説明

水性発泡液の製造方法

【課題】 発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡塗工液の調製方法を提供する。
【解決手段】 塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液と非水溶性気体とを機械的に攪拌混合して発泡させた水性発泡液を、管体内部に直列に固定配置されている複数のエレメントにより管体内を通過する流体を分割し、方向を転換し及び方向を反転させて流体を攪拌混合する機能を備えた静止型混合器と該静止型混合器の管壁を介して管体内通過流体を管体外から冷却する冷却機構とを備えた冷却器内を通過させて攪拌・冷却処理することを特徴とする、発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一で微細な気泡を大量に含む樹脂塗膜を形成することができる樹脂を含有する水性発泡液を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細な気泡を含む発泡塗工液を塗布して作製した気泡を含む発泡塗布層の特異な物理的特性、熱的特性、光学特性を利用する分野が多くなっている。例えば、特許文献1には、基材と感熱発色層の中間に発泡塗布層を設けて断熱性、クッション性を付与した高感度の感熱記録紙が記載されている。
【0003】
優れた断熱性、クッション性を備えた発泡塗布層であるためには発泡塗布層の気泡の体積割合は多いほうが好ましいし、表面が平滑な発泡塗布層とするためには気泡のサイズが均一でかつ気泡の径が小さいことが好ましい。このような発泡塗布層を形成するには、気泡の体積割合が高く、なおかつ気泡の径が小さい発泡塗工液を調製することが必要である。
【0004】
気泡を大量に含む発泡液を調製する方法には化学的方法と機械的な方法がある。化学的な発泡方法は、化学反応により液中で気体を発生させて発泡液を調製する方法であり、機械的な発泡方法は、気体と液体を機械的に攪拌混合して発泡液を作製する方法であるが、機械的な発泡方法の方が薬品を使用しないため発泡塗布層が化学的に安定であるし、経済性の面でも優れているので好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−032052号公報
【特許文献2】特開平11−043699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
機械的な発泡方法では、気体と液体とを機械的に攪拌混合することにより発泡液を作製するが、発泡液中の気泡径を小さくしようとする場合、気体と液体の混合部で強いせん断力を与える必要がある。せん断力が弱いと、泡径が小さくならなかったり、発泡が均一にならなかったりする。しかし、機械的に強いせん断を与えた場合、摩擦により発熱し、発泡液の温度が上昇する。一般的に、溶液、エマルジョンの粘度は温度の上昇により低下する場合が多い。発泡液の温度が上昇し、粘度が低下すると、破泡、泡の合一等が起こりやすくなる。そのため、機械発泡装置の攪拌混合部は冷却されることが望ましいが、攪拌ローター等、回転したり動いたりする部位を冷却するには、回転軸に冷却水水路を設けることが必要で機構が複雑になるので、回転攪拌部の外側のみを冷却するのが一般的である。しかし、そのような冷却方式では、冷却面積が限定されるので、冷却効率は高くなく、充分な冷却が難しい。
【0007】
攪拌混合による発熱を吸収するために、発泡させようとする液体をあらかじめ冷却しておいてから、機械発泡装置へ送り込むことも可能であるが、冷却による液体の粘度上昇、凍結による変質等を生じる恐れがあり、水溶液、水系エマルジョンでは氷点以下に冷却することは難しい。
【0008】
そこで、攪拌混合部の冷却だけでなく、攪拌混合部の下流側に、冷却部、例えば2重管型熱交換器を設置し、発泡液を冷却することも可能であるが、一般に発泡した液は冷却管内部をプラグフロー(ピストン流)で流れ易く、また発泡していて断熱性が高いため、管壁に接している部分の発泡液だけが冷却され、管中央部分を流れる発泡液は冷却されない。冷却部の流路を薄く、あるいは細長くして伝熱面積を増やすことによって充分な冷却を得ることも可能であるが、その場合、攪拌混合部から冷却部出口までの到達時間が長くなり、むしろ破泡、泡の合一が進行することが多い。また、このような熱交換装置の設置は、洗浄やメンテナンスの面でのデメリットが大きい。
【0009】
