説明

水性組成物中の有機物質の分解方法

水性組成物中の有機物質の分解方法であって、液体反応媒体中で、前記水性組成物を、前記有機物質を酸化するために、0.001以上かつ1.5より低い水酸化物と次亜塩素酸塩とのモル比で水酸化物イオン(OH)および次亜塩素酸塩を含む少なくとも1つの組成物と反応させる工程(a)を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、その両方の内容が参照により本明細書に援用される、2008年1月31日出願の欧州特許出願公開第08150927.9号明細書および2008年12月12日出願の欧州特許出願公開第08171544.3号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、水性組成物中の物質の分解方法に関する。より具体的には、酸化による、水性組成物中に存在する有機物質の分解方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機物質は、化学プロセスに由来する水性流出物の典型的な汚染物質である。有機汚染物質は流出物の化学的酸素要求量(Chemical Oxygen Demand)(環境においてそれらが酸素を枯渇させる影響の尺度)に影響を与えるので、かかる流出物の廃棄処分前に、例えば環境中への排出前に、または化学プロセスでの流出物のリサイクルが想定されるときに、廃水中の有機汚染物質の分解は必須条件である。
【0004】
塩素は、酸化によって水中の有機汚染物質を分解するために現在使用されている反応体である。かかる方法は、SOLVAY DEUTSCHLAND GmbHの(特許文献1)に記載されている。しかしながら、酸化剤源としての塩素の使用は、幾つかの欠点を提示する。塩素は毒性ガスである。それはまた、有機化合物と反応して水素を塩素と置き換え、通常、毒性でありかつ酸化することがより困難な塩素化有機化合物を生成する。それはまた、塩素酸塩の望ましくない生成にもつながり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,445,741号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目標は、上記の欠点を提示しない有機化合物の分解方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1実施形態では、本発明はそれ故、水性組成物中の有機物質の分解方法であって、液体反応媒体中で、前記水性組成物を、前記有機物質を酸化するために、0.001以上かつ1.5より低い水酸化物と次亜塩素酸塩とのモル比で水酸化物イオン(OH)および次亜塩素酸塩を含む少なくとも1つの組成物と反応させる工程(a)を含む方法に関する。
【0008】
本発明の特徴の1つは、水酸化物イオンと次亜塩素酸塩とを含む水性組成物中の水酸化物と次亜塩素酸塩との比に関する。理論に制約されることなく、かかる組成物を使用するときに、目標とされる有機物質の酸化速度と、回避されなければならない極めて酸化されにくい塩素化有機物質を生成する有機物質の塩素化と、回避されなければならない塩素酸塩形成との間に良好な妥協を得ることができると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
分解されるべき有機物質を含有する水溶液はまた、本説明では以下、処理されるべき水溶液と言われる。
【0010】
処理されるべき水性組成物中に存在する有機物質は、有機脂肪族物質、有機芳香族物質、またはそれらの混合物であり得る。それらの物質は任意選択的に、ハロゲン、好ましくはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルコゲン、好ましくは酸素または硫黄、窒素、リンおよびそれらの混合物から選択される、ならびにより好ましくは塩素、酸素およびそれらの混合物から選択される、少なくとも1個のヘテロ原子を含有することができる。
【0011】
脂肪族物質は、環式、非環式、飽和または不飽和炭化水素であり得る。それらの炭化水素は、環式または非環式のアルカンおよびアルケン、好ましくは塩素化された、ハロゲン化環式または非環式のアルカンおよびアルケン、飽和および/または不飽和脂肪族および/または脂環式エーテル、好ましくは塩素化された、飽和および/または不飽和ハロゲン化脂肪族および/または脂環式エーテル、アルコールおよび、好ましくは塩素化されたハロゲン化アルコール、ケトンおよび、好ましくは塩素化されたハロゲン化ケトン、アルデヒドおよび、好ましくは塩素化されたハロゲン化アルデヒド、および/またはカルボン酸および、好ましくは塩素化されたハロゲン化カルボン酸である。
【0012】
脂肪族物質は好ましくは、トリクロロプロパン、好ましくは1,2,3−トリクロロプロパン、クロロプロペノール、好ましくは2−クロロ−2−プロペン−1−オール、ジクロロプロペン、好ましくは1,3−ジクロロプロペン・シスおよび1,3-ジクロロプロペン・トランス、ジクロロプロパン、好ましくは1,3−ジクロロプロパン、ジクロロプロパノール、好ましくは、1,3−ジクロロ−2−プロパノールおよび2,3−ジクロロ−1−プロパノール、モノクロロプロパンジオール、より好ましくは2−クロロ−1,3−プロパンジオールおよび3−クロロ−1,2−プロパンジオール、2−クロロ−1−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、クロロエタノール、クロロエーテル、より好ましくはおおよその式C10Cl、C12ClO、CCl、C11Clのクロロエーテル、アクロレイン、メチルグリシジルエーテル、クロロアセトン、メタノール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,2−ジオール、ヒドロキシアセトン、グリセルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、ギ酸、グリコール酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、ジクロロ酢酸、グリシドール、エピクロロヒドリン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよびそれらの混合物から選択される。
【0013】
芳香族物質は、芳香族性の少なくとも1個の環を含む。それらは好ましくは、芳香族性の少なくとも1個の環および1個のハロゲン原子を含むハロゲン化芳香族炭化水素である。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選択されてもよく、好ましくは塩素である。芳香環は、一核または多核であってもよく、好ましくは一核である。芳香族物質は好ましくは、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサクロロベンゼンおよび/またはナフタレン、ならびにそれらの混合物から選択される。芳香族物質は好ましくはモノクロロベンゼンである。芳香族物質はまた、フェノール、モノ−およびポリクロロフェノールのような含酸素であっても、好ましくはフェノールであってもよい。
【0014】
処理されるべき水性組成物中の有機物質の含有率は通常、処理されるべき水性組成物の全有機炭素(TOC)が0.1gC/kg以上、好ましくは0.5gC/kg以上、より好ましくは1gC/kg以上であるようなものである。当該TOCは、通常20gC/kg以下、好ましくは10gC/kg以下、より好ましくは5gC/kg以下である。
【0015】
処理されるべき水性組成物中の有機物質の含有率は通常、処理されるべき水性組成物の化学的酸素要求量(COD)が0.25gO/kg以上、好ましくは1.25gO/kg以上、より好ましくは2.5gO/kg以上であるようなものである。当該CODは、通常50gO/kg以下、好ましくは25gO/kg以下、より好ましくは15gO/kg以下である。
【0016】
処理されるべき水性組成物は一般に、例えば塩のような、無機化合物を含有する。塩は、有機塩、無機塩またはそれらの混合物であり得る。無機塩が好ましい。無機塩は、構成要素のカチオンおよびアニオンがいかなる炭素−水素結合も、および炭素−酸素結合を除いていかなる炭素−ヘテロ原子結合も全く含有しない塩である。例えば、金属シアン化物は、無機塩とは考えられない。無機塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属塩化物、硫酸塩、硫酸水素塩、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、ホウ酸塩およびそれらの任意の混合物から、好ましくはアルカリまたはアルカリ土類金属塩化物から、より好ましくは塩化ナトリウムおよびカリウムから選択され、塩は最も好ましくは塩化ナトリウムである。塩化ナトリウムを含有する水溶液は塩水としてもまた知られている。本発明の方法に従って処理されるべき水溶液は、多くの場合塩水である。
【0017】
処理されるべき水性組成物の塩含有率は、通常処理されるべき水性組成物1kg当たり5g以上、多くの場合10g/kg以上、頻繁に20g/kg以上、一般に30g/kg以上、好ましくは50g/kg以上、より好ましくは100g/kg以上、さらにより好ましくは140g/kg以上、その上より好ましくは160g/kg以上、最も好ましくは200g/kg以上である。当該塩含有率は、通常処理されるべき組成物1kg当たり270g以下、好ましくは250g/kg以下、最も好ましくは230g/kg以下である。
【0018】
処理されるべき水溶液は、任意のプロセスに、好ましくは有機物質で汚染された塩水を発生するプロセスに由来することができる。例えば、それらは、エポキシド、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンの製造プロセス、塩素化有機化合物、好ましくはジクロロエタンの製造プロセス、モノ−およびポリイソシアネート、好ましくは4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)またはトルエンジイソシアネート(TDI)またはヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート(HDI)の製造プロセスである。処理されるべき水性組成物は、少なくとも2つの異なる製造プロセスに由来する水性組成物の混合物であり得る。
【0019】
処理されるべき有機物質を含有する水性組成物は好ましくは、エポキシドを製造するための、より好ましくはグリセロールからエポキシドを製造するための、最も好ましくはグリセロールからエピクロロヒドリンを製造するためのプロセスに、もしくは塩素化有機化合物、好ましくは1,2−ジクロロエタンの製造プロセスに、または両プロセスに由来する。
【0020】
次亜塩素酸塩を含有する組成物は、固体、溶液または懸濁液であり得る。それは好ましくは固体または溶液、より好ましくは溶液である。
【0021】
次亜塩素酸塩なる表現はここでは、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸からの塩、またはそれらの混合物から選択される任意の化合物を示すことが意図される。
【0022】
次亜塩素酸からの塩は、有機塩、無機塩またはそれらの混合物であり得る。この塩は好ましくは無機塩であり、好ましくは次亜塩素酸アンモニウム、次亜塩素酸の金属塩およびそれらの混合物から選択され、より好ましくはアルカリおよびアルカリ土類金属次亜塩素酸塩、ならびにそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは次亜塩素酸ナトリウムおよびカルシウム、ならびにそれらの混合物から選択され、この塩は最も好ましくは次亜塩素酸ナトリウムである。
【0023】
次亜塩素酸塩を含有する水性組成物は好ましくは、次亜塩素酸ナトリウムを含有する溶液である。
【0024】
次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物は、加えて塩素酸塩を含有してもよい。
