説明

水性ポリマー分散液

本発明は、水性ポリマー分散液に関し、これは、水と、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、ビニルエステル、および塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも2つのモノマーからなる分散コポリマーとに加えて、エステル基またはエーテル基によって主鎖に結合される側鎖を有する櫛型ポリマーを含む。前記水性ポリマー分散液は、非常に効果的であり、機械的性質の大きな増加、多孔性および吸水性の低減をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリマー分散液の分野、ならびにそれらを水硬性および潜在水硬性結合剤と共に使用することに関し、特に、セメントおよびコンクリート技術の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
セメント系結合剤の精製のためのポリマー分散液の使用は、しばらく前から既知である。しかしながら、市販の水性ポリマー分散液の添加は、多孔性および吸水を有意に低減させ、滑らかな基質上の引張付着強度を増加させるために、それらが非常に高用量で添加されなければならないという不都合をもたらす。
【0003】
欧州特許第0 222 932A2号は、セメント系材料の多孔性を低減させるために大量の非晶質シリカを有する水性ポリマー分散液の使用を記載する。この水性ポリマー分散液の任意の成分として、スルホン化アミノ−s−トリアジン樹脂、スルフアミン酸−メラミン樹脂、およびナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物が液化剤として開示される。スルホン化アミノ−s−トリアジン樹脂、スルフアミン酸−メラミン樹脂、およびナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物は、既知のコンクリート液化剤である。しかしながら、概して、ポリマー分散液とこれらのコンクリート液化剤との組み合わせが、加工性に関して主要な問題を有するか、またはそれらが非常に高用量で使用されなければならないことは、特に不都合であることが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0 222 932A2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、少量が使用される場合であっても水硬性または潜在水硬性組成物の良好な加工が可能であり、それでもなお機械的性質の有意な増加、多孔性および硬化建築材料の吸水の低減を確保する、水性ポリマー分散液を提供するという問題に取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、この問題は、請求項1に記載の水性ポリマー分散液によって解決できることが見出されている。
【0007】
その中に含有される、エステル基またはエーテル基によって主鎖に結合される側鎖を有する櫛型ポリマーは、水性ポリマー分散液の主要な成分に相当し、本発明において中心的役割を果たす。
【0008】
かかる水性ポリマー分散液の水硬性および潜在水硬性結合剤への添加は、非常に効率的に、その機械的性質を増加させ、かつそれらの多孔性および吸水を低減させることが見出されている。ここでの主要な利点は、既知の水性ポリマー分散液と比較して有意に少ない量を使用して、良好な加工、ならびに機械的性質および多孔性または吸水の改善を達成できるということである。
【0009】
本発明の他の態様は、さらなる独立請求項の範囲の対象である。本発明の特に好ましい実施形態は、従属請求項の範囲の対象である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の態様では、本発明は、次のものを含む水性ポリマー分散液に関する:
a)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、ビニルエステル、および塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも2つのモノマーからなる、少なくとも1つの分散コポリマーCP、
b)エステル基またはエーテル基によって主鎖に結合される側鎖を有する少なくとも1つの櫛型ポリマーKP、
ならびに
c)水。
【0011】
本明細書で、「ポリマー分散液」は、水相中のポリマー粒子の分散液を意味することが理解される。特に、分散液は、長時間安定であり、すなわち、典型的に室温で少なくとも1週間沈殿しない。
【0012】
櫛型ポリマーは、側鎖がエステル基またはエーテル基によってそれに結合される、線状ポリマー鎖(=主鎖)からなる。本明細書で側鎖は、比喩的に言えば「櫛」の「歯」である。
【0013】
本明細書のCP、KP、DHM、VR、PEV、K1、K2等の太字で示された記号は、理解および特定を容易にする目的でのみそのようにされている。
【0014】
ポリマー分散液は、少なくとも1つの分散コポリマーCPを含有する。このポリマーは、関連するモノマーのフリーラジカル重合によって重合することができる。重合は、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、酢酸ビニル、および塩化ビニルからなる群から選択されるモノマーから直接に乳濁または懸濁重合によって達成される。好ましくは、分散コポリマーCPは、2つまたは3つ、より好ましくは2つの、異なるモノマーから生成される。
【0015】
モノマーに由来する構造の配列は、形成されたコポリマー中で、ブロックとして交互に、または無作為に配列されてもよい。
【0016】
