説明

水性フルオロポリマー分散体からのフッ素系界面活性剤の除去

フルオロポリマー分散体を輸送コンテナに充填し、分散体を輸送コンテナ中でフッ素系界面活性剤吸着剤と接触させることによる水性フルオロポリマー分散体のフッ素系界面活性剤含量の低減方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性フルオロポリマー分散体からフッ素系界面活性剤を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許公報(特許文献1)(ベリー(Berry))に記載されているように、フッ素系界面活性剤が、フルオロポリマーの分散重合において非テロゲン性分散剤として機能する重合助剤として用いられている。米国特許公報(特許文献2)(セキ(Seki)ら)および米国特許公報(特許文献3)(クール(Kuhls))にさらに教示されているように、これらの高価なフッ素系界面活性剤は、ポリマーが分散体から凝析された後の水相から、または濃縮前の水性ポリマー分散体において回収されることができる。米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献2)の両方に教示された、フルオロポリマー分散体からのフッ素系界面活性剤の、好ましい回収手法は、イオン交換樹脂への吸着によるものである。
【0003】
追加的な処理工程としてイオン交換吸着を伴うフルオロポリマー製造方法には、数々の欠点がある。例えば、典型的には樹脂ビーズの形態で、攪拌タンクにおける分散体へのイオン交換樹脂の追加を利用する方法は、フッ素系界面活性剤の吸着を果たすために攪拌下での長い接触時間を必要とする。実際の問題としては、吸着速度は、攪拌速度および効力;イオン交換樹脂の量、ビーズ径、および状態;用いられる特定のイオン交換樹脂および交換されるアニオンの相対的な化学ポテンシャル;および温度によって限定される。このような限定事項のために、フルオロポリマー分散体からのイオン交換樹脂を用いたフッ素系界面活性剤の回収は、従来技術において開示されているとおり、長時間(すなわち、通例の重合サイクルより長い通例の処理時間)かかる。従って、総製造サイクル時間の延長を回避するために、複数のタンクまたは数々の重合バッチを受容するに十分な大きさのタンクのいずれかを用いなければならず、イオン交換工程を高い製造効率で実施しなければならない。
【0004】
従来技術の手法の他の欠点は、長時間の攪拌に伴うせん断力が1次重合粒子のいくらかの凝集を生じて粗大粒子を形成する傾向にある結果、粒子沈殿により分散安定性がより貧弱となることである。また、従来技術手法において、イオン交換吸着時間を短時間に維持してバッチ重合サイクルに対応させるのに必要なイオン交換樹脂の量は、1週間以上というより長い接触時間が使用可能であれば達成されたであろうフッ素系界面活性剤の低減と同一のレベルを達成するために必要な量の約3倍必要となる可能性がある。
【0005】
分散体が、攪拌された樹脂ビーズを用いる代わりにイオン交換固定床を通過される場合も、交換速度は遅く、十分なフッ素系界面活性剤の吸着を得るために、分散体を十分に低速度で床を通過させる必要があることによって限定されている。イオン交換床を通る低速流路は、分散体の最初の部分では、すべてのフッ素系界面活性剤が除去されるという結果をもたらす。床の上部が進行的により消尽されるために、その後の部分はより低量が除去される。最後の部分は、床が消尽されてしまったために、フッ素系界面活性剤はほとんどが除去されない。床の消尽の差異の結果、最終製品に差が生じないよう後続のブレンドに注意を払わなければならない。しかも、固定床を含有する容器中のイオン交換樹脂を補充または置換するために、多くの労働力または機械設備への資本が用いられなければならない。総合的な速度は、攪拌ビーズ技術と同等である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第2,559,752号明細書
【特許文献2】米国特許第3,882,153号明細書
【特許文献3】米国特許第4,282,162号明細書
【特許文献4】米国特許第4,380,618号明細書
【特許文献5】米国特許第3,037,953号明細書
【特許文献6】米国特許第3,704,272号明細書
【特許文献7】米国特許第3,882,153号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
分散体製造サイクル時間を増加させることなくフッ素系界面活性剤を直接的に分散体から回収し、大規模な製造機器の必要性を回避し、およびせん断損傷および粒子凝集なく、高品質で、一様な製品を提供するフルオロポリマー分散体の効率的な製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、輸送コンテナをフルオロポリマー分散体で充填する工程と、および分散体をフッ素系界面活性剤吸着剤に、輸送コンテナ中で接触させてフッ素系界面活性剤含量を低減する工程とによる、水性フルオロポリマー分散体のフッ素系界面活性剤含量を低減する方法に関する。
