説明

水性インク、水性インクの製造方法、インクジェット記録方法およびインクジェットプリンタ

【課題】本発明の目的は、カール、コックリング防止性に優れ、インクの保存性に優れ、かつインクジェットヘッドのノズルからの吐出性に優れ、インクヘッドに良好な耐傷性を与える水性インク、水性インクの製造方法、該インクを搭載したインクジェットプリンタおよび該インクを使用したインクジェット記録方法を提供するものである。
【解決手段】水と、顔料と、SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤を含む水溶性有機溶剤とを含有する水性インクであって、水溶性有機溶剤の含有量が50〜90質量%であり、SP値16.5〜24.6の水溶性有機溶剤の含有量が30質量%以上であり、顔料は、顔料と顔料の3質量倍以上の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤とを含む混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いてインクに含有された顔料であることを特徴とする水性インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性インク、特にインクジェット方式に用いられる水性インク、水性インクの製造方法、インクジェットプリンタおよびインクジェット記録方法に関する。さらには、普通紙印刷において高画質が得られる水性インク、水性インクの製造方法、インクジェットプリンタおよびインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作製出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御するインクジェット記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェット画像記録システムでは、用いることのできる記録媒体が制限されること、記録媒体のコストアップ等が問題となる。
【0004】
一方、オフィスにおいては、記録媒体(例えば、普通紙、コート紙、アート紙)の制約を受けずに高速でフルカラー印字が行えるシステムのニーズが益々高まりつつある。
【0005】
特に安価であり、また入手が容易である普通紙(例えば、PPC用紙、印刷用非塗工紙など)に対して高画質な印刷を高速に行うことが望まれているが、普通紙印刷では水性インクを使用した場合には文字画質、画像にじみ、低い反射濃度、印刷後のカール、コックリング等の課題がある。油性インクを使用した場合にはカール、コックリングについては問題ないが、水性インクよりも劣る文字画質、激しいにじみ、低い反射濃度等の課題がある。また、両面印刷行う場合には裏抜け(プリントスルー)も大きな課題である。このような普通紙印刷の課題を解決するためにインクの組成を始めとして種々の検討が行われてきた。
【0006】
水性インクに対する改良方法の一つとして、分子量8万から25万相当のビニルピロリドンとアクリル酸共重合ポリマーを含有するインクにより普通紙印刷時の画像にじみやインクの裏抜けを改善する技術が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法ではノズルプレートに着いたインクをワイピング操作で拭き取る際に、(添加されている超高分子量のポリマーがノズルプレートにこびり付き易いため)拭き残りが発生し易く、これを原因とした液滴着弾位置のずれによる画像劣化が生じ易いという問題があった。
【0007】
また別の方法として、アルギン酸またはアルギン酸塩を含有するインクにより普通紙印刷時のフェザリング、ブリーディング、裏抜けを軽減させる技術が開示されている(特許文献2参照)。この方法ではインクに含有するアルギン酸またはアルギン酸塩と普通紙に含有するカルシウムやアルミニウム等の多価金属カチオンが反応してゲル化増粘することによりフェザリング、ブリーディング、裏抜けが改良される。しかしながら、普通紙中のカルシウムやアルミニウム等の多価金属イオンは必須成分ではなく、不純物として含有するものであり、紙の銘柄によって含有量が異なり、中には極度に含有量の小さい普通紙も存在する。したがって、印刷する紙の銘柄によりこれらの効果の大きさが依存し、紙の銘柄に拠っては十分な効果が得られないという問題があった。
【0008】
さらに、平均分子量400〜1400のカチオン性ポリマーを含有する無色の液体組成物と着色インクを別々のヘッドで吐出させ紙上で合一させることにより、普通紙印刷でのカラーブリードを低減する技術が開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、この方法では無色の液体を吐出するためのヘッドが必要となること。また、無色の液体組成物の分だけ紙に記録する液体の総量が増えることにより、紙のコックリング、カールが生じ易いという問題があった。
【0009】
一方、カール、コックリングの発生が殆ど無い油性インク組成において、50%留出点が280℃以下の溶剤(非極性溶剤)を10%以上含有し、同300℃以上の溶剤(極性溶剤、エステル系溶剤)を20%以上含有することにより、記録後のにじみを改良する技術が公開されている(特許文献4参照)。しかしながら、この方法でも反射濃度、裏抜け、文字再現性については必ずしも十分なレベルにはなかった。
【0010】
また、用いられる色剤に関しては、普通紙で高い画像濃度を得るためには顔料が好ましく、特に有機顔料が安全性や色域の観点から好ましく用いられてきた。しかしながら顔料を顔料記録液に調整するためには、記録液中に安定に分散させ、かつ高い透明性と光沢を得るため、顔料を分散させる工程が必要となる。
この分散においてはサンドミル、3本ロールミル、ボールミル等の分散工程が行われるが、中でもソルトミリングと呼ばれる分散処理が微粒子化に優れる方法として提案されている(特許文献5参照)。しかしながら、ソルトミリングで得られた顔料分散体は、作製直後は良好な性能を示すが、記録液に調整してから時間の経った記録液では、顔料の凝集や沈降による記録物の色変化が発生することがあった。