好ましくは、モノマーは、13個未満、より好ましくは9個未満の炭素原子を有する。好適なアクリル酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルは、特に、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、およびメタクリル酸2−エチルヘキシルである。好適なビニルエステルは、特に、酢酸ビニル、および分枝脂肪酸のビニルエステル、特に、2,2−ジメチル酪酸、2,2−ジメチルバレリアン酸、2,2−ジメチル酪酸、ネオデカン酸、特に、ShellおよびHexionによってVersatic(登録商標)、特にVersatic(登録商標)10の商品名の下で販売されるビニルエステルである。かかる分枝脂肪酸のビニルエステルは、Hexionによって、特にVeoVa(登録商標)モノマー、好ましくはVeoVa(登録商標)Monomer9およびVeoVa(商標)Monomer10として市販されている。
【0017】
特に好適なポリマーは、ブタジエン/スチレンコポリマー、アクリル酸/スチレンコポリマー、メタクリル酸/スチレンコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル/メタクリル酸アルキルコポリマー、およびスチレン/メタクリル酸アルキルコポリマー、およびスチレン/メタクリル酸アルキルコポリマーである。
【0018】
分散コポリマーCPとして最も好ましいのは、ブタジエン/スチレンコポリマーである。
【0019】
ポリマー粒子のサイズは、好ましくは50ナノメートル〜50マイクロメートル、好ましくは500ナノメートル〜30マイクロメートルである。粒径に起因して、ポリマー分散液は、ほぼ不透明であり、天然で典型的に乳白色を有する。当然のことながら、色素の添加によって任意の所望の色を設定することができる。
【0020】
分散コポリマーCPの含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、好ましくは10重量%〜60重量%、特に25重量%〜45重量%である。
【0021】
さらに、ポリマー分散液は、エステル基またはエーテル基によって主鎖に結合される側鎖を有する少なくとも1つの櫛型ポリマーKPを含有する。
【0022】
一方では、エーテル基によって組まれる線状ポリマーに結合される側鎖を有する櫛型ポリマーが、好適な櫛型ポリマーKPである。
【0023】
エーテル基によって組まれる線状ポリマーに結合される側鎖は、ビニルエーテルまたはアリルエーテルの重合によって導入されてもよい。
【0024】
かかる櫛型ポリマーは、例えば、国際公開第2006/133933 A2号に記載され、開示され、この公開の内容は、参照により特に本明細書に組み込まれる。特に、ビニルエーテルまたはアリルエーテルは、式(II)を有する。
【0025】
【化1】

【0026】
ここで、R’は、H、または1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素残基、または5〜8個のC原子を有する脂環式炭化水素残基、または任意に置換された、6〜14個の炭素原子を有するアリール残基である。R”は、Hまたはメチル基であり、R”’は、置換されていないまたは置換されたアリール残基、特にフェニル残基である。
【0027】
さらに、pは、0または1であり、mおよびnは、各々独立して2、3、または4であり、かつxおよびyおよびzは、各々独立して0〜350の範囲の値である。
【0028】
s5、s6、およびs7と指定される式(II)の部分構造要素の配列は、ブロックとして交互に、または無作為に配列されてもよい。
【0029】
特に、かかる櫛型ポリマーは、ビニルエーテルまたはアリルエーテルと、無水マイレン酸、マイレン酸、および/または(メタ)アクリル酸とのコポリマーである。
【0030】
他方では、エステル基によって組まれる線状ポリマーに結合される側鎖を有する櫛型ポリマーが、好適な櫛型ポリマーKPである。このタイプの櫛型ポリマーKPは、エーテル基によって組まれる線状ポリマーに結合される側鎖を有する櫛型ポリマーよりも好ましい。
【0031】
特に好ましい櫛型ポリマーKPは、式(I)のコポリマーである。
【0032】
【化2】

【0033】
ここで、Mは、独立してH、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価もしくは三価金属イオン、アンモニウムイオン、または有機アンモニウム基である。本明細書で、「独立して」という用語は、同一の分子内の置換基が異なる有効な意味を有し得ることを意味することが理解される。例えば、式(I)のコポリマーは、同時に、カルボン酸基およびカルボン酸ナトリウム基を有してもよく、すなわち、Mについてこの場合、独立してHおよびNaを意味する。
【0034】
一方で、イオンMが結合されるのはカルボン酸塩であるが、他方で、多価イオンMの場合、電荷は、対イオンによって平衡させられなければならないことは当業者に明白である。
【0035】
さらに、置換基Rは、各々独立して水素またはメチル基である。
【0036】
さらに、置換基Rは、各々独立して−[AO]−Rである。置換基Rは、各々独立してC−〜C20−アルキル基、−シクロアルキル基、−アルキルアリール基、または−[AO]−Rである。いずれの場合も、置換基Aは、独立してC−〜C−アルキレン基であり、かつRは、C−〜C20−アルキル基、−シクロヘキシル基、またはアルキルアリール基である一方で、qは、2〜250、特に8〜200、より好ましくは11〜150の値である。
【0037】
