説明

水変色性描画玩具及びそれを用いた水変色性描画玩具セット

【課題】 水変色性シートの周囲の像を設けた箇所に水が付着し難く、仮に水が付着しても乾燥性に優れるためシートの収納に時間が掛かることなく、シートを収納して保存する際に周囲の物品を濡らすことのない水変色性描画玩具及びそれを用いた水変色性描画玩具セットを提供する。
【解決手段】 支持体21上に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層22を設けた水変色性シート2と、前記水変色性シートの周囲を覆う水不浸透性樹脂部材3と、水不浸透性樹脂シート4とからなり、前記水不浸透性樹脂部材に像33を設けてなり、前記水変色性シートの多孔質層を設けた側と水不浸透性樹脂部材の下面を固着し、且つ、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に水不浸透性樹脂シートを配設してなる水変色性描画玩具1、及びそれを用いた水変色性描画玩具セット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の付着により像を形成することのできる水変色性描画玩具及びそれを用いた水変色性描画玩具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支持体上の中央部に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた多孔質層を設け、該支持体の周囲に絵柄等の像を設けた装飾性に富む水変色性シートが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
前記水変色性シートは、多孔質層が乾燥状態では下層を隠蔽し、水等の媒体を吸液すると透明又は半透明化して下層を視認でき、前記吸液した部分が乾燥すると再び元の状態に戻るため、繰り返し文字や絵柄を形成できるものの、周囲の像を設けた箇所に水が付着すると乾燥に手間を要してシートの収納に時間が掛かったり、或いは、シートが乾燥する前に収納して周囲の物品を濡らすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−33985号公報
【特許文献2】特開2007−244853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記した不具合を解消しようとするものであって、水変色性シートの周囲の像を設けた箇所に水が付着し難く、仮に水が付着しても乾燥性に優れるためシートの収納に時間が掛かることなく、シートを収納して保存する際に周囲の物品を濡らすことのない水変色性描画玩具及びそれを用いた水変色性描画玩具セットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、支持体上に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けた水変色性シートと、前記水変色性シートの周囲を覆う水不浸透性樹脂部材と、水不浸透性樹脂シートとからなり、前記水不浸透性樹脂部材に像を設けてなり、前記水変色性シートの多孔質層を設けた側と水不浸透性樹脂部材の下面を固着し、且つ、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に水不浸透性樹脂シートを配設してなる水変色性描画玩具を要件とする。
更には、前記水不浸透性樹脂部材が布帛上に樹脂シートを固着した部材であること、前記水不浸透性樹脂部材の樹脂シートが透明性を有してなり、布帛と樹脂シートの間に像を形成してなること、前記水変色性シートの多孔質層を設けた側と水不浸透性樹脂部材の下面を縫製により固着してなること、前記水不浸透性樹脂部材と水不浸透性樹脂シートを縫製により固着してなること等を要件とする。
更には、前記水変色性描画玩具と水付着具とからなる水変色性描画玩具セットを要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、水変色性シートの周囲の像を設けた箇所に水が付着し難く、仮に水が付着しても乾燥性に優れるためシートの収納に時間が掛かることなく、シートを収納して保存する際に周囲の物品を濡らすことのない実用性に富む水変色性描画玩具及びそれを用いた水変色性描画玩具セットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明水変色性描画玩具の一実施例の縦断面説明図である。
【図2】図1の水変色性描画玩具の斜視図である。
【図3】図1の水変色性描画玩具に水付着具を用いて像を形成した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明水変色性描画玩具の他の実施例の縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記水変色性シートは、支持体の上面に吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けてなる。
前記支持体の材質は特に限定されるものではなく、柔軟性に富むポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル等の樹脂シートや、織布、編布、不織布等の布帛が用いられる。
前記支持体の形状は特に限定されるものではないが、後述する水変色性シートの周囲を覆う水不浸透性樹脂部材と固着し易い長方形又は正方形とすることが好ましい。
【0009】
前記支持体上に形成される多孔質層は、低屈折率顔料をバインダー樹脂と共に分散状態に固着させた層である。
前記低屈折率顔料としては、珪酸及びその塩、バライト粉、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、クレー、タルク、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム等が挙げられ、これらは屈折率が1.4〜1.8の範囲にあり、水を吸液すると良好な透明性を示すものである。