【0025】
塩素酸塩なる表現はここでは、塩素酸(HClO)、塩素酸からの塩、またはそれらの混合物から選択される任意の化合物を示すことが意図される。
【0026】
塩素酸からの塩は、有機塩、無機塩またはそれらの混合物であり得る。この塩は好ましくは無機塩であり、好ましくは塩素酸アンモニウム、塩素酸の金属塩およびそれらの混合物から選択され、より好ましくはアルカリおよびアルカリ土類金属塩素酸塩、ならびにそれらの混合物から選択され、さらにより好ましくは塩素酸ナトリウムおよびカルシウム、ならびにそれらの混合物から選択され、この塩は最も好ましくは塩素酸ナトリウムである。
【0027】
次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物は好ましくは、塩素酸ナトリウムを含有する溶液である。
【0028】
塩素酸塩、次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物の塩素酸塩モル含有率は、通常0.1ミリモル塩素酸塩/kg以上、多くの場合1ミリモル/kg以上、頻繁に2ミリモル/kg以上、より特に5ミリモル/kg以上である。当該含有率は、通常100ミリモル塩素酸塩/kg以下、多くの場合50ミリモル/kg以下、頻繁に20ミリモル/kg以下、より特に10ミリモル/kg以下である。
【0029】
次亜塩素酸塩を含有する水性組成物はまた、0.001以上かつ1.5より低い水酸化物と次亜塩素酸塩とのモル比([OH]/[ClO]’)で水酸化物イオンを含有する。次亜塩素酸塩([ClO]’)のモル含有率はここでは、次亜塩素酸塩を含有する水性組成物中の次亜塩素酸と次亜塩素酸の塩とのモル含有率の合計を示すことが意図される。当該モル比([OH]/[ClO]’)は好ましくは、0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらにより好ましくは0.1以上、その上より好ましくは0.2以上、最も好ましくは0.75以上である。当該モル比は、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下、最も好ましくは1.0以下である。
【0030】
次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物は、次亜塩素酸塩とは異なる塩のような、他の化合物を含有することができる。当該塩は有機塩、無機塩またはそれらの混合物であり得る。塩は好ましくは無機塩であり、好ましくはアルカリまたはアルカリ土類金属塩化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、ホウ酸塩およびそれらの任意の混合物から、好ましくはアルカリまたはアルカリ土類金属塩化物から、より好ましくは塩化ナトリウムおよびカリウムから選択され、塩は最も好ましくは塩化ナトリウムである。この塩は通常、次亜塩素酸塩を含有する水性組成物を製造するために用いられるプロセスに由来する。
【0031】
次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物の、次亜塩素酸の可能な塩を含まない、塩含有率は、通常処理されるべき組成物1kg当たり30g以上、好ましくは50g/kg以上、より好ましくは100g/kg以上、さらにより好ましくは140g/kg以上、その上より好ましくは160g/kg以上、最も好ましくは200g/kg以上である。当該塩含有率は、通常処理されるべき組成物1kg当たり270g以下、好ましくは250g/kg以下、最も好ましくは230g/kg以下である。
【0032】
次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物は、任意の手段によって、好ましくは、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、またはそれらの混合物のような塩基性化合物を含有する水にガス状塩素を溶解させることによって得ることができる。水酸化ナトリウムもしくは水酸化カルシウムまたはそれらの混合物を含有する水が好ましく、水酸化ナトリウムを含有する水がより好ましい。
【0033】
次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物の次亜塩素酸塩モル含有率は、通常1kg当たり次亜塩素酸塩0.1モル以上、好ましくは0.5モル/kg以上、より好ましくは1モル/kg以上、最も好ましくは1.3モル/kg以上である。当該含有率は、通常1kg当たり次亜塩素酸塩5モル以下、好ましくは3モル/kg以下、より好ましくは2モル/kg以下、最も好ましくは1.7モル/kg以下である。
【0034】
処理されるべき水性組成物に加えられた次亜塩素酸塩および水酸化物イオンを含有する水性組成物の量は通常、加えられる次亜塩素酸塩と、反応前の、処理されるべき水性組成物のCOD(Oのモル単位で表される)とのモル比が1以上、好ましくは1.2以上、最も好ましくは1.4以上であるようなものである。当該量は通常、加えられる次亜塩素酸塩と、反応前の、処理されるべき水性組成物のCOD(Oのモル単位で表される)とのモル比が8以下、好ましくは4以下、最も好ましくは3以下であるようなものである。
【0035】
液体反応媒体は、単相または多相媒体であってもよい。
【0036】
液体反応媒体は、反応の温度および圧力で溶解または分散した固体化合物、溶解または分散した液体化合物および溶解または分散したガス状化合物の全てからなる。液体反応媒体は好ましくは多相媒体である。
【0037】
本発明による方法は、非連続、連続または半連続モードで実施することができる。連続モードが好ましい。連続モードとは、処理されるべき水性組成物ならびに水酸化物イオンおよび次亜塩素酸塩を含む組成物がプロセスに連続的に供給され、そして液体反応媒体がプロセスから連続的に抜き出されるモードを意味することが意図される。非連続モードとは、任意の他のモードを意味することが意図される。半連続モードは、非連続モードと考えることができる。連続的にという用語は、実質的な中断がないことを意味することが意図される。
【0038】
本発明による方法では、工程(a)の反応が実施されるpHは、好ましくは制御される。当該pHは好ましくは、所与の範囲に制御され、維持される。pH範囲の下限は、一般に6以上、好ましくは7以上、最も好ましくは8以上である。pH範囲の上限は、一般に11以下、好ましくは10以下、最も好ましくは9以下である。pH変化が酸化反応の経過中に起こるので、pHはかかる設定値に維持されなければならない。pH値は、工程(a)の反応条件、すなわち、温度、圧力およびイオン強度に対して与えられる。
【0039】
pHを所与の範囲に維持するために、pHは測定され、必要ならば調整される。
【0040】
pH測定は、連続的にまたは定期的に行うことができる。この最後の場合には、測定は、本方法の工程(a)の継続期間の少なくとも80%の間ずっと、多くの場合少なくとも90%の間ずっと、頻繁に少なくとも95%の間ずっと、とりわけ少なくとも99%の間ずっとpHを設定範囲に維持するのに十分に高い頻度で実施される。
【0041】
pH測定は、反応条件下に反応媒体中において「in situ」で、または反応媒体から抜き出され、そしてpH測定装置の良好な寿命を確実にするために適切な温度および適切な圧力にされたサンプルにおいて「ex situ」で実施することができる。温度25℃および1バールの圧力が適切な温度および圧力の例である。
【0042】
pH測定は、任意の手段で実施することができる。pHに敏感な電極での測定が好都合である。かかる電極は、反応条件下に反応媒体中で安定であるべきであり、反応媒体を汚染するべきではない。pHを測定するためのガラス電極がより特に好都合である。かかる電極の例は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(著作権所有),2005年,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,Weinheim 10.1002/14356007.e19_e01,8−15ページに示されている。METTLER TOLEDO(登録商標)によって供給されるタイプ405−DPAS−SC−K85の、またはENDRESS+HAUSER(登録商標)によって供給されるタイプCeragel CPS71 and Orbisint CPS11の電極が、使用することができる電極の例である。
【0043】
pHは、酸性化合物の添加によるか、塩基性化合物の添加によるかのどちらかによって前記値に調節かつ維持することができる。任意の酸性または塩基性化合物を、pHを維持するために使用することができる。無機酸および無機塩基が好ましい。ガス状および/または水溶液の、塩化水素がより好ましい酸性化合物である。固体および/または水溶液および/または懸濁液の、水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムがより好ましい塩基性化合物であり、水酸化ナトリウム水溶液が最も好ましい。
【0044】
調整は、自動化モードでまたは非自動化モードで実施することができる。pHの制御が制御ループとして知られる閉回路によってもたらされる自動化モードを使用することが好ましい。かかる制御ループは、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry(著作権所有),2005年,Wiley−VCH Verlag GmbH & Co.KGaA,Weinheim 10.1002/14356007.e19_e01、24−27ページに記載されている。PROMINENT(登録商標)DULCOMETER(登録商標)システムタイプPHDは、使用することができる自動化pH制御および調整装置の例である。
【0045】
本発明による方法では、工程(a)の反応が実施される温度は、通常10℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、最も好ましくは80℃以上である。当該温度は、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、最も好ましくは135℃以下である。
【0046】
本発明による方法では、工程(a)の反応は、1絶対バールの圧力下に、1絶対バールより上の圧力下にまたは1絶対バールより下の圧力下に実施することができる。工程(a)の反応を、1〜11絶対バールに調整または設定される圧力下に、より好ましくは1.1〜7バールの圧力下に、最も好ましくは1.1〜4バールの圧力下に実施することが好ましい。
【0047】
反応を液体反応媒体の沸騰温度で実施することが好ましい。かかる手順は、反応中に形成される熱に敏感なおよび/または揮発性化合物、例えば重炭酸塩、炭酸および二酸化炭素の除去を可能にするという利点を有する。
【0048】
本発明による方法では、本方法の工程(a)が非連続モードで実施されるとき、工程(a)の反応の継続期間は、一般に0.05時間以上、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.2時間以上、最も好ましくは0.5時間以上である。当該継続期間は、通常8時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは2時間以下、最も好ましくは1時間以下である。継続期間は、処理されるべき水溶液への次亜塩素酸塩を含有する組成物の添加の時間からカウントされる。
【0049】
本発明による方法では、本方法の工程(a)が連続モードで実施されるとき、工程(a)の反応の滞留時間は、通常0.05時間以上、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.2時間以上、最も好ましくは0.5時間以上である。当該滞留時間は、通常8時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは2時間以下、最も好ましくは1時間以下である。滞留時間は、液体反応媒体の容積と液体反応媒体の流量との比によって定義される。