さらに、置換基Rは、各々独立してNH、−NR、−ORNRである。ここで、RおよびRは、各々独立してC−〜C20−アルキル基、−シクロアルキル基、もしくは−アルキルアリール基、もしくは−アリール基であるか、またはヒドロキシアルキル基であるか、またはアセトキシエチル(CH−CO−O−CH−CH−)、もしくはヒドロキシイソプロピル(HO−CH(CH)−CH−)、もしくはアセトキシイソプロピル(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)基であるか、あるいはRおよびRは、窒素がその一部である環を共に形成して、モルホリンまたはイミダゾリン環を構築する。
【0038】
さらに、置換基RおよびRは、各々独立してC−〜C20−アルキル基、−シクロアルキル基、−アルキルアリール基、−アリール基、またはヒドロキシアルキル基である。
【0039】
s1、s2、s3、およびs4と指定される式(I)の部分構造要素の配列は、ブロックとして交互に、または無作為に配列されてもよい。
【0040】
最後に、指数a、b、c、およびdは、構造単位s1、s2、s3、およびs4のモル比である。これらの構造要素は、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.3)、
特に、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.5)/(0〜0.1)、
好ましくは、
a/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.3)/(0〜0.06)、
の比率を有するが、a+b+c+d=1であることを条件とする。好ましくは、和c+dは、0よりも大きい。
【0041】
一方では、それぞれ式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、および(IIId)
【化3】

の対応するモノマーのラジカル重合によって、あるいは他方では、式(IV)
【化4】

のポリカルボン酸のいわゆるポリマー類似反応によって、式(I)の櫛型ポリマーKPを生成することができ、それは構造単位s1、s2、s3、およびs4の構造要素をもたらす。
【0042】
ポリマー類似反応では、式(IV)のポリカルボン酸は、対応するアルコール、アミンによりエステル化またはアミド化され、次いで任意に中和または部分的に中和される(残基Mのタイプに応じて、例えば、金属水酸化物またはアンモニアを用いて)。ポリマー類似反応の詳細は、例えば、欧州特許第1 138 697 B1号、7頁、20行目〜8頁、50行目およびその中の実施例に、または欧州特許第1 061 089 B1号、4頁、54行目〜5頁、38行目およびその中の実施例に開示される。欧州特許第1 348 729 A1号、3頁〜5頁およびその中の実施例に記載される通り、その変形では、式(I)の櫛型ポリマーKPは、固体の状態で生成されてもよい。特に、これらの前述の特許の開示は、参照によりこれによって組み込まれる。
【0043】
式(I)の櫛型ポリマーKPの特に好ましい実施形態は、c+dが0より大きく、特にdが0より大きい場合の実施形態であることが見出されている。残基Rとしては、−NH−CH−CH−OHが特に有利であることが判明している。
【0044】
Sika Schweiz AGによってViscoCrete(登録商標)の商品名シリーズの下に市販されるポリマー等の櫛型ポリマーKPが特に有利である。
【0045】
櫛型ポリマーKPの含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、好ましくは1重量%〜20重量%、特に5重量%〜15重量%である。
【0046】
さらに、水性ポリマー分散液は、水を含む。含水量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、好ましくは20重量%〜80重量%、特に30重量%〜70重量%である。
【0047】
典型的に、水性ポリマー分散液は、櫛型ポリマーKPを、すでに事前に生成された水中のコポリマーCPの分散液に添加することによって生成される。典型的に、添加は激しい撹拌の下に行われる。混合前に、櫛型ポリマーKPを水中に溶解、乳化、または分散させることが有用である場合もある。
【0048】
分散液を生成するために、高速混合機の使用、特に溶解機またはYstral混合機(Ystral GmbH,Germany)の使用が推奨される。
【0049】
水性ポリマー分散液が、
d)少なくとも1つの分散剤DHM、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸をさらに含む場合、それは有利であることが判明している。
【0050】
分散剤自体は、分散液の生成に有用である既知の補助剤である。特に、かかる分散剤DHMは、表面活性基を特徴とする。特に、アルコキシル化フェノール等の界面活性剤、例えば、アルコキシル化イソノニルフェノールまたはアルコキシル化ノニルフェノールは、好適な分散剤である。
【0051】
特に好適な分散剤DHMは、ポリ(メタ)アクリル酸、好ましくはアクリル酸である。
【0052】
特にポリ(メタ)アクリル酸を用いることによって、水性分散液の保管安定性を改善できることが示されている。
【0053】
分散剤DHMの含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、好ましくは3重量%以下、有利には0.1重量%〜3重量%である。
【0054】
さらに、水性ポリマー分散液は、有利に少なくとも1つの粘度調節剤を含む。
【0055】
水性ポリマー分散液が、
e)粘度調節剤VRとして、式(V)の、少なくとも1つの一価もしくは多価アルコール、またはグリコールエーテル、または尿素もしくはアミドを含む場合、それは特に有利であることが判明している。
【0056】
【化5】

【0057】
