説明

水性ポリマー分散液の製造方法

第一の反応段階において水性媒体中でジオール化合物およびジカルボン酸化合物を酵素および分散剤ならびに場合により水中での溶解度が小さい有機溶剤および/またはエチレン性不飽和モノマーの存在下でポリエステルへと反応させ、かつこれに引き続き該ポリエステルの存在下に第二の反応段階でエチレン性不飽和モノマーをラジカル重合させる、水性ポリマー分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
詳細な説明
本発明の対象は、水性媒体中、第一の反応段階で
a)ジオール化合物Aおよび
b)ジカルボン酸化合物Bを
c)ジオール化合物Aとジカルボン酸化合物Bとの重縮合反応を触媒する酵素Cおよび
d)分散剤D
ならびに場合により
e)水中での溶解度が小さい有機溶剤Eおよび/または
f)エチレン性不飽和モノマーF
の存在下に、ポリエステルへと反応させ、これに引き続き該ポリエステルの存在下に第二の反応段階で、エチレン性不飽和モノマーFとラジカル重合させることを特徴とする、水性ポリマー分散液の製造方法である。
【0002】
本発明の対象はまた、本発明による方法により得られる水性ポリマー分散液、該分散液から得られるポリマー粉末ならびにこれらの使用である。
【0003】
水性ポリエステル分散液の製造方法は一般に公知である。この場合、その製造は通常、有機ジオールおよび有機ジカルボン酸をポリエスエルへと反応させて行う。次いでこのポリエステルをその後の段階で通常はまず、ポリエステル溶融液に変換し、該溶融液を次いで有機溶剤および/または分散剤を用いて種々の方法により水性媒体中に分散させて、いわゆる二次分散液が形成される(これに関してはたとえばEP−A−927219および該文献中で引用されている文献を参照のこと)。溶剤を使用する場合、該溶剤を分散工程に引き続いて再び留去しなくてはならない。さらに、WO04/035801には、ポリエステルをベースとする水性分散液を酵素触媒により製造することが開示されている。
【0004】
公知の方法により得られる水性ポリエステル分散液、もしくはそのポリエスエル自体は、多くの適用において有利な特性を有しているが、それにもかかわらず、しばしばさらに最適化する必要性が存在している。
【0005】
本発明は、ポリエステルをベースとする新規の水性ポリマー分散液の製造方法を提供するという課題に基づいている。
【0006】
意外にも前記課題は冒頭で定義された方法により解決された。
【0007】
本発明によればジオール化合物Aとして、2〜18個の炭素原子、有利には4〜14個の炭素原子を有する分枝鎖状もしくは線状のアルカンジオール、5〜20個の炭素原子を有するシクロアルカンジオール、または芳香族ジオールを使用する。
【0008】
適切なアルカンジオールの例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、2,4−ジメチル−2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオールまたは2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオールである。特にエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよび2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたは1,12−ドデカンジオールが適切である。
【0009】
シクロアルカンジオールのための例は、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール(1,2−ジメチロールシクロヘキサン)、1,3−シクロヘキサンジメタノール(1,3−ジメチロールシクロヘキサン)、1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−ジメチロールシクロヘキサン)または2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオールである。
【0010】
適切な芳香族ジオールの例は、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]、1,3−ジヒドロキシナフタリン、1,5−ジヒドロキシナフタリンまたは1,7−ジヒドロキシナフタリンである。
【0011】
しかしジオール化合物Aとして、ポリエーテルジオール、たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール(4以上のエチレンオキシド単位を有する)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(4以上のプロピレンオキシド単位を有する)およびポリテトラヒドロフラン(ポリ−THF)、特にジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコール(4以上のエチレンオキシド単位を有する)も使用することができる。ポリ−THF、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールとして、その数平均分子量(Mn)が、通常200〜10000、有利には600〜5000g/モルの範囲である化合物を使用する。
【0012】
前記のジオール化合物の混合物を使用することもできる。
【0013】
しかし特に有利にはジオール化合物Aとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび/または1,12−ドデカンジオールを使用する。
【0014】
ジカルボン酸化合物Bとして、原則として、2つのカルボン酸基(カルボキシル基)またはその誘導体を有する全てのC2〜C40−脂肪族、C3〜C20−脂環式、芳香族またはヘテロ芳香族化合物を使用することができる。誘導体として特に前記のジカルボン酸のC1〜C10−アルキル−、有利にはメチル−、エチル−、n−プロピル−またはイソプロピル−モノもしくはジエステル、相応するジカルボン酸ハロゲン化物、特にジカルボン酸二塩化物ならびに相応するジカルボン酸無水物を使用する。このような化合物のための例は、エタン二酸(シュウ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ペンタン二酸(グルタル酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸)、オクタン二酸(コルク酸)、ノナン二酸(アゼライン酸)、デカン二酸(セバシン酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸(ブラシル酸)、C32−二量体脂肪酸(Cognis Corp.(USA)の市販品)、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸(フタル酸)、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸(イソフタル酸)またはベンゼン−1,4−ジカルボン酸(テレフタル酸)、これらのメチルエステル、たとえばエタン二酸ジメチルエステル、プロパン二酸ジメチルエステル、ブタン二酸ジメチルエステル、ペンタン二酸ジメチルエステル、ヘキサン二酸ジメチルエステル、ヘプタン二酸ジメチルエステル、オクタン二酸ジメチルエステル、ノナン二酸ジメチルエステル、デカン二酸ジメチルエステル、ウンデカン二酸ジメチルエステル、ドデカン二酸ジメチルエステル、トリデカン二酸ジメチルエステル、C32−二量体脂肪酸ジメチルエステル、フタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジメチルエステルまたはテレフタル酸ジメチルエステル、これらの二塩化物、たとえばエタン二酸二塩化物、プロパン二酸二塩化物、ブタン二酸二塩化物、ペンタン二酸二塩化物、ヘキサン二酸二塩化物、ヘプタン二酸二塩化物、オクタン二酸二塩化物、ノナン二酸二塩化物、デカン二酸二塩化物、ウンデカン二酸二塩化物、ドデカン二酸二塩化物、トリデカン二酸二塩化物、C32−二量体脂肪酸二塩化物、二塩化フタル酸、二塩化イソフタル酸または二塩化テレフタル酸ならびにこれらの無水物、たとえばブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸またはフタル酸の無水物である。当然のことながら、前記の化合物Bの混合物を使用することもできる。
【0015】
有利にはジカルボン酸、特にブタン二酸、ヘキサン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸またはイソフタル酸もしくはこれらの相応するジメチルエステルを使用する。
【0016】
本発明によれば、ジオール化合物Aとジカルボン酸化合物Bとの量比は、ジオール化合物Aに対するジカルボン酸化合物Bのモル比が、0.5〜1.5、通常は0.8〜1.3、しばしば0.9〜1.1および好ましくは0.95〜1.05となるように選択する。特にモル比が1である、つまりカルボキシル基もしくはカルボキシル基から誘導される基(たとえばエステル基[−CO2−アルキル]もしくはカルボン酸ハロゲン化物[−CO−ハロゲン]と同じだけヒドロキシル基が存在している場合が有利である。
【0017】
方法にとって重要なことは、ジオール化合物Aと、ジカルボン酸化合物Bとの反応を水性媒体中、ジオール化合物Aと、ジカルボン酸化合物Bとの重縮合反応を触媒する酵素Cの存在下で行うことである。その際、重縮合反応とは、ジオール化合物Aからのヒドロキシル基と、ジカルボン酸化合物Bからのカルボキシル基もしくはカルボキシル基から誘導される基との、ポリエステルの形成下で水(ジカルボン酸もしくはジカルボン酸無水物)、アルコール(エステル)またはハロゲン化水素(カルボン酸ハロゲン化物)を分離しながらの反応であると理解される。
【0018】
【化1】

【0019】
この場合、酵素Cとして原則として、水性媒体中でのジオール化合物Aとジカルボン酸化合物Bとの重縮合反応を触媒することができる全ての酵素を使用することができる。酵素Cとして特にヒドロラーゼ[EC3.x.x.x]および/またはトランスフェラーゼ[EC2.x.x.x]が適切である。ヒドロラーゼとしてたとえばペプチド結合である別のC−N結合と反応するエステラーゼ[EC3.1.x.x]、プロテアーゼ[EC3.4.x.x]および/またはヒドロラーゼを使用する。本発明によれば特にカルボキシエステラーゼ[EC3.1.1.1]および/またはリパーゼ[EC3.1.1.3]を使用する。このための例は、アクロモバクターsp.、アスペルギルスsp.、カンディダsp.、カンディダ・アンタクティカ、ムコールsp.、ペニシリウムsp.、ゲオトリクムsp.、リゾプスsp.、バークホルデリアsp.、シュードモナスsp.、シュードモナス・セパシア、テルモミセスsp.、ブタパンクレアーゼまたは麦芽からのリパーゼ、ならびにバシルスsp.、シュードモナスsp.、バークホルデリアsp.、ムコールsp.、サッカロミセスsp.、リゾプスsp.、テルモアナエロビウムsp.、ブタ肝臓またはウマ肝臓からのカルボキシエステラーゼである。トランスフェラーゼとしてたとえばアシルトランスフェラーゼ[EC2.3.x.x]を使用する。このための例は、シュードモナス・オレオボランス、クロモバクテリウム・ビオラセウム、メチロバクテリウム・エクストルケンスからのポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)ポリメラーゼ[EC2.3.1.−]および/またはクロモバクテリウム・ビオラセウムからのアセチルCoA−C−アセチルトランスフェラーゼ[EC2.3.1.9]である。当然のことながら、単独の酵素Cまたは種々の酵素Cの混合物を使用することが可能である。酵素Cを遊離の、および/または固定された形で使用することも可能である。
【0020】
有利であるのは、遊離の、および/または固定された形でのシュードモナス・セパシア、バークホルデリア・プラタリまたはカンディダ・アンタクティカからのリパーゼ(たとえばNovozymes A/S社(デンマーク)のNovozym(登録商標)435)である。
【0021】
使用される酵素Cの全量は、そのつどジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの全量の合計に対して、通常0.001〜40質量%、しばしば0.1〜15質量%、および好ましくは0.5〜8質量%である。
【0022】
本発明による方法により使用される分散助剤Dは、原則として乳化剤および/または保護コロイドであってよい。その際、乳化剤および/または保護コロイドは、特に使用される酵素Cと相容性であり、かつ酵素を失活させないように選択することは自明である。特定の酵素Cにおいてどの乳化剤および/または保護コロイドを使用することができるかは、当業者に周知であるか、または当業者が簡単な前試験を行うことによって確認することができる。
【0023】
