説明

水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法

【課題】ABSやナイロンなどのプラスチック基材への付着性、上塗り塗膜との付着性、耐水性等に優れた、導電性を有するプライマー塗膜を形成できる水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】(A)不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散せしめてなる変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)アクリル樹脂、及び(C)導電性顔料を含有する水性プライマー組成物であって、該アクリル樹脂(B)がメチル(メタ)アクリレートを55〜90重量%、エチル(メタ)アクリレートを10〜30重量%及びその他の共重合性不飽和モノマーを1〜30重量%含むモノマー混合物を乳化重合して得られるアクリルエマルションであり、且つ該成分(A)/成分(B)の固形分重量比が50/50〜85/15の範囲内であることを特徴とする水性プライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ABSやナイロンなどのプラスチック基材への付着性、上塗り塗膜との付着性、耐水性等に優れたプライマー塗膜を形成できる水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車外板、バンバーなどの部材として、金属に代ってエチレン、プロピレンなどのオレフィンを構成単位とするポリオレフィンの成型品が多く使用されている。そして、これらの成型品には、しばしば、ポリイソシアネート化合物を含有する2液型上塗り塗料が塗装されるが、その塗装にあたり、上塗り塗膜と成型品との付着性を向上させるために、通常、塩素化ポリオレフィンを含有するプライマーがあらかじめ塗装される。一方、ガソリンタンク、ドア取っ手、エンジンカバーなどの部品にはポリカーボネート、ABS樹脂、ナイロンなどのプラスチック素材が使用されており、これらのプラスチック製品にも美粧性及び保護の観点から塗料を塗装することが行われるが、特にナイロン製部品に対して付着性のすぐれた塗料が無いという問題があった。
【0003】
これに対し本出願人は、特許文献1においてナイロン製品に対しても付着性にすぐれた塗膜を形成できる塗料組成物として、メチルメタクリレートを70〜95重量%含有する重合性単量体成分を重合してなるアクリル樹脂、メチルメタクリレートの含有率が50重量%以下である重合性単量体成分を重合してなるアクリル樹脂及び特定のポリイソシアネート化合物を含む塗料組成物を提案した。しかしながらこの塗料組成物は溶剤系の樹脂を使用するものであり、近年の環境負荷の問題や残留溶剤臭の問題から、水性の塗料組成物が要望されつつある。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2では、同一粒子内に特定のオレフィン系重合体と特定のアクリル系重合体を含有し、該粒子が水に分散したエマルション組成物を含有する、ポリオレフィン基材とナイロン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリエチレンテレフタレート等の極性樹脂基材の両者に対して良好な付着性を有する塗膜が形成できる水性塗料組成物が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−253021号公報
【特許文献2】特開2000−281960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上塗り塗料の静電塗装を可能にするために水性プライマーに導電性顔料を配合すると、上記特許文献2の手法では導電性顔料の分散が難しく、特に溶剤系のベースコート塗料を塗り重ねる場合に導電性と耐水性、付着性等が両立する塗膜を形成し難いという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、ABSやナイロンなどのプラスチック基材への付着性、上塗り塗膜との付着性、耐水性等に優れた、導電性を有するプライマー塗膜を形成できる水性プライマー組成物、及びこの組成物を用いた塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(A)不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散せしめてなる変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)アクリル樹脂、及び(C)導電性顔料を含有する水性プライマー組成物であって、該アクリル樹脂(B)がメチル(メタ)アクリレートを55〜90重量%、エチル(メタ)アクリレートを10〜30重量%及びその他の共重合性不飽和モノマーを1〜30重量%含むモノマー混合物を乳化重合して得られるアクリルエマルションであり、且つ該成分(A)/成分(B)の固形分重量比が50/50〜85/15の範囲内であることを特徴とする水性プライマー組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、変性ポリオレフィンの水性分散体と特定モノマー組成のアクリルエマルションを特定割合で配合することによって、ABSやナイロンなどのプラスチック基材への付着性、上塗り塗膜との付着性、耐水性などに優れた、導電性を有するプライマー塗膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で使用する変性ポリオレフィンの水分散体(A)は、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散してなるものである。
【0011】
不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数が2〜10のオレフィン類から選ばれる少なくとも1種のオレフィンを(共)重合せしめることにより得られるポリオレフィンを、さらに、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸又はこれらの酸無水物を用いて、それ自体既知の方法に従ってグラフトすることにより得られるものであり、特に、マレイン酸又はその酸無水物によって変性されたものが好適である。該不飽和カルボン酸又はその酸無水物によるグラフト量は、厳密に制限されるものではなく、形成塗膜に望まれる物性などに応じて変えることができるが、ポリオレフィンの固形分重量に基いて、一般に1〜20重量%、好ましくは1.5〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%の範囲内が適当である。