【0009】
この方法は、好ましくは、水性フルオロポリマー分散体または吸着剤のいずれかを、相互に相対的な動きを付与するため、接触工程の間揺動させる工程を含む。好ましい実施形態においては、吸着剤は、イオン交換樹脂であり、および閉込められている。好ましくは、吸着剤は、分散体のフッ素系界面活性剤含量が低減された後、フッ素系界面活性剤の吸着剤からの回収を許容させるために、分散体から分離される。
【0010】
本発明は、さらに、分散体およびフッ素系界面活性剤吸着剤のための輸送コンテナを含み、分散体に接触させてフッ素系界面活性剤含量を低減させるために、吸着剤がコンテナに配置される、水性フルオロポリマー分散体のフッ素系界面活性剤含量を低減するシステムを提供する。好ましい実施形態において、吸着剤は、好ましくは布ポーチである閉込め構造中に閉込められる。代替的な実施形態において、閉込め構造は、一般に剛性で多孔性の容器である。他の実施形態において、ポンプは、フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体を閉込め構造と相対的に揺動させるために用いられ、および閉込め構造は、多孔性外面および中央内部流路を備えたカートリッジである。ポンプから中央流路への流れが、分散体が吸着剤を通って多孔性外面から出る流れを起こすよう、吸着剤は、中央内部流路および多孔性外面の間に含有される。好ましくは、カートリッジは、フッ素系界面活性剤含量が低減された分散体を受け、分散体を輸送コンテナに戻して循環を促す収集器を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、分散体が輸送コンテナ中にある間に、水性フルオロポリマー分散体のフッ素系界面活性剤含量の低減方法に関する。用語「輸送コンテナ」とは、重合後のフルオロポリマー分散体を保持するために設計された可搬式容器のいずれかを意味し、可搬式容器は、重合エリアから遠隔サイトに移動するのに好適である。このような輸送コンテナとしては、限定されないが、トート、保管ドラム、プラスチック内張りファイバーボードボックス等が挙げられる。
【0012】
本発明は、フルオロポリマー分散体を含有するフッ素系界面活性剤を、輸送コンテナ中に配置された吸着剤と接触させることにより、フッ素系界面活性剤含量の低減を達成する。用語「吸着剤」とは、吸収あるいは吸着または他のメカニズムのいずれかを介して、フルオロポリマー分散体からフッ素系界面活性剤を除去する材料を意味する。輸送コンテナに保管されている間に分散体のフッ素系界面活性剤含量を低減させることにより、製造全体のサイクル時間に影響を与えるであろうフッ素系界面活性剤の除去に充てられる作業を製造方法に追加する必要がない。輸送コンテナ内において吸着を達成するための接触時間は、所望の場合には短時間(例えば、2時間)であることができ、または時間がある場合には、6ヶ月以上の長さにまで延長される。好ましくは、接触時間は約1週間〜約6ヶ月、より好ましくは約1週間〜約3ヶ月である。好ましくは、特定の処理工程、装置および吸着剤含量は、通常の保管および輸送期間中に、フッ素系界面活性剤の低減の所望のレベルを達成するために選択される。製造、輸送、および使用の間の時間は、典型的にはフッ素系界面活性剤含量を低減させるのに十分な時間を提供するため、通常より長い製品の在庫での保持に関連する追加的なサイクル時間、在庫費用がかからない。吸着剤の高い利用率を許容する十分な時間の利用可能性のため、用いられる吸着剤の量が最少となりおよびフッ素系界面活性剤除去に必要とされる理論量にせまることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、方法は、輸送コンテナ中での接触工程の間に、フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体または吸着剤のいずれかを、相互に相対的な動きを付与するために揺動させる工程を含む。本発明の一実施形態において、最終使用顧客への運送を含む通常の重合エリアから輸送するための保管エリアへの輸送コンテナの移送の動きは、分散体の吸着剤と相対的な動きを提供するであろう。図示によって示されるように、追加の動きは、コンテナ内の閉込め構造の構成によっておよび/または機械的手段を用いて追加の動きを輸送コンテナ中の分散体に付与することによって、確保されることができる。
【0014】
吸着剤は、分散体から容易に取り除くことができる、イオン交換樹脂ビーズなどのペレットまたはビーズの形態であり得、および好ましい実施形態において、吸着剤は、閉込め構造中に閉込められることが好ましい。
【0015】