【0050】
本発明による方法では、工程(a)の反応は、1つ以上の反応ゾーン、好ましくは少なくとも2つの反応ゾーン、より好ましくは少なくとも3つの反応ゾーンで実施することができる。反応ゾーンは、単一ジャケット中に集成された容積または別個ジャケット中の容積からなってもよい。容積が単一ジャケット中に集成される場合には、反応ゾーンは互いに水平にまたは垂直に配置されてもよい。いかなる場合にも、1ゾーンから別のゾーンへの移行は、重力によってかまたは強制循環によって行われてもよい。これらの反応ゾーンは任意の立体配置に、直列に、並列にまたは幾つかは直列に他は並列に設置されてもよい。これらの反応ゾーンは、例えば混合方式、好ましくは完全混合方式またはプラグフロー方式のような、任意のタイプの方式下に運転することができる。ゾーンの少なくとも1つが混合方式、好ましくは完全混合方式下に運転され、そして少なくとも別の1つがプラグフロー方式下に運転されることが好ましく、プラグフロー方式下に動作するゾーンが混合方式、好ましくは完全混合方式下に動作するゾーンの後に設置されることがより好ましい。かかる条件は、本方法が連続モード下に実施されるときに特に好適である。
【0051】
本発明による方法では、反応ゾーンは、処理されるべき水性組成物を、次亜塩素酸塩を含有する水性組成物を、任意の他の組成物を、またはこれらの組成物の少なくとも2つを互いに独立して供給されてもよい。他の組成物は例えば、液体反応媒体のpHを調整するために使用される酸性もしくは塩基性化合物、または揮発性反応生成物を除去するためのストリッピングガスを含んでもよい。幾つかの反応ゾーンが連続したゾーンであるとき、次亜塩酸酸塩を含有する水性組成物の全体または主要部分を連続ゾーンの第1反応ゾーンに供給することが好ましい。次亜塩素酸塩を含有する水性組成物の幾つかの追加の小部分は、連続ゾーンの次のゾーンに加えることができる。液体反応媒体のpHは好ましくは、連続ゾーンの異なる反応ゾーンで独立して調整される。
【0052】
表現「反応ゾーン」は、酸化反応に必要とされる条件が全て見いだされるゾーンを意味すると理解される。
【0053】
工程(a)の反応後に得られる水性組成物は、通常低下したCODおよびTOCレベルを示す。
【0054】
反応工程後の水性組成物のTOCは、通常100mgC/kg以下、好ましくは60mgC/kg以下、より好ましくは20mgC/kg以下である。当該TOCは、通常0.1mgC/kg以上である。
【0055】
反応工程後の水性組成物のCODは、通常250mgO/kg以下、好ましくは150mgO/kg以下、より好ましくは50mgO/kg以下である。当該CODは、通常1mgO/kg以上である。
【0056】
工程(a)の反応後の水性組成物におけるCODおよびTOCに関与する化合物は、上述の処理されるべき水性組成物中に存在する、酸化されなかった有機化合物から選択されてもよいが、また、カルボン酸、アルデヒド、ケトンまたはそれらの任意の混合物からなる群から選択されてもよい。
【0057】
カルボン酸は好ましくは、モノカルボン酸、ポリカルボン酸、およびそれらの混合物からなる群から選択される。モノカルボン酸およびポリカルボン酸は、通常1〜10個の炭素原子を含有する。カルボン酸は、それらの分子中にヘテロ原子を含有することができる。酸素、硫黄、ハロゲンおよび窒素がかかるヘテロ原子の例である。モノカルボン酸はより好ましくは、ギ酸、酢酸、ジクロル酢酸、プロピオン酸、酪酸、グリコール酸、乳酸およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。ポリカルボン酸はより好ましくは、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0058】
ケトンは通常、アセトン、ヒドロキシアセトン、ジヒドロキシアセトンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。ケトンは多くの場合ヒドロキシアセトンである。
【0059】
アルデヒドは好ましくは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリセルアルデヒド、アクロレイン、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0060】
工程(a)の反応後に得られる水性組成物が通常示す塩素酸塩([ClO]’)含有率は、通常1kg当たりClO200ミリモル以下、好ましくはClO100ミリモル/kg以下、より好ましくはClO50ミリモル/kg以下である。当該塩素酸塩含有率は、通常1kg当たりClO0.01ミリモル以上である。塩素酸塩のモル含有率([ClO]’)はここでは、水性組成物中の塩素酸と塩素酸の塩とのモル含有率の合計を示すことが意図される。
【0061】
工程(a)の反応後に得られる水性組成物が通常示す次亜塩素酸塩([ClO]’)含有率は、通常1kg当たりClO100ミリモル以下、好ましくはClO50ミリモル/kg以下、より好ましくはClO20ミリモル/kg以下である。当該次亜塩素酸塩含有率は、通常1kg当たりClO0.001ミリモル以上である。
【0062】
反応工程後に得られる水性組成物は、通常反応工程後に得られる組成物1kg当たり30g以上、好ましくは50g/kg以上、より好ましくは100g/kg以上、さらに好ましくは140g/kg以上、その上より好ましくは160g/kg以上、最も好ましくは200g/kg以上の、塩含有率、好ましくはアルカリまたはアルカリ土類金属塩化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、ホウ酸塩、塩素酸塩、次亜塩素酸塩およびそれらの任意の混合物から、より好ましくはアルカリまたはアルカリ土類金属塩化物から、さらにより好ましくは塩化ナトリウムおよびカリウムから、最も好ましくは塩化ナトリウムから選択される、好ましくは無機塩を通常示す。当該塩含有率は、通常組成物1kg当たり270g以下、好ましくは250g/kg以下、最も好ましくは230g/kg以下である。
【0063】
反応工程後に得られる水性組成物は、電解プロセスにおける、好ましくは塩素を製造するための電解プロセスにおける出発原料としてそのままで使用することができる。
【0064】
第2実施形態では、有機物質を含有する水性組成物は少なくとも1種の塩を含有し、水性組成物中の有機物質の分解方法は、工程(a)の反応媒体の少なくとも一部が、塩の少なくとも一部を沈殿させるために、冷却、蒸発結晶化、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される操作にかけられる、さらなる工程(b1)に続き、沈殿した塩の少なくとも一部と水性組成物中に存在する水の少なくとも一部とが回収される工程を含む。
【0065】
第2実施形態の第1変形では、操作は冷却操作である。この操作は、工程(a)の反応媒体の温度を工程(a)の反応の温度より低い温度に設定し、維持することからなる。当該温度は、一般に25℃より低く、多くの場合10℃以下であり、頻繁に0℃以下であり、とりわけ−10℃より低い。当該温度は、一般に−22℃以上、多くの場合−20℃以上である。
【0066】
冷却操作は、連続または非連続モードで実施することができる。連続モードが好ましい。
【0067】
冷却操作が非連続モード下に実施されるとき、冷却操作の継続期間は、通常1分以上、多くの場合10分以上、頻繁に20分以上である。当該継続期間は、通常6時間以下、多くの場合3時間以下、頻繁に2時間以下である。
【0068】
冷却操作が連続モード下に実施されるとき、冷却操作の滞留時間は、通常1分以上、多くの場合10分以上、頻繁に20分以上である。当該滞留時間は、通常6時間以下、多くの場合3時間以下、頻繁に2時間以下である。
【0069】
冷却操作が実施される圧力は、通常0.1バール以上、多くの場合0.5バール以上、頻繁に0.9バール以上である。当該圧力は、通常10バール以下、多くの場合5バール以下、頻繁に2バール以下である。
【0070】
この操作は通常、工程(a)の反応媒体中の塩の濃度が高い、すなわち230g/kg以上、とりわけ240g/kg以上、より特に250g/kg以上であるときに実施される。
【0071】
この操作は、工程(a)の反応媒体のpHそのままでまたは修正されたpHで実施することができる。操作は好ましくは、炭酸塩を除去するために5より低いpHに酸性化した後に実施される。pHは次に、沈殿前にまたは沈殿中により高い値に場合により調整される。pHは、酸性化合物の添加によるか塩基性化合物の添加によるかのどちらかによって修正または調整することができる。任意の酸性または塩基性化合物を、pHを維持するために使用することができる。無機酸および無機塩基が好ましい。ガス状および/または水溶液の、塩化水素がより好ましい酸性化合物である。固体および/または水溶液および/または懸濁液の水酸化ナトリウムまたはカリウムが、より好ましい塩基性化合物であり、水酸化ナトリウム水溶液が最も好ましい。
【0072】
第2実施形態の第2変形では、操作は蒸発結晶化操作である。
【0073】
用語「蒸発結晶化」は、媒体へのその溶解を促進する化合物を、蒸発によって、除去することによって化合物の結晶化をもたらすプロセスを意味することが意図される。このプロセスは、「Perry’s Chemical Engineers’Handbook」第7版の第11節、1997年に記載されている。
【0074】
蒸発結晶化が実施される温度は、一般に20℃より高く、通常40℃以上、多くの場合60℃以上、頻繁に90℃以上である。当該温度は、一般に200℃以下、多くの場合150℃以下である。
【0075】
蒸発結晶化は、工程(a)の反応媒体のpHそのままでまたは修正されたpHで実施することができる。操作は好ましくは、炭酸塩を除去するために5より低いpHに酸性化した後に実施される。pHは次に、沈殿前にまたは沈殿中により高い値に場合により調整される。pHは、酸性化合物の添加によるか塩基性化合物の添加によるかのどちらかによって修正または調整することができる。任意の酸性または塩基性化合物を、pHを維持するために使用することができる。無機酸および無機塩基が好ましい。ガス状および/または水溶液の、塩化水素がより好ましい酸性化合物である。固体および/または水溶液および/または懸濁液の、水酸化ナトリウムまたはカリウムがより好ましい塩基性化合物であり、水酸化ナトリウム水溶液が最も好ましい。
【0076】
蒸発結晶化操作は、非連続または連続モードで実施することができる。連続モードが好ましい。
【0077】
蒸発結晶化操作が非連続モード下に実施されるとき、操作の継続期間は、通常1分以上、多くの場合10分以上、頻繁に20分以上である。当該継続期間は、通常6時間以下、多くの場合3時間以下、頻繁に2時間以下である。
【0078】
蒸発結晶化操作が連続モード下に実施されるとき、操作の滞留時間は、通常1分以上、多くの場合10分以上、頻繁に20分以上である。当該滞留時間は、通常6時間以下、多くの場合3時間以下、頻繁に2時間以下である。
【0079】
蒸発結晶化操作が実施される圧力は、一般に0.001絶対バール以上である。この圧力は、一般に15バール以下、通常4バール以下、多くの場合1バール以下、頻繁に0.5バール以下、より特に0.1バール以下である。
【0080】
この操作は通常、工程(a)の反応媒体中の塩の濃度が低い、すなわち270g/kg以下、とりわけ250g/kg以下、より特に230g/kg以下であるときに実施される。
【0081】
第2実施形態の第1変形では、固体は一般に、冷却操作を受けた反応媒体中に沈殿する。反応媒体は、少なくとも1種の塩と少なくとも1つの水性残留物とを回収するために分離操作をさらに行うことができる。
【0082】
分離操作は、デカンテーション、濾過、遠心分離、およびそれらの少なくとも2つの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。分離操作は、分離された固体の洗浄を含有してもよい。この洗浄は、任意の液体で実施することができる。水が好ましく、脱イオン水がより好ましく、蒸留水が最も好ましい。濾過操作が好ましい。