【0012】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)に使用されるポリオレフィンとしては、特に、得られるポリオレフィンの分子量分布が狭く、ランダム共重合性等にも優れているなどの観点から、重合触媒としてシングルサイト触媒を用いて製造されたものが好適である。シングルサイト触媒は、活性点が同種(シングルサイト)のものであり、該シングルサイト触媒の中でも特にメタロセン系触媒が好ましく、該メタロセン系触媒は、通常、共役五員環配位子を少なくとも一個有し且つ周期律表の4〜6族又は8族の遷移金属化合物や3族の希土類遷移金属を含有する化合物であるメタロセン(ビス(シクロペンタジエニル)金属錯体及びその誘導体)と、これを活性化することができるアルミノキサン等の助触媒、さらにトリメチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を組み合わせて得られるものである。
【0013】
該ポリオレフィンは、それ自体既知の方法で製造することができ、例えば、プロピレンやエチレンなどのオレフィンと水素を反応容器に供給しながら連続的にアルキルアルミニウムとメタロセン系触媒を添加することにより製造することができる。
【0014】
また、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)は、必要に応じて、さらにアクリル変性されていてもよい。該アクリル変性に使用する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルなどのアクリル系モノマー、さらにスチレンなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を、そして「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0016】
上記アクリル変性の方法としては、例えば、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えば(メタ)アクリル酸グリシジルなどをまず反応させて重合性不飽和基を導入し、次いで少なくとも1種の他のモノマーを、重合性不飽和基が導入された不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンと共重合させるなどの方法が挙げられる。アクリル変性する場合の上記重合性不飽和モノマーの使用量は、他成分との相溶性や形成塗膜の付着性などの観点から、得られる変性ポリオレフィン(a)の固形分重量に基いて、30重量%以下、特に0.1〜20重量%、さらに特に0.15〜15重量%の範囲内が望ましい。
【0017】
また、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)は、90℃以下の低温焼付による厚膜形成時の耐水性、耐湿性、耐ガソホール性などの観点から、必要に応じて、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物によって変性されていてもよい。ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物におけるポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロック鎖などを挙げることができる。
【0018】
ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物は、通常400〜3,000、好ましくは500〜2,000の範囲内の数平均分子量を有することが好適である。該数平均分子量が400より小さいと、親水基としての効果を十分発揮することができず、また、塗膜性能(特に耐水性)に悪影響を及ぼす可能性があり、一方、3,000より大きいと、室温において固形化し溶解性が悪くなり、取り扱いにくくなる。
【0019】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物による変性は、例えば、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンに、水酸基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(i)を反応させるか、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンが上述のようにアクリル変性される場合には、その際に重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)を反応させることにより行うことができる。
【0020】
上記水酸基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(i)としては、例えば、ポリオキシエチレンステアリルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどのポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミンのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド重合体付加物などのポリオキシアルキレンアルキルアミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンと水酸基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(i)との反応は、例えば、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンを80〜200℃の温度で加熱溶融し、そこへ化合物(i)を添加し、必要に応じて塩基性物質などを添加し加熱することにより行うことができる。その際の化合物(i)の使用割合は、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンの固形分100重量部あたり、通常0.5〜50重量部、特に0.5〜25重量部の範囲内が望ましい。
【0021】
上記重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)としては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテルマレイン酸エステル、アリル基含有ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンと重合性不飽和基を片末端に有し且つポリオキシアルキレン鎖を有する化合物(ii)との反応は、例えば、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンを80〜200℃の温度で加熱溶融し、上記アクリル変性について述べたと同様に、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン中のカルボキシル基に対して反応性を有する、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどを添加し且つ必要に応じて重合禁止剤や塩基性物質等を添加し加熱して変性ポリオレフィンに重合性不飽和基をまず導入し、次いでそこへ化合物(ii)を添加し、必要に応じて重合開始剤等を添加し加熱することにより行うことができる。化合物(ii)の使用割合は、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィンの固形分100重量部あたり、通常0.5〜50重量部、特に0.5〜25重量部の範囲内が望ましい。