本発明は、下記図面を参照することにより、良く説明される。図1は、トートとして称されることの多い、フルオロポリマー分散体のための輸送コンテナ10の外面を図示する。示されたとおり、従来の輸送コンテナと同様に、コンテナは、容器に追加的な保全性を付与する鋼線容器12中に囲まれた、成形プラスチック容器11であって、好ましくは成形ポリプロピレンである。コンテナは、コンテナのリフト、運搬および積み重ねを補助する金属製または木製の下敷支材13上にある。容器の壁は、およそ3/16インチ厚であり、およびコンテナの容積は約275ガロンである。容器は、フルオロポリマー分散体をコンテナに充填するための開口14を上面に有する。充填後、コンテナ開口14には保護キャップ15が嵌められる。容器11の前面下部には、ホース(図示せず)を用いて、フルオロポリマー分散体をコンテナから排出することができる、弁17を備えた吐出口16がある。
【0016】
本発明の輸送コンテナの一実施形態が図2に図示されている。図示は、コンテナの内部を示す、図1の線2−3に沿った切取内部図である。吸着剤21を入れるための閉込め構造であって、具体的には布ポーチ22がコンテナ内に配設されている。この実施形態において用いられる吸着剤は、ポーチ22内に含有された樹脂ビーズの形態である。布ポーチは、多孔性であり、ならびに分散体の浸透を許容しおよびフッ素系界面活性剤の吸着剤上への吸着を可能とする、ポリプロピレンなどの織フィルター織布または不織フィルター織布から形成されることが好ましく、これにより分散体のフッ素系界面活性剤含量を低減する。図示したように、布ポーチは、成形プラスチック容器11のキャップ15に、可撓性プラスチックロッド23の手段によって繋がれている。ロッドは、分散体中にポーチを吊り下げ、およびその柔軟性により、矢印24によって図示されるように、輸送中の輸送コンテナの動きに伴うポーチの動きを可能とする。吸着剤と相対的な分散体の追加の移動は、輸送中のコンテナ中で動く分散体によって提供される。
【0017】
本発明の他の実施形態が図3に示されている。図示は、コンテナの内部を示す、図1の線2−3に沿った切取内部図である。図示されているように、閉込め構造は、好ましくは全体が球状の外側形状を有する、一般に剛性で多孔性の容器である。コンテナ内に配設された閉込め構造は、ステンレス鋼などの金属製のケージ31であって、全体が球形の形状の、吸着剤32が入れられるものである。ケージ構造は、吸着剤をケージ内に閉込めるのに十分に細かいメッシュを有するスクリーンを含み得る。あるいは、図示されているように、金属ケージ中の吸着剤は、上記の布ポーチなどの追加の閉込め構造33に囲まれ得る。ここに図示された球状の閉込め構造は、成形プラスチック容器に取り付けられてはおらず、矢印38で示されているように、輸送コンテナの動きと共にむしろコンテナ内において自由に転がり回る。また、閉込め構造のこの構成は、分散体の布ポーチを有するまたは有さない球形ケージへの浸透を許容し、および吸着剤上へのフッ素系界面活性剤の吸着を可能とし、これにより、分散体のフッ素系界面活性剤含量を低減させる。
【0018】
さらに図3に示されているとおり、フッ素系界面活性剤含有分散体の吸着剤と相対的な動きを促進するためのメカニズムが輸送コンテナに組み込まれている。図示されているのは、開口15を通って、成形容器11の上面でコンテナを貫通するスクリューポンプ34である。スクリューポンプ34は、バレル36中に収装されたスクリュー35と、バレル36を通ってバレル入口41からバレル出口37を出るよう輸送コンテナ中の分散体を動かす、スクリュー35を駆動するためのモータ40とを含む。上部から底部までの攪拌を伴う容器中の分散体の循環がフロー矢印39によって図示されている。これは、この分散体の動きを達成することができる多数の可能な攪拌手段またはポンプ構成の単なる一つの図示である。このようなメカニズムは、より大型の輸送コンテナにおいてパッケージ内での分散体の動きを低速で許容するために特に好ましい。このような循環は、連続的または断続的であることができる。
【0019】
吸着剤と相対的に分散体を動かすためにポンプを用いる本発明の実施形態において、ポンプによって提供される分散体の流れの中、特にバレル出口に隣接して吸着剤を提供することが有利である。この特徴を用いる本発明の好ましい実施形態が、スクリュー方向の逆転によってもたらされる循環パターンの再構成の組み合わせで、図3の図示から再構成された、バレル出口37aおよびバレル入口41aと共に図4に図示されている。上部から底部までの攪拌を伴う容器中の分散体の循環がフロー矢印39aによって図示されている。図4においては、大径有孔チューブ45によって提供される多孔性外面と、ポンプのバレル出口37に接続される小径有孔チューブ46によって提供される中央内部流路43とを備えたカートリッジ42によって、閉込め構造が提供されている。好ましくは、カートリッジの多孔性外面は、全体が円柱形状を有する。ポンプ34は分散体をカートリッジ42に供給する。中央流路への流れが、分散体が吸着剤を通過して多孔性外面から出るよう流れるよう、吸着剤47が中央流路および多孔性外面の間の空隙に閉込められる。多孔性外面からの流れは指向性ではなく拡散することとなるため、所望の場合には、図4に示されるとおり、多孔性外面から出る際に分散体は、収集器すなわち収集器シェル48に集められることができる。収集器シェル48は、次いで、コンテナ中における循環を促進するために、より指向性の流れを提供するよう構成されることができる。図4に図示されているように、カートリッジ42および収集器シェル48は、これらがトート10の開口14を通過するような、およびスクリューポンプ34が開口14を通って挿入される場合にも、追加のまたは拡大された開口がトート10において必要となることが回避されるような寸法とされることが好ましい。