適切な保護コロイドは、たとえばポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、ゼラチン誘導体またはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および/または4−スチレンスルホン酸を含有する共重合体およびそのアルカリ金属塩、また、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカルバゾール、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミノ基含有アクリラート、メタクリラート、アクリルアミドおよび/またはメタクリルアミドを含有するホモポリマーおよびコポリマーである。その他の適切な保護コロイドは、たとえばHouben-WeylのMethoden der organischen Chemi、第XIV/1巻、高分子材料、Georg-Thieme出版、シュツットガルト在、1961年、第411〜420頁に詳細に記載されている。
【0024】
当然のことながら、保護コロイドおよび/または乳化剤からなる混合物を使用することもできる。分散助剤としてしばしば、相対分子量が保護コロイドとは異なり、通常1000未満である乳化剤のみが使用される。前記乳化剤は、アニオン性、カチオン性、または非イオン性であってよい。当然のことながら、界面活性剤物質の混合物を使用する場合には、個々の成分が互いに相溶性でなければならず、このことが疑わしい場合にはいくつかの予備試験に基づいて検査することができる。一般に、アニオン性乳化剤は相互に、および非イオン性乳化剤と相溶性である。同様のことがカチオン性乳化剤に関しても該当し、その一方でアニオン性およびカチオン性乳化剤は大抵は相互に相容性ではない。好適な乳化剤の概要は、たとえばHouben-WeylのMethoden der organischen Chemie、第XIV/1巻、高分子材料、Georg-Thieme出版、シュツットガルト在、1961年、192〜208頁に見出される。
【0025】
本発明により分散助剤Dとして特に乳化剤が使用される。
【0026】
慣用の非イオン乳化剤は、たとえばエトキシ化されたモノアルキルフェノール、ジアルキルフェノールおよびトリアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)ならびにエトキシ化された脂肪アルコール(EO度:3〜80;アルキル基:C8〜C36)である。このための例は、BASF社製のLutensol(R)A商標(C1214−脂肪アルコールエトキシレート、EO度:3〜8)、Lutensol(R)AO商標(C1315−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜30)、Lutensol(R)AT商標(C1618−脂肪アルコールエトキシレート、EO度:11〜80)、Lutensol(R)ON商標(C10−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜11)およびLutensol(R)TO商標(C13−オキソアルコールエトキシレート、EO度:3〜20)である。
【0027】
慣用のアニオン性乳化剤は、たとえばアルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化されたアルカノール(EO度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシ化されたアルキルフェノール(EO度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)およびアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0028】
さらに、一般式(I)
【化2】

〔式中、R1およびR2は、H原子を表すか、またはC4〜C24−アルキルを表わし、同時にH原子であることはなく、M1およびM2は、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであってよい〕で示される化合物は、別のアニオン乳化剤として有効であることが証明されている。一般式(I)においては、R1およびR2は、好ましくは6〜18個、特に6、12および16個のC原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル基または水素原子を表わし、その際、R1およびR2が同時にH原子であることはない。M1およびM2は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムであることが好ましく、その際、ナトリウムが特に好ましい。M1およびM2がナトリウムであり、R1が12個のC原子を有する分枝鎖状のアルキル基であり、かつR2がH原子であるか、またはR1である化合物(I)が特に有利である。50〜90質量%のモノアルキル化生成物の含量を有する工業用混合物、たとえばDowfax(R)2A1(Dow Chemical Company社の商標)がしばしば使用される。この化合物(I)は、たとえば米国特許第4269749号明細書の記載から一般的に公知であり、かつ市販されている。
【0029】
適切なカチオン活性乳化剤は、一般にC6〜C18−アルキル基、C6〜C18−アルキルアリール基または複素環基を有する第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩ならびにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩である。たとえば、ドデシルアンモニウムアセテートまたは相応するスルフェート、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステル、N−セチルピリジニウムスルフェート、N−ラウリルピリジニウムスルフェートならびにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N−オクチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムスルフェート、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムスルフェートならびにジェミニ界面活性剤N,N′−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジスルフェート、エトキシ化獣脂アルキル−N−メチルアンモニウムスルフェートおよびエトキシ化オレイルアミン(たとえばBASF AG社のUniperol(登録商標)AC、エチレンオキシド単位約12個)のスルフェートまたはアセテートが挙げられる。多数の更なる例が、H. StacheのTensid-Taschenbuch、Carl-Hanser出版、ミュンヘン、ウィーン、1981年中に、および McCutcheon’s, Emulsifiers & Detergents, MC出版、Glen Rock、1989年中に見出される。有利には、アニオン性対基が可能な限り弱く求核性であり、たとえば過塩素酸塩、スルフェート、ホスフェート、ニトレートおよびカルボキシレート、たとえばアセテート、トリフルオロアセテート、トリクロロアセテート、プロピオネート、オキサレート、シトレート、ベンゾエート、ならびに有機スルホン酸の共役アニオン、たとえばメチルスルホネート、トリフルオロメチルスルホネート、およびp−トルエンスルホネート、更にテトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネートまたはヘキサフルオロアンチモネートである。
【0030】
分散剤Dとして有利に使用される乳化剤は、有利には、そのつどジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの全量の合計に対して、0.005〜20質量%、有利には0.01〜15質量%、特に0.1〜10質量%の全量で使用される。
【0031】
分散剤Dとして付加的に、または乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量は、そのつどジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの全量の合計に対して、しばしば0.1〜10質量%、および好ましくは0.2〜7質量%である。
【0032】
しかし有利には乳化剤、特に非イオン性乳化剤を分散剤Dとして使用する。
【0033】
本発明によれば、第一の反応段階で場合により付加的に、少量の、水中で可溶性の有機溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFも使用することができる。
【0034】
適切な溶剤Eは、5〜30個のC原子を有する液状の脂肪族および芳香族炭化水素、たとえばn−ペンタンおよび異性体、シクロペンタン、n−ヘキサンおよび異性体、シクロヘキサン、n−ヘプタンおよび異性体、n−オクタンおよび異性体、n−ノナンおよび異性体、n−デカンおよび異性体、n−ドデカンおよび異性体、n−テトラデカンおよび異性体、n−ヘキサデカンおよび異性体、n−オクタデカンおよび異性体、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クメン、o−、m−またはp−キシレン、メシチレン、ならびに沸点範囲30〜250℃にある一般的な炭化水素混合物である。同様に、ヒドロキシ化合物、たとえば10〜28個の炭素原子を有する飽和および不飽和の脂肪アルコール、たとえばn−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノールおよびこれらの異性体またはセチルアルコール、エステル、たとえば酸部分に10〜28個の炭素原子を有し、かつアルコール部分に1〜10個の炭素原子を有する脂肪酸エステル、またはカルボン酸と脂肪アルコールとからなり、カルボン酸部分に1〜10個の炭素原子と、アルコール部分に10〜28個の炭素原子を有するエステルを使用することができる。前記の溶剤の混合物も使用できることは勿論である。
【0035】
溶剤の全量は、そのつど第一の反応段階における水の全量に対して、60質量%まで、有利には0.1〜40質量%、および特に有利には0.5〜10質量%である。
【0036】
水中での溶解度が小さい溶剤Eは、この明細書の範囲では、溶剤Eまたは溶剤Eからなる混合物が脱イオン水中20℃および1気圧(絶対)で、≦50g/l、有利には≦10g/lおよび好ましくは≦5g/lの溶解度を有することと理解される。
【0037】
エチレン性不飽和モノマーFとして、原則として全てのラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物が考えられる。モノマーFとして、特に簡単にラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマー、たとえばエチレン、ビニル芳香族モノマー、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、o−クロロスチレンまたはビニルトルエン、ビニルアルコールと1〜18個のC原子を有するモノカルボン酸とのエステル、たとえばビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニル−n−ブチレート、ビニルラウレートおよびビニルステアレート、好ましくは3〜6個のC原子を有するα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびα,β−モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、たとえば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸と、一般に1〜12個、好ましくは1〜8個、特に1〜4個のC原子を有するアルカノールとのエステル、たとえば特にアクリル酸およびメタクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステルおよび2−エチルヘキシルエステル、マレイン酸ジメチルエステルまたはマレイン酸−ジ−n−ブチルエステル、α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、たとえばアクリロニトリルならびにC4-8−共役ジエン、たとえば1,3−ブタジエンおよびイソプレンがこれに該当する。当然のことながら、前記のモノマーFの混合物を使用することもできる。前記のモノマーFは、一般に、本発明による方法により重合されるべきモノマーFの全体量に対して通常は50質量%以上、有利には80質量%以上、または好ましくは90質量%以上の割合を占める主要モノマーを形成する。通常は、これらのモノマーは、水中で標準条件[20℃、1気圧(絶対)]の場合に、中程度ないし低程度の溶解度を有するにすぎない。
【0038】
通常、エチレン性不飽和モノマーFの重合により得られるポリマーの内部強度を高めるその他のモノマーFは、通常、少なくとも1のエポキシ基、ヒドロキシ基、N−メチロール基またはカルボニル基を有するか、または少なくとも2の共役結合していないエチレン性不飽和二重結合を有する。
【0039】
