説明

水性インクジェットインキ

【課題】2種の顔料を含み、かつ、保存安定性に優れた赤色インクジェットインキ、青色インクジェットインキ、及び、緑色インクジェットインキを提供する。
【解決手段】少なくとも顔料、水溶性溶剤、及び水を含有してなるインクジェットインキであり、前記顔料がC. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Red 122またはRed 269のいずれか一方とを含む赤色インキ。また、前記顔料がC. I. Pigment Blue 15:3またはBlue 15:4のいずれか一方と、C. I. Pigment Red 122またはRed 269のいずれか一方とを含む青色インキ。さらに、前記顔料がC. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Blue 15:3またはBlue 15:4のいずれか一方とを含む緑色インキ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C. I. Pigment Yellow 74と、C. I.Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方を含む赤色インクジェットインキ、または、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方と、C. I.Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方を含む青色インクジェットインキ、または、C. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方を含む緑色インクジェットインキであり、更に詳細には保存安定性に優れたインクジェットインキであり、更に詳細には、これらの内いずれか2色以上からなるインクジェットインキセットに関する。
【背景技術】
【0002】
インク液滴をノズルから記録紙などの記録媒体上に直接噴射して記録するインクジェット記録方法は、インク液滴を必要時にのみ噴射するオンデマンド方式であるため、インキの回収機構が不要であり、低価格化・小型化が容易であり、比較的簡単な装置で高精度な画像の記録が可能であるため、家庭用又はオフィス用プリンタとして急速に発展してきた。
【0003】
近年では、家庭用又はオフィス用のプリンタに留まらず、インクジェットプリンタを用いた産業用印刷機器の開発が行われるようになってきた。従来の家庭用又はオフィス用プリンタと比較して、産業用印刷機器を目的としたものには、イエローインキ、マゼンタインキ及びシアンインキの3色のインキから構成されるインキセット、あるいは、ブラックインキを加えた4色インキから構成されるインキセット、いわゆるプロセス色を搭載し様々な画像を印刷するのではなく、ある特定の1色または2色のみで印刷する機器も数多くある。
【0004】
しかし、そのようなある特定の1色又は2色のみでしか印刷しない機器に、プロセス色をすべて搭載し、プロセス色以外の色、たとえば赤色、青色、緑色などを表現することは機器のコストアップにつながる。そのため、印刷に必要な色のインキを自由に選択できることが求められている。
【0005】
一般に、必要な色のインキを得るためには、色相の異なる顔料を混合して調色する。しかし、異なる色相の顔料はそれぞれ化学的な性質が異なるために、混合することによって分散が不安定化する。
また、顔料の粒子径を小さくすることが求められるインクジェットの場合、顔料の粒子径を小さくすることで、顔料粒子表面が活性となり、顔料同士の二次凝集が起こり、増粘するといった問題があった。そのため、インクジェット印刷の用途に用いた場合、吐出性に重大な影響を及ぼす。
【0006】
このため、異なる色の顔料を混合しても安定な分散状態を保持するために様々な検討がされている。
特開2002−121413号公報に、2種類の顔料磨砕物の混合物、あるいは、2種類の顔料混合物の磨砕物を、水溶性無機塩の存在下で溶媒体と共に磨砕することにより分散性の良好な顔料を得られることを開示している。また、特開2002−179976号公報には、微細化処理を施した顔料と分散剤を溶媒中に分散させることにより、粗大粒子が生成せず、分散性に優れた顔料分散組成物が得られることが開示されている。
しかし、特開2002−121413号公報に開示されている方法により、2種類以上の顔料を混合して溶媒中に分散させた場合、顔料の分散状態が不安定になることが多く、顔料粒子が凝集し増粘するといった問題があり、また、特開2002−179976号公報も同様の問題が生じていた。
【0007】
さらに、両方とも、異なる色の顔料を配合した配合顔料をインキ化する方法のため、印刷時に必要な色のインキを即座に得ることはできなかった。
また、異なる顔料を含むインキ同士を配合して調色する方法も、顔料粒子同士の二次凝集が起こり、増粘するといった問題があった。
即ち、2種の顔料を含み、かつ、保存安定性に優れた赤色インクジェットインキ、青色インクジェットインキ、及び、緑色インクジェットインキが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−121413号公報
【特許文献2】特開2002−179976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、インクジェット記録用のインクジェットインキにおいて、2種の顔料を含み、かつ、保存安定性に優れた赤色インクジェットインキ、青色インクジェットインキ、及び、緑色インクジェットインキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、以下の本発明によって達成される。
即ち、本発明は、少なくとも顔料、水溶性溶剤、及び水を含有してなるインクジェットインキであり、前記顔料がC. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方を含むことを特徴とする赤色インクジェットインキに関する。
また、本発明は、少なくとも顔料、水溶性溶剤、及び水を含有してなるインクジェットインキであり、前記顔料がC. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方と、C. I. Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方を含むことを特徴とする青色インクジェットインキに関する。
また、本発明は、少なくとも顔料、水溶性溶剤、及び水を含有してなるインクジェットインキであり、前記顔料がC. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方を含むことを特徴とする緑色インクジェットインキに関する。