なお、前記珪酸の塩としては、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカリウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸カリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカリウム等が挙げられる。
前記低屈折率顔料の粒径は特に限定されるものではないが、0.03〜10.0μmの顔料が好適に用いられる。
又、前記低屈折率顔料は2種以上を併用することもできる。
なお、好適に用いられる低屈折率顔料としては珪酸が挙げられ、乾式法により製造させる珪酸であってもよいが、湿式法により製造される珪酸(以下、湿式法珪酸と称する)がより効果的であり、実用性を満たす。
この点を以下に説明する。
珪酸は非晶質の無定形珪酸として製造され、その製造方法により、四塩化ケイ素等のハロゲン化ケイ素の熱分解等の気相反応を用いる乾式法によるもの(以下、乾式法珪酸と称する)と、ケイ酸ナトリウム等の酸による分解等の液相反応を用いる湿式法によるものとに大別されるが、多孔質層として機能させるためには、湿式法珪酸が好適である。
これは、乾式法珪酸と湿式法珪酸とでは構造が異なり、前記乾式法珪酸は珪酸が密に結合した三次元構造を形成するのに対して、湿式法珪酸は珪酸が縮合して長い分子配列を形成した、所謂、二次元構造部分を有している。
従って、乾式法珪酸と比較して分子構造が粗になるため、湿式法珪酸を多孔質層に適用した場合、乾式法珪酸を用いる系と比較して乾燥状態における光の乱反射性に優れ、常態での隠蔽性が大きくなるものと推察される。
又、前記多孔質層は水を吸液させるものであるから、湿式法珪酸は乾式法珪酸に比べて粒子表面にシラノール基として存在する水酸基が多く、親水性の度合いが大であり、好適に用いられる。
【0010】
前記多孔質層中の低屈折率顔料は、粒子径、比表面積、吸油量等の性状に左右されるが、常態での隠蔽性と吸液状態での透明性を共に満足するためには、塗布量が1〜30g/mであることが好ましく、より好ましくは、5〜20g/mである。
1g/m未満では、常態で十分な隠蔽性を得ることが困難であり、又、30g/mを越えると吸液時に十分な透明性を得ることが困難である。
前記低屈折率顔料はバインダー樹脂を結合剤として含むビヒクル中に分散され、基材に塗布した後、揮発分を乾燥させて多孔質層を形成する。
前記バインダー樹脂としては、ウレタン系樹脂、ナイロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリルポリオール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、マレイン酸樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、スチレン共重合樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合樹脂、ブタジエン樹脂、クロロプレン樹脂、メラミン樹脂、及び前記各樹脂エマルジョン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
前記低屈折率顔料とこれらのバインダー樹脂の混合比率は、低屈折率顔料の種類及び性状に左右されるが、好ましくは、低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分0.5〜2質量部であり、より好ましくは、0.8〜1.5質量部である。低屈折率顔料1質量部に対してバインダー樹脂固形分が0.5質量部未満の場合には、前記多孔質層の実用的な皮膜強度を得ることが困難であり、2質量部を越える場合には、前記多孔質層内部への水の浸透性が悪くなる。
前記多孔質層は、一般的な塗膜と比較して着色剤に対するバインダー樹脂の混合比率が小さいため、十分な皮膜強度が得られ難い。そこで、耐擦過強度を高めるために、前記のバインダー樹脂のうち、ナイロン樹脂又はウレタン系樹脂を用いると効果的である。
前記ウレタン系樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリカーボネート系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂等があり、二種以上を併用することもできる。又、前記樹脂が水に乳化分散したウレタン系エマルジョン樹脂や、イオン性を有するウレタン樹脂(ウレタンアイオノマー)自体のイオン基により乳化剤を必要とすることなく自己乳化して、水中に溶解乃至分散したコロイド分散型(アイオノマー型)ウレタン樹脂を用いることもできる。
なお、前記ウレタン系樹脂は水性ウレタン系樹脂又は油性ウレタン系樹脂のいずれを用いることもできるが、水性ウレタン系樹脂、殊に、ウレタン系エマルジョン樹脂やコロイド分散型ウレタン系樹脂が好適に用いられる。
前記ウレタン系樹脂は単独で用いることもできるが、支持体の種類や皮膜に必要とされる性能に応じて、他のバインダー樹脂を併用することもできる。ウレタン系樹脂以外のバインダー樹脂を併用する場合、実用的な皮膜強度を得るためには、前記多孔質層のバインダー樹脂中にウレタン系樹脂を固形分質量比率で30%以上含有させることが好ましい。 前記バインダー樹脂において、架橋性のものは任意の架橋剤を添加して架橋させることにより、さらに皮膜強度を向上させることができる。
前記バインダー樹脂には、水との親和性に大小が存在するが、これらを組み合わせることにより、多孔質層中への浸透時間、浸透度合い、浸透後の乾燥の遅速を調整することができる。更には、適宜分散剤を添加して前記調整をコントロールすることができる。
【0011】
前記多孔質層は、公知の手段、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等により形成できる。
【0012】
前記水不浸透性樹脂部材は、水変色性シートの周囲を覆う部材であり、樹脂シートや不織布等の布帛上に樹脂シートを貼り合わせたものが用いられる。