【0011】
以上より、普通紙記録の課題については文字画質、にじみ、反射濃度、裏抜けなど画質の課題とカール、コックリングの課題を両立させ、かつ記録液としての保存性に優れた技術は開示されていない。
【特許文献1】特開平10−1629号公報
【特許文献2】特開2003−176432号公報
【特許文献3】特開平10−95107号公報
【特許文献4】特開2004−2666号公報
【特許文献5】国際公開第98/23032号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、普通紙に印刷した際良好な反射濃度、文字画質、裏抜け防止性を維持しつつ、カール、コックリング防止性に優れ、記録液としての保存性に優れ、かつインクジェットヘッドのノズルからの吐出性に優れ、インクヘッドに良好な耐傷性を与える水性インク、水性インクの製造方法、該インクを搭載したインクジェットプリンタおよび該インクを使用したインクジェット記録方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.水と、顔料と、SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤を含む水溶性有機溶剤とを含有する水性インクであって、該水溶性有機溶剤の含有量が50〜90質量%であり、該SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤の含有量が30質量%以上であり、該顔料は、顔料と顔料の3質量倍以上10質量倍以下の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤との少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、その後該水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いて水性インクに含有された顔料であることを特徴とする水性インク。
2.前記SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤に対する前記水溶性無機塩の25℃での溶解度が1以下であることを特徴とする1項に記載の水性インク。
3.1または2項に記載の水性インクを製造する製造方法であって、顔料と顔料の3質量倍以上10質量倍以下の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤との少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、その後該水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いることを特徴とする水性インクの製造方法。
4.ノズル口径25μm以下であるノズルを有するインクジェットヘッドの該ノズルから1または2項に記載の水性インクを記録媒体へ出射し記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
5.前記記録媒体が搬送され、前記インクジェットヘッドは実質的に走査することなく記録を行うインクジェット記録方法であり、前記記録媒体が搬送される方向と交差する方向に並んだ複数の前記ノズル口径25μm以下であるノズルから1または2項に記載の水性インクを記録媒体へ出射し記録を行うことを特徴とする4項に記載のインクジェット記録方法。
6.前記インクジェットヘッド及び前記複数の前記ノズル口径25μm以下であるノズルが並んだラインヘッドが撥水膜を有し、該撥水膜が有機物を60質量%以上含み、前記インクジェットヘッドは撥水膜表面を擦る操作が含まれるクリーニング工程に供されることを特徴とする4または5項記載のインクジェット記録方法。
7.前記記録媒体が普通紙であることを特徴とする4〜6項のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
8.前記普通紙の両面に記録が行われることを特徴とする7項に記載のインクジェット記録方法。
9.4〜8項のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法に用いられることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記構成により、普通紙に印刷した際良好な反射濃度、文字画質維持、裏抜け防止性を維持しつつ、カール、コックリング防止性に優れ、記録液としての保存性に優れ、かつインクジェットヘッドのノズルからの吐出性に優れ、インクヘッドに良好な耐傷性を与える水性インク、水性インクの製造方法、該インクを搭載したインクジェットプリンタおよび該インクを使用したインクジェット記録方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、水と、顔料と、SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤を含む水溶性有機溶剤とを含有する水性インクであって、該水溶性有機溶剤の含有量が50〜90質量%であり、該SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤の含有量が30質量%以上であり、該顔料は、顔料と顔料の3質量倍以上10質量倍以下の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤の少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、その後該水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いて水性インクに含有された顔料であることを特徴とする。
【0016】
本発明は、特に上記特定の方法で分散した顔料を用い、水および上記特定の水溶性有機溶剤を含有させることにより、カール、コックリング防止性に優れ、記録液としての保存性に優れ、かつインクヘッドに良好な耐傷性を与える水性インクを提供することができる。