また、本発明は、前記の赤色インクジェットインキ、青色インクジェットインキ、及び、緑色インクジェットインキのうち、いずれか2色以上からなるインクジェットインキセットに関する。
【0011】
また、本発明は、下記の単量体A、単量体B、単量体Cを共重合組成に含む分散樹脂を含有することを特徴とする前記インクジェットインキに関する。
【0012】
単量体A:炭素数が10以上、24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α-メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸
【0013】
また、本発明は、前記分散樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下であることを特徴とする前記インクジェットインキに関する。
また、本発明は、前記単量体Aがラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、前記単量体Bがスチレンであることを特徴とする前記インクジェットインキに関する。
また、本発明は、前記水溶性溶剤が、アルカンジオール、もしくは、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、もしくは、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルを含むことを特徴とする前記インクジェットインキに関する。
また、本発明は、定着樹脂を含有することを特徴とする前記インクジェットインキに関する。
また、本発明は、前記インクジェットインキを紙に印刷した印刷物に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、C. I. Pigment Yellow 74と、C. I.Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方を含む赤色インクジェットインキ、または、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方と、C. I.Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方を含む青色インクジェットインキ、または、C. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方を含む緑色インクジェットインキであり、更に詳細には保存安定性に優れたインクジェットインキであり、更に詳細には、これらの内いずれか2色以上からなるインクジェットインキセットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明のインクジェットインキ(以下、インキという)について説明する。本発明のインキは、2種の顔料を含むことを特徴とする。先ず、本発明を特徴づける顔料について説明し、更に、インキの作製方法について説明する。
【0016】
本発明に使用する顔料において、本発明者らは、赤色、青色、緑色インクジェットを作製するための顔料の組み合わせを鋭意検討した結果、赤色インクジェットインキはC.I. Pigment Yellow 74とC. I. Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方を使用し、青色インクジェットインキはC. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方と、C. I. Pigment Red 122またはC.I. Pigment Red 269のいずれか一方を使用し、緑色インクジェットインキはC. I. Pigment 74とC. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方の組み合わせにおいて、保存安定性が良いことを見出した。これ以外の顔料の組み合わせは、顔料粒子同士の凝集が起こり、インキの安定性が悪くなる。
【0017】
本発明に使用する顔料において、顔料の重量比は特に制限はないが、本発明者らの示す赤色インクジェットインキとは、C.I. Pigment Yellow 74とC. I. Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方の重量比が10:90〜90:10であり、青色インクジェットインキとは、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方と、C. I.Pigment Red 122またはC.I. Pigment Red 269のいずれか一方の重量比が10:90〜90:10であり、緑色インクジェットインキとは、C. I. Pigment 74とC. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方の重量比が10:90〜90:10である。保存安定性をさらに良化するためには、赤色インクジェットインキは、C.I. Pigment Yellow 74とC. I. Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方の重量比が10:90〜60:40、青色インクジェットインキは、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方と、C. I.Pigment Red 122またはC.I. Pigment Red 269のいずれか一方の重量比が20:80〜70:30、緑色インクジェットインキは、C. I. Pigment 74とC. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方の重量比が20:80〜60:40、が好ましい。
【0018】
本発明のインクジェットインキの製造方法は、分散時に顔料を混合してインキ化する方法と2色の分散体を混合してインキ化する方法が挙げられるが、特に制限はない。
本発明のインキは、インキの全質量中に、質量比で、1質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上12質量%以下の範囲で、顔料を含有させたものであることが好ましい。
【0019】
本発明で使用する分散剤としては、顔料分散に用いられる公知慣用の分散剤を使用することができ、例えば、顔料の中間体や誘導体、あるいは、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂型分散剤が挙げられる。本発明者らが鋭意検討した結果、この中でも特に保存安定性に優れるものはアクリル系樹脂であり、さらに好ましくは以下の単量体A、単量体B、単量体Cを共重合組成にもつアクリル系樹脂であり、さらに好ましくは単量体Aがラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、前記単量体Bがスチレンであるアクリル系樹脂である。
