説明

水回り用樹脂成形体の製造方法

【課題】本発明は、粒子による新規な柄を達成しながら、耐熱性にも優れた水回り用樹脂
成形体を提供する。
【解決手段】マトリックスと、前記マトリックス中に分散された粒子と、を備えてなる水回り用樹脂成形体の製造方法であって、
前記粒子と前記マトリックスとを成形型に注型する工程と、硬化する工程と、を備え、
前記硬化する工程において、少なくとも成形型が傾いており、また、
前記マトリックスはエポキシ樹脂配合物からなり、
前記粒子は前記マトリックスとは異なる組成のエポキシ樹脂配合物より構成され、
かつ、前記水回り用樹脂成形体を厚み方向に切断し、切断面にある100個の粒子について計測し、単純平均をとることで、計算されるフェレット径が、前記水回り用樹脂成形体の使用面を基準線として1mm以上の大きさを有することを特徴とする、水回り用樹脂成形体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性および新規な柄を備えた水回り用樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粒子を樹脂に配合することで様々な意匠を有する水回り用樹脂成形体が提案され
ている。塗装を施した粒子を配合したもの(例えば、特許文献1参照。)、透明性の粒子
を配合したもの(例えば、特許文献2参照。)、ナノサイズの無機粒子を配合したもの(
例えば、特許文献3参照。)などが開示されている。
【0003】
しかしながら、文献1では、大理石調合成樹脂製品を粉砕して得られた粒子に着色した
ものを原料として再度使用することで大理石調合成樹脂へのリサイクルを図ったものであ
り、不透明な大理石調の意匠を有する。
【0004】
また、文献2では、マトリックスとなる樹脂に溶解性を持つ透明粒子を配合することで
、深みのある質感を出しながら強度も得られるというものである。しかし、マトリックス
となる樹脂に無機充填材を配合していることから、透明性が十分とは言えず、また溶解性
透明樹脂粒子を使用していることから、十分な耐熱性が得られない場合があった。
【0005】
また、文献3では、無機粒子を添加しても透明性は高いが、柄としては形成していなか
った。
【0006】
【特許文献1】特開平10−249860
【特許文献2】特許2813527
【特許文献3】特開2004−250521
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、粒子による新規な柄を達成しながら、耐熱性にも優れた水回り用樹脂成形体
を簡便に作製するための製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
マトリックスと、前記マトリックス中に分散された粒子と、を備えてなる水回り用樹脂成形体の製造方法であって、
前記粒子と前記マトリックスとを成形型に注型する工程と、硬化する工程と、を備え、
前記硬化する工程において、少なくとも成形型が傾いており、また、
前記マトリックスはエポキシ樹脂配合物からなり、
前記粒子は前記マトリックスとは異なる組成のエポキシ樹脂配合物より構成され、
かつ、前記水回り用樹脂成形体を厚み方向に切断し、切断面にある100個の粒子について計測し、単純平均をとることで、計算されるフェレット径が、前記水回り用樹脂成形体の使用面を基準線として1mm以上の大きさを有することを特徴とする、水回り用樹脂成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性を有し新規な柄を実現する、水回り用樹脂成形体を簡便に作製することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の最良の形態について説明する。
【0011】
本発明のエポキシ樹脂配合物とは、エポキシ樹脂主剤と硬化剤を備える。
【0012】
本発明のエポキシ樹脂主剤としては、例えば、芳香族系エポキシ樹脂として、ビスフェ
ノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エ
ポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、脂肪族系エポキシ樹脂
として、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂、脂環式
エポキシ樹脂、等が挙げられる。さらにはこれらエポキシ樹脂について、重合度の異なる
もの、ハロゲンを導入して難燃性を付与したもの、各種変性したもの、共重合したもの、
等が挙げられる。
【0013】
本発明の硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤として、鎖状脂肪族アミンであるエ
チレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン等や、環状アミンであ
るイソフォロンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノ−3
−メチルジンクロヘキシル)メタン等、さらには芳香族アミンであるm−キシレンジアミ
ン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられ、酸無水物系硬化
剤として、脂肪族酸無水物であるドデセニル無水コハク酸、ポリアジビン酸無水物、等や