【0017】
一般的に水性インクにおいては、インク中の水含有比率が高いインクを普通紙に記録した場合には、紙への浸透はそれ程大きくなく、比較的良好な文字画質が得られ、裏抜けと呼ばれる現象も比較小さい。この理由は、インク中の水が普通紙を構成しているセルロースに配位するためにインクの浸透が抑制されるためと推測される。一方で、カールは非常に大きくなる。この理由は、紙はセルロース間の水素結合によって紙としての形状を形成しているが、インク中の水がセルロースに配位した際にこの水素結合を切断し、次いでセルロースが水によって膨潤することでインクが打ち込まれた部分のセルロース繊維間距離が離れるためであると推測される。
【0018】
また次いで発生する水の乾燥において、打ち込まれる前に形成していた水素結合とは別な箇所で水素結合が再度形成され、保持される。これにより普通紙全体としては元とは違う形に変形してしまう。これも、カールを起こす要因と考えられる。
【0019】
これに対して、水を含有しない、例えば油性インクを普通紙に記録した場合には、普通紙へのインクの浸透が大きく、表面画像濃度の低下やインクの裏抜けが大きくなる。
【0020】
表面画像濃度の低下やインクの裏抜けが大きくなる理由として、推測だが、油性溶剤とセルロースとの相互作用が小さいため、油性溶剤はセルロース間の空隙を容易に拡散してしまい、インクの浸透が大きくなるため、画像濃度が低下し、裏抜けが大きくなると考えられる。一方で、油性溶媒はセルロース間の水素結合を切らないため記録前の紙の構造が保たれており、カールしにくいと考えられる。
【0021】
本発明の水性インクでは、水溶性有機溶剤の総量が全インクの50質量%以上90質量%未満であり、水溶性有機溶剤のうちSP値が16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤を全インクの30質量%以上含有することが第一の特徴である。この溶剤組成により、普通紙に記録した場合でも文字画質に優れ、裏抜けが小さく、且つカールが殆どないプリントを得ることが可能である。さらに、この文字画質、裏抜けとカール抑制の両立効果は水性インクと油性インクのトレンドからは完全に逸脱したものである。
【0022】
本発明の第二の特徴は、顔料と顔料の3質量倍以上10質量倍以下の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤の少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、その後該水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いてることであるが、このような顔料を用いることにより、前記の文字画質に優れ、裏抜けが小さく、且つカールやコックリングの少ないプリントを得る効果が大きく発揮される。
【0023】
これは、本発明の水性インクの溶媒構成と、上記のように水溶性無機塩を使用し分散を行い作製した顔料分散体を使用する本願の顔料との相互作用によるものと思われる。
【0024】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0025】
本発明の溶剤組成としては、少なくとも水を含有し、且つ水溶性有機溶剤の総量が全インクに対して、50質量%以上90質量%未満であり、水溶性有機溶剤のうちSP値が16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤を全インクに対して、30質量%以上含有する。
【0026】
SP値が16.5(MPa)1/2〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤の全インク中の含有量は、より好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは60質量%以上である。
【0027】
本発明でいうSP値は、溶解度パラメーターであり、分子凝集エネルギーの平方根で表される値で、R.F.Fedors, Polymer Engineering Science,14,p147(1974)に記載の方法で計算することができる。単位は(MPa)1/2であり、25℃における値を指す。
【0028】
以下、SP値が16.5〜24.6(MPa)1/2に該当する水溶性有機溶剤の例をSP値と共に示す。いうまでもなく本発明はこれに限定されるものではない。
【0029】
エチレングリコールモノメチルエーテル(SP値:24.5)
エチレングリコールモノエチルエーテル(23.5)
エチレングリコールモノブチルエーテル(22.1)
エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(22.3)
ジエチレングリコールモノメチルエーテル(23.0)
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.4)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(21.5)
ジエチレングリコールジエチルエーテル(16.8)
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(22.1)
トリエチレングリコールモノエチルエーテル(21.7)
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(21.1)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(23.0)
プロピレングリコールモノフェニルエーテル(24.2)
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(21.3)
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(20.4)
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(21.8)