【0020】
このような動作メカニズムの追加の利点は、分散体の穏やかな動きが、沈殿による短い保管寿命という長く放置されている問題を改善することができることである。多数のフルオロポリマー分散体が、フルオロポリマーの比重が水と比して大きいことによる沈殿による問題をこうむってきた。3ヶ月という短い間に、分散体の2〜20%が非再分散性沈殿層を形成することができ、これが収率の損失および廃棄物処分の問題を表している。また、このようなメカニズムは粗大なおよび/または高いアスペクト比の粒子を有する分散体の取り扱いを可能とし、この分散体が、増強された臨界亀裂厚さ(CCT)を有する欠陥のないフィルムの形成に望ましい。パッケージ中における分散体の連続的な、穏やかな動きは、大粒径分散体によって誇大される沈殿欠陥を解決することができると共に、イオン交換などによる吸着において必要とされる物質移動を提供することができる。
【0021】
上記の実施形態の両方において、閉込め構造は、コンテナから取り外し可能であり、吸着剤のコンテナ中の分散体からの分離を可能とする。次いで、フッ素系界面活性剤は、吸着剤から除去することにより回収されることができ、および例えばイオン交換樹脂の場合には、吸着剤は再使用のために再生される。布ポーチは、回収および/または再生の間ならびに続く取り扱いおよび保管の間の吸着剤の取り扱いにおける流動性とおよび補助を直ちに可能とするため、フッ素系界面活性剤の回収および/または吸着剤の再生を、布ポーチに含有された吸着剤で実施することが有利である。
【0022】
(フルオロポリマー)
本発明による処理のためのフッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体は、(エマルジョン重合としても知られている)分散重合により形成される。フルオロポリマー分散体は、モノマーから形成されるポリマー粒子を含み、少なくとも1種のモノマーがフッ素を含有する。粒子は、ノニオン性界面活性剤の存在により得られる相対的コロイド安定性を有する。分散重合生成物が濃縮および/または並びに下記のノニオン性界面活性剤の添加での安定化の後、水性分散体として用いられる。濃縮分散体は、コーティングまたは含浸剤組成物としておよびキャストフィルムの形成に有用である。
【0023】
本発明において用いられる水性分散体のフルオロポリマー成分は、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルエチレンモノマー、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルのポリマーおよびコポリマーの群から独立に選択される。
【0024】
本発明は、分散体のフルオロポリマー成分が、非溶融加工性である変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むPTFEであり得るとき、特に有用である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とは、いかなる顕著なコモノマーが存在することなく単独で重合されたテトラフルオロエチレンを指す。変性PTFEとは、TFEと、得られるポリマーの融点が実質的にPTFEの融点未満に低下されないような低濃度のコモノマーとのコポリマーを指す。このようなコモノマーの濃度は、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満である。変性PTFEは、焼成(融解)中のフィルム形成能力を向上させる、パーフルオロオレフィン、とりわけヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはパーフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)(ここでアルキル基は1〜5個の炭素原子を含有している)などの少量のコモノマー変性剤を含有し、パーフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)およびパーフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)が好ましい。かさ高い大きさの側基を分子に導入するクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、または他のモノマーもまた含まれる。PTFEは、典型的には少なくとも1×10Pa・sの溶融クリープ粘度を有する。このような高い溶融粘度は、PTFEは溶融状態において流動せず、および従って溶融加工性ではないことを示す。PTFEおよび変性PTFEは、多くの場合、分散体の形態で販売されおよび輸送コンテナ中に運搬され、本発明の方法を、このような分散体のフッ素系界面活性剤含量を低減するために直ちに利用することができる。
