してもよいし、2回以上の複数回に分けて添加してもよい。
鉱酸を1回で添加する場合、鉱酸の全量を一挙に、または連続的に添加する。ケイ酸アルカリ水溶液(反応液)の温度は60℃以上とするのが好ましく、75℃以上がより好ましい。該温度の上限は、当該ケイ酸アルカリ水溶液(反応液)の沸点以下とする。反応液の温度を上記範囲とすることにより反応液がゲル状態になるのを防止することができる。
【0012】
鉱酸を2回以上の複数回に分けて添加する場合、一回目の鉱酸を添加する第1の工程における反応液の温度は70℃以下とすることが好ましい。20〜70℃の範囲がより好ましく、30〜60℃がさらに好ましい。第1の工程における反応液の温度を上記範囲とすることにより粒度分布が均一な水和ケイ酸を得ることができる。
第1の工程における鉱酸の添加量は、ケイ酸アルカリ水溶液を中和させるのに必要な鉱酸の全量(当量)のうちの10〜50%が好ましく、20〜45%がより好ましい。第1の工程における鉱酸の添加量を上記範囲とすることにより、細孔体積、粒度分布に優れた水和ケイ酸を得ることができる。
第1の工程では、該所定の添加量の鉱酸を、攪拌下の反応液に一挙に、または連続的に添加する。
【0013】
第1の工程の後、反応液を10〜50分程度の短時間で熟成温度まで昇温し、均一な状態を保ちながら熟成させることが好ましい。熟成温度は70℃超、反応液の沸点以下の範囲で、後続の第2工程における反応液の温度と同じ温度に設定することが好ましい。熟成時間は5〜40分間程度が好ましく、より好ましくは10〜30分間程度である。
この熟成工程は必須ではないが、熟成を行うことにより細孔体積、粒度分布に優れた水和ケイ酸を得ることができる。
【0014】
第1の工程の後、好ましくは第1の工程および熟成工程の後、反応液を引き続き攪拌しながら、二回目の鉱酸添加を行う(第2の工程)。
第2の工程では、ケイ酸アルカリ水溶液を中和させるのに必要な鉱酸の全量(当量)の残りを、攪拌下の反応液に一挙に、または連続的に添加することが好ましい。
第2の工程における反応液の温度は70℃超とすることが好ましい。85℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。該反応液の温度の上限は沸点以下である。第2の工程における反応液の温度を上記範囲とすることにより粒度分布が均一な水和ケイ酸を得ることができる
第2の工程の後、必要に応じて更に熟成を行ってもよい。
【0015】
このように第1の工程および第2の工程を設けて、鉱酸の添加を複数段で行う方法は、細孔体積、粒度分布に優れた水和ケイ酸を得るうえで好ましい。
【0016】
本発明では、反応液中で粒子が析出している期間内に、反応液に対して超音波が照射される。反応液中では、まず一次粒子が形成され、個々の一次粒子が凝集して凝集体を生成するが、少なくとも反応液中で水和ケイ酸の一次粒子が成長しつつある期間内に超音波が照射されることが好ましい。
超音波照射の開始時期は、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を添加する前に開始してもよく、鉱酸を添加する途中で開始してもよい。具体的には鉱酸の添加量が、ケイ酸アルカリ水溶液を中和するのに必要な鉱酸の全量(当量)のうちの60%に達する前に開始することが好ましい。より好ましくは50%に達する前であり、さらに好ましくは40%に達する前である。鉱酸の添加量が前記当量の60%に達する前に超音波照射を開始すると細孔体積、粒度分布に優れた水和ケイ酸を得ることができる。
超音波照射の終了時期は、中和反応が終了した後でも特に問題はないが、エネルギーの無駄を無くすために、必要以上に長く照射することは避けるべきである。
超音波照射は途中で中断しながら断続的に行っても構わないし、途中で超音波の条件を変えることもできる。
【0017】
特に鉱酸を1回で添加する場合、超音波の照射は鉱酸を添加し始める前から行うことが好ましいが、水和ケイ酸の粒子が析出し終わる前であれば、鉱酸の添加中に超音波照射を始めてもよい。
また鉱酸を2回に分けて添加する場合は、2回目の鉱酸添加(第2の工程)の前に超音波の照射を完了させておくことが、エネルギーの有効利用の点で好ましい。