本発明ではSP値が16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤に加えて、SP値が16.5未満、もしくは24.6以上の各種水溶性有機溶剤を併用して、水溶性有機溶剤の総量としてインク全量の50質量%以上90質量%未満とすることができる。以下にSP値が16.5未満、もしくは24.6以上の水溶性有機溶剤の例を示す。
【0030】
好ましく用いられるSP値が16.5未満、もしくは24.6以上の水溶性有機溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0031】
本発明において使用できる顔料としては、従来公知のものを特に制限なく使用でき、水分散性顔料、溶剤分散性顔料等何れも使用可能であり、例えば、不溶性顔料、レーキ顔料等の有機顔料を好ましく用いることができる。この顔料はインクの中で分散された状態で存在させ、この分散の方式としては、自己分散、活性剤分散、ポリマー分散、マイクロカプセル分散の何れでも良いが、ポリマー分散、マイクロカプセル分散が定着性の点から特に好ましい。
【0032】
不溶性顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、アゾ、アゾメチン、メチン、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、キナクリドン、アントラキノン、ペリレン、インジゴ、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリン、アジン、オキサジン、チアジン、ジオキサジン、チアゾール、フタロシアニン、ジケトピロロピロール等が好ましい。
【0033】
好ましく用いることのできる具体的顔料としては、以下の顔料が挙げられる。
【0034】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C
.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0035】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー15:3、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げ
られる。
【0036】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0037】
以上の他にレッド、グリーン、ブルー、中間色が必要とされる場合には以下の顔料を単独あるいは併用して用いることが好ましく、例えば
C.I.Pigment Red;209、224、177、194、
C.I.Pigment Orange;43、
C.I.Vat Violet;3、
C.I.Pigment Violet;19、23、37、
C.I.Pigment Green;36、7、
C.I.Pigment Blue;15:6、
等が用いられる。
【0038】
本発明の記録液に使用する顔料分散体中の顔料の平均粒子径は、分散の安定性、保存安定性の面から10nm以上200nm未満であることが好ましい。
【0039】
顔料分散体の粒子径測定は、動的光散乱法、電気泳動法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることが出来るが、動的光散乱法による測定が簡便でこの粒子径領域の精度が良く多用される。
【0040】
この顔料の含有量はインク全質量に対して0.1質量%以上12質量%未満であることが好ましい。
本発明に係る顔料は、顔料と顔料の3質量倍以上10質量倍以下の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤の少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、その後該水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いて水性インクに含有された顔料である。
【0041】
本発明においては、顔料は、分散助剤である水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤の少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して微粒子化される。
【0042】
本発明で用いられる顔料は、分散助剤と高沸点有機溶剤と共にニーダー等で混練して用いることが必要である。機械的に混練する混練用分散機としてはニーダー、3本ロールミルが用いられ、中でも取り扱いの容易さからニーダーが好ましく用いられる。
【0043】
また、本発明で用いられる分散助剤は水溶性無機塩であることが必要である。水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、芒硝等が挙げられる。これらの水溶性無機塩は市販の食塩等を粉砕し用いることができる。水溶性無機塩の量としては顔料の3倍以上を用いることが必須である。これは3倍未満では分散エネルギーと顔料が凝集するエネルギーが早期に相殺するためか、100nm前後の平均粒径が得られにくくなるからである。また上限としては10倍量以下が好ましい。10倍量よりも多く添加しても分散進行性には差が無く、洗浄に用いるイオン交換水の量が増えるというデメリットを生じやすくなるからである。
【0044】
本発明で用いられる顔料は上記混練を経た後、顔料分散剤等を用いて顔料分散液を作製して用いることが好ましい。本発明に係る顔料を分散するポリマー分散剤としては例えば、高級脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエステル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、グリセリンエステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アミンオキシド等の活性剤、あるいは、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体から選ばれた2種以上の単量体からなるブロック共重合体、ランダム共重合体およびこれらの塩を挙げることができる。
