説明

水性インクジェットインキ

【課題】
一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い基材への印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、保存安定性に優れる水系インクジェット用顔料インクを提供すること。
【解決手段】
顔料、水溶性溶剤、水及び顔料分散樹脂を含有してなるインクジェット用顔料インクにおいて、該顔料分散樹脂が、下記の単量体A、単量体B及び単量体Cを共重合組成に含むコポリマー(共重合体)であることを特徴とし、
単量体A:炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸
前記水溶性溶剤が、グリコールエーテル類、ジオール類から選ばれる少なくとも一種であるインクジェット用顔料インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い基材への印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、保存安定性に優れる水系インクジェット用顔料インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この方式によれば、使用する装置の騒音が小さく、操作性がよいという利点を有するのみならず、カラー化が容易であり、かつ記録部材として普通紙を使用することができるという利点があるため、オフィースや家庭での出力機として広く用いられている。
一方、産業用途においても、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機としての利用が期待され、環境面および印刷物の耐性面等から水性顔料インキが求められている。
【0003】
水性顔料インキは、顔料が水に不溶であるため、インキ中での顔料分散を保つために分散樹脂を用いて水中での分散安定化を図っている。(例えば特許文献1,2,3参照)。
また、インクジェット記録方式の場合、ノズルの乾燥防止を目的として、保湿剤と位置づけられる高沸点の水溶性溶剤が含まれている。
【0004】
一般的に、水性インキの乾燥機構は、インキが基材へ着弾後、基材への浸透と蒸発に分類されるが、浸透の寄与が非常に大きく、コート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性が高い基材はインキの浸透が遅いため、多色印刷の場合はインキが混色してきれいな画像を形成できない、印刷速度を上げられない等の問題があった。
このため、インキ中に浸透性の高い高沸点の水溶性溶剤を添加することにより乾燥性の向上を図る必要がある。
しかしながら、インキ中への浸透性溶剤の添加は、顔料分散状態を安定化させている分散樹脂の溶解状態を変化させ、顔料分散性および保存安定性を著しく低下させる場合があった。
即ち、浸透性の高い溶剤と、それが存在しても顔料分散性を低下させない顔料分散樹脂の組み合わせが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−6074号
【特許文献2】特開昭64−31881号公報
【特許文献3】特開平3−210373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、インクジェット記録用の顔料インクにおいて、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い基材への印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性と保存安定性に優れるインクジェット用顔料インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
即ち、本発明は、顔料、水溶性溶剤、水及び顔料分散樹脂を含有してなるインクジェット用顔料インクにおいて、該顔料分散樹脂が、下記の単量体A、単量体B及び単量体Cを共重合組成に含むコポリマー(共重合体)であることを特徴とし、
単量体A:炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸
前記水溶性溶剤が、グリコールエーテル類、ジオール類から選ばれる少なくとも一種であるインクジェット用顔料インク。
また、本発明は、前記顔料分散樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である前記インクジェット用顔料インクに関する。
また、本発明は、前記単量体Aが、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種である前記インクジェット用顔料インクに関する。
また、本発明は、前記単量体Bが、スチレンである前記インクジェット用顔料インクに関する。
また、本発明は、前記グリコールエーテル類が(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルである上記インクジェット用顔料インクに関する。
また、本発明は、前記ジオール類が炭素数3〜6のアルカンジオールである上記インクジェット用顔料インクに関する。
また、本発明は、水性エマルジョンを含有する前記インクジェット用顔料インクに関する。
また、本発明は、前記インクジェット用顔料インクを基材に印刷してなる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一般の印刷基材、特にコート紙、アート紙や塩化ビニルシートなどの疎水性の高い基材への印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、保存安定性に優れる水系インクジェット用顔料インクが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明のインクジェット用顔料インク(以下、インク又は顔料インクという)について説明する。本発明の顔料インクは、炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(単量体A)と、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート(単量体B)と、(メタ)アクリル酸(単量体C)とを共重合組成に含むコポリマー(共重合体)を含有してなることを特徴とする。先ず、本発明を特徴づけるコポリマーの形成成分である単量体A、B及びCについて説明し、更に、これらの共重合によって得られるコポリマーについて説明する。