ここで、Yは、NH、または1〜6個の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル基であるか、あるいはYは、Yと共に、アミド基と共に5〜8員環を形成する二価残基である。
【0058】
は、H、または1〜6個の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル基、特にメチル基であるか、あるいはYは、Yと共に、アミド基と共に5〜8員環を形成する二価残基である。
【0059】
は、H、または1〜6個の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル基、特にメチル基である。
【0060】
粘度調節剤VRポリエチレングリコールジメチルエーテルまたはN−メチルピロリドンが特に好適である。
【0061】
主に、粘度調節剤VRは、水性分散液に対する希釈効果を有する。しかしながら、濃縮効果を有する粘度調節剤を使用することもまた全面的に可能であり、それによって、例えば、ゲル様硬度が達成され、それは水性分散液を添加するのに有利であり得る。
【0062】
粘度調節剤VRの含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、好ましくは15重量%以下、有利に1重量%〜10重量%である。
【0063】
分散剤DHM、特にポリ(メタ)アクリル酸および/または粘度調節剤VRの添加は、水性ポリマー分散液の安定性、特に保管安定性に非常に有利である。
【0064】
さらに、水性ポリマー分散液が酸性、特に5〜7のpHを有する場合、それは特に有利であることが判明している。
【0065】
水性ポリマー分散液が、
g)少なくとも1つの焼成またはコロイド状シリカをさらに含む場合、それは有利であることが判明している。
【0066】
焼成シリカは、当業者に既知の様態で生成される。燃焼プロセスによって、特に火炎加水分解によって、非常に微細なSiO粒子がシランから生成される。かかる焼成シリカは、例えば、Evonik(かつてのDegussa)によってAersosil(登録商標)の商品名の下に、またはCabot Corp.によってCab−O−Sil(登録商標)の名称の下に販売される。
【0067】
さらに、元素状ケイ素およびケイ素合金の生成における副産物として得られる、いわゆるシリカヒュームは、焼成シリカと称される。
【0068】
特に有利に、焼成シリカは、10〜400m/g、好ましくは150〜250m/gの、Brunauer−Emmett−Tellerに従った特定の表面積(BET)を有する。
【0069】
コロイド状シリカは、微分散非晶質、非多孔質、および典型的に球体のシリカ粒子であり、懸濁液として水中に存在する。典型的に、コロイド状シリカは、それによりアルカリケイ酸溶液が部分的に中和される、複数のステップのプロセスを介して生成される。好ましいコロイド状シリカは、いわゆるシリカ−ゾルである。
【0070】
有利に、コロイド状シリカは、0.1〜100nm、好ましくは10〜20nmの粒径を有する。一方で、コロイド状シリカは、単分散懸濁液であってもよい。他方では、コロイド状シリカが多分散懸濁液を形成する場合が有利である場合もある。
【0071】
特に、焼成またはコロイド状シリカの添加は、セメントの遊離石灰が添加シリカによって結合され、アルカリ−ケイ酸反応が防止されるため、水性ポリマー分散液およびセメント系結合剤から形成された生成物の耐化学性の増加をもたらす。
【0072】
好ましくは、焼成またはコロイド状シリカの含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、50重量%以下、特に10重量%〜30重量%である。
【0073】
さらに、水性ポリマー分散液が、
h)好ましくはオルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、またはオルトリン酸、ピロリン酸、もしくはポリリン酸の酸性塩である、少なくとも1つのリン原子含有化合物PEVをさらに含む場合、それは有利であることが判明している。
【0074】
好ましくは、リン原子含有化合物PEVの含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、30重量%以下、特に2重量%〜10重量%である。
【0075】
さらに、水性ポリマー分散液が、
i)少なくとも1つのポリヒドロキシ化合物またはリン酸塩をさらに含む場合、それは有利であることが判明している。
【0076】
好ましくは、ポリヒドロキシ化合物またはリン酸塩の含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、15重量%以下、特に2重量%〜10重量%である。
【0077】
さらに、水性ポリマー分散液が、
j)少なくとも1つの硫酸カルシウムまたは非晶質水酸化アルミニウムをさらに含む場合、それは有利であることが判明している。
【0078】
好ましくは、硫酸カルシウムまたは非晶質水酸化アルミニウムの含量は、水性ポリマー分散液の重量に基づいて、15重量%以下、特に3重量%〜10重量%である。
【0079】
また、水性ポリマー分散液は、殺虫剤等の水性分散液に典型的な他の成分、特に殺菌剤および/または殺藻剤を含んでもよい。
【0080】
次の成分を含むか、または次の成分からなる水性ポリマー分散液は、特に有利であると判明している:
10重量%〜60重量%、特に25重量%〜45重量%の分散コポリマーCP、
1重量%〜20重量%、特に5重量%〜15重量%の櫛型ポリマーKP、
20重量%〜80重量%、特に30重量%〜70重量%の水、
0重量%〜5重量%、特に0.1重量%〜3重量%の分散剤DHM、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸、