【0045】
上記分散剤の中和塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無期塩基でなく、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン等の有機塩基であることが好ましい。
【0046】
また、本発明において、顔料分散剤の添加量としては、顔料に対し10〜100質量%であることが好ましい。
【0047】
さらには、分散時の添加剤として界面活性剤を用いることができる。本発明に用いられる界面活性剤としてはカチオン性、アニオン性、両性、ノニオン性のいずれも用いることができるが、分散安定性の点からノニオン性界面活性剤を使用することが特に好ましい。
【0048】
ノニオン性活性剤としては、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0049】
顔料の分散方法としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等の各種分散機を用いることができる。また、顔料分散体の粗粒分を除去する目的で、遠心分離装置を使用することや、フィルターを使用することも好ましい。
【0050】
顔料インク中の顔料粒子の平均粒径は、インク中での安定性、画像濃度、光沢感、耐光性などに応じて、選択すればよい。
【0051】
本発明のインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、多糖類、粘度調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができ、例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0052】
上記構成からなる本発明のインクは、インクの表面張力としては、25℃で25〜40mN/mであることが好ましく、より好ましくは25〜35mN/mであり、更に好ましくは30〜35mN/mである。また、インク粘度としては、25℃で1〜40mPa・sであることが好ましく、より好ましくは5〜40mPa・sであり、更に好ましくは5〜20mPa・sである。
【0053】
また、本発明のインク中の溶存酸素濃度は、25℃で2ppm以下であることが好ましく、この溶存酸素濃度条件とすることにより、気泡の形成を抑制することができ、高速印字においても出射安定性に優れたインクジェット記録方法を実現することができる。インク中に溶存している溶存酸素を測定する方法としては、例えば、溶存酸素測定装置DO−14P(東亜電波(株)製)を用いて測定することができる。
【0054】
本発明のインクジェット記録方法で用いる普通紙としては、特に制限はなく、その構成としては、LBKP及びNBKPに代表される化学パルプ、サイズ剤及び填料を主体とし、その他の抄紙助剤を必要に応じて用い、常法により抄紙されたものである。本発明に係る普通紙に使用されるパルプ材としては、機械パルプや古紙再生パルプを併用してもよいし、又、これらを主材としても何ら問題はない。
【0055】
本発明に係る普通紙に内添されるサイズ剤としては、例えば、ロジンサイズ、AKD、アルニケル無水コハク酸、石油樹脂系サイズ、エピクロルヒドリン、カチオン澱粉及びアクリルアミド等が挙げられる。
【0056】
また、本発明に係る普通紙に内添される填料としては、例えば微粉珪酸、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、カオリン、カオリナイト、ハロイサイト、ナクライト、ディッカイト、パイロフィライト、セリサイト、二酸化チタン、ベントナイト等が挙げられる。
【0057】
本発明の記録液を用いた画像形成方法においては、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドより記録液を液滴として吐出させ、記録媒体に付着させることで記録物が得られる。
【0058】
本発明のインクを吐出して画像形成を行う際に、使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0059】
本発明の水性インクを用いて記録する方法である本発明のインクジェット記録方法においては、本発明の記録液を25μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドから吐出させて、普通紙に記録を行うことが特に好ましい。更に、25μm以下のノズル径を有するラインヘッド方式のピエゾ型インクジェット記録ヘッドから吐出させて、普通紙に記録を行う記録方法がより好ましい。
【0060】
即ち、本発明のインクジェット記録方法の望ましい形態の1つは、インクジェットヘッドは実質的に走査することなく記録を行うインクジェット記録方法であって、記録媒体が搬送される方向と交差する方向に並んだ複数の前記ノズル口径25μm以下であるノズルから本発明の水性インクを記録媒体へ出射し記録を行うインクジェット記録方法である。
【0061】
また本発明のインクジェット記録方法の望ましい形態の1つとしては、インクジェットヘッド及び前記複数のノズル口径25μm以下であるノズルが並んだラインヘッドが撥水膜を有し、該撥水膜が有機物を60質量%以上含み、前記インクジェットヘッドは撥水膜表面を擦る操作が含まれるクリーニング工程に供されるものであることが好ましい。
【0062】
本発明の水性インクを用いて記録する方法である本発明のインクジェット記録方法においては、さらに本発明の記録液を25μm以下のノズル径を有するピエゾ型インクジェット記録ヘッドから吐出させて、普通紙に記録を行うことが特に好ましい。更に、25μm以下のノズル径を有するラインヘッド方式のピエゾ型インクジェット記録ヘッドから吐出させて、普通紙に記録を行う記録方法が好ましい。