【0010】
本発明で使用する炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(単量体A)の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
例えば、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記した中でも、保存安定性の向上をより高度に図るためには、前記単量体Aが、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0011】
本発明で使用する単量体Bは、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレートである。本発明で使用するコポリマーは、上記したような単量体A、B及びCを共重合して得られたものであればよいが、これらの単量体に加えて更にスチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート以外の芳香族を有する単量体を共重合させてなるものであってもよい。上記した中でも、保存安定性の向上をより高度に図るためには、スチレンを使用することが好ましい。
【0012】
また、本発明で使用する単量体Cは、(メタ)アクリル酸である。本発明で使用するコポリマーは、上記したような単量体A、B及びCを共重合して得られたものであればよいが、これらの単量体に加えて更に(メタ)アクリル酸以外の酸性官能基を有する単量体を共重合させてなるものであってもよい。この場合に使用できる酸性官能基を有する単量体としては、下記のような酸性官能基を有するビニル化合物が挙げられる。例えば、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、イタコン酸、イコタン酸ハーフエステル、フマール酸、フマール酸ハーフエステル、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸等を、更に共重合させたものであってもよい。
【0013】
さらに、単量体A、単量体Bの比率は、単量体A/単量体B=1/9〜9/1であることが好ましく、単量体A/単量体B=1/4〜4/1であることがさらに好ましい。単量体Aと単量体Bの比率が1/9より少ないと、コポリマーの疎水性が低くなり、顔料表面に対するコポリマーの付着力が低下し、顔料インクの保存安定性が低下する傾向がある。単量体Aと単量体Bの比率が9/1より多いと、コポリマーの顔料表面との親和性が低くなり、顔料表面に対するコポリマーの付着力が低下し、顔料インクの保存安定性が低下する傾向がある。
【0014】
さらに、コポリマー全量中の単量体A、B、Cの合計量の比率は、70〜100質量%が好ましい。
【0015】
本発明のインクの構成成分として用いる上記のような単量体成分を用いて形成されるコポリマーは、重量平均分子量が2,000〜30,000の範囲であることが好ましく、更には、重量平均分子量が5,000〜20,000の範囲のものであることが好ましい。また、本発明のインクの構成成分であるコポリマーは、単量体Cとしてアクリル酸を共重合してなるが、コポリマーにおけるアニオン性官能基を有する単量体の構成比率を酸価で表すと下記のようであることが好ましい。即ち、使用するコポリマーの酸価が、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、更には、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲よりも低いと顔料インクの分散安定性が低下し、吐出安定性が悪化する傾向がある。また、本発明で使用するコポリマーの酸価が上記した範囲より高いと、顔料表面に対するコポリマーの付着力が低下し、顔料インクの保存安定性が低下する傾向がある。尚、本発明におけるコポリマーやポリマーの重量平均分子量や酸価は、常法によって測定することができる。
【0016】
本発明のインクは、含有するコポリマーを形成するためのアクリル酸や、前記した別途導入される酸性官能基を有する単量体をイオン化することで、顔料粒子の分散安定化を図ることができる。このために、インク全体が中性又はアルカリ性に調整されたものであることが好ましい。但し、アルカリ性が強過ぎると、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、7〜10のpH範囲とするのが好ましい。この際に使用されるpH調整剤としては、下記のものが挙げられる。例えば、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等を使用することができる。上記したようなコポリマーは、水性液媒体中に、分散又は溶解される。
【0017】
次に、コポリマーの製造方法について説明する。
コポリマーは、通常のアクリルの溶液重合により得られる。しかしながら、このとき溶剤に溶解しており、水性媒体中に分散または溶解させるためには、以下の方法がある。
一つ目の方法としては、水と共沸する溶剤中で重合し、その後、水とアミンを加えて中和し、水性化する。さらに、溶剤を水と共沸させ、溶媒は完全に水のみとする。
二つ目の方法としては、最終的にインキに含まれる水溶性溶剤を合成溶媒として重合する。その後、水とアミンを加えて中和し水性化するが、溶剤は取り除くことをせず、そのまま後述のプレミキシング、分散処理を行う。
【0018】
一つ目の方法の合成溶媒としては、水と共沸するものであれば良いが、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールがあり、さらに好ましくは1−ブタノールがある。
二つ目の方法の合成溶媒としては、最終的にインキに含まれる水性溶媒であれば良いが、コポリマーに対し溶解性の高いものが良く、好ましくはグリコールエーテル類、ジオール類、さらに好ましくは(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類が良い。
【0019】
次に、本発明のインクが何故、印字性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性と保存安定性に優れるかを説明する。