また機械的な発泡方法において、発泡液中の気泡の量(体積)が少ない場合、例えば発泡前の液体の体積に対する、発泡液の体積の比(発泡倍率)が1.1未満の発泡液を作ることは比較的容易であり、またその泡径を小さくすることも比較的容易である。そのような発泡液を作製できる装置はマイクロバブル発生装置、ナノバブル発生装置として安価に市販されている。ただし、発泡倍率が低い場合は、クッション性、断熱性といった気泡の特徴的効果が期待できない。
【0010】
気泡の特徴的効果を発現させるために発泡液中の気泡の量を大きく、すなわち液体に対して気体の混合比率を高くしようとした場合、発泡装置の攪拌混合部に導入する気体の量を多くする必要があるが、単に気体の導入量を増やしただけでは、気体と液体が攪拌混合部で充分な攪拌混合を受けずに素通りしてしまい、気泡径が小さくならなかったり、不均一な発泡状態となったり、気体と液体が分離してしまい、所望の発泡倍率で且つ所望の泡径の発泡液を得られなかったりという問題点がある。
【0011】
そこで、発泡倍率の高い発泡液を作製する場合は、発泡装置の攪拌混合部の下流側に圧力損失を生じさせる(流路抵抗を付与する)ことにより、攪拌混合部を気体と液体が素通りするのを防止し、充分な攪拌混合が行われるようにする必要がある。一般に市販されている機械的発泡装置では、圧力損失を生じさせるために、攪拌混合部の下流に流路の狭窄部を設けている。例えば、愛工舎製のターボホイップや、モンドミックス社製のモンドミックスでは流路の一部をゴム状のチューブとし、外部から圧力をかけて流路を狭窄し、圧力損失を発生させる機構を備えている。また、より簡便にニードルバルブ等の弁により流路を狭窄し圧力損失を発生させる場合もある。しかしながら、このように流路に局所的な狭窄部を設けて圧力損失を生じさせた場合、狭窄部を通過した直後に急激に発泡液の圧力が減少するために、発泡液中の気泡が急に増大して破泡したり合一したりすることが多い。
また、上記局所的に狭窄部を設けて、所望の圧力損失を発生せる場合、発泡液内部、および発泡液-流路間の摩擦による熱の発生も局所的に起こっていることになり、発泡液の温度上昇から、破泡、泡の合一を加速する。
【0012】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、気体と液体を機械的に攪拌混合することにより発泡液を得る機械的発泡方法において、気泡径の小さな微細気泡を多量に含む発泡液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決することができる本発明は、塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液と非水溶性気体とを機械的に攪拌混合して発泡させた水性発泡処理液を、通過する流体に対する攪拌混合機能を有するエレメントを管状体内部に備えている静止型混合器と一体化されていて、静止型混合器の管壁を通して内部流体を冷却する形式の冷却器内を通過させて冷却することにより、破泡や泡の合一が生じることのない安定な水性発泡液を作製する方法を基本とする、以下の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法に関する発明である。
【0014】
(1)塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液と非水溶性気体とを機械的に攪拌混合して発泡させた水性発泡液を、管体内部に直列に固定配置されている複数のエレメントにより管体内を通過する流体を分割し、方向を転換し及び方向を反転させて流体を攪拌混合する機能を備えた静止型混合器と該静止型混合器の管壁を介して管体内通過流体を管体外から冷却する冷却機構とを備えた冷却器内を通過させて攪拌・冷却処理することを特徴とする、発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【0015】
(2)前記冷却器による攪拌・冷却処理が、前記静止型混合器内に、流れ方向に4〜50kPa/cmの割合で圧力損失が生じる条件下で前記発泡させた水性発泡液を通過させて攪拌・冷却する処理である(1)項記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【0016】
(3)前記冷却器による攪拌・冷却処理が、前記静止型混合器内を、100〜500kPa(0.1〜0.5MPa)の圧力損失が生じる条件下で前記発泡させた水性発泡液を通過させて攪拌・冷却する処理である(1)項又は(2)項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【0017】