【0020】
単量体A:炭素数が10以上、24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α-メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸
【0021】
上記の単量体A、単量体B、単量体Cを共重合組成にもつ樹脂を使用すると、保存安定性が大いに優れる理由は、樹脂に単量体Aの疎水性部位と、単量体Bの顔料への親和性部位を合わせもつことによって、顔料表面との相互作用により樹脂が顔料に強固に吸着し、さらに、単量体Cのような電荷反発部位を持つことによって、顔料同士の電荷反発が起こり分散性が保たれると考えられる。
【0022】
単量体Aにおいて、炭素数が10以上24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステルの好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
例えば、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記した中でも、保存安定性の向上をより高度に図るためには、前記単量体Aが、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0023】
単量体Bにおいて、スチレン、α−メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレートが挙げられるが、中でも、保存安定性の向上をより高度に図るためには、スチレンを使用することが好ましい。
【0024】
単量体Cにおいて、(メタ)アクリル酸が挙げられるが、(メタ)アクリル酸の構成比率を酸価で表すと下記のようであることが好ましい。即ち、使用するコポリマーの酸価が、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、更には、酸価が80mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の範囲であることが好ましい。本発明で使用する分散樹脂の酸価が上記した範囲外の場合、分散安定性が低下する。尚、本発明における分散樹脂の酸価は、常法によって測定することができる。
【0025】
本発明のインキを形成する場合に好適な水性媒体は、水及び水溶性溶剤の混合溶媒であるが、水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
【0026】
本発明に使用する水溶性溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルを使用することが効果的である。アルキレングリコールモノアルキルエーテルは用紙への浸透が非常に速いため、印字の際の乾燥が速く、容易に乾燥させることができる。
【0027】
具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
こ の中でも効果が高いのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルである。ジエチレングリコールモノブチルエーテルは、紙への浸透が極めて速いが、一方、顔料の分散性を低下させる傾向も強い。そのため、以下に説明するアルカンジオール化合物との併用が好ましい。
【0028】
射出の安定性と適度な乾燥性を図るために、アルカンジオール化合物を用いることもできる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。
この中でも効果が高いのは、プロピレングリコールである。プロピレングリコールは、表面張力が高く、射出の安定性を高め、適度な乾燥性と粘度を有している。
【0029】
上記したような水溶性有機溶剤のインキ中における含有量は、一般的には、インキの全質量の2質量%以上60質量%以下の範囲であり、より好ましくは2質量%以上50質量%以下の範囲である。また、水の含有量としては、インキの全質量の10質量%以上90質量%以下、更に好ましくは、30質量%以上80質量%以下の範囲である。
【0030】
さらに、本発明のインキは、水性の定着樹脂を含有することが好ましい。水性の定着樹脂を含有することで、粘度をあまり上昇させずに、印字した塗膜の耐性を向上させることができる。一方、水溶性の樹脂を添加しても、ある程度耐性の向上は期待できるが、粘度が上昇してしまう傾向にある。インクジェットインキの場合、ノズルからインキを吐出できる粘度にはある範囲があり、あまり粘度が高いとインキを吐出することができなくなることがあるため、粘度の上昇を抑えることは重要である。
上記したような水性の定着樹脂のインキ中における含有量は、固形分で、インキの全質量の2質量%以上30質量%以下の範囲であり、より好ましくは、3質量%以上20質量%以下の範囲である。
【0031】
また、本発明のインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下が好適である。
【0032】
上記したような成分からなる本発明のインキの作製方法としては、下記のような方法が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0033】
(分散時に2種の顔料を混合してインキ化する方法)
先ず初めに、分散樹脂と、水とが少なくとも混合された水性媒体に2種の顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散体を得る。次に、この分散体に、水溶性溶剤、或いは、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌、必要に応じて濾過して本発明のインキとする。
【0034】
(2色の分散体を混合してインキ化する方法)
2色の分散体それぞれにおいて、先ず初めに、分散樹脂と、水とが少なくとも混合された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の顔料分散体を得る。次に、2色の顔料分散体を混合し、水溶性溶剤、或いは、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌、必要に応じて濾過して本発明のインキとする。
【0035】