まず印字性に優れる最大の理由は浸透性である。インクジェットインキではノズルを乾燥させるとインキを吐出することができなくなるため、保湿剤つまり高沸点の水溶性溶剤が必須である。しかしながら、高沸点の水溶性溶剤を含有すると、当然、乾燥は遅くなる。インクジェット専用基材に印字する場合なら、それでも十分に優れた印字性を得ることができる可能性があるが、一般の印刷基材である上質紙、コート紙(片面に20g/m程度塗工した紙)、アート紙(片面に40g/m程度塗工した紙)や塩化ビニルシートに印字する場合、乾燥が遅く、これが印字したドットとドットがつながり起こる印字ムラの原因になることがある。特に、水や溶剤の吸収が乏しいコート紙、アート紙や塩化ビニルシートの場合は、この傾向が得に顕著である。そこで、基材への浸透性が高い溶剤を使用することで、乾燥性を高めることが重要となる。樹脂の合成溶媒として使用可能なグリコールエーテル類、ジオール類はその性質も合わせ持ち、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオール類はその効果が非常に高い。これらは、インクジェットインキによく使用される溶剤であるグリセリンやジエチレングリコールなどに比べ、はるかに基材への浸透性が高い。つまり、これらの溶剤を使用することで、乾燥性が高くなり、印字ムラなどの問題が解消し、印字性が優れたものとなる。
【0020】
しかしながら、これらの溶剤には、顔料の分散性を低下させるという大きな問題がある。理由は定かではないが、これらの溶剤はグリセリンやジエチレングリコールに比べて、疎水性が高く、インキ中の溶媒の疎水性が高くなるために、顔料に吸着している分散樹脂が溶媒へ脱着しやすくなり、分散性が低下するものと考えられる。
特にインキの保存安定性では、これらの溶剤を使用すると、大きく増粘するもしくは分離する傾向にある。
【0021】
そこで、分散樹脂の疎水性を高めることにより、分散性の低下を抑えることができる。すなわち、上記の浸透性の高い溶剤を使用することにより、水系であるとは言え、インキ中の溶媒の疎水性が高くなり、分散樹脂を溶解しやすくなることで、分散樹脂が顔料から溶媒へ脱着しやすく、分散性が低下するものと考えられる。この際、分散樹脂の疎水性を高めることで、溶媒への溶解性が低くなり、分散樹脂が顔料から溶媒へ脱着しにくくなる。
【0022】
炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル(単量体A)を共重合することで、分散樹脂の疎水性が高くなり、分散性の低下を抑えることができる。
一方、分散樹脂の顔料への親和性を確保することで、分散樹脂の顔料への吸着を保持することができる。すなわち、分散樹脂の疎水性が高いだけでは、溶媒への脱着は抑えられても、それだけでは不十分であり、顔料への親和性を確保することで、顔料への吸着が保持できると考えられる。スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート(単量体B)を共重合することで、芳香環による顔料への親和性が確保でき、分散性をよりいっそう高めることができる。
【0023】
分散樹脂に(メタ)アクリル酸を用いるのは、通常の分散樹脂と同様、イオン化した際の電荷反発のためである。顔料に吸着した分散樹脂が、(メタ)アクリル酸をイオン化した状態で有し、水性溶媒中で、顔料どうしの電荷反発が起こり、分散性が保たれるものと考えられる。
これらにより、浸透性の高い溶剤を使用することで、印字性とノズルからの吐出性に優れ、これらの溶剤を使用しても分散性が低下しない分散樹脂を使用することで、保存安定性に優れるインキを得ることができる。
【0024】
本発明のインクにおいて、上記で説明したコポリマーは、インクの全質量に対して、0.1質量%以上8質量%以下の範囲で含有させるのが好ましい。
【0025】
本発明のインクにおいては、必要に応じて、ロジン、シェラック及びデンプン等の天然樹脂や、前記したコポリマーでない合成樹脂も好ましく用いることができる。この場合の天然樹脂や合成樹脂は、前記したコポリマーの添加量を上回らない程度に含有させることが好ましい。
本発明のインクは、上記で説明した本発明で規定する特定のコポリマーや、必要に応じて添加する上記のような樹脂の他に、顔料、水溶性溶剤、及び水を少なくとも含んでなるが、以下、これらの各成分について説明する。
【0026】
本発明のインクは、インクの全質量中に、質量比で、0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上12質量%以下の範囲で、顔料を含有させたものであることが好ましい。本発明においては、下記に挙げるような顔料を使用することができる。先ず、本発明で使用することのできる黒色の顔料としては、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックが挙げられる。例えば、これらのカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2乃至10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビアンカーボン製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L、ELFTEX415(以上、キャボット製)、Nipex90、Nipex150T、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、Printex U(以上、エボニックデグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
【0027】
本発明で使用することのできるイエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213等が挙げられる。また、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red5、7、9、12、31、48、49、52、53、57、97、112、122、147、149、150、168、177、178、179、202、206、207、209、238、242、254、255、269、C.I.Pigment Violet 19、23、29、30、37、40、50等が挙げられる。また、シアンの顔料としては、例えば、C.I.PigmentBlue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.Vat Blue 4、6等が挙げられる。上記以外の色の顔料を用いることもでき、その場合も含め、何れの顔料も各色インクにおいて単独でも、2つ以上の顔料を混合してもよい。勿論、本発明は、これらに限られるものではない。また、以上の他、自己分散型顔料等、新たに製造された顔料も使用することが可能である。
