説明

水和性ヒドロゲル及び酵素を含む傷のドレッシング

【発明の分野】
本発明はけがに因るか疾患に因るものかを問わず、皮膚の表面の中断による傷の治療に関し、ヒト又は動物の皮膚の処置(治療上、又は美容上)のために、身体の一部に適用される皮膚ドレッシングに関する。
本発明の皮膚ドレッシングは、乳酸イオンのソース及びグルコースの供給を含み、任意選択的に亜鉛イオン及びヨウ化物イオンを含む水和性ヒドロゲル材料を含む皮膚ドレッシングであり、皮膚の処置において有利な効果を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒト又は動物の皮膚の処置(治療上、又は美容上)のために、体の一部に適用される皮膚ドレッシングに関し、特に、(これに限定されるものではない)傷を受けた皮膚、特に皮膚の損傷、すなわち、皮膚潰瘍、やけど、切り傷、刺し傷、裂傷、鈍的外傷、座瘡変形、腫れ物等を含み、けがに因るか疾患に因るものかを問わず、皮膚の表面の中断による傷の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚及び傷のドレッシングは、治療プロセスを助ける多くの重要な役割を果たす様に考案されている。理想的なドレッシングが持つ機能の多くについては専門家の意見は一致しており、それらには以下が含まれる:
・ 乾燥した傷に湿気を与える
・ 傷の疾患部から出る余分な液体の吸収
・ 創傷床の周りに湿潤な環境を保つ
・ 正常な組織のふやけ(水浸し)を防ぐために水と十分に結合する
・ 傷口の清浄(死んだ組織、及び傷跡材料の除去)
・ 感染の防止、及び流出する又は進入する微生物に対するバリアーの用意
・ 感染力のある微生物の殺菌
・ 身体的な外傷の進行に対する衝撃の緩和
・ 断熱による適切な温度の維持
・ 十分な酸素の進入の確保
・ 痛みのある、炎症を持った、開いた傷口部位の沈静化
・ 傷口の形状に柔軟に対応する
・ 断片化したドレッシング端片が傷に残らない様に好ましい物理的状態を維持
・ 治癒細胞に細胞毒性、又は物理的な傷害効果を与えることの無い様に作用する
更に、取り扱い上、及び物理的なデザインの特性において、ドレッシングの使用及びその着用が容易となる様なものとすべきである。保管及び配布目的のためには、ドレッシングは大気温度中で安定的であり、且つ堅牢である必要がある。理想的には、広く使用される様手頃な値段で生産及び販売がされる様、製造が簡単にできるものであるべきであろう。
【0003】
この様な、又は他の要求を考慮すると理想的な傷のドレッシングをデザインすることは殆んど不可能であると思われる。今日では、すべての傷ドレッシングは妥協の産物である、何れの製品も所望されている特性の全てを、一つの製品において実現し提供しているものはない。このため、市場には多くの異なった傷ドレッシングが出回り、専門的な手当てを必要とする傷を持つ患者の手当ての典型は、異なる傷及び傷の治癒プロセスの異なる相の傷には、異なる傷ドレッシングが選択されていると思われる。製造者は常により効果的な傷ドレッシングを作り出すように常に新しい方法を探しており、このことは、製造者は上にリストされた特徴及び機能をより多く取り入れたドレッシングを作り出そうとしていることを意味する。新たな有利な効果が達成される毎に、治療の時間が早まり、痛みが減少し、生活の質が向上するため患者の福祉の向上という目標が進展する。このような進歩により、医療介護全般が利益を得ることができる。これらの進んだ「活性化した」ドレッシングは、通常はより多くのコストを要するが、これらは傷が手当てを必要とする全体の時間を減小させ、又ドレッシングを度々交換するために要する介護時間を減らすことができる。このため、傷の手当に対して現代社会が払っている巨大はコストを削減することができる。
【0004】
2003年6月9日に出願された英国特許出願番号0313217.2、及び2004年6月4日に出願された国際出願PCT/GB2004/002374は、皮膚ドレッシングが、乾燥した状態で酸化還元酵素を持つ第一のドレッシング組成物、及び水のソースを持つ第二のドレッシング組成物を含んでいるため、その第一及び第二のドレッシング組成物は、相互に連通(communicate)が可能な液状に置かれており、水は第二の組成物から第一の組成物に移動して、第一組成物により運搬される酵素を少なくとも第一組成物の表面において水和するように作用することを開示している。
【0005】