【0083】
回収された固体は、少なくとも1種の塩を含む。塩は好ましくは、アルカリまたはアルカリ土類金属塩化物、硫酸塩、硫酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩、ホウ酸塩およびそれらの任意の混合物からなる群から、より好ましくはアルカリおよびアルカリ土類金属塩化物から、さらにより好ましくは塩化ナトリウムおよびカリウムから好ましくは選択される、無機塩であり、塩は最も好ましくは塩化ナトリウムである。
【0084】
回収された固体は通常、結晶性固体、すなわち、そのX線回折パターンが明確な回折線を示す固体である。
【0085】
固体の塩含有率は、通常300g/kg以上、一般に400g/kg以上、多くの場合に500g/kg以上、しばしば550g/kg以上、頻繁に590g/kg以上、特に600g/kg以上、とりわけ610g/kg以上である。
【0086】
回収された固体は有機物質を含んでもよい。これらの物質は、上に定義されたような、処理されるべき水性組成物中に既に存在するものか、または工程(a)の反応中に形成された有機物質であり得る。回収された固体のTOCは、通常10mgC/kg以下、好ましくは5mgC/kg以下、より好ましくは2mgC/kg以下である。当該TOCは通常0.1mgC/kg以上である。
【0087】
分離操作は、連続または非連続モードで実施することができる。連続モードが好ましい。
【0088】
回収された固体は、廃棄処分するか、または電解プロセスに使用するための、溶液調製におよび/または溶液再飽和に使用することができる。特に、固体が塩化ナトリウムから本質的になり、塩水調製および/または再飽和のために使用される場合にそうである。
【0089】
回収された水性残留物は、廃棄処分する、生物学的処理に送る、工程(b1)の処理にリサイクルする、第1変形の処理にリサイクルする、およびこれらの操作の少なくとも2つの任意の組み合わせを行うことができる。
【0090】
第2実施形態の第2変形では、少なくとも1つの蒸発物と少なくとも1つの蒸発残留物とが通常得られる。
【0091】
蒸発物は、主成分として水を含む。含水率は、通常900g/kg以上、一般に950g/kg以上、多くの場合に990g/kg以上、しばしば995g/kg以上、頻繁に999g/kg以上、特に999.9g/kg以上、とりわけ999.99g/kg以上である。当該含有率は通常99.999g/kg以下である。
【0092】
蒸発物は、塩、多くの場合無機塩を含んでもよい。塩含有率は、通常1g/kg以下、一般に0.5g/kg以下、多くの場合に0.1g/kg以下、しばしば0.05g/kg以下、頻繁に0.01g/kg以下、特に0.005g/kg以下、とりわけ0.001g/kg以下である。当該含有率は通常0.001mg/kg以上である。
【0093】
蒸留物は有機物質を含んでもよい。これらの物質は、上に定義されたような、処理されるべき水性組成物中に既に存在するものか、または工程(a)の反応中に形成された有機物質であり得る。蒸発物のTOCは、通常10mgC/kg以下、好ましくは5mgC/kg以下、より好ましくは2mgC/kg以下である。当該TOCは通常0.1mgC/kg以上である。
【0094】
蒸発物残留物は一般に、少なくとも1つの固体と少なくとも1つの水相とを含む。この残留物は、少なくとも1つの固体と少なくとも1つの水性残留物とを回収するために分離操作をさらに行うことができる。
【0095】
分離操作および回収された固体の特性は、固体の塩含有率が、通常900g/kg以上、一般に950g/kg以上、多くの場合に980g/kg以上、しばしば990g/kg以上、頻繁に999g/kg以上、特に999.5g/kg以上、とりわけ999.9g/kg以上であることを除いて第2実施形態の第1変形について本明細書で上に記載された通りである。
【0096】
水性残留物は通常、工程(b1)の処理を受けた水性組成物より有機物質が濃縮されている。これらの物質は、上に定義されたような、処理されるべき水性組成物中に既に存在するものかまたは工程(a)の反応中に形成された有機物質であり得る。水性残留物のTOCは、通常50mgC/kg以上、一般に100mg/kg以上、多くの場合に200mg/kg以上、しばしば400mg/kg以上、頻繁に600mg/kg以上である。
【0097】
当該回収された水性残留物は、廃棄処分する、生物学的処理に送る、第2変形の処理にリサイクルする、第1変形の処理にリサイクルする、およびこれらの操作の少なくとも2つの任意の組み合わせを行うことができる。
【0098】
回収された固体および/または蒸発物は、廃棄処分するか、または電解プロセスに使用するための、溶液調製におよび/または溶液再飽和に使用することができる。特に、固体が塩化ナトリウムから本質的になり、塩水調製および/または飽和のために使用される場合にそうである。
【0099】
蒸発物の使用は、給水が制限された国に設置された電解プロセスのような、プロセスにとって特に重要である、余分の水を全く必要としないという利点を有する。
【0100】
第2実施形態のさらなる変形は、第1および第2変形の処理を何らかの方法で組み合わせることによって得ることができる。
【0101】
第3実施形態では、本発明による方法の工程(a)は第1pH値で実施され、水性組成物中の有機物質の分解方法は、工程(a)の反応媒体の少なくとも一部が工程(a)のpH値より低い第2の値のpHにするために酸性化操作にかけられ、そして有機物質がさらに酸化される、さらなる工程(b2)を含む。
【0102】
理論に制約されることなく、第3実施形態の2段階プロセスは、以下の理由により高い有機物質分解レベルを可能にすると考えられる:
・ 工程(a)のより高いpHで、有機物質の酸化はより遅い速度で進行するが、極めて酸化されにくい塩素化有機物質を与える有機物質の塩素化は抑えられる、
・ 工程(b2)のより低いpHで、残存有機物質の酸化はより速く、それらの残存有機物質の塩素化はそれらのより低い濃度のために減少する。
【0103】
言い換えれば、低下した全有機含有率の水性組成物について工程(b2)を実施することがより良好である。
【0104】
当該実施形態では、工程(b2)の反応は、所与の範囲に制御および維持されたpHで実施される。当該pH範囲の下限は、一般に0.01以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、最も好ましくは3以上である。当該pH範囲の上限は、一般に6より低く、好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは4以下である。pHは一般に、pH変化が酸化反応の経過中に起こるので、かかる設定値に維持されなければならない。pHは、酸性化合物の添加によるか塩基性化合物の添加によるかのどちらかによって前記値に維持することができる。酸性操作は、上記のように、酸性化合物を工程(a)からの反応媒体に加えることによって実施することができる。
【0105】
当該実施形態では、工程(b2)の反応が実施される温度は、通常10℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは60℃以上、最も好ましくは80℃以上である。90℃以上の温度が好都合である。100℃以上の温度が好適である。当該温度は、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、最も好ましくは135℃以下である。120℃以下の温度が好都合である。110℃以下の温度が好適である。
【0106】
本発明による方法では、工程(b2)の反応は通常、1絶対バールの圧力下に、1絶対バールより上の圧力下にまたは1絶対バールより下の圧力下に実施される。酸化操作を、1〜11絶対バールに調整または設定される圧力下に、より好ましくは1.1〜7バールの圧力下に、最も好ましくは1.1〜4バールの圧力下に実施することが好ましい。
【0107】
本発明による方法では、本方法の工程(b2)が非連続モードで実施されるとき、工程(b2)の反応の継続期間は、通常0.05時間以上、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.2時間以上、最も好ましくは0.5時間以上である。当該継続期間は、通常8時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは2時間以下、最も好ましくは1時間以下である。継続期間は、処理されるべき工程(a)から生じた反応媒体のpH変化の時間からカウントされる。
【0108】
本発明による方法では、本方法の工程(b2)が連続モードで実施されるとき、工程(b2)の反応の滞留時間は、通常0.05時間以上、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.2時間以上、最も好ましくは0.5時間以上である。当該滞留時間は、通常8時間以下、好ましくは4時間以下、より好ましくは2時間以下、最も好ましくは1時間以下である。滞留時間は、液体反応媒体の容積と液体反応媒体の流量との比によって定義される。
【0109】
工程(b2)の反応は、工程(a)の反応について記載されたように、1つ以上の反応ゾーンで実施することができる。
【0110】
第3実施形態の第1変形では、必要ならばpHを低くするための酸性化合物、および必要ならば工程(b2)のpHを調整するために使用される酸性または塩基性化合物を除いて追加の化合物は工程(b2)に全く加えられない。理論に制約されることなく、かかるpHで、工程(a)の終わりに反応混合物中に存在する塩素酸塩イオンおよび/または活性塩素は、残存有機化合物、例えば本方法の工程(a)後に反応媒体中に依然として存在するカルボン酸を酸化することができる。
【0111】
表現「活性塩素」は、分子塩素および、例えば次亜塩素酸、トリクロリドイオンおよび次亜塩素酸ナトリウムなどの、水、塩化物イオンとのまたは塩基性試剤とのその反応生成物を意味すると理解される。活性塩素の含有率は、Clのg/kgまたはClのモル/kg単位で表すことができる。
【0112】
第3実施形態の第2変形では、必要ならばpHを低くするための酸性化合物、および必要ならば工程(b2)のpHを調整するために使用される酸性または塩基性化合物に加えて少なくとも1種の化合物が工程(b2)に加えられる。当該化合物は、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。次亜塩素酸塩は上記の通りであり得る。塩素は液体またはガス状、好ましくはガス状であり得る。それは純粋なものをまたは、例えば、窒素のような任意の不活性ガスで希釈して使用することができる。二酸化塩素は一般にガスとして使用される。それは、塩素と亜塩素酸塩(ClO)との添加によってin situで生成することができる。
【0113】
当該第3実施形態の第1変形の第1態様では、pHは、2以上かつ6より低い値に、好ましくは3以上かつ5以下の値に維持される。
【0114】
当該第3実施形態の第1変形の第2態様では、pHは、0.01以上かつ3より低い値、好ましくは0.01以上かつ2より低い値に維持される。
【0115】
当該第3実施形態の第2変形の第1態様では、追加の化合物は、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択され、pHは、2以上かつ6より低い値、好ましくは3以上かつ5以下の値に維持される。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0116】
当該第3実施形態の第2変形の第2態様では、追加の化合物は、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択され、pHは、0.01以上かつ3より低い値、好ましくは0.01以上かつ2より低い値に維持される。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0117】