【0028】
本発明のインクを形成する場合に好適な水性媒体は、水及び水溶性溶剤の混合溶媒であるが、水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0029】
水と混合して使用される水溶性溶剤としては、グリコールエーテル類、ジオール類が良く、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオールが効果的である。先述したように、これらの溶剤は基材への浸透が非常に速い。コート紙、アート紙や塩化ビニルシートといった溶媒の吸収性の低い基材に対しても、浸透が速い。そのため、印字の際の乾燥が速く、正確な印字を実現することができる。また、沸点が高いため、保湿剤としての働きは十分である。
【0030】
グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
ジオール類の具体例としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
この中でも効果が高いのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。
これらの溶剤は単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。
【0031】
さらに印刷する基材の種類によっては、その溶解性の向上を目的に、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−メチルオキサゾリジノン、N−エチルオキサゾリジノンなどの水溶性の含窒素複素環化合物を添加することもできる。
【0032】
上記したような水溶性有機溶剤のインク中における含有量は、一般的には、インクの全質量の3質量%以上60質量%以下の範囲であり、より好ましくは3質量%以上50質量%以下の範囲である。また、水の含有量としては、インクの全質量の10質量%以上90質量%以下、更に好ましくは、30質量%以上80質量%以下の範囲である。
【0033】
さらに、本発明のインクは、水性のエマルジョンを含有することが好ましい。水性のエマルジョンを含有することで、粘度はあまり上昇させずに、印字した塗膜の耐性を向上させることができる。これにより、耐水性、耐溶剤性、耐擦過性などが向上する。水溶性の樹脂を添加しても、ある程度耐性の向上は期待できるが、粘度が上昇してしまう傾向にある。インクジェットインクの場合、ノズルからインクを吐出できる粘度にはある範囲があり、あまり粘度が高いとインクを吐出することができなくなることがあるため、粘度の上昇を抑えることは重要である。
上記したような水性のエマルジョンのインク中における含有量は、固形分で、インクの全質量の2質量%以上30質量%以下の範囲であり、より好ましくは、3質量%以上20質量%以下の範囲である。
【0034】
また、本発明のインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インクの全質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下が好適である。
上記したような成分からなる本発明のインクの作製方法としては、下記のような方法が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。先ず初めに、コポリマーと、水とが少なくとも混合された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の顔料分散液を得る。次に、必要に応じてこの顔料分散液に、水溶性溶剤、或いは、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌、必要に応じて濾過して本発明のインクとする。
【0035】
尚、本発明で使用するコポリマーを、インク中に良好に溶解させるためには、顔料分散液を作製する際に塩基を添加することが好ましい。このような形態とすれば、インクの分散安定性を向上させることができる。この際に使用する塩基類としては、下記のものが挙げられる。例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミンや、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機塩基を好ましく使用できる。
【0036】
顔料インクの作製方法においては、上記で述べたように、インクの調製に分散処理を行って得られる顔料分散液を使用するが、顔料分散液の調製の際に行う分散処理の前に、プレミキシングを行うのが効果的である。即ち、プレミキシングは、少なくともコポリマーと水とが混合された水性媒体に顔料を加えて行えばよい。このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
【0037】
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
さらに、上記した顔料のプレミキシング及び分散処理において、コポリマーは水のみに溶解もしくは分散した場合であっても、水溶性溶剤と水の混合溶媒に溶解もしくは分散した場合であっても良い。特に分散処理においては、先述したようにコポリマーの合成溶媒とした水溶性溶剤と水の混合溶媒に、コポリマーが溶解もしくは分散している場合の方が、分散処理過程で安定な分散体を得ることができる場合がある。
【0038】
本発明のインクは、インクジェット記録用であるので、顔料としては、最適な粒度分布を有するものを用いることが好ましい。即ち、顔料粒子を含有するインクをインクジェット記録方法に好適に使用できるようにするためには、ノズルの耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いることが好ましい。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、下記の方法が挙げられる。先に挙げたような分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組み合わせ等の手法がある。
【0039】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。