【0022】
また、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)は、必要に応じて、さらに塩素化されていてもよい。ポリオレフィンの塩素化は、例えば、ポリオレフィン又はその変性物の有機溶剤溶液又は分散液に塩素ガスを吹き込むことによって行うことができ、反応温度は50〜120℃の範囲内とすることができる。ポリオレフィンの塩素化物(固形分)中の塩素含有率は、ポリオレフィンの塩素化物に望まれる物性などに応じて変えることができるが、形成塗膜の付着性などの観点から、ポリオレフィンの塩素化物の重量に基いて、一般に35重量%以下、特に10〜30重量%、さらに特に12〜25重量%の範囲内とすることが望ましい。
【0023】
上記不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)に使用されるポリオレフィンは、特に、プロピレンを重合単位として含有するものが好適であり、該不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)におけるプロピレンの重量割合は、他成分との相溶性や形成塗膜の付着性の観点から、通常0.5〜0.99、特に0.7〜0.95の範囲内にあることが好適である。
【0024】
上記の如くして得られる不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)は、120℃以下、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃の範囲内の融点及び30,000〜180,000、好ましくは50,000〜150,000、さらに好ましくは70,000〜120,000の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有することができる。該変性ポリオレフィンの融点及び重量平均分子量がこれらの範囲から逸脱すると、他成分との相溶性、形成塗膜のポリオレフィン基材や上塗り塗膜層との層間付着性などが低下する可能性があるので好ましくない。
【0025】
ここで、融点は、示差走査熱容量測定装置「DSC−5200」(セイコー電子工業社製、商品名)を使用し、変性ポリオレフィン20mgを−100℃から150℃まで昇温速度10℃/分にて加熱し、その熱量を測定することにより得られるものである。変性ポリオレフィン(a)の融点の調整は、ポリオレフィンの組成、特にα−オレフィンモノマー量を変化させることにより行なうことができる。
【0026】
また、上記変性ポリオレフィン(a)の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値であり、「HLC/GPC150C」(Water社製、商品名、60cm×1)により、カラム温度135℃、溶媒としてo−ジクロロベンゼンを使用し、流量1.0ml/minで測定したものである。注入試料は、o−ジクロロベンゼン3.4mlに対しポリオレフィン5mgの溶液濃度となるように140℃で1〜3時間溶解して調製する。なお、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「GMHHR −H(S)HT」(東ソー(株)社製、商品名)を挙げることができる。
【0027】
以上に述べた如くして得られる変性ポリオレフィン樹脂の水性分散体(A)は、例えば、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散することによって得ることができ、その際、必要に応じて、不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)中のカルボキシル基の一部もしくは全部をアミン化合物で中和するか及び/又は乳化剤を用いて水分散することができる。上記変性ポリオレフィン(a)がポリオキシアルキレン鎖を有する場合には、該アミン化合物や乳化剤を使用せず又はそれらの少量の使用のみで変性ポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散することが可能である。また上記変性ポリオレフィン(a)にエーテル系やアルコール系の溶剤を加え、さらに必要に応じてアミン化合物を加えてから水分散することもできる。
【0028】
上記アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの3級アミン;ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、モルホリンなどの2級アミン;プロピルアミン、エタノールアミンなどの1級アミンなどが挙げられる。エーテル系やアルコール系の溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが挙げられる。
【0029】
上記アミン化合物を使用する場合のその使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)中のカルボキシル基に対して通常0.1〜1.0モル当量の範囲内とすることが望ましい。
【0030】
上記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のノニオン系乳化剤;アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸などのナトリウム塩やアンモニウム塩等のアニオン系乳化剤などが挙げられ、さらに、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基やポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤なども使用することができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。上記乳化剤の使用量は、上記不飽和カルボン酸又は酸無水物変性ポリオレフィン(a)の固形分100重量部に対して通常30重量部以下、特に0.5〜25重量部の範囲内とすることが望ましい。
【0031】
本発明で使用される該アクリル樹脂(B)は、メチル(メタ)アクリレートを55〜90重量%、好ましくは60〜80重量%、エチル(メタ)アクリレートを10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%及びその他の共重合性不飽和モノマー1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%含むモノマー混合物を乳化重合して得られるアクリルエマルションである。
【0032】
モノマーの使用割合が上記範囲を外れると、得られる塗膜のABSやナイロンなどのプラスチック基材への付着性や耐水性等が低下するので好ましくない。
【0033】