【0063】
さらに、これらのインクジェット記録方法としては、記録媒体が普通紙である場合好適に適用でき、普通紙の両面に記録が行われる場合も特に好適に適用できる。
【0064】
本発明のインクは前記特性を有しているため、両面に印字しても裏抜けがないため、いずれの面でも高濃度で画像品質に優れる記録物が得られる。また、両面印字は、片面に印字した後に普通紙を裏返し、印字面を下にして搬送することが多いが、本発明のインクは前記特性によりカールやコックリングによる記録媒体の変形がないため、搬送不良が生じたり、搬送ベルトがインクで汚染されたりすることがない。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
〔水系顔料インクの調製〕
〔顔料分散液セット1の調製〕
〈イエロー顔料混練精製物1の調製〉
C.I.ピグメントイエロー128 120部
塩化ナトリウム 480部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 60部
上記各添加剤を樹脂製へらで混合し、全量を株式会社入江商会製卓上型ニーダーPBV−1型を用いて、47rpmの回転数で4時間混練を行い、イエロー顔料混練物1を作製した。
【0066】
次いで前記イエロー顔料混練物1を、3000部のイオン交換水に投入し、深江工業株式会社製ハイスピードミキサーで1時間攪拌し、濾過により脱水を行い、イオン交換水1000部による濾過しながらのすすぎ洗浄を行った。攪拌、濾過脱水、すすぎ洗浄は5回繰り返し、混練時に用いた塩化ナトリウム及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルを除去し、イエロー顔料混練精製物1を得た。顔料混練精製物1の吸光度を吸光度測定器で測定したところ、顔料固形分量は50%であった。また、得られたイエロー顔料の平均粒径は86nmであった。
【0067】
〈マゼンタ顔料混練精製物1の調製〉
C.I.ピグメントレッド122 120部
塩化ナトリウム 480部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 60部
上記各添加剤を樹脂製へらで混合し、全量を株式会社入江商会製卓上型ニーダーPBV−1型を用いて、47rpmの回転数で4時間混練を行い、マゼンタ顔料混練物1を作製した。
【0068】
次いで前記マゼンタ顔料混練物1を、3000部のイオン交換水に投入し、深江工業株式会社製ハイスピードミキサーで1時間攪拌し、濾過により脱水を行い、イオン交換水1000部による濾過しながらのすすぎ洗浄を行った。攪拌、濾過脱水、すすぎ洗浄は5回繰り返し、混練時に用いた塩化ナトリウム及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルを除去し、マゼンタ顔料混練精製物1を得た。顔料混練精製物1の吸光度を吸光度測定器で測定したところ、顔料固形分量は50%であった。また、得られたマゼンタ顔料の平均粒径は90nmであった。
【0069】
〈シアン顔料混練精製物1の調製〉
C.I.ピグメントブルー15:3 120部
塩化ナトリウム 480部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 60部
上記各添加剤を樹脂製へらで混合し、全量を株式会社入江商会製卓上型ニーダーPBV−1型を用いて、47rpmの回転数で4時間混練を行い、シアン顔料混練物1を作製した。
【0070】
次いで前記シアン顔料混練物1を、3000部のイオン交換水に投入し、深江工業株式会社製ハイスピードミキサーで1時間攪拌し、濾過により脱水を行い、イオン交換水1000部による濾過しながらのすすぎ洗浄を行った。攪拌、濾過脱水、すすぎ洗浄は5回繰り返し、混練時に用いた塩化ナトリウム及びジプロピレングリコールモノメチルエーテルを除去し、シアン顔料混練精製物1を得た。顔料混練精製物1の吸光度を吸光度測定器で測定したところ、顔料固形分量は50%であった。また、得られたシアン顔料の平均粒径は95nmであった。
【0071】
〈イエロー顔料分散液1の調製〉
イエロー顔料混練精製物1 40部
EFKA4750(EFKA Additives社製) 14部
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 40部
イオン交換水 6部
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製システムゼータミニ)を用いて、1500rpmで4時間分散し、イエロー顔料分散体1を得た。吸光度測定器で測定したところ、顔料固形分量は20%であった。また、得られたイエロー顔料の平均粒径は88nmであった。
【0072】
〈マゼンタ顔料分散液1の調製〉
マゼンタ顔料混練精製物1 40部
EFKA4750(EFKA Additives社製) 14部
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 40部
イオン交換水 6部
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製システムゼータミニ)を用いて、1500rpmで4時間分散し、マゼンタ顔料分散体1を得た。吸光度測定器で測定したところ、顔料固形分量は20%であった。また、得られたマゼンタ顔料の平均粒径は91nmであった。
〈シアン顔料分散液1の調製〉
シアン顔料混練精製物1 40部
EFKA4750(EFKA Additives社製) 14部
トリエチレングリコールモノメチルエーテル 40部
イオン交換水 6部
上記各添加剤を混合し、0.3mmのジルコニアビーズを体積率で60%充填した横型ビーズミル(アシザワ社製システムゼータミニ)を用いて、1500rpmで4時間分散し、シアン顔料分散体1を得た。吸光度測定器で測定したところ、顔料固形分量は20%であった。また、得られたマゼンタ顔料の平均粒径は96nmであった。
【0073】