第1および第3実施形態では、塩素の分圧は、一般に0.001バール以上、多くの場合0.01バール以上、頻繁に0.1バール以上、とりわけ0.5バール以上である。塩素の分圧は、一般に10バール以下、多くの場合5バール以下、頻繁に3バール以下、とりわけ2バール以下である。
【0118】
塩素の分圧は、上に、第3実施形態の第2変形の第1および第2態様でより具体的に上に定義された通りである。
【0119】
第3実施形態の第3変形では、工程(b2)中にUV(紫外)−可視光での処理が反応媒体に対して実施される。当該第3変形は、本明細書では以下、クロロ−光分解処理と言われる。
【0120】
使用されるUV−可視光の波長は、一般に100nm以上、多くの場合150nm以上、頻繁に200nm以上である。当該波長は、一般に600nm以下、多くの場合500nm以下、頻繁に400nm以下、とりわけ300nm以下である。使用されるUV−可視光の波長スペクトルにわたる光強度の変動は、連続的でもまたは非連続的でもよい。波長の非連続スペクトルのUV−可視光が多くの場合使用される。
【0121】
当該第3態様で使用されるUV−可視光は、例えばUV−可視ランプのような、任意の光源によって生成することができる。Heraeus−Noblelight製のHigh Tech DQまたはQCのような中圧UVランプは、かかる光源の例である。
【0122】
当該第3変形では、Wh単位での光源によって消費される電気エネルギーとリットル単位での工程(a)の反応媒体の処理される部分の容積との比は、通常1Wh/l以上、多くの場合5Wh/l以上、頻繁に10Wh/l以上、特に15Wh/l以上である。当該比は、通常100Wh/l以下、多くの場合75Wh/l以下、頻繁に50Wh/l以下、特に40Wh/l以下である。
【0123】
当該第3変形では、好ましくは酸性化後の、工程(a)の反応媒体の一部の「活性塩素」の濃度は、通常工程(a)の反応媒体1kg当たり0.1g以上のCl、一般に0.2g/kgより高く、多くの場合0.3g/kg以上である。当該濃度は、通常100g/kg以下、多くの場合10g/kg以下、頻繁に1g/kg以下、一般に0.8g/kgより低く、多くの場合0.5g/kg以下である。
【0124】
当該第3変形では、クロロ−光分解処理が実施される、工程(b2)のpHは、一般に1以上、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上の値に維持される。当該pHは、通常6以下、好ましくは5以下、より好ましくは4.5以下の値に維持される。
【0125】
クロロ−光分解処理は、非連続、連続または半連続モードで実施することができる。操作のそれらのモードは、第1実施形態について上に定義された通りである。
【0126】
クロロ−光分解処理は、1つ以上の反応ゾーンで実施することができる。それらの反応ゾーンは、第1実施形態について上に定義された通りである。
【0127】
第3実施形態の第4変形では、クロロ−光分解処理もまた、工程(b2)後の反応媒体に対して実施することができる、これは、工程(b2)に連続した第3工程(c)においてであり得る。
【0128】
クロロ−光分解処理はまた、工程(a)のまたは工程(b2)の代わりに実施することができる。この実施形態は、処理されるべき水溶液中の有機物質の含有率が低いときに有用であろう。
【0129】
これらの第3および第4変形では、工程(b2)後の反応媒体のTOC含量の転化率は、通常50%以上、多くの場合70%以上、頻繁に80%以上、とりわけ90%以上である。
【0130】
これらの第3および第4変形では、工程(b2)後の反応媒体のTOC含量は、通常30mgC/l以下、好ましくは20mgC/l以下、より好ましくは15mgC/l以下、最も好ましくは10mgC/l以下である。当該TOCは通常0.1mgC/kg以上である。
【0131】
これらの第3および第4変形では、工程(b2)後の反応媒体のCOD含量は、通常250mgO/kg以下、好ましくは150mgO/kg以下、より好ましくは50mgO/kg以下である。当該CODは通常1mgO/kg以上である。
【0132】
当該第3実施形態の第5変形では、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物が工程(b2)に加えられ、UV−可視光での処理が工程(b2)中に実施される。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0133】
UV−可視光での処理は、第3および第4変形について記載された通りである。
【0134】
当該第5変形では、好ましくは酸性化後および追加の化合物の添加後の、工程(a)の反応媒体の一部の「活性塩素」の濃度は、通常水性組成物1kg当たり0.1g以上のCl、一般に0.2g/kgより高く、多くの場合0.3g/kg以上である。当該濃度は、一般に水性組成物1kg当たり100g以下、多くの場合10g/kg以下、頻繁に1g/kg以下、一般に0.8g/kgより低く、多くの場合0.5g/kg以下である。
【0135】
当該第3実施形態の第6変形では、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物が工程(b2)に加えられ、UV−可視光での処理が工程(b2)後に実施される。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。これは、工程(b2)に連続した第3工程(c)においてあり得る。
【0136】
クロロ−光分解処理はまた、工程(a)のまたは工程(b2)の代わりに実施することができよう。しかしながら、これは、処理されるべき水溶液中の有機物質の含有率が低いときに有用であろう。
【0137】
第3実施形態の第7変形では、工程(b2)中に、電解による処理が反応媒体に対して実施される。この処理は、本明細書では以下電解処理と言われる。
【0138】
電解処理は一般に、工程(b2)の反応媒体に直流を通すかまたは工程(b2)の反応媒体に直流電圧をかけることを含む。この処理は好ましくは、工程(b2)の反応媒体に直流を通すことを含む。
【0139】
第7変形の電解処理では、温度は、多くの場合120℃以下、頻繁に100℃以下、特に90℃以下である。当該温度は、通常0℃以上、多くの場合25℃以上、頻繁に50℃以上、特に60℃以上、殊更に70℃以上である。85℃の温度が特に好都合である。
【0140】
第7変形の電解処理では、圧力は、多くの場合5絶対バール以下、頻繁に2バール以下、特に1.8バール以下、殊更に1.5バール以下である。当該圧力は、通常0.01絶対バール以上、多くの場合0.1バール以上、頻繁に0.5バール以上、特に0.6バール以上、殊更に0.7バール以上である。
【0141】
第7変形の電解処理では、工程(a)の反応媒体の一部のpHは、一般に2以上、多くの場合3以上、頻繁に3.5以上の値に維持される。当該pHは、一般に6以下、多くの場合5以下、頻繁に4.5以下の値に維持される。
【0142】
当該pHは、酸性または塩基性化合物を加えることによって、電解処理前にまたは電解処理中に調整することができる。
【0143】
電解処理は、非連続、連続または半連続モードで実施することができる。操作のそれらのモードは、第1実施形態について上に定義された通りである。
【0144】
電解処理は、1つ以上の反応ゾーンで実施することができる。それらの反応ゾーンは、第1実施形態について上に定義された通りである。
【0145】
第7の変形では、電解プロセスが非連続モードで実施されるとき、反応時間は一般に10時間以下、多くの場合5時間以下、頻繁に2時間以下、特に1時間以下、殊更に0.5時間以下である。当該時間は、通常0.005時間以上、多くの場合0.05時間以上、頻繁に0.1時間以上、特に0.15時間以上、殊更に0.2時間以上である。
【0146】
第7の変形では、電解処理が連続モードで実施されるとき、滞留時間は一般に10時間以下、多くの場合5時間以下、頻繁に2時間以下、特に1時間以下、殊更に0.5時間以下である。当該滞留時間は、通常0.005時間以上、多くの場合0.05時間以上、頻繁に0.1時間以上、特に0.15時間以上、殊更に0.2時間以上である。滞留時間は、電解処理が実施されるゾーンの容積と当該ゾーンに供給される反応媒体の流量との比と定義される。
【0147】
第7変形の電解プロセスは通常、少なくとも1つの陽極と少なくとも1つの陰極とを含む電解セル(または装置)で実施される。
【0148】
第7変形の電解処理では、処理が直流モード下に実施されるとき、反応媒体を通る電流密度は、一般に電極、好ましくは陽極1m当たり1A以上、多くの場合100A/m以上、頻繁に1000A/m以上、特に5000A/m以上である。当該電流密度は、一般に電極、好ましくは陽極1m当たり25000A以下、多くの場合20000A/m以下、頻繁に15000A/m以下、特に10000A/m以下である。
【0149】
第7変形の電解処理では、電解が直流電圧モード下に実施されるとき、陽極と陰極との間にかけられる電圧は、一般に2.3V以上、多くの場合2.4V以上、頻繁に2.5V以上である。当該電圧は、一般に6V以下、多くの場合5V以下、頻繁に4V以下である。
【0150】
第7変形の電解処理は一般に、陰極と陽極との間に直流をかけるかまたは直流電圧をかけることを含み、多くの場合陰極と陽極との間に直流をかけることを含む。
【0151】
電解セルは、分離セルでもまたは非分離セルでもよい。分離セルは、水銀電池、隔膜電解槽、膜セルにおけるように、陽極および陰極が分離されているセル、または陽極室および陰極室が電解ブリッジによって連結されているセルである。電解セルは、多くの場合分離セルである。それは、多くの場合隔膜電解槽または膜セル、頻繁に膜セルである。水銀電池もまた好都合である。分離セルを使用することの利点は、陽極で形成された生成物と陰極で形成された生成物との接触を回避することである。
【0152】
電解セルが隔膜電解槽または膜セルであるとき、それは一般に、少なくとも1つの陽極を含有する陽極液室と少なくとも1つの陰極を含有する陰極液室とを含み、これらの室は少なくとも1つの隔膜または少なくとも1つの膜によって分離されている。電解処理を施すべき工程(a)の反応媒体の一部は、電解セルの陽極液室に、陰極液室にまたは両室に供給することができる。それは好ましくは陽極液室に供給される。
【0153】
電極、好ましくは陽極の表面と、工程(b2)の反応媒体の容積との比は、通常0.001cm−1以上、多くの場合0.005cm−1以上、頻繁に0.01cm−1以上、多くの場合に0.1cm−1以上、とりわけ0.2cm−1以上である。当該表面対容積比は、通常1cm−1以下、多くの場合0.5cm−1以下、頻繁に0.4cm−1以下、とりわけ0.3cm−1以下である。非分離電解セルが使用されるとき、工程(b2)の反応媒体の容積は、電解セル中の当該媒体の容積である。分離電解セルが使用されるとき、工程(b2)の反応媒体の容積は、電解セルの陽極室中のまたは陰極室中の、好ましくは陽極室中の当該媒体の容積である。
【0154】
様々なタイプの電解槽の、陽極および陰極の、膜および隔膜などの特性は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5完全改定版、第A6巻 1986年、401−477ページに見いだすことができる。
【0155】
第3実施形態の第7変形では、工程(b2)後の反応媒体のTOC含量の転化率は、通常25%以上、多くの場合30%以上、頻繁に50%以上、とりわけ70%以上である。
【0156】
第3実施形態の第8変形では、電解処理はまた、工程(b2)後の反応媒体に対して実施することができる。これは、工程(b2)に連続した第3工程(c’’’)においてであり得る。
【0157】
第3実施形態の第9変形では、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物が工程(b2)におよび工程(b2)中に加えられ、電解による処理が実施される。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0158】