顔料インキの作製方法においては、上記で述べたように、インキの調製に分散処理を行って得られる分散体を使用するが、分散体の調製の際に行う分散処理の前に、プレミキシングを行うのが効果的である。即ち、プレミキシングは、少なくとも分散樹脂と水とが混合された水性媒体に顔料を加えて行えばよい。このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
さらに、上記した顔料のプレミキシング及び分散処理において、分散樹脂は水のみに溶解もしくは分散した場合であっても、水溶性溶剤と水の混合溶媒に溶解もしくは分散した場合であっても良い。
【0036】
本発明のインキは、インクジェット記録用であるので、顔料としては、最適な粒度分布を有するものを用いることが好ましい。即ち、顔料粒子を含有するインキをインクジェット記録方法に好適に使用できるようにするためには、ノズルの耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いることが好ましい。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、下記の方法が挙げられる。先に挙げたような分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組み合わせ等の手法がある。
【0037】
[実施例]
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断らない限り質量基準である。
【0038】
(製造例1)分散樹脂1の合成
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、分散樹脂1の溶液を得た。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を200部添加し、水性化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、酸価234の分散樹脂1の水性化溶液を得た。
【0039】
(製造例2)分散樹脂2〜10の合成
表1に記載した原料と仕込量を使用した以外は、製造例1と同様にして合成を行い、分散樹脂2〜10溶液を得た。さらに、中和率100%になるようにジメチルアミノエタノールを添加し、製造例1と同様にして水性化し、分散樹脂2〜10の水性化溶液を得た。
【0040】
【表1】

【0041】
(定着樹脂製造例)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)0.2部とを仕込み、別途、2−エチルヘキシルアクリレート40部、メチルメタクリレート50部、スチレン7部、ジメチルアクリルアミド2部、メタクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬株式会社製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で固形分を40%に調整して樹脂微粒子水分散体を得た。なお、固形分は、150℃20分焼き付け残分により求めた。得られた樹脂微粒子水分散体を定着樹脂とした。
【0042】
(実施例1)
(イエロー分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Yellow 74であるHANSA BRILLIANT YELLOW 5GX01(クラリアント製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
【0043】
(マゼンタ分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Red 122であるCROMOPHTAL PINK PT(BASF製)を20部、分散樹脂1を30部、水50部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
【0044】
(インキの作製)
イエロー分散体を8部、マゼンタ分散体を12部、水を22.5部、プロピレングリコールを40部、BDGを5部、定着樹脂12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.4部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの粘度測定)
インキの粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃において回転数50rpmという条件で測定した。
(インキの分散粒子径測定)
インキの分散粒子径を、マイクロトラックUPA150(日立装社製湿式粒度分布径)を用いて、インキをイオン交換水で200倍に希釈して測定した。
(インキの経時保存安定性)
インキを70℃の恒温機に2週間保存、経時促進させた後、経時前後でのインキの粘度と分散粒子径変化について測定した。70℃2週間保存前後の粘度、分散粒子径の変化率が±5%以下なら○、70℃2週間保存前後の粘度、分散粒子径の変化率が±10%以下なら△、それ以外を×とした。
【0045】
(インキの射出安定性)
インキをインクジェットプリンター(エプソン社製「PM−750C」)のカートリッジに詰めて、上質紙(日本製紙製NPi上質紙、米坪81.4g/m)に30分間連続印刷した。印刷したサンプルをルーペで観察し、ノズル抜けが発生するか評価した。30分間連続印刷してもノズル抜けが発生しなかったものは○、5分以上連続印刷してノズル抜けが発生したものは△、連続印刷5分以内でノズル抜けが発生したものを×とした。
【0046】
(実施例2)
(イエロー分散体の製造)
イエロー分散体の製造は、実施例1と同様の方法で作製した。
(マゼンタ分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Red 269であるPERMANENT CARMINE 3815(山陽色素製)を20部、分散樹脂1を30部、水50部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
(インキの作製)
インキの作製は、実施例1と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0047】
(比較例1)
(イエロー分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Yellow 13であるLIONOL YELLOW TT-1300G(東洋インキ製造製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