ある実施の形態においては、第二のドレッシング組成物は、重量割合で以下の反応物を含む様に調剤されるヒドロゲルを含む:
20% AMPS ナトリウム(2−アクリアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、(2-acrylamido-2-methylpropanesulfonic acid)ナトリウム塩(Lubrizol製、 コード2405)
0.2% ポリエチレン グリコール 400 ジアクリレート(UCB Chemicals製)
0.01% 光開始剤(1−ヒドロオキシシクロヘキシル フェニル ケトン1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone(Aldrich製))
20% グルコース(Fisher製)
0.10% 乳酸亜鉛 (Sigma製)
0.05% ヨウ化カリ(potassium iodide) (Fisher製)
100%まで DI水
この様なヒドロゲルは、皮膚治療のために必ずしも我々の先の出願に開示された第一のドレッシングと組合せることなく、それ自身のみで使用できるという有利な点持つことは、驚くべきことである。
【発明の開示】
【0006】
一つの特徴として、本発明は乳酸イオンのソース及びグルコースの供給を含む水和性ヒドロゲル材料を含む皮膚ドレッシングを提供する。
【0007】
更なる特徴として、本発明は乳酸イオンのソース及びグルコースの供給を含む水和性ヒドロゲル材料を含む皮膚ドレッシングを提供するが、重量割り合いで示す以下の反応物を含む水和性ヒドロゲルは含まない:
20% AMPS ナトリウム(2−アクリアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、ナトリウム塩(Lubrizol製、 コード2405))、0.2% ポリエチレン グリコール 400 ジアクリレート(UCB Chemicals製)、0.01% 光開始剤(1−ヒドロオキシシクロヘキシル フェニル ケトン(Aldrich製))、20% グルコース(Fisher製)、0.10% 乳酸亜鉛 (Sigma製)、0.05% ヨウ化カリ(potassium iodide) (Fisher製)、100%までのDI水。
【0008】
他の特徴として、本発明は、乳酸イオンのソース及びグルコースの供給を含む水和性ヒドロゲル材料を含む皮膚ドレッシングを提供するが、その場合グルコースは水和性ヒドロゲル材料の重量の20%未満の量である。
【0009】
水和性ヒドロゲルとは、水和状態の一以上の水ベース、又は水溶性のゲルを言う。
【0010】
水和性ヒドロゲルは水、及び傷口から滲み出した他の材料に作用し吸収することができ、そして、傷口からその様な材料を除去し、ドレッシングが貴重且つ有益な機能を果たすことができる様に働く。水和性ヒドロゲルは又、湿気のソースを提供し、使用中に傷口の湿気を維持するように作用し、傷の回復を助ける。
【0011】
水和性ヒドロゲルは、都合の良いことには親水和性ポリマー材料を含む。適当な親水和性ポリマーは、例えば、ポリ 2−アクリルアミド−2−メチルプロパン スルホン酸(ポリAMPS)(poly 2-acrylamido-2-methylpropane sulphonic acid (poly AMPS))又はその塩(例えば、WO 01/96422に記載されている様)を含む、独特のヒドロゲルの形でFirst Water Ltdにより供給されるポリアクリレート及びメタアクリレート、例えば、ポリサッカリド ガム(polysaccharide gums)特にキサンサン ガム(xanthan gum)(例えば、Keltrolの商標名で入手可能)の様なポリサッカリド、種々の砂糖、ポリカルボン酸(例えば、ISP EuropeよりGantrez AN-169 BFの商標名で入手可能)、ポリ(メチル ビニル エーテル コマレイン無水物)(20,000から40,000の分子量を持ち、例えば、Gantrez AN 139の商標名で入手可能)、ポリビニル ピロリドン(例えば、PVP K-30及びPVP K-90として知られているグレードが商業的に入手可能)、酸化ポリエチレン(例えば、Polyox WSR-301の商標名で入手可能) 、ポリビニル アルコール(例えば、Elvanolの商標名で入手可能)、交差結合ポリアクリル ポリマー(例えば、Carbopol EZ-1の商標名で入手可能)、セルロース及びヒドロオキシプロピル セルロース(hydroxypropyl cellulose)を含む改質セルロース(例えば、Klucel EEFの商標名で入手可能)、カルボオキシメチル ナトリウム セルロース(例えば、Cellulose Gum 7LFの商標名で入手可能)、及びヒドロオキシメチル セルロース(例えば、Natrosol 250 LRの商標名で入手可能)を含む。