上記、イエロー顔料分散液1、マゼンタ顔料分散液1、シアン顔料分散液1を1セットとして、顔料分散液セット1とした。
【0074】
〈顔料分散液セット2の作製〉
上記顔料分散液セット1の製造方法に置いて、塩化ナトリウムの量を480部から240部に減量した以外は同様にして、顔料分散液セット2を作製した。
【0075】
〈顔料分散液セット3の作製〉
上記顔料分散液セット1の製造方法に置いて、塩化ナトリウムの量を480部から360部に減量した以外は同様にして、顔料分散液セット3を作製した。
【0076】
〈顔料分散液セット4の作製〉
上記顔料分散液セット1の製造方法に置いて、塩化ナトリウムの量を480部から1200部に増量した以外は同様にして、顔料分散液セット4を作製した。
【0077】
〈顔料分散液セット5の作製〉
上記顔料分散液セット1の製造方法に置いて、塩化ナトリウムの量を480部から1440部に増量した以外は同様にして、顔料分散液セット5を作製した。
【0078】
〈顔料分散液セット6の作製〉
上記顔料分散液セット1の製造方法において、前記ニーダーによる混練を行わず、樹脂製へらで混合後、前記横型ビーズミルを用いて1500rpmで4時間分散した以外は同様にして、顔料分散液セット6を作製した。
【0079】
〈記録液セット1の作製〉
〈イエロー顔料記録液1の調製〉
1)イエロー顔料分散液1 20部
2)トリエチレングリコールモノメチルエーテル 20部
3)エチレングリコール 17部
4)イオン交換水 43部
以上の各組成物のうち、まず2)と3)と4)を混合し、30分間攪拌を行い、均一溶媒とする。次いで1)を攪拌しながら2)と3)と4)の混合物を滴下し、更に1時間攪拌を行った。次いで1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるイエロー記録液を調製した。得られたイエロー顔料記録液中の顔料平均粒径は90nmであった。
【0080】
〈マゼンタ顔料記録液1の調製〉
1)マゼンタ顔料分散液1 20部
2)トリエチレングリコールモノメチルエーテル 20部
3)エチレングリコール 17部
4)イオン交換水 43部
以上の各組成物のうち、まず2)と3)と4)を混合し、30分間攪拌を行い、均一溶媒とする。次いで1)を攪拌しながら2)と3)と4)の混合物を滴下し、更に1時間攪拌を行った。次いで1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるマゼンタ顔料記録液を調製した。得られたマゼンタ顔料記録液中の顔料平均粒径は92nmであった。
【0081】
〈シアン顔料記録液1の調製〉
1)シアン顔料分散液1 20部
2)トリエチレングリコールモノメチルエーテル 20部
3)エチレングリコール 17部
4)イオン交換水 43部
以上の各組成物のうち、まず2)と3)と4)を混合し、30分間攪拌を行い、均一溶媒とする。次いで1)を攪拌しながら2)と3)と4)の混合物を滴下し、更に1時間攪拌を行った。次いで1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるシアン顔料記録液を調製した。得られたシアン顔料記録液中の顔料平均粒径は97nmであった。
【0082】
〈ブラック顔料記録液1の調製〉
1)イエロー顔料分散液1 7部
2)マゼンタ顔料分散液1 8部
3)シアン顔料分散液1 5部
4)トリエチレングリコールモノメチルエーテル 20部
5)エチレングリコール 17部
6)イオン交換水 43部
以上の各組成物のうち、まず1)と2)と3)を混合し、10分間攪拌を行い、均一顔料分散液とする。次いで4)と5)と6)を混合し、30分間攪拌を行った。ついで、1)と2)と3)の混合物を攪拌しながら4)と5)と6)の混合物を滴下し、更に1時間攪拌を行った。次いで1μmフィルターでろ過し、本発明の水性顔料インクであるブラック顔料記録液を調製した。得られたブラック顔料記録液中の顔料平均粒径は95nmであった。
【0083】
上記、イエロー顔料記録液1、マゼンタ顔料記録液1、シアン顔料記録液1、ブラック顔料記録液1を1セットとして、顔料記録液セット1とした。
【0084】
〈顔料記録液セット2〜20の作製〉
上記顔料記録液セット1の作製において、表1に記載の通りの顔料分散液セットを用い、表1に記載のとおりに溶媒処方を増減させて添加した以外は同様にして、記録液セット2〜19を作製した。表1ではトリエチレングリコールモノメチルエーテルをTEGME、エチレングリコールをEGと略している。
【0085】
〈インク評価〉
《インクジェット画像記録》
〔画像記録A〕
ノズル口径22μm、ノズル数512のシャトルヘッド方式のピエゾ型記録ヘッドを搭載した評価用プリンタを用いて、記録解像度が1440×1440dpi(なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、インク付着量が10ml/m2、画像サイズ200×280mmの条件で、記録液セット1〜記録液セット20を用いて、A4サイズの大昭和製紙社製のしらおい紙(64g/m2)の一方の面にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのベタ画像を印字した。印字後すぐに、温度23℃、相対湿度50%の部屋に印刷面を上に平置きし、1日間乾燥させて記録物1A〜記録物18Aを作製した。
【0086】
〔カール・コックリングの評価〕
画像記録Aの方法により作製した、記録物1A〜18Aについて、下記の3条件の環境下で1週間放置した後、下記の評価基準に従って、カールおよびコックリングの評価を行った。
【0087】
条件1:23℃、20%RH
条件2:23℃、55%RH
条件3:23℃、80%RH
◎:いずれの条件でも、高さ5mm以上の端部の浮きがなく、かつコックリング(皺)の発生も認められない
○:いずれか1つの条件で高さ5mm以上10mm以下の端部の浮きがあったが、他の2条件では高さ5mm以上の端部の浮きがなく、全ての条件でコックリング(皺)の発生は認められない
×:いずれの条件でも、高さ10mm以上の端部の浮きがあり、明らかなコックリング(皺)の発生が認められる