前記樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル等の樹脂シートが用いられる。
前記水不浸透性樹脂部材は、文字、記号、数字、模様、絵柄等の像を設けて水変色性描画玩具の装飾性を向上させる。
像を形成する箇所は、水不浸透性樹脂部材の上面の他、透明性を有する部材であれば下面であってもよい。また、布帛上に像を形成し、その上面に透明性を有する樹脂シートを貼り合わせたものであってもよい。
なお、前記水不浸透性樹脂部材は平面形状の他、凹凸を有する立体形状であってもよい。
前記水不浸透性樹脂部材は、水変色性シートの周囲に固着されるが、該水変色性シートの多孔質層を設けた側と水不浸透性樹脂部材の下面を固着してなる。よって、多孔質層に付着した水が水不浸透性樹脂部材上に流出することを防ぐことができ、流出した水によって床を汚染したり、ふき取りの手間を要することを防止できる。
固着手段としては、接着剤による貼着、縫製が挙げられる。
【0013】
水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に配設する水不浸透性樹脂シートは、樹脂シートや不織布等の布帛上と樹脂シートを貼り合わせたものが用いられる。
前記樹脂シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル等の樹脂シートが用いられる。
前記水不浸透性樹脂シートと、前記水不浸透性樹脂部材の下面は固着されることが好ましく、接着剤による貼着、縫製等により固着される。
また、必要により水不浸透性樹脂シートと、水変色性シートの下面を固着することもできる。
前記構成によって、水変色性シートに付着した水が水不浸透性樹脂部材との接合箇所から床面に漏れ出すことを防ぐことができ、流出した水によって床を汚染することなく、床をふく手間のない水変色性描画玩具が得られる。
【0014】
前記水変色性描画玩具に水を付着させる手段としては、手や指を水で濡らして多孔質層に接触させることもできるが、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具形態の水付着具、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記又は塗布具形態の水付着具等を用いることができる。
なお、好ましい水付着具としては、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具形態の水付着具であり、筆記像を簡便に形成でき、実用性を高めることができる。
前記連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体は、水を適宜量、吸収し、吐出させるものであればよく、汎用のポリオレフィン系、ポリウレタン系、その他各種プラスチックの連続気孔体や繊維を集束させた毛筆状のもの、繊維の樹脂加工又は熱溶着加工によるもの、フェルト、不織布形態のものを挙げることができ、形状、寸法は任意に設定できる。
前記水付着具と、水変色性描画玩具を組み合わせて水変色性描画玩具セットが得られ、携帯性と利便性を満足させることができる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
実施例1
水変色性シートの作製
支持体21として白色のポリエステル繊維からなる織物(60cm×60cmのトロピカル生地、目付量:100g/cm)の上面に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、青色顔料0.1部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる青色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層22を形成し水変色性シート2を得た。
【0016】
水不浸透性樹脂部材の作製
厚さ0.3mmの白色ポリ塩化ビニル樹脂シート31の上面に油性系スクリーン印刷用インキを用いてスクリーン印刷にて像33(アルファベットと数字)を印刷して水不浸透性樹脂部材3を得た。
【0017】
水変色性描画玩具の作製
前記水変色性シートの周囲に、前記水不浸透性樹脂部材の下面が水変色性シートの多孔質層の上面に位置するように縫製して固着し、100cm×100cmの大きさになるように水不浸透性樹脂部材を断裁した。
次いで、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に0.2mmの白色エチレン酢酸ビニル樹脂フィルムからなる水不浸透性樹脂シート4を配置し、水不浸透性樹脂部材の外周部と縫製することにより固着して水変色性描画玩具1を得た(図1、2参照)。
【0018】
前記水変色性描画玩具は、多孔質層が乾燥状態では淡青色を呈しているが、水の適用により多孔質層が透明化して濃青色が視認される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に青色は薄くなり、完全に乾燥した状態では再び元の淡青色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
水付着手段として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能にした筆記具形態の水付着具5を用いて、多孔質層に筆記すると5〜6mm幅の明瞭な濃青色の筆跡が形成される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に青色は淡くなり、完全に乾燥した状態では再び元の淡青色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた(図3参照)。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【0019】
実施例2
実施例1で作製した水変色性描画玩具と、先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能にした筆記具形態の水付着具とを組み合わせて水変色性描画玩具セットを得た。