上記その他の共重合性不飽和モノマーとしては、例えばn−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートなどのC〜C24直鎖状又は環状アルキル(メタ)アクリレートモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和モノマー;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0034】
上記乳化重合は、通常、水及び乳化剤の存在下、ラジカル重合開始剤を用いて行うことができる。乳化重合の際の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤により異なるが、通常60〜90℃、反応時間は通常5〜10時間とすることができる。
【0035】
乳化重合によって得られるアクリルエマルションは、水及び乳化剤の存在下にモノマー混合物を用いて多段階で乳化重合して得られる多層構造粒子状のエマルションであってもよい。
【0036】
上記アクリル樹脂(B)は、20〜80℃、好ましくは40〜70℃のガラス転移温度を有するものであることが形成塗膜の硬度等の点から望ましい。また上記アクリル樹脂(B)は、1〜30mgKOH/g、好ましくは3〜15mgKOH/gの酸価、1〜100mgKOH/g、好ましくは10〜40mgKOH/gの水酸基価を有するものであることが塗料の安定性等の点から望ましい。
【0037】
本発明では、形成塗膜の付着性、耐水性などの観点から、上記成分(A)/成分(B)の固形分重量比は50/50〜85/15、好ましくは60/40〜80/20の範囲である。この範囲を外れると、得られる塗膜のABSやナイロンなどのプラスチック基材への付着性等が低下するので好ましくない。
【0038】
本発明で使用される導電性顔料(C)としては、形成される塗膜に導電性を付与することができるものであれば特に制限はなく、粒子状、フレーク状、ファイバー(ウィスカー含む)状のいずれの形状のものでも使用することができる。具体的には、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンマイクロコイルなどの導電性カーボン;銀、ニッケル、銅、グラファイト、アルミニウムなどの金属粉が挙げられ、さらに、アンチモンがドープされた酸化錫、リンがドープされた酸化錫、酸化錫/アンチモンで表面被覆された針状酸化チタン、酸化アンチモン、アンチモン酸亜鉛、インジウム錫オキシド、カーボンやグラファイトのウィスカー表面に酸化錫などを被覆した顔料;フレーク状のマイカ表面に酸化錫やアンチモンドープ酸化錫、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、リンドープ酸化錫及び酸化ニッケルからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電性金属酸化物を被覆した顔料;二酸化チタン粒子表面に酸化錫及びリンを含む導電性を有する顔料などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。これらのうち特に導電カーボンが好適に使用できる。
【0039】
上記導電性顔料(C)の含有量は、導電性付与及び形成塗膜の付着性、耐水性などの観点から、水性プライマー組成物中の成分(A)及び(B)の合計固形分100重量部に対して通常1〜300重量部、特に3〜250重量部、さらに特に5〜180重量部の範囲内であることが望ましい。特に導電性カーボンを使用する場合には、その使用量は組成物中の成分(A)及び(B)の合計固形分100重量部に対して、通常1〜30重量部、特に3〜25重量部、さらに特に5〜25重量部の範囲内であることが望ましい。
【0040】
本発明組成物は、さらに必要に応じて、上記導電性顔料以外の顔料、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アルミペースト、アゾ系、フタロシアニン系などの着色顔料;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜鉛華(酸化亜鉛)などの体質顔料を含有することができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0041】
本発明の水性プライマー組成物は、例えば、以上に述べた変性ポリオレフィンの水分散体(A)、アクリル樹脂(B)及び導電性顔料(C)を常法に従い混合し、適宜水性媒体、例えば脱イオン水で希釈することにより調製することができる。
【0042】
本発明の水性プライマー組成物は、上記導電性顔料(C)の分散の点から、さらに必要に応じてイオン性官能基を含有するアクリル樹脂(D)を含有することができる。
【0043】
イオン性官能基を含有するアクリル樹脂(D)としては、イオン性官能基を有するものであれば特に制限はなく、それ自体既知のアクリル樹脂を使用することができるが、特に、イオン性官能基が、3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、スルホン酸基、リン酸基、及び4級アンモニウム塩をカウンターイオンとして有するカルボン酸塩基より選ばれる少なくとも1種の基であることが好適である。
【0044】
かかるアクリル樹脂(D)は、通常、イオン性官能基含有重合性不飽和モノマーとその他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合することによって得ることができる。
【0045】
イオン性官能基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどの3級アミノ基含有重合性不飽和モノマー;2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェートなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム塩;メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムブロマイドなどの(メタ)アクリロイルアミノアルキルトリアルキルアンモニウム塩;テトラブチルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのテトラアルキル(メタ)アクリレート;トリメチルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートなどのトリアルキルベンジルアンモニウム(メタ)アクリレートのような4級アンモニウム塩基含有重合性不飽和モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などの(メタ)アクリルアミド−アルカンスルホン酸;2−スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホアルキル(メタ)アクリレートのようなスルホン酸基含有重合性不飽和モノマー;2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アリロイロキシエチルアシッドホスフェート、モノアルキル(例えばブチル、デシル、ラウリル、ステアリルなど)リン酸にグリシジルメタクリレートを付加させることにより得られる重合性不飽和モノマー、ベンジルリン酸にグリシジルメタクリレートを付加させることにより得られる重合性不飽和モノマーなどのリン酸基含有重合性不飽和モノマー;4級アンモニウム塩化カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー等が挙げられる。これらのモノマーはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0046】