このための例は、2個のビニル基を有するモノマー、2個のビニリデン基を有するモノマーならびに2個のアルケニル基を有するモノマーである。この場合、2価アルコールとα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルが特に有利であり、このカルボン酸のうちアクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。このような2の非共役結合エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーのための例は、アルキレングリコールジアクリレートおよびアルキレングリコールジメタクリレート、たとえばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレートならびにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートである。これと関連して、メタクリル酸−C1−C8−ヒドロキシアルキルエステルおよびアクリル酸−C1−C8−ヒドロキシアルキルエステル、たとえばn−ヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、またはn−ヒドロキシブチルアクリレートおよびn−ヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレート、またはn−ヒドロキシブチルメタクリレートならびにたとえばジアセトンアクリルアミドおよびアセチルアセトキシエチルアクリレートまたはアセチルアセトキシエチルメタクリレートの化合物が特に重要である。本発明によれば、前記のモノマーは、エチレン性不飽和モノマーFの全体量に対して5質量%まで、特に0.1〜3質量%およびしばしば0.5〜2質量%の量で使用される。
【0040】
モノマーFとして、シロキサン基を含有するエチレン系不飽和モノマー、たとえばビニルトリアルコキシシラン、たとえばビニルトリメトキシシラン、アルキルビニルジアルコキシシラン、アクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、またはメタクリルオキシアルキルトリアルコキシシラン、たとえばアクリルオキシエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシエチルトリメトキシシラン、アクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランを使用することもできる。これらのモノマーは、そのつどモノマーFの全量に対して5質量%まで、特に0.01〜3質量%、有利には0.05〜1質量%の量で使用される。
【0041】
それと共に、モノマーFとして、付加的に、少なくとも1個の酸基および/または酸基の相応するアニオンを含有するエチレン性不飽和モノマーFSか、または少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基またはN−複素環基および/または窒素でプロトン化またはアルキル化されたアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーFAを使用することができる。モノマーFSもしくはモノマーFAの量は、重合すべきモノマーFの全体量に対して10質量%まで、有利には0.1〜7質量%、特に0.2〜5質量%である。
【0042】
モノマーFSとしては、少なくとも1個の酸基を有するエチレン性不飽和モノマーが使用される。この場合、酸基は、たとえばカルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基および/またはホスホン酸基であってよい。モノマーFSのための例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸ならびにn−ヒドロキシアルキルアクリレートおよびn−ヒドロキシアルキルメタクリレートのリン酸モノエステル、たとえばヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルである。しかし、本発明によれば、少なくとも1個の酸基を有する前記のエチレン性不飽和モノマーのアンモニウム塩およびアルカリ金属塩を使用することもできる。アルカリ金属としては、ナトリウムおよびカリウムが特に好ましい。このための例は、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩ならびにヒドロキシエチルアクリレート、n−ヒドロキシプロピルアクリレート、n−ヒドロキシブチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレート、n−ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはn−ヒドロキシブチルメタクリレートのリン酸モノエステルのモノ−およびジ−アンモニウム塩、−ナトリウム塩、および−カリウム塩である。
【0043】
有利には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、4−スチレンスルホン酸、2−メタクリルオキシエチルスルホン酸、ビニルスルホン酸およびビニルホスホン酸をモノマーFSとして使用する。
【0044】
モノマーFAとして、少なくとも1個のアミノ基、アミド基、ウレイド基またはN−複素環基および/または窒素でプロトン化またはアルキル化されたそのアンモニウム誘導体を含有するエチレン性不飽和モノマーを使用する。
【0045】
少なくとも1のアミノ基を有するモノマーFAのための例は、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート、4−アミノ−n−ブチルアクリレート、4−アミノ−n−ブチルメタクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−メチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−エチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−イソプロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−イソ−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N−t−ブチルアミノ)エチルメタクリレート(たとえばElf Atochem社から市販のNorsocryl(登録商標)TBAEMAとして入手可能なもの)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート(たとえばElf Atochem社からNorsocryl(登録商標)ADAMEとして入手可能なもの)、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(たとえばElf Atochem社からNorsocry (登録商標)MADAMEとして入手可能なもの)、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−メチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−エチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N−t−ブチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルアクリレート、3−(N,N−ジ−n−プロピルアミノ)プロピルメタクリレート、3−(N,N−ジ−イソプロピルアミノ)プロピルアクリレートおよび3−(N,N−ジ−イソ−プロピルアミノ)プロピルメタクリレートである。
【0046】
少なくとも1個のアミド基を含有するモノマーFAの例は、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソ−プロピルメタクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−イソ−プロピルアクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルメタクリルアミド、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−(ジフェニルメチル)アクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミドであるが、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタムも挙げられる。
【0047】
少なくとも1個のウレイド基を含有するモノマーFAの例は、N,N’−ジビニルエチレン尿素および2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレート(たとえば、Fa.Elf Atochem社のNorsocryl(R)100として市販されている)である。
【0048】
少なくとも1個のN−複素環基を含有するモノマーFAの例は、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルイミダゾールおよびN−ビニルカルバゾールである。
【0049】
有利にはモノマーFAとして次の化合物:2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニルイミダゾール、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2−(N−第三ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N−(3−N’,N’−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドおよび2−(1−イミダゾリン−2−オニル)エチルメタクリレートを使用する。
【0050】
水性反応媒体のpH値に依存して、前記の窒素含有モノマーFAの一部または全量が、窒素でプロトン化された第4級アンモニウム形で存在していてよい。
【0051】
窒素において第四級アルキルアンモニウム構造を有するモノマーFAとして、たとえば2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社からNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT MC80として市販されているもの)、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社からNorsocryl(登録商標)MADQUAT MC75として市販されているもの)、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレート、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社からNorsocryl(登録商標)ADAMQUAT BZ80として市販されているもの)、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド(たとえばElf Atochem社からNorsocryl(登録商標)MADQUAT BZ75として市販されているもの)、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N,N,N−トリメチルアンモニウムプロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−メチル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジエチルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリド、3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルアクリレートクロリドおよび3−(N−ベンジル−N,N−ジプロピルアンモニウム)プロピルメタクリレートクロリドが挙げられる。上述の塩化物の代わりに、相応する臭化物および硫化物を使用してよいことは勿論である。
【0052】
有利には2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリド、2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルアクリレートクロリドおよび2−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアンモニウム)エチルメタクリレートクロリドを使用する。
【0053】
当然のことながら、前記のエチレン性不飽和モノマーFSもしくはFAの混合物を使用することができる。
【0054】
本発明によれば有利には、エチレン性不飽和モノマーFとして、
アクリル酸および/またはメタクリル酸と、1〜12個の炭素原子を有するアルカノールおよび/またはスチレンとのエステル 50〜99.9質量%、
スチレンおよびブタジエン 50〜99.9質量%、または
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン50〜99.9質量%、または
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、吉草酸のビニルエステル、長鎖の脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン 40〜99.9質量%