(マゼンタ分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Violet 19であるCATULIA RED YP(東洋インキ製造製)を20部、分散樹脂1を30部、水50部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
(インキの作製)
インキの作製は、実施例1と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0048】
(比較例2)
(イエロー分散体の製造)
イエロー分散体は、実施例1と同様の方法で作製した。
(マゼンタ分散体の製造)
マゼンタ分散体は、比較例1と同様の方法で作製した。
(インキの作製)
インキの作製は、実施例1と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0049】
(実施例3〜16)
表2に記載した顔料の重量比、分散樹脂、または、水溶性溶剤を使用したこと以外は全て、実施例1と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
【0050】
【表2】

【0051】
(実施例17)
(シアン分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Blue 15:3であるLIONOL BLUE FG-7351(東洋インキ製造製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
(マゼンタ分散体の製造)
マゼンタ分散体は、実施例1と同様の方法で作製した。
(インキの作製)
シアン分散体を8部、マゼンタ分散体を12部、水を22.5部、プロピレングリコールを40部、BDGを5部、定着樹脂12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.2部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0052】
(実施例18)
(シアン分散体の製造)
シアン分散体は、実施例17と同様の方法で作製した。
(マゼンタ分散体の製造)
マゼンタ分散体は、実施例2と同様の方法で作製した。
(インキの作製)
インキは、実施例17と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
(実施例19)
(シアン分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Blue 15:4であるLIONOL BLUE FG-7400G(東洋インキ製造製)を20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
【0053】
(マゼンタ分散体の製造)
マゼンタ分散体は、実施例1と同様の方法で作製した。
(インキの作製)
インキは、実施例17と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0054】
(実施例20)
(シアン分散体の製造)
シアン分散体は、実施例19と同様の方法で作製した。
(マゼンタ分散体の製造)
マゼンタ分散体は、実施例2と同様の方法で作製した。
【0055】
(インキの作製)
インキは、実施例17と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0056】
(比較例3)
(シアン分散体の製造)
顔料として、C. I. Pigment Blue 15:6であるLIONOL BLUE ES(東洋インキ製造製)をを20部、分散樹脂1を42.9部、水37.1部をディスパーで予備分散した後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、顔料分散体を得た。
【0057】
(マゼンタ分散体の製造)
マゼンタ分散体は、比較例1と同様の方法で作製した。
(インキの作製)
インキは、実施例17と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0058】
(比較例4)
(シアン分散体の製造)
シアン分散体は、実施例17と同様の方法で作製した。
(マゼンタ分散体の製造)
マゼンタ分散体は、比較例1と同様の方法で作製した。
(インキの作製)
インキは、実施例17と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0059】
(実施例21〜34)
表3に記載した顔料の重量比、分散樹脂、または、水溶性溶剤を使用したこと以外は全て、実施例17と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
【0060】
【表3】

【0061】
(実施例35)
(イエロー分散体の製造)
イエロー分散体は、実施例1と同様の方法で作製した。
(シアン分散体の製造)
シアンの分散体は、実施例17と同様の方法で作製した。
【0062】
(インキの作製)
イエロー分散体を8部、シアン分散体を12部、水を22.5部、プロピレングリコールを40部、BDGを5部、定着樹脂12.5部混合し、インキを作製した。このとき、インキ100部の中に、顔料4部、分散樹脂1.7部、定着樹脂5部が含まれている。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキのろ過性測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0063】
(実施例36)
(イエロー分散体の製造)
イエロー分散体は、実施例1と同様の方法で作製した。
(シアン分散体の製造)
シアンの分散体は、実施例19と同様の方法で作製した。
【0064】
(インキの作製)
インキの作製は、実施例35と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキのろ過性測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0065】
(比較例5)
(イエロー分散体の製造)
イエロー分散体は、比較例1と同様の方法で作製した。
(シアン分散体の製造)
シアンの分散体は、比較例3と同様の方法で作製した。
【0066】
(インキの作製)
インキの作製は、実施例35と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキのろ過性測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0067】
(比較例6)
(イエロー分散体の製造)
イエロー分散体は、実施例1と同様の方法で作製した。
(シアン分散体の製造)
シアンの分散体は、比較例3と同様の方法で作製した。
(インキの作製)