その他のエチレン性不飽和モノマーは、上記モノマーと共重合可能な、上記モノマー以外の重合性不飽和モノマーであって、アクリル樹脂(D)に望まれる特性などに応じてそれ自体既知のものの中から適宜選択して使用することができる。該その他のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレートなどのC〜C24直鎖状又は環状アルキル(メタ)アクリレートモノマー;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有重合性不飽和モノマー;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド;3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−ブチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタンなどのオキセタン環含有(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニルなどを挙げることができる。これらの重合性不飽和モノマーはそれぞれ単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0047】
本発明では、水分散性や導電性などの観点から、イオン性官能基を含有するアクリル樹脂(D)は、さらに、ポリオキシアルキレン鎖を含有することが望ましい。該ポリオキシアルキレン鎖の導入は、例えば、アクリル樹脂(D)の製造時に、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーを、上記イオン性官能基含有重合性不飽和モノマー及びその他のエチレン性不飽和モノマーと共重合することによって行うことができる。
【0048】
上記ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、テトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラピロプレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中、特に、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが好適である。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合わせて使用することができる。
【0049】
アクリル樹脂(D)の製造に際して、イオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマー、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマー及びその他のエチレン性不飽和モノマーのそれぞれの使用割合は、顔料分散性と導電性などの観点から、イオン性官能基を含有する重合性不飽和モノマーは一般に0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、ポリオキシアルキレン鎖を有する重合性不飽和モノマーは一般に10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%、そしてその他のエチレン性不飽和モノマーは一般に50〜89.5重量%、好ましくは60〜84重量%の範囲内が適当である。これらのモノマーの共重合は、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法などの方法により行なうことができるが、なかでも溶液重合法が好適である。
【0050】
アクリル樹脂(D)は約5,000〜300,000、好ましくは7,500〜150,000、さらに好ましくは10,000〜50,000範囲内の重量平均分子量を有することが適当である。かかるアクリル樹脂(D)の重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算したときの値である。ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ装置としては、「HLC8120GPC」(東ソー(株)社製、商品名)を使用することができ、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィに用いるカラムとしては、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を使用することができる。
【0051】
アクリル樹脂(D)は、必要に応じて、中和剤を用いて中和して水溶化ないし水分散化することができる。
【0052】
本発明では、形成塗膜の付着性、耐水性、導電性などの観点から、アクリル樹脂(D)の配合量は、組成物中の全樹脂固形分重量を基準にして、5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲内であることが望ましい。
【0053】
本発明の水性プライマー組成物には、さらに必要に応じて、上記以外の水溶性もしくは水分散性の樹脂を配合することもでき、該水溶性もしくは水分散性の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(B)やアクリル樹脂(D)以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等などが挙げられる。本発明の水性プライマー組成物には、さらに必要に応じて、架橋剤を含有せしめることもできる。該架橋剤としては、通常、アミノ樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0054】
本発明の水性プライマー組成物には、さらに必要に応じて、硬化触媒、レオロジーコントロール剤、消泡剤、有機溶剤などの塗料用添加剤等を適宜含有することができる。
【0055】
本発明の水性プライマー組成物は、プラスチック基材に塗装される。プラスチック基材としては、例えばポリオレフィン、ポリカーボネート、ABS、ナイロン、ウレタン樹脂、ポリアミド、これらのアロイなどが挙げられ、特にABS、ナイロン及びこれらのアロイが好適である。これらのプラスチック基材面は、本発明の水性プライマー組成物の塗装に先立ち、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理などを適宜行っておくことができる。