【0018】
超音波照射の条件は、特に制限されないが、出力は反応液1Lあたり10〜300W(ワット)が好ましく、10〜200Wがより好ましく、20〜100Wがさらに好ましい。超音波照射の出力を前記範囲の下限値以上にすることは、本発明の効果を得るうえで好ましい。また、出力を前記範囲の上限値以下にすることは、エネルギー的に効率が良く、凝集体の破壊等の副作用を抑えるうえでも好ましい。
超音波の周波数は、本発明の効果を得るうえで15〜600kHzが好ましく、15〜200kHzがより好ましく、20〜100kHzがさらに好ましい。
【0019】
本発明において、反応液に対して超音波を照射する装置としては、特に限定されないが、例えば投げ込み式超音波洗浄機を用いることができる。または、反応容器本体の外部に循環ラインを設けて連続的に反応液の一部を取り出して処理することも可能である。また、強度的問題が無ければ、反応容器本体から超音波を発振させたり、本体周囲に発振器を取り付けることもできる。
【0020】
本発明の方法によれば、ケイ酸アルカリ水溶液の中和反応による水和ケイ酸の析出工程において、反応液中で水和ケイ酸粒子が析出している期間内に超音波を照射することにより、細孔構造に優れ、良好な細孔体積を有するとともに、吸油量が良好であり、かつ水和ケイ酸粒子(一次粒子および凝集体)の粒度分布が均一化された水和ケイ酸が得られる。
これは、超音波の照射によるキャビテーションの作用により水和ケイ酸の析出反応の均一性が向上するためと考えられる。
本発明の方法は粒子の析出状態に影響を与えうる段階で超音波を照射する点で、例えば、前記特許文献2に開示されているような、水性顔料分散体に超音波を照射してスラリー中における顔料の分散性を向上させる方法とは技術的に異なる。
【0021】
本発明においては、超音波を水和ケイ酸粒子の析出状態に影響を与える条件で照射することが重要である。かかる超音波照射による水和ケイ酸粒子の析出状態への影響は、例えば(1)粒子の析出速度、(2)超音波の照射時期、(3)超音波の照射出力によって制御可能である。(1)粒子の析出速度は反応液の温度で制御可能である。
特に、析出の初期段階に好ましい影響を与えると、本発明の効果を得やすく、そのためには、下記(1)〜(3)の1以上を満たすことが好ましい。
(1)70℃以下の反応液に鉱酸を添加する第1の工程と、その後に70℃超の反応液に鉱酸を添加する第2の工程を設け、2段階の析出反応を行う。
(2)鉱酸の添加量が当量の60%に達する前に、超音波を照射する。
(3)超音波の照射時の出力を反応液1L当たり10〜300Wワットとする。
【0022】
本発明によれば、下記特性を有する水和ケイ酸粒子を得ることができる。
レーザー式測定法による50%(体積基準)平均粒子径が10〜30μm、好ましくは15〜25μm。
粒子径100μm以上の粒子が、粒子全体に占める体積割合(本明細書では粗大粒子率という)が10体積%以下、好ましくは7体積%以下。
水銀圧入式測定法による細孔体積が2.5〜5ml/g、好ましくは3〜5ml/g、より好ましくは3〜4ml/g。
JIS K5101による吸油量が200〜500ml/100g、好ましくは250〜450ml/100g。
【0023】
本発明の方法で得られる水和ケイ酸は、シリカ系填料として好適に用いることができる。
本発明により得られる水和ケイ酸粒子からなるシリカ系填料は、紙の原料パルプ繊維中に分散させた填料として酸性抄紙、中性抄紙或いはアルカリ抄紙のいずれにおいても使用することができ、又、表面コート剤用の顔料として使用することもできる。
例えば本発明の方法で製造された水和ケイ酸粒子(シリカ系填料)を、パルプ原料と混合し、公知の湿式抄紙機により製紙することにより、シリカ系填料内添紙が得られる。
前記湿式抄紙機としては、丸網式抄紙機、短網式抄紙機、長網式抄紙機、ツインワイヤー式抄紙機等の商業規模の抄紙機が目的に応じて適宜用いられる。
【0024】
本発明の方法によれば、水和ケイ酸をスラリー状で得ることができるので、スラリー状のままパルプ原料と混合することができる。またスラリー状であれば、搬送や貯蔵を既存の設備を利用して容易に行うことができる。または、得られたスラリー状の水和ケイ酸を乾燥して粉体状で保管し、これをパルプ原料と混合させるときに水に再分散させて用いることもできる。