0重量%〜15重量%、特に1重量%〜10重量%の粘度調節剤VR、
0重量%〜50重量%、特に10重量%〜30重量%の焼成またはコロイド状シリカ、
0重量%〜30重量%、特に2重量%〜10重量%のリン原子含有化合物PEV、
0重量%〜15重量%、特に3重量%〜10重量%の硫酸カルシウムまたは非晶質水酸化アルミニウム。
【0081】
重量%値は、水性ポリマー分散液の重量に基づく。
【0082】
水性ポリマー分散液は、好ましくは、櫛型ポリマーKPを水中に撹拌しながら添加し、次いで、任意に、分散剤DHMおよび粘度調節剤VRを撹拌しながら添加する様態で生成される。次いで、水中に分散したコポリマーCPを撹拌しながら添加し、続いて、任意に、焼成およびコロイド状シリカを撹拌しながら添加する。リン原子含有化合物PEVおよび/または非晶質水酸化アルミニウムもしくは硫酸カルシウムが水性ポリマー分散液の成分である場合、それらは生成プロセス中の任意の時点で撹拌しながら添加することができる。成分の撹拌しながらの添加は、好ましくは、Ystral GmbH,Germanyの溶解機または撹拌機等の好適な撹拌機を用いて、高速の撹拌によって行われる。
【0083】
分散液を冷凍すると、解凍時に分散液が破壊されるため、分散ポリマーが沈殿し、それ自体では再び分散しなくなるという点で、水性ポリマー分散液が、0℃未満の温度で保管されないようにすることは重要である。また、過度の高温も水性ポリマー分散液の安定性に有害であるため、水性ポリマー分散液を過度の高温で保管しないことも有利である。
【0084】
これらの上述の水性ポリマー分散液は、広範に使用することができる。特に、それらは、無機結合剤と組み合わせて使用することができる。
【0085】
特に有利に、上述の水性ポリマー分散液は、粘結スラリーまたはモルタルまたはコンクリート中の添加物として使用される。
【0086】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも第1の成分K1および第2の成分K2を含む、多成分組成物に関する。ここで、第1の成分K1は、上で詳述される水性ポリマー分散液を含む。さらに、第2の成分K2は、水硬性または潜在水硬性結合剤を含む。
【0087】
通常の定義に従って、水硬性結合剤は、空気中および水下の双方の水の影響下で硬化する無機結合剤である。
【0088】
通常の定義に従って、潜在水硬性結合剤は、刺激剤のみによる水の影響下で硬化する無機結合剤である。
【0089】
特に、水硬性または潜在水硬性結合剤は、セメントまたは混合セメントである。特に、混合セメントは、セメントと、フライアッシュまたはスラグまたはポゾランとの混合物である。好ましくは、セメントは、ポルトランドセメント、白色セメント、またはアルミン酸カルシウムセメントである。また、種々のセメントおよび/または混合セメントの混合物を使用してもよいことが理解される。最も好ましくは、水硬性または潜在水硬性結合剤は、ポルトランドセメントである。
【0090】
さらなる成分として、多成分組成物は、特に第2の成分K2の成分として、さらなる成分を含んでもよい。特に、これらの成分には、凝集剤、促進剤、防止剤、収縮低減剤、消泡剤、有機溶媒、およびコンクリート液化剤が含まれる。
【0091】
特に好適な凝集剤は、天然石灰質またはケイ砂、砂利、石英、玄武岩、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ホウ素、鉄、炭化鉄、膨張粘土、膨張スレート、パーライト、バーミキュライト、海綿状プラスチック、ガラスミクロスフェア、ポリマーミクロスフェア、および膨張フライアッシュである。
【0092】
特に好適なコンクリート液化剤には、ポリカルボン酸塩に加えて、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、アミノ−s−トリアジン樹脂、スルフアミン酸−メラミン樹脂、およびナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物またはポリカルボン酸塩エーテルが含まれる。しかしながら、好ましい液化剤は、ポリカルボン酸塩である。
【0093】
これらの追加的材料は、第2の成分K2の、または第3の成分K3および/もしくは第4の成分K4等の他の成分の成分であってもよい。後者は、多成分組成物が成分を含有する場合に特に当てはまり、その成分は、第1の成分K1および/または第2の成分K2に対してほぼ反応性であり、特に、多成分組成物の硬化中のみに反応するはずであるか、または水性分散液の安定性にマイナスの影響を及ぼし得る。これらの成分を第3の成分K3に、または任意に、別の成分に移すことによって、保管安定性問題は、非常に効率的に解決することができる。しかしながら、3つ以上の成分からなる多成分組成物においては、個々の成分の混合の質に関する問題の可能性が増加し、その結果、かかる組成物にミスが生まれやすく、複数の成分を混合する必要性に起因して、次第に、使いづらく、複雑であると見なされ、また倉庫保管および物流の観点から不都合を有するようになる。
【0094】
特にこれらの理由から、多成分組成物は、前述の第1の成分K1および第2の成分K2からなる、2成分組成物であることが好ましい。
【0095】
使用において、2つの成分K1およびK2、ならびに任意に、他の成分が共に混合され、説明される多成分組成物の硬化を誘発する。この硬化は、特に、水硬性または潜在水硬性結合剤の、水との反応に基づく。
【0096】
したがって、本発明のさらなる対象は、上述の多成分組成物を混合した後に得られる硬化組成物である。
【0097】