【0040】
(製造例1)分散樹脂1の合成
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1の溶液を得た。分散樹脂1の重量平均分子量は約16000であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を200部添加し、水性化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、分散樹脂1の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
【0041】
(製造例2)分散樹脂2の合成
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、ブタノール93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂2の溶液を得た。分散樹脂2の重量平均分子量は約16000であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を200部添加し水性化した後、90℃以上に加熱し、ブタノールを水と共沸させてブタノールを留去した。内温が100℃に達すると、これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、分散樹脂2の不揮発分20%の溶剤を含まない水性化溶液を得た。
【0042】
(製造例3〜16)
表1に記載した原料と仕込み量、反応温度を用いた以外は製造例1と同様にして合成を行い、分散樹脂3〜16の溶液を得た。さらに、中和率100%になるようにジメチルアミノエタノールを添加し、製造例1と同様にして水性化し、分散樹脂3〜16の水性化溶液を得た。
【0043】
(比較製造例1、2)
表1に記載した原料と仕込み量、反応温度を用いた以外は製造例1と同様にして合成を行い、比較分散樹脂1、2の溶液を得た。さらに、中和率100%になるようにジメチルアミノエタノールを添加し、製造例1と同様にして水性化し、比較分散樹脂1、2の水性化溶液を得た。
【0044】
(定着樹脂製造例)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)0.2部とを仕込み、別途、2−エチルヘキシルアクリレート40部、メチルメタクリレート50部、スチレン7部、ジメチルアクリルアミド2部、メタクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して樹脂微粒子水分散体を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。得られた樹脂微粒子水分散体を定着樹脂1とした。
【0045】
(実施例1)分散体の製造及びインキの製造
顔料としてPigment Blue 15:3であるLionol Blue FG−7351(東洋インキ製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。このとき、顔料と分散樹脂の不揮発分の比率は、顔料/分散樹脂(不揮発分)=7/3となっている。
(分散体の粘度測定)
顔料分散体の粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
【0046】
(分散体の経時保存安定性)
顔料分散体を70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後での顔料分散体の粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの作製)
さらに、顔料分散体を20部、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを40部、水を27.5部、定着樹脂1を12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.7部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの粘度測定)
インキの粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
【0047】
(インキの経時保存安定性)
インキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの印刷評価)
インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、コート紙(王子製紙製OKトップコート+、米坪104.7g/m)に印刷した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラなどを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
(印刷物の耐性試験)
上記の印刷物に、エタノールを綿棒に染み込ませたものでラビングし、耐性試験を行った。インキが剥がれ、下地が見えたラビング回数が50回以上のものは○、50回未満のものは×とした。
【0048】
(実施例2〜13)
表2に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
(比較例1〜3)
表2に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例1と同様にして分散、インキ作製、評価を行った。
【0049】
(実施例14)分散体の製造及びインキの製造
顔料としてPigment Yellow 74である、Hansa Brilliant Yellow 5GX(クラリアント製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。このとき、顔料と分散樹脂の不揮発分の比率は、顔料/分散樹脂(不揮発分)=7/3となっている。
【0050】
(分散体の粘度測定)
顔料分散体の粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(分散体の経時保存安定性)
顔料分散体を70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後での顔料分散体の粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