本発明で得られる水和ケイ酸を、シリカ系填料として紙に添加する際には、必要に応じて予め湿式粉砕及び/又は湿式分級して用いてもよい。湿式粉砕は、公知の連続式ホモミキサー、コロイドミル、ディスクリファイナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロッドミル等を用いて行うことができる。
【0025】
本発明にかかる水和ケイ酸粒子(シリカ系填料)を内填した紙(シリカ系填料内添紙)に用いられるパルプ原料としては、通常用いられている公知の製紙用パルプを使用することができる。具体的には、サルファイトパルプ、クラフトパルプ、ソーダパルプ等のケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、メカニカルパルプ等の木材パルプ、或いは楮、三椏、麻等の非木材パルプでも良い。これらのパルプは、未晒パルプでも晒パルプでも良く、又、未叩解でも叩解していてもよい。更に、これら単独でも、二種以上の混合で用いてもとい。
該シリカ系填料内添紙には、通常抄紙で用いられる添加剤、例えばサイズ剤、消泡剤、スライムコントロール剤、染料、着色顔料、蛍光染料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、濾水性向上剤、及び歩留り向上剤等を必要に応じて使用することができる。
また、該シリカ系填料内添紙の表面には、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、各種表面サイズ剤等を塗布することも可能である。
【0026】
本発明にかかる水和ケイ酸粒子(シリカ系填料)を用いて得られる紙は、不透明度が高く、特に印刷後不透明度に優れている。かかる紙特性が得られるのは、水和ケイ酸粒子内部の空隙量が多くて吸油量が多く、粒度分布の均一性が良好で填料歩留まりが高いことで、紙に印刷されたインキの浸透を抑制する能力が高くなるためと考えられる。
すなわち、本発明の方法で得られる水和ケイ酸粒子は、上述したような特性を有しており、吸油量が大きいので、これを紙に填料として適用したときに印刷後不透明度を十分に向上させることができる。しかも、該吸油量に対して細孔体積が大きすぎないので粒子の崩壊が生じ難く安定している。また粗大粒子率が低いということは、粒度分布が均一化された結果と考えられるが、粗大粒子率が低いので、紙に填料として適用したときに脱落が生じ難く、填料の添加による効果を十分に発揮することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は勿論これらに限定されるものではない。尚、以下の実験例において、%は、特に断りのない限り質量%である。
【0028】
<実験例1>
市販のJIS3号ケイ酸ソーダ水溶液(トクヤマ社製、固形分濃度30%)240gを純水にて1000gに希釈し、シリカ(二酸化ケイ素)濃度を72g/kgとして2リットルのステンレスビーカーに入れた。ウォーターバスにて温度を50℃に維持し、攪拌しながらケイ酸ソーダ水溶液中に超音波発振器(製品名;SPM40−01、Weber Ultrasonics GmbH社製)を入れ、40kHz、100W(反応液1L当たり)で超音波を照射した。
【0029】
次いで、超音波照射および攪拌を続けたまま、ケイ酸ソーダを中和するのに必要な全酸所要量(当量)の30%に相当する硫酸(濃度20%)54gを12分間かけて連続的に添加した(第1の工程)。
硫酸の添加が終わったあと、超音波照射を止め、攪拌しながら25分間で反応液の温度を90℃まで昇温した。この温度でそのまま攪拌を続け、10分間熟成を行った(熟成工程)。
次いで、残りの硫酸126gを28分間かけて連続的に添加し(第2の工程)、硫酸の添加が終わった後、更に20分間熟成を行った(熟成工程)。
【0030】
こうして得られた反応液(反応生成物を含むスラリー)を200メッシュの篩を通過させ残渣を除去した。篩を通過したスラリー中の水和ケイ酸粒子の平均粒子径および粗大粒子率を、レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名;SALD−2000、島津製作所社製)で測定した。レーザー式測定法による50%平均粒子径は、18μm、粗大粒子率は3体積%であった。