【0012】
親水和性ポリマー材料の混合物はゲル中で用いられることもある。
【0013】
親水和性ポリマー材料の水和性ヒドロゲルは、親水和性ポリマー材料が、ゲルの全重量に基づく重量割合で、少なくとも1%の濃度で存在することが望ましく、好ましくは少なくとも2%で、より好ましくは少なくとも5%、更に好ましくは少なくとも10%、又は20%、少なくとも25%、及び更に好ましくは少なくとも30%であるのが良い。ゲルの全重量に基づく重量割合で、更に多く、約40%までは使用しても良い。
【0014】
ポリ−AMPS又はその塩の水和性ヒドロゲルをゲルの全重量に基づく重量割合で約30% の量を使用してよい結果が得られた。
【0015】
比較的高い濃度の親水和性ポリマー材料(少なくとも重量で2%)を用いることにより、ゲルは、例えば、傷と接触している間に血清滲出物からドレッシングの水を取る様に特に効果的に機能することができる。その理由は、ゲルは水溶液のシステムであり、ドレッシングの使用は傷に取り好ましくない傷の全面的乾燥を引き起こす効果を持たないからである。これは水の蒸気圧がドレッシングの使用中に皮膚を含む環境内で維持されているからである。ゲルは、この様に、傷の滲出液の様な湿気を除去する吸収剤の機能をはたし、これが過剰な湿気のレベルを調節するという背景も提供する。
【0016】
水和性ヒドロゲルの水吸収能力は、その高いゲル濃度を含み、自身はその間膨張しつつ、ドレッシングが極めて多量の滲出液を除去することにより傷が治癒するのを助けることができる。注意深く調剤された水和可能な状態となっているゲルを用いることにより、傷が回復不可能な程度までの乾燥状態に達することが防がれる。水和可能な状態になっているため、ドレッシングと傷の間に水溶性溶液のインターフェイスが素早く形成され、もしそれがなければ、ドレッシングの取替時にドレッシングの容易な引き剥がしを困難とする癒着が発生するのが防止される。傷とドレッシングの間に良い水溶性液のインターフェイスが形成されることは、又ゲルに含まれる有益な製品が、あらゆる利用可能な面を通して傷に進入することを可能にする点で重要である。
【0017】
水和性ヒドロゲル材料は、通常、交差結合した形の固体層、シート又はフィルムの形であり、そして機械的な強化構造を持っていることがある。層、シート又はフィルムのサイズ、及び形状はドレッシングの使用目的に沿う様に選択することができる。その厚さは0.01から1.0mm、好ましくは0.05から0.5mmが特に良い。
【0018】
代案として、水和性ヒドロゲルは定まった形、又は形状を持たないアモルフォスゲルであることもあり、その場合ノズルを通して絞り込むことを含み3次元的に変形及び成形することができることもある。アモルフォスゲルは通常交差結合しておらず、又は交差結合の度合いが低い。せん断可能な厚さ(shear-thinning)のアモルフォスゲルが使用されるかも知れない。その様なゲルはせん断力にさらされる場合(例えば、ノズルを通して注がれ、又は絞られる場合)は液状であり、安定した状態では一定の形態をしている。このようにゲルは、例えば、通常約3mmの直径のノズルを持つピストンとシリンダーを含む、圧縮性チューブ,又は注射器状の容器等から処置される様に、注入又は圧搾可能な組成物の形であっても良い。そのようなゲルは、利用可能な空間を埋め及び傷の表面に接触するに十分な変形可能な形をとるゲルとして、表面の層の形で、又は傷孔に入り込む様に塗布される。
【0019】
アモルフォスゲル調剤の典型例として:15%w/w AMPS (ナトリウム塩)、5%w/w グルコース、0.05%w/w ヨウ化カリウム、0.1% 乳酸亜鉛、0.19% ポリエチレン グリコール ジアクリレート及び0.01 %ヒドロオキシシクロヘキシル フェニル ケトン,及びその差は100%までの分析グレードのDI水であるものがある。反応物は十分に混合され、溶解され、そして、UV−Aランプを用いて約100mW/cm2の照射で30−60秒間重合をさせ、必要なヒドロゲルを生産する。これをプラスチックの注射器にとり、そしてアモルフォスゲルは注射器より、表面の層、又は穴を埋めるものとして目標部位に投与される。