【0051】
(インキの作製)
さらに、顔料分散体を20部、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを40部、水を27.5部、定着樹脂1を12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.7部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの粘度測定)
インキの粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(インキの経時保存安定性)
インキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの印刷評価)
インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、コート紙(王子製紙製OKトップコート+、米坪104.7g/m)に印刷した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラなどを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
(印刷物の耐性試験)
上記の印刷物に、エタノールを綿棒に染み込ませたものでラビングし、耐性試験を行った。インキが剥がれ、下地が見えたラビング回数が50回以上のものは○、50回未満のものは×とした。
【0052】
(実施例15〜18)
表3に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例14と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
(比較例4〜6)
表3に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例14と同様にして分散、インキ作製、評価を行った。
【0053】
(実施例19)分散体の製造及びインキの製造
顔料としてカーボンブラックであるNipex 90(エボニックデグサ製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。このとき、顔料と分散樹脂の不揮発分の比率は、顔料/分散樹脂(不揮発分)=7/3となっている。
【0054】
(分散体の粘度測定)
顔料分散体の粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(分散体の経時保存安定性)
顔料分散体を70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後での顔料分散体の粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
【0055】
(インキの作製)
さらに、顔料分散体を20部、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを40部、水を27.5部、定着樹脂1を12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.7部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの粘度測定)
インキの粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(インキの経時保存安定性)
インキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの印刷評価)
インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、コート紙(王子製紙製OKトップコート+、米坪104.7g/m)に印刷した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラなどを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
(印刷物の耐性試験)
上記の印刷物に、エタノールを綿棒に染み込ませたものでラビングし、耐性試験を行った。インキが剥がれ、下地が見えたラビング回数が50回以上のものは○、50回未満のものは×とした。
【0056】
(実施例20)
表4に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例19と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
(比較例7〜9)
表4に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例19と同様にして分散、インキ作製、評価を行った。
【0057】




(実施例21)分散体の製造及びインキの製造
顔料としてPigment Red122であるCromophtal Pink PT(BASF製)、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。このとき、顔料と分散樹脂の不揮発分の比率は、顔料/分散樹脂(不揮発分)=7/3となっている。
(分散体の粘度測定)
顔料分散体の粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(分散体の経時保存安定性)
顔料分散体を70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後での顔料分散体の粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの作製)
さらに、顔料分散体を20部、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを40部、水を27.5部、定着樹脂1を12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.7部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの粘度測定)
インキの粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(インキの経時保存安定性)
インキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの印刷評価)
インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、コート紙(王子製紙製OKトップコート+、米坪104.7g/m)に印刷した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラなどを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
【0058】

(印刷物の耐性試験)
上記の印刷物に、エタノールを綿棒に染み込ませたものでラビングし、耐性試験を行った。インキが剥がれ、下地が見えたラビング回数が50回以上のものは○、50回未満のものは×とした。
【0059】


(実施例22〜27)
表4に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例21と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
(比較例10〜12)
表4に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例21と同様にして分散、インキ作製、評価を行った。
【0060】
(実施例28)分散体の製造及びインキの製造
顔料としてPigment Red269であるSymuler Fast Red 1022(DIC製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。このとき、顔料と分散樹脂の不揮発分の比率は、顔料/分散樹脂(不揮発分)=7/3となっている。
(分散体の粘度測定)
顔料分散体の粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(分散体の経時保存安定性)
顔料分散体を70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後での顔料分散体の粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの作製)
さらに、顔料分散体を20部、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを40部、水を27.5部、定着樹脂1を12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.7部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの粘度測定)
インキの粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数20rpmという条件で測定した。
(インキの経時保存安定性)
インキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度変化について測定した。70℃1週間保存前後の粘度の変化率が±10%未満なら○、±10%以上±20%未満であれば△、±20%以上であれば×とした。
(インキの印刷評価)
インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、コート紙(王子製紙製OKトップコート+、米坪104.7g/m)に印刷した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ドットのつながりや色のムラなどを評価した。印刷品質が非常に良好なものは◎、良好なものは○、ある程度良好なものは△、良好でないものは×とした。
(印刷物の耐性試験)
上記の印刷物に、エタノールを綿棒に染み込ませたものでラビングし、耐性試験を行った。インキが剥がれ、下地が見えたラビング回数が50回以上のものは○、50回未満のものは×とした。
【0061】
(実施例29〜31)
表4に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例28と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
(比較例13〜15)
表4に記載した分散樹脂や溶剤を用いた以外は実施例28と同様にして分散、インキ作製、評価を行った。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、水溶性溶剤、水及び顔料分散樹脂を含有してなるインクジェット用顔料インクにおいて、該顔料分散樹脂が、下記の単量体A、単量体B及び単量体Cを共重合組成に含むコポリマー(共重合体)であることを特徴とし、
単量体A:炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸
前記水溶性溶剤が、グリコールエーテル類、ジオール類から選ばれる少なくとも一種であるインクジェット用顔料インク。
【請求項2】
前記顔料分散樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である請求項1に記載のインクジェット用顔料インク。
【請求項3】
前記単量体Aが、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種である請求項1または2記載のインクジェット用顔料インク。
【請求項4】
前記単量体Bが、スチレンである請求項1乃至3いずれか記載のインクジェット用顔料インク。
【請求項5】
前記グリコールエーテル類が(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルである請求項1乃至4いずれか記載のインクジェット用顔料インク。
【請求項6】
前記ジオール類が炭素数3〜6のアルカンジオールである請求項1乃至4いずれか記載のインクジェット用顔料インク。
【請求項7】
水性エマルジョンを含有する請求項1乃至6いずれか記載のインクジェット用顔料インク。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか1項に記載のインクジェット用顔料インクを印刷してなる印刷物。











【公開番号】特開2012−140476(P2012−140476A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291877(P2010−291877)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】