【0025】
分散体のフルオロポリマー成分は溶融加工性であり得る。溶融加工性とは、ポリマーは溶融状態で加工することができる(すなわち、それらの意図される目的のために有用とされるに十分な強度および靭性を示す、フィルム、ファイバ、およびチューブ等などの付形物品に溶融物から仕上げられる)ことを意味する。このような溶融加工性フルオロポリマーの例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)および少なくとも1種のフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)のコポリマーが挙げられ、コポリマーの融点を実質的にTFEホモポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点より低く(例えば、融点315℃以下に)低減させるのに十分な量でポリマー中に存在する。このようなフルオロポリマーとしては、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のコポリマーが挙げられる。TFEとの好ましいコモノマーは、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)などの3〜8個の炭素原子を有するパーフルオロオレフィン、および/または、直鎖または分岐アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有するパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)である。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するものであり、コポリマーは、数々のPAVEモノマーを用いて形成することができる。好ましいTFEコポリマーとしては、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVE(ここでPAVEはPEVEおよび/またはPPVEである)およびMFA(TFE/PMVE/PAVE(ここでPAVEのアルキル基は少なくとも2個の炭素原子を有する))が挙げられる。溶融加工性コポリマーは、典型的には、ASTM D−1238に準拠して、特定のコポリマーに標準の温度で計測された約1〜100g/10分のメルトフローレートを有するコポリマーを提供するために、コポリマーにある量のコモノマーを組み込むことにより形成される。典型的には、溶融粘度は、米国特許公報(特許文献4)に記載の通り改変されたASTM D−1238の手法により、372℃で計測された、10Pas〜約10Pas、好ましくは10〜約10Pasの範囲となる。追加の溶融加工性フルオロポリマーは、エチレンまたはプロピレンとTFEまたはCTFE、とりわけETFE、ECTFEおよびPCTFEとのコポリマーである。また有用なポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のフィルム形成性ポリマーおよびフッ化ビニリデンならびにフッ化ポリビニル(PVF)のコポリマーおよびフッ化ビニルのコポリマーである。
【0026】
好ましいポリマーPTFEの水性分散重合の通例の方法は、TFE蒸気が、弱酸、フッ素系界面活性剤、パラフィンワックスおよび脱イオン水を含有する加熱されたリアクタに供給される方法である。ラジカル開始剤溶液が添加され、重合が進行するに伴って、追加のTFEが圧力を維持するために添加される。反応の発熱は、リアクタジャケット中の循環冷却水によって除去される。数時間後、供給を停止し、リアクタを通気させおよび窒素でパージし、および容器中の粗分散体を冷却容器に移送した。パラフィンワックスを除去し、およびポリマー分散体を、微細な粉末製造される凝塊作業、または本発明の実施に特に有用である分散体を製造する分散体濃縮作業のいずれかに移送する。分散体濃縮作業においては、公称35重量%から約60重量%に固体を増加させるために、分散体は、米国特許公報(特許文献5)においてマークス(Marks)らに、および、米国特許公報(特許文献6)(ホームズ(Holmes))に教示されるように、ノニオン性界面活性剤の使用により濃縮される。分散体は、次いで輸送コンテナに移送される。
【0027】
溶融加工性TFEコポリマーの分散重合は、1種または複数のコモノマーが初期にバッチに添加されおよび/または重合中に導入されること以外は同様である。さらに、炭化水素などのテロゲンが、分子量を制御して意図された目的のためのポリマーの所望のメルトフローを実現するために用いられる。PTFE分散体について用いられたものと同一の分散体濃縮作業がTFEコポリマー分散体についても用いられることができる。
【0028】