【0020】
乳酸イオンのソースは水中で乳酸イオン、又は乳酸を含むイオンを放出することの出来るどのような化合物でも良い。乳酸イオン(乳酸より生ずる)は光学的に活性であり、したがって二つの鏡像異性体の形(enantiomeric form)、L及びD、及びこれら両者の混合である、ラセミ化合物 (racemate)として知られる形で存在することもある。どのような鏡像異性体、又はその混合物でも本発明の使用に適している。溶解可能な乳酸であれば、どの様なものでも乳酸イオンのソースとして用いることが出来ると信じられているが、乳酸イオンの適当なソースとしては、L乳酸ナトリウム(sodium L-lactate), D-乳酸ナトリウム(sodium D-lactate), D, L乳酸ナトリウム(sodium D, L-lactate)及びL-乳酸亜鉛(zinc L-lactate)を含む。
【0021】
乳酸イオンはpH緩衝剤及び抗酸化剤として機能する。乳酸イオンは又、細胞間相互作用の酸化還元環境(redox environment)を最適化するのみならず、血管形成(angiogenesis)、新しい血管の成長及び再生を刺激し、又はそれを支える環境を作り出す点において重要な役割を持つと信じられている。傷に対して乳酸の果たす他の有益な効果もあるかも知れないが、これらについては十分解明されていない。
【0022】
乳酸イオンの量は約0.1%w/v が適量である。
【0023】
ドレッシングは、又好ましくは、亜鉛イオンのソースを含むのが良い。亜鉛イオンのソースは水中で、亜鉛イオン又は亜鉛を含むイオンを放出することの出来る化合物であればどのような化合物であっても良い。亜鉛イオンの適当なソースには、例えば、乳酸亜鉛(zinc lactate), 塩化亜鉛(zinc chloride), フッ化亜鉛(zinc fluoride), 及び硫酸亜鉛 (zinc sulphate)を含む。
【0024】
亜鉛イオンは、抗酸化剤として、及び良く知られた鎮静及び抗炎症効果を持つ、一般的な治癒及び皮膚に有利な薬剤としての機能を持つ。亜鉛は、健康な組織の成長及び修復において多くの機能を持つ、栄養学上の必須の微量元素である。さらに亜鉛イオンは過酸化水素により安定した合成物を形成し、過酸化水素を用いる以下の実施の形態において検討される様に、標的部位に対する過酸化水素の運搬するのを助けることで知られている。
【0025】
亜鉛イオンの量は約0.1%w/vが適量である。
【0026】
本発明の好ましい亜鉛イオン及び乳酸イオンのソースは乳酸亜鉛(zinc lactate)、特にL-乳酸亜鉛(zinc L-lactate)である。
【0027】
グルコースは、ヒアルロン酸の様なグルコースを含む組織マトリクスポリマーの生合成を助け傷の治癒に有利な効果を与えて代謝の活発な細胞に対してエネルギーソースとしての機能を持つ。
【0028】
グルコースの量は、水和性ヒドロゲル材料の重量割合で少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも5%が適量であり、さらに多い量も可能である。重量で5%のグルコースを含むドレッシングでよい結果が得られた。
【0029】
ドレッシングはまた、任意選択的に、例えば、ヨウ化カリウム又はヨウ化ナトリウムの様なヨウ化物イオンのソースを含むこともある。ヨウ化物イオンは適当な酸化剤の存在下でヨウ素元素に酸化されうる。ヨウ素は、WO 01/28600及びWO 03/090800に開示されている様に、皮膚に有益な効果をもたらす良く知られた強力な抗菌剤である。
【0030】
ヨウ化物イオン(iodide ions)の量は約0.05%から0.2%w/v が適量である。
【0031】
本発明の皮膚ドレッシングは、それ自身でヒト又は動物の皮膚に用いることができ、例えば、座瘡又はその他の皮膚の状態の治療のための美容、又は治療目的で傷又は処置する皮膚領域に用いることができる。乳酸イオン、グルコース及び任意的に用いられる亜鉛イオンは、皮膚及び傷の治癒に有利な効果を持つことが観察されている。
【0032】