上述の水性ポリマー分散液が、特に多成分組成物の形態で、土木工学およびビル建築の分野で特に有利に使用されるという事実に起因して、土木工学またはビル建築の構造は、上述の硬化組成物と共に、本発明の別の態様である。
【0098】
水性ポリマー分散液を水硬性および潜在水硬性結合剤と共に使用することに関しては、本発明の水性ポリマー分散液が、他のコンクリート液化剤、特に、櫛型ポリマーKPの代わりに、スルホン化アミノ−s−トリアジン樹脂、スルフアミン酸−メラミン樹脂、またはナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物を使用する本発明によらない水性ポリマー分散液と比較したとき、同一の水/セメント比および同一の濃度で、顕著に改善された加工性を有することが示されている。
【0099】
驚くべきことに、上述の本発明の水性ポリマー分散液は、水硬性または潜在水硬性結合剤と組み合わせた対応する本発明によらないポリマー分散液と比較したとき、機械的強度における、特に標準EN1542に従った引張付着強度、曲げ強度、および標準EN196−1(4×4×16cmプリズム)に従った圧縮強度における有意に大幅な増加、ならびに標準DIN52617に従った吸水係数によって特徴付けられる大幅に低減された吸水を有することが見出されている。
【0100】
これは、一方では、大幅に改善された特性を有する建築材料を得ること、または他方では、使用されるべきポリマー分散液の量を実質的に低減することを可能にする。
【0101】
本発明に従った水性ポリマー分散液を用いて、機械的性質および吸水を低下させることなく、対応する本発明によらないポリマー分散液と比較して、最大30重量%、特に最大33%、時にはさらに最大40重量%の低減が可能であることが見出されている。これらの節減は、当然のことながら、特に金銭面で、特に有利である。
【0102】
さらに、本発明によらないポリマー分散液と比較した、同一の量の本発明のポリマー分散液による、この機械的性質の増加および吸水低減は、特に硬化加工の開始時に特に顕著であることが見出されている。
【0103】
硬化建築材料の多孔性または吸水挙動は、強度、耐久性、気密度、接着強度、耐摩耗性、ならびに多くの他の機能的特長に必須である。ここで、多孔性は、質および耐久性に反比例し、すなわち、多孔性が低いほど、それぞれ質および耐久性は高まる。
【0104】
本発明の水性ポリマー分散液の添加によって達成される多孔性および吸水の低減の程度によって、本質的に水密として説明され得る建築材料が得られる。例えば、標準EN480−11に従ったセメントマトリックスの多孔性は、最大85%減少され得る。
【0105】
さらに、引張試験においてそれらが接着層中で裂けないように、コーティングが滑らかな表面上に固着されることを可能にする、かかる高い引張付着強度が達成される。
【0106】
また、かかる建築材料が非常に高い耐硫酸塩性(ASTM C−1012−95に類似した方法によって測定)も特徴とすることが見出されている。
【実施例】
【0107】
ポリマー分散液の生成
Sika France S.A.より市販されるポリマー分散液SIKALATEX(登録商標)は、46重量%のポリマー含量を有するスチレン/ブタジエン分散液である。これ以降、この比較ポリマー分散液は、Ref.Dispと称される。
【0108】
Sika(登録商標)ViscoCrete(登録商標)−125(式(I)に相当する、エステル基によって結合されるポリ(オキシアルキレン)−アルキルエーテル側鎖を有する櫛型ポリマー)の19.44%水溶液の9重量部および消泡剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル)の0.05重量部を、Ystral GmbH,Germanyの撹拌機を用いる激しい撹拌の下で100重量部SIKALATEX(登録商標)に添加した。これ以降、このポリマー分散液は、Disp.1と称される。
【0109】
比較のために、比較分散液Ref.Disp.1、Ref.Disp2、およびRef.Disp.3を調製したが、それはポリマー分散液Disp.1に相当し、ここでSika(登録商標)ViscoCrete(登録商標)−125の量は、相当量のSikament(登録商標)FF−86(Sika Austria GmbH、スルホン酸−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物を含む)、Sikament(登録商標)210(Sika Schweiz AG、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物を含む)、またはリグニンスルホン酸ナトリウムによって置換され、その結果、Disp.1のSika(登録商標)ViscoCrete(登録商標)−125の櫛型ポリマーの場合と比較して、各分散液中に同一の量のスルホン酸−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物、またはリグニンスルホン酸ナトリウムが存在した。
【0110】
比較分散液Ref.Disp.1−2、Ref.Disp.2−2、およびRef.Disp.3−2は、さらに追加的なSikament(登録商標)FF−86、Sikament(登録商標)210、またはリグニンスルホン酸ナトリウムを含有し、その結果、Disp.1のSika(登録商標)ViscoCrete(登録商標)−125の櫛型ポリマーの場合と比較して、各分散液中に2倍の量のスルホン酸−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物、またはリグニンスルホン酸ナトリウムが存在した。
【0111】
モルタル組成物の調製