(4)前記塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液が、樹脂水溶液系及び水性樹脂エマルション系の樹脂含有液から選ばれる水性原料液である(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【0018】
(5)前記静止型混合器と冷却機構とを備えた冷却器内を通過して攪拌・冷却処理された水性発泡液中の気泡の直径が15μm以下、好ましくは1〜10μmで、発泡倍率が1.1超に調整されていることを特徴とする(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【0019】
(6)前記非水溶性気体が空気及び/又は窒素である(1)項〜(5)項のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【0020】
(7)前記発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液が、感熱記録紙における基材と感熱発色層の中間の発泡樹脂塗膜層形成用の水性発泡塗工液である(1)項〜(6)項のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【0021】
(8)前記(1)項〜(7)項に記載の調製方法で調製されている発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液を塗工液として基材シート面に塗工し、乾燥して形成されている発泡樹脂層を有する感熱記録体用基材シート。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、泡径が均一で微細な気泡を大量に含む樹脂含有水性発泡液を、連続生産が可能で生産性が高く、低コストで製造することができる方法が提供される。また、該樹脂含有水性発泡液を塗工して形成される発泡樹脂塗工層は、表面状態が平滑で、断熱性、クッション性に富む発泡樹脂塗工層であるので、たとえば感熱記録体用の発泡樹脂層からなる中間層のように、優れた断熱性、クッション性を有する層を備えることが要求される各種製品への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法を実施することができる装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡塗工液の調製方法を説明する。
図1は、本発明の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法を実施することができる連続製造装置を示す。
【0025】
図1の装置において、符号1は、塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液を調製する「原料液調製槽」を示す。「原料液調製槽1」では、所定割合で水と樹脂を含有する「樹脂水溶液」又は「水性樹脂エマルジョン」よりなる塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液が調製される。調製された水性原料液は「ポンプ2」によって「冷却ジャケット4」を備えている「発泡処理槽3」に送られ、「気体貯槽5」から「流量調整弁6」を経て供給される所定量の窒素又は空気等と一緒にされて攪拌機Mにより攪拌混合され、気泡が形成されている水性発泡液が調製される。
【0026】
発泡処理槽3において調製された水性発泡液は、次いで、「入口側圧力計7a」で導入圧力が測定された後、「静止型混合器7」(スタティックミキサー)とその外壁を覆って設置されている冷却ジャケット等よりなる「冷却機構10」を備えた「冷却器8」の静止型混合器7内に導入される。「入口側圧力計7a」における導入圧力の数値と、冷却器8の「出口側圧力計7b」による出口側圧力の数値の差として冷却器8に設定される圧力損失の数値は、後述するように、冷却器8における静止型混合器7内に設置されている複数のエレメントの配置状態や、該複数のエレメントの配置状態によって通過する流体の圧力損失がその長さに比例するように設計されている静止型混合器7の長さを調節することによって調整される。
冷却器8を通って気泡がさらに微細化されると同時に均一に冷却されて安定な発泡液とされた樹脂含有水性発泡液は、「水性発泡液貯槽9」に貯蔵され、発泡樹脂塗工層を形成する塗工液として使用される。
【0027】
図1の連続製造装置において、「原料液調製槽1」で調製される水性原料液の温度は、液状で取り扱いできる温度に保たれる。調製された樹脂含有の水性原料液は、攪拌によって発生する熱を吸収して温度が上昇するので、液状での取り扱いに支障をきたすような凍結や粘度の極端な上昇が生じない範囲で原料液調製槽1の外部から冷却することが好ましい。