を含有するモノマー混合物を使用する。
【0055】
本発明によれば、(溶剤Eと)同様に低い水溶性を有しているエチレン性不飽和モノマーFまたはモノマーFの混合物が有利である。
【0056】
第一の反応段階で場合により使用されるエチレン性不飽和モノマーFの量は、そのつどモノマーFの全量に対して0〜100質量%、しばしば30〜90質量%および好ましくは40〜70質量%である。
【0057】
第一の反応段階における溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFおよびこれらの量を、水性媒体中、第一の反応段階の反応条件下で溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFの溶解度が、そのつど第一の反応段階で場合により使用される溶剤Eおよび/またはモノマーFの全量に対して、≦50質量%、≦40質量%、≦30質量%、≦20質量%または≦10質量%となり、従って水性媒体中に別々の層として存在しているように選択する場合に有利である。有利には第一の反応段階を溶剤Eおよび/またはモノマーFの存在下に、しかし特に有利にはモノマーFの存在下であって、溶剤Eの不存在下で行う。
【0058】
溶剤Eおよび/またはモノマーFは、第一の反応段階で特にジオール化合物Aおよび/またはジカルボン酸化合物Bが、水性媒体中、第一の反応段階の反応条件下で良好な溶解度を有する、つまりこれらの溶解度が>50g/lもしくは≧100g/lとなるように使用する。
【0059】
本発明による方法は、ジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bならびに場合により溶剤Eおよび/またはモノマーFの少なくとも一部の量が水性媒体中で、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相として(いわゆる水中油型ミニエマルションまたは略してミニエマルションとして)存在する場合に有利に進行する。
【0060】
本発明による方法は、第一の反応段階で、まずジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤Dならびに場合により溶剤Eおよび/またはモノマーFの少なくとも一部の量を水の一部もしくは全量に導入し、その後、適切な措置によりジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bならびに場合により溶剤Eおよび/またはモノマーFを含有し、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相(ミニエマルション)を形成し、かつこれに引き続き水性媒体に、反応温度で酵素Cの全量ならびに場合により残留する水、ジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤Dならびに場合により溶剤Eの残留量を添加することにより有利に行われる。しばしば≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%、または全量のジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤Dおよび場合により溶剤Eを、≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%、または全量の水に導入し、≦1000nmの液滴直径を有する分散相を形成し、かつこれに引き続き水性媒体に反応温度で、酵素Cの全量ならびに場合により残留する水、ジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤Dおよび場合により溶剤Eの残留量を添加する。その際、酵素Cならびに場合により残留する水、ジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤Dおよび場合により溶剤Eの残留量を水性反応媒体に不連続的に一度に、不連続的に数回に分けて、ならびに一定の、もしくは変化する流量で連続的に添加することができる。
【0061】
しばしばジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bおよび場合により溶剤Eの残留量ならびに少なくとも部分量の分散剤Dを、水の主要量または全量に導入し、かつミニエマルションを形成した後に、反応温度で酵素Cの全量を、場合により残留量の水および分散剤Dと一緒に、水性の反応媒体に添加する。
【0062】
本発明により有利に使用される水性ミニエマルションの分散相の液滴の平均液滴径は、準弾性動的光散乱の原理により、たとえばCoulter Scientific Instruments社のCoulter N4 Plus Particle Analysersにより測定することができる(自動補正機能の単一モード分析の、いわゆる数平均液滴直径dz)。測定は、非水性成分の含有率が約0.01〜1質量%である希釈された水性ミニエマルションを用いて実施する。その際、希釈は、水を用いて実施されるが、この水は予め水性ミニエマルション中に含有されているジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bならびに場合により水中での溶解度が小さい有機溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFにより飽和されている。後者の処置は、希釈に伴って液滴直径が変化することを妨げるものである。
【0063】
本発明によれば、このようにしていわゆるミニエマルションに関して確認されるdzの値は通常、≦700nm、しばしば≦500nmである。本発明によれば100nm〜400nmもしくは100nm〜300nmのdzの範囲が有利である。通常、本発明により使用される水性ミニエマルションのdzは、≧40nmである。
【0064】
水性マクロエマルションからの水性ミニエマルションの一般的な製造は当業者に公知である(P.L.Tang、E.D.Sudol、C.A.SilebiおよびM.S.ElAasserのJournal of Applied Polymer Science、第43巻、第1059〜1066頁(1991年)を参照のこと)。
【0065】
この目的のために、たとえば高圧ホモジナイザーを適用することができる。成分の微分散はこの装置中で高い局所的なエネルギー入力により達成される。2つの変法が、これに関して特に有利であることが実証されている。
【0066】
第一の変法の場合、水性マクロエマルションをピストンポンプにより1000バールに圧縮し、かつ引き続き狭いスリットにより放圧する。ここでこの作用は、高い剪断および圧力勾配およびスリット中の空隙の相互作用に起因する。この原理により機能する高圧ホモジナイザーのための1例は、Niro-SoaviのNS1001L Pandaタイプの高圧ホモジナイザーである。
【0067】
第二の変法では、圧縮された水性マクロエマルションを2つの対抗するノズルを介して混合室へと放圧する。ここで微分散作用は特に混合室中の流体力学的な比率に依存する。このタイプのホモジナイザーの1例は、Microfluidics Corp.社のMicrofluidizer M120Eタイプである。
【0068】
この高圧ホモジナイザー中で、水性マクロエマルションは、空気圧により運転されるピストンポンプによって1200気圧までの圧力に圧縮され、かついわゆる「相互作用室(interaction chamber)」へ放圧される。「相互作用室」中で、エマルション噴流はマイクロチャネルシステムで2つの噴流に分割され、これらは180℃の角度で相互に衝突する。この種の均質化により運転されるホモジナイザーのもう1つの例は、Nanojet Engineering GmbH社のナノジェット(Nanojet)Expoタイプである。しかしナノジェットの場合、固定されたチャネルシステムに代わって、2つの均質化バルブが組み込まれており、これらは機械的に位置を変えて配置することができる。
【0069】
しかし前記の原理以外にも、均質化はたとえば超音波(たとえばBranson Sonifier II 450)を適用することによって行うこともできる。微分散はこの場合、キャビテーションメカニズムに起因する。超音波を用いた均質化のために、基本的にGB−A2250930およびUS−A5,108,654に記載されている装置が適切である。超音波領域中で生じる水性ミニエマルションの品質はこの場合、導入された超音波の性能のみでなく、その他の要因、たとえば混合室中の超音波の強度の分布、乳化される物質の滞留時間、温度および物理的特性、たとえば粘度、界面張力および蒸気圧にも依存する。この場合、生じる液滴の大きさは特に、分散剤の濃度ならびに均質化の際に導入されたエネルギーに依存し、従ってたとえば均質化圧力もしくは相応する超音波エネルギーを相応して変更することにより調整可能である。
【0070】
通常のマクロエマルションから超音波により、本発明により有利に使用される水性ミニエマルションを製造するために、特に先のドイツ特許出願DE19756874に記載されている装置が有利であることが実証されている。これは、1の反応室または1の流通管式反応器および超音波を反応室もしくは流通管式反応器へ伝達するための少なくとも1の手段を有する装置であり、その際、超音波を伝達するための該手段は、全反応室もしくは流通管式反応器が、部分区間において均一に超音波で照射されるように構成されている。この目的のために、超音波を伝達するための手段の放射面は、実質的に反応室の表面に相応するか、もしくは反応室が流通管式反応器の部分区間である場合には、実質的に流路の全幅にわたり、かつ放射面に対して反応室の実質的に垂直方向の深さで、超音波伝達手段の最大作用深さよりも小さいように構成されている。
【0071】
「反応室の深さ」という概念はここでは実質的に、超音波伝達手段の放射面と、反応室の床との間の間隔であると理解する。
【0072】
100mmまでの反応室深さが有利である。有利には、反応室の深さは70mmを越えることはなく、かつ特に有利には50mmを越えない。反応室は原則として極めてわずかな深さを有していてもよいが、しかしできる限り小さい閉塞の危険および容易な洗浄可能性ならびに高い生成物処理量を鑑みて、実質的にたとえば高圧ホモジナイザーの通常のスリット高さよりも大きい反応室深さが有利であり、かつ多くの場合、10mmを超える。反応室の深さは有利には、たとえば異なった深さでケーシングに潜る超音波伝達手段により変更可能である。
【0073】
この装置の第一の実施態様によれば、超音波を伝達するための手段の放射面は、実質的に反応室の表面に相応する。この実施態様は本発明により使用されるミニエマルションを段階的に製造するために役立つ。この装置を用いて、超音波を反応室全てに作用させることができる。反応室中では、軸方向の超音波放射圧によって乱流が生じ、これは強力な横方向の混合をもたらす。
【0074】
第二の実施態様によれば、このような装置は流通セルを有する。その際、ケーシングは流通管式反応器として形成されており、これは供給部と排出部とを有し、この場合、反応室は流通管式反応器の部分区間である。流路の幅は、実質的に流れの方向に対して垂直に延びる流路長さである。この中で、放射面は流路の全幅を流れの方向に対して横向きに覆う。この幅に対して垂直な放射面の長さ、つまり流れの方向での放射面の長さは、超音波の作用範囲を定義する。この第一の実施態様の有利な変法によれば、流通管式反応器は、実質的に方形の横断面を有する。方形の一面に、相応する寸法を有する同様に方形の超音波伝達手段を組み込む場合、特に有効かつ均質な超音波処理が保証される。しかし、超音波領域において支配的な乱流の流れの比率に基づいて、たとえば円形の伝達手段も欠点を有することなく使用することができる。さらに、単独の超音波伝達手段の代わりに、流れの方向で見て連続して接続されている複数の別々の伝達手段が配置されていてもよい。この場合、放射面も、反応室の深さも、つまり放射面と流通管の床との間の間隔は変化してよい。
【0075】
特に有利であるのは、超音波を伝達するための手段が、自由な放射面とは反対側の端部が音波変換器と接続されているソノトロードとして構成されていることである。超音波はたとえば逆圧電効果を利用することによって発生することができる。その際、発生装置を用いて高周波の電気振動を(通常、10〜100kHz、有利には20〜40kHz)生じ、圧電式変換器により同一の周波数の機械的な振動に変換し、かつ伝達手段としてソノトロードを用いて、超音波処理すべき媒体に接続する。
【0076】
とくに有利には、ソノトロードは、棒状の、軸方向に放射するλ/2(もしくはλ/2の倍数)の縦型振動子として形成されている。このようなソノトロードは、たとえばその振動ノードに備えられたフランジを用いて、ケーシングの開口部に固定することができる。これによりケーシング中へのソノトロードの通路を耐圧に構成することができるので、音波処理を反応室中の高めた圧力下でも実施することができる。有利にはソノトロードの振動の振幅は制御可能である、つまりそのつど調整される振動の振幅は、オンラインで点検され、かつ場合により自動的に後制御される。
【0077】
実際の振動の振幅の点検はたとえばソノトロード上に設置された圧電変換器または後方接続された評価電子装置を有するひずみゲージにより行うことができる。
【0078】