、脂環式酸無水物であるテトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、
ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸
等、さらには芳香族酸無水物である無水フタル酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット
酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0014】
本発明における粒子がマトリックスと異なる組成のエポキシ樹脂配合物である、とは、マトリックスと粒子の
エポキシ樹脂配合物の少なくともエポキシ樹脂主剤や硬化剤について、エポキシ樹脂主剤および/または硬化剤の種類および/または配合量が異なることである。これにより、成形体中のマトリックスと粒子では、分子あるいは架橋構造が変化し、その結果このマトリックスと粒子界面では屈折率差に由来する境界線が生じる。つまり、優れた耐熱性を持つエポキシ樹脂をマトリックスおよび粒子いずれにも使用しながら、組成を異ならせることで成形体の屈折率差を積極的に利用することが可能となる。これにより、マトリックスと粒子で色や透明性に差がほとんどない場合でも粒子を柄として表現でき、また透明性が非常に高いことから粒子界面が重なって視認できるような特徴的な新規な柄を形成できる。
【0015】
また、異なる組成としては、上記エポキシ樹脂主剤と硬化剤を任意に組み合わせること
であってもよい。まず、エポキシ樹脂主剤と硬化剤がマトリックスと粒子で全く違う場合
がある。例えば、マトリックスに液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂とエチレンジアミ
ンを、粒子にはビスフェノールF型エポキシ樹脂とイソフォロンジアミンを使用する。エ
ポキシ樹脂主剤は同一で硬化剤のみ異ならせる場合もある。マトリックスおよび粒子とも
にエポキシ樹脂主剤は液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂で、硬化剤がマトリックスは
ジアミノジフェニルメタンで粒子がヘキサヒドロ無水フタル酸を使用する。硬化剤は同一
でエポキシ樹脂主剤が異なる場合もある。硬化剤はともにメチルヘキサヒドロ無水フタル
酸で、エポキシ樹脂主剤がマトリックスは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂で粒子が
脂環式エポキシ樹脂を使用する。また、重合度の違うエポキシ樹脂主剤を使用した場合も
ある。硬化剤はともにメチルヘキサヒドロ無水フタル酸で、エポキシ樹脂主剤がマトリッ
クスは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂で粒子が固形ビスフェノールA型エポキシ樹
脂を使用する。
【0016】
さらに、異なる組成としては、配合量を変えることでも達成される。例としては、硬化
剤としてはいずれもヘキサヒドロ無水フタル酸を使用しながら、マトリックスはエポキシ
樹脂主剤にビスフェノールA型エポキシ樹脂を100%使用し、粒子はビスフェノールA
型エポキシ樹脂が50%、脂環式エポキシ樹脂が50%の配合で行う、といった場合であ
る。これ以外にも、エポキシ樹脂主剤と硬化剤ともに配合を変える、硬化剤の配合比のみ
を変える、ということも可能である。
【0017】
エポキシ樹脂主剤の違うものの組み合わせとして、好ましくは、ビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂のような芳香族系エポキシ樹脂と脂環式エ
ポキシ樹脂や水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂のような脂肪族系エポキシ樹脂の組み
合わせがよい。ベンゼン環の濃度差により屈折率差を容易に変化できるからである。また
、硬化剤についても、アミン系と酸無水物系の組み合わせでは全く構造が異なるため好ま
しく、また同じアミン系でも鎖状および環状脂肪族アミンと芳香族アミンの組み合わせ、
、脂環式や脂肪族酸無水物と芳香族酸無水物の組み合わせもベンゼン環濃度を変えること
が容易であり好ましい。
【0018】
マトリックスと粒子の組成の違いは、各種分析手法により測定できる。エポキシ樹脂の
ような熱硬化性樹脂の成形体は不溶不融であるため分析手法は限られるが、例えば、成形
体のマトリックスおよび粒子それぞれからサンプルを採取して、熱分解GC―MSにかけ
た時のピークの位置や強度を観察する手法等が挙げられる。IRや固体NMR等必要に応
じて手法を選択すればよい。
【0019】
本発明においては粒子の大きさは、1mm以上であることが好ましい。1mm未満の粒
子を配合した水回り用樹脂成形体では粒子の界面が柄として機能せず、単に光が散乱した
半透明のものとなる。
【0020】
本発明の粒子の大きさの測定および算出について説明する。水回り用樹脂成形体を厚み
方向に1mm程度に薄く切断し、粒子の界面を観察する。図1に観察方法の説明図を示す
。成形体の使用面3を基準線4としたときのフェレット径5(Feret径)を切断面にある100個の粒子について計測し、単純平均をとることで粒子径を計算する。これにより、実際に水回り用樹脂成形体を使用面から見たときに柄として見えるかどうかを判断できる。なおここでフェレット径とは、基準線に垂直な最も左の接線と右の接線の間の距離として、与えられた基準線に沿った粒子の投影図の長さとして定義される。なおここで垂直な接線とは厚み方向の線のことである。