【0056】
本発明の水性プライマー組成物の塗装は、被塗物に対し、通常、乾燥膜厚で1〜30μm、好ましくは3〜15μmの範囲内となるように、例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装、浸漬塗装、刷毛などを用いて行なうことができる。該水性プライマー組成物の塗装後、得られる塗膜面を、必要に応じて、室温で1〜60分間セッティングし又は40〜80℃程度の温度で1〜60分間予備加熱することができ、あるいは約50〜約140℃、好ましくは約60〜約120℃の温度で20〜40分間程度加熱して硬化させることができる。
【0057】
上記の如くして本発明の水性プライマー組成物が塗装された塗面には、上塗り塗料を塗装することができる。上塗り塗料としては、着色塗料を単独で用いて塗装してもよいし、或いは該着色塗料をベース塗料として用いてベース塗料及びクリヤー塗料を順次塗装してもよい。
【0058】
上記着色ベース塗料としては、通常、有機溶剤及び/又は水を主たる溶媒とし、着色顔料、光輝顔料、染料などの着色成分、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分を主に含有するものを使用することができる。
【0059】
上記着色ベース塗料に使用される基体樹脂としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、シラノール基のような架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂などの樹脂を挙げることができる。また、架橋剤としては、これらの官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂等のアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリカルボン酸などを挙げることができる。
【0060】
上記着色ベース塗料は、さらに必要に応じて、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、塗面調製剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックス、防腐剤などの塗料用添加剤を適宜含有することができる。
【0061】
上記着色ベース塗料は、通常、乾燥膜厚で5〜50μm、好ましくは10〜25μmの範囲内となるように静電塗装し、得られる塗膜面を、必要に応じて、室温で1〜60分間セッティングしたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱することができ、あるいは約50〜140℃、好ましくは約60〜120℃程度の温度で20〜40分間加熱して硬化させることができる。
【0062】
上記クリヤー塗料としては、通常、基体樹脂、架橋剤などの樹脂成分、及び有機溶剤や水などを主に含有し、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、塗面調整剤、レオロジーコントロール剤、酸化防止剤、消泡剤、ワックスなどの塗料用添加剤を配合してなる有機溶剤系又は水系の熱硬化性塗料であって、クリヤー塗膜を透して下層塗膜を視認できる程度の透明性を有するものを使用することができる。
【0063】
上記基体樹脂としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの少なくとも1種の架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などの樹脂が挙げられ、特に、水酸基含有アクリル樹脂が好適である。架橋剤としては、上記の官能基と反応しうるメラミン樹脂、尿素樹脂、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物などが挙げられ、特に、ブロックイソシアネート化合物が好適である。
【0064】
上記クリヤー塗料は、乾燥膜厚で10〜50μm、好ましくは15〜40μmの範囲内となるように静電塗装し、得られる塗膜を、必要に応じて、室温で1〜60分間セッティングしたり、約40〜80℃程度で1〜60分間予備加熱した後、約50〜140℃、好ましくは約60〜120℃程度の温度で20〜40分間加熱して硬化させることができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「重量部」及び「重量%」を示す。
【0066】
アクリルエマルション(B−1)の製造
メチルメタクリレート70部、エチルアクリレート20部、n−ブチルメタクリレート3.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、メタクリル酸1.5部、60%ポリオキシエチレンアルキルベンゼンスルホン酸アンモニウム(商品名「Newcol 562SF」、日本乳化剤社製、界面活性剤)1.2部及び脱イオン水94.3部を混合し、乳化物aを得た。
【0067】
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に、脱イオン水144.5部及び「Newcol 562SF」1.2部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いでその中に乳化物aの内の1%と3%過硫酸アンモニウム水溶液5.2部を投入し80℃で15分間保持した。その後、乳化物aの残りを3時間かけてフラスコに滴下し、滴下終了後1時間熟成した後、1.5%ジエチルアミノエタノール水溶液1.5部をフラスコに徐々に加えながら30℃まで冷却し、平均粒子径100nm、固形分30%のアクリルエマルション(B−1)を得た。該アクリル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g、酸価は10mgKOH/g、ガラス転移温度65℃であった。
【0068】
アクリルエマルション(B−2)の製造
乳化物aのモノマー組成をメチルメタクリレート70部、エチルアクリレート18.5部、スチレン5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、メタクリル酸1.5部とする以外は上記アクリルエマルション(B−1)と同様にして固形分30%のアクリルエマルション(B−2)を得た。該アクリル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g、酸価は
10mgKOH/g、ガラス転移温度70℃であった。
【0069】
アクリルエマルション(B−3)の製造
乳化物aのモノマー組成をメチルメタクリレート30部、エチルアクリレート20部、スチレン10部、n−ブチルメタクリレート33.5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、メタクリル酸1.5部とする以外は上記アクリルエマルション(B−1)と同様にして固形分30%のアクリルエマルション(B−3)を得た。該アクリル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g、酸価は10mgKOH/g、ガラス転移温度40℃であった。