このような装置のもう1つの有利な実施態様によれば、反応室中に、貫流および混合特性を改善するための内部構造物が備えられている。この内部構造物はたとえば簡単なじゃま板または種々の多孔体であってよい。
【0079】
必要な場合には混合をさらに付加的な攪拌装置によりさらに強力にすることができる。有利には反応室は温度制御可能である。
【0080】
前記の実施態様から、本発明によれば、水性媒体中、反応条件下でその溶解度が、規定の量で溶剤および/またはモノマー液滴が≦1000nmの別々の相として形成されるような程度に小さい有機溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFを使用することができるのみであることは明らかである。さらに形成される溶剤および/またはモノマー液滴の溶解度は、ジオール化合物Aもしくはジカルボン酸化合物Bの主要量を吸収するために十分な大きさでなくてはならない。
【0081】
本発明による方法にとって重要なことは、第一の反応段階でジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物B以外に、有機ジアミン化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物Kおよび/または1分子あたり、少なくとも3つのヒドロキシ基、第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する有機化合物Lを使用することができることである。この場合に重要なことは、単独の化合物G、H、I、KおよびLの全量の合計が、そのつどジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの全量の合計に対して、≦50質量%、有利には≦40質量%、および特に有利には≦30質量%もしくはしばしば≧0.1質量%または≧1質量%およびしばしば≧5質量%であることである。
【0082】
ジアミン化合物Gとして、第一級もしくは第二級アミノ基を2つ有する全ての有機ジアミン化合物が考えられ、この場合、第一級アミノ基が有利である。その際、2つのアミノ基を有する有機基本骨格は、C2〜C20−脂肪族、C3〜C20−脂環式、芳香族またはヘテロ芳香族構造を有していてよい。2つの第一級アミノ基を有する化合物のための例は、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、2−メチル−1,3−ジアミノプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン(ネオペンチルジアミン)、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1−メチル−1,4−ジアミノブタン、2−メチル−1,4−ジアミノブタン、2,2−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,2−ジアミノペンタン、1,3−ジアミノペンタン、1,4−ジアミノペンタン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、3−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、2,4−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノヘキサン、1,4−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、3−メチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、2,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、3,3−ジメチル−1,5−ジアミノヘキサン、N,N−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、3,3′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(ジシアン)、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン(Laromin(登録商標))、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,4−ジアジン(ピペラジン)、1,2−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、m−キシリレンジアミン[1,3−(ジアミノメチル)ベンゼン]ならびにp−キシリレンジアミン[1,4−(ジアミノメチル)ベンゼン]である。当然のことながら、前記の化合物の混合物を使用することもできる。
【0083】
ヒドロキシカルボン酸化合物Hとして、ヒドロキシカルボン酸および/またはそのラクトンを使用することができる。例として以下のものが挙げられる:グリコール酸、D−乳酸、L−乳酸、D,L−乳酸、6−ヒドロキシヘキサン酸(6−ヒドロキシカプロン酸)、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシカプロン酸、p−ヒドロキシ安息香酸、これらの環式誘導体、たとえばグリコリド(1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、D−ジラクチド、L−ジラクチド、D,L−ジラクチド(3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ドデカノリド(オキサシクロトリデカン−2−オン)、ウンデカノリド(オキサシクロドデカン−2−オン)またはペンタデカノリド(オキサシクロヘキサデカン−2−オン)。当然のことながら、種々のヒドロキシカルボン酸化合物Hの混合物を使用することもできる。
【0084】
アミノアルコール化合物Iとして、原則として1のみのヒドロキシル基および1の第二級もしくは第一級アミノ基、しかし有利には1の第一級アミノ基を有する全ての、しかし有利にはC2〜C12−脂肪族、C5〜C10−脂環式もしくは芳香族有機化合物を使用することができる。例として、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−アミノシクロペンタノール、3−アミノシクロペンタノール、2−アミノシクロヘキサノール、3−アミノシクロヘキサノール、4−アミノシクロヘキサノールならびに4−アミノメチルシクロヘキサンメタノール(1−メチロール−4−アミノメチルシクロヘキサン)が挙げられる。当然のことながら、前記のアミノアルコール化合物Iの混合物を使用することもできる。
【0085】
ジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物B以外に、この明細書の範囲でアミノカルボン酸および/またはその相応するラクタム化合物と理解すべきアミノカルボン酸化合物Kもまた使用することができる。たとえば天然由来のアミノカルボン酸、たとえばバリン、ロイシン、イソロイシン、トレオニン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、プロリン、セリン、チロシン、アスパラギンまたはグルタミン、ならびに3−アミノプロピオン酸、4−アミノ酪酸、5−アミノ吉草酸、6−アミノカプロン酸、7−アミノエナント酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノペラルゴン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノラウリン酸およびラクタムのβ−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、7−エナントラクタム、8−カプリロラクタム、9−ペラルゴラクタム、10−デカン酸ラクタム、11−ウンデカン酸ラクタムまたはω−ラウリン酸ラクタムが挙げられる。有利であるのはε−カプロラクタムおよびω−ラウリン酸ラクタムである。当然のことながら、前記のアミノカルボン酸化合物Kの混合物を使用することもできる。
【0086】
場合により本発明による方法で使用することができる別の成分として、1分子あたり少なくとも3のヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する有機化合物Lが挙げられる。例として以下のものが挙げられる:酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリット、ポリエーテルトリオール、グリセリン、糖(たとえばグルコース、マンノース、フルクトース、ガラクトース、グルコサミン、サッカロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチアノース、ケストース、マルトトリオース、ラフィノース、トリメシン酸(1,3,5−ベンゾトリカルボン酸ならびにこれらのエステルまたは無水物)、トリメリット酸(1,2,4−ベンゾトリカルボン酸ならびにこれらのエステルまたは無水物)、ピロメリット酸(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸ならびにこれらのエステルまたは無水物)、4−ヒドロキシイソフタル酸、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、N,N′−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミン。前記の化合物Lは、1分子あたり少なくとも3のヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有していることによって、同時に少なくとも2のポリエステル鎖に組み込むことができるので、化合物Lは、ポリエステル結合において分岐作用もしくは架橋作用を有する。化合物Lの含有率が高いほど、もしくは1分子あたりのアミノ基、ヒドロキシル基および/またはカルボキシル基がより多く存在しているほど、ポリエステル結合における分岐/架橋の度合いは高い。当然のことながら、この場合、化合物Lの混合物を使用することもできる。
【0087】
本発明によれば、有機ジアミン化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物Kおよび/または1分子あたり少なくとも3のヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する有機化合物Lの混合物も使用することができる。
【0088】
本発明により第一の反応段階でジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物B以外に、少なくとも1の前記の化合物G〜Lを使用する場合、化合物AおよびBならびにG〜Lの量は、カルボキシル基および/またはその誘導体(単独の化合物B、H、KおよびLから)の、アミノ基および/またはヒドロキシル基および/またはこれらの誘導体(単独の化合物A、G、H、I、KおよびL)の合計に対する当量比が、0.5〜1.5、通常0.8〜1.3、しばしば0.9〜1.1および好ましくは0.95〜1.05となることに留意しなくてはならない。当量比が1である、つまり、カルボキシル基もしくはカルボキシル基から誘導される基と同じだけのアミノ基およびヒドロキシル基が存在している場合に特に有利である。より良好な理解のために、ジカルボン酸化合物B(遊離酸、エステル、ハロゲン化物または無水物)は、カルボキシル基を2当量、ヒドロキシカルボン酸化合物Hもしくはアミノカルボン酸化合物Kは、そのつどカルボキシル基1当量、および有機化合物Lは、1分子あたりに含有されるカルボキシル基と同じ当量のカルボキシル基を有することに言及しておく。相応して、ジオール化合物Aは、2当量のヒドロキシル基を含有し、ジアミン化合物Gは、2当量のアミノ基を含有し、ヒドロキシカルボン酸化合物Hは、1当量のヒドロキシル基を含有し、アミノカルボン酸化合物Kは、1当量のアミノ基を含有し、かつ有機化合物Lは、分子中のヒドロキシル基もしくはアミノ基と同じ当量のヒドロキシル基もしくはアミノ基を含有する。
【0089】
その際、本発明による方法自体に関して酵素Cは、特に使用される、ジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、有機ジアミン化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物K、1分子中に少なくとも3のヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する有機化合物L、もしくは分散剤D、溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFと相容性であり、かつこれらによって失活しないように選択することは自明である。特定の酵素Cにおいてどの化合物AおよびBならびにD〜Lを使用することができるかは、当業者に周知であるか、または当業者が簡単な前試験を行うことによって確認することができる。
【0090】
ジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物B以外に、前記の化合物G、H、I、Kおよび/またはLを使用する場合、本発明による方法の第一の反応段階は有利には、まず少なくとも部分量のジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、Kおよび/またはL、分散剤Dおよび場合により溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFを少なくとも部分量の水中に導入し、その後、適切な措置によりジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、Kおよび/またはLならびに場合により溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFを含み、≦1000nmの平均液滴直径を有する分散相(ミニエマルション)を形成し、かつこれに引き続き水性媒体に反応温度で、酵素Cの全量ならびに場合により残留しているジオールA、ジカルボン酸B、化合物G、H、I、Kおよび/またはLおよび溶剤Eの残留量を添加するように構成されている。しばしば≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%、または全量のジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、Kおよび/または分散剤D、ならびに場合により溶剤Eを、≧50質量%、≧60質量%、≧70質量%、≧80質量%、≧90質量%、または全量の水を導入し、引き続き≦1000nmの液滴直径を有する分散相を形成し、かつこれに引き続き水性媒体に反応温度で、酵素Cの全量ならびに場合により残留するジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、Kおよび/またはLならびに溶剤Eの残留量を添加する。その際、酵素C、場合により残留するジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、化合物G、H、I、Kおよび/またはLならびに溶剤Eの残留量を水性反応媒体に別々に、または一緒に、不連続的に一度に、不連続的に数回に分けて、ならびに一定の、もしくは変化する流量で連続的に添加することができる。
【0091】
本発明による方法の第一の反応段階は通常、20〜90℃、しばしば35〜60℃、および好ましくは45〜55℃の反応温度および通常0.8〜10バール、有利には0.9〜2バールの圧力および特に1気圧(=1.01バール=大気圧)で行う。
【0092】
さらに、水性反応媒体が第一の反応段階で室温(20〜25℃)の時に≧2〜≦11、有利には≧3〜≦9および好ましくは≧6〜≦8のpH値を有する場合に有利である。特に水性反応媒体中で、酵素Cが最適な作用を有するようにpH値(範囲)を調整する。これがどのようなpH値(範囲)であるかは、当業者に周知であるか、または当業者がいくつかの前試験を行うことによって確認することができる。pH値を調整するための相応する措置、つまり相応する量の酸、たとえば硫酸、塩基、たとえばアルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液、または緩衝物質、たとえばリン酸二水素カリウム/リン酸水素二ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム/塩化アンモニウム、リン酸二水素カリウム/水酸化ナトリウム、ホウ酸ナトリウム/塩酸、ホウ酸ナトリウム/水酸化ナトリウムまたはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/塩酸の添加は当業者に周知である。
【0093】
本発明による方法のために、通常、清澄でしばしば飲料水の品質を有する水を使用する。しかし有利には本発明による方法のために、脱イオン水および第一の反応段階では滅菌された脱イオン水を使用する。その際、第一の反応段階における水の量は、本発明により形成される水性ポリエステル分散液が、そのつど水性ポリエステル分散液に対して、≧30質量%、しばしば≧50質量%および≦99質量%もしくは≧65質量%および≦95質量%およびしばしば≧70質量%および≦90質量%となり、≦70質量%、しばしば≧1〜≦50質量%もしくは≧5〜≦35質量%およびしばしば≧10〜≦30質量%のポリエステル固体含有率に相応するように選択する。本発明による方法は、第一ならびに第二の反応段階で、有利には酸素不含の不活性雰囲気下で、たとえば窒素またはアルゴン雰囲気下で実施されることにも言及する。
【0094】
本発明によれば有利には第一の反応段階の水性ポリエステル分散液に、酵素触媒による重合反応に引き続き、もしくは該反応の終わりに、本発明により使用される酵素Cを失活する(つまり酵素Cの触媒作用を破壊するか、または抑制する)ことができる助剤(失活剤)を添加する。失活剤として、そのつどの酵素Cを失活させることができる全ての化合物を使用することができる。失活剤としてしばしば特に錯化合物、たとえばニトリロ三酢酸またはエチレンジアミン四酢酸もしくはこれらのアルカリ塩またはアニオン性乳化剤、たとえばドデシル硫酸ナトリウムを使用することができる。その量は通常、そのつどの酵素Cを失活させるために十分であるように計量される。しばしば、使用される酵素Cを、水性ポリエステル分散液を≧95℃または≧100℃に加熱することにより失活させることも可能であり、その際、通常は沸騰反応を抑制するために、不活性ガスを加圧しながら圧入する。当然のことながら、特定の酵素Cを、水性反応媒体のpH値を変えることによって失活させることも可能である。
【0095】
本発明による方法により第一の反応段階で得られるポリエステルは、−100℃〜+200℃のガラス転移温度を有していてもよい。使用目的に依存して、しばしばそのガラス転移温度が一定の範囲内にあるポリエステルが必要とされる。本発明による方法で使用される成分AおよびBならびにG〜Lの適切に選択することにより、当業者であればそのガラス転移温度が所望の範囲にあるポリエステルを適切に製造することが可能である。
【0096】
ガラス転移温度Tgは、ガラス転移温度の限界値を意味し、G.KanigのKolloid-Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymer、第190巻、第1頁、式1によると、このガラス転移温度は分子量の増大とともに限界値に向かう傾向にある。このガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中点値測定、DIN53765)により測定する。
【0097】
本発明による方法により得られる水性ポリエステル分散液のポリエステル粒子は、10〜1000nm、しばしば50〜700nm、大抵は100〜500nmにある平均粒径を有する[準弾性光散乱により確認された累積数平均値を記載(ISO標準13321)]。
【0098】
本発明による方法により第一の反応段階で得られるポリエステルは、通常、≧2000〜≦1000000g/mol、しばしば≧3000〜≦500000g/molまたは≧5000〜≦100000g/molおよびしばしば≧5000〜≦50000g/molまたは≧6000〜≦30000g/molの範囲の質量平均分子量を有する。質量平均分子量の測定は、DIN55672−1に準じてゲル透過クロマトグラフィーにより行う。
【0099】
方法にとって重要なことは、第二の反応段階でエチレン性不飽和モノマーFを、第一の反応段階で形成されたポリエステルを含有する水性媒体中でラジカル重合させることである。その際、この重合は有利にはラジカルにより開始される水性乳化重合の条件下で行う。この方法は、既に数多く記載されており、従って当業者には十分に知られている(たとえば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第8巻、第659〜677頁、John Wiley & Sons. Inc.、1987年、D.C.Blacklay著、Emulsion Polymerisation、第155〜465頁、Applied Science Publischers、エセックス、1975年、D.C.Blacklay著、Polymer Latices、第2版、第1巻、第33〜415頁、Chapman & Hall、1997年、H.Warson著、The Applications of Synthetic Resin Emulsions、第49〜244頁、Ernest Benn, Ltd.、ロンドン、1972年、D.Diederich著、Chemie in unserer Zeit、1990年、24号、第135〜142頁、Verlag Chemie、ヴァインハイム、J.Piirma著、Emulsion Polymerisation、第1〜287頁、Academic Press、1982年、F.Hoelscher著、Dispersionen synthetischer Hochpolymerer、第1〜160頁、Springer-Verlag、ベルリン、1969年および特許文献DE−A4003422号を参照のこと)。このラジカル的に開始される水性乳化重合は通常、エチレン性不飽和モノマーを、通常は分散助剤の併用下で水性媒体中に分散分布させ、そして少なくとも1種の水溶性ラジカル重合開始剤を用いて重合温度で重合させることによって実施される。
【0100】
第二の反応段階で安定した水性ポリマー分散液を得るために、分散剤Dおよびその量は、第一の反応段階で形成されたポリエステル粒子も、第二の反応段階の重合のために使用されるエチレン性不飽和モノマーFも、モノマー液滴の形で、ならびにラジカル重合反応で形成されたポリマー粒子は水性媒体中で分散相として安定化されるように計量しなくてはならない。その際、第二の反応段階の分散剤Dは、第一の反応段階の分散剤と同一であってよい。しかしまた、第二の反応段階で別の分散剤Dを添加することも可能である。分散剤Dの全量を水性媒体にすでに第一の反応段階で添加することも可能である。しかし、分散剤Dの部分量を第二の反応段階で、ラジカル重合の前、ラジカル重合の最中に、またはラジカル重合の後で水性媒体に添加することも可能である。これは特に、第一の反応段階で、その他の分散剤Dまたはより少ない量の分散剤Dを使用する場合、または第二の反応段階で、エチレン性不飽和モノマーFの一部または全量を、水性モノマーエマルションの形で使用する場合に該当する。どのような分散剤Dを、どのような量で第二の反応段階において有利に付加的に使用するかは、当業者には知られているか、または当業者であれば、簡単な前試験で確認することができる。第一の反応段階で添加される分散剤Dの量は、そのつど本発明による方法で使用される分散剤の全量に対して、しばしば≧1〜≦100質量%、≧20〜≦90質量%または≧40〜≦70質量%であり、従って第二の反応段階では≧0〜≦99質量%、≧10〜≦80質量%、または≧30〜≦60質量%である。
【0101】
分散剤Dとして有利に使用される乳化剤は、有利には、そのつどジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bおよびエチレン性不飽和モノマーFの全量の合計に対して、0.005〜20質量%、有利には0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%の全量で使用される。
【0102】
分散剤Dとして付加的に、または乳化剤の代わりに使用される保護コロイドの全量は、そのつどジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bおよびエチレン性不飽和モノマーFの全量の合計に対して、しばしば0.1〜10質量%、および好ましくは0.2〜7質量%である。
【0103】
しかし有利には乳化剤、特に非イオン性乳化剤を単独の分散剤Dとして使用する。
【0104】
本発明による方法で使用される水の全量をすでに第一の反応段階で使用することができる。しかし水の部分量を第一および第二の反応段階で添加することも可能である。第二の反応段階における水の部分量の添加は、特にエチレン性不飽和モノマーFを第二の反応段階で水性モノマーエマルションの形で添加し、かつラジカル開始剤を該ラジカル開始剤の相応する水溶液または水性分散液の形で添加する場合に行う。その際、水の全量は通常、本発明により形成される水性ポリマー分散液が、そのつど水性ポリマー分散液に対して≧30質量%、しばしば≧40質量%および≦99質量%もしくは≧45〜≦95質量%およびしばしば≧50〜≦90質量%の含水率を有し、相応して≦70質量%、しばしば≧1〜≦60質量%もしくは≧5〜≦55質量%およびしばしば≧10および≦50質量%であるように選択される。第一の反応段階で添加される水の量は、そのつど本発明による方法で使用される水の全量に対して、しばしば≧10〜≦100質量%、≧40〜≦90質量%、または≧60〜≦80質量%であり、従って第二の反応段階で≧0〜≦90質量%、≧10〜≦60質量%または≧20〜≦40質量%である。
【0105】