ポルトランドセメント、砂(0〜3mm)、水、ならびに任意に表1および表2に特定されるポリマー分散液または櫛型ポリマーの重量部に従って、Hobart撹拌機中の集中混合によってモルタル組成物を調製した。全ての組成物が0.40の水/セメント比を有するように追加の水の量を算出する。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【0114】
14、28、および56日後に、標準EN1542に従った引張付着強度を、1日、7日、および28日後に、曲げ強度および標準EN196−1(4×4×16cmプリズム)に従った圧縮強度を、および28日後に、標準DIN52617に従った吸水係数を決定し、それらを表3に示す。さらに、表3は、比較実施例Ref.2の対応する値と比較した、実施例1または2の値の「ΔRef.2」の百分率変化を示す。
【0115】
【表3】

【0116】
表3の結果は、すでに既知のポリマー分散液(Ref.2)を添加することによって、ポリマー分散液(Ref.1)を有さない対応する組成物と比較して、機械的強度の強力な増加または多孔性の低減(吸水係数によって特徴付けられる)を達成することができるが、この効果は、本発明の水性ポリマー分散液(1、2)によって大幅に増加することを示す。実施例2の、実施例1またはRef.2との比較は、水性ポリマー分散液の約33%の低減にもかかわらず、対応する本発明によらないポリマー分散液を用いるときよりも高い機械的性質または低減された吸水を達成することがさらに可能であることを示す。また、表3の結果は、機械的性質の改善が特に顕著であり、特に、短い硬化時間後(7日後、特に曲げ強度および圧縮強度においては1日後、または引張付着強度においては14日後)の測定において顕著であることを示す。
【0117】
実施例Ref.3の、実施例2との比較は、同一の量の櫛型ポリマーのみ(すなわち、水性ポリマー分散液の形態ではない)の使用が、吸水の強力な増加および引張付着強度の強力な低減をもたらすことを示す。
【0118】
実施例2から比較実施例Ref.4、Ref.5、Ref.6、Ref.4’、Ref.5’、およびRef.6’まで、EN1015−3に従った0分(「ABM」)、30分(「ABM30」)、60分(「ABM60」)、および90分(「ABM90」)のフロー直径、およびEN196−1に従った0分の空気量を決定し、表4に列挙した。
【0119】
【表4】

【0120】
表4から、本発明の水性ポリマー分散液中の成分としての櫛型ポリマーが、加工性の観点から有意な利点をもたらすことは明白である。櫛型ポリマーKPの代わりに、同一の量のスルホン酸−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物(Ref.4)、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物(Ref.5)、またはリグニンスルホン酸ナトリウム(Ref.6)を含有する、対応するポリマー分散液と比較して、実施例2は、同一の水/セメント比で有意に高いフロー直径および非常に有意に低減された空気量を有する。液化剤(Ref.4’(スルホン酸−メラミン−ホルムアルデヒド縮合物を含む)、Ref.5’(ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物を含む)、およびRef.6’(リグニンスルホン酸ナトリウムを含む))の割合を倍にした場合でも、低加工性は、わずかしか改善されず、空気量は、わずかしか低減されない。比較例のいずれにおいても、60分後または90分後には、この時までに組成物が硬化したため、フロー直径を決定することはもはやできなかった。しかしながら、本発明の実施例2について決定したフロー直径は、非常に良好な加工性を証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリマー分散液であって、
a)エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、ビニルエステル、および塩化ビニルからなる群から選択される少なくとも2つのモノマーからなる、少なくとも1つの分散コポリマーCPと、
b)エステル基またはエーテル基によって主鎖に結合される側鎖を有する、少なくとも1つの櫛型ポリマーKPと、
c)水と、
を含む、水性ポリマー分散液。
【請求項2】
前記櫛型ポリマーKPは、ビニルエーテルまたはアリルエーテルと、無水マイレン酸および/またはマイレン酸および/または(メタ)アクリル酸とのコポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項3】
前記櫛型ポリマーKPは、式(I)
【化1】

のコポリマーであることを特徴とし、式中、
Mは、独立してH、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価もしくは三価金属イオン、アンモニウムイオン、または有機アンモニウム基であり、
Rは、式(I)中の他の残基Rから各々独立して水素またはメチル基であり、
は、独立して−[AO]−Rであり、
は、独立してC−〜C20−アルキル基、−シクロアルキル基、−アルキルアリール基、または−[AO]−Rであって、
式中、Aは、C−〜C−アルキレン基であり、Rは、C−〜C20−アルキル基、−シクロヘキシル基、またはアルキルアリール基であり、
かつq=2〜250であり
は、独立して−NH、−NR、または−ORNRであって、
式中、RおよびRは、各々独立してC−〜C20−アルキル基、−シクロアルキル基、または−アルキルアリール基、または−アリール基であるか、
あるいは
ヒドロキシアルキル基であるか、
あるいは、アセトキシエチル(CH−CO−O−CH−CH−)またはヒドロキシ−イソプロピル(HO−CH(CH)−CH−)またはアセトキシイソプロピル基(CH−CO−O−CH(CH)−CH−)であるか、