15〜70重量%、好ましくは25〜65重量%の固体含量のフッ素系界面活性剤含有フルオロポリマー分散体は、本発明によって有利に処理される。従来技術とは対照的に、本発明は、70%という多さの固体含量の高濃縮分散体を直ちに処理することが可能であることにより、特に有用である。これらの組成物のより高密度および低下された流速は、利用可能な時間中においてフッ素系界面活性剤含量の適切な低減を達成するのに高い攪拌または流速が必要である攪拌タンク、または抽出塔中においては問題となるにもかかわらず、このような要件は、吸着剤が輸送コンテナ中で濃縮分散体と接触される場合には軽微な要件である。フッ素系界面活性剤の低減を輸送コンテナ中で実施することにより、より粘性の液体についても、吸着剤および分散体の間における十分な接触時間が利用可能であり、および高攪拌または流速は必要ない。
【0029】
本発明は、フッ素系界面活性剤含有分散体のフッ素系界面活性剤含量の、所定のレベル、好ましくは約300ppm以下のレベル、より好ましくは約100ppm以下の所定のレベル、特に約50ppm以下の所定のレベルへの低減を可能とする。保管および輸送中の予期される接触時間に基づいて、吸着剤の量が、フッ素系界面活性剤含量を所望の所定のレベル以下に低減させるために選択される。
【0030】
(フッ素系界面活性剤)
この方法において低減されるべきフッ素系界面活性剤含有分散体中のフッ素系界面活性剤は、水溶性であり、およびイオン性親水性基および疎水性部分を含む、非テロゲン性、イオン化性分散剤である。好ましくは、疎水性部分は、少なくとも6個の炭素原子を含有する脂肪族フルオロアルキル基であって、可溶化基に最も近く、少なくとも2個のフッ素原子と、追加で水素またはフッ素からなる原子を有する端末炭素原子とを有している、最大でそのうちの1つを除くすべてである。これらのフッ素系界面活性剤は、連鎖移動反応せず、望ましくない短い鎖長のポリマーの形成を抑止するので、重合助剤として分散に用いられる。好適なフッ素系界面活性剤の大量のリストが、米国特許公報(特許文献1)(ベリー(Berry))に開示されている。好ましくは、フッ素系界面活性剤は、6〜10個の炭素原子を有する過フッ素化カルボン酸であり、および典型的には塩の形態で用いられる。好適なフッ素系界面活性剤は、パーフルオロカルボン酸アンモニウム、例えば、パーフルオロカプリル酸アンモニウムまたはパーフルオロオクタン酸アンモニウムである。フッ素系界面活性剤は、通常、形成されたポリマーの量について0.02〜1重量%の量で存在する。
【0031】
(吸着剤)
上で定義したとおり、用語吸着剤とは、吸収または吸着または他のメカニズムのいずれかを介して、フルオロポリマー分散体からフッ素系界面活性剤を除去する材料を意味する。可能な吸着剤の例としては、炭素粒子およびイオン交換樹脂が挙げられる。本発明の実施については、吸着剤は、好ましくはイオン交換樹脂であり、より好ましくはアニオン性であり、および弱塩基性または強塩基性のいずれでもあることができる。好適な弱塩基性アニオン性交換樹脂は、アンモニウム塩の形態で、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、またはヒドロキシアミノ基を含有する。好適な強塩基性アニオン性交換樹脂は、第四級アンモニウム基を含有する。強塩基イオン交換樹脂は、媒体のpHに対する感度が低いという利益を有する。ヒドロキシル対イオンの形態のイオン交換樹脂が好ましい。塩化物、サルフェート、および硝酸塩を備えるイオン交換樹脂もまたフッ素系界面活性剤の除去に用いられてきている。好適な市販されているイオン交換樹脂の例としては:ダウエックス(Dowex)550A、USフィルター(US Filter)A464−OH、USフィルター(US Filter)A244−OH、シブロン(Sybron)M−500−OH、シブロン(Sybron)ASB1−OH、ピューロライト(Purolite)A−500−OH、伊藤忠TSA1200、アンバーライト(Amberlite)IR 402が挙げられる。
【0032】
アニオン性交換樹脂に吸着された過フッ素化カルボン酸などのフッ素系界面活性剤の溶離が、米国特許公報(特許文献7)においてセキ(Seki)によって例証されているようにアンモニア溶液の使用によって、米国特許公報(特許文献3)においてクール(Kuhls)によって例証されているように希無機酸と有機溶剤との混合物(例えば、HCl/エタノール)によって、または吸着されたフッ素化カルボン酸を溶出液に移送させる硫酸および硝酸などの強い無機酸によって、容易に達成される。溶出液中の高濃度のフッ素系界面活性剤は、純粋な酸の形態でまたは塩の形態で、酸性沈着、塩析、濃縮等などの一般的な手法によって、容易に回収されることができる。
【0033】