篩を通過したスラリーをブフナーロートにて濾過しケーキ状の水和ケイ酸を得た。その一部を105℃にて一晩乾燥したものについて、JIS K5101による吸油量、および水銀圧入式測定法による細孔体積を測定した。
各測定の結果を下記表1に示す。なお表1において、照射期間は、「照射開始時の酸の当量に対する添加割合(%)〜照射終了時の酸の当量に対する添加割合(%)」で示している。
【0031】
<実験例2>
実験例1において、超音波の照射を、第1の工程で行わず、第2の工程でのみ行った。すなわち、中和用硫酸の30%を添加した後に超音波照射を開始し、残りの硫酸の添加が終了するまで継続したこと以外は実験例1と同様の処理を行い水和ケイ酸を得た。
実験例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
<実験例3>
実験例1において、第1の工程における反応液の温度を50℃から70℃に変更した以外は、実験例1と同様の処理を行い、水和ケイ酸を得た。
実験例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
<実験例4>
実験例1において、反応液に対して照射する超音波の出力を100Wから10W(反応液1L当たり)に変更した以外は、実験例1と同様の処理を行い、水和ケイ酸を得た。
実験例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
<実験例5>
実験例1において、超音波の照射を、第1の工程で行わず、第2の工程の途中から行った。すなわち、中和用硫酸の70%を添加した後に超音波照射を開始し、残りの硫酸の添加が終了するまで継続したこと以外は実験例1と同様の処理を行い水和ケイ酸を得た。
実験例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
<実験例6>
実験例1において、超音波照射を行わなかったこと以外は実験例1と同様に水和ケイ酸を得た。
実験例1と同様の測定を行った。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1の結果に示されるように、超音波を照射した実験例1〜5では、細孔体積、吸油量、および粒度分布の全てをバランス良く満たす水和ケイ酸が得られた。特に、実験例1〜4では、細孔体積、吸油量が良好なまま、粗大粒子率が大幅に低下した。これに対して、比較例1では細孔体積、吸油量を良好な範囲にすると平均粒子径が大きくなり、粗大粒子率も増大してしまった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を添加して中和することにより反応液中で粒子を析出させる水和ケイ酸の製造方法において、
前記粒子が析出している期間内に、前記反応液に対して超音波を照射することを特徴とする水和ケイ酸の製造方法。
【請求項2】
前記鉱酸の添加量が前記ケイ酸アルカリ水溶液を中和するのに必要な鉱酸の全量のうちの60%に達する前に、前記超音波を照射する、請求項1に記載の水和ケイ酸の製造方法。
【請求項3】
前記反応液の温度を70℃以下として前記鉱酸を添加する第1の工程と、前記第1の工程の後に、前記反応液の温度を70℃超として前記鉱酸を添加する第2の工程を有する、請求項1または2に記載の水和ケイ酸の製造方法。
【請求項4】
前記超音波の照射時の出力が、前記反応液1リットル当たり10〜300ワットである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水和ケイ酸の製造方法。



【公開番号】特開2006−282427(P2006−282427A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102322(P2005−102322)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】