【0070】
アクリルエマルション(B−4)の製造
乳化物aのモノマー組成をメチルメタクリレート38.5部、エチルアクリレート45部、スチレン10部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、メタクリル酸1.5部とする以外は上記アクリルエマルション(B−1)と同様にして固形分30%のアクリルエマルション(B−4)を得た。アクリル樹脂の水酸基価は20mgKOH/g、酸価は
10mgKOH/g、ガラス転移温度32℃であった。
【0071】
イオン性官能基含有樹脂(D−1)の製造
撹拌機、温度計及び還流冷却管を備えた通常のアクリル樹脂反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル35部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、スチレン10部、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート25部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸3部、2−アクリルアミド−2−メチルスルホン酸5部(固形分量、脱イオン水10部に溶解して配合)、「NFバイソマーPEM6E」(第一工業製薬(株)製、商品名、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、分子量約350)10部、アゾビスイソブチロニトリル4部及びイソブチルアルコール20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にエチレングリコールモノブチルエーテル15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。ついで110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分55%のイオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を得た。該樹脂(D−1)は水酸基価が43mgKOH/g、重量平均分子量が約2万であった。
【0072】
イオン性官能基含有樹脂(D−2)の製造
撹拌機、温度計及び還流冷却管を備えた通常のアクリル樹脂反応槽に、エチレングリコールモノブチルエーテル35部を仕込み、加熱撹拌して110℃に保持した。この中に、スチレン10部、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート25部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、メタクリル酸3部、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート5部(固形分量、脱イオン水10部に溶解して配合)、「NFバイソマーPEM6E」(第一工業製薬(株)製、商品名、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、分子量約350)10部、アゾビスイソブチロニトリル4部及びイソブチルアルコール20部からなる混合物を3時間かけて滴下した。滴下終了後、110℃で30分間熟成し、次にエチレングリコールモノブチルエーテル15部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5部からなる追加触媒混合液を1時間かけて滴下した。ついで110℃で1時間熟成したのち冷却し、固形分55%のイオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を得た。該樹脂(D−2)は水酸基価が43mgKOH/g、重量平均分子量が約2万であった。
【0073】
水性プライマーの調製
実施例1
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)(メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5%)に対しマレイン酸付加量8重量%で変性したもので、融点が80℃、Mwが約10万、Mw/Mnが約2.1であるものを、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにポリプロピレン/エチレン共重合体100部に対して乳化剤10部使用で水分散化したもの)を固形分重量で70部、アクリルエマルション(B−1)を固形分重量で15部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」(テイカ社製、商品名、チタン白)80部及び「バルカンXC−72」(キャボットスペシャルティケミカルズインク製、導電性カーボンブラック)20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(1)を得た。
【0074】
実施例2
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で50部、アクリルエマルション(B−2)を固形分重量で35部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(2)を得た。
【0075】
実施例3
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で60部、アクリルエマルション(B−1)を固形分重量で25部、イオン性官能基含有樹脂(D−1)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(3)を得た。
【0076】
実施例4
水性塩素化ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−2)(メタロセン系触媒を用いて得られたエチレン−プロピレン共重合体(エチレン含有率5.5%)に対し無水マレイン酸付加量2重量%、塩素含有率が20%で変性したもので、Mwが約5万であるものに、テトラヒドロフラン及びブタノールを加え加熱溶解しジメチルエタノールアミンで当量中和して水分散化し、溶剤分を減圧除去したもの)を固形分重量で45部、アクリルエマルション(B−1)を固形分重量で40部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」120部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(4)を得た。
【0077】
実施例5
水性塩素化ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−2)を固形分重量で50部、アクリルエマルション(B−2)を固形分重量で35部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(5)を得た。