本発明による方法で使用されるモノマーFの全量は、第一の反応段階でも第二の反応段階でも使用することができる。しかしモノマーFの部分量を第一および第二の反応段階で添加することも可能である。第二の反応段階でのモノマーFの部分量もしくは全量の添加は、特に水性モノマーエマルションの形で行う。その際、モノマーFの全量は通常、本発明により形成される水性ポリマー分散液が、≦70質量%、しばしば≧1〜≦60質量%もしくは≧5〜≦55質量%およびしばしば≧10〜≦50質量%のポリマーの固体含有率(=第一の反応段階からのポリエステルと、第二の反応段階におけるエチレン性不飽和モノマーFの重合により得られるポリマーとの合計)となるように選択する。第一の反応段階で添加されるモノマーFの量は、そのつどモノマーFの全量に対して、しばしば≧0〜≦100質量%、≧20〜≦90質量%または≧40〜≦70質量%であり、従って第二の反応段階では≧0〜≦100質量%、≧10〜≦80質量%、または≧30〜≦60質量%である。
【0106】
本発明によれば、ジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの全量の合計の、エチレン性不飽和モノマーFの全量に対する合計の量比は通常1:99〜99:1、有利には1:9〜9:1および好ましくは1:5〜5:1である。
【0107】
有利には第一の反応段階でモノマーFの部分量、しかし有利には全量を使用する。これは、第一の反応段階で形成されるポリエステル粒子が、モノマーFを溶解して含有しているか、またはこれにより膨潤している、もしくはポリエステルがモノマーFの液滴中に溶解して、もしくは分散しているという利点を有する。いずれも有利には第一の反応段階のポリエステルおよび第二の反応段階のポリマーとから構成されているポリマー(ハイブリッド)粒子の形成に作用する。
【0108】
本発明による方法により第二の反応段階でモノマーFから得られるポリマーは、−70〜+150℃のガラス転移温度を有する。計画された使用目的に依存して、しばしばそのガラス転移温度が一定の範囲内にあるポリマーが必要とされる。本発明による方法で使用されるモノマーFを適切に選択することにより、当業者は、そのガラス転移温度が所望の範囲にあるポリマーを適切に製造することができる。
【0109】
フォックス(Fox)(T.G.Fox、Bull.Am.Phys.Soc.1956年[シリーズII]1、第123頁およびUllmann's Encyclopaedie der technischen Chemie、第19巻、第18頁、第4版、Verlag Chemie、Weinheim、1980)によれば、最大で弱く架橋したコポリマーのガラス転移温度に関して以下の近似値が該当する:
1/Tg=X1/Tg1+X2/Tg2+…Xn/Tgn
上記式中で、X1、X2、…Xnは、モノマー1、2〜nの質量分率であり、かつTg1、Tg2、…Tgnは、そのつどモノマー1、2、…nのみから構成されたポリマーのガラス転移温度をケルビンで示している。
【0110】
多くのモノマーのホモポリマーのTg値は公知であり、たとえばUlmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、第A21巻、第196頁、Verlag Chemie、ヴァインハイム、1992年に記載されており、ホモポリマーのガラス転移温度についての他の出典は、たとえばJ.Brandrup、E.H.Immergut著、Polymer Handbook、第1版、J. Wiley、ニューヨーク、1966年、第2版、J.Wiley、ニューヨーク、1975年および/または第3版、J.Wiley、ニューヨーク、1989年である。
【0111】
本発明による方法について特徴的なのは、第二の反応段階でラジカルにより誘発された重合反応の開始のために、いわゆる水溶性の、また同様にいわゆる油溶性ラジカル開始剤も使用することができることである。この際、水溶性ラジカル開始剤とは通常は、ラジカルにより開始される水性乳化重合の際に使用される全てのラジカル開始剤であると理解され、その一方で油溶性ラジカル開始剤とは、当業者が通常、ラジカルにより開始される溶液重合の際に使用する全ての油溶性ラジカル開始剤であると理解される。本明細書の範囲内において、水溶性ラジカル開始剤として、20℃および大気圧で脱イオン水中で>1質量%の溶解性を有する全てのラジカル開始剤が理解され、その一方で油溶性ラジカル開始剤として、前記の条件下で<1質量%の溶解性を有する全てのラジカル開始剤が理解される。しばしば、水溶性ラジカル開始剤は、前記の条件下で、≧2質量%、≧5質量%、または≧10質量%の水溶性を有し、その一方で油溶性ラジカル開始剤はしばしば≦0.9質量%、≦0.8質量%、≦0.7質量%、≦0.6質量%、≦0.5質量%、≦0.4質量%、≦0.3質量%、≦0.2質量%または≦0.1質量%の水溶性を有する。
【0112】
水溶性ラジカル重合開始剤は、この際たとえば、ペルオキシドならびにアゾ化合物であってよい。勿論、レドックス開始剤系も考えられる。ペルオキシドとしては、原則的に、無機ペルオキシド、たとえば過酸化水素またはペルオキソ二硫酸塩、たとえばペルオキソ二硫酸のモノ−またはジ−アルカリ金属−、またはアンモニウム塩、たとえばモノ−およびジ−ナトリウム−、−カリウム−またはアンモニウム塩、または有機ペルオキシド、たとえばアルキルヒドロペルオキシド、たとえばt−ブチル−、p−メンチル−またはクミルヒドロペルオキシドを使用することができる。アゾ化合物として実質的に2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)および2,2′−アゾビス(アミジノプロピル)ジヒドロクロリド(AIBA、Wako ChemicalsのV−50に相応する)を使用する。レドックス開始剤系のための酸化剤として実質的に上記の過酸化物が考えられる。相応する還元剤としては、酸化数が低い硫黄化合物、たとえばアルカリ金属亜硫酸塩、たとえば亜硫酸カリウムおよび/または亜硫酸ナトリウム、アルカリ金属亜硫酸水素塩、たとえば亜硫酸水素カリウムおよび/または亜硫酸水素ナトリウム、アルカリ金属メタ重亜硫酸塩、たとえばメタ重亜硫酸カリウムおよび/またはメタ重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸塩、たとえばホルムアルデヒドスルホキシル酸カリウムおよび/またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、アルカリ金属塩、特に脂肪族スルフィン酸のカリウム塩および/またはナトリウム塩、ならびにアルカリ金属硫化水素、たとえば硫化水素カリウムおよび/または硫化水素ナトリウム、多価金属塩、たとえば硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)、燐酸鉄(II)、エンジオール、たとえばジヒドロキシマレイン酸、ベンゾインおよび/またはアスコルビン酸ならびに還元糖類、たとえばソルボース、グルコース、フルクトースおよび/またはジヒドロキシアセトンを使用することができる。
【0113】
有利には水溶性ラジカル開始剤として、ペルオキソ二硫酸のモノ−またはジ−アルカリ金属−またはアンモニウム塩、たとえばペルオキシ二硫酸二カリウム、ペルオキシ二硫酸二ナトリウムまたはペルオキシ二硫酸二アンモニウムが使用される。前記の水溶性ラジカル開始剤の混合物を使用できることは勿論である。
【0114】
油溶性ラジカル開始剤としては例示的に、ジアルキル−もしくはジアリールペルオキシド、たとえばジ−tert−アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキセン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタンまたはジ−tert−ブチルペルオキシド、脂肪族および芳香族ペルオキシエステル、たとえばクミルペルオキシネオデカノアート、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ペルオキシネオデカノアート、tert−アミルペルオキシネオデカノアート、tert−ブチルペルオキシネオデカノアート、tert−アミルペルオキシピバラート、tert−ブチルペルオキシピバラート、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシジエチルアセタート、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルペルオキシイソブタノアート、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート、tert−ブチルペルオキシアセタート、tert−アミルペルオキシベンゾアートまたはtert−ブチルペルオキシベンゾアート、ジアルカノイルまたはジベンゾイルペルオキシド、たとえばジイソブタノイルペルオキシド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンまたはジベンゾイルペルオキシド、ならびにペルオキシカルボナート、たとえばビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ビス(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカルボナート、ジ−tert−ブチルペルオキシジカルボナート、ジセチルペルオキシジカルボナート、ジミリスチルペルオキシジカルボナート、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、またはtert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシル−カルボナートが挙げられる。
【0115】
有利には油溶性ラジカル開始剤として、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート(Trigonox(登録商標)21)、t−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート(Trigonox(登録商標)C)、t−アミルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート(Trigonox(登録商標)42S)、t−ブチルペルオキシイソブタノエート、t−ブチルペルオキシジエチルアセテート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、(Trigonox(登録商標)BPIC)およびt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート(Trigonox(登録商標)117)を含む群から選択される化合物を使用する。前記の油溶性ラジカル開始剤の混合物を使用できることは勿論である。
【0116】
特に有利には水溶性ラジカル開始剤を使用する。
【0117】
使用されるラジカル開始剤の全体量は、そのつどモノマーFの全量に対して、0.01〜5質量%、しばしば0.5〜3質量%、大抵は1〜2質量%である。
【0118】
第二の反応段階のラジカル重合反応のための反応温度として、使用されるラジカル開始剤に依存して、0〜170℃の全範囲が考慮される。この際通常は、温度50〜120℃、しばしば60〜110℃、大抵は70〜100℃が適用される。第二の反応段階のラジカル重合反応は、1atm(絶対圧)より小さい圧力、これと同じ圧力またはこれより大きい圧力で実施することができ、この場合、この重合温度は100℃を超過しており、かつ170℃までであってよい。易揮発性のモノマー、たとえばエチレン、ブタジエンまたは塩化ビニルを、圧力を高めて重合させることは好ましい。この場合、1.2、1.5、2.5、10、15バールの圧力または更に高い値を設定してよい。乳化重合を低圧で実施する場合には、950ミリバール、特に900ミリバール、有利には850ミリバール(絶対圧)の圧力に調節される。有利には、大気圧で不活性雰囲気下にラジカル重合反応を実施する。
【0119】
この際、第二の反応段階のラジカル重合は通常、≧90質量%、有利には≧95質量%、特に≧98質量%までのモノマーFの変換率で行われる。
【0120】
特に有利には、本発明による方法は、第一の反応段階でまず少なくとも部分量のジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤Dならびに場合により溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFを、少なくとも部分量の水に導入し、その後、適切な措置によりジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、ならびに場合により溶剤Eおよび/または場合によりエチレン性不飽和モノマーFを含有し、≦1000nmの平均液滴径を有する分散相を形成し、かつこれに引き続き、水性媒体に反応温度で、酵素Cの全量ならびに場合により残留するジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bおよび溶剤Eの残留量を添加し、かつポリエステル形成の終了後に、第二の反応段階で、場合により残留する水、分散剤Dおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFの残留量ならびにラジカル開始剤の全量を添加して実施する。その際、場合により残留する水、分散剤Dおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFの残留量ならびにラジカル開始剤の全量の添加は、別々に、または一緒に、一度に、複数回に分けて不連続的に、または一定の、もしくは変化する流量で連続的に行うことができる。