【0028】
「原料液調製槽1」で調製された樹脂水溶液又は水性樹脂エマルジョンよりなる水性原料液を「発泡処理槽3」に送る「ポンプ2」や、「気体貯槽5」から空気や窒素ガス等を「発泡処理槽3」に送る「流量調整弁6」の種類等に制限はない。
「気体貯槽5」から「流量調整弁6」によって送られる気体は、図1においては、水性原料液の供給経路とは別の供給経路から「発泡処理槽3」に導入されているが、気体は、水性原料液の供給経路に供給されて水性原料液と一緒に「発泡処理槽3」に導入することも可能である。
【0029】
「発泡処理槽3」は、密閉系内に気体と液体を連続的に定量供給しながら機械的な攪拌処理により空気等の気体を微細な気泡として樹脂含有の水性原料液中に分散、混合するための装置である。たとえば、スリット付多重円筒型連続発泡機(側面にスリットの付いた円筒型の多重になったステーターの間隙に、円筒型でかつステーターと同様のスリットを側面に有するローターを嵌め込み、ローターを高速回転させ、樹脂含有水性原料液と空気等とを送り込み、スリットを通過する際に樹脂含有液と空気等とを攪拌混合することにより、樹脂含有水性原料液中に空気等を分散、混合するタイプ)、二重円筒型連続発泡機(ピン付ローターとピン付外筒管から構成され、ローターを高速回転させ円筒内に送り込まれた樹脂含有水性原料液と空気等とを攪拌混合することによって樹脂含有水性原料液中に空気等を分散、混合するタイプ)、高速で回転する内刃と固定外刃間でせん断をかけるディスパータイプ混合機等を用いることができる。
【0030】
「発泡処理槽3」は、その外側に「冷却ジャケット4」等を設置して冷却されていることが望ましい。「発泡処理槽3」の攪拌機Mの回転数を低く設定できる場合(約3000ppm以下)は、回転する部位の内部にも冷却水を通して冷却することにより冷却効率を高くすることも可能である。
【0031】
本発明の方法では、樹脂を含有する水性原料液の組成、性状(粘度、界面活性剤添加率、種類)に応じて「発泡処理槽3」の攪拌機Mの回転速度、水性原料液と空気等の装置内滞留時間(攪拌時間)等を適宜に設定することにより、水性発泡液中の気泡の大きさを調節することができる。例えば、回転速度が一定で、かつ装置に供給される原料液量と空気量との比率が同一の場合は、装置内攪拌時間が長いほど、気泡のサイズは小さくなる傾向にある。また発泡倍率は、装置に供給される原料液量と空気量との比率を選定することによって調節することができる。
密閉系である「発泡処理槽3」で調製された水性発泡液は、調製されたままの状態で冷却器8に送られる。
【0032】
「冷却器8」は、静止型混合器7とその管壁を覆う冷却機構10によって構成されている。
冷却器8においては、静止型混合器7内に配置されている複数のエレメントのそれぞれによる水性発泡液に対する分割作用・方向転換作用・方向反転作用によって通過する水性発泡液の全部分が冷却機構10で冷却されている管体の内壁と接触して均等に冷却されると共に、水性発泡液中の気泡がエレメントによりさらに微細化されて泡径が揃った状態とされる。
冷却機構10と一体化されている静止型混合器7としては、「スタティックミキサー」として知られているタイプの駆動部を持たない攪拌混合器が使用される。
【0033】
本発明の方法においては、冷却器8における静止型混合器7に導入される水性発泡液は、発泡処理槽3で調製されたままの圧力を保持して冷却器8の静止型混合器に導入されるが、冷却器8は、導入された発泡処理液が流れ方向に4〜20kPa/cmの割合で且つ全体で0.1〜0.5MPaの圧力損失で通過するように、冷却器8の静止型混合器部分の流路長、静止型混合器内のエレメントの形状、エレメントの配置個数等が調節される。静止型混合器内で均等に冷却されながら通過する水性発泡液の圧力損失は、水性発泡液の流量、粘度によっても変わるので、実際に発泡処理槽3で調製される水性発泡液毎に目的の圧力損失で水性発泡液が冷却器8内を通過できるように冷却器8の静止型混合器の流路長、静止型混合器エレメントの形状、エレメントの個数等を調節し、かつ冷却温度を調節する。
【0034】
冷却器8における圧力損失が全体で0.1MPaより低い値となるように設定されていると、冷却器8に直接連結されている「発泡処理槽3」で気体と液体とが充分に混合せずに処理槽3から送り出されることとなり、冷却器8において必要とされる発泡倍率の水性発泡液を調製することができない。逆に、0.5MPaより高い値に設定されると、原料液あるいは気体が「発泡処理槽3」に滞留し、そこで厳しいシアを受けることとなることによって温度が上昇し、冷却器8の冷却機構10の負荷が過大となる結果、冷却器8を出る水性発泡液が変質しやすいものとなるし、液体、気体を「発泡処理槽3」に送り込む所要動力も増大するので好ましくない。