【実施例】
【0021】
以下に実施例をあげて、本発明をより具体的に説明する。
まず、はじめに作製方法を説明する。
【0022】
実施例1
図2のフロー図に示すように、本実施例の製造方法はマトリックスを製造する工程である工程1と、粒子を製造する工程である工程2と、マトリックスと粒子を注型する工程である工程3と、注型した粒子とマトリックスを硬化し脱型する工程である工程4とからなる。以下に各工程についてそれぞれ説明する。
(マトリックス樹脂)エポキシ樹脂主剤、硬化剤、その他添加剤等を調合、混合することでマトリックスを製造する工程1により製造される。脂環式エポキシ樹脂100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸129重量部、硬化促進剤として4級アンモニウム塩3重量部を混合しマトリックス樹脂を得た。
(粒子)マトリックスと異なる組成のエポキシ樹脂配合物による成形体を予め作製し、これを粉砕し、分級することで、粒子を得る工程2により製造される。ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸86重量部、硬化促進剤として4級アンモニウム塩3重量部を混合し、配合物を得た。これを、離型剤を塗布したガラス板に注型し90℃で2時間、さらに140℃で2時間加熱硬化させることで、厚さ15mmの板を得た。これを、ジョークラッシャー粉砕機にて粉砕し、得られた粒子を目開き2mmの篩にかけて通過したものをさらに1mmの篩にかけて篩上に残った粒子を捕集することで、1mm〜2mmの粒子を得た。
エポキシ樹脂配合物は耐熱性に優れているため、粉砕熱により融解して粉砕機内に固着することはなく、通常の粉砕機で可能である。例えば、ジョークラッシャー、ハンマーミル、カッターミル、ウィレー粉砕機、ピンミル、ロールミル等の粉砕機が挙げられる。
(成形体)型内へマトリックスおよび粒子を注型する工程3を行う。注型する方法は2つ挙げられる。一つめの方法は注型時より型を傾斜させておく方法である。図3に型を傾斜させて注型した図を模式図として示した。マトリックス樹脂1および粒子2が下型6および上型7の間に注型されている。この時、下型底面8が水平面10から傾斜角度9で傾いている。分かりやすいように、下型底面8は太い実線で示している。この方法では、上型をセットしたまま注型するため、注型時に型内に飛散してくるコンタミネーションを防止できる。二つ目の方法は注型時に下型底面を水平に配置し、その後後の工程の硬化時に型を傾斜させる方法である。図4に水平に注型した図を模式図として示した。この方法では、上型をセットする前に一気に注型することもでき、注型作業が早い。また、いずれの方法においても、型内に予め粒子を入れた状態でマトリックスとなるエポキシ樹脂配合物を注型してもよく、またマトリックスとなるエポキシ樹脂配合物と粒子を混合したものを注型してもよい。
次に注型されたマトリックス樹脂と粒子を加熱硬化させる工程4を行う。このとき、前記いずれの注型法でも、必ず型を傾斜角度9で傾斜させる。硬化は60〜140℃に加熱して行う。硬化させた成形体は型より脱型し、成形体を得る。必要に応じてアフターキュアを行ってもよい。
本実施例では、上記マトリックス樹脂に粉砕粒子を50wt%の割合で配合し、混合したものを型内に注型した後、型を傾斜させ、90℃で2時間、さらに140℃で2時間加熱硬化し、厚さ15mmの板を得た。また、成形体の端面は切断し、粒子の柄がほぼ全面で均一となるようにした。
なおここで、粉砕粒子を50wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が50wt%となるように配合することである。
【0023】
実施例2
(粒子)目開き3mmの篩を通過し目開き2mmの篩上に残った粒子を捕集した以外は、
実施例1と同様にして2〜3mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)ビスフェノールA型エポキシ樹脂50重量部、脂環式エポキシ樹脂
50重量部、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸108重量部、硬化促進剤として4級アン
モニウム塩3重量部を混合しマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を50wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を50wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が50wt%となるように配合することである。
【0024】
実施例3
(粒子)目開き6mmの篩を通過し目開き4mmの篩上に残った粒子を捕集した以外は、
実施例1と同様にして4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を50wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を50wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が50wt%となるように配合することである。
【0025】
実施例4