あるいはRおよびRは、窒素がその一部である環を共に形成して、モルホリンまたはイミダゾリン環を構築し、
は、C−Cアルキレン基であり、
かつRおよびRは、各々独立してC−〜C20−アルキル基、−シクロアルキル基、−アルキルアリール基、−アリール基、またはヒドロキシアルキル基であり、
かつa、b、c、およびdは、構造単位s1、s2、s3、およびs4のモル比であり、
かつa/b/c/d=(0.1〜0.9)/(0.1〜0.9)/(0〜0.8)/(0〜0.3)であるが、a+b+c+d=1であることを条件とする、請求項1に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項4】
前記水性ポリマー分散液は、
d)少なくとも1つの分散剤DHM、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項5】
前記水性ポリマー分散液は、
e)粘度調節剤VRとして、式(V)
【化2】

の、少なくとも1つの一価もしくは多価アルコール、またはグリコールエーテル、または尿素もしくはアミドをさらに含み、式中、
は、NH、または1〜6個の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル基であるか、あるいはYと共に、前記アミド基と共に5〜8員環を形成する二価残基であり、
は、H、または1〜6個の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル基、特にメチル基であるか、あるいはYと共に、前記アミド基と共に5〜8員環を形成する二価残基であり、
は、H、または1〜6個の炭素原子を有する分枝もしくは非分枝アルキル基、特にメチル基であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項6】
前記水性ポリマー分散液は、
g)少なくとも1つの焼成またはコロイド状シリカをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項7】
前記水性ポリマー分散液は、
h)好ましくはオルトリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、またはオルトリン酸、ピロリン酸、もしくはポリリン酸の酸性塩である、少なくとも1つのリン原子含有化合物PEVをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項8】
前記水性ポリマー分散液は、
i)少なくとも1つのポリヒドロキシ化合物またはリン酸塩をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項9】
前記水性ポリマー分散液は、
j)少なくとも硫酸カルシウムまたは非晶質水酸化アルミニウムをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項10】
前記水性ポリマー分散液は、次の成分:
10重量%〜60重量%、特に25重量%〜45重量%の分散コポリマーCPと、
1重量%〜20重量%、特に5重量%〜15重量%の櫛型ポリマーKPと、
20重量%〜80重量%、特に30重量%〜70重量%の水と、
0重量%〜5重量%、特に0.1重量%〜3重量%の分散剤DHM、好ましくはポリ(メタ)アクリル酸と、
0重量%〜15重量%、特に1重量%〜10重量%の粘度調節剤VRと、
0重量%〜50重量%、特に10重量%〜30重量%の焼成またはコロイド状シリカと、
0%重量〜30重量%、特に2重量%〜10重量%のリン含有化合物PEVと、
0重量%〜15重量%、特に3重量%〜10重量%の硫酸カルシウムまたは非晶質水酸化アルミニウムと、を含むか、またはそれらからなることを特徴とし、
前記重量%値は、前記水性ポリマー分散液の重量に基づく、請求項1〜9のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液。
【請求項11】
少なくとも第1の成分K1および第2の成分K2を含む多成分組成物であって、
前記第1の成分K1は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の水性ポリマー分散液を含み、
前記第2の成分K2は、水硬性または潜在水硬性結合剤を含む、多成分組成物。
【請求項12】
前記水硬性または潜在水硬性結合剤は、セメント、特にポルトランドセメント、白色セメント、アルミン酸カルシウムセメント、または混合セメント、特にセメントと、フライアッシュまたはスラグまたはポゾランとの混合物であることを特徴とする、請求項11に記載の多成分組成物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の多成分組成物を混合した後に得られた、硬化組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の硬化組成物を含む、土木工学またはビル建築の構造。
【請求項15】
粘結スラリーまたはモルタルまたはコンクリート用の添加物としての、請求項1〜10の1項に記載の水性ポリマー分散液の使用。

【公表番号】特表2012−526883(P2012−526883A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510290(P2012−510290)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056539
【国際公開番号】WO2010/130780
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】