代案として、本発明の皮膚ドレッシングは、過酸化水素のような酸素又は酸化剤のソースと組み合わせて用いることもできる。例えば、ドレッシングは酸化還元酵素を含む層の様な、過酸化水素を発生させる上重ね材料と組み合わせて用いても良い。酸化還元酵素は、例えば、PCT/GB2004/002374に開示の様に乾燥した状態であっても良いが、WO 03/090800 及び2004年1月30日に出願の欧州特許出願04250508.1に開示の様に、好ましくは、水和状態であるのが良く、好ましくは、例えば、上で検討した様な水和性ヒドロゲルに含まれるのが良い。酸化還元酵素は、適当な基質が酸素と反応して過酸化水素を生み出す反応を触媒する。適当な酸化還元酵素はWO 03/090800に記載されている。ここでの好ましい酸化還元酵素は、対応する基質がグルコースであるブトウ糖還元酵素である。この様に、本発明のドレッシング中のグルコースは、この場合過酸化水素を作り出す基質の働きをする。
【0033】
他の実施の形態においては、上重ね層は事前に生成された過酸化水素又は過酸化水素の前駆体物質の供給を含むこともある。
【0034】
過酸化水素は、多くの有益な特性を持つことが知られた抗菌物質である。本発明のドレッシングはヨウ化物イオンを含んでおり、過酸化水素はヨウ化物イオンと反応してヨウ素分子を作り出し、それが又皮膚に良い効果を与える。さらに組織又は組織液と接触した過酸化水素は急速に分解して酸素を発生させ、その酸素が治癒を助けることになり、そして存在するかもしれない嫌気性細菌に対して作用する。
【0035】
好ましい特徴として、本発明は上で検討した如くこの様に、乳酸イオンのソース及びグルコースの供給を含み、任意選択的に亜鉛イオン及びヨウ化物イオンを含む第一水和性ヒドロゲル材料と、酸化還元酵素を含む第二の水和性ヒドロゲル材料を含むドレッシングを提供する。この二つの水和性ヒドロゲル材料は,層、シート又はフィルムの形であるのが好ましい。二つの水和性ヒドロゲルは、好ましくはポリ AMPS又はその塩を含むのが良く、水和性ヒドロゲルの全重量の約30重量%の量を含むのが望ましい。
【0036】
この場合、皮膚ドレッシングは、上で検討した様に、その上に配置される酸化還元酵素を含む上重ね水和性ヒドロゲル材料を用いて、ヒト又は動物の皮膚上に置いて用いる。低部の皮膚接触層からの皮膚への有益な効果と共に、発生する過酸化水素、及び恐らくヨウ素からも有利な効果が生まれる。
【0037】
本発明の皮膚ドレッシングは又、過酸化水素の拡散率(したがって、効果的な投与量)を、例えば、利用可能な水の量が制限されていることにより、又ゲル構造中に水素結合基が豊富であることにより、又は部分的なバリアーとして働くスクリム(scrim)を組み入れることによりゲルの、傷に向い合う表面の断面領域を制限することにより、コントロール、又は規制する様な方法により調剤又は構築しても良い。
【0038】
ドレッシングは、都合の良いことには、ドレッシングをヒト又は動物の皮膚に、知られた方法により付着させるための覆い又は外側部の層を含み、又はそれを用いて使用される。
【0039】
皮膚ドレッシング(又はその構成物)は、例えば、ラミネート状のアルミフォイル梱包の様な殺菌され、封印され、水の浸透しない梱包により供給されるのが望ましい。
【実施例】
【0040】
実施例1
以下の組成は、WO 03/090800の図6に示す形の皮膚の治療用製品であり、本発明の趣旨に沿ったグルコースを含むヒドロゲル スラブを製品の低部層とし、及び任意的にブドウ糖酸化酵素を組み入れたポリ−AMPSヒドロゲルを含む追加の上部層を含む。
【0041】
本発明のヒドロゲル低部層は重量割合で以下の組成物を含むように調剤された:
水(Fisher製、蒸留水、脱イオン化、分析用グレード) 64.7%
AMPS ナトリウム(Lubrizol製、 AMPS 2405モノマー)30.0%
ポリエチレン グリコール ジアクリレート
(PEG400 ジアクリレート、UCB Chemicals製、Ebecryl 11として入手可能)
0.19%
1−ヒドロオキシシクロヘキシル フェニル ケトン
(1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone)
(光開始剤、Aldrich製) 0.01%
無水グルコース(酵素基質、Fisher製) 5.00%
ヨウ化カリ(Fisher製) 0.05%
亜鉛L-乳酸 水和物(Aldrich製) 0.10%