前記水変色性描画玩具の多孔質層に水付着具を用いて筆記すると、実施例1と同様に筆跡が形成され、完全に乾燥した状態では再び元の淡青色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【0020】
実施例3
水変色性シートの作製
支持体21として白色のポリエステル繊維からなる織物(60cm×60cmのトロピカル生地、目付量:100g/cm)の上面に、青色の非変色性インキを用いてベタ印刷して非変色層23を形成した。
次いで、前記非変色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層22を形成して水変色性シート2を得た。
【0021】
水不浸透性樹脂部材の作製
白色の布帛32(不織布、目付量60g/cm)の上面にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックからなる油性オフセット印刷用インキを用いて像33(絵柄)を全面に印刷し、更にその上面に厚さ0.2mmの透明性ポリプロピレン樹脂シート31を接着剤を用いて貼着して水不浸透性樹脂部材3を得た。
【0022】
水変色性描画玩具の作製
前記水変色性シートの周囲に、前記水不浸透性樹脂部材の下面が水変色性シートの多孔質層の上面に位置するように縫製して固着し、90cm×90cmの大きさになるように水不浸透性樹脂部材を断裁した。
次いで、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に0.25mmの白色エチレン酢酸ビニルフィルムからなる水不浸透性樹脂シート4を配置し、水不浸透性樹脂部材の外周部と縫製することにより固着して水変色性描画玩具1を得た(図4参照)。
【0023】
前記水変色性描画玩具は、多孔質層が乾燥状態では白色を呈しているが、水の適用により多孔質層が透明化して濃青色が視認される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に青色は薄くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
水付着手段として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能にした筆記具形態の水付着具を用いて、多孔質層に筆記すると5〜6mm幅の明瞭な濃青色の筆跡が形成される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に青色は淡くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【0024】
実施例4
実施例3で作製した水変色性描画玩具と、先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能にした筆記具形態の水付着具とを組み合わせて水変色性描画玩具セットを得た。
前記水変色性描画玩具の多孔質層に水付着具を用いて筆記すると、実施例3と同様に筆跡が形成され、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【0025】
実施例5
水変色性シートの作製
支持体として白色のナイロン繊維からなる織物(70cm×50cmのタフタ生地、目付量:60g/cm)の上面に、緑色の非変色性インキを用いてベタ印刷して非変色層を形成した。
次いで、前記非変色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて非変色層の全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成して水変色性シートを得た。
【0026】
水不浸透性樹脂部材の作製
白色の不織布(目付量40g/cm)の上面にイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックからなる油性グラビア印刷用インキを用いて像(写真調の機関車の絵柄)を全面に印刷し、更にその上面に厚さ0.1mmの透明性ポリオレフィン樹脂シートを加熱圧着して水不浸透性樹脂部材を得た。
【0027】
水変色性描画玩具の作製
前記水変色性シートの周囲に、前記水不浸透性樹脂部材の下面が水変色性シートの多孔質層の上面に位置するように縫製して固着し、110cm×90cmの大きさになるように水不浸透性樹脂部材を断裁した。
次いで、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に0.2mmの白色オレフィン樹脂フィルムからなる水不浸透性樹脂シートを配置し、水不浸透性樹脂部材の外周部と縫製により固着して水変色性描画玩具を得た。
【0028】
前記水変色性描画玩具は、多孔質層が乾燥状態では白色を呈しているが、水の適用により多孔質層が透明化して濃緑色が視認される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に緑色は薄くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
水付着手段として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能に構成した筆記具形態の水付着具を用いて、多孔質層に筆記すると5〜6mm幅の明瞭な濃緑色の筆跡が形成される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に緑色は淡くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【0029】
実施例6
実施例5で作製した水変色性描画玩具と、先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能にした筆記具形態の水付着具とを組み合わせて水変色性描画玩具セットを得た。
前記水変色性描画玩具の多孔質層に水付着具を用いて筆記すると、実施例5と同様に筆跡が形成され、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【0030】