(粒子)実施例3と同様にして4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を40wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が40wt%となるように配合することである。
【0026】
実施例5
(粒子)実施例3と同様にして4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ5mmの板を得た。なお、粉砕粒子を40wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が40wt%となるように配合することである。
【0027】
実施例6
(粒子)実施例3と同様にして4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ30mmの板を得た。なお、粉砕粒子を40wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が40wt%となるように配合することである。
【0028】
実施例7
(粒子)目開き15mmの篩を通過し目開き10mmの篩上に残った粒子を捕集した以外
は、実施例1と同様にして10〜15mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を40wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が40wt%となるように配合することである。
【0029】
実施例8
(粒子)実施例7と同様にして10〜15mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ30mmの板を得た。なお、粉砕粒子を40wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が40wt%となるように配合することである。
【0030】
実施例9
(粒子)実施例3と同様にして4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。この板の裏面に青色のウレタン塗料をスプレー塗装した塗装部を設けた。なお、粉砕粒子を40wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が40wt%となるように配合することである。
【0031】
実施例10
(粒子)実施例3と同様にして4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)上記マトリックス樹脂に粉砕粒子を60wt%の割合で配合し、混合したもの
を実施例1と同様に成形し厚さ15mmの成形体を得た。なお、粉砕粒子を60wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が60wt%となるように配合することである。
【0032】
比較例1
(粒子)実施例3と同様にして4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)ビニルエステル樹脂(スチレンモノマー80%含有)100重量部
、メチルエチルケトンパーオキサイド3重量部、ナフテン酸コバルト0.3重量部配合しマトリックス樹脂を得た。すなわち、主剤をエポキシではない反応性硬化樹脂を使用した。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を50wt%の割合で配合し、混合したものを型内に注型した。注型したマトリックス樹脂および粉砕粒子は25℃で6時間、さらに50℃で1時間加熱硬化し、厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を50wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が50wt%となるように配合することである。
【0033】
比較例2
(粒子)3mm長にカットされたPMMAペレットを使用した。すなわち、使用したPM
MAペレットは熱可塑性樹脂であり、エポキシ樹脂に比べて耐熱性は低い。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂にPMMAペレット(粒子)を50wt%の割合で
配合し、混合したものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粒子を
50wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の
重量の割合が50wt%となるように配合することである。
【0034】
比較例3
(粒子)目開き0.1mmの篩下に落下した粒子を捕集する以外は、実施例1と同様にし
て0.1mm以下の粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を30wt%の割合で配合し、混合した
ものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を30wt%の
割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が
30wt%となるように配合することである。
【0035】
比較例4
(粒子)実施例3と同様に4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部、メチルヘキサヒド