【0035】
冷却器8の静止型混合器部分における流れ方向の単位長さ当たりの圧力損失の範囲は、4kPa/cm〜40kPa/cmであることが望ましい。4kPa/cm より小さい値の場合は所望の圧力損失を得るのに必要な静止型混合器の部分の長さが長くなってしまい、経済的に好ましくないばかりか、冷却器8を通過する時間が長くなり過ぎて泡が破泡したり合一したりし易くなるため好ましくない。
逆に40kPa/cmより大きい値となると、冷却器8を出る際に急激に水性発泡液の圧力が減少するために、発泡液中の気泡が急膨張して破泡した気泡同士が合一したりすることが多いので好ましくない。
【0036】
本発明の方法で使用される冷却器8において、冷却機構10と一体化されている「静止型混合器7」としては、通過する流体を分割し、方向転換し、方向反転させる等の作用をする複数のエレメントを管路内に固定配置している、一般に「スタティックミキサー」と称されている駆動部を持たない攪拌混合器を使用する。使用できるスタティックミキサーとしては、例えば、特許文献2に記載されている軽量石鹸の製造に使用されているタイプの混合器が挙げられる。このようなスタティックミキサーとしては、管状部材の内部に矩形板をその長手軸線周りに180度捻ったものを最小単位部材として、複数の最小単位部材(エレメント)を、捻り方向が交互に異なる方向になるように一体的に直列に配置した構造を有しているものが挙げられる。
【0037】
また、特開平5−131126号公報に示されるような、切り欠きのある円錐を組み合わせたもの、特開2004−195452号公報に示される互い違いに交差する櫛状のエレメントを用いたものなど、回転を伴わずに流体を分割混合するスタティックミキサーも使用可能である。
なお、スタティックミキサーには、孔を設けた円盤(邪魔板、仕切り)等を流体の流れと直交するように流路に設置することにより液体の攪拌混合を行わせるタイプもあるが、流路の極所的な狭窄により、泡の合一が起こり易く、また使用後に洗浄しても内部に残留物が生じやすいことなどから本発明の方法には不適である。
スタティックミキサーエレメントとしては、金属や樹脂等、種々の材料が使用できるが、耐薬品性の面からステンレスあるいは樹脂素材が好適に使用される。
【0038】
冷却器8において、冷却機構10により冷却されている静止型混合器7の部分は、冷却機構10部分の長さと必ずしも一致しなくてもよい。冷却機構が配置されている部分の流路長が長めに形成されていて、かつ、単位長さ当たりの圧力損失値が判明しているスタティックミキサーを用意して、前記したような適切な圧力損失が得られるようにスタティックミキサーの長さを増減する方法が簡便である。
【0039】
冷却器8の「冷却機構10」は特に限定されない。水冷、空冷、ペルチェ素子による冷却等、通常の冷却機構を採用することができる。静止型混合器部分を冷却槽内に設置したり、静止型混合器の外側に冷却ジャケット10を設置した構造とし、静止型混合器7の外壁に冷却液を接触させて熱交換を行わせて冷却する方式が効率的である。
【0040】
静止型混合器7を有する冷却器8は、必ずしも単一でなくてもよい。所望の圧力損失と冷却効果が得られるように、複数の冷却器を発泡液の流路に並列に設置してもよい。また、複数の冷却器を直列に接続し所望の圧力損失と冷却効果が得られるように接続数を増減できるような構成としてもよい。冷却器8における冷却が不足すると、調製される水性発泡液の液温が高くなり、経時での気泡の破泡や合一化が発生するので好ましくない。
【0041】
本発明の方法によって調製される水性発泡液を塗工液として用いて、発泡樹脂塗工層をシート上に形成することができる。発泡樹脂塗工層をシート上に形成する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、押し出し成型、射出成型、塗工成型等を用いることができる。特に、水性発泡塗工液を、シート上に塗工、乾燥させて発泡樹脂被覆シートを得る塗工成型方法は生産性が高く好適である。
塗工成型の場合、支持体に塗工ヘッドを用いて発泡塗布液を塗工した後、乾燥器にて水分や溶剤分を除去し、支持体上に発泡樹脂塗工層を形成する。このとき、支持体から発泡樹脂塗工層を剥離することで、発泡樹脂塗工層からなる単独の発泡シートを得ることもできる。
【0042】