混合物は、サイズ100mm x 100mmのポリエステル スクリム(polyester scrim)(不織ポリエステル、オープンメッシュ支持体、HDK Industries Inc,より入手可能、製品 コード 5722)、又はポリエチレン ネット支持体、を含む鋳型トレイに約1.5mmの深さまで流し込まれた。ポリエチレン ネット支持体は、ポリエステル樹脂(製品コード5722、Castle Industries, Greenville, SC 9609, USA製)を熱により結合させたポリエステル短繊維から作られたものである。ヒドロゲルはその後、UVランプにより、60秒まで、及び約100mW/cm2の電力で照射された。ヒドロゲルはその後30℃以下に冷却された。
【0042】
酵素を含むヒドロゲルは以下の重量%の成分を含むように調剤された:
水(Fisher製、蒸留水、脱イオン化、分析用グレード) 68.6%
AMPS ナトリウム(Lubrizol製、 AMPS 2405モノマー)15.0%
AMPS アンモニア(Lubrizol製、 AMPS 2411モノマー)15.0%
ポリエチレン グリコール ジアクリレート
(PEG400 ジアクリレート、UCB Chemicals製、Ebecryl 11として入手可能) 0.19%
1−ヒドロオキシシクロヘキシル フェニル ケトン
(1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone)
(光開始剤、Aldrich製) 0.01%
ブドウ糖酸化酵素(GOX, 生体触媒、Pontyridd, コードG575P)
0.035%
亜鉛L-乳酸 水和物(Aldrich製) 1.0%
Pluronic P65(酸化エチレン及び酸化プロピレンのブロックコポリマー、
HO-[CH2CH2O]x-[CH2CHCH3O]y-[CH2CH2O]y-H,平均分子量3400 (BASF製)
0.15%
混合物は、サイズ100mm x 100mmのポリエステル スクリム(polyester scrim)(不織ポリエステル、オープンメッシュ支持体、HDK Industries Inc,より入手可能、製品 コード 5722)、を含む鋳型トレイに約1.0mmの深さまで流し込まれた。ヒドロゲルはその後、UVランプにより、30秒まで(通常は25秒)、及び約100mW/cm2の電力で照射された。ヒドロゲルはその後30℃以下に冷却された。
【0043】
出来上がったゲル層は水、又は水―蒸気が不浸透性の袋、又は包み、例えば、Sigma(コードZ183407)製のラミネート状のアルミフォイル製の袋に別々に分けて梱包された。
【0044】
例えば、傷に使用する場合、傷に接触する層は傷環境に有利な効果をもたらす様それ自身をそのまま使用することができる。代替的に酵素を含むヒドロゲル及びグルコースを含むヒドロゲルは、一方が他方に重なる様に、傷の表面において一緒になる様にして用いることもできる。
【0045】
酸素、及び湿気透過性のポリウレタンの様な覆い、又は被覆物が酵素を含むヒドロゲルの上部に置かれ、そして、覆いの下面にアクリル接着剤が付着されるなどの方法により皮膚に接着させても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸塩イオンのソース及びグルコースの供給を含む水和性ヒドロゲル材料を含む皮膚ドレッシング。
【請求項2】
皮膚ドレッシングであって、以下の重量割合により表す試薬、すなわち、20% AMPSナトリウム((2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸;2-acrylamido-2-methylpropane sulphonic acid)、ナトリウム塩 (Lubrizol製, コード 2405)), 0.2% ポリエチレン グリコール 400 ジアクリレート(UCB Chemicals製), 0.01% 光開始剤 (1−ヒドロオキシシクロヘキシル フェニル ケトン(1-hydroxycyclohexyl phenyl ketone) (Aldrich製), 20% グルコース (Fisher製), 0.1 % 乳酸亜鉛(zinc lactate) (Sigma製), 0.05 % ヨウ化カリウム(potassium iodide) (Fisher製) 及び残りの100 %までの差のDI水(DI-water)を含む水和性ヒドロゲルを除く、乳酸塩イオンのソース及びグルコースの供給を含む水和性ヒドロゲル材料を含む前記皮膚ドレッシング。
【請求項3】
乳酸塩イオンのソース及びグルコースの供給を含む水和性ヒドロゲル材料を含む皮膚ドレッシングであって、前記グルコースは水和性ヒドロゲル材料の重量に対して20%未満の量で存在する、前記皮膚ドレッシング。