ロ無水フタル酸86重量部、硬化促進剤として4級アンモニウム塩3重量部配合したもの
に、さらにシリカ(平均粒径10μm)189部を混合した。すなわち、無機充填材も合
わせたマトリックス樹脂全体に対し、無機充填材を50wt%含む。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合した
ものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を40wt%の
割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が
40wt%となるように配合することである。
【0036】
比較例5
(粒子)実施例3と同様に4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部、メチルヘキサヒド
ロ無水フタル酸86重量部、硬化促進剤として4級アンモニウム塩3重量部を混合した。
すなわち、粒子と全く組成の同じマトリックス樹脂を使用した。
(成形体)得られたマトリックス樹脂に粉砕粒子を40wt%の割合で配合し、混合した
ものを実施例1と同様に成形し厚さ15mmの板を得た。なお、粉砕粒子を40wt%の
割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が
40wt%となるように配合することである。
【0037】
比較例6
(粒子)実施例3と同様に4〜6mmの粒子を製造した。
(マトリックス樹脂)実施例2と同様にしてマトリックス樹脂を得た。
(成形体)上記マトリックス樹脂に粉砕粒子を60wt%の割合で配合し、混合したもの
を型内に注型した。水平に保持したまま90℃で2時間、さらに140℃で2時間加熱硬化した。その後、図5のように、下型底面と接する面とは反対側の面である、成形体の上方面12を製品の使用面とする厚さ18mmの成形体を得た。すなわち、比較例6については、マトリックス樹脂中に埋包されていない粒子が表面に露出している面を成形体の使用面としている。ここでいう成形体の使用面とは、水回り用樹脂成形体においてのコップ等を置くために使用する面のことである。また、粉砕粒子を60wt%の割合で配合するとは、マトリックスと粒子の混合物全体重量に占める粒子の重量の割合が60wt%となるように配合することである。
【0038】
(分析方法)
組成分析:本発明のマトリックスと粒子で異なる組成のエポキシ樹脂であることを示す手
法である。成形体を厚み方向に1mm厚さに切断してマトリックスと粒子を認識しやすく
し、マトリックスから0.5mgおよび粒子から0.5mgのサンプルをそれぞれ採取し
た。これを、熱分解GC−MSにより分析した。分析条件を表1に示す。
【0039】
【表1】

(評価方法)
(1)耐熱性:成形体使用面の上に200℃に熱した油の入った天ぷら鍋を20分放置した後、成形体使用面の外観変化を評価した。○変色、変形、光沢変化等の著しい変化が見られない。×著しい変化が見られる。
(2)柄鮮明性:目視にて外観評価を行った。○成形体を使用面が上面にくるように平面的に置き、室内にて上部より観察し、粒子の輪郭が柄となって見える。×粒子の輪郭が柄となって見えにくい。
【0040】
(分析結果)
実施例1と同様の配合における成形品についての熱分解GC−MSによる分析結果を、マトリックスについて図6に、粒子について図7に示す。なお、縦軸は検出信号強度、横軸は保持時間を表しており、図6と図7の横軸のスケールについてはピーク位置が比較しやすいようにそろえている。
【0041】
マトリックスの結果にはビスフェノールA型エポキシ樹脂由来のピークが現れ脂環式エ
ポキシ樹脂由来のピークは存在しない。一方、粒子の結果には脂環式エポキシ樹脂のピー
クが現れBPA型エポキシ樹脂由来のピークは存在しない。これらの結果は、配合内容と
一致しており、マトリックスと粒子の熱分解GC−MS分析を行うことでその組成の違い
を分析することができた。また、異なる組成として配合量を変えた場合も、熱分解GC−
MSで得られたピークをマトリックスと粒子で比較することで、配合量の違いがそれぞれ
に由来するピークの強度比として測定できる。
【0042】
(評価結果)
耐熱性、および新規な柄の鮮明性を評価した結果を表2に示す。なお、ここでい
う粒子径とは、成形体を厚み方向に1mm程度に薄く切断し、成形体の使用面を基準線としたときのフェレット径(Feret径)を切断面にある100個の粒子について計測し、
単純平均をとることで計算した。また、表中のBPAとはビスフェノールA型エポキシ樹
脂を、脂環とは脂環式エポキシ樹脂を表し、それぞれの配合部数を併記している。また、
粒子配合とは、成形体全体重量に対する粒子の重量割合を示す。
【0043】
【表2】

【0044】
本発明の実施例1〜10に示すようにマトリックスにエポキシ樹脂配合物を用いた場合
、200℃に熱せられた油の入った天ぷらなべを置いた場合にも著しい外観変化等は見ら
れない。このように高い耐熱性を有することから、耐熱性の必要なキッチンカウンターや
浴槽などにも使用でき、水回り用樹脂成形体全般での使用が可能である。比較例1に示し
たように耐熱性の低いポリエステル樹脂配合物をマトリックスに使用すると、耐熱性の高
いエポキシ樹脂配合物による粒子を配合してもマトリックスのポリエステル樹脂配合物が
軟化し変形することにより外観変化を起こした。衝撃強度等の機械的物性も低い。