塗工方法としては、バーコート法、エアードクターコート法、ブレードコート法、スクイズコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法、トランスファーコート法、コンマコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、マルチロールコート法、ディップコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、ゲートロールコート法、落下カーテンコート法、スライドコート法、ファウンテンコート法、およびスリットダイコート法などが挙げられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明の水性発泡液の具体的な調製方法を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表す。
【0044】
<実施例1>
図1の原料液調製槽1内で調製した後記組成の水性原料液(固形分濃度31%)を、ポンプ2により100mL/minの流量で「発泡処理槽3」(二重円筒型連続発泡機:ピン付80mm径ローターとピン付100mm径外筒管から構成され回転数2000rpm)に送った。また、水性原料液と同時に、流量制御弁6で大気圧換算20mL/minに流量調整した空気を「気体貯槽5」から「発泡処理槽3」に送った。「発泡処理槽3」において調製した水性発泡処理液を「静止型混合器7」(ノリタケカンパニーリミテッド製スタティックミキサー、直径8mm、長さ25cm)を備えた「冷却器8」(流路管内径8mm)に送り込んだ。冷却器8の外側の「冷却機構10」(冷却ジャケット)には10℃の冷却水を流して、スタティックミキサー内の発泡液を冷却した。冷却器8を通過する水性発泡液の単位長さ当たりの圧力損失は20kPa/cmで、全体の圧力損失は0.5MPaであった。冷却器8から送り出される水性発泡液の比重を測定し、発泡倍率を求めたところ発泡倍率は1.2であった。水性発泡液をガラスプレート上に滴下して拡げ、デジタルマイクロスコープで泡径を測定した。
調製された水性発泡液における「発泡倍率」、「泡径」、「発泡液温度」の測定結果を表1に示す。
【0045】
[原料液組成]
水分散型ポリウレタン樹脂(商品名:アデカボンタイターHUX−381、旭電化工業社製) 100部
整泡剤:高級脂肪酸アンモニウム塩(商品名:F−1) 5部
増粘剤:カルボキシメチルセルロース系 (商品名:AGガム、第一工業製薬社製)3部
上記成分の混合物より31部を分取し、水を加えて全量を100部として原料液とした。
【0046】
[発泡樹脂被覆シートの作製]
上記の方法で調製した水性発泡液を、市販の坪量104.7g/mの上質紙(商品名:マシュマロ、王子製紙社製)の片面上にアプリケーターバーで乾燥後の塗工量が10g/mになるように塗工した。表面平滑性に優れた発泡樹脂塗工層を有する紙基材シートが得られた。
【0047】
<実施例2>
実施例1の方法において、図1の冷却器8における静止型混合器7の長さを5cmとして、冷却器8を通過する発泡液の圧力損失を単位長さ当たり20kPa/cmで、全体で0.1MPaとした以外は実施例1と同様にして水性発泡液を調製した。
調製された水性発泡液における「発泡倍率」、「泡径」、「発泡液温度」の測定結果を表1に示す。
【0048】
<実施例3>
実施例1の方法において、図1の冷却器8における静止型混合器7の長さを12.5cmとして、冷却器8を通過する発泡液の圧力損失が単位長さ当たり40kPa/cmで、全体で0.5MPaとなるスタティックミキサーを組み込んだ以外は実施例1と同様にして水性発泡液を調製した。
調製された水性発泡液における「発泡倍率」、「泡径」、「発泡液温度」の測定結果を表1に示す。
【0049】
<比較例1>
実施例1の方法において、図1の冷却器8に静止型混合器7を挿入しなかった以外は実施例1と同様にして水性発泡液を調製した。
【0050】
<比較例2>
実施例1の方法において、図1の冷却器8に冷却水の通水による冷却を行わなかった以外は実施例1と同様にして水性発泡液を調製した。
調製された水性発泡液における「発泡倍率」、「泡径」、「発泡液温度」の測定結果を表1に示す。
【0051】
<比較例3>
実施例1において使用したスタティックミキサーの長さを4.0cmとし、冷却器8の圧力損失を単位長さ当たり20kPa/cmで全体で80KPaとした以外は実施例1と同様にして水性発泡液を調製した。
調製された水性発泡液における「発泡倍率」、「泡径」、「発泡液温度」の測定結果を表1に示す。