実施例7
水変色性シートの作製
支持体として綿とポリエステル繊維からなる白色の織物(55cm×55cmのT/C(65/35)ブロード生地、目付量:110g/cm)の上面に、赤色の非変色性インキを用いてベタ印刷して非変色層を形成した。
次いで、前記非変色層上に、湿式法珪酸〔商品名:ニップシールE−200、日本シリカ工業(株)製〕15部、ウレタンエマルジョン〔商品名:ハイドランHW−930、大日本インキ化学工業(株)製、固形分50%〕30部、水40部、シリコーン系消泡剤0.5部、水系インキ用増粘剤3部、エチレングリコール1部、ブロックイソシアネート系架橋剤3部を均一に混合、攪拌してなる白色スクリーン印刷用インキを用いて、100メッシュのスクリーン版にて全面にベタ印刷し、130℃で5分間乾燥硬化させて多孔質層を形成して水変色性シートを得た。
【0031】
水不浸透性樹脂部材の作製
白色のポリエステルタフタ生地(目付量70g/cm)の上面にピンク色、緑色、青色、黒色、茶色からなる水性スクリーン印刷用インキを用いて像(花の絵柄)を全面に印刷し、更にその上面に厚さ0.1mmの透明性ポリ塩化ビニル樹脂製シートを接着剤を用いて貼着して水不浸透性樹脂部材を得た。
【0032】
水変色性描画玩具の作製
前記水変色性シートの周囲に、前記水不浸透性樹脂部材の下面が水変色性シートの多孔質層の上面に位置するように縫製して固着し、95cm×95cmの大きさになるように水不浸透性樹脂部材を断裁した。
次いで、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に0.1mmの透明ウレタン樹脂フィルムからなる水不浸透性樹脂シートを配置し、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材と接着剤を用いて貼着して水変色性描画玩具を得た。
【0033】
前記水変色性描画玩具は、多孔質層が乾燥状態では白色を呈しているが、水の適用により多孔質層が透明化して濃赤色が視認される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に赤色は薄くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
水付着手段として先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能にした筆記具形態の水付着具を用いて、多孔質層に筆記すると5〜6mm幅の明瞭な濃赤色の筆跡が形成される。水が付着した状態では前記様相を呈していたが、乾燥するにつれて徐々に赤色は淡くなり、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【0034】
実施例8
実施例7で作製した水変色性描画玩具と、先端部に砲弾型の繊維ペン体(ナイロン樹脂製、直径7mm)を有し、軸筒内に水を収容可能にした筆記具形態の水付着具とを組み合わせて水変色性描画玩具セットを得た。
前記水変色性描画玩具の多孔質層に水付着具を用いて筆記すると、実施例7と同様に筆跡が形成され、完全に乾燥した状態では再び元の白色に戻った。前記様相変化は繰り返し行うことができた。
なお、多孔質層に付着した水が水変色性シートと水不浸透性樹脂部材の接合部から流出して床を汚染したり、ふき取りの手間を要することはなかった。
更に、水不浸透性樹脂部材に水が付着し難く、仮に付着しても容易にふき取れるため、水変色性描画玩具に付着した水が乾燥するまでの時間が短く、収納に時間が掛からず、利便性にも優れていた。
【符号の説明】
【0035】
1 水変色性描画玩具
2 水変色性シート
21 支持体
22 多孔質層
23 非変色層
3 水不浸透性樹脂部材
31 樹脂シート
32 布帛
33 像
4 水不浸透性樹脂シート
5 水付着具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に低屈折率顔料をバインダー樹脂に分散状態に固着させた吸液状態と非吸液状態で透明性を異にする多孔質層を設けた水変色性シートと、前記水変色性シートの周囲を覆う水不浸透性樹脂部材と、水不浸透性樹脂シートとからなり、前記水不浸透性樹脂部材に像を設けてなり、前記水変色性シートの多孔質層を設けた側と水不浸透性樹脂部材の下面を固着し、且つ、水変色性シート及び水不浸透性樹脂部材の下面に水不浸透性樹脂シートを配設してなる水変色性描画玩具。
【請求項2】
前記水不浸透性樹脂部材が布帛上に樹脂シートを固着した部材である請求項1記載の水変色性描画玩具。
【請求項3】
前記水不浸透性樹脂部材の樹脂シートが透明性を有してなり、布帛と樹脂シートの間に像を形成してなる請求項2記載の水変色性描画玩具。
【請求項4】
前記水変色性シートの多孔質層を設けた側と水不浸透性樹脂部材の下面を縫製により固着してなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水変色性描画玩具。
【請求項5】
前記水不浸透性樹脂部材と水不浸透性樹脂シートを縫製により固着してなる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水変色性描画玩具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水変色性シートと水付着具とからなる水変色性描画玩具セット。
【請求項7】
前記水付着具は、連続気孔を有するプラスチック多孔体又は繊維加工体をペン先部材として適用した筆記具又は塗布具である請求項6記載の水変色性描画玩具セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−229807(P2011−229807A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104868(P2010−104868)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】