本発明の利用のさらに好ましい態様においては、顧客は輸送コンテナを、吸着剤が、輸送コンテナから取り出されおよび高価なフッ素系界面活性剤の回収の処置が施されて、吸着剤が再生されるポリマー製造業者またはリサイクル業者に戻すことができる。回収されたフッ素系界面活性剤は、追加のポリマー製造にリサイクルすることができ、およびイオン交換樹脂は、再利用のために再生されることができる。吸着剤の含有に布ポーチが用いられる場合、布ポーチは、回収および/または再生の間、ならびにこれに続く取り扱いおよび保管の間の吸着剤の取り扱いにおける流れおよび補助を容易に可能とするため、布ポーチに含有された吸着剤でフッ素系界面活性剤の回収および/または吸着剤の再生を行うことは有利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】水性フルオロポリマー分散体のための輸送コンテナの斜視図である。
【図2】吸着剤を含有しコンテナ内に配設された閉込め構造を示す、水性フルオロポリマー分散体のための輸送コンテナの切取内部図である。
【図3】吸着剤を含有しコンテナ内に配設された他の閉込め構造および分散体を閉込め構造と相対的に揺動させるメカニズムを示す、水性フルオロポリマー分散体のための輸送コンテナの切取内部図である。
【図4】さらに吸着剤を含有しコンテナ内に配設された他の閉込め構造および分散体を閉込め構造と相対的に揺動させるメカニズムを示す、水性フルオロポリマー分散体のための輸送コンテナの切取内部図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体のフッ素系界面活性剤含量の低減方法であって、
輸送コンテナに前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体を充填する工程と、
前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体をフッ素系界面活性剤吸着剤に、前記輸送コンテナ中で接触させてフッ素系界面活性剤含量を低減する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記吸着剤がイオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂がアニオン性交換樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体に接触される前記吸着剤の量が、フッ素系界面活性剤含量を所定のレベル以下に低減するよう選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記所定のレベルが約300ppm以下であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記所定のレベルが約100ppm以下であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記所定のレベルが約50ppm以下であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体または前記吸着剤のいずれかを揺動させて、前記接触工程の間に相互に相対的な動きを付与する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記接触工程の間、前記吸着剤は閉込められていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着剤は、前記分散体と前記吸着剤との前記接触を許容する閉込め構造によって閉込められていることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記閉込め構造は布ポーチを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記閉込め構造は、一般に剛性で多孔性の容器を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記接触工程の間、前記閉込め構造を分散体と相対的に揺動させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記接触工程の間、前記分散体を前記閉込め構造と相対的に揺動させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体を前記閉込め構造と相対的に揺動させる前記工程は、ポンプを用いて行われることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記閉込め構造は吸着剤を含有するカートリッジであり、前記ポンプは分散体を前記カートリッジに供給することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カートリッジは前記ポンプからの分散体を受ける中央内部流路を有し、前記吸着剤は、前記ポンプによって前記中央流路に供給される分散体が吸着剤を通って流れるよう、前記中央内部流路を囲っていることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カートリッジは、フッ素系界面活性剤含量が低減された分散体を受け、および分散体を前記輸送コンテナに戻して前記コンテナ内