第3実施形態の第10変形では、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物が工程(b2)におよび工程(b2)後に加えられ、電解による処理が実施される。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0159】
第9および第10変形の電解による処理は、第3実施形態の第7変形に記載された通りである。
【0160】
電解処理はまた、工程(a)のまたは工程(b2)の代わりに実施することができよう。この実施形態は、処理されるべき水溶液中の有機物質の含有率が低いときに有用であろう。
【0161】
第3実施形態の第11変形では、工程(b2)中に、UV−可視光での処理および電解処理が実施される。
【0162】
第3実施形態の第12変形では、工程(b2)後に、UV−可視光での処理および電解処理が実施される。
【0163】
この第12変形の第1態様では、これらの2つの処理は、工程(b2)後に、同時に実施される。
【0164】
この第12変形の第2態様では、これらの2つの処理は、工程(b2)後に、順次実施される。いかなる順番も好都合である。
【0165】
第3実施形態の第13変形では、工程(b2)中に、UV−可視光での処理が実施され、工程(b2)後に電解処理が実施される。
【0166】
第3実施形態の第14変形では、工程(b2)中に、電解処理が実施され、工程(b2)後に、UV−可視光での処理が実施される。
【0167】
第3実施形態の、さらなる第15〜第18変形では、塩素、酸化塩素化合物、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の追加の化合物が工程(b2)に加えられ、変形11〜14のUV処理および電解処理が実施される。酸化塩素化合物は、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択することができる。
【0168】
それらの第11〜第14変形のUV−可視処理および電解処理は、それぞれ第3および第7変形について、上に記載された通りである。
【0169】
第3実施形態の第19変形では、工程(b2)の反応媒体の少なくとも一部は、工程(b2)の反応媒体中に存在する可能性がある少なくとも1種の塩と少なくとも1つの水性組成物とを回収するために、冷却、蒸発結晶化、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される操作にかけられる。当該変形では、工程(b1)は、工程(b2)の終わりに得られる反応媒体に対して実施される。
【0170】
本発明による方法では、通常、工程(a)、(b1)および(b2)の少なくとも1つは連続モードで実施される。好ましくは、工程(a)、(b1)および(b2)の全てが連続モードで実施される。
【0171】
本発明による方法の第2実施形態の様々な変形は、本発明による方法の第3実施形態の第19変形の様々な態様と想定することができる。
【0172】
第3実施形態の少なくとも2つの変形間の任意の組み合わせを想定することができる。
【0173】
本発明による水性組成物の有機物質の分解方法では、様々な工程は、処理条件に耐性がある材料から製造されたまたは材料で被覆された装置で好ましくは実施される。それらの材料は、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/152043号パンフレット、より具体的には29ページ、20行〜30ページ、20行の節に記載されているようなものである。
【0174】
第1および第3実施形態の処理後に得られた反応媒体、第2実施形態で回収された塩ならびに第2実施形態の第2変形で回収された塩と蒸発物とを組み合わせることによって得られた溶液は、電解プロセスでの、好ましくは塩素を製造するための電解プロセス、好ましくは塩素を工業的に製造するための電解プロセスでの、より好ましくは、その内容が参照により本明細書に援用される、SOLVAY SAの国際公開第2008/152043号パンフレット、より具体的には31ページ、2行〜35ページ、2行の節に開示されているような、塩水から塩素を工業的に製造するための電解プロセス用の出発原料として使用することができる。反応媒体は、かかる電解プロセスに使用される前に例えば脱塩素、NaCl飽和またはイオン交換樹脂処理のような古典的処理を施すことができる。
【0175】
第1および第3実施形態の処理後に得られた反応媒体のならびに第2実施形態の第2変形で得られた溶液の電解プロセスへの移動は通常、電解プロセスに有害であり得る成分を放出しない材料から製造されたまたは材料で被覆された設備で行われる。
【0176】
好適な材料として、例えば、エナメルスチール、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリ塩化ビニルおよび塩素化ポリ塩化ビニルなどの塩素化ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、およびポリ(パーフルオロプロピルビニルエーテル)のような完全フッ素化ポリマーなど、ポリ(フッ化ビニリデン)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーのような部分フッ素化ポリマーなどのフッ素化ポリマー、とりわけ芳香族の、ポリスルホンまたはポリスルフィドなどの、硫黄を含むポリマーのようなポリマー、エポキシ樹脂またはフェノール樹脂などの、樹脂を用いたコーティング、タンタル、チタン、銅、金および銀、ニッケルおよびモリブデンなどの金属、またはそれらの合金、より具体的にはニッケルおよびモリブデンを含有する合金について言及されてもよい。
【0177】
反応媒体がいかなる残存「活性塩素」も含有しない、すなわち、「活性塩素」含有率が、1kg当たり1mg以下のCl、好ましくは1kg当たり0.5mg以下のCl、より好ましくは1kg当たり0.1mg以下のClであるとき、ポリオレフィン、とりわけポリプロピレンが特に好都合である。
【0178】
反応媒体が残存「活性塩素」を依然として含有する、すなわち、「活性塩素」含有率が、1kg当たり1mg以上のCl、好ましくは1kg当たり10mg以上のCl、より好ましくは1kg当たり100mg以上のClであるとき、塩素化ポリマー、フッ素化ポリマー、金属または合金を使用することが好ましい。
【0179】
反応媒体のまたは溶液のpHが5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下であるとき、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、およびエチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーが特に好適である。
【0180】
ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー、およびポリ(パーフルオロプロピルビニルエーテル)などの過フッ素化ポリマーを、任意のpHで活性塩素の存在下に使用することができるが、それらは、反応媒体のまたは溶液のpHが5より高い、好ましくは7以上、より好ましくは9以上であるとき特に好都合である。
【0181】
タンタルおよびチタンのような金属、Hastelloy Cのような合金、およびエナメルスチールを、任意のpHで活性塩素の存在下に使用することができるが、それらは、反応媒体のまたは溶液のpHが5より高い、好ましくは7以上、より好ましくは9以上であるとき特に好都合である。
【0182】
電解処理が実施される第3実施形態の変形では、電解処理は、塩素を製造するための電解セルで実施することができる。これは、塩素の製造と処理されるべき水性組成物中に存在する有機化合物の分解とを組み合わせるという利点を有する。塩素を製造するための電解中の有機化合物の分解は、次の利点を有する。第1に、それは、電解セルにリサイクルされる、劣化した塩水(depleted brine)のTOCを下げることができる。第2に、それは、リサイクルされる塩水の浄化の頻度と当該浄化物のTOCとを同時に下げることができる。これらの利点は、有利な経済的影響をもって、プロセス工程数の減少につながる。
【実施例】
【0183】
実施例1
1リットルの作業容量を有する、および垂直冷却器を備えたガラス恒温ジャケット付き反応器に、1kg当たり、4.76gの3−クロロプロパン−1,2−ジオール、5.03gの1,3−ジクロロ−2−プロパノール、2.39gの2,3−ジクロロ−1−プロパノール、0.17gのグリセロール(1,2,3−プロパントリオール)、217gの塩化ナトリウムを含有し、残りが水である269gの塩水を供給した。当該塩水のTOCは4.2gC/lであり、計算CODは11.5gO/kgであった。当該塩水を、大気圧(約1013絶対ミリバール)下におよび撹拌(マグネティックバー)下に還流(約107℃)で加熱した。この加熱される塩水に、1kg当たり、1.532モルの次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、0.006モルの塩素酸ナトリウム(NaClO)、0.100モルの水酸化ナトリウム、1.54モルの塩化ナトリウムを含有し、残りが脱塩水である水性次亜塩素酸塩溶液の第1の画分(63.2g)を一気に(時間ゼロ)加えた。(それぞれ、62.7g、63.8gおよび63.5gの)第2、第3および第4の画分を、それぞれ、15、30および45分後に、それぞれ一気に加えた。
【0184】
生じた混合物のpHを、最初の20分中に水酸化ナトリウム溶液(1M)の定期的な添加(45mlのNaOH 1Mを添加)によって、および最初の20分後に塩化水素溶液(1M)の定期的な添加によって106℃で8(±0.1)(25℃で8.5±0.1)の値に維持した。45分後に、サンプルを分析のために反応混合物から定期的に抜き出した。
【0185】
サンプルをヨードメトリー(ClOおよびClO)ならびにマーキュリメトリー(mercurimetry)(Cl)によって分析した。サンプルを過剰の亜硫酸ナトリウムで処理し、次に上述の方法に従ってそれらのTOC含量について分析した。
【0186】
結果を表1にまとめた。
【0187】
【表1】

【0188】
ClOの量およびCODは、次の規則に従ってgClの単位で表した:1gのClOは1.38gのClに相当し、1gのOは4.43gのClに相当する。
【0189】
実施例2および3
加えられる次亜塩素酸塩の量およびpHを表2に記載されるように修正したことを除いて実施例1の手順に従った。
【0190】
【表2】

【0191】
実施例4〜7
処理されるべき塩水がいかなるモノクロロプロパンジオールも含有しなかったこと、加えられる次亜塩素酸塩の量およびpHを表3に記載されるように修正したことを除いて実施例1の手順に従った。表3には、結果もまとめる。
【0192】
【表3】

【0193】
実施例8
400mlの作業容量を有する、垂直冷却材およびマグネティックバーを備えた第1のガラス恒温ジャケット付き反応器(R1)に、
・ 1kg当たり、1.989gのエチレングリコール、3.580gのギ酸、16.53gの塩化ナトリウムを含有し、残りが水である塩水。当該塩水の計算TOCは1.70gC/lであり、計算CODは3.81gO/kg(16.91gCl/kg)であった。
・ 1kg当たり、1.550モルの次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl、109.92gCl/kg)、0.0123モルの塩素酸ナトリウム(NaClO)、0.133モルの水酸化ナトリウム、1.708モルの塩化ナトリウムを含有し、残りが脱塩水である水性次亜塩素酸塩溶液の第1の流れ
を連続的に供給した。
【0194】
400mlの作業容量を有する、垂直冷却材およびマグネティックバーを備えた第2のガラス恒温ジャケット付き反応器(R2)に、
・ 連続オーバーフローによって第1反応器を出た液体混合物