【0045】
実施例1〜10のようにマトリックスにエポキシ樹脂配合物を用いかつ組成の異なるエ
ポキシ樹脂配合物を用いた粒子を配合した場合は耐熱性だけでなく透明性や柄の鮮明性も優れている。比較例2のようにマトリックス樹脂がエポキシ樹脂配合物でも、配合粒子に耐熱性の低いアクリル粒子を使用した場合、使用面に露出したアクリル粒子自体が熱により変形し外観変化を引き起こす。また、エポキシ樹脂配合物は硬化時に発熱および硬化収縮が起こるため、この影響と思われるアクリル粒子界面の白化が生じ、透明性や柄としても満足のいくものが得られなかった。
【0046】
本発明の柄は粒子径や成形体厚み等によって様々な模様が可能である。実
施例1〜3、あるいは実施例7のように粒子径を変えると、柄模様は変化するが透明性や
柄の鮮明性は確保されている。また、実施例9のように塗装部を設けると、塗装部の着色が透過して見えることで容易に色替えができる。
ただ、比較例3のように粒子が0.1mm以下の場合は柄として粒子の界面を視認できず柄として機能しなかった。
【0047】
実施例3、4、10のように粒子配合量を変化させた場合でも型が硬化時に傾斜しているため、粒子がどちらかの面に偏ることなく均一な柄を形成できる。また図8に成形体を脱型している図を示しているが、成形体は上型面および下型面いずれにも接しているため、いずれの接している成形体表面も型表面が転写され平滑となる。よって光が成形体の両面いずれからでも透過し、柄の鮮明性が保たれる。
すなわち、上型面および下型面いずれに接している成形体の表面も使用面とすることができる。また、配合によっては、端面が樹脂層あるいは粒子層となる場合もある。図9に端面が粒子層となっているときの模式図を示したが、不要の場合は図の破線部分を図10のように切断すればよい。
以上のように、成形体の表面および裏面ともに加工を不要とすることから、非常に簡便な方法といえる。
一方、比較例6のように、硬化する工程において型を傾けずに成形し、粒子が使用面に露出すると、この凹凸で光が乱反射することで、成形体中の粒子界面が
見えにくくなった。また使用面に凹凸があると、外観だけでなく、凹んだ部分に汚れが溜まりやすく、一度溜まった汚れは清掃しにくい、という面でも好ましくない。特にカウンターとして使用する場合、前記汚れの不具合の他にも、カウンター上に置いたものが不安定になる、置いた物を傷つけてしまう、といった不具合も生じる。
【0048】
実施例1〜10はいずれもマトリックスや粒子に無機充填材を含有していない。比較例
4のように無機充填材をマトリックスに50%配合した場合には、粒子だけでなく配合し
た無機充填材による光の散乱も起こるためにマトリックスはせいぜい半透明となり粒子界面が重なり合うような新規な柄にはなら
なかった。本実施例は無機物を使用していないことから、切断や磨きなどの加工性も優れ
、切断面も美麗に仕上げることができる。
【0049】
実施例1〜10のようにマトリックスと粒子のエポキシ樹脂配合物の組成が異なる場合
には透明性と柄鮮明性を両立した成形体が得られた。透明性と柄鮮明性を両立した時の柄の一例を図11に示す。比較例5のように、粒子とマトリックスが全く同じ組成の場合は、粒子とマトリックス樹脂の屈折率差がほとんどなくなり、粒子界面が非常に見えにくくなり、柄の鮮明性は十分ではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】粒子径の計測方法を示した図である。
【図2】本製法のフロー図を示した図である。
【図3】傾けた型内に注型した様子を模式的に示した図である。
【図4】水平な型内に注型した様子を模式的に示した図である。
【図5】比較例6の脱型の様子を模式的に示した図である。
【図6】マトリックスの熱分解GC/MSによるチャートである。
【図7】粒子の熱分解GC/MSによるチャートである。
【図8】成形体を脱型している様子を模式的に示した図である。
【図9】成形体の端部を削除する様子を模式的に示した図である。
【図10】成形体の端部を削除した様子を模式的に示した図である。
【図11】新規な柄の外観を示した写真である。
【符号の説明】
【0051】
1…マトリックス
2…粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックスと、前記マトリックス中に分散された粒子と、を備えてなる水回り用樹脂成形体の製造方法であって、
前記粒子と前記マトリックスとを成形型に注型する工程と、硬化する工程と、を備え、
前記硬化する工程において、少なくとも前記成形型が傾いており、また、
前記マトリックスはエポキシ樹脂配合物からなり、
前記粒子は前記マトリックスとは異なる組成のエポキシ樹脂配合物より構成され、
かつ、前記水回り用樹脂成形体を厚み方向に切断し、切断面にある100個の粒子について計測し、単純平均をとることで、計算されるフェレット径が、前記水回り用樹脂成形体の使用面を基準線として1mm以上の大きさを有することを特徴とする、水回り用樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−66958(P2009−66958A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238940(P2007−238940)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】