での分散体の循環を起こす収集器をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分散体のフッ素系界面活性剤含量が低減した後、前記吸着剤を前記分散体から分離する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記フルオロポリマー分散体はノニオン性界面活性剤を含有する濃縮フルオロポリマー分散体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記分散体は、約15〜約70重量パーセントのフルオロポリマー固体濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体とフッ素系界面活性剤吸着剤との前記接触工程は、約1週間〜約6ヶ月の接触時間行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体のフッ素系界面活性剤含量を低減するためのシステムであって、
前記分散体およびフッ素系界面活性剤吸着剤のための輸送コンテナを含み、前記分散体を接触させてフッ素系界面活性剤含量を低減するために前記吸着剤が前記コンテナ中に配置されることを特徴とするシステム。
【請求項24】
前記吸着剤はイオン交換樹脂であることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記イオン交換樹脂はアニオン性交換樹脂であることを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
相互に相対的な動きを付与するために、前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体または前記吸着剤のいずれかを揺動させるメカニズムをさらに含むことを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項27】
前記吸着剤を閉込めるための閉込め構造をさらに含み、前記閉込め構造は、前記分散体と前記吸着剤との前記接触を許容することを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
前記閉込め構造は布ポーチを含むことを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記閉込め構造は、一般に剛性で多孔性の容器を含むことを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記閉込め構造を前記分散体と相対的に揺動させるメカニズムをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記分散体を前記閉込め構造と相対的に揺動させるメカニズムをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
前記フッ素系界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体を前記閉込め構造と相対的に揺動させる前記メカニズムがポンプであることを特徴とする請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記閉込め構造は吸着剤を含有するカートリッジであり、前記ポンプは分散体を前記カートリッジに供給することを特徴とする請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記カートリッジは前記ポンプからの分散体を受ける中央内部流路を有し、前記吸着剤は、前記ポンプによって前記中央流路に供給される分散体が吸着剤を通って流れるよう、前記中央内部流路を囲っていることを特徴とする請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記カートリッジは、フッ素系界面活性剤含量が低減された分散体を受け、および分散体を前記輸送コンテナに戻して前記コンテナ内での分散体の循環を起こす収集器をさらに含むことを特徴とする請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記閉込め構造は、前記吸着剤を前記コンテナ中の前記分散体から分離するために前記システムから取り外し可能であることを特徴とする請求項25に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−510036(P2008−510036A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525769(P2007−525769)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/028443
【国際公開番号】WO2006/110160
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】