【請求項4】
前記水和性ヒドロゲル材料が層、シート又はフイルム状の形である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項5】
前記水和性ヒドロゲル材料がアモルフォス状である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項6】
前記水和性ヒドロゲルが親水和性ポリマー材料を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項7】
前記親水和性ポリマー材料がポリアクリレート及びメタアクリレートから選択される請求項6に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項8】
前記親水和性ポリマー材料がポリ 2−アクリルアミド−2−メチルプロパン スルフォン酸 (2-acrylamido-2-methylpropane sulphonic acid (poly AMPS) )又はその塩を含む請求項7に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項9】
前記親水和性ポリマー材料が、ゲルの全重量に基づく重量に対して、少なくとも1%の濃度、好ましくは少なくとも2%の濃度、より好ましくは少なくとも5%の濃度、更に好ましくは少なくとも10%の濃度、又は少なくとも20%の濃度、望ましくは少なくとも25%の濃度、更に望ましくは少なくとも30%の濃度で存在する請求項6乃至8のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項10】
前記乳酸塩イオンのソースが、L乳酸ナトリウム D乳酸ナトリウム、D,L乳酸ナトリウム及びL乳酸亜鉛から選択される請求項1乃至9のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項11】
更に亜鉛イオンのソースを含む請求項1乃至10のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項12】
前記亜鉛イオンのソースが、塩化亜鉛、フッ化亜鉛、硫酸亜鉛及び乳酸亜鉛、特にL乳酸亜鉛から選択される請求項11に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項13】
前記グルコースが、水和性ヒドロゲル材料の重量割合の少なくとも2.5%、好ましくは少なくとも5%の量で存在する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項14】
更に、例えば、ヨウ化カリウム又はヨウ化ナトリウムの様なヨウ化物イオンのソースを含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項15】
酸素又は酸化剤のソースと組み合わされた請求項1乃至14のいずれか1項に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項16】
酸化還元酵素、好ましくはブドウ糖酸化酵素(glucose oxidase)を含む材料と組み合わされた請求項15に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項17】
酸化還元酵素を含む前記材料の層が水和性ヒドロゲルを含む請求項16に記載の皮膚ドレッシング。
【請求項18】
乳酸イオンのソース及びグルコースの供給を含み、任意選択的に亜鉛イオンのソース及びヨウ化物イオンのソースを含む第一の水和性ヒドロゲル材料と、酸化還元酵素を含む第二の水和性ヒドロゲル材料を含む皮膚ドレッシング。

【公表番号】特表2007−519459(P2007−519459A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550306(P2006−550306)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000312
【国際公開番号】WO2005/072784
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(505456506)インセンス・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】