・ 水性次亜塩素酸塩溶液の第2の流れ
を連続的に供給した。
【0195】
307mlの作業容量を有する、および垂直冷却材を備えた第3のガラス恒温ジャケット付き反応器(R3)に、
・ 連続オーバーフローによって第2反応器を出た液体混合物
を連続的に供給した。
【0196】
第1および第2反応器中の反応媒体を、大気圧(約1013絶対ミリバール)下におよび撹拌(磁気棒)下に還流(約105℃)に加熱した。第3反応器中の反応媒体を、大気圧下に撹拌なしにその沸点直下の温度に加熱した。最初の2つの反応器は完全撹拌されるタンク反応器をシミュレートしているが、第3のものは、プラグフロー反応器をシミュレートしている。
【0197】
最初の2つの反応器中の反応媒体のpHは、37%塩化水素水溶液の添加によって調整する。
【0198】
垂直冷却材のトップを、窒素で連続的にフラッシュし、フラッシュしたガスを、NaOH 3Mの水溶液を含有するスクラバーに捕捉した。
【0199】
サンプルをヨードメトリー(ClOおよびClO)ならびにマーキュリメトリー(Cl)によって分析した。サンプルを過剰の亜硫酸ナトリウムで処理し、次に上述の方法に従ってそれらのTOC含量について分析した。カルボン酸をイオンクロマトグラフィーによって測定し、アルデヒドをヒドラゾンへの誘導体化後に高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定した。フラッシュしたガスをガスクロマトグラフィーによって分析し、スクラバー内容物を、ヨードメトリーによって次亜塩素酸塩について、酸滴定によって弱塩基について分析した。
【0200】
結果を表4にまとめた。
【0201】
実施例9および10
次亜塩素酸塩溶液が1kg当たり、1.327モルの次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl、94.10gCl/kg)、0.0037モルの塩素酸ナトリウム(NaClO)、0.58モルの水酸化ナトリウム、1.914モルの塩化ナトリウムを含有し、残りが脱塩水であったことを除いて実施例8の手順に従った。
【0202】
結果を表4にまとめた。
【0203】
【表4】

【0204】
実施例11
処理を、ポリテトラフルオロエチレンで被覆されたマグネティックスターラー・バー、ガラスジャケット中の熱電対センサー、pH電極、塩素ガス添加用のチューブおよびスクラバーに連結された垂直冷却器を備えたガラス恒温反応器で実施した。
【0205】
989mg/lの酢酸および493mg/lのプロピオン酸を含有する581.6gの20重量%NaCl水溶液を反応器に加えた。TOC含量は635mgC/lであった。この溶液は、本発明の第1実施形態に従った工程(a)の処理後に得られる反応媒体をシミュレートしている。
【0206】
溶液への塩素ガスの連続注入を、溶液のガス飽和を維持するために、80℃で実施した。全圧は1バールであった。塩素分圧は、溶液上方の水蒸気圧が80℃で0.4バールであるので0.6バールと推定された。塩素で飽和した溶液のpH値(室温で測定される)を、塩素の導入中に飽和溶液への苛性ソーダのペレットの添加によって3.95〜4.56に調整し、維持した。処理の結果を表5にまとめる。時間ゼロは、溶液への塩素の注入を開始する時間とした。
【0207】
【表5】

【0208】
実施例12
実施例11の装置および手順を用いた。
【0209】
1021mg/lの酢酸および509mg/lのプロピオン酸を含有する603.7gの20重量%NaCl水溶液を使用した。TOC含量は656mgC/lであった。この溶液は、本発明の第1実施形態に従った工程(a)の処理後に得られる反応媒体をシミュレートしている。
【0210】
処理の温度は100℃であり、全圧は1バールであった。塩素分圧は、溶液上方の水蒸気圧がこの温度で0.85バールであるので0.15バールと推定された。pHを、塩素の注入中に飽和溶液への苛性ソーダのペレットの添加によって3.8〜4.5に調整し、維持した。結果を表6にまとめる。時間ゼロは、溶液への塩素の注入を開始する時間とした。
【0211】
【表6】

【0212】
実施例13
実施例8の手順に従った。
【0213】
処理に関与する塩水は、1kg当たり、0.69gのグリセロール、0.59gの1−クロロ−2,3−プロパンジオール、0.08gの2−クロロ−1,3−プロパンジオール、0.39gのエピクロロヒドリン、0.08gのヒドロキシアセトン、0.073gの酢酸、0.050gのギ酸、0.018gの乳酸、0.012gのプロピオン酸および16.53gの塩化ナトリウムを含有した。塩水の塩化ナトリウム含有率は176g/lであり、残りは水であった。当該塩水の測定TOCは1.4gC/lであり、測定CODは3.9gO/lであった。
【0214】
次亜塩素酸塩溶液は、1kg当たり、1.39モルの次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl、98.7gCl/kg)、0.010モルの塩素酸ナトリウム(NaClO)、0.55モルの水酸化ナトリウム、1.45モルの塩化ナトリウムを含有し、残りは脱塩水であった。
【0215】
最初の2つの反応器中の反応媒体のpHを、6%塩化水素水溶液の添加によって調整した。
【0216】
0.085gC/lのTOC値の塩水を第3反応器のアウトプットで回収した。当該塩水は、1kg当たり、2.65モルのNaCl、0.016モルの次亜塩素酸ナトリウム、0.033モルの塩素酸ナトリウム、0.12gの酢酸、0.012gのプロピオン酸、0.008gのギ酸、0.005gの乳酸、0.006gのコハク酸および0.003gのアジピン酸を含有した。
【0217】
ポリテトラフルオロエチレンで被覆されたマグネティックスターラー・バー、pH電極、ガラスジャケット中の熱電対センサー、石英ジャケット中の中間UVランプおよびスクラバーに連結された垂直冷却器を備えた恒温ガラス反応器に、この塩水の1873gのサンプルを移した。UVランプは、150Wの入力定格のHERAEUS UV浸漬ランプTQ150であった。塩水を撹拌下に80℃で加熱し、pHを、55mlのHCl 6Nの添加によって4.4に調整した。照射を次に開始した。TOC値は、それぞれ20分および35分の照射時間後に0.013g/lおよび0.009g/lに低下した。塩水は、1kg当たり、0.008gの酢酸、0.006gの乳酸および0.003gのギ酸を最終的に含有した。
【0218】
実施例14
撹拌用のマグネティックバー、中央に配置された石英ジャケット中の150Wの入力定格のHeraeus−Noblelight製の中圧High Tech QCランプ、スクラバーに連結された垂直冷却器、液体を導入するための手段およびオーバーフローシステムを備えた5リットルのガラス反応器を使用した。
【0219】
反応器に、5l/時間の速度で0.74g/kgの活性塩素、3.06g/kgの塩素酸ナトリウム、170g/kgの塩化ナトリウム、0.162g/lの酢酸、0.020g/lのグリコール酸、0.018g/lのギ酸、0.015g/lの乳酸および0.005g/lのプロピオン酸(0.092gC/lのTOC含量)を含有する水溶液を、ならびに50ml/時間の速度で2.03モル/kgの濃度での次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を供給した。
【0220】
この水溶液は、本発明の第1実施形態に従った工程(a)の処理後に得られる反応媒体であった。
【0221】
pHを、37重量%HClの添加で4.2に調整した。温度を80〜85℃に設定した。全圧は1バールであった。反応器での液体の滞留時間は60分であった。ランプを、30Wh/lのエネルギー散逸で操作した。光反応器のアウトプットで集められた塩水は、0.05g/kgの活性塩素、4.35g/kgの塩素酸ナトリウム、0.009g/lの酢酸および0.001g/lのギ酸を含有した。TOC含量は0.015gC/lであった。
【0222】
実施例15
ランプのエネルギー散逸が15Wh/lであるように、塩水流量を10l/時間に上げたことを除いて実施例14の条件を用いた。処理前の塩水は、3.36g/kgの活性塩素、3.86g/kgの塩素酸ナトリウム、170g/kgの塩化ナトリウム、0.145g/lの酢酸、0.023g/lのグリコール酸および0.035g/lのギ酸(0.066gC/lのTOC含量)を含有した。追加の活性塩素を反応器に全く加えず、pHを、37重量%HClの添加で4.2に調整した。温度を95℃に設定した。反応器での液体の滞留時間は30分であった。反応器のアウトプットで集められた塩水は、0.55g/kgの活性塩素、4.3g/kgの塩素酸ナトリウム、0.042g/lの酢酸を含有した。TOC含量は0.024gC/lであった。
【0223】
実施例16
陽極および陰極ならびに撹拌デバイスを含む、1リットルの非分離電解セルを使用した。陽極は、電気化学コーティングがその上に適用されたチタン基材からなった。試験を非連続モード下に実施した。セルを、組成物1kg当たり、163gの塩化ナトリウム、ならびに組成物1リットル当たり135mgの酢酸、46mgのグリコール酸および2mgのギ酸、および130mgのC/lのTOCを含む水性組成物で満たした。
【0224】
この水溶液は、本発明の第1実施形態に従った工程(a)の処理後に得られる反応媒体であった。
【0225】
1m当たり1kAの直流密度を陽極で適用した。セルの温度を75℃に、全圧を1絶対バールに維持した。陽極表面と水性組成物の容積との比は0.01cm−1であった。pHを電解中4.5に保った。
【0226】
TOC転化率を、通した電荷の関数として記録した。結果を表7に提示する。
【0227】
実施例17
陽極表面と水性組成物の容積との比が0.28cm−1であったことを除いて実施例16の条件を用いた。結果を表7に提示する。
【0228】
実施例18
直流密度が0.1kA/mであったことを除いて実施例16の条件を用いた。結果を表7に提示する。
【0229】
【表7】

【0230】
実施例19
陽極表面と水性組成物の容積との比が0.28cm−1であったことを除いて実施例16の条件を用いた。酢酸転化率を通した電荷の関数として記録した。結果を表8に提示する。
【0231】
実施例20
直流密度が電極1m当たり0.5kA/mであったことを除いて実施例19の条件を用いた。結果を表8に提示する。
【0232】
実施例21
直流密度が0.1kA/mであったことを除いて実施例19の条件を用いた。結果を表8に提示する。
【0233】
【表8】

【0234】
実施例22
膜で分離された、1陽極の陽極液室と1陰極の陰極液室とを含む、0.6リットルの電解槽を用いた。陽極は、その上に電気化学コーティングが施されたチタン基材からなった。陰極は、その上に電気化学コーティングが施されたニッケル基材からなった。膜は、旭硝子株式会社−Flemion F8020膜であった。陰極液室中のNaOH濃度を、29重量%のNaOHを含有する水性組成物を陰極液室に連続的に供給することによって32重量%のNaOHに設定した。陽極液室中のNaCl濃度を、組成物1kg当たり、250gの塩化ナトリウム、ならびに組成物1リットル当たり120mgの酢酸、21mgのジクロル酢酸、20mgのグリセロール、1.5mgのコハク酸、1.5mgのシュウ酸、1mgのグリセルアルデヒド、0.5mgのホルムアルデヒド、および70mgのC/lのTOCを含む水性組成物を陽極液室に連続的に供給することによって19重量%に設定した。
【0235】
この水溶液は、本発明の第1実施形態に従った工程(a)の処理後に得られる反応媒体であった。溶液を、セルに供給する前に典型的な脱塩素、NaCl飽和およびイオン交換樹脂処理にかけた。
【0236】
電極の1m当たり4kAの直流密度を陽極と陰極との間にかけた。電解槽の温度を85℃に、全圧力を1絶対バールに維持した。
【0237】
セルの陽極液室の出口での塩水中のTOC値は58mgのC/lであった。
【0238】
セルの陽極液室の出口での塩水中のTOC転化率は34%であった。
【0239】
実施例23