〈吐出安定性の評価〉
ノズル口径22μm、ノズル数512のシャトルヘッド方式のピエゾ型記録ヘッドを搭載した評価用プリンタを用いて、記録液セット1〜18を用いて、記録解像度が1440×1440dpi(なお、本発明でいうdpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、十文字形のパターン(幅1ドット、長さ縦横各10cm)を50点、普通紙に印字した。この記録した十文字形のラインパターンを目視観察し、下記の基準に従ってライン曲がり耐性の評価を行った。
【0088】
◎:ラインのズレや欠けが全くなく良好である
○:ラインズレが1カ所発生している
△:ラインズレが2、3カ所発生している
×:ラインズレが4〜10カ所発生しているか、あるいはラインに1ヶ所の欠けがある
××:ラインズレが11カ所以上発生し、またラインに1ヶ所以上の欠けがある
〈記録液の保存安定性評価〉
まず、記録液セット1〜18の吸光度を測定した。次いで記録液セット1〜18それぞれ15mlを蒸発が起きないように密閉した、容量 15mlの目盛り付き樹脂製沈殿管容器に分け取り、これを60℃の恒温槽で2週間静置した。次いで記録液が攪拌されないように注意深く前記沈澱管を恒温槽から取り出し、目盛りで上から1ml分上澄みをスポイトで取り出し、この上澄みの吸光度を測定した。得られた上澄みの吸光度と、恒温槽に入れる前に測定した吸光度の値をそれぞれ比較し、変化を評価した。
【0089】
◎:上澄みの吸光度の変化は3%以下で全く問題なし
○:上澄みの吸光度の変化は6%以下で実用上問題なし
×:上澄みの吸光度の変化は10%以上
××:上澄みの吸光度の変化は10%以上で、遠沈管の底に沈殿物が見られる
〈ヘッド撥水膜の耐久性評価〉
ノズル口径22μm、ノズル数512のシャトルヘッド方式のピエゾ型記録ヘッドを搭載した評価用プリンタに記録液セット1〜18を充填して、ゴムブレードによるクリーニング操作を連続で10000回行った。クリーニング終了後、画像記録Aを20回行い、出射安定性を確認した。次いでシャトルヘッドを取り外し、ヘッド出射面の撥水膜の傷を観察した。
【0090】
○:ヘッド撥水膜に傷は見られず、出射も安定だった
×:ヘッド撥水膜に傷が多数付いており、画像記録A上にインクのボタ落ちが発生していた
結果を表2に示す(表中の数値は質量%を表す)。表2から本発明の水性インクは、カール、コックリング防止性に優れ、記録液としての保存性に優れ、かつインクジェットヘッドのノズルからの吐出性に優れ、インクヘッドに良好な耐傷性を与える水性インクであることが分かる。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、顔料と、SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤を含む水溶性有機溶剤とを含有する水性インクであって、該水溶性有機溶剤の含有量が50〜90質量%であり、該SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤の含有量が30質量%以上であり、該顔料は、顔料と顔料の3質量倍以上10質量倍以下の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤との少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、その後該水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いて水性インクに含有された顔料であることを特徴とする水性インク。
【請求項2】
前記SP値16.5〜24.6(MPa)1/2の水溶性有機溶剤に対する前記水溶性無機塩の25℃での溶解度が1以下であることを特徴とする請求項1に記載の水性インク。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水性インクを製造する製造方法であって、顔料と顔料の3質量倍以上10質量倍以下の水溶性無機塩と高沸点水溶性有機溶剤との少なくとも3成分からなる混合物を機械的に混練して顔料を微粒子化し、その後該水溶性無機塩を水洗除去して得られた顔料分散体を用いることを特徴とする水性インクの製造方法。
【請求項4】
ノズル口径25μm以下であるノズルを有するインクジェットヘッドの該ノズルから請求項1または2に記載の水性インクを記録媒体へ出射し記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記記録媒体が搬送され、前記インクジェットヘッドは実質的に走査することなく記録を行うインクジェット記録方法であり、前記記録媒体が搬送される方向と交差する方向に並んだ複数の前記ノズル口径25μm以下であるノズルから請求項1または2に記載の水性インクを記録媒体へ出射し記録を行うことを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記インクジェットヘッド及び前記複数の前記ノズル口径25μm以下であるノズルが並んだラインヘッドが撥水膜を有し、該撥水膜が有機物を60質量%以上含み、前記インクジェットヘッドは撥水膜表面を擦る操作が含まれるクリーニング工程に供されることを特徴とする請求項4または5に記載のインクジェット記録方法。
【請求項7】
前記記録媒体が普通紙であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項8】
前記普通紙の両面に記録が行われることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法に用いられることを特徴とするインクジェットプリンタ。

【公開番号】特開2007−169369(P2007−169369A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366187(P2005−366187)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】