インキの作製は、実施例31と同様の方法で作製した。
(インキの評価)
インキの粒度測定、インキの分散粒子径測定、インキのろ過性測定、インキの経時保存安定性、インキの射出安定性に関しては、実施例1と同様に行った。
【0068】
(実施例37〜50)
表4に記載した分散樹脂、または、水溶性溶剤を使用したこと以外は全て、実施例35と同様にして分散体の作製、インキの作製、評価を行った。
【0069】
【表4】

【0070】
(実施例1〜50、比較例1〜6の説明)
比較例1〜2で示した、本発明の要求する顔料以外を使用した赤色インクジェットインキは、経時保存安定性が悪く、インクジェットインキとして使用することができないが、実施例1〜4より、本発明の要求する顔料を使用した赤色インクジェットインキは、経時安定性と射出安定性に非常に優れている。
比較例3〜4で示した、本発明の要求する顔料以外を使用した青色インクジェットインキは、経時保存安定性が悪く、インクジェットインキとして使用することができないが、実施例17〜22より、本発明の要求する顔料を使用した青色インクジェットインキは、経時安定性と射出安定性に非常に優れている。
比較例5〜6で示した、本発明の要求する顔料以外を使用した緑色インクジェットインキは、経時保存安定性が悪く、インクジェットインキとして使用することができないが、実施例35〜38より、本発明の要求する顔料を使用した緑色インクジェットインキは、経時安定性と射出安定性に非常に優れている。
【0071】
実施例5〜13から明らかなように、本発明の要求する分散樹脂を使用した赤色インクジェットインキは、本発明の要求する分散樹脂以外を使用した赤色インクジェットインキに比べて、保存安定性と射出安定性がさらに良化する。
【0072】
実施例23〜31から明らかなように、本発明の要求する分散樹脂を使用した青色インクジェットインキは、本発明の要求する分散樹脂以外を使用した青色インクジェットインキに比べて、保存安定性と射出安定性がさらに良化する。
【0073】
実施例39〜47から明らかなように、本発明の要求する分散樹脂を使用した緑色インクジェットインキは、本発明の要求する分散樹脂以外を使用した緑色インクジェットインキに比べて、保存安定性と射出安定性がさらに良化する。
実施例14〜16から明らかなように、本発明の要求する水溶性溶剤を使用した赤色インクジェットインキは、本発明の要求する水溶性溶剤以外を使用した赤色インクジェットインキに比べて、経時保存安定性、または、射出安定性が良化する。
実施例32〜34から明らかなように、本発明の要求する水溶性溶剤を使用した青色インクジェットインキは、本発明の要求する水溶性溶剤以外を使用した青色インクジェットインキに比べて、経時保存安定性、または、射出安定性が良化する。
実施例48〜50から明らかなように、本発明の要求する水溶性溶剤を使用した緑色インクジェットインキは、本発明の要求する水溶性溶剤以外を使用した緑色インクジェットインキに比べて、経時保存安定性、または、射出安定性が良化する。
【0074】
即ち、従来、2種の顔料を含み、かつ、保存安定性に優れた赤色インクジェットインキ、青色インクジェットインキ、及び、緑色インクジェットインキを作成することはできなかったが、本発明者らが鋭意検討した結果、その問題を解決する条件を見出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも顔料、水溶性溶剤、及び水を含有してなるインクジェットインキであり、前記顔料がC. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方とを含むことを特徴とする赤色インクジェットインキ。
【請求項2】
少なくとも顔料、水溶性溶剤、及び水を含有してなるインクジェットインキであり、前記顔料がC. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方と、C. I. Pigment Red 122またはC. I. Pigment Red 269のいずれか一方とを含むことを特徴とする青色インクジェットインキ。
【請求項3】
少なくとも顔料、水溶性溶剤、及び水を含有してなるインクジェットインキであり、前記顔料がC. I. Pigment Yellow 74と、C. I. Pigment Blue 15:3またはC. I. Pigment Blue 15:4のいずれか一方とを含むことを特徴とする緑色インクジェットインキ。
【請求項4】
下記の単量体A、単量体B、単量体Cを共重合組成に含む分散樹脂を含有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項に記載のインクジェットインキ。
単量体A:炭素数が10以上、24以下のアルキル基の(メタ)アクリレートエステル
単量体B:スチレン、α-メチルスチレンもしくはベンジル(メタ)アクリレート
単量体C:(メタ)アクリル酸
【請求項5】
分散樹脂の酸価が、50mgKOH/g以上400mgKOH/g以下である請求項4記載のインクジェットインキ。
【請求項6】
単量体Aがラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、前記単量体Bがスチレンである請求項4または5記載のインクジェットインキ。
【請求項7】
水溶性溶剤が、アルカンジオール、もしくは、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、もしくは、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルを含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載のインクジェットインキ。
【請求項8】
定着樹脂を含有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェットインキ。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の赤色インクジェットインキ、青色インクジェットインキ、及び緑色インクジェットインキのうち、いずれか2色以上からなるインクジェットインキセット。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェットインキ、またはインクジェットインキセットを紙に印刷した印刷物。

【公開番号】特開2012−188502(P2012−188502A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51838(P2011−51838)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】