陽極液室に、組成物1kg当たり、250gの塩化ナトリウム、ならびに組成物1リットル当たり、130mgの酢酸、32mgのジクロル酢酸、22mgのグリセロール、12mgのプロピオン酸、3.1mgのコハク酸、2.7mgのシュウ酸、0.3mgのグリセルアルデヒド、0.6mgのホルムアルデヒド、および85mgのC/lのTOCを含む水性組成物を供給したことを除いて実施例22の条件を用いた。
【0240】
この水溶液は、本発明の第1実施形態に従った工程(a)の処理後に得られる反応媒体であった。溶液を、セルに供給する前に典型的な脱塩素、NaCl飽和およびイオン交換樹脂処理にかけた。
【0241】
セルの陽極液室の出口での塩水中のTOC値は75mgのC/lであった。
【0242】
セルの陽極液室の出口での塩水中のTOC転化率は31%であった。
【0243】
実施例24
陽極液室に、組成物1kg当たり、250gの塩化ナトリウム、ならびに組成物1リットル当たり70mgの酢酸、25mgのギ酸、10mgのシュウ酸および5mgのジクロロ酢酸、ならびに65mgのC/lのTOCを含む水性組成物を供給したことを除いて実施例22の条件を用いた。
【0244】
この水溶液は、本発明の第1実施形態に従った工程(a)の処理後に得られる反応媒体であった。この溶液を、セルに供給する前に典型的な脱塩素、NaCl飽和およびイオン交換樹脂処理にかけた。
【0245】
セルの陽極液室の出口での塩水中のTOC値は24mgのC/lであった。
【0246】
セルの陽極液室の出口での塩水中のTOC転化率は68%であった。
【0247】
実施例25
実施例8の手順に従った。
【0248】
処理に関与する塩水は1kg当たり、0.69gのグリセロール、0.59gの1−クロロ−2,3−プロパンジオール、0.08gの2−クロロ−1,3−プロパンジオール、0.39gのエピクロロヒドリン、0.08gのヒドロキシアセトン、0.073gの酢酸、0.050gのギ酸、0.018gの乳酸、0.012gのプロピオン酸および16.53gの塩化ナトリウムを含有した。塩水の塩化ナトリウム含有率は176g/lであり、残りは水であった。当該塩水の測定TOCは1.4gC/lであり、測定CODは3.9gO/lであった。
【0249】
次亜塩素酸塩溶液は1kg当たり、1.39モルの次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl、98.7gCl/kg)、0.010モルの塩素酸ナトリウム(NaClO)、0.55モルの水酸化ナトリウム、1.45モルの塩化ナトリウムを含有し、残りは脱塩水であった。
【0250】
最初の2つの反応器中の反応媒体のpHを、6%塩化水素水溶液の添加によって調整した。
【0251】
0.085gC/lのTOC値の塩水を第3反応器のアウトプットで回収した。当該塩水は1kg当たり、2.65モルのNaCl、0.016モルの次亜塩素酸ナトリウム、0.033モルの塩素酸ナトリウム、0.12gの酢酸、0.012gのプロピオン酸、0.008gのギ酸、0.005gの乳酸、0.006gのコハク酸および0.003gのアジピン酸を含有した。塩水のpHは7.1であった。
【0252】
塩水を、濃塩酸の添加によってpH 1.6に酸性化し、塩素を、窒素でフラッシュすることによってストリッピングした。その後、苛性ソーダのペレットを加えて塩水のpHを7.6に設定した。
【0253】
ポリテトラフルオロエチレン被覆マグネティックバーを、ガラスジャケット中の熱電対センサーを、および25℃の水で冷却される冷却器に連結された蒸留のヘッドを備えた1リットルのガラスフラスコ中で、標準圧力で沸騰するまで加熱することによって当該塩水の505.8gのサンプルを蒸発結晶化処理にかけた。
【0254】
257.7gの第1水蒸発物を集め、蒸発の第1残留物を得た。結晶化した塩化ナトリウムの第1の画分を、蒸発の第1残留物の濾過によって回収し、18gの脱塩水で洗浄した。洗浄後に回収した第1湿潤塩は21.9gの重さがあった。第1濾液は217.1gの重さがあった。
【0255】
195.1gの第1濾液を同じ装置で蒸発させた。
【0256】
106.1gの第2水蒸留物を集め、蒸発の第2残留物を得た。
【0257】
結晶化した塩化ナトリウムの第2の画分を、蒸発の第2残留物の濾過によって回収し、25gの脱塩水で洗浄した。洗浄後に回収した第2湿潤塩は41.33gの重さがあった。第2濾液は32.46gの重さがあった。
【0258】
TOC値を、そのままで留出物および濾液全てについて、および20重量%の塩溶液を得るように塩を水に溶解させた後の湿潤塩化ナトリウム画分について測定した。結果を表9にまとめる。
【0259】
実施例26
実施例25に使用された塩水を、直接にすなわち次亜塩酸酸塩処理を適用することなく実施例25の蒸発結晶化処理にかけた。
【0260】
ポリテトラフルオロエチレン被覆マグネティックバーを、ガラスジャケット中に熱電対センサーを、および25℃の水で冷却される冷却器に連結された蒸留のヘッドを備えた1リットルのガラスフラスコ中で、標準圧力で沸騰するまで加熱することによって当該塩水の508.7gのサンプルを蒸発結晶化処理にかけた。
【0261】
249gの第1水蒸発物を集め、蒸発の第1残留物を得た。結晶化した塩化ナトリウムの第1の画分を、蒸発の第1残留物の濾過によって回収し、12.2gの脱塩水で洗浄した。洗浄後に回収した第1湿潤塩は15.95gの重さがあった。第1濾液は250.1gの重さがあった。
【0262】
208.8gの第1濾液を同じ装置で蒸発させた。
【0263】
102.7gの第2水蒸留物を集め、蒸発の第2残留物を得た。
【0264】
結晶化した塩化ナトリウムの第2の画分を、蒸発の第2残留物の濾過によって回収し、11.5gの脱塩水で洗浄した。洗浄後に回収した第2湿潤塩は47.23gの重さがあった。第2濾液は50.6gの重さがあった。
【0265】
TOC値を、そのままで留出物および濾液全てについて、および20重量%の塩溶液を得るように塩を水に溶解させた後の湿潤塩化ナトリウム画分について測定した。結果を表9にまとめる。
【0266】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性組成物中の有機物質の分解方法であって、液体反応媒体中で、前記水性組成物を、前記有機物質を酸化するために、0.001以上かつ1.5より低い水酸化物と次亜塩素酸塩とのモル比で水酸化物イオン(OH)および次亜塩素酸塩を含む少なくとも1つの組成物と反応させる工程(a)を含む方法。
【請求項2】
前記有機物質を含有する前記水性組成物が少なくとも1種の塩を含有する方法であって、工程(a)の反応媒体の少なくとも一部が、前記塩の少なくとも一部を沈殿させるために、冷却、蒸発結晶化、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される操作にかけられるさらなる工程(b1)、引き続き、沈殿した塩の少なくとも一部と水性組成物中に存在する水の少なくとも一部とが回収される工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)が第1pH値で実施される方法であって、工程(a)の反応媒体の少なくとも一部が工程(a)の第1pH値より低い第2の値のpHにするために酸性化操作にかけられ、そして前記有機物質がさらに酸化されるさらなる工程(b2)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
塩素、次亜塩素酸塩、塩素酸塩、二酸化塩素、一酸化二塩素、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物が工程(b2)の反応媒体に加えられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が塩素であり、工程(b2)中の塩素の分圧が0.001バール以上かつ10バール以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b2)中にまたは工程(b2)後に、UV−可視光での処理が前記反応媒体に対して実施される、請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記UV−可視光が100nm以上かつ400nm以下の波長を有し、このUV−可視光が光源から発せられ、かつ、Wh単位での前記光源によって消費される電気エネルギーとリットル単位での工程(a)の反応媒体の処理される部分の容積との比が1Wh/l以上かつ100Wh/l以下である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(b2)中にまたは工程(b2)後に、電解による処理が前記反応媒体に対して実施される、請求項3〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
電解による前記処理が、分離された電解セルの陽極室で実施され、陽極電流密度が陽極1mかつ1A以上および陽極1m当たり25000A以下であり、かつ、陽極の表面と工程(a)からの処理反応媒体部分の容積との比が0.001cm−1以上かつ1cm−1以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(b1)が、工程(b2)の終わりに得られた反応媒体に対して実施される、請求項3〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(a)、(b1)および(b2)の少なくとも1つが連続モードで実施される、請求項2〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(a)の反応が、以下の条件:
i.下限が6以上であり、かつ上限が11以下である範囲に制御および維持されるpH、
ii.10℃以上かつ200℃以下の温度、
iii.1バール(絶対)以上かつ11バール以下の圧力、
iv.本方法の工程(a)が非連続モードで実施されるとき、0.05時間以上かつ8時間以下の継続期間、
v.本方法の工程(a)が連続モードで実施されるとき、0.05時間以上かつ8時間以下の滞留時間
の少なくとも1つで実施される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程(a)が連続モードで実施され、かつ、前記工程(a)の反応が、少なくとも1つが混合方式下に運転され、他の少なくとも1つがプラグフロー方式下に運転される、少なくとも2つの連続した反応ゾーンで実施される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(b2)の反応が、以下の条件:
i.下限が0.01以上であり、かつ上限が6より低い範囲に制御および維持されるpH、
ii.10℃以上かつ200℃以下の温度、
iii.1バール(絶対)以上かつ11バール以下の圧力、
iv.本方法の工程(b2)が非連続モードで実施されるとき、0.05時間以上かつ8時間以下の継続期間、
v.本方法の工程(b2)が連続モードで実施されるとき、0.05時間以上かつ8時間以下の滞留時間
の少なくとも1つで実施される、請求項3〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
処理されるべき前記有機物質を含有する前記水性組成物が、好ましくはグリセロールからの、エポキシドの製造プロセスに、もしくは塩素化有機化合物の製造プロセスに、または両プロセスに由来する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−510807(P2011−510807A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544692(P2010−544692)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050982
【国際公開番号】WO2009/095429
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】