【0052】
<比較例4>
実施例1の方法において、冷却器8を通過する発泡液の圧力損失が単位長さ当たり100kPa/cmで、全体で0.5MPaとなるスタティックミキサーを組み込んだ以外は実施例1と同様にして水性発泡液を調製した。
調製された水性発泡液における「発泡倍率」、「泡径」、「発泡液温度」の測定結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1〜3及び比較例1〜4の結果は、空気と液体を機械的に攪拌混合して発泡液を製造する方法において、空気と液体を機械的に攪拌混合する発泡処理装置の下流側に、スタティックミキサーを備えた冷却器を設けて通過する発泡液の圧損の値を所定値に制御しつつ均等に冷却することにより、泡径が均一で小さい気泡を安定した状態で含有している発泡液を製造できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の方法によれば、泡径が均一で微細な気泡を大量にかつ安定した状態で含んでいる樹脂含有水性発泡液を簡便に連続製造できる方法が提供されるので、該樹脂含有水性発泡液を発泡樹脂塗工層形成用の塗工液として利用することにより、表面状態が平滑で、断熱性、クッション性に富む発泡樹脂塗工層を基材面に形成することが求められる各種分野における製品の品質向上に多大の貢献をなすものである。
【符号の説明】
【0056】
1:原料液調製槽
2:ポンプ
3:発泡処理槽
4:冷却ジャケット
5:気体貯槽
6:流量制御弁
7:静止型混合器
7a:入り口側圧力計
7b:出口側圧力計
8:冷却器
9:水性発泡液貯槽
10:冷却機構
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液と非水溶性気体とを機械的に攪拌混合して発泡させた水性発泡液を、管体内部に直列に固定配置されている複数のエレメントにより管体内を通過する流体を分割し、方向を転換し及び方向を反転させて流体を攪拌混合する機能を備えた静止型混合器と該静止型混合器の管壁を介して管体内通過流体を管体外から冷却する冷却機構とを備えた冷却器内を通過させて攪拌・冷却処理することを特徴とする、発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【請求項2】
前記冷却器による攪拌・冷却処理が、前記静止型混合器内に、流れ方向に4〜50kPa/cmの割合で圧力損失が生じる条件下で前記発泡させた水性発泡液を通過させて攪拌・冷却する処理である請求項1記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【請求項3】
前記冷却器による攪拌・冷却処理が、前記静止型混合器内を、100〜500kPaの圧力損失が生じる条件下で前記発泡させた水性発泡液を通過させて攪拌・冷却する処理である請求項1又は2に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【請求項4】
前記塗膜形成用樹脂を含有する水性原料液が、樹脂水溶液系及び水性樹脂エマルション系の樹脂含有液から選ばれる水性原料液である請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【請求項5】
前記静止型混合器と冷却機構とを備えた冷却器内を通過して攪拌・冷却処理された水性発泡液中の気泡の直径が15μm以下で、発泡倍率が1.1超に調整されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【請求項6】
前記非水溶性気体が空気及び/又は窒素である請求項1〜5のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。
【請求項7】
前記発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液が、感熱記録紙における基材と感熱発色層の中間の発泡樹脂塗膜層形成用の水性発泡塗工液である請求項1〜6のいずれか1項に記載の発泡樹脂塗膜形成用の水性発泡液の調製方法。








【図1】
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【公開番号】特開2012−157806(P2012−157806A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18460(P2011−18460)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】