【0121】
本発明による方法により得られる水性ポリマー分散液は、有利には接着剤、シーラント、塑性モルタル、紙用塗料、印刷インク、化粧品および塗料中の成分として、皮革およびテキスタイルの処理のために、繊維結合のために、ならびに鉱物性結合剤もしくはアスファルトの変性のために適切である。
【0122】
さらに、本発明により得られる水性ポリマー分散液は、乾燥させることによって相応するポリマー粉末に変換することができることが重要である。相応する乾燥法、たとえば凍結乾燥または噴霧乾燥は当業者に公知である。
【0123】
本発明による方法により得られるポリマー粉末は、有利にはプラスチック調製物中の顔料、充填剤として、接着剤、シーラント、塑性モルタル、紙用塗料、印刷インク、化粧品、粉体塗料および塗料中の成分として、皮革およびテキスタイルの処理のために、繊維結合のために、ならびに鉱物性結合剤もしくはアスファルトの変性のために適切である。
【0124】
本発明による方法は、ポリエステルの生成物特性とポリマーの生成物特性とが一体化された、新規の水性ポリマー分散液を得るための、簡単で、かつ安価な方法を提供する。
【0125】
以下の非限定的な例は、本発明を詳細に説明するものである。
【0126】
実施例
窒素雰囲気下に、20〜25℃(室温)で、セバシン酸ジエチルエステル(Sigma−Aldrich Inc.98質量%)1.08g(4.1ミリモル)、ポリエーテルジオール(ポリTHF(登録商標)1000、BASF AG社の市販品)4.1g(4.1ミリモル)、スチレン0.85gおよびn−ヘキサデカン0.3gを電磁攪拌機で攪拌することによって均一に混合する。この混合物に撹拌下で、Lutensol(登録商標)AT50(非イオン性乳化剤、BASF AG社の市販品)0.3gおよび脱イオン水30gからなる均質な溶液を添加した。引き続き、得られた不均一な混合物を10分間、電磁攪拌機を用いて毎分60回転(rpm)で攪拌し、その後同様に窒素下で80mlの円すい形の肩を有する容器に移し、かつウルトラ・ツラックスT25装置(Janke&Kunkel GmbH&Co.社)を用いて20500rpmで30秒間攪拌した。その後、得られた液状の不均質な混合物を、≦1000nmの平均液滴直径を有する液滴(ミニエマルション)に変換するために、超音波プローブを用いて3分間、超音波処理した(70W、Bandelin electronic GmbH&Co.社のUW2070装置)。このようにして製造したミニエマルションに、窒素下で一度に、アミノリパーゼPS(シュードモナス・セパシア、Sigma−Aldrich Inc.の市販品、#53464−1)0.18g、Lutensol(登録商標)AT50 0.18gおよび脱イオン水18gから製造された均質な酵素混合物を添加し、次いで得られた混合物を撹拌下で50℃に加熱し、かつ該混合物を窒素雰囲気下にこの温度で20時間攪拌した。
【0127】
これに引き続き、酵素を失活させるために、撹拌下でドデシル硫酸ナトリウム0.06gを添加し、かつ水性のポリエステル分散液を50℃でさらに30分間攪拌した。引き続き、得られた水性のポリマー分散液に、窒素雰囲気下および撹拌下に、ペルオキソ二硫酸ナトリウム0.04gおよび脱イオン水0.36gからなる溶液を添加し、重合混合物を80℃に加熱し、この温度で2時間攪拌し、次いで得られた水性ポリマー分散液を室温に冷却した。
【0128】
約14.3質量%の固体含有率を有する水性ポリマー分散液約44gが得られた。平均粒径は約450nmまで測定された。得られたポリマーは、約100℃のガラス転移温度ならびに43℃の融点を有していた。
【0129】
固体含有率を、水性ポリマー分散液の定義された量(約5g)を180℃で乾燥棚中で、質量一定になるまで乾燥させることで測定した。それぞれ、2回の別個の測定を実施した。実施例中に挙げた値は、この両方の測定結果の平均値である。
【0130】
ポリマー粒子の平均粒子直径は、0.005〜0.01質量%の水性ポリマー分散液を用いて23℃でMalvern Instruments社(英国)のAutosizer IICを用いて動的光散乱法により測定した。測定された自動補正機能(ISO標準13321)の累積評価(累積数平均)の平均直径を記載する。
【0131】
ガラス転移温度もしくは融点の測定は、DIN53765に記載されているとおりに、Mettler-Toledo Int.Inc.社のTA8000シリーズのDSC820装置を用いて行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリマー分散液の製造方法において、第一の反応段階において水性媒体中で、
a)ジオール化合物Aおよび
b)ジカルボン酸化合物Bを、
c)ジオール化合物Aと、ジカルボン酸化合物Bとの重縮合反応を触媒する酵素Cおよび
d)分散剤Dならびに場合により
e)水中での溶解度が小さい有機溶剤Eおよび/または
f)エチレン性不飽和モノマーFの存在下に
ポリエステルへと反応させ、かつこれに引き続き、該ポリエステルの存在下に第二の反応段階でエチレン性不飽和モノマーFをラジカル重合することを特徴とする、水性ポリマー分散液の製造方法。
【請求項2】
第一の反応段階でジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFの少なくとも一部の量が、水性媒体中で1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相として存在していることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
まずジオール化合物A、ジカルボン酸化合物B、分散剤Dならびに場合により溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFの一部の量を、水の少なくとも一部に導入し、その後、適切な措置によりジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bならびに場合により溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFを含有し、1000nm以下の平均液滴直径を有する分散相を形成し、かつこれに引き続き水性媒体に、反応温度で酵素Cの全量ならびに場合により残留するジオール化合物A、ジカルボン酸化合物Bおよび溶剤Eの残留量を添加することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの量比を、ジカルボン酸B対ジオール化合物Aのモル比が0.5〜1.5となるように選択することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
第一の反応段階でジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物B以外に、ジアミン化合物G、ヒドロキシカルボン酸化合物H、アミノアルコール化合物I、アミノカルボン酸化合物Kおよび/または1分子あたり、少なくとも3つのヒドロキシル基、第一級もしくは第二級アミノ基および/またはカルボキシル基を有する有機化合物Lを使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
個々の化合物G、H、I、KおよびLの全量が、ジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの全量に対して、50質量%以下であることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
化合物AおよびBならびにG〜Lの量を、(個々の化合物A、G、H、I、KおよびLからの)アミノ基および/またはヒドロキシル基および/またはこれらの誘導体の合計に対する(個々の化合物B、H、KおよびLからの)カルボキシル基および/またはこれらの誘導体の当量比が、0.5〜1.5となるように選択することを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
酵素Cとして、加水分解酵素および/または転移酵素を使用することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
酵素Cとして、リパーゼおよび/またはカルボキシエステラーゼを使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
分散剤Dとして、非イオン性乳化剤を使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
第一の反応段階における水性媒体が、3以上9以下のpH値を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ジオール化合物Aとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,2−ジメチル-1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオールおよび/または1,12−ドデカンジオールを使用し、かつジカルボン酸化合物Bとして、ブタン二酸、ヘキサン二酸、デカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸および/またはイソフタル酸ならびにこれらの相応するジメチルエステルを使用することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
化合物AおよびBならびに場合によりG〜Lを、得られるポリエステルが-100〜+200℃のガラス転移温度を有するように選択することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
第一の反応段階で溶剤Eおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFを使用することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
水中での溶解度が小さい有機溶剤Eを、第一の反応段階の水の全量に対して0.1〜40質量%の量で使用することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
第一の反応段階でエチレン性不飽和モノマーFを使用するが、溶剤Eを使用しないことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
エチレン性不飽和モノマーFが、わずかな水溶性を有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
ジオール化合物Aおよびジカルボン酸化合物Bの全量の合計の、エチレン性不飽和モノマーFの全量に対する量比が、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
エチレン性不飽和モノマーFとして、
1〜12個の炭素原子を有するアルカノールおよび/またはスチレンのアクリル酸および/またはメタクリル酸のエステル 50〜99.9質量%、または
スチレンおよびブタジエン 50〜99.9質量%、または
塩化ビニルおよび/または塩化ビニリデン 50〜99.9質量%、または
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、吉草酸のビニルエステル、長鎖の脂肪酸のビニルエステルおよび/またはエチレン 40〜99.9質量%
を含有するモノマー混合物を使用することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
第一の反応段階でのポリエステル形成の終了後の反応混合物に、場合により残留する水、分散剤Dおよび/またはエチレン性不飽和モノマーFの残留量ならびにラジカル開始剤の全量を第二の反応段階で添加することを特徴とする、請求項3から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法により得られる、水性ポリマー分散液。
【請求項22】
接着剤、シーラント、塑性モルタル、紙用塗料、印刷インク、化粧品および塗料中の成分として、皮革およびテキスタイルの処理のため、繊維結合のため、ならびに鉱物性結合剤もしくはアスファルトの変性のための請求項21記載の水性ポリマー分散液の使用。
【請求項23】
請求項21記載の水性ポリマー分散液を乾燥させることによるポリマー粉末の製造。
【請求項24】
プラスチック調製物中の顔料、充填剤として、接着剤、シーラント、塑性モルタル、紙用塗料、印刷インク、化粧品、粉体塗料および塗料中の成分として、皮革およびテキスタイルの処理のため、繊維結合のため、ならびに鉱物性結合剤もしくはアスファルトの変性のための、請求項23記載のポリマー粉末の使用。

【公表番号】特表2008−545818(P2008−545818A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511686(P2008−511686)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062317
【国際公開番号】WO2006/122922
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】