【0078】
実施例6
変性ポリプロピレンの水分散体(A−3)(注1)を固形分重量で50部、アクリルエマルション(B−2)を固形分重量で35部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(6)を得た。
【0079】
(注1)変性ポリプロピレンの水分散体(A−3):攪拌器、冷却管、温度計及び滴下ロートを取り付けた4つ口フラスコ中で、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(メタロセン系触媒を用いて得られたポリプロピレンに対しマレイン酸付加量4重量%で変性したもので、融点80℃、Mw約15万、Mw/Mn約2.5)100gを140℃で加熱溶融し、ポリオキシエチレンステアリルエーテル(「ニューコール1820」、片末端水酸基含有ポリオキシエチレン化合物、日本乳化剤社製、商品名)15gを添加し、攪拌しながら140℃で4時間反応を行った。反応後、90℃に冷却し、脱イオン水を加えてろ過を行い、固形分30%の変性ポリプロピレンの水性分散体(A−3)を得た。
【0080】
比較例1
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で50部、アクリルエマルション(B−3)を固形分重量で35部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(7)を得た。
【0081】
比較例2
水性塩素化ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−2)を固形分重量で50部、アクリルエマルション(B−4)を固形分重量で35部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(8)を得た。
【0082】
比較例3
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で30部、アクリルエマルション(B−3)を固形分重量で55部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(9)を得た。
【0083】
比較例4
水性ポリプロピレン/エチレン共重合体(A−1)を固形分重量で30部、アクリルエマルション(B−1)を固形分重量で55部、イオン性官能基含有樹脂(D−2)溶液を固形分重量で15部、「JR−806」80部及び「バルカンXC−72」20部を、常法に従って配合し、固形分30%となるように脱イオン水で希釈して水性プライマー(10)を得た。
【0084】
試験塗装物の作成
ナイロン板及びABS板(脱脂処理済)に、上記の通り作成した水性プライマー(1)〜(10)を乾燥膜厚で約5〜10μmになるようにスプレー塗装し、80℃で3分間プレヒート後、その上に着色ベースコート塗料として「ソフレックス5100」(関西ペイント社製、溶剤型着色ベースコート塗料)を乾燥膜厚で約15μmとなるように静電塗装し、80℃で3分間プレヒート後、クリヤー塗料として「ソフレックス5200クリヤー」(関西ペイント社製、アクリルウレタン系溶剤型クリヤー塗料)を乾燥膜厚で約30μmとなるように静電塗装して、80℃で30分間加熱乾燥させて各試験塗板を作成した。
【0085】
上記の通り作成した各試験塗板を下記性能試験に供した。その結果を表1に併せて示す。
【0086】
性能試験方法
(*1)導電性:ABS板(脱脂処理済)に、各水性プライマー(1)〜(10)をそれぞれ乾燥膜厚で約5〜10μmになるようにスプレー塗装して形成したプライマー塗膜を80℃で3分間加熱した後、各塗膜の電気抵抗値(MΩ/□)を表面抵抗計「MODEL150」(TREK社製、商品名)で20℃にて測定した。100MΩ/□未満を○、100MΩ/□以上を×とする。
【0087】
(*2)初期付着性:各試験塗板の塗膜面に素地に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmのマス目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、20℃においてそれを急激に剥離した後のマス目の残存塗膜数を調べた。残存数100個を○、残存数50〜99個を△、残存数49個以下を×とした。
【0088】
(*3)耐水性:各試験塗板を40℃の温水に10日間浸漬し、引き上げて乾燥してから、上記の初期付着性試験と同様にして付着性試験を行ない、残存塗膜数を調べて上記と同様に評価した。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)不飽和カルボン酸又は酸無水物で変性されたポリオレフィン(a)を水性媒体中に分散せしめてなる変性ポリオレフィンの水性分散体、(B)アクリル樹脂、及び(C)導電性顔料を含有する水性プライマー組成物であって、該アクリル樹脂(B)がメチル(メタ)アクリレートを55〜90重量%、エチル(メタ)アクリレートを10〜30重量%及びその他の共重合性不飽和モノマーを1〜30重量%含むモノマー混合物を乳化重合して得られるアクリルエマルションであり、且つ該成分(A)/成分(B)の固形分重量比が50/50〜85/15の範囲内であることを特徴とする水性プライマー組成物。
【請求項2】
アクリル樹脂(B)が20〜80℃のガラス転移温度を有するものである請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項3】
導電性顔料(C)が、導電カーボンである請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項4】
3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、スルホン酸基、リン酸基、及び4級アンモニウム塩をカウンターイオンにもつカルボン酸塩基から選ばれる少なくとも1種のイオン性官能基を有するアクリル樹脂(D)を、さらに含有する請求項1記載の水性プライマー組成物。
【請求項5】
アクリル樹脂(D)がポリオキシアルキレン鎖をさらに含有するものである請求項4記載の水性プライマー組成物。
【請求項6】
プラスチック基材に、上記請求項1ないし5のいずれか1項に記載の水性プライマー組成物を塗装し、ついでその塗面に上塗り塗料を塗装することを特徴とする塗装方法。
【請求項7】
プラスチック基材が、ABS、ナイロン及びこれらのアロイから選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の塗装方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の塗装方法により得られる塗装物品。

【公開番号】特開2008−201882(P2008−201882A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38898(P2007−38898)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】